JP2007163191A - 多層膜反射鏡、多層膜反射鏡を備えた光学系 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X線領域における、真空の屈折率との差が相対的に大きい屈折率を有する低屈折率の物質による層と、相対的に小さい屈折率を有する高屈折率の物質による層とを、交互に積層して多層膜反射鏡を構成する。このような多層膜反射鏡の基板1と多層膜3との間に、Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかのペアによる層を繰り返して積層した多層構造の応力緩和層2が設けられている構成とする。
【選択図】図1
Description
特に、X線(特に軟X線)領域の波長を有する光に対して用いられる多層膜反射鏡、すなわち、X線レーザー、X線望遠鏡、X線リソグラフィー、X線顕微鏡等の光学系に用いられる多層膜反射鏡に関するものである。
従って、屈折率がほぼ1に近くなりX線はほとんど屈折せず、また、必ずX線を吸収する。
そのため、可視光領域の光のように屈折を利用したレンズはX線波長域の光には使用できない。
そこで、反射を利用した光学系が用いられるが、やはり屈折率が1に近いために反射率は非常に低く、大部分のX線は透過するか或いは吸収されてしまうこととなる。
これは、使用するX線の波長域での屈折率と真空の屈折率(=1)との差が大きい物質と、差の小さい物質とを交互に何層も積層する。
これにより、それらの界面による反射面を多数設け、それぞれの界面からの反射波の位相が一致するように光学的干渉理論に基づいて各層の厚さを調整した多層膜からなる反射鏡を構成する。
このような多層膜反射鏡の代表的なものとして、W(タングステン)/C(炭素)、Mo(モリブデン)/Si(シリコン)等の組み合わせが知られている。そして、これらの多層膜はスパッタリング、真空蒸着、CVD等の薄膜形成技術によって作製される。
最近においては、X線多層膜反射鏡の開発が進むに従って多層膜の評価が行われるようになり、いくつかの材料の組み合わせについて、その実用性が明らかにされつつある。
例えば、前記Mo/Siの組み合わせの多層膜は、123Åというシリコンの吸収端の長波長側で高い反射率を示すため、軟X線縮小投影露光装置の反射光学系に用いる多層膜反射鏡として優れていることが明らかにされている。
これに対処する方法としては、つぎのような方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、基板と多層膜の熱膨張係数差を鑑み、多層膜成膜後の基板変形量を低減又はキャンセルするような熱膨張係数を有する基板材料を利用する方法が提案されている。
また、例えば、特許文献2等では、多層膜ミラー中の重元素層の少なくとも一層をRu、又はRu/Mo/Ru構成にする方法や、多層膜中の界面に粒子線を照射し多層膜応力を低減する方法が提案されている。
また、例えば、特許文献3では、基板上に正反対の応力を有する2つの異なる多層物質の組から構成される多層膜反射鏡を付着させ多層膜成膜後の基板変形量を低減又はキャンセルする方法が提案されている。
また、例えば、特許文献4では、つぎのような応力緩和層を基板と多層膜反射鏡の間に挿入し多層膜成膜後の基板変形量を低減又はキャンセルする方法が提案されている。
この応力緩和層は、多層膜反射鏡と正反対の応力を有するMo/Si多層フィルム、Mo/Be多層フィルム、Mo/Y多層フィルム、Mo2C/Si多層フィルム、Mo/C多層フィルムからなる群から選ばれる多層フィルムにより構成されている。あるいは、Mo/Sr多層フィルム、Mo2C/Be多層フィルム、a−Si、及びa−Cフィルム等の群から選ばれる多層フィルムにより構成されている。
例えば、上記特許文献1の基板の熱膨張係数を選別する方法では、基板材料の種類に制限があるため基板変形量を十分に低減することは困難である。
また、上記特許文献2等の多層膜反射鏡中にRu、もしくはRu/Mo/Ruを挿入する方法や、界面に粒子線を照射する方法等では、多層膜反射鏡の反射率低下が生じやすく、反射鏡面内の膜厚均一性を確保することが困難である。
同様に、上記特許文献3の基板上に正反対の応力を有する2つの異なる多層物質の組から構成される多層膜反射鏡を付着させる方法においても、多層膜反射鏡の反射率低下が生じやすいという問題を有している。
また、上記特許文献4の基板と多層膜反射鏡の間に多層膜反射鏡と正反対の応力を有する応力緩和層を挿入する方法においては、応力緩和層の応力が十分に強くないため応力緩和層の膜厚が多層膜反射鏡部分と同程度もしくはそれ以上必要となる。
そのため、膜表面の粗さが増大し、多層膜反射鏡の表面散乱を増加させ、これにより反射率を低下させるという問題を有している。
また、本発明は、このような多層膜反射鏡を備えた光学系を提供することを目的とするものである。
本発明は、多層膜反射鏡をつぎのように構成したことを特徴としている。
本発明の多層膜反射鏡は、X線領域における、真空の屈折率との差が相対的に大きい屈折率を有する低屈折率の物質による層と、相対的に小さい屈折率を有する高屈折率の物質による層とを、交互に積層した多層膜を基板上に有している。
そして、本発明はこのような多層膜反射鏡において、前記基板と多層膜との間に、Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかのペアによる層を繰り返して積層した多層構造の応力緩和層が設けられていることを特徴としている。
また、本発明の多層膜反射鏡は、前記Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかのペアによる層において、Ruによる層の厚さが1〜3nm、Si及びB4Cによる層の厚さが0.5〜2nmとされていることを特徴としている。
また、本発明の多層膜反射鏡は、前記応力緩和層の多層構造における積層数が、前記低屈折率の物質による層と前記高屈折率の物質による層とを交互に積層した多層膜における積層数より、少ない積層数とされていることを特徴としている。また、本発明の多層膜反射鏡は、前記低屈折率の物質による層が、Moによって構成され、前記高屈折率の物質による層が、Siによって構成されていることを特徴としている。
また、本発明の光学系は、上記したいずれかに記載の多層膜ミラーを備えていることを特徴としている。
それは、Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかの繰り返しからなる多層構造の応力緩和層を、X線用ミラーを構成する多層膜とミラー基板との間に挿入させることで、反射率の低下を抑制することができることを見出したことによる。
このような従来用いられている多層フィルムとしては、例えば、Mo/Si多層フィルム、Mo/Be多層フィルム、Mo/Y多層フィルム、Mo2C/Si多層フィルム、等が挙げられる。あるいは、Mo/C多層フィルム、Mo/Sr多層フィルム、及びMo2C/Be多層フィルム、a−Si、及びa−Cフィルムの群から選ばれる多層フィルム等が挙げられる。
本発明者らにより見出された上記のRu/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかの繰り返しからなる多層構造の応力緩和層は、上記したような強い応力緩和作用を有している。
したがって、任意の応力を有する多層膜ミラーに対して、より少ない層数構成による応力緩和層にて膜応力の緩和もしくはキャンセルが可能となる。
さらに、応力緩和層の総膜厚を比較的薄く抑えることが可能となることから、膜表面の粗さが増大することも無く、多層膜ミラーの反射率低下を抑制することが可能となる。
また、Ruは膜厚1〜3nm、特に膜厚2nmにて引っ張り応力の最大値を示し、Si及びB4Cは膜厚0.5〜2nmにおいて界面粗さの抑制機能を十分に発揮する。
以上のことから、本発明によればRuは1〜3nmの膜厚、Si及びB4Cは0.5〜2nmの膜厚として、最大の応力緩和作用(引っ張り応力)を有する構成とすることができる。
本発明によれば、このような構成を適用することで、X線レーザー、X線望遠鏡、X線リソグラフィー、X線顕微鏡等の光学系に用いられる高反射率の多層膜反射鏡を実現することが可能となる。
図1に、本実施例のX線(特に軟X線)領域の波長を有する光に対して用いられる多層膜反射鏡の概略断面図を示す。
図1において、1はミラー基板、2はRu/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかの繰り返しからなる多層構造の応力緩和層、3はX線レーザー、X線望遠鏡、X線リソグラフィー、X線顕微鏡等の光学系に用いられる高反射率のミラーを構成する多層膜である。本実施例の多層膜反射鏡は、図1に示されるように、ミラー基板1と、応力緩和層2と、ミラーを構成する多層膜3によって形成されている。
ここで、2の応力緩和層において、Ruは1〜3nmの膜厚、Si及びB4Cは0.5〜2nmの膜厚により形成されている。
これは、光梃子装置により、成膜と同時に応力測定を行ったものである。
横軸は膜厚、縦軸は膜応力を示しており、膜応力は正側が引っ張り応力、負側が圧縮応力となる。
Mo、Ru共に成膜初期においては引っ張り応力を強めながら成長してゆく。
膜厚1nmを超えたところから若干挙動が分離し、最大引っ張り応力を示す膜厚2nmにおいてはRuの方が3割ほど強い引っ張り応力を示す。
その後は共に圧縮応力に転じ、ほぼ膜厚に比例して応力を強めていく。
1はミラー基板、6は使用するX線波長における屈折率と真空の屈折率(=1)との差が小さい物質であるSiによる層、7は真空の屈折率(=1)との差が大きい物質であるMoによる層、8はRuである。
上記の構成からなる実施例について以下に詳しく説明する。
軟X線用多層膜ミラーにおいて、Mo/Siによる多層膜が実用的な高反射率を示す物質として知られている。
しかしながら、Mo/Siによる多層膜が十分な反射率を得るためにはMo/Siによるペアを40〜60ペア積層することが必要となり、このような膜構成のもとでは−50〜−200[N/m]と強い圧縮応力を示し、ミラー基板の変形を招くこととなる。
このようなミラー基板の変形を防ぐために、本実施例では図1に示されるように、ミラー基板1とミラーを構成する多層膜3の間に応力緩和層2を挿入し、ミラー基板1の変形の防止を図った。
本実施例において、ミラーを構成する多層膜3として、Mo/Siを1ペアとし、このペアをスパッタ法を用いて交互に繰り返し50ペア積層した多層膜によるミラーを用いた。
この膜応力を測定したところ、膜応力は−97.5[N/m]であった。
一方、応力緩和層2としては、Ru(2nm)/Si(1nm)を1ペアとし、このペアを交互に繰り返し30ペア積層した多層膜による応力緩和層の構成を採用し、この応力緩和層2を、ミラー基板1とミラーを構成する多層膜3との間に挿入した。
RuはMoと比較すると引っ張り応力が強いため、より少ない積層にてミラーを構成する多層膜3の応力をキャンセルすることができることから、上記のように50ペアとした多層膜3対し、これより少ない30ペアのRu(2nm)/Si(1nm)を積層した。
一方、応力緩和層2の挿入による膜粗さの増大は観測されず、ミラーを構成する多層膜3での反射率にも変化はなかった。
MoよりもRuの方が軟X線の吸収率が大きいため、ミラーを構成する多層膜3の材料としてRuを用いると、一般的には反射率の低下を招く。
しかしながら、本実施例では応力緩和層2をミラーを構成する多層膜3の下部に用いたため、Ruの吸収による反射率の低下も生じていない。
尚、上記応力緩和層中のSiは緩和層中のRuによる表面粗さをキャンセルする機能と、Ruの応力成長を初期状態に戻す機能があり、次層のRuは再び引っ張り応力側に成長してゆく。
この機能はSiと同様にB4Cでも現れるため、Siの変わりにB4Cを用いてもよい。
ただし、Si、B4Cともに圧縮応力を持つため、2nm以上の膜厚になるとRuによる引張応力を打ち消してしまい、応力緩和層としての効果がなくなるため注意が必要である。これらの膜厚は、Ruにおいては1〜3nm、Si、B4Cにおいては0.5〜2nmとするのが望ましい。
この比較例では、膜応力−97.5[N/m]を有するMo/Si多層膜の応力を低減するためには、緩和層は42ペアを必要とする。
その際の応力緩和層とミラーを構成する多層膜を含めた膜応力は、−2.1[N/m]であった。
2:応力緩和層
3:ミラーを構成する多層膜
4:Mo単層の応力成長の様子
5:Ru単層の応力成長の様子
6:Si
7:Mo
8:Ru
Claims (5)
- X線領域における、真空の屈折率との差が相対的に大きい屈折率を有する低屈折率の物質による層と、相対的に小さい屈折率を有する高屈折率の物質による層とを、交互に積層した多層膜を基板上に有する多層膜反射鏡において、
前記基板と多層膜との間に、Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかのペアによる層を繰り返して積層した多層構造の応力緩和層が設けられていることを特徴とする多層膜反射鏡。 - 前記Ru/Si、もしくはRu/B4C、のいずれかのペアによる層において、Ruによる層の厚さが1nm以上3nm以下、Si及びB4Cによる層の厚さが0.5nm以上2nm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の多層膜反射鏡。
- 前記応力緩和層の多層構造における膜厚が、前記低屈折率の物質による層と前記高屈折率の物質による層とを交互に積層した多層膜反射鏡部における膜厚より、薄い膜厚とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層膜反射鏡。
- 前記低屈折率の物質による層が、Moによって構成され、
前記高屈折率の物質による層が、Siによって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層膜反射鏡。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層膜反射鏡を備えていることを特徴とする光学系。
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CZ306934B6 (cs) * | 2011-05-17 | 2017-09-27 | Rigaku Innovative Technologies Europe S.R.O. | Rentgenový optický systém |
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- 2005-12-09 JP JP2005356986A patent/JP2007163191A/ja active Pending
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