JP2007164935A - 近接場光発生層を備えた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

近接場光発生層を備えた薄膜磁気ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】素子形成面と媒体対向面とが直交する構成において、光源が媒体面から十分離れた位置に設けられていて装置の信頼性が高く、光源からの光が、近接場光の発生体に直接的にかつ効率良く入射するような薄膜磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】基板と、この基板の素子形成面に形成された電磁コイル素子と、磁気記録媒体を加熱するための近接場光発生層とを備えた薄膜磁気ヘッドであって、この近接場光発生層が、基板の媒体対向面側のヘッド端面に向かって先細りした形状を有しており、この媒体対向面側のヘッド端面に達した先端を含む近接場光発生部を備えており、この近接場光発生部が、素子形成面に対して媒体対向面側が上がる又は下がる形で傾いていて媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射した光が少なくとも一部に照射され得る受光面を有している薄膜磁気ヘッドが提供される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、信号磁界の書き込み及び読み出しを行う薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置に関する。特に、本発明は、近接場光を利用して熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う垂直磁気記録用薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたHGA及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置に関する。
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、読み出し用の磁気抵抗(MR)効果素子と書き込み用の電磁コイル素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクに信号データが読み書きされる。
磁気記録媒体は、いわば、磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
磁化の熱安定性の目安は、KV/kTで与えられる。ここで、Kは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKV/kTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この対策として、同時にKを大きくすることが考えられるが、このKの増加は、媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保持力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
この磁化の熱安定性の問題を解決する第1の方法として、面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式への移行が考えられる。垂直磁気記録媒体では記録層厚をより大きくすることが可能であり、結果として、Vを大きくして熱安定性を向上させることができる。第2の方法として、パターンドメディアの使用が考えられる。通常の磁気記録では、上述したように1つの記録ビットをN個の磁性微粒子によって構成して記録しているが、パターンドメディアを用いて、1つの記録ビットを体積NVの1つの領域とすることによって、熱安定性の指標がKNV/kTとなり飛躍的に向上する。
熱安定性の問題を解決する第3の方法として、Kの大きな磁性材料を用いるが、書き込み磁界印加の直前に、媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は光磁気記録方式とよく似ているが、光磁気記録方式は空間分解能を光に持たせているのに対し、熱アシスト磁気記録方式は空間分解能を磁界に持たせている。
従来、提案されている熱アシスト磁気記録方式として、例えば、特許文献1においては、基板上に形成された円錐体等の形状をした金属の散乱体と、その散乱体の周辺に形成された誘電体等の膜とを備えた近接場光プローブを用いる光記録方式に関する技術が開示されている。また、特許文献2においては、記録再生装置において固体イマージョン・レンズを用いたヘッドを利用し、光磁気ディスクに超微細な光ビームスポットで超微細な磁区信号を記録する技術が開示されている。また、特許文献3においては、斜めに切断した光ファイバ等の端面に、ピンホールが形成された金属膜を設けた構成が開示されている。さらに、特許文献4においては、内蔵したレーザ素子部からの光を、媒体に対向した微小光学開口に照射して熱アシストを行う技術が開示されている。さらに、特許文献5には、近接場光プローブを構成する散乱体を、その照射される面が記録媒体に垂直となるように、垂直磁気記録用単磁極書き込みヘッドの主磁極に接して形成された構成が開示されている。さらにまた、非特許文献1には、水晶のスライダ上に形成されたU字状の近接場光プローブを用いて近接場光と磁界とを発生させ、70nm程度のトラック幅を有する記録パターンを形成する技術が開示されている。
これらの技術の中でも、近接場光プローブ又は散乱体にレーザを照射することにより近接場光を発生させて、この近接場光によって媒体を加熱する方法は、所望の近接場光を比較的容易に得られることから非常に有望と考えられる。
特開2001−255254号公報 特開平10−162444号公報 特開2000−173093号公報 特開2001−283404号公報 特開2004−158067号公報 Shintaro Miyanishi等 "Near-field Assisted Magnetic Recording" IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL.41,NO.10, 第2817頁〜第2821頁、2005年
しかしながら、例えば、特許文献5に記載された技術においては、散乱体に適切に光を照射するために、光源はヘッド端面近傍の記録媒体に非常に近い位置に設置されている。この構成は、光源位置が記録媒体に接触する可能性を有しており、装置の信頼性という観点から好ましくない。一方で、同文献においては、ミラーを用いて光路を途中で90度屈折させるという工夫を行うことにより、光源を媒体面から遠ざける構成を提案している。しかし、この場合には、ミラーによる反射と光路の実効的な延長によって光強度の損失が大きくなる問題が発生する。また、ミラーのような構造物をヘッド端面近傍に形成することは、光源の設置と同じく装置の信頼性上問題となる。
さらに、非特許文献1に記載された技術によれば、ミラーを用いることなく、光源を媒体面から遠ざけた状態において光が入射可能となる。しかしながら、この技術は、近接場光プローブの集積面と媒体対向面とが平行である構成を前提としており、素子形成面と媒体対向面とが直交する一般的な薄膜磁気ヘッドの構成とは全く異なる。すなわち、例えば、垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドに適用することが非常に困難である。
従って、本発明の目的は、素子形成面と媒体対向面とが直交する構成において、光源が媒体面から十分離れた位置に設けられて装置の信頼性が高く、光源からの光が、近接場光の発生体に直接的にかつ効率良く入射するような薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたHGA及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置を提供することにある。
本発明について説明する前に、明細書において使用される用語の定義を行う。基板の素子形成面に形成された磁気ヘッド素子の積層構造において、基準となる層よりも基板側にある構成要素を、基準となる層の「下」又は「下方」にあるとし、基準となる層よりも積層される方向側にある構成要素を、基準となる層の「上」又は「上方」にあるとする。
本発明によれば、媒体対向面及びこの媒体対向面に垂直な素子形成面を有する基板と、この素子形成面に形成されており、主磁極層、補助磁極層及びコイル層を有する書き込み用の電磁コイル素子と、近接場光を発生させて書き込みの際に磁気記録媒体を加熱するための少なくとも1つの近接場光発生層とを備えた薄膜磁気ヘッドであって、この少なくとも1つの近接場光発生層が、媒体対向面側のヘッド端面に向かって先細りした形状を有しており、媒体対向面側のヘッド端面に達した先端を含む近接場光発生部を備えており、この近接場光発生部が、素子形成面に対して媒体対向面側が上がる又は下がる形で傾いていて媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射した光が少なくとも一部に照射され得る受光面を有している薄膜磁気ヘッドが提供される。
このような薄膜磁気ヘッドにおいては、素子形成面と媒体対向面とが直交する構成において、近接場光発生部の受光面が、素子形成面に対して傾いているので、媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射するレーザ光が、この受光面に直接的にかつ効率良く入射する。これにより、近接場光発生層にプラズモンが効率良く励起され、近接場光発生層の先端近傍に非常に強い電界強度を有する近接場光が発生する。この十分に強い近接場光によって磁気ディスク表面の対向する局所部分が十分に加熱される。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに確実に低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子による書き込みが十分に可能となる。さらに、光源が、薄膜磁気ヘッドの外部に設置可能であるので、装置の信頼性が向上する。
ここで、少なくとも1つの近接場光発生層の少なくとも1つが、近接場光発生部の媒体対向面とは反対側に、素子形成面と平行な第1の反射面を有する第1の反射部をさらに備えていることが好ましい。さらに、近接場光発生部とこの第1の反射部との間に、素子形成面に対して受光面よりも小さな傾きを持つ少なくとも1つの第2の反射面を有する第2の反射部をさらに備えていることも好ましい。
このような反射面は、ヘッド端面を介して入射したレーザ光の一部を反射させて、受光面に向けさせることによって、受光面aの受光量を補う役割を果たす。これにより、近接場光の発生効率が向上する。
また、主磁極層が、少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの受光面とは反対側に位置しており、この少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つにおける近接場光発生部とこの主磁極層の媒体対向面側の端部とが、誘電体層を介して又は直接に重なっていることが好ましい。その際、近接場光発生部と主磁極層の媒体対向面側の端部とが、素子形成面に対して媒体対向面側が上がる又は下がる形で傾いていることも好ましい。
さらに、主磁極層が、少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの受光面の側に位置しており、この主磁極層及びこの少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つが、主磁極層の媒体対向面側の端と少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの媒体対向面側のヘッド端面に達した先端とにおいてのみ、互いに接触又は近接していることも好ましい。
さらに、少なくとも1つの近接場光発生層が2つの近接場光発生層であって、この2つの近接場光発生層において、受光面が素子形成面に対して媒体対向面側がそれぞれ上がる及び下がる形で傾いていて、媒体対向面側のヘッド端面に達した先端が互いに接するように又は近傍に位置するように配置されていることも好ましい。
さらに、電磁コイル素子及び近接場光発生層を覆うように素子形成面上に形成された被覆層をさらに備えており、この被覆層のうち、媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射した光の受光面までの光路を含む領域が、SiO又は少なくとも1つの添加元素が添加されたSiOによって形成されていることが好ましい。
本発明によれば、さらに、上述した記載の薄膜磁気ヘッドと、この薄膜磁気ヘッドを支持する支持機構と、書き込み用の電磁コイル素子、及びこの薄膜磁気ヘッドが読み出し用の磁気抵抗効果素子を備えている場合はこの磁気抵抗効果素子のための信号線とを備えており、この薄膜磁気ヘッドの媒体対向面とは反対側のヘッド端面から光を入射させるための光ファイバをさらに備えているHGAが提供される。
本発明によれば、さらにまた、上述したHGAを少なくとも1つ備えており、少なくとも1つの磁気ディスクと、上述した光ファイバに光を供給するための光源と、この少なくとも1つの磁気ディスクに対して薄膜磁気ヘッドが行う書き込み及び読み出し動作を制御するとともに、この光源の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路とをさらに備えている磁気ディスク装置が提供される。
本発明による薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたHGA及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置によれば、素子形成面と媒体対向面とが直交しており、光源が媒体面から十分離れた位置に設けられている構成において、光源からの光が、近接場光発生層に直接的にかつ効率良く入射する。これにより、装置の信頼性を十分維持した上で、例えば、垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドにおいて効率の良い熱アシスト磁気記録を実現することが可能となる。
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
図1は、本発明による磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
同図において、10はスピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の垂直磁気記録用の磁気記録媒体である磁気ディスク、12は垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッド(スライダ)21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置、13は、この薄膜磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト用のレーザ光を発生させる光源である半導体レーザ18を制御するための記録再生及び発光制御回路をそれぞれ示している。
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして角揺動可能であり、この軸16に沿った方向にスタックされている。各駆動アーム14の先端部には、HGA17が取り付けられている。各HGA17には、スライダ21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及びスライダ21は、単数であってもよい。
半導体レーザ18は、光ファイバ26にレーザ光を供給するものであり、自身の活性層の位置に、第1のファイバホルダ19によって光ファイバ26の端断面が接続されている。発振レーザの波長は、例えば、800nmである。
図2は、本発明によるHGAの一実施形態を示す斜視図である。ここで、図2(A)は、HGA17の媒体に対向する側の構成を示しており、図2(B)は、HGA17の媒体に対向する側とは反対側の構成を示している。
図2(A)によれば、HGA17は、サスペンション20の先端部に、磁気ヘッド素子を有するスライダ21を固着し、さらにそのスライダ21の端子電極に配線部材25の一端を電気的に接続して構成される。
サスペンション20は、ロードビーム22と、このロードビーム22上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ23と、ロードビーム22の基部に設けられたベースプレート24と、フレクシャ23上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材25とから主として構成されている。
図2(B)によれば、HGA17は、後に詳述するように、薄膜磁気ヘッド21のヘッド端面からレーザ光を入射させるための光ファイバ26をさらに備えている。光ファイバ26の出光側の端部は、フレクシャ23に設けられた第2のファイバホルダ27によって、レーザ光が薄膜磁気ヘッド21の所定のヘッド端面から入射可能となる位置に固定される。ここで、光ファイバ26の出光側の端部の直径は、約5.0μm〜約500μmであり、放射されるレーザ光のビーム径もまた、約5.0μm〜約500μmである。
なお、本発明のHGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップ又は光ファイバ26にレーザ光を供給するための半導体レーザを装着してもよい。
図3(A)は、図2に示すHGAの先端部に装着されている、本発明による薄膜磁気ヘッド(スライダ)の一実施形態を示す斜視図である。また、図3(B)は、この薄膜磁気ヘッドにおける磁気ヘッド素子部分の構成を示す平面図である。
図3(A)によれば、本実施形態における薄膜磁気ヘッド21は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)30を有するスライダ基板210と、スライダ基板210のABS30に垂直な素子形成面31上に形成された磁気ヘッド素子32と、熱アシスト磁気記録のための近接場光を発生させる近接場光発生層35と、素子形成面31上に形成された被覆層40の層面から露出した合計4つの信号端子電極36及び37とを備えている。信号端子電極36及び37は、磁気ヘッド素子32が備えている読み出し用のMR効果素子及び書き込み用の電磁コイル素子にそれぞれ接続されている。なお、これらの信号端子電極の数及び位置は、図3(A)の形態に限定されるものではない。同図において端子電極は4つであるが、例えば、電極を3つとした上でグランドをスライダ基板に接地した形態でもよい。
ここで、光ファイバ26からの光は、ABS30側にあって同じく媒体に対向する面となっているヘッド端面300とは反対側のヘッド端面301から、近接場光発生層35に向けて入射される。
図3(B)によれば、磁気ヘッド素子32は、読み出し用のMR効果素子33と、書き込み用の電磁コイル素子34とを備えている。MR効果素子33及び電磁コイル素子34の一端は、ヘッド端面300に達している。書き込み又は読み出し動作時には、薄膜磁気ヘッド21が回転する磁気ディスク表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、これらの素子端が磁気ディスクと対向することによって、信号磁界の感受による読み出しと信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
近接場光発生層35は、本実施形態において、電磁コイル素子34上に設けられており、媒体に対向する面であるヘッド端面300に向かって先細りした形状を有している。ここで、近接場光発生層35は、光ファイバ26からレーザ光を受けることにより近接場光を発生させる近接場光発生部350と、光ファイバ26からのレーザ光を近接場光発生部350に向けるための反射面351aを有する反射部351とを備えている。
近接場光発生部350は、ヘッド端面300に達した先端を含んでいて、例えば、2等辺三角形の形状を有しており、さらに、受光面350aを有している。光ファイバ26からのレーザ光がこの受光面350aに照射されると、後に詳述するように、近接場光発生部350のヘッド端面300に達した先端から非常に強い電界強度を有する近接場光が発生する。この近接場光を用いて熱アシスト動作が行われる。
図4(A)は、図3に示した薄膜磁気ヘッドの要部の構成を概略的に示す図3(A)のA−A線断面図である。また、図4(B)は、互いに重ねられた近接場光発生層及び主磁極層の端部の構成を示す斜視図である。なお、図4(A)におけるコイル層の巻き数は図を簡略化するため、実際の巻き数より少なく表されている。
図4(A)によれば、MR効果素子33は、MR効果積層体332と、この積層体を挟む位置に配置されている下部電極層330及び上部電極層334とを備えている。MR効果積層体332は、磁化自由層と磁化固定層とがトンネルバリア層を挟んで積層されたトンネル磁気抵抗(TMR)効果多層膜、垂直通電型巨大磁気抵抗(CPP(Current Perpendicular to Plain)−GMR)効果多層膜、及び面内通電型巨大磁気抵抗(CIP(Current In Plain)−GMR)効果多層膜のうちのいずれか1つを備えている。いずれであっても、非常に高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受して読み出しを行う。なお、MR効果積層体332がCIP−GMR多層膜を備えている場合、上下部電極層334及び330の代わりに、MR効果積層体との間にシールドギャップ層を介する上下部シールド層がそれぞれ設けられ、さらにMR効果積層体にセンス電流を供給するための素子リード導体層が設けられることになる。
下部シールド層330は、アルティック(Al−TiC)等からなるスライダ基板210の素子形成面31に積層されており、例えば、厚さ約0.3μm〜約3μmのNiFe、NiFeCo、CoFe、FeN又はFeZrN等から形成されている。上部シールド層334は、例えば、厚さ約0.3μm〜約4μmのNiFe、NiFeCo、CoFe、FeN又はFeZrN等から形成されている。なお、上下部シールド層334及び330の間隔である再生ギャップ長は、約0.02μm〜約1μmである。
電磁コイル素子34は、垂直磁気記録用であり、補助磁極層340、コイル層341、コイル絶縁層342、ギャップ層343及び主磁極層344を備えている。主磁極層344は、コイル層341によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの記録層まで収束させながら導くための導磁路である。ここで、主磁極層344のヘッド端面300側の端部344aの層厚方向の長さ(厚さ)は、他の部分に比べて小さくなっている。この結果、高記録密度化に対応した微細な書き込み磁界が発生可能となる。
ここで、補助磁極層340は、例えば、厚さ約0.5μm〜約5μmのNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から形成されている。コイル層341は、例えば厚さ約0.5μm〜約3μmのCu等から形成されている。コイル絶縁層342は、例えば、厚さ約0.1μm〜約5μmの熱硬化されたレジスト層等から形成されている。ギャップ層343は、例えば、厚さ約0.01μm〜約0.5μmのAl又はDLC等から形成されている。主磁極層344は、例えば、ABS側の端部での全厚が約0.01μm〜約0.5μmであって、この端部以外での全厚が約0.5μm〜約3.0μmのNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から形成されている。
なお、MR効果素子33と電磁コイル素子34との間に、さらに、素子間シールド層及び/又はバッキングコイルが形成されていてもよい。バッキングコイルは、電磁コイル素子34から発生してMR効果素子33の上下部電極層を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE)現象の抑制を図っている。なお、コイル層341は、図4(A)において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。
また、同じく図4(A)において、近接場光発生層35は、Au、Pd、Pt、Rh若しくはIr、若しくはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金、又はAl、Cu等が添加されたこれらの合金等からなる近接場光発生部350及び反射部351を備えている。近接場光発生部350が有する受光面350aは、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いていて、光ファイバ26からヘッド端面301を介して入射したレーザ光が少なくとも一部に照射され得る位置に形成されている。実際の熱アシスト動作においては、コヒーレントなレーザ光が、光ファイバ26からヘッド端面301を介して近接場光発生部350の受光面350aに照射されると、Au等の内部の自由電子がレーザ光の電界によって一様に強制振動させられることによりプラズモンが励起される。このプラズモンは、近接場光発生部350の、ヘッド端面300側の頂点である先端35aに向かって伝播し、この先端35aの近傍に非常に強い電界強度を有する近接場光を発生させる。この近接場光によって磁気ディスク表面の対向する局所部分が加熱される。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子34による書き込みが可能となる。
実際には、このような熱アシスト磁気記録方式を適用することにより、高保磁力の磁気ディスクに垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、1Tbits/in級の記録密度を達成することが可能となる。
反射部351は、近接場光発生部350のヘッド端面300とは反対側に設けられており、素子形成面31と平行な反射面351aを有する。反射面351aは、光ファイバ26からヘッド端面301を介して入射したレーザ光の一部を反射させて、受光面350aに向けさせることによって、受光面350aの受光量を補う役割を果たす。これにより、近接場光の発生効率が向上する。
なお、近接場光発生層35は、上述したように、Au等から形成されているが、層厚は、例えば、約50nm〜約500nmである。また、ヘッド端面300から反対側の端までの距離は、例えば、約10μm〜約500μmである。また、反射部351でのトラック幅方向の幅は、例えば、約20μm〜約500μmである。さらに、先端35aの幅は、約15nm〜約40nmである。このような近接場光発生層の先端35aからは、上記の層厚又は先端の幅程度の幅の近接場光が発生する。この近接場光の電界強度は、この幅以上の領域では指数関数的に減衰するので、非常に局所的に記録層部分を加熱することができる。また、近接場光は、先端から磁気ディスク方向に向かって、同じく上記の層厚又は先端の幅程度までの領域に存在する。従って、10nm又はそれ以下の浮上量である現状において、近接場光は、十分に記録層部分に到達する。
被覆層40は、MR効果素子33、電磁コイル素子34及び近接場光発生層35を覆うように、素子形成面31上に形成されている。この被覆層40は、積層方向(素子形成面31に垂直である方向)において、素子形成面から主磁極層344の端部344aを除く上面までの領域を占める第1の被覆層400と、この上面から近接場光発生部よりも上方までの領域を占める第2の被覆層401と、この領域上の領域を占める第3の被覆層402との積層構造となっている。
ここで、第2の被覆層401は、ヘッド端面301から入射した光の受光面350aまでの光路をすべて含んでおり、半導体レーザ18(図1)から発生するレーザ光の透過率が十分に高い、SiO又はSiOを主成分とする酸化物によって形成されている。これにより、薄膜磁気ヘッドに入射したレーザ光の減衰をできるだけ小さくすることができるので、結果として受光面350aが受ける光量が増加して近接場光発生効率が向上する。なお、第1及び第3の被覆層400及び402は、被覆用として通常用いられるAlから形成されている。なお、第2の被覆層401は、受光面350aまでの光路を含んでおればよいので、例えば、この光路を含む所定のトラック幅方向の幅を有する層であってもよい。この場合、この層のトラック幅方向の両側に、Alからなる層を形成することにより、この層を挟む第1及び第3の被覆層間の密着強度が高まり、被覆層の機械的強度を十分に維持することができる。
主磁極層344は、近接場光発生層35の受光面350aとは反対側に位置していて、近接場光発生層35のリーディング側に設けられている。さらに、主磁極層344の端部344aと、近接場光発生部350とは互いに直接重なっている。図4(B)に、両者の重なっている様子を斜視図で示す。このような重なった構造により、磁気ディスクの記録層の書き込もうとしている部分(トラック)が確実に加熱可能となる。さらに、接面している主磁極層344の端部344aが、近接場光発生部350自身の過度の温度上昇を防止するヒートシンクとしての役割を果たす。
なお、本実施形態においては、書き込み磁界の主要発生箇所である主磁極層344の端部344aが、近接場光の主要発生箇所である近接場光発生部350の先端35aのリーディング側に位置しているので、熱アシスト動作と書き込み動作を同時に行うか、又は熱アシスト作用を受けた記録層部分が少なくとも1回転してヘッド位置に戻った後、書き込み動作を行うことになる。
さらに、主磁極層344の端部344aと近接場光発生部350とが、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いている。この両者の傾きの大きさが及ぼす効果について以下に説明する。
図5(A)は、この傾きθを定義するための概略図であり、図5(B)は、傾きθの及ぼす効果を説明するための概念的なグラフである。
図5(A)において、傾きθを、主磁極層344の端部344a及び近接場光発生部350からなる積層部分が、素子形成面31との間でなす角度とする。ここで、主磁極層344の端部344aから発生する書き込み磁界強度は、図5(B)の曲線Aが示すように、傾きθが大きくなるに従ってその垂直成分が減少するので小さくなる。一方、近接場光発生部350の熱アシスト作用による磁気ディスクの記録層の温度上昇分は、図5(B)の曲線Bが示すように、傾きθが大きくなるに従って、受光面による受光量が増加するので大きくなる。すなわち、傾きθの値は、記録層の保磁力を熱アシストによって十分に低減させる条件と、有効な書き込み磁界強度を十分に維持する条件との間で、ある程度の幅を持って選択可能である。なお、θ値の設計の際、フレクシャの振動等によって光ファイバからのレーザ光が所定範囲内で変動しても、近接場光発生層の受光面が、ある程度のマージンを持って確実に必要な量を受光可能とするように、θ値をある程度大きくすることも好ましい。なお、図4の実施形態において、θは、約40度〜約50度である。
図6及び図7は、本発明による薄膜磁気ヘッドが備えている近接場光発生層についての種々の実施形態を示す断面図及び斜視図である。
図6(A)によれば、近接場光発生層61の近接場光発生部610が有する受光面610aは、図4に示す実施形態と同じく、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いていて、ヘッド端面301を介して入射したレーザ光が少なくとも一部に照射され得る位置に形成されている。また、主磁極層60は、近接場光発生層61の受光面610aとは反対側に位置していて、近接場光発生層61のリーディング側に設けられている。しかしながら、本実施形態においては、主磁極層60の端部60aは、近接場光発生部610と重なっていない。従って、主磁極層60の端部60aから発生する書き込み磁界強度は、傾くことによる垂直成分の減少がないので、十分な大きさに維持される。なお、本実施形態においては、ヘッド端面300において、書き込み位置が熱アシスト動作位置よりも所定の距離だけリーディング側にずれているので、実際の書き込みにおいては、熱アシスト作用を受けた記録層部分が少なくとも1回転してヘッド位置に戻った後、書き込み動作を行うことになる。
図6(B)によれば、互いに重なった主磁極層62の端部62a及び近接場光発生部630が、図4に示す実施形態と同じく、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いている。しかしながら、本実施形態においては、主磁極層344と近接場光発生層64との間に、SiO又は少なくとも1つの所定の添加元素が添加されたSiOからなる誘電体層68が形成されている。その結果、近接場光発生層63が電気的に孤立し、近接場光発生部630、特に端63aにおいて、局在プラズモンが多量に励起される条件を設計し易くなる。これにより、端63a近傍での近接場光の強度をより強くすることが可能となるので、さらに十分な熱アシスト動作を行うことができる。
図6(C)によれば、互いに重なった主磁極層64の端部64a及び近接場光発生部650が、図4に示す実施形態と同じく、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いている。しかしながら、本実施形態においては、近接場光発生層65が、近接場光発生部650と反射部(第1の反射部)651との間に、受光面650aよりも小さな傾きθを持つ第2の反射面652aを有する第2の反射部652をさらに備えている。第2の反射面652aは、第1の反射面651aとともに、ヘッド端面301を介して入射した光の一部を反射させて、受光面650aに向けさせることによって、受光面650aの受光量を補う役割を果たす。ここで、第1の反射面651aに加えて第2の反射面652aを設けることによって、これらの反射面の集光効果により受光面650aの受光量をさらに高める設計が可能となる。その結果、近接場光の発生効率がより向上する。
また、反射部は、近接場光発生層650と第1の反射部651との間に、さらに2つ以上設けられてもよい。この場合、集光効果を高めるために、各反射面の傾きθが、第1の反射面651aから受光面650aに向けて順次大きくなるように設定されることが好ましい。なお、この反射部の数を十分に大きくした極限として、反射面が、受光面に向けて徐々に傾きが大きくなる曲面となっている場合も、本発明の範囲に含まれる。
図6(D)によれば、互いに重なった主磁極層66の端部66aと近接場光発生部670とが、図4に示す実施形態と同じく、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いている。しかしながら、本実施形態においては、主磁極層66の端部66a及び近接場光発生部670における、ヘッド端面300側の部分が、他の部分から折れ曲がっており、素子形成面31と平行になっている。その結果、書き込み磁界強度は、端部66aの素子形成面31と平行である部分において垂直成分の減少がほとんどないので、十分な大きさに維持される。また、近接場光発生部670において、受光面670aの面積を十分に確保することによって必要な近接場光を発生させることが可能となる。
図7(A)によれば、電磁コイル素子71において、主磁極層711が、補助磁極層710の下側(リーディング側)に設けられている。また、さらに、近接場光発生層72が、主磁極層711の下側(リーディング側)に設けられている。さらに、互いに重なった主磁極層711の端部711a及び近接場光発生部720が、素子形成面31に対してヘッド端面300側が下がる形で傾いている。このような実施形態においては、ヘッド端面300において、書き込み位置が熱アシスト動作位置に隣接してトレーリング側となる。その結果、実際の書き込みにおいて、書き込まれるべき記録層部分が熱アシスト作用を受けた直後に、書き込み動作が、同部分に確実に行われることになる。
なお、本実施形態においては、光ファイバ26からの光は、MR効果素子70及び電磁コイル素子71の間の領域にある近接場光発生層72の受光面720aに向けて放射されることになる。この際、近接場光発生層72の反射面721aのみならず、MR効果素子70の上部電極層704の上面が、入射した光の一部を反射させて、受光面720aに向けさせることによって、受光面720aの受光量を補う役割を果たす。この際、上部電極層704とは独立して、Au、Al、Cu又はそれらのうちのいくつかの組合せの合金等からなる反射層73が、上部電極層704の上面に接して又は上方に設けてもよい。
図7(B1)によれば、近接場光発生層75の近接場光発生部750が有する受光面750aは、素子形成面31に対してヘッド端面300側が下がる形で傾いていて、ヘッド端面301を介して入射したレーザ光が少なくとも一部に照射され得る位置に形成されている。また、主磁極層74が、近接場光発生層75の受光面750aの側であってリーディング側に位置している。さらに、主磁極層74及び近接場光発生層75が、主磁極層74のヘッド端面300側の端74bと近接場光発生層75のヘッド端面300側の先端75aとにおいてのみ、互いに接触又は近接している。端74bと先端75aとが接触している場合の形態を図7(B2)に示す。このような構成により、近接場光発生部750の先端75a近傍から発生する近接場光によって熱アシスト作用を受けた記録層部分に対して確実に、書き込み動作を行うことが可能となる一方、主磁極層74の端74bから発生する書き込み磁界強度は、傾くことによる垂直成分の減少がないので、十分な大きさに維持される。
なお、本実施形態においては、光ファイバ26からの光は、主磁極層74及び近接場光発生層75の反射部751の間の領域に向けて放射されることになる。この際、反射面751aのみならず、主磁極層74の上面が、入射した光の一部を反射させて、受光面750aに向けさせることによって、受光面750aの受光量を補う役割を果たす。また、主磁極層74とは独立して、Au、Al、Cu又はそれらのうちのいくつかの組合せの合金等からなる反射層76が、主磁極層74の上面に接して又は上方に設けてもよい。
また、本実施形態の変更態様として、主磁極層が、補助磁極層の下側(リーディング側)に設けられていて、さらに、近接場光発生層が、主磁極層の下側(リーディング側)に設けられていてもよい。この変更態様においても上述した効果と同様の効果が得られることは明らかである。
図7(C1)によれば、互いに重なった主磁極層77の端部77a及び第1の近接場光発生層78の第1の近接場光発生部780が、素子形成面31に対してヘッド端面300側が上がる形で傾いている。本実施形態においては、さらに、第2の近接場光発生層79が第1の近接場光発生層78の上方に設けられており、第2の近接場光発生層79の近接場光発生部790が、素子形成面31に対してヘッド端面300側が下がる形で傾いている。また、さらに、第1及び第2の近接場光発生層78及び79のヘッド端面300に達している先端78a及び79aが、互いに接するように又は近傍に位置するように配置されている。
図7(C2)に、主磁極層77の端77bと先端78aとが接しており、先端78aと先端79aとが接触している場合の形態を示す。このような構成によれば、図4に示した実施形態の効果を得るだけではなく、第1及び第2の近接場光発生層78及び79の両者の作用による、より強力な近接場光を得ることが可能となる。これにより、より十分であって確実な熱アシスト動作を行うことができる。実際、受光面の面積が両者の和となって増加しており、さらに、近接場光が発生する条件を満たす箇所を、第1及び第2の近接場光発生層78及び79のそれぞれに、さらに両者の間に設けることができるため、より強力な近接場光を発生させるための設計が容易となる。
特に、第2の近接場光発生層79は、主磁極層等の導電体とは接しておらず、被覆層等の誘電体に囲まれている。その結果、第2の近接場光発生層は電気的に孤立しており、局在プラズモンが多量に励起される条件を設計し易くなる。
なお、本実施形態においては、光ファイバ26からの光は、第1の近接場光発生層78の反射面781aと第2の近接場光発生層79の反射面791aとの間の領域に向けて放射されることになる。従って、この領域に入射した光は、減衰分を除いてほぼ全量、受光面780a及び790aに到達する。その結果、近接場光の発生効率がより向上する。
また、本実施形態の変更態様として、主磁極層が、補助磁極層の下側(リーディング側)に設けられており、第1の近接場光発生層が、主磁極層の下側(リーディング側)に設けられていて、さらに、第2の近接場光発生層が、第1の近接場光発生層の下側(リーディング側)に設けられていてもよい。この変更態様においても上述した効果と同様の効果が得られることは明らかである。
図8は、素子形成面に対して傾いている主磁極層の端部及び近接場光発生部の形成方法の一実施形態を説明する断面図である。具体的には、図8(A)〜(C)において、図4(A)に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程のうち、主磁極層344の端部344a及び近接場光発生部350の形成工程部分を順次示している。
図8(A)において、最初に、主磁極層となる磁性膜を成膜し、SiO等の誘電体膜を成膜した後、化学的機械的研磨(CMP)法等を用いて平坦化を行い、上面が共に同一面に平坦化された、主磁極層のベース部分80及び平坦化層81を形成する。次いで、主磁極層のベース部分80上に、リフトオフ用のレジストパターン82を形成し、その後、スパッタリング法等を用いてSiO等の誘電体膜を成膜して、傾斜した側面を有する絶縁層83を形成する。この後、レジストパターン82及びその上の誘電体膜が、いわゆるリフトオフにより除去される。
次いで、図8(B)に示すように、主磁極層のベース部分80及び絶縁層83上に、主磁極層の端部となるべき磁性層84と、近接場光発生層となるべき、Au、Pd、Pt、Rh若しくはIr、若しくはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金、又はAl、Cu等が添加されたこれらの合金等の層85とを形成する。さらに、それらの上に、被覆層となるべき誘電体膜86を成膜する。
以上の形成工程を含む、薄膜磁気ヘッドのウエハ基板工程が終了した後、形成工程が終了したウエハ基板を切断して複数の磁気ヘッド素子が一列状に並んだバー部材を形成する。次いで、このバー部材を研磨することによって所望のMRハイトを得るべく、MRハイト加工を行う。その後、MRハイト加工が施されたバー部材を個々のスライダ(薄膜磁気ヘッド)に切断分離することによって薄膜磁気ヘッドの製造工程が終了する。
ここで、図8(C)によれば、上述のMRハイト加工によって、磁性層84、Au等の層85及び誘電体膜86が研削されることにより、主磁極層344、近接場光発生層35及び被覆層40が完成される。ここで、主磁極層344の端部344a及び近接場光発生部350は、絶縁層83の傾斜した側面上に形成されていた結果として、素子形成面に対して傾いている。
図9は、図1に示した磁気ディスク装置の記録再生及び発光制御回路13の回路構成を示すブロック図である。
図9において、90は制御LSI、91は、制御LSI90から記録データを受け取るライトゲート、92はライト回路、93は、半導体レーザ18に供給する動作電流値の制御用テーブル等を格納するROM、95は、MR効果素子33へセンス電流を供給する定電流回路、96は、MR効果素子33の出力電圧を増幅する増幅器、97は、制御LSI90に対して再生データを出力する復調回路、98は温度検出器、99は、半導体レーザ18の制御回路をそれぞれ示している。
制御LSI90から出力される記録データは、ライトゲート91に供給される。ライトゲート91は、制御LSI90から出力される記録制御信号が書き込み動作を指示するときのみ、記録データをライト回路92へ供給する。ライト回路92は、この記録データに従ってコイル層341に書き込み電流を流し、電磁コイル素子34により磁気ディスク上に書き込みを行う。
制御LSI90から出力される再生制御信号が読み出し動作を指示するときのみ、定電流回路95からMR積層体332に定電流が流れる。このMR効果素子33により再生された信号は増幅器96で増幅された後、復調回路97で復調され、得られた再生データが制御LSI90に出力される。
レーザ制御回路99は、制御LSI90から出力されるレーザON/OFF信号及び動作電流制御信号を受け取る。このレーザON/OFF信号がオン動作指示である場合、発振しきい値以上の動作電流が半導体レーザに印加される。この際の動作電流値は、動作電流制御信号に応じた値に制御される。制御LSI90は、記録再生動作とのタイミングに応じてレーザON/OFF信号を発生させ、磁気ディスクの記録層及び半導体レーザ18の、温度検出器98による温度測定値等を考慮し、ROM93内の制御テーブルに基づいて、動作電流値制御信号の値を決定する。ここで、制御テーブルは、発振しきい値及び光出力−動作電流特性の温度依存性のみならず、動作電流値と熱アシスト作用を受けた記録層の温度上昇分との関係、及び保磁力の温度依存性についてのデータも含む。このように、記録/再生動作制御信号系とは独立して、レーザON/OFF信号及び動作電流値制御信号系を設けることによって、単純に記録動作に連動した半導体レーザへの通電のみならず、より多様な通電モードを実現することができる。
なお、記録再生及び発光制御回路13の回路構成は、図8に示したものに限定されるものでないことは明らかである。記録制御信号及び再生制御信号以外の信号で書き込み動作及び読み出し動作を特定してもよい。また、少なくとも書き込み動作時又はその直前において半導体レーザ18に通電することが望ましいが、書き込み動作及び読み出し動作のシーケンスにおいて、所定の期間だけ通電することも可能である。
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
本発明による磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。 本発明によるHGAの一実施形態を示す斜視図である。 図2に示すHGAの先端部に装着されている、本発明による薄膜磁気ヘッドの一実施形態を示す斜視図、及びこの薄膜磁気ヘッドにおける磁気ヘッド素子部分の構成を示す平面図である。 図3に示した薄膜磁気ヘッドの要部の構成を概略的に示す図3(A)のA−A線断面図、及び互いに重ねられた近接場光発生層及び主磁極層の端部の構成を示す斜視図である。 傾きθを定義するための概略図、及び傾きθの及ぼす効果を説明するための概念的なグラフである。 本発明による薄膜磁気ヘッドが備えている近接場光発生層についての種々の実施形態を示す断面図及び斜視図である。 本発明による薄膜磁気ヘッドが備えている近接場光発生層についての種々の実施形態を示す断面図及び斜視図である。 素子形成面に対して傾いている主磁極層の端部及び近接場光発生部の形成方法の一実施形態を説明する断面図である。 図1に示した磁気ディスク装置の記録再生及び発光制御回路の回路構成を示すブロック図である。
符号の説明
10 磁気ディスク
11 スピンドルモータ
12 アセンブリキャリッジ装置
13 記録再生及び発光制御回路
14 駆動アーム
15 ボイスコイルモータ(VCM)
16 ピボットベアリング軸
17 ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)
18 半導体レーザ
19、27 ファイバホルダ
20 サスペンション
21 スライダ
210 スライダ基板
22 ロードビーム
23 フレクシャ
24 ベースプレート
25 配線部材
26 光ファイバ
30 浮上面(ABS)
300、301 ヘッド端面
31 素子形成面
32 磁気ヘッド素子
33 MR効果素子
330 下部電極層
332 MR効果積層体
334 上部電極層
34 電磁コイル素子
340、710 補助磁極層
341 コイル層
342 コイル絶縁層
343 ギャップ層
344、60、62、64、66、711、74、77 主磁極層
344a、60a、62a、64a、66a、711a、74b、77b 端部
35、61、63、65、67、72、75、78、79 近接場光発生層
35a、63a、75a、78a、79a 先端
350、610、630、650、670、720、750、780、790 近接場光発生部
350a、610a、630a、650a、670a、720a、750a、780a、790a 受光面
351、611、631、651、671、721、751、781、791 反射部
351a、611a、631a、651a、671a、721a、751a、781a、791a 反射面
36、37 信号端子電極
40、400、401、402 被覆層
652 第2の反射部
652a 第2の反射面
73、76 反射膜
80 主磁極層のベース部分
81 平坦化層
82 レジストパターン
83 絶縁層
84 磁性層
85 Au等の層
86 誘電体膜
90 制御LSI
91 ライトゲート
92 ライト回路
93 ROM
95 定電流回路
96 増幅器
97 復調回路
98 温度検出器
99 レーザ制御回路

Claims (10)

  1. 媒体対向面及び該媒体対向面に垂直な素子形成面を有する基板と、該素子形成面に形成されており、主磁極層、補助磁極層及びコイル層を有する書き込み用の電磁コイル素子と、近接場光を発生させて書き込みの際に磁気記録媒体を加熱するための少なくとも1つの近接場光発生層とを備えた薄膜磁気ヘッドであって、
    前記少なくとも1つの近接場光発生層が、前記媒体対向面側のヘッド端面に向かって先細りした形状を有しており、該媒体対向面側のヘッド端面に達した先端を含む近接場光発生部を備えており、該近接場光発生部が、前記素子形成面に対して媒体対向面側が上がる又は下がる形で傾いていて該媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射した光が少なくとも一部に照射され得る受光面を有していることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 前記少なくとも1つの近接場光発生層の少なくとも1つが、前記近接場光発生部の前記媒体対向面とは反対側に、前記素子形成面と平行な第1の反射面を有する第1の反射部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜磁気ヘッド。
  3. 前記少なくとも1つの近接場光発生層の少なくとも1つが、前記近接場光発生部と前記第1の反射部との間に、前記素子形成面に対して前記受光面よりも小さな傾きを持つ少なくとも1つの第2の反射面を有する第2の反射部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 前記主磁極層が、前記少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの前記受光面とは反対側に位置しており、該少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つにおける前記近接場光発生部と該主磁極層の媒体対向面側の端部とが、誘電体層を介して又は直接に重なっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 前記近接場光発生部と前記主磁極層の媒体対向面側の端部とが、前記素子形成面に対して媒体対向面側が上がる又は下がる形で傾いていることを特徴とする請求項4に記載の薄膜磁気ヘッド。
  6. 前記主磁極層が、前記少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの前記受光面の側に位置しており、該主磁極層及び該少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つが、該主磁極層の媒体対向面側の端と該少なくとも1つの近接場光発生層のうちの1つの前記媒体対向面側のヘッド端面に達した先端とにおいてのみ、互いに接触又は近接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  7. 前記少なくとも1つの近接場光発生層が2つの近接場光発生層であって、該2つの近接場光発生層において、前記受光面が前記素子形成面に対して媒体対向面側がそれぞれ上がる及び下がる形で傾いていて、前記媒体対向面側のヘッド端面に達した先端が互いに接するように又は近傍に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  8. 前記電磁コイル素子及び前記近接場光発生層を覆うように前記素子形成面上に形成された被覆層をさらに備えており、該被覆層のうち、前記媒体対向面とは反対側のヘッド端面から入射した光の受光面までの光路を含む領域が、SiO又は少なくとも1つの添加元素が添加されたSiOによって形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドと、該薄膜磁気ヘッドを支持する支持機構と、書き込み用の前記電磁コイル素子、及び該薄膜磁気ヘッドが読み出し用の磁気抵抗効果素子を備えている場合は該磁気抵抗効果素子のための信号線とを備えており、前記薄膜磁気ヘッドの前記媒体対向面とは反対側のヘッド端面から光を入射させるための光ファイバをさらに備えていることを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
  10. 請求項9に記載のヘッドジンバルアセンブリを少なくとも1つ備えており、少なくとも1つの磁気ディスクと、前記光ファイバに光を供給するための光源と、該少なくとも1つの磁気ディスクに対して前記薄膜磁気ヘッドが行う書き込み及び読み出し動作を制御するとともに、前記光源の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路とをさらに備えていることを特徴とする磁気ディスク装置。
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