JP2007164901A - 磁気記録媒体用ガラス基板、及び磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用ガラス基板、及び磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】破壊強度を高めることが可能な磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】図1(a)に示すガラス基板1を用意する。ガラス基板1に対して化学強化処理を施すことにより、図1(c)に示すように、表面に化学強化層4が形成されたガラス基板2を作製する。内部には非化学強化層3が存在する。次に、ガラス基板2の主表面を研磨して主表面の化学強化層を薄くする。これにより、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれて、破壊強度が高くなる。
【選択図】図1

Description

この発明は、磁気ディスク記録装置の基板に用いられる磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関し、特に、化学強化処理を施して破壊強度を高めた磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関する。
コンピュータなどに用いられる磁気ディスク記録装置、例えばハードディスクには、アルミニウム合金又はガラスのディスクが基板として用いられている。この基板上に金属磁気薄膜が形成され、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することにより情報が記録される。
磁気記録媒体用の基板として、従来は、主にアルミニウム合金が用いられていた。しかし、近年はノート型パソコンなどの携帯できるパソコンにも磁気ディスク記録装置が採用されており、また、磁気ディスク記録装置の応答速度を高めるために、磁気記録媒体を10000[rpm]以上で高速回転させる必要がある。従って、高強度な磁気記録媒体用の基板が必要とされてきており、これらの必要性を満たすものとしてガラス基板が用いられるようになった。
また、外径が1インチ以下の磁気ディスク記録装置が注目されており、このサイズの磁気ディスク記録装置にはガラス基板が採用されている。
このようなガラス基板においては、0.4[mm]以下の板厚が要求され、さらに、0.25[mm]という薄板化も要求されている。また、さらに高密度な記録を達成するために、垂直磁気記録方式を用いた磁気ディスク記録装置が知られているが、この垂直磁気記録方式を採用した場合、ガラス基板の表面平均粗さRa(JIS B0601の規定による「表面粗さ」の算術平均粗さRa)は、Ra≦0.2[nm]が要求される。
従来からガラス基板として、いわゆる結晶化ガラス基板又は化学強化ガラス基板が用いられてきた。しかしながら、上記の表面平均粗さRaの要求を満たすことは結晶化ガラス基板では困難であるため、結晶相が析出しないアモルファス相基板が必要になるが、アモルファス相のみからなるガラス基板では十分な破壊強度を保てない。そこで、従来においては、ガラス基板に化学強化処理を施して破壊強度を高めていた(例えば特許文献1)。
特開2003−157522号公報
化学強化処理を施すことによりガラス基板の表面層には圧縮応力が発生し、化学強化ガラス基板となる。ここで、化学強化処理が施された層を化学強化層(圧縮応力層)と称し、化学強化処理が施されていない層を非化学強化層(引張り応力層)と称することにする。化学強化処理を施してガラス基板の破壊強度を高めるためには、化学強化層における圧縮応力と、ガラス基板内部の非化学強化層における引張り応力とのバランスが問題になる。
ガラス基板の厚さが0.4[mm]以下になって薄板化してくると、非化学強化層の厚さに対する化学強化層の厚さの比率が大きくなる。このように化学強化層の厚さの比率が大きくなると、非化学強化層に起因するガラス基板内部の引張り応力が小さくなるため、化学強化層に起因する圧縮応力とのバランスがとれなくなってくる。このようにガラス基板内における圧縮応力と引張り応力とのバランスが悪くなると、十分な強度が得られない問題があった。
例えば、薄型のガラス基板に磁性膜を成膜する前にガラス基板を洗浄する洗浄工程や、スパッタ工程などにおいて、ガラス基板が破損してしまう問題があった。これは、化学強化処理を施すことにより発生した圧縮応力と、非化学強化層に起因する引張り応力とのバランスが悪くなることが原因であると考えられる。
この発明は上記の問題を解決するものであり、化学強化処理を施したガラス基板であっても、内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスをとることで、破壊強度を高めることが可能な磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
この出願に係る発明者は、化学強化処理を施すことによってガラス基板に形成される化学強化層(圧縮応力層)と、非化学強化層(引張り応力層)とのバランスに着目してこの発明を成し得たものである。つまり、化学強化処理によって発生する圧縮応力と、非化学強化層による引張り応力とのバランスを図ることにより、ガラス基板の破壊強度を高めることができることを見出した。特に、ガラス基板の主表面の圧縮応力が大きくなるとガラス基板が破損することに着目し、主表面の圧縮応力を小さくすることで、圧縮応力と引張り応力とのバランスをとり、ガラス基板の破壊強度を高めることにした。
ガラス基板の主表面の圧縮応力を小さくするためには、主表面に化学強化層を薄く形成する必要があるが、小型のガラス基板、特に薄型のガラス基板の場合、主表面の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれるように化学強化層を薄く形成することは製造上、非常に困難である。このように、特に薄型のガラス基板においては、主表面の圧縮応力と引張り応力とのバランスをコントロールすることは非常に困難であった。
そこで、この出願に係る発明者は、ガラス基板に対して化学強化処理を行った後、主表面の圧縮応力を小さくするために主表面の化学強化層を研磨した。これにより、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれたと考えられ、外力による破損を抑制することができた。つまり、主表面に形成された化学強化層を研磨することにより、端面に形成された化学強化層の厚さを、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも厚くすることができ、その結果、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスが取れたと考えられ、破壊強度を高めることができた。
さらに、化学強化処理後にガラス基板の主表面の化学強化層を研磨した後、再び、化学強化処理を行った。これにより、ガラス基板の主表面にも化学強化層が形成されるが、主表面は一度、研磨されているため、端面には主表面に形成された化学強化層の厚さよりも厚い化学強化層が形成されることになる。これにより、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれたと考えられ、破壊強度をさらに高めることができた。つまり、化学強化処理、主表面の化学強化層の研磨、及び再度の化学強化処理を実施することにより、端面に形成された化学強化層の厚さを、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも厚くすることができ、その結果、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれたと考えられ、破壊強度をさらに高めることができた。
なお、この発明のガラス基板には硼珪酸ガラス又はアルミノシリケートガラスが用いられるが、特にそれらの材料に限定されるものではなく、化学強化処理が可能なガラス基板であれば構わない。
以下に、この発明の具体的な態様を示す。
この発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記表面から内部に向けて形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd2との比率(d1/d2)が0.15以下であることを特徴とする。
さらに、この発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)が0.75以下であることを特徴とする。
また、この発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、前記表面を研磨することにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd2との比率(d1/d2)を0.15以下にする第2の工程と、を含むことを特徴とする。
また、この発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、前記表面を研磨することにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)を0.75以下にする第2の工程と、を含むことを特徴とする。
さらに、この発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、前記表面に形成された化学強化層を研磨する第2の工程と、前記研磨後のガラス基板に対して化学強化処理を施す第3の工程と、を含むことを特徴とする。
上記第3の工程では、前記化学強化処理を施すことにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd3との比率(d1/d2)を、0.15以下にすることが望ましい。
また、上記第3の工程では、前記化学強化処理を施すことにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)を0.75以下にすることが望ましい。
この発明によると、圧縮応力と引張り効力とのバランスがとれるため、化学強化処理が施された薄型のガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
この出願に係る発明者は、化学強化処理によってガラス基板に発生する圧縮応力と、非化学強化層による引張り応力とのバランスを図ることにより、ガラス基板の破壊強度を高めることができることを見出した。特に、小型で薄型のガラス基板の主表面の圧縮応力が大きくなるとガラス基板が破損することに着目した。
そこで、薄型のガラス基板に対して化学強化処理を施した後、主表面の化学強化層を研磨し、主表面に形成された化学強化層の厚さと、端面に形成された化学強化層の厚さとのバランスを図ることにより、ガラス基板の圧縮応力と引張り応力とのバランスをとって、ガラス基板の破壊強度を高めることに成功した(第1の実施形態に相当)。
また、主表面の化学強化層を研磨した後、再び化学強化処理を施して、主表面に形成された化学強化層の厚さと、端面に形成された化学強化層の厚さとのバランスを図ることにより、ガラス基板の圧縮応力と引張り応力とのバランスをとって、ガラス基板の破壊強度を高めることに成功した(第2の実施形態に相当)。
以下、この発明の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法について説明する。
[第1の実施の形態]
まず、この発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板について図1を参照しつつ説明する。図1はこの発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を説明するための図であり、図1(a)はガラス基板の斜視図、図1(b)から図1(d)は図1(a)のA−A断面図である。なお、この実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板は円盤状の形状を有し、ハードディスクなどの磁気記録媒体の基板として用いられる。
図1(a)の斜視図に示すように、まず、中央に孔が開いたガラス基板1(穴開きブランクス材と称する)を用意する。例えば、外径が1インチ程度のガラス基板を用意する。このガラス基板1は、図1(b)の断面図に示すように、主表面1a、内周端面1b及び外周端面1cを有する。
このガラス基板1に対して化学強化処理を施すことにより、図1(c)に示すように、表面に化学強化層(圧縮応力層)4が形成されたガラス基板2を作製する。このガラス基板2は、内部に非化学強化層(引張り応力層)3が存在し、その周りが化学強化されて化学強化層(圧縮応力層)4が形成されている。
次に、このガラス基板2の主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)を研磨することにより、図1(d)に示すように、化学強化層6が形成されたガラス基板5を作製する。ここでは、この研磨工程により主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)を完全に除去せずに、主表面に化学強化層(圧縮応力層)を残存させる。ガラス基板2の主表面のみを研磨し、内周端面及び外周端面を研磨しないため、内周端面及び外周端面に形成されている化学強化層の厚さは、主表面に残存している化学強化層(圧縮応力層)の厚さよりも厚くなる。
ここで、図1(d)に示すように、主表面に形成された化学強化層の厚さを厚さd1とし、ガラス基板5全体の厚さを厚さd2とし、内周端面又は外周端面に形成された化学強化層の厚さを厚さd3とすると、以下に示す式(1)の関係が成立する。
式(1)
端面に形成された化学強化層の厚さd3>主表面に形成された化学強化層の厚さd1
このガラス基板5において、主表面に形成された化学強化層の厚さd1と、ガラス基板5全体の厚さd2とが、d1/d2≦0.15の関係を満たすことが好ましい。この範囲内においては、化学強化層(圧縮応力層)の厚さと非化学強化層(引張り応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれるため、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
また、主表面に形成された化学強化層の厚さd1と、端面に形成された化学強化層の厚さd3とが、d1/d3≦0.75の関係を満たすことが好ましい。この範囲内に置いては、主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さと端面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれるため、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
なお、上記研磨工程においては、このガラス基板2の主表面を研磨して主表面の化学強化層(圧縮応力層)を完全に除去することにより、非化学強化層を主表面から露出させても良い。この場合、ガラス基板の内周端面及びが外周端面のみに化学強化層(圧縮応力層)が残存することになる。このように主表面の化学強化層を完全に除去しても、端面に形成された化学強化層によってガラス基板の破壊強度を高めることができる。
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2の実施の形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について図2を参照しつつ説明する。図2は、この発明の第2の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を説明するための図である。
上述した第1の実施形態に係る製造方法と同様に、図2(a)に示すガラス基板1を用意する。このガラス基板1に対して化学強化処理を施すことにより、図2(b)に示すガラス基板2を作製する。このガラス基板2は、内部に非化学強化層3が存在し、その周りが化学強化されて化学強化層4が形成されている。
次に、このガラス基板2の主表面に形成された化学強化層を研磨することにより、図2(c)に示すように、化学強化層6が形成されたガラス基板5を作製する。
そして、研磨工程後のガラス基板5に対して再び化学強化処理を施して、図2(d)に示すガラス基板7を作製する。このガラス基板7は、内部に非化学強化層(引張り応力層)8が存在し、その周りが化学強化されて化学強化層(圧縮応力層)9が形成されている。上記研磨工程で主表面の化学強化層が研磨されているため、内周端面及び外周端面に形成されている化学強化層の厚さは、主表面に形成されている化学強化層の厚さよりも厚くなる。
ここで、図2(d)に示すように、主表面に形成された化学強化層の厚さを厚さd1とし、ガラス基板7全体の厚さを厚さd2とし、内周端面又は外周端面に形成された化学強化層の厚さを厚さd3とすると、以下に示す式(2)の関係が成立する。
式(2)
端面に形成された化学強化層の厚さd3>主表面に形成された化学強化層の厚さd1
このガラス基板7において、主表面に形成された化学強化層の厚さd1と、ガラス基板7全体の厚さd2とが、d1/d2≦0.15の関係を満たすことが好ましい。この範囲内においては、化学強化層(圧縮応力層)の厚さと非化学強化層(引張り応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれるため、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
また、主表面に形成された化学強化層の厚さd1と、端面に形成された化学強化層の厚さd3とが、d1/d3≦0.75の関係を満たすことが好ましい。この範囲内に置いては、主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さと端面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれるため、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
なお、上記研磨工程においては、このガラス基板2の主表面を研磨して主表面の化学強化層(圧縮応力層)を完全に除去することにより、非化学強化層を主表面から露出させても良い。この場合、ガラス基板の内周端面及びが外周端面のみに化学強化層(圧縮応力層)が残存することになる。そして、化学強化層を完全に除去した後に、再び化学強化処理を施すことにより、主表面に化学強化層(圧縮応力層)を形成する。このような処理を行っても、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれて、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
[実施例]
次に、この発明の具体的な実施例について説明する。まず、この実施例に用いられるガラス基板ついて説明する。
<ガラス基板の種類>
この実施例に係るガラス基板として、例えば、アルミノシリケートガラス又は硼珪酸ガラスが用いられるが、これらに限定されずに化学強化処理が可能なガラスを用いることができる。この実施例では、以下に示すガラス基板を用いた。
アルミノシリケートガラス:石塚ガラス製IG−93
硼珪酸ガラス:コニカミノルタオプト製MEL−3
次に、この実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について図3を参照しつつ説明する。図3は、この発明の具体的な実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を順番に示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、研削・研磨工程が施される前段階の半製品のガラス基板(穴開きブランクス材)を作製する(ステップS01)。次に、その穴開きブランクス材を研削加工し、研磨前(Ready To Polish:RTP)のガラス基板(以下、RTPガラス基板と称する)を作製する(ステップS02)。その後、RTPガラス基板に対して第1の化学強化処理を施す(ステップS03)。第1の化学強化処理後、ガラス基板の主表面を研磨して磁気記録媒体用ガラス基板を作製する(ステップS04)。その後、磁気記録媒体用ガラス基板を洗浄する(ステップS05)。
さらに、再び化学強化処理を行う場合は、ステップS04で研磨した後のガラス基板に対して、第2の化学強化処理を施して磁気記録媒体用ガラス基板を作製する(ステップS06)。以下、各工程における具体的な処理内容を説明する。
<ステップS01:穴開きブランクス材の作製工程>
まず、ガラス素材を溶融し(ガラス溶融工程)、溶融したガラスを平面形状の金型に流し込み、その金型で溶融ガラスを挟むことによりプレス成形し、円盤状のガラス基板を作製する(プレス形成工程)。このプレス成形工程により作製され、以下に示す研削・研磨工程が施される前段階の半製品のガラス基板を「ブランクス材」と称する。
このブランクス材の中央に内径6[mm]の穴をダイヤモンドコアドリルで開ける。このプロセスを経て、外径29[mm]、内径6[mm]のドーナツ状の小型基板用穴開きブランクス材を得る。
<ステップS02:研削加工、RTPガラス基板の作製工程>
上記ステップS01で作製された穴開きブランクス材の内径と外径とを同時に加工できる加工装置にて、外径27.4[mm]、内径7[mm]に加工する。その後、さらにダイヤモンドペレットを貼り付けたプレートを保持した両面研磨機にて、厚さが0.42[mm]になるまで穴開きブランクス材を研削加工する。この研削加工までが終了したガラス基板がRTPガラス基板と称される。
<ステップS03:第1の化学強化処理の工程>
硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとを混合した混合液(溶融塩)を用いて、上記RTPガラス基板に対して化学強化処理を行う。以下、混合液(溶融塩)の混合比率と温度を示す。
混合液(溶融塩):硝酸ナトリウムと硝酸カリウムを3対1の重量比率で混合した。
混合液(溶融塩)の温度:380℃
この380℃の混合液(溶融塩)に上記RTPガラス基板を所定時間、浸漬することにより、化学強化層(圧縮応力層)を形成した。化学強化処理を施すことにより、ナトリウムイオンとカリウムイオンとがガラス内部に拡散し、ガラス基板中のリチウムイオンと交換(イオン交換)する。このイオン交換により、原子半径の差からガラス基板表面に圧縮応力が発生する。
混合液(溶融塩)に浸漬する時間によって、ガラス基板に形成される化学強化層の厚さが変わる。浸漬した時間については、下記の実施例1から実施例4にて説明する。
<ステップS04:研磨処理の工程>
次に、上記第1の化学強化処理が終了したガラス基板を研磨する。この研磨では、両面研磨機を用いる。この研磨処理の工程では、2回に分けて研磨を行う。以下、第1の研磨処理と第2の研磨処理の条件を説明する。
(第1の研磨処理の条件)
研磨機として、スピードファム社製の9Bタイプの研磨機を用いた。1回あたりの処理枚数は150枚である。研磨機の上下のプレートには発泡ポリウレタンからなる研磨布(ロデール製MHC14)が貼られている。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする研磨材(三井金属製E−21)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
圧力150[kg/cm]、回転数20[rpm]、研磨時間40分程度の研磨加工条件で、上記研磨スラリーを循環させながら両面研磨機にて、第1の化学強化処理が終了したガラス基板を研磨した。ガラス基板を研磨することで、片面で約15[μm]、両面合わせて約30[μm]を研磨した。
(第2の研磨処理の条件)
研磨機は、上記第1の研磨処理で用いた研磨機(スピードファム社製の9Bタイプの研磨機)を用いた。カネボウ製のスエード研磨布を上下のプレートに接着させて使用した。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする微細な研磨材(昭和電工製V2104)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
圧力80[g/cm]、回転数50[rpm]、研磨時間10分程度の研磨加工条件で、上記研磨スラリーを循環させながら両面研磨機にて、第1の研磨処理が終了したガラス基板を研磨した。ガラス基板を研磨することで、片面で約2[μm]、両面合わせて約4[μm]を研磨した。
このステップS04における研磨処理の工程で、第1の研磨処理及び第2の研磨処理を実施することにより、ガラス基板の厚さを約0.385[mm]とした。
この研磨工程までが、上述した第1の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法に相当する。ここまでの処理により製造されたガラス基板については、後述する実施例1から実施例3で説明する。
<ステップS05:洗浄の工程>
次に、研磨処理後のガラス基板を洗浄する。ここでは、PVA製のスポンジブラシでスクラブ洗浄を行い、その後、超音波浸漬槽内で洗剤を用いて洗浄する。そして、IPAの蒸気中で洗浄後のガラス基板を乾燥する。
<ステップS06:第2の化学強化処理の工程>
次に、硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとを混合した混合液(溶融塩)を用いて、再び、化学強化処理を行う。この第2の化学強化処理の条件は、上記第1の化学強化処理の条件と同じである。
この第2の化学強化処理までが、上述した第2の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法に相当する。ここまでの処理により製造されたガラス基板については、後述する実施例4で説明する。
次に、ガラス基板に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さの測定、及びガラス基板の破壊強度の評価方法について説明する。
<化学強化層の厚さの測定>
ガラス基板を分割し、ガラス基板の断面を偏光顕微鏡で観察すると、内部応力の差を着色度で観測できる。また、断面を深さ方向にEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)でイオン分析すると、ナトリウムとカリウムのイオン分布を定量的に評価することができる。ナトリウムイオン濃度は、最表面から内部に向かって次第に低下するが、ガラス組成に含有されるベースにまで減少するとそれ以上は減少しない。表面からこの一定値に至った厚さを化学強化層の厚さと規定する。
<ガラス基板の破壊強度の評価>
一般的には、円冠曲げ試験、落下試験などにより破壊強度を評価することができるが、テクスチャー工程で発生する応力をそれらの試験で再現することは困難である。そこで、実際にテクスチャー工程にガラス基板を投入して、ガラス基板の破壊比率で破壊強度を評価した。また、破壊の発生頻度がそれほど高くないため、1回の評価で、テクスチャー加工に1000枚のガラス基板を投入し、破壊されたガラス基板の枚数をカウントした。破壊比率は、1000枚のガラス基板に対する破壊されたガラス基板の枚数の比率で定義される。例えば、1000枚のガラス基板のうち、100枚のガラス基板が破壊された場合、破壊比率は、(100/1000)×100=10[%]となる。
ここで、テクスチャー工程について簡単に説明する。
ガラス基板表面に「テクスチャー」と呼ばれる円周状の微細な溝を形成し、磁気ヘッドの低浮上化と電磁変換特性を改善する方法が採られている。このテクスチャー加工を行うことにより、磁気記録媒体上を磁気ヘッドが浮上してシークするときに、磁気記録媒体と磁気ヘッドとが接触し摩擦するのを防止し、また、面内での磁化方向を記録方向である円周方向に配向させることができる。円周方向に配向させることにより、いわゆる「異方性媒体」として高密度記録が可能となる。
テクスチャー加工は、周知の方法で行われる。具体的には、ガラス基板の表面にダイヤモンドスラリーを滴下しながらテープ部材をガラス基板の表面に摺接することにより行われる、テクスチャー加工を行う装置は特に限定されず、いわゆるテクスチャーマシンが使用される。本発明の実施例においてはEDC社製1800Aタイプのマシンを使用した。
上述した製造方法により作製されたガラス基板とその評価について説明する。
(実施例1)
この実施例1は、上記の第1の実施形態に係る製造方法に相当する。上述したステップS01及びステップS02により作製された、厚さが0.42[mm]のRTPガラス基板をステップS03にて化学強化処理を施した(第1の化学強化処理)。混合液(溶融塩)に浸漬した時間は15分である。この化学強化処理により形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さを以下に示す。
IG−93:顕微鏡法で0.03[mm]、EPMA法で0.05[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:顕微鏡法で0.015[mm]、EPMA法で0.035[mm]の化学強化層が確認された。
そして、上述したステップS04にてガラス基板の主表面に形成された化学強化層を研磨した。この研磨工程後のガラス基板の主表面に残存する化学強化層の厚さd1を以下に示す。なお、ステップS04における研磨により、ガラス基板全体の厚さd2は0.385[mm]となった。
IG−93:EPMA法でd1=0.03[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd1=0.015[mm]の化学強化層が確認された。
また、内周端面及び外周端面に形成されている化学強化層の厚さd3を以下に示す。
IG−93:EPMA法でd3=0.05[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd3=0.035[mm]の化学強化層が確認された。
端面は研磨されていないため、化学強化処理後の厚さと等しくなる。従って、端面の化学強化層の厚さd3は、主表面の化学強化層の厚さd1よりも厚くなる(d3>d1)。
以下に、各ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3を示す。なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。
IG−93:d1/d2=0.03/0.385=0.078
d1/d3=0.03/0.05=0.6
MEL−3:d1/d2=0.015/0.385=0.039
d1/d3=0.015/0.035=0.43
このガラス基板を、テクスチャー加工に投入して破壊されたガラス基板の枚数をカウントした。その結果、IG−93、MEL−3ともに破壊は発生せず、破壊比率は0[%]となった。従って、ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3が上記の値の場合は、ガラス基板の破壊強度が高くなることが確認された。
(実施例2)
この実施例2は、上記第1の実施形態に係る製造方法に相当する。実施例1と同様に、厚さが0.42[mm]のRTPガラス基板をステップS03にて化学強化処理を施した(第1の化学強化処理)。混合液(溶融塩)に浸漬した時間は45分である。この化学強化処理により形成された化学強化層の厚さを以下に示す。
IG−93:EPMA法で0.08[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法で0.05[mm]の化学強化層が確認された。
そして、上述したステップS04にてガラス基板の主表面に形成された化学強化層を研磨した。この研磨工程後のガラス基板の主表面に残存する化学強化層の厚さd1を以下に示す。なお、ステップS04における研磨により、ガラス基板全体の厚さd2は0.385[mm]となった。
IG−93:EPMA法でd1=0.06[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd1=0.03[mm]の化学強化層が確認された。
また、内周端面及び外周端面に形成されている化学強化層の厚さd3を以下に示す。
IG−93:EPMA法でd3=0.08[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd3=0.05[mm]の化学強化層が確認された。
端面は研磨されていないため、化学強化処理後の厚さと等しくなる。従って、端面の化学強化層の厚さd3は、主表面の化学強化層の厚さd1よりも厚くなる(d3>d1)。
以下に、各ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3を示す。なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。
IG−93:d1/d2=0.06/0.385=0.156
d1/d3=0.06/0.08=0.75
MEL−3:d1/d2=0.03/0.385=0.078
d1/d3=0.03/0.05=0.6
このガラス基板を、テクスチャー加工に投入して破壊されたガラス基板の枚数をカウントした。以下にその結果を示す。
IG−93:破壊された枚数は1枚、破壊比率は0.1%
MEL−3:破壊された枚数は0枚、破壊比率は0%
このように、実施例2に係る製造方法によると、ガラス基板の破壊強度を高めることができた。従って、ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3が上記の値の場合は、ガラス基板の破壊強度が高くなることが確認された。
(実施例3)
この実施例3は、上記第1の実施形態に係る製造方法に相当する。上述したステップS01及びステップS02により作製された、厚さが0.42[mm]のRTPガラス基板をステップS03にて化学強化処理を施した(第1の化学強化処理)。混合液(溶融塩)に浸漬した時間は10分である。この化学強化処理により形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さを以下に示す。なお、この実施例では、MEL−3のみを用いた。
MEL−3:EPMA法で0.015[mm]の化学強化層が確認された。
そして、上述したステップS04にてガラス基板の主表面に形成された化学強化層を研磨した。この研磨工程では、片面で0.02[mm]を研磨し、主表面に形成された化学強化層を全て除去した。従って、研磨工程後のガラス基板の主表面に残存する化学強化層の厚さd1は0[mm]となる。また、ステップS04における研磨により、ガラス基板全体の厚さd2は0.385[mm]となった。
以下に、d1/d2、及びd1/d3を示す。d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。なお、ガラス基板の内周端面及び外周端面は研磨されていないため、内周端面及び外周端面に形成された化学強化層の厚さd3は0.015[mm]となる。
MEL−3:d1/d2=0/0.385=0
d1/d3=0/0.015=0
このガラス基板を、テクスチャー加工に投入して破壊されたガラス基板の枚数をカウントした。以下にその結果を示す。
MEL−3:破壊された枚数は1枚、破壊比率は0.1%
このように、実施例3に係る製造方法によると、ガラス基板の破壊強度を高めることができた。
以上のように、実施例1から実施例3に係る方法によると、ガラス基板の破壊を抑制することが可能となる。これは、主表面の化学強化層を研磨して主表面の化学強化層を薄くすることにより、主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さと、非化学強化層(引張り応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれたため、破壊強度が高くなったと考えられる。また、端面に形成された化学強化層の厚さが、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも厚くなるため、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれて、破壊強度が高くなったと考えられる。
(実施例4)
この実施例4は、上記第2の実施形態に係る製造方法に相当する。この実施例4では、ステップS06にて第2の化学強化処理を施したガラス基板について説明する。実施例1と同様に、ステップS01及びステップS02により作製された、厚さが0.42[mm]のRTPガラス基板をステップS03にて化学強化処理を施した(第1の化学強化処理)。混合液(溶融塩)に浸漬した時間は15分である。従って、ガラス基板に形成された化学強化層の厚さは、実施例1と同じになる。そして、上述したステップS04にてガラス基板の主表面に形成された化学強化層を研磨した。この研磨工程後のガラス基板の化学強化層の厚さも、実施例1と同じになる。なお、ステップS04における研磨により、ガラス基板全体の厚さd2は0.385[mm]となった。
そして、上述したステップS05の洗浄後、ステップS06にて再び化学強化処理を行った(第2の化学強化処理)。この第2の化学強化処理においても、混合液(溶融塩)に浸漬した時間は15分である。ここまでの処理によりガラス基板に形成された化学強化層の厚さd1を以下に示す。
IG−93:EPMA法でd1=0.045[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd1=0.03[mm]の化学強化層が確認された。
また、内周端面及び外周端面に形成されている化学強化層の厚さd3を以下に示す。
IG−93:EPMA法でd3=0.095[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:EPMA法でd3=0.065[mm]の化学強化層が確認された。
端面は研磨されていないため、端面の化学強化層の厚さd3は、主表面の化学強化層の厚さd1よりも厚くなる(d3>d1)。
以下に、各ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3を示す。なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。
IG−93:d1/d2=0.045/0.385=0.117
d1/d3=0.045/0.095=0.47
MEL−3:d1/d2=0.03/0.385=0.078
d1/d3=0.03/0.065=0.46
このガラス基板を、テクスチャー加工に投入して破壊されたガラス基板の枚数をカウントした。その結果、IG−93、MEL−3ともに破壊は発生しなかった。つまり、破壊比率は0[%]となった。従って、ガラス基板のd1/d2、及びd1/d3が上記の値の場合は、ガラス基板の破壊強度が高くなることが確認された。
以上のように、実施例4に係る方法によると、ガラス基板の破壊を抑制することが可能となる。これは、主表面の化学強化層を研磨して薄くし、その後、再び化学強化処理を施すことにより、主表面に形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さと、非化学強化層(引張り応力層)の厚さとのバランスがとれて、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれたため、破壊強度が高くなったと考えられる。また、端面に形成された化学強化層の厚さが、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも厚くなるため、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれて、破壊強度が高くなったと考えられる。
[比較例]
次に、この発明の実施例に対する比較例として、従来技術に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について図4を参照しつつ説明する。図4は、この発明の実施例に対する比較例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を順番に示すフローチャートである。
図4に示すように、従来技術に係る方法においては、穴開きブランクス材を作製し(ステップS01)、その後、研削加工によりRTPガラス基板を作製し(ステップS02)、研磨処理(ステップS04)、洗浄処理(ステップS05)を経て、化学強化処理(ステップS06)を行う。つまり、従来技術に係る方法においては、この発明の実施例における第1の化学強化処理(ステップS03)を行わずに、基板洗浄後に化学強化処理を1回のみ行って化学強化層(圧縮応力層)を形成している。
これに対して、この発明の実施例においては、図3を参照して説明したように、第1の化学強化処理を行ってガラス基板の主表面と端面に化学強化層を形成し、その後、ガラス基板の主表面に形成された化学強化層を研磨している。さらに、その研磨後、第2の化学強化処理を行ってガラス基板の主表面と端面に化学強化層を形成している。
従来技術に係る方法においては、ガラス基板の主表面に形成された化学強化層の厚さと端面に形成された化学強化層の厚さがほぼ等しくなる。一方、この発明の実施例に係る方法では、主表面に形成された化学強化層は研磨されているため、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも端面に形成された化学強化層の厚さの方が厚くなる。
次に、従来技術に係る製造方法により作製されたガラス基板と、その破壊強度の評価について説明する。
(比較例1)
この比較例1では、化学強化処理が施されていないガラス基板について破壊強度の評価を行った。つまり、図4に示すステップS05までの処理により作製されたガラス基板について破壊強度の評価を行った。ステップS04の研磨処理にて、外径27[mm]、内径7[mm]、厚さ0.385[mm]のガラス基板を作製し、ステップS05にて洗浄処理を行った。このガラス基板に対して化学強化処理を行わずに、そのままテクスチャー加工に投入して、破壊されたガラス基板をカウントした。以下に、破壊されたガラス基板の枚数を示す。
IG−93:破壊された枚数は154枚、破壊比率は15.4%
MEL−3:破壊された枚数は74枚、破壊比率は7.4%
このように、化学強化処理が施されていないガラス基板においては、破壊比率が高い。
(比較例2)
この比較例2では、ステップS04の研磨処理にて、外径27[mm]、内径7[mm]、厚さ0.385[mm]のガラス基板を作製し、ステップS05にて洗浄を行い、ステップS06にて化学強化処理を行った。この化学強化処理では、硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとを3対1の重量比率で混合した混合液(溶融塩)を380℃に加熱し、その380℃の混合液(溶融塩)に洗浄後のガラス基板を浸漬した。混合液(溶融塩)に浸漬した時間は100分である。この化学強化処理により形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さを以下に示す。この処理により、主表面に形成された化学強化層の厚さと、端面に形成された化学強化層の厚さとは等しくなる。
IG−93:顕微鏡法で0.12[mm]、EPMA法で0.17[mm]の化学強化層が確認された。
ガラス基板全体の厚さが、0.385[mm]であるため、化学強化された圧縮応力層の厚さは、両面で0.17×2=0.34[mm]となり、非化学強化層による引張り応力層は0.045[mm]しかないことになる。
MEL−3:顕微鏡法で0.08[mm]、EPMA法で0.12[mm]の化学強化層が確認された。
以下に、主表面に形成された化学強化層の厚さd1、ガラス基板全体の厚さd2、及び端面に形成された化学強化層の厚さd3の関係である、d1/d2、及びd1/d3を示す。なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。
IG−93:d1/d2=0.17/0.385=0.442
d1/d3=0.17/0.17=1
MEL−3:d1/d2=0.12/0.385=0.312
d1/d3=0.12/0.12=1
以上のIG−93及びMEL−3をテクスチャー工程に投入し、破壊されたガラス基板をカウントした。以下に、破壊されたガラス基板の枚数を示す。
IG−93:破壊された枚数は35枚、破壊比率は3.5%
MEL−3:破壊された枚数は27枚、破壊比率は2.7%
このように化学強化処理を施すことにより、比較例1よりも破壊比率が低くなっているが、実際の製造工程に耐えうるレベルではない。
(比較例3)
この比較例3では、比較例2と同じ処理を施した。ここでは、化学強化処理において、混合液(溶融塩)に浸漬する時間を15分とした。この化学強化処理により形成された化学強化層(圧縮応力層)の厚さを以下に示す。この処理により、主表面に形成された化学強化層の厚さと、端面に形成された化学強化層の厚さとは等しくなる。
IG−93:顕微鏡法で0.03[mm]、EPMA法で0.05[mm]の化学強化層が確認された。
MEL−3:顕微鏡法で0.015[mm]、EPMA法で0.035[mm]の化学強化層が確認された。
以下に、主表面に形成された化学強化層の厚さd1、ガラス基板全体の厚さd2、及び端面に形成された化学強化層の厚さd3の関係である、d1/d2、及びd1/d3を示す。なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された厚さである。
IG−93:d1/d2=0.05/0.385=0.13
d1/d3=0.05/0.05=1
MEL−3:d1/d2=0.035/0.385=0.091
d1/d3=0.035/0.035=1
以上のIG−93及びMEL−3をテクスチャー工程に投入し、破壊されたガラス基板をカウントした。以下に、破壊されたガラス基板の枚数を示す。
IG−93:破壊された枚数は4枚、破壊比率は0.4%
MEL−3:破壊された枚数は3枚、破壊比率は0.3%
このように比較例2よりも破壊比率が低くなっているが、それでも、破壊されたガラス基板があるため、量産に耐えられるレベルではない。
以上のように、比較例1から比較例3に係る方法によると、厚さが0.385[mm]の薄型のガラス基板では、化学強化処理を行ってもガラス基板が割れてしまうことが判明した。これは、化学強化層(圧縮応力層)の厚さと非化学強化層(引張り応力層)の厚さとのバランスがとれないため、ガラス基板内の圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれずに、破壊強度が低くなったと考えられるからである。
これに対して、実施例1から実施例4に係る方法によると、薄型のガラス基板であっても、ガラス基板の破壊を抑制することが可能となる。この発明の実施例に係る方法では、主表面に形成された化学強化層を1度、研磨し、主表面に形成された化学強化層の厚さよりも端面に形成された化学強化層の厚さを厚くしているため、ガラス基板内部における圧縮応力と引張り応力とのバランスがとれて破壊強度が高くなったと考えられるからである。
上述した実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例3をまとめると、主表面に形成された化学強化層の厚さd1、ガラス基板全体の厚さd2、及び端面に形成された化学強化層d3が以下の関係を満たすことにより、化学強化処理後のガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
d1/d2≦0.15
d1/d3≦0.75
なお、d1及びd3は、EPMA法で確認された値である。
なお、この発明の実施例においては、厚さが0.385[mm]のガラス基板を例にして説明したが、厚さが0.385[mm]以下のガラス基板についても、上記実施例と同じ効果を奏することができる。つまり、0.385[mm]よりも更に薄型化したガラス基板、例えば厚さが0.25[mm]程度のガラス基板であっても、化学強化処理と主表面の化学強化層の研磨を行うことにより、ガラス基板内部の圧縮応力と引張り応力とのバランスをとって、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。また、研磨後に再度の化学強化処理を行うことによっても、圧縮応力と引張り応力とのバランスをとって、ガラス基板の破壊強度を高めることが可能となる。
この発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を説明するための図である。 この発明の第2の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を説明するための図である。 この発明の具体的な実施例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を順番に示すフローチャートである。 この発明の実施例に対する比較例に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を順番に示すフローチャートである。
符号の説明
1、2、5、7 ガラス基板
1a 主表面
1b 内周端面
1c 外周端面
3、8 非化学強化層(引張り応力層)
4、6、9 化学強化層(圧縮応力層)

Claims (7)

  1. 円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
    前記表面から内部に向けて形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd2との比率(d1/d2)が0.15以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
  2. 円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
    前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)が0.75以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
  3. 円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、
    前記表面を研磨することにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd2との比率(d1/d2)を0.15以下にする第2の工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  4. 円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、
    前記表面を研磨することにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)を0.75以下にする第2の工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  5. 円形の表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状のガラス基板に対して化学強化処理を施す第1の工程と、
    前記表面に形成された化学強化層を研磨する第2の工程と、
    前記研磨後のガラス基板に対して化学強化処理を施す第3の工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記第3の工程では、前記化学強化処理を施すことにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記円盤の厚さd3との比率(d1/d2)を、0.15以下にすることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記第3の工程では、前記化学強化処理を施すことにより、前記表面から内部に形成された化学強化層の厚さd1と、前記端面から内部に形成された化学強化層の厚さd3との比率(d1/d3)を0.75以下にすることを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。

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