JP2007157336A - 固体酸化物型燃料電池利用の発電装置 - Google Patents

固体酸化物型燃料電池利用の発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、固体酸化物型燃料電池の内部に固体燃料を導入でき、この燃料電池を加熱できるようにし、密閉を必要としない簡単な構造によって、固体燃料を直接気相化しつつ燃料電池の燃料にして発電できる固体酸化物型燃料電池利用の発電装置を提供する。
【解決手段】本発明の発電装置は、円筒状の固体電解質基板1の外側にカソード電極層2が、該基板の内側にアノード電極層3が形成され、該アノード電極層による内部空間を有する固体酸化物型燃料電池C3を有し、該内部空間の下端に火炎fを発生するガスバーナー4を備える。該内部空間の下部に金属メッシュ5が配置され、導入された固体燃料Fを保持する。該固体燃料が火炎fを加熱源として気相化され、燃料種を生成する。該燃料種が内部空間を取り囲むアノード電極層に直接供給される。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物型燃料電池を利用した発電装置に関し、特に、カソード電極層が外側に、そしてアノード電極層が内側に形成された筒状の固体電解質基板を有する固体酸化物型燃料電池の内部に固体燃料を導入できるようにし、密閉を必要としない簡単な構造によって、固体燃料を気相化し燃料電池の燃料にして発電できる固体電解質燃料電池利用の発電装置に関する。
近年においては、種々の発電形式の燃料電池が開発されており、この中に、固体電解質を用いた形式の固体酸化物型燃料電池がある。この固体酸化物型燃料電池の一例として挙げると、イットリア(Y23)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体電解質層として用いたものがある。この固体電解質層の一面にカソード電極層を、そして、その反対面にアノード電極層を形成し、このカソード電極層側に酸素又は酸素含有気体が供給され、さらに、アノード電極層には、メタン等の燃料ガスが供給されるようになっている。
この燃料電池内では、カソード電極層に供給された酸素(O2)が、カソード電極層と固体電解質層のとの境界で酸素イオン(O2-)にイオン化され、この酸素イオンが、固体電解質層によってアノード電極層に伝導され、アノード電極層に供給された、例えば、メタン(CH4)ガスと反応し、そこで、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)、一酸化炭素(CO)が生成される。この反応において、酸素イオンが、電子を放出するため、カソード電極層とアノード電極層との間に電位差が生じる。そこで、カソード電極層とアノード電極層とにリード線を取り付ければ、アノード電極層の電子が、リード線を介してカソード電極層側に流れ、燃料電池として発電することになる。なお、この燃料電池の駆動温度は、約1000℃である。
しかし、この形式の燃料電池による発電装置では、カソード電極層側に、酸素又は酸素含有ガス供給チャンバーを、そして、アノード電極層側に、燃料ガス供給チャンバーを夫々分離したセパレート型チャンバーを用意しなければならず、しかも、高温下で、酸化性雰囲気と還元性雰囲気とに晒されるため、燃料電池としての耐久性を向上することが困難であった。
一方、固体電解質層の対向した面に、カソード電極層とアノード電極層とを設けた固体酸化物型燃料電池を形成し、この燃料電池を、燃料ガス、例えば、メタンガスと、酸素ガスとが混合された混合燃料ガス中に置いて、カソード電極層とアノード電極層との間に起電力を発生させる形式の燃料電池が開発されている。この形式の燃料電池では、カソード電極層とアノード電極層との間に起電力を発生する原理は、上述したセパレート型チャンバー形式の燃料電池の場合と同様であるが、固体酸化物型燃料電池全体を実質的に同一雰囲気にすることができるため、混合燃料ガスが供給されるシングル型チャンバーとすることができ、燃料電池の耐久性を向上できる。
しかし、このシングル型チャンバーの燃料電池による発電装置においても、約1000℃の高温下で駆動しなければならないので、混合燃料ガスの爆発の危険性がある。この危険性を回避するために、酸素濃度を発火限界よりも低い濃度にすると、メタン等の燃料の炭化が進み、電池性能が低下するという問題が生じた。そのため、混合燃料ガスの爆発を防止しつつ、燃料の炭化の進行を防止し得る酸素濃度の混合燃料ガスを使用できるシングル型チャンバーの燃料電池の発電装置が提案されている。
一方、この提案された燃料電池の発電装置は、チャンバー内に収納された複数の固体酸化物型燃料電池によって積層構成された形式のものであったが、管状に形成された固体酸化物型燃料電池を火炎中、或いは、その近傍に配置し、火炎の熱によって固体酸化物型燃料電池をその動作温度に保持させて、発電を行う装置が提案されている。
ところで、上述のシングル型チャンバーの燃料電池による発電装置では、従来の固体酸化物型燃料電池の発電装置のように、燃料と空気を厳粛に分離する必要がない代わりに、気密封止構造を採用せざるを得ない。そして、高温下で駆動できるように、複数の板状固体酸化物型燃料電池が耐熱性高電気伝導性を有するインターコネクト材を用いて積層接続され、起電力を上げていた。そのため、板状固体酸化物型燃料電池によるシングル型チャンバーの燃料電池発電装置は、大掛かりな構造となり、コストが嵩むという問題がある。また、このシングル型チャンバーの燃料電池発電装置の稼動に際しては、高温になるまで徐々に昇温して、固体酸化物型燃料電池の割れを防止しているので、起電するまでの時間が長く、手間がかかるものである。
これに対して、上述の発電装置における固体酸化物型燃料電池では、火炎を直接利用する形態が採用されており、この形態の燃料電池は、燃料電池自体を密封構造の容器に収容する必要がなく、開放型であるという特徴を持っている。そのため、この燃料電池では、起電時間が短縮でき、構造が簡単なので、燃料電池の小型軽量化、低コスト化に有利であるといえる。そして火炎を直接利用する点で、一般の燃焼装置や焼却装置等に組み込むことが可能となり、電力供給装置として利用することが期待されている。
しかしながら、この形態の燃料電池発電装置では、管状の固体電解質層の外面にアノード電極層が形成されているので、主に、そのアノード電極層の上半分に火炎によるラジカル成分が供給されず、管状の固体電解質層の外面に形成されたアノード電極層全面を有効に利用することができない。そのため、発電効率が低いものであった。
そこで、この発電効率を高めた固体酸化物型燃料電池による発電装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この提案された発電装置が、図4に示されている。ここで利用される固体酸化物型燃料電池Cの具体的構成について説明する。固体酸化物型燃料電池Cは、固体電解質基板1の一面側にカソード電極層2が、他面側にアノード電極層3が設けられ、全体が平板状に形成されている。
この様に、カソード電極層2とアノード電極層3とが、平板状の固体電解質基板1に形成されているので、アノード電極層3が、ガスバーナー4によって発生された火炎fで晒される側となれば、アノード電極層3側が燃料リッチ状態になり、必然的に、カソード電極層2は、大気側に向くことになり、酸素リッチ状態となる。発電した出力は、カソード電極層2に取り付けられたリード線L1と、アノード電極層3に取り付けられたリード線L2との間から取り出される。
そのため、上述した管状の固体電解質燃料電池の場合に比べて、この固体酸化物型燃料電池Cは、平板状に形成されているので、ムラなく火炎を当てることが可能となり、さらに、アノード電極層3を火炎側に向けて配置しているので、ガスの燃焼で発生した火炎の中に存在する、例えば、炭化水素、水素、ラジカル(OH、CH、C2、O2H、CH3)などを燃料種として有効に利用しやすくしている。
以上に説明した固体酸化物型燃料電池の発電装置では、ガスバーナーによって発生した火炎fが直接、アノード電極層3を晒すことにより、火炎fが、固体酸化物型燃料電池Cの作動温度を維持する加熱源となるとともに、固体酸化物型燃料電池の発電に必要な燃料種の供給源になっている。ここで、火炎fは、ガスの燃焼によって発生されているが、固体燃料を燃焼させて、この火炎fを発生するようにして、固体酸化物型燃料電池を発電装置に適用することも提案されている。
その発電装置の固体酸化物型燃料電池としては、図4に示された固体酸化物型燃料電池Cと同様の構成の燃料電池をそのままの形態で使用できる。その固体酸化物型燃料電池Cが、固体燃料を燃焼させる燃焼装置の上部に載置されればよい。
この燃焼装置は、その内部に、固体燃料Fを収容できる燃焼室を備え、燃焼室内には、固体燃料を保持するための火格子などの保持体が設けられる。固体燃料として、例えば、木質材が供給される。そして、燃焼装置の上部は、固体酸化物型燃料電池Cを支持し、アノード電極層3を燃焼室に臨ませ、火炎で晒されるようにするための火炎開口部が備えられている。また、燃焼装置の前面には、固体燃料を燃焼室内に供給するための固体燃料供給開口部が開けられ、さらに、固体燃料保持体の下側に、空気を供給するための空気取入開口部も開けられる。
固体燃料としては、木質材の他に、手軽に入手が可能な、例えば、木質材のチップ又はペレットや、パラフィン、オレフィン、アルコールなどが挙げられる。燃焼装置の燃焼室内に供給された固体燃料が燃焼されて、火炎fが発生される。この発生された火炎fが、開口部に臨む固体酸化物型燃料電池Cのアノード電極層3にあたり、カソード電極層2には、外気の空気が供給される。これにより、火炎f中のラジカル成分と空気中の酸素とが反応して、リード線L1とリード線L2との間に起電力が発生し、固体酸化物型燃料電池利用の発電装置として機能する。
以上に提案されている火炎直接利用により発電する発電装置では、固体酸化物型燃料電池が水平に配置され、その下側から供給された火炎fが、アノード電極層の全面を曝していた。この様に、固体酸化物型燃料電池の配置が水平でなく、2枚の固体酸化物型燃料電池を垂直に対向配置した発電装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
この提案された発電装置が、図5に示される。図5では、発電装置の縦断面図が示され、ここで使用された2枚の固体酸化物型燃料電池C1、C2は、図4に示された固体酸化物型燃料電池Cと同様の構成を有している。固体酸化物型燃料電池C1、C2は、共に同じ構成であり、平板状に形成された固体電解質基板1の一方の面に、カソード電極層2が、そして他方の面に、アノード電極層3が夫々形成されている。
固体酸化物型燃料電池が発電装置に組み込まれるときには、各固体酸化物型燃料電池C1、C2のアノード電極層3が内側になるようにして、所定の間隔を置いて、垂直に配置される。そのため、各固体酸化物型燃料電池のカソード電極層は、共に、外側を向いている。そして、固体酸化物型燃料電池C1、C2の下部に、ガスバーナー4が設置され、アノード電極層3に、ガスバーナー4で発生された火炎fが供給される。
火炎fが供給されることにより、固体酸化物型燃料電池C1、C2が加熱され、さらに、アノード電極層3に火炎f中の炭化水素、水素や各種のラジカル等の燃料種が供給されて、固体酸化物型燃料電池C1、C2が発電する。図5では図示を省略しているが、図4に示されるように、固体酸化物型燃料電池C1、C2には、夫々リード線L1、L2が取り付けられており、これら固体酸化物型燃料電池のリード線L1、L2を並列接続又は直列接続することにより、発電出力を取出すことができる。
この様に、2枚の固体酸化物型燃料電池を垂直に対向配置することにより、火炎の熱を効率的に用いることができ、且つ、カソード層側に充分な空気を自然対流によって供給できる。このため、アノード層側の火炎によって、固体酸化物型燃料電池が加熱されつつ、この火炎によって生成される燃料種と、カソード電極層側の空気中の酸素とを有効に利用して発電することができる。
特開2004−139936号公報 特開2004−311249号公報
ところで、上述した固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、通常、燃料極には、気相燃料が供給される。シングル型チャンバーの発電装置に収納された固体酸化物型燃料電池であれば、混合燃料ガスが供給され、火炎直接利用の固体酸化物型燃料電池発電装置においては、アノード電極層には、気体燃料の燃焼により発生した火炎の中に含まれる燃焼ガス又は未燃焼ガスによる燃料種が供給され、固体燃料を用いる場合にあっては、これを燃焼させて火炎を発生させ、この火炎を供給するものである。
しかしながら、シングル型チャンバーによる発電装置の場合のように、装置に供給する混合ガスに含める燃料ガスを固体燃料から生成しようとすると、時間とエネルギーを要し、特別な生成装置を用意しなければならない。また、火炎直接利用の固体酸化物型燃料電池発電装置の場合にあっても、火炎を発生させるため燃焼するガスも気相燃料であり、この気相燃料を供給するという点では、同様の問題がある。
固体燃料を燃焼させた火炎を発電に利用する点では、シングル型チャンバーによる発電装置の場合より、手軽で、簡単に、固体燃料を装置内で気相化できて有利であるが、固体燃料の燃焼による火炎の安定化、燃料極への燃料供給効率に問題がある。そして、発電装置内に燃焼装置を設けなければならない点で、発電装置の小型化に問題があり、発電出力のアップを図ることができない。
そこで、本発明は、カソード電極層が外側に、そしてアノード電極層が内側に形成された筒状の固体電解質基板を有する固体酸化物型燃料電池の内部に固体燃料を導入でき、この燃料電池を加熱できるようにし、密閉を必要としない簡単な構造によって、固体燃料を直接気相化しつつ燃料電池の燃料にして発電できる固体酸化物型燃料電池利用の発電装置を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、本発明の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、筒状の固体電解質基板を有し、該基板の外側にカソード電極層が形成され、そして、該基板の内側にアノード電極層が形成され、該アノード電極層による内部空間を有する固体酸化物型燃料電池と、前記内部空間の一開放端部に配置された加熱装置と、を備え、前記内部空間に配置された固体燃料が前記加熱装置で加熱されて、該固体燃料から前記アノード電極層に燃料種が供給されるようにした。
そして、垂直に設置された前記固体酸化物型燃料電池の前記内部空間の下部に、金属メッシュが設けられ、前記加熱装置が、火炎を発生するバーナーを有し、該火炎が、前記金属メッシュを介して、前記内部空間に保持された前記固体燃料を加熱することとした。
前記固体酸化物型燃料電池が、断熱容器に収納され、該断熱容器の内壁面と所定間隔を置いて配置されることとし、さらには、複数の前記固体酸化物型燃料電池が、前記断熱容器に収納され、互いに離間して配置されることとした。
また、前記固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、前記固体燃料は、前記内部空間の上方開放端から導入されることとした。
以上のように、本発明の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物型燃料電池が、筒状の固体電解質基板の外側に形成されたカソード電極層と、該基板の内側に形成されたアノード電極層とを有し、該アノード電極層により形成された内部空間に、固体燃料が導入されるので、該固体燃料が加熱されて気相化し、該固体燃料から前記アノード電極層に燃料種が直接供給される。そのため、固体燃料を燃焼させて火炎を発生させるのではなく、固体酸化物型燃料電池の内部空間で固体燃料を無炎燃焼させることができ、固体燃料から発生する燃料種を効率よくアノード電極層に供給することができる。
また、本発明の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、金属メッシュが、筒状に形成され、垂直に配置された固体酸化物型燃料電池の内部空間に設けられているので、この金属メッシュは、上部から導入された固体燃料を内部空間内に保持するため、下部から供給される火炎を加熱源として、固体燃料が、無炎燃焼されて気相化される。その結果、この内部空間内において、この固体燃料から生成された燃料種が、アノード電極層に直接供給される。火炎による燃料種に加えて、固体燃料による燃料種がさらに効率よく供給されるので、発電出力のアップを図ることができる。
以下において、本発明による固体酸化物型燃料電池を利用した発電装置の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の固体酸化物型燃料電池発電装置の基本構成を示している。
ところで、図5に示された発電装置では、2枚の固体酸化物型燃料電池を垂直に対向配置することにより、火炎の熱を効率的に用い、且つ、カソード層側に充分な空気の自然対流を生起させている。このため、アノード層側の火炎によって、固体酸化物型燃料電池が加熱されつつ、この火炎によって生成される燃料種と、カソード電極層側の空気中の酸素とを有効に利用して発電することができる。
ここで、この発電装置において、2枚の固体酸化物型燃料電池により多くの燃料を供給しようとした場合に、下部から供給される火炎の強さを増加させることになるが、例えば、ガス濃度を大きくして、ガスバーナーの燃焼を激しくすることになる。この様な場合には、火勢の強くなった火炎は、アノード電極層の全面に十分な燃料種を供給できなくなり、結果として、発電装置の発電出力のアップに限界がある。
一方、上述したように、既に提案された固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、燃焼装置内で固体燃料を燃焼させ、火炎を発生させていた。そして、この火炎が固体酸化物型燃料電池を加熱するとともに、アノード電極層への燃料種を供給している。しかし、この発電装置では、固体燃料を装置内で気相化できる点で有利ではあるが、固体燃料の燃焼による火炎の安定化、アノード電極層への燃料種の供給効率の向上に限界がある。
そこで、本実施形態の発電装置では、垂直に配置された固体酸化物型燃料電池の下部から火炎を供給し、固体酸化物型燃料電池を加熱するとともに、火炎に含まれる燃料種をアノード電極層に供給し、カソード電極層側には、空気の自然対流で十分な酸素が供給されるという形態を採用し、火炎による燃料種の供給に加えて、さらに、該火炎で固体燃料を加熱できるようにして無炎燃焼させ、無炎燃焼で発生した燃料種を、直接、アノード電極層に供給できるようにした。
図1に、本実施形態の発電装置の基本構成が示されている。図1(a)は、固体酸化物型燃料電池C3の横断面を示し、図1(b)は、その縦断面を示している。固体酸化物型燃料電池C3は、所定長さを持つ筒状の固体電解質基板1を有しており、該基板1の外側面にカソード電極層2が形成され、該基板の内側面には、アノード電極層3が形成されている。なお、図1では、固体電解質基板1は、円筒形状を例にしているが、円筒形状に限られず、横断面が多角形、例えば、矩形であってもよい。また、図示を省略しているが、図4に示された固体酸化物型燃料電池Cと同様に、発電電力を取り出すためのリード線L1、L2が設けられている。
この円筒形状に形成された固体酸化物型燃料電池C3では、アノード電極層3によって囲まれた内部空間が形成される。その内部空間の下部に、ガスバーナー4で燃焼されて発生した火炎fが供給される。勿論、この形態のままでも、固体酸化物型燃料電池C3の内部空間に、火炎fが供給されることにより、アノード電極層3が、火炎fによって曝され、火炎に含まれる燃料種が供給されるので、図5に示された発電装置の場合と同様に、発電することができる。
次いで、本実施形態の発電装置では、金属メッシュ5が、固体酸化物型燃料電池C3の内側に形成された内部空間において、水平に設けられている。この金属メッシュ5は、例えば、ステンレススチールで作製される。そして、固体燃料Fが、固体酸化物型燃料電池C3の上方から、この内部空間内に導入される。金属メッシュ5は、この固体燃料を保持し、また、固体燃料の燃焼結果である灰分を下方に篩い落とす役割をもっている。
金属メッシュ5の内部空間の縦方向位置としては、図1に示されるように、内部空間内の下部に設けられるのが好適である。金属メッシュ5が、その内部空間の下端面に配置された場合には、火炎fが固体燃料Fを直接曝すことになり、固体燃料Fが燃焼して火炎を発生させてしまい、前述したガス濃度を高くして火炎を発生させた場合と同様の結果となり、固体燃料Fからの燃料種が有効に供給されない。また、反対に、内部空間の上方部に配置された場合にも、燃料種が固体燃料Fから生成されても、その燃料種がアノード電極層に有効に供給されない。
そのため、金属メッシュ5が、内部空間の下部、つまり、下端面から適宜離間した位置に設けられることによって、固体燃料Fが、固体酸化物型燃料電池C3の内部空間の中程に保持され、下方から供給される火炎fが加熱源となって、固体燃料Fは、無炎燃焼される。その結果、この内部空間内において、この固体燃料Fは、気相化され、アノード電極層3に直接燃料種を供給する。内部空間の下端面と金属メッシュ5との間に存在するアノード電極層3には、火炎fの燃料種が供給されている。なお、本実施形態の発電装置においては、固体燃料Fとしては、手軽に入手できる木板、ベニヤ板、紙、木質材のチップ集成体又はペレットなどが好適である。
ここで、本実施形態の発電装置に利用する固体酸化物型燃料電池について説明する。ここで利用される固体酸化物型燃料電池C3は、図5に示された固体酸化物型燃料電池C1、C2と同様に、固体電解質基板と、該基板の両面にカソード電極層とアノード電極層が形成される構成を採用するが、固体酸化物型燃料電池自体が円筒状に形成されている。
固体電解質基板1には、例えば、公知のものを採用でき、次に示す材料を使用できる。
a) YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらにCe、Al等をドープしたジルコニア系セラミックス
b) SDC(サマリアドープドセリア)、GDC(ガドリアドープドセリア)等のセリア系セラミックス
c) LSGM(ランタンガレート)、酸化ビスマス系セラミックス
また、アノード電極層3には、例えば、公知のものを採用でき、次に示す材料を使用できる。
d) ニッケルと、イットリア安定化ジルコニア系、スカンジア安定化ジルコニア系、又は、セリア系(SDC、GDC、YDC等)セラミックとのサーメット
e) 導電性酸化物を主成分(50重量%以上99重量%以下)とする焼結体(導電性酸化物とは、例えば、リチウムが固溶された酸化ニッケル等である)
f) d)、e)に挙げたものに、白金族元素やレニウムから成る金属、又は、その酸化物が1〜10重量%程度配合されたもの
等が挙げられ、この中でも、特にd)、e)が好ましい。
上記e)の導電性酸化物を主成分とする焼結体は、優れた耐酸化性を有するのでアノード電極層の酸化に起因して発生する、アノード電極層の電極抵抗の上昇による発電効率の低下、或いは、発電不能、アノード電極層の固体電解質層からの剥離といった現象を防止できる。また、導電性酸化物としては、リチウムが固溶された酸化ニッケルが好適である。さらに、上記d)、e)に挙げたものに、白金族元素から成る金属、またはその酸化物を配合することにより、高い発電性能を得ることができる。
カソード電極層2には、公知のものを使用することができ、例えば、ストロンチウム(Sr)が添加されたランタン等の周期律表第3族元素の、マンガン酸化合物(例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト)、ガリウム酸化合物、又はコバルト酸化合物(例えば、ランタンストロンチウムコバルタイト、サマリウムストロンチウムコバルタイト)等が挙げられる。
カソード電極層2とアノード電極層3は、共に多孔質体で形成されるが、本実施形態に利用される固体酸化物型燃料電池C3おける固体電解質基板1も多孔質に形成されてもよい。従来の様に、本実施形態に利用される固体酸化物型燃料電池の固体電解質基板1を、緻密質に形成してもよいが、耐熱衝撃性が低く、急激な温度変化によって、ひび割れが生じやすかった。また、一般に、固体電解質基板は、アノード電極層及びカソード電極層よりも厚く形成されているので、固体電解質層のひび割れが引き金となり、固体酸化物型燃料電池の全体にひび割れが発生し、バラバラになってしまっていた。
固体電解質基板が多孔質に形成されることで、発電時に、熱供給装置の加熱による急激な温度変化を与えても、さらに、温度差の激しいヒートサイクルに対しても、ひび割れ等がなくなり、耐熱衝撃性が向上する。また、多孔質であっても、その気孔率が10%未満のときは、耐熱衝撃性に著しい向上が認められなかったが、10%以上であると良好な耐熱衝撃性が見られ、20%以上であるとより好適である。これは、固体電解質層が多孔質であると、加熱による熱膨張が空隙部分で緩和されるためと考えられる。
固体酸化物型燃料電池C3は、例えば、次のように製造される。先ず、固体電解質層の材料粉末を所定配合割合で混合し、グリーンシートを作製し、このグリーンシートを円筒形状に成形する。その後、これを焼成して焼結することで固体電解質層としての円筒形状の基板が作られる。このとき、気孔形成剤等の材料粉末の種類や配合割合、焼成温度、焼成時間、予備焼成等の焼成条件等を調整することによって、様々な気孔率の固体電解質層を作ることができる。こうして得られた固体電解質層としての基板の外側面にカソード電極層となるペーストを、その内側面にアノード電極層となるペーストを塗布し、焼成を行うことで固体酸化物型燃料電池を製造することができる。
また、固体酸化物型燃料電池は、次に説明するように、さらに耐久性を向上することができる。この耐久性の向上手法としては、固体酸化物型燃料電池C3におけるカソード電極層2とアノード電極層3とに、メッシュ状金属を埋設、或いは、固着させるものである。埋設する方法としては、各層の材料(ペースト)を固体電解質層に塗布し、メッシュ状金属をその塗布された材料中に埋め込んだ後に焼成を行う。固着する方法としては、メッシュ状金属を各層の材料によって完全に埋め込むことなく、接着させて焼結しても良い。
メッシュ状金属としては、これを埋設する、或いは、固着するカソード電極層、アノード電極層との熱膨張係数の調和や、耐熱性に優れたものが好適である。具体的には、白金や、白金を含む合金から成る金属でメッシュ状にしたものが挙げられる。SUS300番代(304、316等)、或いは、SUS400番代(430等)のステンレスでも良く、これらはコストの点で有利である。
また、メッシュ状金属を用いる代わりに、ワイヤ状金属をアノード電極層、カソード電極層に埋設或いは固着させてもよい。ワイヤ状金属は、メッシュ状の金属と同様の金属から成り、その数や配設形状等に限定はない。
メッシュ状金属やワイヤ状金属を、アノード電極層やカソード電極層に埋設、或いは、固着することにより、熱履歴等によってひび割れした固体電解質基板がバラバラになって崩れないように補強されることになり、さらに、メッシュ状金属やワイヤ状金属は、ひび割れした部分を電気的に接続することができる。
なお、これまで、固体電解質基板を多孔質性にした場合を説明したが、本実施形態の固体酸化物型燃料電池の固体電解質基板に、緻密構造のものを使用することができ、この場合には、特に、熱履歴によるひび割れに対処するのに、カソード電極層及びアノード電極層にメッシュ状金属又はワイヤ状金属を埋め込み、或いは、埋設することは、有効な手段となる。
メッシュ状金属或いはワイヤ状金属は、アノード電極層とカソード電極層の両方に配設しても良いし、どちらか一方に配設しても良い。また、メッシュ状金属とワイヤ状金属を組み合わせて配設しても良い。熱履歴によってひび割れが生じたときには、少なくともアノード電極層に、メッシュ状金属又はワイヤ状金属が埋設されていれば、その発電能力を低下させることがなく、発電を継続することができる。固体酸化物型燃料電池の発電能力は、アノード電極層の燃料極としての有効面積に負うところが大きいので、少なくともアノード電極層にメッシュ状金属或いはワイヤ状金属を配設するとよい。
次に、本実施形態の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置の具体例について、図2を参照して説明する。図2に示された本実施形態の発電装置の具体例は、図1に示された発電装置を基本構成とし、その発電装置を断熱容器内に収納している。この断熱容器の配置によって、固体酸化物型燃料電池C3の加熱効率を向上している。
断熱容器6は、固体酸化物型燃料電池C3を含む発電装置を内部に収納し、断熱容器6の内壁面と、固体酸化物型燃料電池C3のカソード電極層2とは、所定間隔を置いて離間している。図2に示された具体例では、断熱容器6の上部及び下部は開放となっている。その開放された下部からは、空気が自由に供給され、断熱容器6の内壁面と固体酸化物型燃料電池C3のカソード電極層2とで形成された所定間隔の空間が、効率よく空気の自然対流を形成し、カソード電極層2を酸素リッチ状態にしている。
また、断熱容器6の上部は、開放状態にあり、固体酸化物型燃料電池C3からの排出ガスと、自然対流による空気とが、上方に放出される。ここで、断熱容器6の上部においては、必ずしも、図2に示されるように、全面開放状態である必要が無く、排出ガスと自然対流の空気とを放出できる開口を設けて、その上部を塞ぐようにしてもよい。このとき、固体酸化物型燃料電池C3の内部空間に、固体燃料Fを導入する必要があるので、この導入のための開閉手段を備えることとなる。
図2に示された本実施形態の発電装置の具体例では、図1に示された固体酸化物型燃料電池C3が断熱容器6の中に収納されたが、図3に、複数の固体酸化物型燃料電池を収納した場合の例が示されている。図3では、固体酸化物型燃料電池C31、32を利用した発電装置の2組が断熱容器6に収納されている。図3において、図2の場合と同じ部分には、同じ符号が付されている。
なお、固体酸化物型燃料電池C31、C32に供給される火炎f1、f2は、それぞれに設けられたガスバーナー41、42で発生されるが、予混気体が共通的に供給されるように、ガスバーナー41、42は、共通のガス供給管に接続されている。固体酸化物型燃料電池C31と固体酸化物型燃料電池C32のカソード電極層2同士が対面して配置されるので、カソード電極層2の面上における空気の自然対流を確保するため、固体酸化物型燃料電池C31と固体酸化物型燃料電池C32とは所定間隔を置いて垂直配置される。
図3では、2個の固体酸化物型燃料電池を垂直配置した場合について示されたが、3個以上の複数の固体酸化物型燃料電池を垂直配置することもできる。この場合には、互いに隣接する固体酸化物型燃料電池同士について、カソード電極層2の面上における空気の自然対流を確保するため、所定間隔を置くようにする。
以上により、筒状に形成された固体酸化物型燃料電池の内部空間に導入した固体燃料を火炎で加熱することにより、火炎に含まれる燃料種に加えて、固体燃料が気相化されて生成された燃料種を燃料として発電する固体酸化物型燃料電池利用の発電装置の実施形態が説明されたが、以下に、本発明による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置に関する実施例を示す。
サマリウムドープドセリア(SDC)による固体電解質基板の片面に、5重量%の酸化ロジウムを含みリチウムをドープしたNiOとSDCの混合物によりアノード電極層を形成し、他方の面に、サマリウムストロンチウムコバルタイトとSDCの混合物によりカソード電極層を形成し、集電体として、白金メッシュを用いた。作製された内径18mm、長さ50mmの固体酸化物型燃料電池の内部に、ステンレススチール製メッシュを軸に対して略垂直に配置した。
この様にして作製された固体酸化物型燃料電池の底部から、火炎を供給したところ、約80mAの短絡電流が確認された。そして、固体酸化物型燃料電池の上部から、紙片を投入したところ、最大約120mAの短絡電流が確認された。
本発明による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置の実施形態を説明する図である。 本実施形態の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置の具体例を説明する図である。 本実施形態の固体酸化物型燃料電池を複数配置した発電装置の例を説明する図である。 火炎直接利用による固体酸化物型燃料電池の発電装置を説明する図である。 火炎直接利用による固体酸化物型燃料電池の2枚を垂直に配置した発電装置を説明する図である。
符号の説明
1 固体電解質基板
2 カソード電極層(空気極層)
3 アノード電極層(燃料極層)
4、41、42 ガスバーナー
5 金属メッシュ
6 断熱容器
C、C1、C2 固体酸化物型燃料電池
f、f1、f2 火炎
F 固体燃料

Claims (5)

  1. 筒状の固体電解質基板を有し、該基板の外側にカソード電極層が形成され、そして、該基板の内側にアノード電極層が形成され、該アノード電極層による内部空間を有する固体酸化物型燃料電池と、
    前記内部空間の一開放端部に配置された加熱装置と、を備え、
    前記内部空間に配置された固体燃料が前記加熱装置で加熱されて、該固体燃料から前記アノード電極層に燃料種が供給されることを特徴とする固体酸化物型燃料電池発電装置。
  2. 垂直に設置された前記固体酸化物型燃料電池の前記内部空間の下部に、金属メッシュが設けられ、
    前記加熱装置が、火炎を発生するバーナーを有し、該火炎が、前記金属メッシュを介して、前記内部空間に保持された前記固体燃料を加熱することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置。
  3. 前記固体酸化物型燃料電池が、断熱容器に収納され、該断熱容器の内壁面と所定間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置。
  4. 複数の前記固体酸化物型燃料電池が、前記断熱容器に収納され、互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置。
  5. 前記固体燃料は、前記内部空間の上方開放端から導入されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置。
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