以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る制御装置について、図1から図6を参照して説明する。
(エンジンの構成)
先ず、本実施形態に係る制御装置が設けられた内燃機関の一例たるエンジンの詳細な構成を、図1を参照して、その基本動作と共に説明する。ここに、図1は、本実施形態に係るエンジンの図式的なシステム系統図である。
図1において、エンジン200は、自動車に備えられており、シリンダ201内において点火プラグ202により、燃料(ガソリン)と空気とが混合された混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を動作と共に説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、本発明に係る「内燃機関の燃焼制御装置」の一例としての制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
ここで、制御装置100は電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)からなり、周知の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)、各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されている。また、スロットルポジションセンサ215等の各種センサからの入力信号を受ける入力ポート及び、電動モータ217やインジェクタ207等の各種アクチュエータに制御信号を送る出力ポートに対して、バスを介して接続されている。
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気弁208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気弁208の開閉に連動して開閉する排気弁209を通過して排気管210を介して排気される。
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量(以下、適宜「空気量」という)を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットル214が配設されている。このスロットル214には、スロットルポジションセンサ215が制御装置100と電気的に接続されており、その開度(即ち、スロットル開度)が検出可能に構成されている。更に、スロットル214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットル214を駆動する電動モータ217も配設されている。従って、制御装置100においては、アクセルペダル226の踏込量を検知するアクセルポジションセンサ216からの信号又は内部演算により求めた目標スロットル開度に実際のスロットル開度が一致するように電動モータ217に電流を流し、電動モータ217が駆動されることでスロットル214が開閉され、吸気管206を通過する吸気量が制御される。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン200の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
排気管210に沿って排気口側へと下っていくと、前段の三元触媒装置222及び後段の三元触媒装置234が設置されている。両三元触媒装置とも、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。三元触媒装置222の上流側(シリンダ側)には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210を介して排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
エンジン200は、2つ以上の燃焼方式の切り換えが可能であり、制御装置100は、エンジン200における、例えばストイキ燃焼方式及びリーン燃焼方式の2つの燃焼方式を、例えばトルク段差等の出力段差を抑制しつつ切り換えることが可能に構成されている。即ち、制御装置100は、上述したようにスロットルポジションセンサ215等の各種センサによって、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、燃料噴射時間等の検出が可能となっており、更に、燃焼方式の切り換えに応じて、電動モータ217によるスロットル開度制御、インジェクタ207による燃料噴射量或いは燃料噴射時間制御、点火プラグ202による点火時期制御等が可能となっている。
(制御装置の構成)
次に、本実施形態に係る制御装置の構成について、図1に加えて、図2を参照して説明する。ここに図2は、本実施形態に係る制御装置の図式的なブロック図である。
図2において、制御装置100は、出力推定部110、パラメータ制御部120、燃焼方式切換部130及び強制切換部140を備えている。
本発明に係る「出力推定手段」の一例としての出力推定部110は、例えば制御装置100の一例たるECUの一部等からなり、エンジン200の動作状態及び燃焼方式に基づいて、エンジン200の例えばトルク等の出力を推定する。出力推定部110は、エンジン200の出力を推定した結果を例えば、後述するパラメータ制御部120に出力する。
本発明に係る「パラメータ制御手段」の一例としてのパラメータ制御部120は、例えば制御装置100の一例たるECUの一部等からなり、本発明に係る「点火時期制御手段」の一例としての点火時期制御部120aを備えている。点火時期制御部120は、エンジン200の動作状態を規定する動作パラメータを変化させる制御の一例として、エンジン200に係る点火時期(即ち、点火プラグ202によって点火するタイミング)の遅角制御を行う。また、パラメータ制御部120は、動作パラメータを変化させる制御として、点火時期の遅角制御の他、点火時期の進角制御、吸気弁208の開閉時期の制御、排気弁209の開閉時期の制御、吸入空気量のスロットル214等による増減などが可能に構成されていてもよい。更に、点火時期制御部120は、点火時期の遅角制御を、エンジン200の燃焼方式の切り換え前に、出力推定部110によって切り換え前のエンジン200の出力として推定される切換前出力と、出力推定部110によって燃焼方式の切り換え後のエンジン200の出力として推定される切換後出力との例えばトルク段差等の出力段差が所定値よりも小さくなるまで、切換前出力を変化させるように行う。ここで、本実施形態に係る所定値は、出力段差が殆ど或いは好ましくは完全に無いと認められる程度の出力段差の大きさとして予め設定されている。
本発明に係る「燃焼方式切換手段」の一例としての燃焼方式切換部130は、例えば制御装置100の一例たるECUの一部等からなり、上述した出力段差(即ち、切換前出力と切換後出力との差)が上述した所定値よりも小さくなった後に、燃焼方式を切り換える。即ち、燃焼方式の切り換えに応じて、点火時期を遅角させる。
本発明に係る「強制切換手段」の一例としての強制切換部140は、例えば制御装置100の一例たるECUの一部等からなり、点火時期制御部120が点火時期の遅角制御を所定時間継続して行った場合に、燃焼方式を強制的に切り換える。ここで、本実施形態に係る所定時間は、燃焼方式を切り換えても、エンジン200の動作状態が殆ど或いは好ましくは完全に不安定にならないと認められる程度の十分な時間として設定されている。
(制御装置の動作処理)
次に、以上のように構成された本実施形態に係る制御装置の動作処理について説明する。
先ず、本実施形態に係る制御装置により、ストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理について、図1及び図2に加えて、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る制御装置により、ストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理を示すフローチャートである。図4は、ストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合におけるスロットル開度、空気量及び推定トルクの時間変化を示すグラフである。
制御装置100は、エンジン200における、例えばストイキ燃焼方式及びリーン燃焼方式の2つの燃焼方式を、本発明に係る「出力段差」の一例としてのトルク段差を抑制しつつ切り換える。ここで、ストイキ燃焼方式は、エンジン200において燃料と空気を理論空燃比で燃焼させる燃焼方式であり、例えばエンジン200のアイドル状態のとき、即ち、アクセルペダル226が踏み込まれていないときに用いられる。一方、リーン燃焼方式は、エンジン200において理論空燃比よりも空気に対して燃料が少ない状態で燃料と空気を燃焼させる燃焼方式であり、例えばアクセルペダル226が踏み込まれ、空気量が増加したときに用いられる。ここでは、アクセルペダル226の踏み込みに応じて(言い換えれば、これに対応したスロットル214の開閉に応じて)、エンジン200へ供給される空気量が変化する際に、燃焼方式がストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合について説明する。
図3において、先ず、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量に応じてスロットル214が開かれる(ステップS11)。即ち、スロットル214は、アクセルペダル226の踏み込み量に応じた目標スロットル開度に実際のスロットル開度が一致するように電動モータ217によって駆動され始める。言い換えれば、図4において、グラフCo1に示すように、スロットル開度は時刻t1から目標スロットル開度に一致するように増加し始める。そして、グラフCa1に示すように、エンジン200に吸入される空気量も、スロットル開度に応じて、目標空気量まで時刻t1後から増加し始める。
次に、燃焼方式の切換前トルク(即ち、燃焼方式が切り換えられる前にエンジン200から出力されるトルク)、ストイキ燃焼トルク(即ち、ストイキ燃焼方式で燃焼した場合にエンジン200から出力されるトルク)及びリーン燃焼トルク(即ち、リーン燃焼方式で燃焼した場合にエンジン200から出力されるトルク)が、動作状態及び燃焼方式に基づいて出力推定部110によって夫々推定される(ステップS12)。ここで、図4に示すように、スロットル214が開かれた直後(即ち、時刻t1の直後)は、ストイキ燃焼方式で燃焼されているため、切換前トルクとストイキ燃焼トルク(グラフCs1参照)とは殆ど又は完全に同じ大きさのトルクとして推定される。また、リーン燃焼トルク(グラフCl1参照)は、ストイキ燃焼トルク(Cs1参照)に比べて小さいトルクとして推定される。即ち、同じ空気量に対しては、リーン燃焼トルクは、ストイキ燃焼トルクに比較して小さいという関係がある。
尚、切換前トルク、ストイキ燃焼トルク及びリーン燃焼トルクの推定は、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角制御が行われる毎に繰り返される。リーン燃焼トルク及びストイキ燃焼トルクは、時間の経過に従って目標空気量に近づくように増大する空気量に応じて夫々推定される。即ち、図4に示すように、推定されるリーン燃焼トルク(グラフCl1参照)及びストイキ燃焼トルク(グラフCs1参照)は、空気量(グラフCa1参照)が目標空気量に達するまでは、時間の経過に従って増大することとなる。切換中のトルクは、例えば点火時期制御部120aによる点火時期の遅角によって殆ど或いは完全に変化しないようにされる。即ち、空気量の増加に伴うストイキ燃焼トルクの推定増大量(言い換えれば、切換前トルクとストイキ燃焼トルクとの差)分だけトルクを抑制するように、点火時期制御部120aは点火時期の遅角を行う。
次に、図3において、リーン燃焼トルクと切換前トルクとが、制御装置100によって比較される(ステップS13)。リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合(ステップS13:NO)、即ち、時間の経過が比較的短く(即ち、図4中、時刻t2よりも前であり)空気量が少ないためにリーン燃焼トルクが切換前トルクよりも小さい場合には、燃焼方式は切り換えられず(即ち、ストイキ燃焼方式のままで)、例えば点火時期制御部120aによって点火時期の遅角制御が継続的に行われる(ステップS15)。例えば点火時期の遅角は、ストイキ燃焼トルクと切換前トルクとの差の分だけ、即ち、トルクが切換前トルクになるように行われる。言い換えれば、点火時期の遅角を行うことによりエンジン200から出力されるトルクを殆ど或いは完全に一定に保つように補正が行われる。一方、リーン燃焼トルクが切換前トルクよりも大きい場合(ステップS13:YES)、即ち、時間の経過が比較的長く(即ち、図4中、時刻t2の直後であり)空気量が多いためにリーン燃焼トルクが切換前トルクより大きい場合には、燃焼方式がストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へと燃焼方式切換部130によって切り換えられる(ステップS16)。言い換えれば、切換前トルクと切換後トルクであるリーン燃焼トルクとの出力段差が所定値よりも小さくなった場合には、燃焼方式がストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へと燃焼方式切換部130によって切り換えられる。
このように、本実施形態では特に、リーン燃焼トルクと切換前トルクとのトルク段差が所定値よりも小さくなった後に、燃焼方式を切り換えるので、燃焼方式の切換時におけるトルク段差の発生を抑制或いは防止することができる。尚、本実施形態では、切換後トルクであるリーン燃焼トルクが切換前トルクよりも大きい場合に、燃焼方式が強制的にストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられるようになっているが、リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合においても、リーン燃焼トルクと切換前トルクとのトルク段差が所定値よりも小さいときには、燃焼方式が切り換えられるようにしてもよい。
更に、本実施形態では特に、強制切換部140は、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角制御が所定時間継続して行われた場合に、燃焼方式を強制的に切り換える。
即ち、図3において、リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合(ステップS13:NO)において、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角が行われる(ステップS15)前に、既に点火時期の遅角が所定時間継続して行われたか否かが強制切換部140によって判定される(ステップS14)。即ち、点火時期の遅角が行われた遅角制御時間と所定時間との比較が行われる。点火時期の遅角が所定時間継続して行われていない場合には(ステップS14:NO)、強制切換部140によって燃焼方式が強制的に切り換えられることはなく、続いて再び例えば点火時期の遅角制御が行われる(ステップS15)。一方、既に点火時期の遅角が所定時間継続して行われた場合には(ステップS14:YES)、点火時期制御部120aによって点火時期の遅角が行われることはなく、強制切換部140によって燃焼方式がストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へと切り換えられる。所定時間は、本実施形態では、エンジン200に供給される空気の空気量の遅れ時間である。即ち、スロットル214が開かれてから(即ち、時刻t1から)、空気が目標空気量に到達するまで(即ち、時刻t3)の時間T2である。この場合には、所定時間(即ち、空気量の遅れ時間T2)だけ経過していれば、リーン燃焼トルクは切換前トルクよりも大きくなっている、或いは、リーン燃焼トルクと切換前トルクとの出力段差が所定値よりも小さくなっている可能性が高い。言い換えれば、出力段差が殆ど或いは完全に発生しない程度にエンジン200に供給される空気の空気量が変更された後に、燃焼方式が強制的に切り換えられることになる。従って、強制切換部140によって、出力段差を発生させずに、確実に燃焼方式を切り換えることができる。例えばエアフローメータ212の製品ばらつきや経年劣化によって、図4のグラフCa2に示すように、空気量が誤って本来の空気量(グラフCa1参照)よりも少なく検出されるため、出力推定部110によって、図4のグラフCl2に示すように、誤ってリーン燃焼トルクが切換前トルクよりも小さいままと推定されてしまったとしても、確実に燃焼方式を切り換えることができる。即ち、出力推定部110によるトルクの推定における推定誤差による、エンジン200の燃焼方式の切り換えにおける制御異常を殆ど或いは完全に無くすことができる。尚、空気量遅れ時間として、スロットル214が開かれ始めてから(即ち、時刻t1から)、スロットル214が目標スロットル開度に到達するまでの時間T1に時間T2加えた時間T1+T2を設定してもよい。
次に、本実施形態に係る制御装置により、リーン燃焼方式からストイキ燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理について、図1及び図2に加えて、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態に係る制御装置により、リーン燃焼方式からストイキ燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理を示すフローチャートである。図6は、リーン燃焼方式からストイキ燃焼方式へ切り換えられる場合におけるスロットル開度、空気量及び推定トルクの時間変化を示すグラフである。尚、上述したストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理と同様の処理については適宜説明を省略する。
図5において、先ず、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量に応じてスロットル214が閉じられる(ステップS21)。図6において、グラフCo2に示すように、スロットル開度は時刻t4から目標スロットル開度に一致するように減少し始める。そして、グラフCa3に示すように、エンジン200に吸入される空気量も、スロットル開度に応じて、目標空気量まで時刻t4後から減少し始める。尚、スロットル開度が減少し始める前、即ち、時刻t4よりも前においては、エンジン200の燃焼方式は、リーン燃焼方式であり、時刻t4以降は制御装置100によって、ストイキ燃焼方式に切り換えられる。時刻t4から時刻t5の間は出力段差を発生させないように点火時期を遅角し、時刻t5において遅角を終了し通常のストイキ燃焼にする。
次に、燃焼方式の切換前トルク、ストイキ燃焼トルク及びリーン燃焼トルクが、動作状態及び燃焼方式に基づいて出力推定部110によって夫々推定される(ステップS22)。ここで、図6に示すように、スロットル214が開かれた直後(即ち、時刻t4の直後)は、リーン燃焼方式で燃焼されているため、切換前トルクとリーン燃焼トルク(グラフCl3参照)とは殆ど同じと推定される。
尚、切換前トルク、ストイキ燃焼トルク及びリーン燃焼トルクの推定は、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角制御が行われる毎に繰り返される。図6に示すように、推定されるリーン燃焼トルク(グラフCl3参照)及びストイキ燃焼トルク(グラフCs2参照)は、空気量(グラフCa3参照)が目標空気量に達するまでは、時間の経過に従って減少することとなる。切換中のトルクは、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角によって殆ど或いは完全に変化しないようにされる。即ち、切換前トルクとストイキ燃焼トルクとの差分だけトルクを抑制するように、点火時期制御部120aは点火時期の遅角制御を行う。
次に、図5において、ストイキ燃焼トルクと切換前トルクとが、制御装置100によって比較される(ステップS23)。ストイキ燃焼トルクが切換前トルク以上である場合(ステップS23:NO)、即ち、時間の経過が比較的短く(即ち、図6中、時刻t5よりも前であり)空気量が多いためにストイキ燃焼トルクが切換前トルク以上である場合には、燃焼方式はストイキ燃焼方式で、点火時期制御部120aによって点火時期の遅角制御が継続的に行われる(ステップS25)。例えば点火時期の遅角制御は、ストイキ燃焼トルクと切換前トルクとの差の分だけ、即ち、トルクが切換前トルクになるように行われる。言い換えれば、点火時期の遅角制御を行うことによりエンジン200から出力されるトルクを殆ど或いは完全に一定に保つように補正が行われる。一方、ストイキ燃焼トルクが切換前トルクよりも小さい場合(ステップS23:YES)、即ち、時間の経過が比較的長く(即ち、図6中、時刻t5の直後であり)空気量が少ないためにストイキ燃焼トルクが切換前トルクより小さくなったときに点火時期の遅角制御を終了する(ステップS26)。言い換えれば、切換前トルクと切換後トルクであるストイキ燃焼トルクとの出力段差が所定値よりも小さくなった場合には、燃焼方式がリーン燃焼方式からストイキ燃焼方式への切り換えが終了することになる。
このように、本実施形態では特に、ストイキ燃焼トルクと切換前トルクとのトルク段差が所定値よりも小さくなった後に、燃焼方式を切り換えるので、燃焼方式の切換時におけるトルク段差の発生を抑制或いは防止することができる。
更に、上述したように本実施形態では特に、強制切換部140は、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角制御が所定時間継続して行われた場合に、燃焼方式を強制的に切り換える。
即ち、図5において、ストイキ燃焼トルクが切換前トルク以上である場合(ステップS23:NO)において、点火時期制御部120aによる点火時期の遅角制御が行われる(ステップS25)前に、既に点火時期の遅角制御が所定時間継続して行われたか否かが強制切換部140によって判定される(ステップS24)。点火時期の遅角が所定時間継続して行われていない場合には(ステップS24:NO)、強制切換部140によって燃焼方式が強制的に切り換えられることはなく、続いて再び点火時期の遅角制御が行われる(ステップS25)。一方、既に点火時期の遅角が所定時間継続して行われた場合には(ステップS24:YES)、点火時期制御部120aによって点火時期の遅角制御が行われることはなく、強制切換部140によって燃焼方式がストイキ燃焼方式で点火時期遅角制御を行った状態から、通常のストイキ燃焼方式へと切り換えられる。所定時間は、上述したストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へと切り換えられる場合の所定時間と同じであってもよいし、異なっていてもよい。所定時間は、スロットル214が閉じられてから(即ち、時刻t4から)、空気が目標空気量に到達するまで(即ち、時刻t6)の時間T4であってもよい。この場合には、所定時間(即ち、空気量の遅れ時間T4)だけ経過していれば、ストイキ燃焼トルクは切換前トルクよりも小さくなっている、或いは、ストイキ燃焼トルクと切換前トルクとの出力段差が所定値よりも小さくなっている可能性が高い。従って、強制切換部140によって、出力段差を発生させずに、確実に燃焼方式を切り換えることができる。例えばエアフローメータ212の製品ばらつきや経年劣化によって、図6のグラフCa4に示すように、空気量が誤って検出されるため、出力推定部110によって、図6のグラフCs3に示すように、誤ってストイキ燃焼トルクが切換前トルクよりも小さいままと推定されてしまったとしても、確実に燃焼方式を切り換えることができる。即ち、出力推定部110によるトルクの推定における推定誤差による、エンジン200の燃焼方式の切り換えにおける制御異常を殆ど或いは完全に無くすことができる。尚、空気量遅れ時間として、スロットル214が閉じられ始めてから(即ち、時刻t4から)、スロットル214が目標スロットル開度に到達するまでの時間T3に時間T4加えた時間T3+T4を設定してもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る制御装置について、図7及び図8を参照して説明する。
先ず、本実施形態に係る制御装置の構成について、図7を参照して説明する。ここに図7は、第2実施形態における図2と同趣旨の図式的なブロック図である。尚、図7において、図2に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
図7において、制御装置102は、強制切換部140(図2参照)に替えて強制切換部142を備えている点で、第1実施形態に係る制御装置100と異なる。制御装置102における、その他の構成は第1実施形態に係る制御装置100と概ね同様である。
強制切換部142は、本発明に係る「空気量遅れ時間算出手段」の一例としての空気量遅れ時間算出部142aを備えている点で、第1実施形態に係る強制切換部140と異なる。空気量遅れ時間算出部142aは、エンジン200の動作状態に基づいて空気量遅れ時間を算出する。即ち、例えば、図4における時間T2或いは図6における時間T4を算出することが可能に構成されている。
次に、本実施形態に係る制御装置の動作処理について、図8を参照して説明する。ここに図8は、第2実施形態における図3と同趣旨のフローチャートである。尚、図8において、図3に示した第1実施形態に係る動作処理と同様の動作処理に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。また、ここでは本実施形態に係る制御装置により、ストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理について説明し、リーン燃焼方式からストイキ燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理については省略する。
図8において、制御装置102の動作処理は、リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合において(ステップS13:NO)、既に点火時期の遅角が所定時間継続して行われたか否かが強制切換部140によって判定される(ステップS14)前に、空気量遅れ時間が空気量遅れ時間算出部142aによって算出され、所定時間として設定される(ステップS31)点で、図3を参照して上述した第1実施形態に係る動作処理と異なる。
このように、本実施形態では特に、空気量遅れ時間が空気量遅れ時間算出部142aによって算出され、所定時間として設定されるので、トルク段差をより確実に、殆ど或いは完全に発生させることなく、燃焼方式を強制的に切り換えることができる。即ち、例えば空気量遅れ時間を算出せずに、一定の空気量遅れ時間を所定時間として設定する場合と比較して、トルク段差が発生することを一層抑制しつつ、燃焼方式を確実に切り換えることができる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る制御装置について、図9及び図10を参照して説明する。
先ず、本実施形態に係る制御装置の構成について、図9を参照して説明する。ここに図9は、第3実施形態における図2と同趣旨の図式的なブロック図である。尚、図9において、図2に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
図9において、制御装置103は、強制切換部140(図2参照)に替えて強制切換部143を備えている点で、第1実施形態に係る制御装置100と異なる。制御装置103における、その他の構成は第1実施形態に係る制御装置100と概ね同様である。
強制切換部143は、空気量遅れ時間算出部143a及び触媒溶損時間算出部143bを備えている点で、第1実施形態に係る強制切換部140と異なる。
本発明に係る「空気量遅れ時間算出手段」の一例としての空気量遅れ時間算出部143aは、エンジン200の動作状態に基づいて空気量遅れ時間を算出する。即ち、例えば、図4における時間T2或いは図6における時間T4を算出することが可能に構成されている。
本発明に係る「触媒溶損時間算出手段」の一例としての触媒溶損時間算出部143bは、
エンジン200の動作状態に基づいて、触媒溶損時間を算出する。触媒溶損時間は、エンジン200からの排気ガスの排気温度が、排気ガスを浄化するための三元触媒装置222及び234(図1参照)に係る触媒が溶損する触媒溶損温度に上昇するまでの時間である。
次に、本実施形態に係る制御装置の動作処理について、図10を参照して説明する。ここに図10は、第3実施形態における図3と同趣旨のフローチャートである。尚、図10において、図3に示した第1実施形態に係る動作処理と同様の動作処理に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。また、ここでは本実施形態に係る制御装置により、ストイキ燃焼方式からリーン燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理について説明し、リーン燃焼方式からストイキ燃焼方式へ切り換えられる場合に実行される処理については省略する。
図10において、制御装置103の動作処理は、リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合において(ステップS13:NO)、既に点火時期の遅角が所定時間継続して行われたか否かが強制切換部140によって判定される(ステップS14)前に、ステップS41からステップS44までの一連の動作処理が行われる点で、図3を参照して上述した第1実施形態に係る動作処理と異なる。
即ち、本実施形態では特に、リーン燃焼トルクが切換前トルク以下である場合には(ステップS13:NO)、先ず、空気量遅れ時間及び触媒溶損温度が夫々、空気量遅れ時間算出部143a及び触媒溶損温度算出部143bによって算出される(ステップS41)。
次に、算出された空気量遅れ時間が、算出された触媒溶損温度よりも大きいか否かが、強制切換部143によって判定される(ステップS42)。即ち、空気量遅れ時間と触媒溶損温度とが強制切換部143によって比較される。空気量遅れ時間が触媒溶損時間以上である場合には(ステップS42:NO)、強制切換部143によって、所定時間として触媒溶損時間が設定される(ステップS43)。一方、空気量遅れ時間が触媒溶損時間よりも小さい場合には(ステップS42:YES)、強制切換部143によって、所定時間として空気量遅れ時間が設定される。即ち、ステップS41からステップS44までの動作処理によって、所定時間として、空気量遅れ時間及び触媒溶損時間のいずれか小さい方が設定される。尚、空気量遅れ時間と触媒溶損時間とが同じ時間である場合には、その時間が所定時間として設定される。よって、トルク段差を殆ど或いは好ましくは完全に無くすことができると共に、更に、点火時期の遅角制御に係る動作処理(ステップS15)に伴う排気ガスの排気温度の上昇による三元触媒装置222及び234に係る触媒の溶損の発生を、より確実に、殆ど或いは完全に無くすことができる。或いは、燃費や排出ガスエミッションの悪化を、より確実に、低減或いは防止することができる。
尚、上述の実施形態では、パラメータ制御部120が有する点火時期制御部120を用いての点火時期の遅角制御によって、燃焼方式の切換時における出力段差の発生を抑制或いは防止するようにしたが、これに代えて又は加えて、点火時期制御部120を用いての点火時期の進角制御、或いは、パラメータ制御部120を用いての吸気弁208の開閉時期の制御、排気弁209の開閉時期の制御、吸入空気量のスロットル214等による増減など、その他の動作パラメータを変化させることによって、燃焼方式の切換時における出力段差の発生を抑制或いは防止するようにしてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の燃焼制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。