JP2007156042A - 光学用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 LCD、PDP、有機EL、プロジェクションディスプレイなどの部材として使用した際に、高度な輝度を実現し、高品質な画像を与えることができる、光学的性能の良好なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 フィルムの全光線透過率が80%以上であり、各波長の光線透過率が下記式を満足することを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。
−T≧−1%
(上記式中、Tは波長500nm〜600nmにおける光線透過率の平均値、Tは波長700nm〜800nmにおける光線透過率の平均値を意味する)
【選択図】 なし

Description

本発明は光学用ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合あり)、プラズマディスプレイ(以下、PDPと略記する場合あり)等に用いる各種光学用部材や、光学分野の製品の製造工程において使用される保護フィルムや離型フィルム等に用いられるポリエステルフィルムであって、光学特性に優れ、光学製品の品質向上や消費エネルギー低減に寄与することができる光学用ポリエステルフィルムに関する。
従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有しており、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネートフィルム、ガラスディスプレイ等のガラス表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く使用され、LCDの部材のプリズムシート、光拡散シート、反射板、タッチパネル等のベースフィルムや反射防止用ベースフィルムやディスプレイの防爆用ベースフィルム、PDPフィルター用フィルム等の各種用途に用いられている。これらの光学製品において、明るく鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとして用いられるベースフィルムはその使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。
ディスプレイにおいて重要な特性に輝度が挙げられるが、この輝度に対して,部材として使用したポリエステルフィルムが影響することが知られている。特に高品質な画像を得る場合には高度な輝度が必要となるため、ポリエステルフィルムに対しても、高輝度を実現する特性が要求されるようになってきた。このためにはポリエステルフィルムが高度な透明性を有することは言うまでもないが、それに加えてさらに光学的に有利な特性を有することが必要である。
特開2005−179486号公報
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、LCD、PDP、有機EL、プロジェクションディスプレイなどの部材として使用した際に、高度な輝度を実現し、高品質な画像を与えることができる、光学的性能の良好なポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、フィルムの全光線透過率が80%以上であり、各波長の光線透過率が下記式を満足することを特徴とする光学用ポリエステルフィルムに存する。
−T≧−1%
(上記式中、Tは波長500nm〜600nmにおける光線透過率の平均値、Tは波長700nm〜800nmにおける光線透過率の平均値を意味する)
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
本発明のポリエステルフィルムは、全光線透過率が80%以上であることが必要であり、好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。フィルムの全光線透過率が80%未満であると、高度な透明性を必要とする光学用途には使用できなくなる。
また、各波長の光線透過率が下記式を満たすことを必要とする。
−T≧−1%
(上記式中、Tは波長500nm〜600nmにおける光線透過率の平均値、Tは波長700nm〜800nmにおける光線透過率の平均値を意味する)
上記のようなフィルムを得るためには、例えば主たる構成成分以外の第三成分を含有させる手法や、また、フィルム中に含まれる金属元素量を低減させる手法を用いて得られるポリエステルフィルムとすることが、簡便かつコスト等有利になるので好ましい。主たる構成成分以外の第三成分は、2.0〜10.0モル%含有することが好ましく、さらに好ましくは2.5〜10モル%、最も好ましくは3.0〜8.0モル%である。
かかる第三成分を含有させる方法としては、フィルムを製造する原料として所定量の共重合成分として含有する共重合ポリエステルを使用してもよいし、所定量より多い共重合成分を含有する共重合ポリエステルと、共重合成分が少ない含有量の共重合ポリエステルまたはホモポリエステルとをブレンドして得られる原料を用いてもよい。
ここでいう第三成分の例としては、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等、またオキシカルボン酸としてP−オキシ安息香酸等が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらの中でもジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いた場合、ポリマーの配向や厚みムラによるフィルムの光学的なムラを効率的に低減することができ、しかもフィルムの平面性や耐熱性、寸法安定性を高度に維持できる点で好ましい。ここで、ポリエステルが含有する第三成分として、重合中にエチレングリコールから副生成したジエチレングリコールも含むものとする。
本発明のポリエステルフィルムは、チタン化合物およびリン化合物の双方を含有することが好ましい。
本発明のフィルムの少なくとも一つの層中のチタン元素含有量は、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下であり、下限は好ましくは1ppmであるが、さらに好ましくは2ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎると、ポリエステルを溶融押出する工程で、ポリマーの着色や、ポリエステル分子量の低下を引き起こすことがある。ポリマーの着色は、ディスプレイ用として使用した場合画像の色調が劣る、輝度が低くなる等の点で不適切となる。ポリエステル分子量の低下はフィルムの強度や生産時の製膜連続性が悪化するために問題となる。また、チタン元素を全く含まない場合、ポリエステル原料製造時の生産性が劣る傾向があり、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない場合がある。
一方、リン元素量は、好ましくは1ppm以上であるが、さらに好ましくは5ppm以上であり、上限は好ましくは300ppm、さらに好ましくは200ppm、最も好ましくは100ppmである。
上記したチタン化合物を特定量含有するとともに、リン化合物を含有させることにより、含有オリゴマーの低減に対して著しい効果を発揮できる。リン化合物の含有量が多すぎると、ゲル化が起こり、異物となってフィルムの品質を低下させる原因となることがある。本発明においては、チタン化合物、リン化合物を上記した範囲で含有する場合、高度な透明性を得ることができ、溶融押出時のオリゴマーの副生も防止できるため、本発明の効果が極めて高度に得られる。
また、上記チタン化合物およびリン化合物を含有する層中には、アンチモン元素を含まないことが好ましく、通常は100ppm以下、好ましくは60ppm以下、最も好ましくは実質的に含まない、すなわち10ppm以下である。アンチモン元素の量が多すぎると、溶融押出する際に上記リン化合物によって還元され、凝集して異物の原因となったり、フィルムが黒ずみ、透明性が損なわれたりする恐れがある。
本発明のポリエステルフィルム中、チタン化合物およびリン化合物を前述の範囲内で含む層中に含まれるオリゴマー量は、0.7重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。当該ポリエステル層中のオリゴマー量が少ない場合、本発明のポリエステルフィルム中に含まれるオリゴマー量の低減、また、フィルム表面へのオリゴマー析出防止効果が特に高度に発揮される。
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性に劣る。
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させても良い。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常9〜300μm、好ましくは20〜250μm、さらに好ましくは25〜250μmの範囲である。
本発明のフィルムのフィルムヘーズは通常0〜5%であり、好ましくは0〜3.5%、さらに好ましくは0〜3.0%である。本発明のフィルムは、その優れた透明性を有するために光学用途に広く用いられるが、フィルムヘーズが5%を超える場合には、光学用としては不適当となることがある。
本発明の光学用特にディスプレイ用ポリエステルフィルムは、透過法1枚で測定した色調b*値が、好ましくは−5〜+3の範囲、さらに好ましくは−4〜+2の範囲、特に好ましくは−3.5〜+1の範囲である。b*値が+3を超える場合には、黄色味が強くディスプレイ用として使用した場合画像の色調が劣るようになったり、輝度が低くなったりする等の点で不適切となることが多い。一方、−5より低いフィルムでは、色調の問題もあるが、通常ポリエステルフィルムの場合、b*値は−5より低くないので、添加物を使用する等の方法を用いることになるが、その方法では添加物のブリードアウトや長期使用時の信頼性等で問題になることがある。かかる色調のフィルムとするために、原料のポリエステルを製造する際の触媒、助剤を選択し、なるべく触媒の量を少なくすることや、重合および製膜時にポリエステルが必要以上に高温度になったり、溶融時間が長くなったりしないようにすること、再生された原料の配合量を少なくすることなどの方法を採用できる。
また本発明のフィルムは、180℃で10分間熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー(環状三量体)析出量の表裏面の総和が、15mg/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは10.0mg/m以下、特に好ましくは8.0mg/m以下である。フィルム表面へのオリゴマー析出量が15mg/mを超える場合には、表面でオリゴマーが結晶化してフィルムの透明性を低下させたり、フィルム上に設ける機能層に溶け込んで特性に影響を及ぼしたりする等の問題を引き起こす場合がある。
熱処理によるフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記の範囲とするためには、特に共押出しによる少なくとも3層以上からなる積層フィルムとし、表層を構成する最外層にオリゴマー含有量の少ないポリエステルを用いたり、単層もしくは積層フィルムに、インライン/オフラインで塗布層を設けたりすることにより、フィルム表面にオリゴマーが析出するのを押えることで、熱処理後のフィルム表面へのオリゴマー析出量を上記範囲とすることができる。
本発明のフィルムは、共押出法を用いて積層構造とすることができるが、その際、最外層厚みは、片側のみの厚みで、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上かつ総厚みの1/4以下、さらに好ましくは1/5以下、特に好ましくは1/10以下である。かかる厚みが3μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性があり、一方、総厚みの1/4の厚さより厚いと最外層に配合する粒子量が増えて透明性を損なう恐れがある。
一方、単層で本発明を実施する際には、フィルムには可能な限り粒子を含有させないようにし、表裏の塗布層に粒子を含有させることも好ましい。
かかる積層フィルムとして製造した場合、本発明における第三成分の含有量はフィルム全体のポリエステルに対するフィルム全体に含有する第三成分量を上記した範囲とすることが必要である。本発明において改良すべき課題である光学的なムラの防止は、フィルムの透過光に関するものであり、フィルム表面や内部のみという訳ではなく全体の特性に関わるものであるためである。
また前記紫外線吸収剤、染料等の添加剤を添加する場合には積層フィルムの中間層に配合することが好ましい。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
まず、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
本発明においては、前記の通りポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/BまたはA/B/A構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
特に本発明のフィルムは、光学用途に用いるため、ハードコート層、反射防止層、防眩層等を設けたり、蒸着層等が設けられたりするため、それらの層を形成する際の塗布性や接着性を向上すること、あるいは表面を清浄な状態に保つため帯電を防止することを目的として、下引き層としての塗布層を設けることができる。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
なお、必要に応じてフィルムの製造後にオフラインコートでコートしてもよい。また、コートする面は、片面、両面を問わない。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
本発明のフィルムは、光学用に用いるので、接着性の改良以外にも外光の映り込みや静電気によるゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成させることも好ましい。
本発明で塗布剤として用いる、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる
このような塗布フィルムを光学用途に適用する場合には、塗布層表面の塗布ヌケが、この塗布層のさらに上に反射防止層等を設ける時等に問題となっている。塗布ヌケが生じる理由は明確ではないが、フィルム中にある異物がフィルム表面に粗大突起を作りそれが核となって塗布剤がはじき、それが延伸されて塗布ヌケが発生したり、フィルムの表面に付着したオリゴマーやゴミが核となりそこを核として塗布剤がはじきヌケとなったりする場合等が考えられる。したがって、かかる核となり得るゴミや異物をできる限り除去した条件で製膜することが必要である。かかる異物にはフィルム上に付着または析出したオリゴマーも含まれるため、フィルムが含有するオリゴマー量を低減することも塗布のヌケを減少させる効果を有する。
かくして得られる本発明のフィルムは、塗布層を有する場合その長径3mm以上の塗布ヌケの個数(N)がフィルム10m当たり50個以下であることが好ましく、さらに好ましくは30個以下、特に好ましくは10個以下である。
いずれにせよ今後ますます厳しくなる光学用フィルムにおいては、塗布ヌケは可能な限り零にすることが必要である。
本発明のフィルムは、光学用として使用されたときに特にその優れた効果を発揮するが、その具体的な部材としては、液晶ディスプレイ用としてバックライト用としての反射板、拡散板、プリズムシート、レンズシート、輝度向上フィルム、液晶パネルの保護フィルム、パネル製造時の工程用として離型フィルムなど、またプラズマディスプレイ用としていわゆるPDPフィルターと呼ばれる部材用として電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、色調補正、紫外線遮蔽、反射防止などの各機能を有するフィルムの基材、およびパネル製造時の工程用として、またプロジェクションテレビ用としては画像形成のスクリーン用など、高度な透明性を必要とする基材として有効に使用される。
本発明のフィルムは、透明性、低ヘーズ、光学的な均一性等の光学特性に優れ、光学製品の品質向上や消費エネルギー低減に寄与することができるものであり、LCD、PDP等に用いる各種光学用部材として用いた場合にその高度な特性が発揮され、工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)第三成分(共重合成分)含有量の測定
樹脂試料を重水化クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒に濃度3重量%となるように溶解させた溶液について、核磁気共鳴装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)を用いて、1 H−NMRを測定して各ピークを帰属し、ピークの積分値から共重合成分の含有量を算出した。
(3)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(4)フィルム中金属元素およびリン元素量の定量
蛍光X線分析装置((株)島津製作所社製型式「XRF−1500」を用いて、下記表1に示す条件下で、フィルムFP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。なお、本方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
Figure 2007156042
(5)フィルムb値
日本電色工業(株)製分光色色差計 SE−2000型を用いて、JIS Z−8722の方法に準じて、透過法によるb値を測定した。
(6)フィルムヘーズ・全光線透過率
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより、フィルムのヘーズ・全光線透過率を測定した。
(7)T−T(以下、単にΔTと表記する)
島津製作所社製分光光度計UV3100(マルチパーパス大型試料室MPC−3100設置タイプ)により、波長300〜800nmの領域で連続的に光線透過率を2nm刻みで測定し、各波長での光線透過率を求めた。次に、波長500〜600nmの光線透過率の相加平均値Tと、波長700〜800nmの光線透過率の相加平均値Tを求め、差を算出した。
(8)輝度
光学用部材の代表として、拡散板として使用した場合の特性を評価した。すなわちフィルムの片面に、粒子を含有するアクリル系バインダーを塗布して光拡散層を形成した。得られた拡散シートをバックライトユニットに組み込んで、得られる面状発光の品質を以下の観点で評価した。
輝度レベル(輝度計を用いて評価し、従来のPETフィルムすなわち本発明においては比較例1のフィルムを使用した場合と比較した)
A:輝度が向上し改良が見られた
B:輝度の向上が見られない
C;輝度の低下が見られた
(9)総合評価
b値、ヘーズ、全光線透過率、ΔT、輝度の特性より、光学用用途への適正を次に示す基準で判定した。
◎:全光線透過率が80%以上、ΔTが−1以上であり、b値、ヘーズ共に低く、輝度の向上が見られ、光学用途として非常に優れた特性を持つ。
○:全光線透過率が80%以上、ΔTが−1以上であるが、b値、ヘーズ、輝度の向上に若干改良の余地が見られるが、光学用途として使用できる特性を持つ。
×:全光線透過率が80%以下、ΔTが−1以下であり、b値、ヘーズ共高く、輝度の向上も見られないため、光学用途として使用することができない。
以下に実施例・比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次の通りである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とジエチレングリコール2重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63、ジエチレングリコール含有量は4.0モル%であった。
<ポリエステル(B)の製造>
出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部としたこと以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)の極限粘度は0.70、1,4−シクロヘキサンジメタノールの含有量は33モル%、ジエチレングリコールの含有量は1.0モル%であった。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部としたこと以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)の固有粘度は0.68、ポリマー中のジエチレングリコール含有量は1.0モル%であった。
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)チップを真空下220℃で固相重合し、極限粘度0.74のポリエステル(D)を得た。
<ポリエステル(E)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造において、重合触媒として三酸化アンチモンを使用したこと以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(E)を得た。得られたポリエステル(E)の固有粘度は0.65、ポリマー中のジエチレングリコール含有量は4.0モル%であった。
<ポリエステル(F)の製造方法>
ポリエステル(E)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部としたこと意外は、ポリエステル(E)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(F)得た。得られたポリエステル(F)の固有粘度は0.64、ポリマー中のジエチレングリコール含有量は1.0モル%であった。
<ポリエステル(G)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。
4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(G)のチップを得た。ポリエステル(G)の極限粘度は0.65であった。ジエチレングリコール含有量は1.0モル%であった。
<ポリエステル(H)の製造方法>
ポリエステル(C)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を2.0部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(H)を得た。得られたポリエステル(H)は、極限粘度0.66、ジエチレングリコール含有量は1.0モル%であった。
実施例1:
ポリエステル(E)、(H)チップをそれぞれ、95%、5%の割合でブレンドした原料を、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、83℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行い、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量は、それぞれ285ppm、0ppm(検出限界以下)、5ppmであった。また、ジエチレングリコール含有量は3.6モル%であった。以下、各実施例、比較例にて得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量、および、第三成分含有量を、下記表2にまとめて示す。
実施例2〜5:
実施例1において、使用したポリエステル原料を表2の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
比較例1:
実施例1において、使用したポリエステル原料を表2の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
比較例2:
実施例1において、使用したポリエステル原料を表2の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムにおいては、ゲル化物が原因と思われる異物が発生し、フィルムの品質としてやや劣るものであった。
比較例3、4:
実施例1において、使用したポリエステル原料を表2の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの物性値および光学部材適性について下記表3にまとめて示す。本発明の要件を満たすフィルムは、光学用としての適性が高いことがわかる。
Figure 2007156042
上記表中、DEGはジエチレングリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノールを意味し、実施例3、比較例4の第三成分含有量はDEGも含むものである。
Figure 2007156042
本発明のフィルムは、例えば、LCD、PDP等に用いる各種光学用部材や、光学分野の製品の製造工程において使用される保護フィルムや離型フィルム等に好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. フィルムの全光線透過率が80%以上であり、各波長の光線透過率が下記式を満足することを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。
    −T≧−1%
    (上記式中、Tは波長500nm〜600nmにおける光線透過率の平均値、Tは波長700nm〜800nmにおける光線透過率の平均値を意味する)
  2. 下記式(1)および(2)を同時に満足する量のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステルからなるフィルムであって、主たる構成成分以外の第三成分がジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれた1種または2種以上を2.0〜10.0モル%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
    0<WTi≦20 …(1)
    1≦W≦300 …(2)
    (上記式中、WTiはポリエステル層中のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステル層中のリン元素含有量(ppm)を示す)
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