JP2007161562A - 光学ガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成分が揮発することによる屈折率変動が大きい光学ガラスの製造方法に係り、特に、低いガラス転移温度(Tg)を有する、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】熔融ガラスを流出口から流出させることを含むガラス熔融装置において、流出した熔融ガラスの特性が所望の範囲内となるように予め調節された原料を投入する工程を含む、屈折率(nd)が1.8未満の光学ガラスの製造方法。前記製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が屈折率である光学ガラスの製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】熔融ガラスを流出口から流出させることを含むガラス熔融装置において、流出した熔融ガラスの特性が所望の範囲内となるように予め調節された原料を投入する工程を含む、屈折率(nd)が1.8未満の光学ガラスの製造方法。前記製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が屈折率である光学ガラスの製造方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、成分が揮発することによる屈折率変動が大きい光学ガラスの製造方法に係り、さらに、低いガラス転移温度(Tg)を有する、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスの製造方法に関する。
一般に光学ガラスの製造方法には、回分熔融方式と連続熔融方式がある。光学ガラスの生産量などによっていずれの方式で製造されるかが決まるが、高い生産性や低コストといた観点から、連続熔融方式が回分熔融方式より優れている。連続熔融方式は、一般に熔融部、清澄部、撹拌部の構成からなり、流出したガラスを板状に成形することで光学ガラス製品を得ることができる。
得られた板状成形品、あるいは板状成形品から加工されたリヒートプレス品などはアニール処理することで、歪抜き、及び屈折率調整される。アニール工程は、1)設定された温度まで昇温する工程、2)設定された温度で一定時間保持する工程、3)一定速度で降温する工程からなる。屈折率は2)及び3)の工程で決定される。球面レンズの場合、アニール工程より後の工程ではガラス転移温度(Tg)付近の温度まで昇温する工程がないため、屈折率は変化しない。従って、板状成形品の段階で所望の屈折率範囲から外れてもアニール工程で所望の屈折率に合わせることが可能である。
近年、非球面レンズなどに使用される精密プレス成形用の光学ガラスは、屈伏点(At)〜軟化点(Sp)付近の温度で精密プレス成形され、光学素子として使用される。精密プレス成形後、上述したアニール処理を行う場合、屈折率調整が可能であるため、精密プレス成形用プリフォームの屈折率が所望の範囲から多少外れていても特に問題にならない。しかし、精密プレス成形後のレンズをそのまま光学素子として使用する場合、精密プレス成形用プリフォームの屈折率は所望の範囲内にある必要がある。レンズの屈折率はプレス温度及び精密プレス成形後の降温速度によって決定されるが、降温条件は一定であるので、プリフォーム自体の屈折率がそのまま反映される。
従って、上述した連続熔融方式で製造された光学ガラスの屈折率変動は所定の範囲内にある必要がある。一般的な光学ガラスの屈折率の公差は±0.00050であるが、揮発し易い成分を含む組成を有する光学ガラスでは、安定して公差内の光学ガラスを製造するのは極めて困難である。揮発し易い成分とは、例えば、弗素、リン、リチウム、ホウ素、アンチモン、テルル、タリウム、鉛、ビスマス、セシウムを示す。
特開平11−258401号公報
本発明の目的は、前記背景技術に記載した光学ガラスの製造方法に見られる欠点を解消し、成分が揮発することによる諸特性、特に屈折率変動が大きい光学ガラスの製造方法、さらに、低いガラス転移温度(Tg)を有する、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、ガラス熔融装置において、流出したガラスの屈折率、比重等の諸特性を投入原料、例えばバッチ原料又はカレットに反映させることで、安定して前記諸特性が所望の公差内となる光学ガラスを製造する方法を提供する。
本発明の第1の構成は、熔融ガラスを流出口から流出させることを含むガラス熔融装置において、流出した熔融ガラスの特性が所望の範囲内となるように予め調節された原料を投入する工程を含む、屈折率(nd)が1.8未満の光学ガラスの製造方法である。
本発明の第2の構成は、前記構成1の製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が屈折率である光学ガラスの製造方法である。
本発明の第3の構成は、前記構成2の製造方法において、流出口からガラスを流出させる前の工程で、投入される原料の屈折率が、ガラスの熔融工程において生ずるガラスの屈折率変化分を、成形ガラスに要求される屈折率の値から差し引かれることで決定される工程を含む光学ガラスの製造方法である。
本発明の第4の構成は、前記構成2及び3の製造方法において、流出口から流出したガラスの屈折率を測定し、当該屈折率測定値と成形ガラスに要求される屈折率の差に対応させ、投入される原料の屈折率を連続的又は断続的に調整し、変化させることを含む光学ガラスの製造方法である。
本発明の第5の構成は、前記投入される原料がカレットであって、カレットの屈折率が、カレットに要求される屈折率の値よりも高い屈折率を有するカレットとカレットに要求される屈折率の値よりも低い屈折率を有するカレットとを混合して調整することにより決定されることを含む前期構成2〜4に記載の方法である。
本発明の第6の構成は、前記構成1の製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が比重である光学ガラスの製造方法である。
本発明の第7の構成は、前記構成6の製造方法において、流出口からガラスを流出させる前の工程で、投入される原料の比重が、ガラスの熔融工程において生ずるガラスの比重変化分を、成形ガラスに要求される比重の値から差し引かれることで決定される工程を含む光学ガラスの製造方法である。
本発明の第8の構成は、前記構成6及び7の製造方法において、流出口から流出したガラスの比重を測定し、当該比重測定値と成形ガラスに要求される比重の差に対応させ、投入される原料の比重を連続的又は断続的に調整し、変化させることを含む光学ガラスの製造方法である。
本発明の第9の構成は、前記投入される原料がカレットであって、カレットの比重が、カレットに要求される比重の値よりも高い比重を有するカレットとカレットに要求される比重の値よりも低い比重を有するカレットとを混合して調整することにより決定されることを含む前記構成6〜8の製造方法である。
本発明の第10の構成は、投入される原料がカレットである前記構成1〜4及び6〜8の光学ガラスの製造方法である。
本発明の第11の構成は、熔融ガラス成分に弗素、リチウム、ホウ素、アンチモン、テルル、タリウム、鉛、ビスマス、セシウムのうちの1種または2種以上を含むことを特徴とする前記構成1〜10の製造方法である。
本発明の第12の構成は、光学ガラスが、屈折率(nd)が1.55以下、アッベ数(νd)が65以上の範囲の光学定数を有し、必須成分としてSiO2及びB2O3のいずれか一方又は両方、並びにK2O及びFを含有し、実質的にヒ素成分を含まず、ガラス転移温度(Tg)が540℃以下であることを特徴とする前記構成1〜11のいずれかに記載の製造方法である。
本発明の第13の構成は、前記光学ガラスが
質量%で、必須成分として
SiO2 40〜68%、
B2O3 5〜20%、及び
K2O 2〜25%、及び
F 0.1〜12%
を含有し、
さらに任意成分として
Al2O3 0〜25%、及び/又は
Na2O 0〜20%、及び/又は
Sb2O3 0〜1%
の各成分を含有することを特徴とする前記構成11又は12の製造方法である。
質量%で、必須成分として
SiO2 40〜68%、
B2O3 5〜20%、及び
K2O 2〜25%、及び
F 0.1〜12%
を含有し、
さらに任意成分として
Al2O3 0〜25%、及び/又は
Na2O 0〜20%、及び/又は
Sb2O3 0〜1%
の各成分を含有することを特徴とする前記構成11又は12の製造方法である。
本発明の第14の構成は、光学ガラスが、屈折率(nd)が1.41を超え、アッベ数(νd)が80以上の光学定数を有し、必須成分としてP2O5、AlF3、RF2(RはCa、Sr、Mg、Baからなる群より選択される1種以上)を含有し、実質的にヒ素成分を含まないことを特徴とする前記構成1〜11に記載の製造方法である。
本発明の第15の構成は、前記光学ガラスがフッ化物基準の質量%で、必須成分として
P2O5 2〜24%、及び
AlF3 6〜40%、及び
MgF2 1〜10%、及び
CaF2 5〜23%、及び
SrF2 15〜30%、及び
BaF2 10〜20%、
を含有し、さらに任意成分として
YF3 0〜8%、及び/又は
PF5 0〜6%、及び/又は
LaF2 0〜6%、及び/又は
YbF3 0〜6%、及び/又は
GdF3 0〜6%、及び/又は
ZnF2 0〜6%、及び/又は
LiF、NaF及び/又はKF 0〜6%、及び/又は
Al2O3 0〜7%、及び/又は
B2O3 0〜5%、及び/又は
RO(アルカリ土類金属酸化物)0〜10%、及び/又は
R2O(アルカリ金属酸化物) 0〜5%
の各成分を含有し、上記各成分の合計が、光学ガラスの95〜100の範囲であることを特徴とする前記構成14の製造方法である。
P2O5 2〜24%、及び
AlF3 6〜40%、及び
MgF2 1〜10%、及び
CaF2 5〜23%、及び
SrF2 15〜30%、及び
BaF2 10〜20%、
を含有し、さらに任意成分として
YF3 0〜8%、及び/又は
PF5 0〜6%、及び/又は
LaF2 0〜6%、及び/又は
YbF3 0〜6%、及び/又は
GdF3 0〜6%、及び/又は
ZnF2 0〜6%、及び/又は
LiF、NaF及び/又はKF 0〜6%、及び/又は
Al2O3 0〜7%、及び/又は
B2O3 0〜5%、及び/又は
RO(アルカリ土類金属酸化物)0〜10%、及び/又は
R2O(アルカリ金属酸化物) 0〜5%
の各成分を含有し、上記各成分の合計が、光学ガラスの95〜100の範囲であることを特徴とする前記構成14の製造方法である。
本発明の第16の構成は、前記構成1〜15の製造方法により製造された光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームである。
本発明の第17の構成は、前記構成1〜15の製造方法により製造された光学ガラスを成形してなる光学素子である。
本発明の製造方法によれば、成分が揮発することによる屈折率変動が大きい光学ガラスを安定して製造することができる。さらに、低いガラス転移温度(Tg)を有する、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスを安定して製造することができる。
以下に、本発明の実施の形態を具体的な例を使って説明する。
図1は、光学ガラスを溶解するために連続熔融炉を用いた場合の一例である。光学ガラスを溶解するための連続熔融炉は、通常、原料投入部1、熔融部2、清澄部3、撹拌部4を含む構成である。原料投入部1から熔融部2に原料が投入されて熔融ガラスとなり、清澄部3で脱泡され、撹拌部4で脱泡及び均質化されて、撹拌部4から出た流出パイプ5を通じて流出する。流出したガラスは板状、あるいは滴下によってゴブ形状などに成形されるが、成形形状や成形方法はこれらに限定されるものではない。
図1は、光学ガラスを溶解するために連続熔融炉を用いた場合の一例である。光学ガラスを溶解するための連続熔融炉は、通常、原料投入部1、熔融部2、清澄部3、撹拌部4を含む構成である。原料投入部1から熔融部2に原料が投入されて熔融ガラスとなり、清澄部3で脱泡され、撹拌部4で脱泡及び均質化されて、撹拌部4から出た流出パイプ5を通じて流出する。流出したガラスは板状、あるいは滴下によってゴブ形状などに成形されるが、成形形状や成形方法はこれらに限定されるものではない。
次に光学ガラスの諸特性の調節について説明する。本発明において原料投入部1より投入されるガラスの原料は、主として粉体からなるいわゆるバッチ原料(以下単にバッチとする)、あるいはかかるバッチ原料をガラス化することにより得られたカレット(ガラス屑)、あるいはこれらの混合物のいずれでもよい。
投入する原料としてカレットを使用する場合、屈折率や比重などの目的とする特性を調節するために、所定の特性値を有するカレットを使用することが好ましく、所定の特性値となるように特性値の異なるカレットを混合して使用することがより好ましい。例えば、所定の屈折率を有する熔融ガラスが所望の場合は、前記所定の屈折率よりも低い屈折率を有するカレットと高い屈折率を有するカレットとをそれぞれ少なくとも1種以上使用し、それらを混合して投入することが好ましい。
投入するカレットが2水準の場合、所望の屈折率に対して屈折率の低いカレットと高いカレットを用意し、次式で質量割合を求め、投入する各々のカレットの重量が決定される。
n=n1・x+n2・(1−x)
n:所望の屈折率
n1:所望の屈折率より高いカレットの屈折率
n2:所望の屈折率より低いカレットの屈折率
x:所望の屈折率より高いカレットの質量割合
1−x:所望の屈折率より低いカレットの質量割合
投入するカレットが2水準の場合、所望の屈折率に対して屈折率の低いカレットと高いカレットを用意し、次式で質量割合を求め、投入する各々のカレットの重量が決定される。
n=n1・x+n2・(1−x)
n:所望の屈折率
n1:所望の屈折率より高いカレットの屈折率
n2:所望の屈折率より低いカレットの屈折率
x:所望の屈折率より高いカレットの質量割合
1−x:所望の屈折率より低いカレットの質量割合
投入する原料としてバッチを使用する場合、所望の屈折率より高い屈折率または低い屈折率の組成でバッチを混合し、高屈折率付与に寄与する成分または低屈折率付与に寄与する成分を所望の屈折率になるように連続的あるいは断続的に加えることで所望の屈折率に調節される。また、そのバッチを熔融しガラス化した際に予測される屈折率等が、最終的なガラスに求められる屈折率等よりも高いものと低いものをそれぞれ1種以上混合してもよい。
なお本発明の製法において調節される諸特性とは、屈折率、比重に制限されるものではなく、アッベ数、熱膨張係数、透過率、粘度、化学的耐久性、液相温度等又はこれらの組み合わせを意味する。
ここでいう屈折率とは、Heのd線(波長587.56nm)またはHgのe線(波長546.07nm)での屈折率であることが好ましい。ただし、Hgのi線(波長365.015nm)、Hgのh線(波長404.656nm)、Hgのg線(波長435.835nm)、He−Cdレーザ(波長441.57nm)、CdのF’線(波長479.99nm)、HのF線(波長486.13nm)、NaのD線(波長589.29nm)、He−Neレーザ(波長632.8nm)、CdのC’線(波長643.85nm)、HのC線(波長656.27nm)、Heのr線(波長706.52nm)、KのA’線(波長768.19nm)、Csのs線(波長852.11nm)、Hgのt線(波長1013.98nm)、Hg(波長1128.64nm)、Hg(波長1529.58nm)、Hg(波長1970.09nm)、Hg(波長2325.42nm)の各スペクトル線における屈折率であってもよく、その他の波長における屈折率でも構わない。要は速やかに屈折率を測定できる光源であればよい。
ここでいう屈折率とは、Heのd線(波長587.56nm)またはHgのe線(波長546.07nm)での屈折率であることが好ましい。ただし、Hgのi線(波長365.015nm)、Hgのh線(波長404.656nm)、Hgのg線(波長435.835nm)、He−Cdレーザ(波長441.57nm)、CdのF’線(波長479.99nm)、HのF線(波長486.13nm)、NaのD線(波長589.29nm)、He−Neレーザ(波長632.8nm)、CdのC’線(波長643.85nm)、HのC線(波長656.27nm)、Heのr線(波長706.52nm)、KのA’線(波長768.19nm)、Csのs線(波長852.11nm)、Hgのt線(波長1013.98nm)、Hg(波長1128.64nm)、Hg(波長1529.58nm)、Hg(波長1970.09nm)、Hg(波長2325.42nm)の各スペクトル線における屈折率であってもよく、その他の波長における屈折率でも構わない。要は速やかに屈折率を測定できる光源であればよい。
ガラス中の成分揮発が生じやすい成分、たとえば弗素、リン、鉛等を含むガラスをこのような連続熔融炉で熔解する場合、特定成分の揮発によって流出ガラスの特性は時間とともに大きく変化することがあり、安定した前記諸特性を維持することが困難である。したがってこのような事態が予め経験的に認知されている場合、若しくは予測される場合は、投入する原料の狙いの諸特性を、ガラスの熔融工程において生ずる変化分を加味し、成形ガラスに要求される諸特性の値から差し引かれることで決定されることが好ましい。
また、ガラスの熔融工程において生ずる前記諸特性の変化は、ガラスの熔融段階の初期のみならず、連続的に生じることが多い。かかる場合に前記諸特性の変化分を許容しうる範囲内に留めるためには、流出口から流出したガラスの前記諸特性を測定し、当該諸特性測定値と成形ガラスに要求される諸特性との差に対応させ、投入される原料において調節される諸特性を連続的又は断続的に調整し、変化させることが好ましい。
熔融ガラス成分に弗素、リン、リチウム、ホウ素、アンチモン、テルル、タリウム、鉛、ビスマス、セシウムのうちの1種または2種以上を含む光学ガラスに対して、本発明における製造方法は有効である。より好ましくは、弗素、リン、リチウム、ホウ素、アンチモン、テルル、鉛、ビスマスのうちの1種または2種以上を含む光学ガラス、特に好ましくは弗素、アンチモン、テルル、ビスマスのうちの1種または2種以上を含む光学ガラスに対して有効である。
本発明の方法は、本来光学ガラスに求められる特性、例えば光学特性を制限するものではないが、弗素を含有する低屈折率、低分散の特性を有する光学ガラスの製造において有効な方法であることが今般確認された。
特に、光学ガラスが、屈折率(nd)が1.55以下、アッベ数(νd)が65以上の範囲の光学定数を有し、必須成分としてSiO2及びB2O3のいずれか一方又は両方、並びにK2O及びFを含有し、実質的にヒ素成分を含まず、ガラス転移温度(Tg)が540℃以下であるようなガラスにおいて、その効果が確認された。
具体的には、本発明の製造方法に使用されるガラスは
酸化物基準の質量%で、必須成分として
SiO2 40〜68%、
B2O3 5〜20%、及び
K2O 2〜25%、及び
F 0.1〜12%
を含有し、
さらに任意成分として
Al2O3 0〜25%、及び/又は
Na2O 0〜20%、及び/又は
Sb2O3 0〜1%
の各成分を含有することを特徴とするものであることが好ましい。
酸化物基準の質量%で、必須成分として
SiO2 40〜68%、
B2O3 5〜20%、及び
K2O 2〜25%、及び
F 0.1〜12%
を含有し、
さらに任意成分として
Al2O3 0〜25%、及び/又は
Na2O 0〜20%、及び/又は
Sb2O3 0〜1%
の各成分を含有することを特徴とするものであることが好ましい。
SiO2成分は、本発明の製造方法に適した光学ガラスにおいてガラス形成酸化物成分として欠かすことのできない成分である。しかし、少なすぎると耐失透性が不十分となりやすく、また、化学的耐久性が乏しくなりやすい。多すぎると転移温度(Tg)が高くなりやすいため好ましくない。従って、好ましくは40%、より好ましくは45%、最も好ましくは50%を下限として含有し、好ましくは68%、より好ましくは65%、最も好ましくは63%を上限として含有する。
B2O3成分は、本発明の製造方法に適した光学ガラスにおいて、ガラス形成酸化物成分として作用する成分である。しかし、少なすぎると耐失透性が不十分となりやすく、多すぎると化学的耐久性が悪くなることがある。従って、好ましくは5%、より好ましくは8%、最も好ましくは10%を下限として含有し、好ましくは20%、より好ましくは18%、最も好ましくは16%を上限として含有する。
K2O成分は、修飾酸化物としてガラス化に効果的に作用する成分であり、転移温度(Tg)を下げるのに有効である。しかし、多すぎると化学的耐久性が悪くなりやすく、少なすぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは2%、より好ましくは5%、最も好ましくは10%を下限として含有し、好ましくは25%、より好ましくは23%、最も好ましくは21%を上限として含有する。
Al2O3成分は、ガラスを安定化させ、化学的耐久性を向上させるのに有効な任意に添加しうる成分である。しかし、その量が多すぎると耐失透性が悪くなりやすい。従って、添加する場合は、好ましくは0.05%、より好ましくは0.1%、最も好ましくは0.2%を下限として含有し、好ましくは25%、より好ましくは22%、最も好ましくは19%を上限として含有する。ただし含有しなくとも差し支えない。
Na2O成分は、修飾酸化物としてガラス化に効果的に作用する任意成分であり、転移温度(Tg)を下げるのに有効である。しかし、多すぎると化学的耐久性が悪くなりやすい。従って、好ましくは20%、より好ましくは16%、最も好ましくは14%を上限として含有する。
Sb2O3成分は、ガラス溶融時の脱泡のために添加しうるが、その量は好ましくは1%、より好ましく0.5%、最も好ましくは0.1%を上限として含有できる。
F成分は、ガラスの分散を低くしつつ、転移温度(Tg)を低下させ、耐失透性を向上させるために有効であるが、熔融工程中の屈折率の変動を誘発する不利益がある。本発明の製造方法によればかかる不利益を克服し、ある程度の量までは含有させても歩留まり低下等の不利益は生じにくい。本発明の製造方法に適用できるF成分は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.2%、最も好ましくは0.5%を下限として含有し、好ましくは12%、より好ましくは10%、最も好ましくは9.5%を上限として含有する。
前述のように、本発明の製造方法は、光学ガラスが精密プレス成形に使用される場合に、屈折率の調節に特に有用である。従来の光学ガラスでは研削研磨で最終レンズに仕上げるため、プレス成形品などのレンズプリフォームの段階で屈折率を決定することができた。すなわち、アニール工程において徐冷速度を調節することにより屈折率調節が可能であった。しかし、精密プレス成形はレンズプリフォームをモールドプレス成形する過程で熱が加わるため、レンズプリフォームの屈折率はキャンセルされ、モールドプレス成形における降温速度で屈折率が決定される。従って、屈折率は流出したガラスの段階で所定の公差の範囲内になければならない。
他方、流出したガラスの時間軸に対する屈折率変化が大きいと当該公差から外れ、歩留が大幅に下がり、安定生産できなくなる。従って、本発明による屈折率の調節は安定生産や歩留の向上に非常に有効である。
本発明の方法は、もともと光学ガラスに求められる特性、例えば光学特性を制限するものではないが、比較的大きな異常部分分散性を有する光学ガラスの製造においても有効な方法であることもすでに確認されている。特に、光学ガラスが、屈折率(nd)が1.41を超え、アッベ数(νd)が80以上の範囲の光学定数を有し、必須成分としてP2O5、AlF3、RF2(RはCa、Sr、Mg、Baからなる群より選択される1種以上)を含有し、実質的にヒ素成分を含まないガラスにおいて、その効果が確認されている。
具体的には、本発明の製造方法に使用されるガラスはフッ化物基準の質量%で、
P2O5 2〜24%、及び
AlF3 6〜40%、及び
MgF2 1〜10%、及び
CaF2 5〜23%、及び
SrF2 15〜30%、及び
BaF2 10〜20%、
を含有し、さらに任意成分として
YF3 0〜8%、及び/又は
PF5 0〜6%、及び/又は
LaF2 0〜6%、及び/又は
YbF3 0〜6%、及び/又は
GdF3 0〜6%、及び/又は
ZnF2 0〜6%、及び/又は
LiF、NaF及び/又はKF 0〜6%、及び/又は
Al2O3 0〜7%、及び/又は
B2O3 0〜5%、及び/又は
RO(アルカリ土類金属酸化物)0〜10%、及び/又は
R2O(アルカリ金属酸化物) 0〜5%
の各成分を含有し、但し上記各成分の合計95〜100の範囲の各成分を含有することを特徴とする。
P2O5 2〜24%、及び
AlF3 6〜40%、及び
MgF2 1〜10%、及び
CaF2 5〜23%、及び
SrF2 15〜30%、及び
BaF2 10〜20%、
を含有し、さらに任意成分として
YF3 0〜8%、及び/又は
PF5 0〜6%、及び/又は
LaF2 0〜6%、及び/又は
YbF3 0〜6%、及び/又は
GdF3 0〜6%、及び/又は
ZnF2 0〜6%、及び/又は
LiF、NaF及び/又はKF 0〜6%、及び/又は
Al2O3 0〜7%、及び/又は
B2O3 0〜5%、及び/又は
RO(アルカリ土類金属酸化物)0〜10%、及び/又は
R2O(アルカリ金属酸化物) 0〜5%
の各成分を含有し、但し上記各成分の合計95〜100の範囲の各成分を含有することを特徴とする。
なお、本明細書中のガラスは、種々の金属の燐酸塩、フッ化物、酸化物、及び錯化合物成分を使用して得られるが、得られたガラス組成は単純な金属フッ化物、及び金属酸化物成分のみによって質量%で表したものである。
すなわち本明細書における「フッ化物基準の質量%」とは、本発明のガラスを溶融する際に原料として使用されるフッ化物、例えば金属フッ化物が、ガラスの溶融工程において当該フッ化物中の弗素原子が酸素に置き換えられることなく、フッ化物の形態を維持したままであると仮定した場合のガラス組成の表記である。フッ化物基準の表記において、酸化物で表されている化合物(例えばP2O5)は、原料として酸化物(例えばAl(PO4)3が使用された場合である。
P2O5成分は、ガラス形成に必須の成分であるが、その量が少なすぎると失透傾向が大きくなりやすく、少なすぎると目標とする光学恒数を得にくくなる。したがって、好ましくは2%、より好ましくは2.5%、最も好ましくは3%を下限とし、好ましくは24%、より好ましくは23%、最も好ましくは22%を上限とする。
AlF3成分は、アッベ数を高め、ガラスの失透を防止する効果があるが、その量が少なすぎるとその効果が得にくくなり、その量が多すぎると却って失透性が劣化しやすくなる。よって好ましくは6%、より好ましくは7%、最も好ましくは8%を下限とし、好ましくは40%、より好ましくは30%、最も好ましくは29%を上限とする
MgF2、CaF2、SrF2、及びBaF2の各成分は、ガラスの失透に対する安定性を向上させる効果があるが、その量が少なすぎるとその効果が得にくくなり、その量が多すぎると返って失透性が劣化しやすくなる。よって、MgF2については好ましく1%、より好ましくは1.5%、最も好ましくは2%を下限とし、好ましくは10%、より好ましくは7%、最も好ましくは6%を上限とする。
CaF2については好ましく5%、より好ましくは13%、最も好ましくは15%を下限とし、好ましくは23%、より好ましくは22%、最も好ましくは21%を上限とする。
SrF2については好ましく15%、より好ましくは20.5%、最も好ましくは21%を下限とし、好ましくは30%、より好ましくは29%、最も好ましくは28%を上限とする。
BaF2については好ましく10%、より好ましくは11%、最も好ましくは12%を下限とし、好ましくは20%、より好ましくは19%、最も好ましくは18%を上限とする
下記成分は、本発明のガラスにおいて必須ではないが、光学恒数の調整や溶融性の改善等の為、必要に応じて含有させることが出来る。
YF3成分は、ガラスの失透を防止する効果があるが、その量が多すぎると目標とする光学恒数を得難くなる。したがって好ましくは8%、より好ましくは7.5%、最も好ましくは7%を上限とする。
PF5成分は、ガラスに低分散性を付与する為上記P2O5成分と置換して含有させることができるが、その量が多すぎるとガラスの耐失透性が悪化しやすくなる。したがって好ましくは6%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%を上限とする。
LaF3、YbF3及びGdF3の各成分は、光学恒数の調整に有効であるが、その量が多すぎるとガラスの耐失透性が悪化しやすくなる。したがって好ましくは6%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%を上限とする。
ZnF2成分は、その量が多すぎると失透性が劣化しやすいため、好ましくは6%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%を上限とする。
LiF、NaF及び/又はKF成分は、その量が多すぎると失透性が劣化しやすいため、好ましくは6%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%を上限とする。
LiF、NaF及び/又はKF成分は、その量が多すぎると失透性が劣化しやすいため、好ましくは6%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%を上限とする。
Al2O3成分はガラスの耐久性を保持するのに有効であるが、その量が多すぎると所望の光学恒数が得難くなるため、好ましくは7%、より好ましくは6%、最も好ましくは5%を上限とする。
B2O3は本発明の方法に使用されるガラスに含まれていても問題ないが、過剰に含有すると溶融ガラスの安定性を阻害することがある。したがって好ましくは5%、より好ましくは3%を上限として含有される。ただし含有しなくとも差し支えない。
RO(アルカリ土類金属酸化物)成分、即ちMgO、CaO、SrO及びBaOの各成分は、溶融均質性を促す効果があるが、その量が多すぎると耐失透性を悪化させることがある。したがって、これらの成分の1種または2種以上の合計量は、好ましくは10%、より好ましくは2%、最も好ましくは1.0%を上限とする。
R2O(アルカリ金属酸化物)成分、即ちLi2O、Na2O、K2Oの各成分は、本発明の方法に使用されるガラスに含まれていても問題ないが、過剰に含有すると却って屈折率の変動を大きくするという不利益が生じることがある。したがって、好ましくは、5%、より好ましくは4%を上限として含有することができる。ただし含有しなくとも差し支えない。
RO(アルカリ土類金属酸化物)成分、即ちMgO、CaO、SrO及びBaOの各成分は、溶融均質性を促す効果があるが、その量が多すぎると耐失透性を悪化させることがある。したがって、これらの成分の1種または2種以上の合計量は、好ましくは10%、より好ましくは2%、最も好ましくは1.0%を上限とする。
R2O(アルカリ金属酸化物)成分、即ちLi2O、Na2O、K2Oの各成分は、本発明の方法に使用されるガラスに含まれていても問題ないが、過剰に含有すると却って屈折率の変動を大きくするという不利益が生じることがある。したがって、好ましくは、5%、より好ましくは4%を上限として含有することができる。ただし含有しなくとも差し支えない。
尚、本発明のガラスは、上記成分の他に、B,Ce、Pb及びZr等のフッ化物、及び上記金属元素の塩化物、臭化物、沃化物及び硫酸塩などの1種または2種以上の合計量を5%程度まで含有し得る。
本発明のガラス使用原料としては、H3PO4、各種金属元素の燐酸塩、フッ化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩及びNaPF6やKPF6などの錯化合物等適宜使用することができる。
(本発明の態様1)
図2は上記本発明の一態様についての実施例を表す。光学ガラスとしては、SiO2、B2O3、K2O、Al2O3を主成分とし、揮発成分としてフッ素を含有するガラスを使用した。
図2は上記本発明の一態様についての実施例を表す。光学ガラスとしては、SiO2、B2O3、K2O、Al2O3を主成分とし、揮発成分としてフッ素を含有するガラスを使用した。
図2において、縦軸に屈折率Δnd、横軸に流出開始からの時間経過を示した。Δndは中心となる屈折率の小数第五位を0とした時の屈折率差を示す。中心となる屈折率が1.48700の場合、公差は1.48650〜1.48750となることが好ましく、1.48700を0、1.48650を−50、1.48750を50として表わす。図2では、投入カレットを−70として固定した。
図2において、0〜3.5h及び22.5〜24hにおいて屈折率が公差範囲外となっていることが分かる。3.5〜22.5hでは成分揮発量が定常状態となるため、屈折率の変化量が小さくなるが、成分揮発の影響でカレットとの屈折率差は70となっている。0〜3.5hでは、初期投入カレットが熔融部、清澄部、撹拌部へと移動する過程及び各部が一定量の熔融ガラスになるまでの時間経過があるために、弗素成分の揮発量が多くなり、170まで屈折率が上昇している。弗素成分は低屈折率であるために、揮発が起こるとガラスの屈折率は上昇する。22〜24hでは、カレット投入が終了し、各部のガラス量が少なくなって弗素成分の揮発量が多くなり、急激に屈折率が上昇する。
これを解消するために、本発明では投入カレットを調節して流出ガラスの屈折率を公差範囲内となるようにした。図2と熔解条件などは全て同一とし、投入カレットの屈折率を変えただけの結果を図3に示した。図2の結果を踏まえて、初期投入カレットは−240、流出と同時に投入カレットを−190に変更し、流出から3時間後に投入カレットを−70に変更し、更に流出から18時間後に−240に変更した。23hより後でわずかに屈折率が公差となる−50〜50から外れているが、0〜23hでは流出ガラスの屈折率は公差内に調整されていることが分かった。従って、本発明による製造方法は連続熔解方式の屈折率調整に対して非常に有効であった。
本発明においては投入するカレットの屈折率を適宜変更しているため、組成は一つに定まらない。従って、基準となる組成例を表1に示す。上述した実施態様の基準となる組成は、組成例2に該当する。カレットの屈折率を微調整するには、SiO2含有量を微量増減させることが有効である。
図2、3では操炉条件、すなわち熔解条件や流出量の変更などを行っていないため、定常状態における屈折率変化はほとんどなく、特に屈折率の調整を行う必要はなかった。しかし、操炉条件を変更する場合や流出が数日から数週間に及ぶ場合には成分揮発量が変わり易くなるため、定常状態であっても屈折率の調整が必要となる。その場合には、流出口で取得したガラスを迅速にアニールし、その結果を投入カレットにフィードバックすればよい。例えば、流出口で取得したガラスの屈折率が−20となった場合には、投入カレットの屈折率をその差分だけ、すなわち20高くして投入すればよい。
以上のような製造方法とすることで、屈折率を公差範囲内に安定して維持できるため、屈折率が公差範囲外となることによる歩留低下を防止でき、安定生産が可能となる。
以上のような製造方法とすることで、屈折率を公差範囲内に安定して維持できるため、屈折率が公差範囲外となることによる歩留低下を防止でき、安定生産が可能となる。
また、例示した図における屈折率のアニールの降下速度は−50℃/hとした場合の値を示した。しかし、流出ガラスの屈折率を投入カレットに反映させるにはアニール工程が短縮されるほど屈折率を一定値に維持し易くなるので、アニールの降下速度は更に短くても良い。
(本発明の態様2)
以下、本発明の別の実施態様について説明する。
原料としてAl(PO3)3、AlF3、CaF2、SrF2、MgF2、BaF2、YF3、KHF2を使用して光学ガラス(光学ガラス2)を作成する工程において熔融ガラスの屈折率の変化を測定した。結果を図4及び5に示す。
以下、本発明の別の実施態様について説明する。
原料としてAl(PO3)3、AlF3、CaF2、SrF2、MgF2、BaF2、YF3、KHF2を使用して光学ガラス(光学ガラス2)を作成する工程において熔融ガラスの屈折率の変化を測定した。結果を図4及び5に示す。
図4において、縦軸に屈折率Δnd、横軸に流出開始からの時間経過を示した。Δndは中心となる屈折率の少数第五位を0とした時の屈折率差を示す。中心となる屈折率が1.45000の場合、公差は1.44950〜1.45050となることが好ましく、1.45000を0、1.44950を−50、1.45050を50として表わす。図4では、投入カレットを−200として固定した。
図4において、0〜9hにおいて屈折率が公差範囲外となっていることが分かる。9h以降では成分揮発量が定常状態となるため、屈折率の変化量が小さくなるが、成分揮発の影響でカレットとの屈折率差は200となっている。0〜9hでは、初期投入カレットが熔融部、清澄部、撹拌部へと移動する過程及び各部が一定量の熔融ガラスになるまでの時間経過があるために、弗素成分の揮発量が多くなり、200まで屈折率が上昇している。弗素成分は低屈折率であるために、揮発が起こるとガラスの屈折率は上昇する。21時以降は図示していないが揮発量が定常状態となっても、溶解条件の変動等により揮発状態が変化し易く、一般の酸化物ガラスより屈折率変動が生じ易い。又、カレット投入が終了すると、各部のガラス量が少なくなって弗素成分の揮発量が多くなり、急激に屈折率が上昇する。
これを解消するために、本発明では投入カレットを調節して流出ガラスの屈折率を公差範囲内となるようにした。図4と熔解条件などは全て同一とし、投入カレットの屈折率を変えただけの結果を図5に示した。図4の結果を踏まえて、初期投入カレットは−320、流出と同時に投入カレットを−300に変更し、流出から4時間後に投入カレットを−280に変更し、更に流出から12時間後に−200に変更した。0〜1hはわずかに屈折率が公差となる−50〜50から外れているが、以降の流出ガラスの屈折率は公差内に調整されていることが分かった。従って、本発明による製造方法は特に連続熔解方式の屈折率調整に対して非常に有効であった。
本発明においては投入するカレットの屈折率を適宜変更しているため、組成は一つに定まらない。従って、上述した実施態様の基準となる組成を、表2に示す。カレットの屈折率を微調整するには、AlF3、BaF2、含有量を微量増減させることが有効である。
図4、5では操炉条件、すなわち熔解条件や流出量の変更などを行っていないため、定常状態における屈折率変化はほとんどなく、特に屈折率の調整を行う必要はなかった。しかし、操炉条件を変更する場合や流出が数日から数週間に及ぶ場合には成分揮発量が変わり易くなるため、定常状態であっても屈折率の調整が必要となる。その場合には、流出口で取得したガラスを迅速にアニールし、その結果を投入カレットにフィードバックすればよい。例えば、流出口で取得したガラスの屈折率が−20となった場合には、投入カレットの屈折率をその差分だけ、すなわち20程高くして投入すればよい。
以上のような製造方法とすることで、屈折率を公差範囲内に安定して維持できるため、屈折率が公差範囲外となることによる歩留低下を防止でき、安定生産が可能となる。
以上のような製造方法とすることで、屈折率を公差範囲内に安定して維持できるため、屈折率が公差範囲外となることによる歩留低下を防止でき、安定生産が可能となる。
また、例示した図における屈折率のアニールの降下速度は−50℃/hとした場合の値を示した。しかし、流出ガラスの屈折率を投入カレットに反映させるにはアニール工程が短縮されるほど屈折率を一定値に維持し易くなるので、アニールの降下速度は更に短くても良い。
以上、連続熔融炉に関して記載したが、カレットが連続的に投入されていれば、あるいは断続的であっても炉内に熔融ガラスが残っている状態で投入されていれば、本質的には連続熔融方式である。また、ここで記載した装置構成は代表例であって、これに限定されるものではない。
以上、述べたとおり、本発明の光学ガラスの製造方法は、成分が揮発することによる屈折率変動が大きい光学ガラスの製造方法、特に、低いガラス転移温度(Tg)を有する、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスの製造方法に適しており、産業上非常に有用である。
1 原料投入部
2 熔融部
3 清澄部
4 撹拌部
5 流出パイプ
2 熔融部
3 清澄部
4 撹拌部
5 流出パイプ
Claims (17)
- 熔融ガラスを流出口から流出させることを含むガラス熔融装置において、流出した熔融ガラスの特性が所望の範囲内となるように予め調節された原料を投入する工程を含む、屈折率(nd)が1.8未満の光学ガラスの製造方法。
- 請求項1の製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が屈折率である光学ガラスの製造方法。
- 請求項2の製造方法において流出口からガラスを流出させる前の工程で、投入される原料の屈折率が、ガラスの熔融工程において生ずるガラスの屈折率変化分を、成形ガラスに要求される屈折率の値から差し引かれることで決定される工程を含む光学ガラスの製造方法。
- 請求項2又は3の製造方法において、流出口から流出したガラスの屈折率を測定し、当該屈折率測定値と成形ガラスに要求される屈折率の差に対応させ、投入される原料の屈折率を連続的又は断続的に調整し、変化させることを含む光学ガラスの製造方法。
- 前記投入される原料がカレットであって、カレットの屈折率が、カレットに要求される屈折率の値よりも高い屈折率を有するカレットとカレットに要求される屈折率の値よりも低い屈折率を有するカレットとを混合して調整することにより決定されることを含む請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
- 請求項1の製造方法において、調節される熔融ガラスの特性が比重である光学ガラスの製造方法。
- 請求項6の製造方法において、流出口からガラスを流出させる前の工程で、投入される原料の比重が、ガラスの熔融工程において生ずるガラスの比重変化分を、成形ガラスに要求される比重の値から差し引かれることで決定される工程を含む光学ガラスの製造方法。
- 請求項6又は7の製造方法において、流出口から流出したガラスの比重を測定し、当該比重測定値と成形ガラスに要求される比重の差に対応させ、投入される原料の比重を連続的又は断続的に調整し、変化させることを含む光学ガラスの製造方法。
- 前記投入される原料がカレットであって、カレットの比重が、カレットに要求される比重の値よりも高い比重を有するカレットとカレットに要求される比重の値よりも低い比重を有するカレットとを混合して調整することにより決定されることを含む請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜4及び6〜8の製造方法において、投入される原料がカレットである光学ガラスの製造方法。
- 熔融ガラス成分が弗素、リン、リチウム、ホウ素、アンチモン、テルル、タリウム、鉛、ビスマス、セシウムのうちの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
- 光学ガラスが、屈折率(nd)が1.55以下、アッベ数(νd)が65以上の範囲の光学定数を有し、必須成分としてSiO2及びB2O3のいずれか一方又は両方並びにK2O及びFを含有し、実質的にヒ素成分を含まず、ガラス転移温度(Tg)が540℃以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
- 酸化物基準の質量%で、必須成分として
SiO2 40〜68%、
B2O3 5〜20%、及び
K2O 2〜25%、及び
F 0.1〜12%
を含有し、
さらに任意成分として
Al2O3 0〜25%、及び/又は
Na2O 0〜20%、及び/又は
Sb2O3 0〜1%
の各成分を含有することを特徴とする請求項11又は12の製造方法。 - 光学ガラスが、屈折率(nd)が1.41を超え、アッベ数(νd)が80以上の光学定数を有し、必須成分としてP2O5、AlF3、RF2(RはCa、Sr、Mg、Baからなる群より選択される1種以上)を含有し、実質的にヒ素成分を含まないことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
- 前記光学ガラスがフッ化物基準の質量%で、必須成分として
P2O5 2〜24%、及び
AlF3 6〜40%、及び
MgF2 1〜10%、及び
CaF2 5〜23%、及び
SrF2 15〜30%、及び
BaF2 10〜20%、
を含有し、さらに任意成分として
YF3 0〜8%、及び/又は
PF5 0〜6%、及び/又は
LaF2 0〜6%、及び/又は
YbF3 0〜6%、及び/又は
GdF3 0〜6%、及び/又は
ZnF2 0〜6%、及び/又は
LiF、NaF及び/又はKF 0〜6%、及び/又は
Al2O3 0〜7%、及び/又は
B2O3 0〜5%、及び/又は
RO(アルカリ土類金属酸化物)0〜10%、及び/又は
R2O(アルカリ金属酸化物) 0〜5%
の各成分を含有し
上記各成分の合計が、光学ガラスの95〜100%の範囲であることを特徴とする請求項14の製造方法。 - 請求項1〜15のいずれか1項の製造方法により製造された光学ガラスからなる
精密プレス成形用プリフォーム。 - 請求項1〜15の製造方法により製造された光学ガラスを成形してなる光学素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006109191A JP2007161562A (ja) | 2005-11-15 | 2006-04-11 | 光学ガラスの製造方法 |
Applications Claiming Priority (2)
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JP2005329866 | 2005-11-15 | ||
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014139305A1 (zh) * | 2013-03-12 | 2014-09-18 | 成都尤利特光电科技有限公司 | 镧系光学玻璃熟料的混合方法 |
CN117285251A (zh) * | 2023-09-25 | 2023-12-26 | 成都光明光电股份有限公司 | 玻璃材料和玻璃元件 |
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2006
- 2006-04-11 JP JP2006109191A patent/JP2007161562A/ja active Pending
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