JP2007154321A - 熱融着性ポリウレタン弾性繊維及びその製造方法、並びに該ポリウレタン弾性繊維を用いた織編物 - Google Patents

熱融着性ポリウレタン弾性繊維及びその製造方法、並びに該ポリウレタン弾性繊維を用いた織編物 Download PDF

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Abstract

【解決手段】シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上である熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
【効果】本発明によれば、湿熱処理により、ほつれ等の生じにくい熱融着性ポリウレタン弾性繊維を提供することができる。また、本発明のポリウレタン弾性繊維を芯糸とし、周囲を非弾性繊維で被覆したシングルカバリングヤーン等の複合繊維として用いることができ、湿熱処理により、ほつれ等が生じにくい織編物が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、湿熱処理時の熱融着性に優れ、断糸や劣化が起こり難い熱融着性ポリウレタン弾性繊維及びその製造方法、並びにこの熱融着性ポリウレタン弾性繊維を用いた織編物に関する。
ポリウレタン弾性繊維は、伸びが大きく、伸長状態からの回復力やフィット性が良いため広く利用されている。
しかし、ポリウレタン弾性繊維を混用した生地を裁断、縫製して作られた製品を繰り返し伸張すると、変形して不均一な生地になる「変形、目ずれ、わらい」、糸が抜け出す「ほつれ」、生地の組織にはしご状の傷やずれが発生した「ラン、デンセン」、生地が湾曲した「カール」等の問題が起きやすい。また、繰り返し伸長により縫製部分でポリウレタン弾性繊維が縫目から抜け出す、いわゆる「スリップイン」も起きやすい。このスリップインが発生して弾性繊維が抜け出した生地の部分は、当然のことであるが、収縮力が無くなるので生地に密度斑が発生し、着用できなくなるという問題があった。
これらの現象は、ポリウレタン弾性繊維以外の弾性繊維を使用した織編物でも起きるが、伸縮性の強いポリウレタン弾性繊維の場合は特に顕著である。
こうした問題点に対処するため、特開2002−339189号公報(特許文献1)には、ウレア化合物を添加したポリウレタンウレア重合体溶液を乾式紡糸することで、繊維の熱融着性を改良する方法が提案されている。
また、溶融紡糸によって得られ、一定の強力保持率と融点を有する熱融着性の改良されたポリウレタン弾性繊維も提案されている(特許文献2:WO2004/053218)。
しかしながら、上記特許文献1においては、160〜195℃で乾熱処理して熱融着させたものであり、湿熱処理して熱融着させる熱融着性ポリウレタン弾性繊維は提案されていなかった。一方、特許文献2については、湿熱処理時の熱融着性の更なる向上が求められていた。
特開2002−339189号公報 WO2004/053218
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、湿熱処理により、衣料分野で有用な熱融着性を発揮するポリウレタン弾性繊維及びその製造方法並びにこのポリウレタン弾性繊維を用いて得られる織編物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため検討し、断糸特性を改良した熱融着性のポリウレタン弾性繊維を提案している(特願2005−105077号)が、湿熱処理時の熱融着性の更なる向上を求めて鋭意検討を重ねた結果、乾熱処理に比べ熱負荷が低い湿熱処理でもポリウレタン弾性繊維相互が充分に熱融着すること、及び該ポリウレタン弾性繊維とその共用繊維との融着効果も上げることが前記の課題の解決に重要であることを知見した。そして、この知見に基づいて研究を進めた結果、シングルカバリングヤーン(SCY)編地法において、120℃で20秒間、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上である熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、特に湿熱処理工程を経て作製される、伸縮性が求められる衣料分野で、編地の風合いを損ねることなく、伝線防止やほつれ止め等に優れた効果を発揮することを見出すと共に、所定の条件下で上記特性を有する熱融着性ポリウレタン弾性繊維が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
[1]シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[2]シングルカバリングヤーン編地法において、115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上である[1]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[3]300%伸長した直後の残留歪みが、40%以下であることを特徴とする[1]又は[2]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[4]ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して55モル%以上80モル%未満であることを特徴とする[1]、[2]又は[3]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[5]紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.8質量%以上4.2質量%以下である[4]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[6]ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して80モル%以上98モル%未満であることを特徴とする[1]、[2]又は[3]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[7]紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下である[6]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[8](I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマーを溶融紡糸してなる[4]乃至[7]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[9]炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールが、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとからなり、主となる低分子量ジオールが炭素数2及び/又は4のジオールである、又は炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとからなり、主となる低分子量ジオールが、炭素数6のジオールである[4]乃至[8]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[10]ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して98モル%以上100モル%以下であることを特徴とする[1]、[2]又は[3]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[11](I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマーを溶融紡糸してなる[10]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[12]主となる低分子量ジオールが、炭素数2、4及び6のジオールより選ばれる少なくとも1種のジオールである[10]又は[11]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[13]紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満である[10]、[11]又は[12]記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[14]第一及び第二ポリオールが、ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールであり、全ポリオールに対するポリエステルジオールの割合が55モル%以上95モル%以下である[4]乃至[13]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[15]第一及び第二ポリオールが、ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールであり、全ポリオールに対するポリエーテルジオールの割合が60モル%以上100モル%以下である[4]乃至[13]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維、
[16][1]乃至[15]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維単独又はこれと他の繊維とを混用して製織編してなるポリウレタン弾性繊維混用織編物、
[17][1]乃至[15]のいずれかに記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維と、少なくとも1種類の非弾性糸とを含み、湿熱処理により熱融着性ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はこれと非弾性糸との交差部を熱融着させてなる[16]記載のポリウレタン弾性繊維混用織編物。
[18](I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
(III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
(IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して55モル%以上80モル%未満であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.8質量%以上4.2質量%以下であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法、
[19](I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
(III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
(IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して80モル%以上98モル%未満であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法、
[20](I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
(III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
(IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して98モル%以上100モル%以下であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法
を提供する。
本発明によれば、湿熱処理により、ほつれ、目ずれ、わらい、デンセン、ラン、カール、スリプイン等(以下ほつれ等という)の生じにくい熱融着性ポリウレタン弾性繊維を提供することができる。また、本発明のポリウレタン弾性繊維を芯糸とし、この周囲を非弾性糸で被覆したSCY等の複合糸として用いることができ、湿熱処理により、ほつれ等が生じにくい織編物が得られる。
ほつれ等が生じにくくなるのは、湿熱処理により、ポリウレタン弾性繊維が融解し、ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はこれと非弾性糸との交差部で、又はポリウレタン弾性繊維と、該ポリウレタン弾性繊維を被覆する非弾性糸からなる複合糸との交差部で、更に複合糸相互の交差部で熱融着し、SCY編地法において所定条件で湿熱処理したときの熱融着力が0.3cN/dtex以上となることによる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間、特には115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上である熱融着性ポリウレタン弾性繊維である。
ここで、本発明においてSCY編地法とは、以下の方法をいう。
(1)ポリウレタン弾性繊維11〜156dtexを芯糸とし、被覆糸としてナイロン6フィラメント糸13dtex5フィラメント(東レ製 商品名アミラン)を使用し、ドラフト倍率2.3倍、撚り数600T/MでカバリングしたSCYを作製する。
(2)パンスト編機(ロナティ社製L416/R、釜径:4インチ、針数400本)の給糸口に(1)で作製したSCYを給糸し、カウント2400コース、伸び寸45cmとし、該SCY一口のみでパンスト編地を作製する。
(3)パンスト編地のつま先をミシンで縫製した後、幅11cmのアルミ製型板に入れ、ウェル方向に1.2倍伸長した状態で、湿熱セット機で所定の温度で20秒間熱処理(熱セット)する。
(4)熱融着力を以下の方法で測定する。
引張試験機[島津製作所(製)精密万能試験機]上部チャックに把持した編地の端から解編したSCYを0.1cNの荷重下で下部チャックに把持し、つかみ間隔(チャック間隔)100mm、引張速度100mm/分で引張り、編地からSCYを解編する時の張力を測定する。
次いで、熱融着部位が解離する度に計測される解編張力のピーク点について、
解編応力が安定する伸長量100mmから200mmの間で値が大きい3番目までのピーク点を平均して、ピーク平均解編張力を求める。続いて、ピーク平均解編張力(cN)をポリウレタン弾性繊維の初期繊度(dtex)で除して熱融着力(cN/dtex)とする。
ポリウレタン弾性繊維相互、あるいはポリウレタン弾性繊維と使用したナイロンとの熱融着度が高くなると、SCYの解編張力は高くなる。更に熱融着が進み一層強く熱融着すると、把持したSCY中のポリウレタン弾性糸は伸長により破断し、把持部に残ったナイロンだけが引き出されるようになり、この場合は、「完全融着」と評価して、熱融着力が最大に達したことを表す。
なお、SCY編地法を本評価に用いた理由は、本願の湿熱処理を実施する編地に使用するポリウレタン弾性繊維として、ベア糸で用いるケースもあるが、カバリング糸や合撚糸、エア交絡糸などの複合糸として用いるケースも多いこと、更に、該ポリウレタン弾性繊維と共用繊維をプレーティング編で使用する場合に比べ、SCYなど複合糸として使用するとポリウレタン弾性繊維相互の接触箇所が少なくなり融着には不利な条件、より厳しい条件で効果を評価する為である。
また、湿熱処理においても、エネルギーロスを少なくしたり、編地が硬くならず、使用繊維そのものの柔らかい風合いを維持する為に、130℃よりは125℃、125℃よりも120℃という具合でより低温で処理することが求められており、SCY編地を用いて120℃以下で大きな融着効果を発揮することは永年の課題であった。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、シングルカバードヤーン編地法における熱融着力が0.30cN/dtex以上である。熱融着力が0.30cN/dtex未満では、繰り返して該編地又は該製品を使用する際にランが生じたり、該編地を切り離しで繰り返して使用した際にランやほつれ等が生じてしまう。なお、例えば1回のみの使用で廃棄処分する使い捨て製品においては、0.1cN/dtex以上の熱融着力を持っておれば、ランやほつれに対する耐久性はあるが、本発明では、使い捨て製品だけでなく、繰り返して使用する製品にもランやほつれ等の問題が発生することなく安心して使用する為に、0.30cN/dtex以上が必要とするものである。
また、熱融着力が高くなるにつれランやほつれに対する耐久性は高くなり、好ましくは0.4cN/dtex以上、更に好ましくは0.8cN/dtex以上の熱融着力をもつことが望ましいが、熱融着力を上げる為に湿熱処理を強くすると、共用した繊維が硬くなり風合いなどが低下するおそれがあり、適度な熱融着力と使用した繊維本来の風合いが発現する条件を適時選択することが望ましい。
本願発明のポリウレタン弾性繊維を用い大きな熱融着効果が得られる理由については、湿熱でもポリウレタン弾性繊維の極表面が軟化しやすく、該弾性繊維相互の接触箇所が融着することに加え、ポリウレタン弾性繊維と共に用いた共用繊維とも融着することでSCY編地法で0.30cN/dtex以上の熱融着力が得られるものと思われる。
ここで、本発明において熱融着とは、ポリウレタン弾性繊維が、湿熱処理により、ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はポリウレタン弾性繊維と他の繊維とが融着し、密着している状態や、繊維の少なくとも一部が融着し、密着している状態、或いは融着まで至らなくても繊維同士が接着している状態をいう。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、更に以下の物性を有していることが好ましい。
即ち、本発明のポリウレタン弾性繊維は、300%伸長した直後の残留歪みが40%以下、特に35%以下であることが好ましい。残留歪みが40%より大きいポリウレタン弾性繊維を使用した製品は、肘抜け、膝抜け、伸びきり等の問題が発生したり、身体の補正効果が充分に発現されないので好ましくない。
300%伸長直後の残留歪みとは、把握長4cm、300mm/分で16cmまで伸長した後直ちに伸長時と同じ速度で元の長さまで回復させた時、応力がゼロになった時の残留伸びを基にし、下記式より算出した値をいう。
残留歪み=(残留伸びcm/4cm)×100(%)
また、2倍伸長下で、150℃で45秒間乾熱処理したときの耐熱強力保持率の値が20%以上が好ましく、特に30%以上であることが好ましい。耐熱強力保持率が20%未満では、ランやほつれ防止効果があってもポリウレタン弾性繊維の伸長回復性が低下したり、物性低下が大きくなるので好ましくない。耐熱強力保持率の上限は特に制限されないが、通常110%以下、特に100%以下である。
更に、本発明のポリウレタン弾性繊維は、140℃で45秒間乾熱処理した場合、耐熱強力保持率の値は40%以上が好ましく、特に50%以上であることが好ましく、150℃で45秒処理した時の強力保持率が20%以上かつ、140℃で45秒処理した場合の強力保持率が40%以上となることが好ましい。
耐熱強力保持率は、以下の測定方法による。
ポリウレタン弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、熱処理を行う。熱処理後のポリウレタン弾性繊維の破断時強力を、定伸長の引っ張り試験機を使用し、把握長5cm、伸長速度500m/分で測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。熱処理前の繊維に対する耐熱強力保持率を表示する。
また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、140℃で45秒間乾熱処理した場合、熱セット率の値は30%以上が好ましく、特に40%以上であることが好ましい。また、150℃で45秒処理した場合の熱セット率が50%以上となることが好ましい。熱セット率が小さすぎると、加工時の寸法が不安定で編地にしわが残ったりすることがあり好ましくない。熱セット率の上限値は特に制限されないが、通常100%以下、特に90%以下である。
熱セット率の測定方法は以下の通りである。
ポリウレタン弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、乾熱処理を行う。熱処理終了より30秒後に把握長4cmにし、糸を弛ませた状態にする。熱処理終了より5分30秒後、把握長を大きくし、やや伸長した状態にしたのちに1mmずつ把握長を狭くしていく。全糸に注目し、糸が弛み始めたところの長さを測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。次の式で熱セット率を求める。
熱セット率(%)=[(16cm−測定値cm)/8cm]×100
本発明のポリウレタン弾性繊維の製造方法は、上記特性を備えたポリウレタン弾性繊維が得られる限り、特に制限されるものではなく、溶融紡糸方法及び乾式紡糸法のいずれを採用してもよい。
例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させてポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し、糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミン又は低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し、溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し、糸条に成形する方法、前記固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、前記ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、更には、上記のそれぞれの方法で得られたポリマー又はポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し、糸条に成形する方法等がある。
溶融紡糸法にて本発明のポリウレタン弾性繊維を得る方法は、特に制限されるものではないが、例えば以下の3つの方法が知られている。
(1)ポリウレタン弾性体チップを溶融紡糸する方法。
(2)ポリウレタン弾性体チップを溶融した後、ポリイソシアネート化合物を混合して紡糸する方法。
(3)ポリオールとジイソシアネートを反応させたプレポリマーと低分子量ジオールとを反応させた紡糸用ポリマーを合成した後、固化させることなく紡糸する反応紡糸方法。
(3)の方法は、(1)、(2)の方法に比べ、ポリウレタン弾性体チップを取り扱う工程が無いため簡略であり、また、プレポリマーの反応機への注入割合を調節して、紡糸後のポリウレタン弾性繊維中の残留イソシアネート基の量を調整でき、この残留イソシアネート基による鎖延長反応で耐熱性の向上を得ることもできるため、好適な方法である。更に、(3)の方法では、特表平11−39030号公報に開示されているように、低分子量ジオールをプレポリマーの一部と事前に反応させ、水酸基過剰のプレポリマーとして反応機に注入する方法も行うことができる。
より具体的には、(I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマー(以下「両末端イソシアネート基プレポリマー」とする)と、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマー(以下「両末端水酸基プレポリマー」とする)とを反応させて得られるポリマーを固化することなく溶融紡糸する方法を好適に採用することができる。
この場合、紡糸用ポリマーの合成は、(I)数平均分子量800〜3,500の第一ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーの合成、(II)数平均分子量600〜3,000の第二ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーの合成、及び(III)これら二つのプレポリマーを反応機に導き、連続的に反応させる紡糸用ポリマーの合成の3つの反応で構成される。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維を溶融紡糸法で製造する場合、第一ポリオールの数平均分子量は、800〜3,500程度のポリマージオールを用いることが好ましく、第二ポリオールの数平均分子量は、600〜3,000程度のポリマージオールを用いることが好ましい。
第一ポリオールの数平均分子量がこの範囲より小さいと、得られるポリウレタン弾性繊維の破断伸度や弾性回復性が低下する場合があり、大きいと破断強度や耐熱性、耐寒性などが低下したり、紡糸時の押出性、例えば溶融紡糸の場合では紡糸性が低下する場合がある。従って、より好ましくは、第一ポリオールの数平均分子量は、1,000〜3,000程度である。
一方、第二ポリオールの数平均分子量がこの範囲より小さいと、糸が硬くなったり、均質性に欠ける場合があり、大きいと耐熱性や強度の改善効果が期待できないおそれがある。より好ましくは、第二ポリオールの数平均分子量は、800〜2,500程度である。
第一ポリオールの分子量に比べて第二ポリオールはより低分子量とすると、糸の強度が上がるなど物性上好ましい。なお、ポリオールの数平均分子量の測定方法は、JIS K1557に従い、水酸基価より算出できる。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維に使用できるポリオールとしては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール等を用いることができる。
ポリエーテルグリコールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコールの重縮合により得られるポリエーテルグリコール、THF及び3−MeTHFの共重合体である変性PTMG、THF及び2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG等が例示できる。
ポリエステルグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類から選ばれる少なくとも1種と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の二塩基酸類から選ばれる少なくとも1種との重縮合によって得られるポリエステルグリコール;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られるポリエステルグリコール等が例示される。
ポリカーボネートグリコールとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート等から選ばれる少なくとも1種の有機カーボネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジオールとのエステル交換反応によって得られるカーボネートグリコール等が例示される。
上記例示したポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコールは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールを使用することが好ましい。
次に、本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造に使用できるジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に際して通常使用されている脂肪族系、脂環式系、芳香族系、芳香脂肪族系等の任意のジイソシアネートを使用することができる。
このようなジイソシアネートとしては、例えば4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でも4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
鎖長延長剤としては、低分子量ジオールや低分子量ジアミンを使用することができ、反応速度が適当であり、適度な耐熱性を与えるものが好ましく、分子中にイソシアネートと反応し得る少なくとも2個の活性水素原子を有し、一般に分子量が500以下の低分子量化合物が使用される。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維に使用できる低分子量ジオールとしては、炭素数が2〜6のジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては特に、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとを組み合わせたり、炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとを組み合わせて、少なくとも2種の低分子量ジオールを併用することが優れた熱融着効果を示し、かつ反応性、紡糸の安定性、物性などの点から好ましい。また、上記において炭素数2〜6の低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを使用することが好ましい。
また、低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ブタンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン等を用いることができる。
低分子量ジオールと低分子量ジアミンを併用することもできるが、本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法においては、鎖長延長剤として低分子量ジオールをより好ましく使用することができる。
また、反応調整剤又は重合度調整剤として、ブタノール等の1官能性のモノオールやジエチルアミンやジブチルアミン等の1官能性のモノアミンを混合して用いることもできる。
更に、紡糸性を阻害しない範囲内で、水酸基及び/又はアミノ基などの官能基を有する平均官能基数(分子中の活性水素原子の数)が3〜6、特に3又は4である活性水素化合物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール(4価)、ソルボース(5価)、ソルビトール(6価)、1,3,5−トリアミノベンゼン等などが挙げられる。
この場合、官能基数が6を超えると、最終的に得られるポリウレタンの弾性(柔軟性)を付与することができないため好ましくない。好ましくは3官能性化合物が使用され、特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンが好ましく使用される。
上記活性水素化合物の使用量は、鎖長延長剤と活性水素化合物を合わせた全部に対して、3官能化合物が6当量%以内であることが好ましい。6当量%を超えると、柔軟性を付与できず、紡糸性が安定しないため好ましくなく、特に好ましくは、4当量%以下である。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維には、耐候性、耐熱酸化性、耐黄変性改善のために、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の任意成分を添加することができる。安定剤を使用する場合は、安定剤の種類、配合量により耐熱性、耐黄変性が大きく異なるため、ポリウレタン重合体に対して効果を発揮する安定剤の種類を選択し、それぞれに効果のある安定剤の配合量を組み合わせて使用することが好ましい。適した安定性を使用することにより黄変しにくく、耐熱性の優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができる。
その他必要に応じて、セミカルバジド系化合物等の安定剤、ビスフェノールSなどの有機硫黄系二次酸化防止剤、ホスファイト系二次酸化防止剤、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、酸化チタン、ジルコニウム含有化合物等のような無機微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、オルガノシロキサン等の粘着防止剤、フッ素系又はシロキサン系などの帯電防止剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナなどの無機質コロイドゾル、シランカップリング剤、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ピロリン酸エステルなどの熱融着向上剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルなどの防腐剤、その他着色剤、防カビ剤、消泡剤、可塑剤、ワックス類、軟化剤、離型剤、発泡剤、増量剤、増核剤、抗菌剤、消臭剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
原料の組成比は上記3つの反応を通算して、全ジイソシアネートのモル量と、全ポリオール及び全低分子量ジオールの合計モル量とのモル比が0.95〜1.25が好ましく、更に好ましくは1.005〜1.205である。
また、全ジイソシアネートとポリオール(第一ポリオールと第二ポリオールの合計)のモル比は2.4〜3.8が好ましく、更に好ましくは、2.5〜3.5である。モル比が2.4より低いと得られるポリウレタン弾性繊維の伸度が高くなるが、耐熱性が不足する場合があり、モル比が3.8より高いと耐熱性は良いが、糸が硬く伸度も低くなる場合がある。
本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、(1)ポリオールの種類とその含有量、並びに(2)低分子量ジオールの種類とその含有量及び紡糸直後のポリウレタン繊維に含まれる窒素含有量をそれぞれ調整し、組み合わせることで、高い熱融着性を達成することができる。具体的に、上記(1)、(2)の各条件は、更に下記の各条件に分けられる。
(1a)全ポリオール(第一及び第二ポリオールの合計)中のポリエステルポリオール成分の割合が55モル%以上95モル%以下のとき。
(1b)全ポリオール中のポリエーテルポリオール成分の割合が60モル%以上100モル%以下のとき。
(2a)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が55モル%以上80モル%未満であり、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.8質量%以上4.2質量%以下のとき。
(2b)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が80モル%以上98モル%未満、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.2質量%以上4.2質量%以下のとき。
(2c)全低分子量ジオール中の主となる炭素数2〜6のジオールの割合が98モル%以上100モル%以下、かつ紡糸直後のポリウレタン繊維の窒素含有量が2.2質量%以上2.8質量%未満のとき。
なお、本発明において、主となる低分子量ジオールとは、全低分子量ジオールのうち、モル量が最も多い(55モル%以上)低分子量ジオールをいう。
各条件について説明すると、まず、ポリオールの種類と含有量については、(1a)特に良好な融着性と編地の均整度を得るためには、全ポリオール中のポリエステルポリオール成分を55モル%以上、好ましくは55モル%以上95モル%以下、更に好ましくは60モル以上90モル%以下である。ポリエステルポリオールの割合が少なすぎると可紡性や糸の均斉度が低下したり、耐塩素性が劣る場合があり、多すぎると耐アルカリ性、耐カビ性に劣る場合がある。なお、第一ポリオールとしてポリエステルポリオール成分を選ぶと、糸の均整度を高くする点で好ましい。
一方、(1b)特に良好な融着性と高い耐熱強力保持率を得るためには、全ポリオール中のポリエーテルポリオール成分が60モル%以上100モル%以下、更に好ましくは70モル%以上100モル%以下であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの割合が少なすぎると耐熱強力保持率が低下したり、可紡性や糸の均斉度が低下したりする場合がある。なお、第一ポリオールとしてポリエーテルポリオール成分を選ぶと耐アルカリ性が高くなる点で好ましい。
次に、低分子量ジオールの種類と含有量については、(2a)主となる炭素数2〜6のジオールの含有率が全低分子量ジオールに対して、55モル%以上80モル%未満とすることが好ましく、より好ましくは60モル%以上80モル%未満である。炭素数2〜6のジオールのうち、主となる低分子量ジオールである炭素数2〜6のジオールは、併用量が55モル%未満であると、繊維の伸長回復率、圧縮永久歪みや耐熱性が悪くなる場合がある。
炭素数2〜6のジオールの含有率が55モル%以上80モル%未満の場合、得られるポリウレタン弾性繊維の窒素含有率は2.8質量%以上4.2質量%以下、特に2.9質量%以上3.4質量%以下が好ましい。窒素含有率が低すぎると耐熱性が低くなる場合があり、高すぎると熱融着力が低くなる場合がある。
一方、(2b)炭素数2〜6のジオールの含有率が80モル%以上98モル%未満の場合は、窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下、特に2.6質量%以上3.4質量%以下であることが好ましい。窒素含有率が低すぎると、イソシアネートとの反応に関わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が劣るため好ましくなく、窒素含有率が高すぎると、イソシアネート化合物に起因するポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、熱融着力が低くなる場合がある。
ここで、本発明においては、上述したように炭素数2〜6のジオールのうち、少なくとも2種類の低分子量ジオールを併用することが好ましいが、(2a)及び(2b)の場合、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとを組み合わせて用いるときは、耐熱性、伸長回復性などの点から、炭素数2及び又は4のジオールが主となることが好ましく、炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとを組み合わせて用いるときは、耐熱性、伸長回復性、伸縮疲労性、耐薬品性などの点から炭素数6のジオールが主となることが好ましい。
また、(2c)炭素数2〜6のジオールの含有率が98モル%以上100モル%以下の場合は、窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満、特に2.4質量%以上2.8質量%未満であることが好ましい。窒素含有率が低すぎると、イソシアネートとの反応に関わる結合の濃度が低下し、耐熱性や耐摩耗性が劣るため好ましくなく、窒素含有率が高すぎると、イソシアネート化合物に起因するポリウレタン中のハードセグメントの凝集力が強くなり、熱融着力が低くなる場合がある。
(2c)の場合、炭素数2〜6のジオールのうち、少なくとも1種の低分子量ジオールを使用することができ、耐熱性、伸長回復性などの点から、炭素数2、4及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールが主となることが好ましい。
本発明においては、上記(1a)又は(1b)の条件と、(2a)、(2b)又は(2c)の条件とを組み合わせた方法により、いずれも熱融着性に優れたポリウレタン弾性繊維を得ることができ、それぞれの条件下で、上述したように特有な効果をもたらすことができる。
溶融紡糸方法についてより具体的に説明すると、(I)の両末端イソシアネート基プレポリマーは、例えば温水ジャケット及び撹拌機を具備したタンクに所定量のジイソシアネートを仕込んだ後、撹拌しながら所定量のポリオールを注入し、60〜130℃で30〜100分、更に好ましくは80〜120℃で50〜70分窒素パージ下で撹拌することにより得ることができる。
反応温度が60℃未満では、反応時間が大幅に長くなり、場合によってはプレポリマーが析出してくるおそれがある。また、反応温度が130℃を超えると、イソシアネート基のダイマー及びトリマー化反応等の副反応が顕著になり好ましくない。
この反応で得られた両末端イソシアネート基プレポリマーは、ジャケット付きギアポンプ(例えば、KAP−1 川崎重工業(株)製)を用いてポリウレタン弾性繊維用反応機に注入する。
(II)の両末端水酸基プレポリマーは、温水ジャケット及び撹拌機を具備したタンクに所定量のジイソシアネートを仕込んだ後、撹拌しながら所定量のポリオールを注入し、60〜130℃で30〜100分、好ましくは80〜120℃で50〜70分窒素パージ下で撹拌して前駆体を得、次いで、低分子量ジオールを注入し、撹拌して前駆体と反応させることで得ることができる。反応温度が80℃以下では、反応時間が大幅に長くなり、場合によってはプレポリマーが析出してくる。また、反応温度が130℃以上では、イソシアナート基のダイマー及びトリマー化反応等の副反応が顕著になり好ましくない。
得られた両末端水酸基プレポリマーはジャケット付きギアポンプ(例えば、KAP−1 川崎重工業(株)製)を用いてポリウレタン弾性繊維用反応機に注入する。なお、この(I)、(II)の両プレポリマー合成時あるいは合成後に、耐候性、耐熱酸化性、耐黄変性等を改善するための上記各種薬品類を添加することができる。
(III)の紡糸用ポリマーの合成は、一定比率で送り込まれた(I)、(II)のプレポリマーを、連続反応させて得ることができる。この場合、反応機としては、通常のポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸法に用いられるものでよく、紡糸用ポリマーを加熱、溶融状態で撹拌、反応させ、更に紡糸ヘッドに移送する機構を備えた反応機が好ましい。
反応条件は、160〜220℃で1〜90分、好ましくは180〜210℃で3〜80分である。反応温度が160℃未満では、(I)、(II)のプレポリマーが高粘度状態であるため均一に混合反応できず、また反応温度が220℃以上では、紡糸用ポリマーが熱により黄変したり劣化したりするため好ましくない。
原料を直接反応機に投入して連続的に製造する場合、スクリュウやバレル、ポリマーの流路で局部反応がおこるため、ビス(ヒドロキシフェニル)類を上述プレポリマーに添加することができる。このビス(ヒドロキシフェニル)類は、特開平8−176254号公報の「ポリウレタン組成物」記載の通り、局部反応せず、均一混練下で重合することができるため、スケールが発生し難く、工程安定性の高いポリウレタンを供給することができる。
このビス(ヒドロキシフェニル)類を1種単独で又は2種類以上混合して使用することにより、透明性に優れ、しかも強伸度、耐熱性等の物性も良好な実用性に富んだポリウレタン弾性繊維が得られる。好ましいビス(ヒドロキシフェニル)類は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビスフェノールA、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフォン等が挙げられる。
本発明の溶融紡糸法による熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、合成された紡糸用ポリマーを固化させることなく紡糸ヘッドに移送し、ノズルから吐出、紡糸して得ることができるが、紡糸用ポリマーの反応機内での平均滞留時間は反応機の種類によって異なり、下式により計算される。
反応機内での平均滞留時間=(反応機容積/紡糸用ポリマー吐出量)×紡糸用ポリマーの比重
紡糸用ポリマーの反応機内での平均滞留時間は、一般的に円筒形反応機を用いる場合は約20〜180分であり、約30〜120分がより好ましく、2軸押出し機を用いる場合は30秒〜30分であり、1〜20分がより好ましい。紡糸温度は160〜230℃が好ましく、更に好ましくは180〜220℃であり、ノズルより連続的に押出した後、冷却し、紡糸油剤を付着して巻取ることによって得ることができる。
紡糸温度が160℃未満では、紡糸用ポリマーがノズルより吐出不良を起こすため好ましくなく、また230℃以上の高温では、紡糸用ポリマーの分解反応が起こるため好ましくない。
ここで、両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーとの比率は、紡糸した直後の糸中に残留イソシアネート基(残留NCO%)が0.2〜1.0質量%、より好ましくは0.25〜0.90質量%残るように注入ギアポンプの回転比率を適宜調整することが好ましい。残留イソシアネート基が0.2質量%以上過剰に含まれていると、紡糸後の鎖延長反応により強伸度、耐熱性等の物性を向上させることもできる。しかし、残留イソシアネート基が0.2質量%より少ないと、得られるポリウレタン弾性繊維の耐熱性が低下するおそれがあり、また、1.0質量%を超えると紡糸用ポリマーの粘度が低くなり、紡糸が困難になる場合が生じる。また、紡糸した糸の融点が高くなりすぎるなどの欠点が生じるおそれがある。
なお、紡糸した繊維中の残留イソシアネート基の含有率は以下のように測定する。
紡糸した繊維(約1g)をジブチルアミン/ジメチルホルムアミド/トルエン溶液で溶解した後、過剰のジブチルアミンと試料中の残留イソシアネート基を反応させ、残ったジブチルアミンを塩酸で滴定し、残留イソシアネート基の含有量を算出する。
残留イソシアネート基を残したまま、紡糸するためには紡糸時に油剤を付与することが好ましい。油剤を付与しないままで紡糸すると、紡糸後に残留イソシアネート基が反応して糸同士が接着したり、解舒性が悪くなる場合がある。
本発明で使用されるベース油剤の成分としては、鉱物油、シリコーンオイルなどが挙げられる。
油剤は、ポリウレタン弾性繊維中に油剤が1〜10質量%、特に2〜8質量%含まれるように付与することが好ましい。上記値をポリウレタン弾性繊維に付与されている油剤の割合、即ち付与率といい、これは含有率(含有されている割合)と付着率(付着されている割合)の両者を合わせた率である。
油剤がポリウレタン弾性繊維に対して1質量%未満であると、解舒性が悪く、編み針等の金属による摩耗を引き起こしやすいので好ましくなく、また10質量%を超えて付着していると、紙管に巻かれた糸の内層部に油剤が多く付着し内層ポリマーが油剤により劣化したり、ノズルカスを発生させたり、非弾性繊維と編地を作成した際に非弾性繊維のオリゴマーを析出するなどの悪影響を与えるため好ましくない。
付与率の測定は、重量法又は石油エーテル抽出法によって行うことができる。重量法による測定方法は、事前に空紙管の質量、紡糸ノズルからのポリマーの単位時間当たりの吐出量、紙管への糸の巻取時間、巻糸体の質量を計量し、巻糸体の質量からポリマーの総吐出量及び空紙管の質量を差し引いた残りの質量が油剤の付与量であり、計算で求めた油剤の付与量からポリマーの総吐出量を除した割合が油剤の付与率である。
石油エーテル抽出法による測定方法は、
(1)巻取糸サンプル(A)を約2g精秤した後、石油エーテル50mlで1分間洗浄する。
(2)この洗浄を3回繰り返した後、巻糸サンプルをろ紙で挟んで充分乾燥させる。
(3)室温にて風乾後、巻取り糸サンプルの重量(B)を測定する。下記式に従いOPUを算出する。
OPU(油剤付与量)%={(A−B)/(B)}×100
簡易的には重量法で、確認検査として石油エーテル抽出法のいずれの方法でもOPU%を求めることができる。
油剤を付与して巻取られた糸は、固相重合を行い反応を完結させる。
本発明の熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度は、弾性繊維構造体の形状保持性能と製造コストの両面から適宜選択することができ、製造の容易さやコスト面から11〜800dtexであることが好ましく、更に好ましくは17〜622dtexである。特に好ましくは17〜156dtexである。得られる熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、単糸当たりのdtexが大きい方が熱セット性の向上には有利である。
繊度の測定方法は、巻糸体から糸を解除し、24時間放置して収縮させた後、張力なしの状態で糸を繊度測定板に引いた直線に沿って置き、100cmの長さに50本切り、合計50本分の質量を測定する。
繊度(dtex)=測定質量(mg)/50×10
なお、SCY編地法の繊度の範囲外の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力は、その(同じ組成の)熱融着性ポリウレタン弾性繊維において、繊度を11〜156dtexとしたものの熱融着力を測定することによる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、上述したように、紡糸した直後の糸中の残留イソシアネート基が0.2〜1.0質量%であることが好ましいが、残留イソシアネート基が0.2質量%未満では架橋結合の生成量が少ないために耐熱性が低く、糸切れしやすい。また残留イソシアネート基が1.0質量%を超えると架橋結合の生成量が多く、耐熱性が高くなるため溶融するまでに時間がかかり、熱融着性を得られにくいため好ましくない。
上記範囲とすることで、ポリウレタン弾性繊維として必要な耐熱性を保ちつつ、湿熱処理により良好な熱融着性の効果を得ることができる。
上記製法によって得られるポリウレタン弾性繊維は、SCY編地法において120℃で20秒間、特には115℃20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上であるため、これを織編物に用いることで、ほつれ等の発生を抑えた織編物を得ることができる。
また、本発明の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含有した複合糸、具体的には、上記熱融着性ポリウレタン弾性繊維を芯糸とし、被覆繊維として非弾性糸を使用したSCY、コアスパン糸、又は合撚糸等として織編物に使用し、湿熱処理により良好な熱融着力を得ることができる。
次に、本発明のポリウレタン弾性繊維混用織編物は、上記熱融着性ポリウレタン弾性繊維(原糸)又は上記熱融着性ポリウレタン弾性繊維を芯糸としたSCY等の複合糸と、非弾性糸とを混用した以下の構造を有するものとすることができる。
なお、熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸等のいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。更に、高融点ポリウレタン弾性繊維を混用してもよい。
(1)熱融着性ポリウレタン弾性繊維と少なくとも1種類の非弾性糸とを含む複合糸を経糸及び/又は緯糸に使用した織物。組織は平織、綾織、朱子織等のいずれでもよく、織機についてもシャトル式織機、レピア式織機、エアージェット式織機等を使用することができる。更に、経糸及び緯糸は全部該複合糸であっても良いし、複合糸と非弾性糸とを1:1、1:2又は1:3等の打ち込み比率で混合使用しても良い。
(2)編機の同じコースに熱融着性ポリウレタン弾性繊維及び少なくとも1種類以上の非弾性糸を混用した緯編地。熱融着性ポリウレタン弾性繊維及び非弾性糸を編み込んだ緯編地の編組織は平編、ゴム編、パール編、両面編、及びこれらを組み合わせたり、変化させたりした組織等のいずれの組織でも編成することができ、編機についても丸編機、横編機、フルファッション編機、セーター編機、靴下編機、ガーメント・レングス編機等各種の成型編機等全ての編機を使用することができる。熱融着性ポリウレタン弾性繊維は挿入又は編み込みのどちらでも良い。また、熱融着性ポリウレタン弾性繊維と非弾性糸のプレーティング編でも良いし、熱融着性ポリウレタンと非弾性糸の複合糸を使用しても良い。(1)と同様に全コースに熱融着性ポリウレタン弾性繊維を編み込んでも良いし、1コース以上おきに編み込んでも良い。熱融着性ポリウレタン弾性繊維と非弾性糸を交互、又は適当な間隔おきに編み込んでも良い。更に熱融着性ポリウレタン弾性繊維を混用してもよい。
(3)熱融着性ポリウレタン弾性繊維及び少なくとも1種類以上の非弾性糸を混用した経編地。熱融着性ポリウレタン弾性繊維及び非弾性糸を編み込んだ経編地の編組織はクサリ編、デンビ編、コード編、アトラス編、及びこれらを組み合わせたり、変化させたりした組織等のいずれの組織でも編成することができ、編機についてもトリコット編機、ラッシェル編機、ミラニーズ編機等の全ての編機を使用することができる。(1)と同様に全面に熱融着性ポリウレタン弾性繊維を編み込んでも良いし、適当な間隔おきに編み込んでも良い。また、熱融着性ポリウレタン弾性繊維は挿入又は編込みのどちらでもよい。
熱融着性ポリウレタン弾性繊維と混用される非弾性糸としては、特に制限は無く、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等の繊維を使用することができるが、ポリウレタン弾性繊維の混用割合は、1〜60質量%程度、特に2〜50質量%程度が好ましい。
本発明の高融着性ポリウレタン弾性繊維混用織編物の製造方法は、上記構造を有する織物又は編物を常法により製織又は製編した後、湿熱処理(セット)することにより得ることができる。
湿熱セットの方法は例えば(株)芦田製作所製のスチームセッターを使用し、蒸気元圧2.5〜3.0kg/cm2にて通蒸バルブを開放し、密閉したセット室内に蒸気を入れ、セット室内を所定の温度にコントロールする。この場合、セット温度は80〜140℃、特に90〜135℃である。次に、織編地を型板に取り付けし、セット室内に入れ、所定の時間セットする。セット時間は10〜180秒、特に15〜120秒とすることができる。その後、乾熱110℃の乾燥室にいれ、60秒間乾燥する。湿熱セットを行うセット機は、設定温度、設定時間で湿熱セットできるものであれば、特に限定されない。
熱セット温度が低すぎる場合はセット効果が不足したり、編地の寸法安定性、収縮特性が劣るため好ましくなく、高すぎる場合は、非弾性糸の強力低下や熱変色、風合いが硬くなるなどの弊害が生じてくるので好ましくない。
このような熱融着性ポリウレタン弾性繊維を使用した混用織編物は、ブリーフ、パンティ、ショーツ、アンダーシャツ、キャミソール、ガードル、ブラジャー、スパッツ、ボディスーツ、生理用ショーツ等の下着類、水着、レオタード、リゾートウエア、ホームウエア、アンダーウエア、スポーツ用タイツ、シャツ、上着材、手袋、靴下、腕カバー、医療用衣料、手術衣、半導体工場でのクリーンルーム作業用衣料、防塵衣料、サポーター、アイマスク等の衣料製品、使い捨ておむつ、失禁パット、ガーゼ、包帯、貼布材、包装材、マスク、シーツ、タオル、ハンカチ等の衛生用品、衣料芯地、精密濾過用フィルター、工業用ワイパー、保護カバー等の産業用資材のように高度の伸長性と伸長回復性とを必要とする分野で使用される。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、中でも、湿熱処理される衣料、例えば、ストッキング等の足回り編地製品、製品の形に編んでいく成型編地に好適に利用できる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を示す。また、残留NCO%は塩酸による滴定法により測定した値である。数平均分子量の測定方法は、JIS K1557に準拠して行った。
[実施例1]溶融紡糸法によるポリウレタン弾性繊維の製造(低分子量ジオール第二成分入り(i))
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)23.5部を窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)48.1部を撹拌しながら注入し、1時間反応させた。次いで、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)18.2部を更に注入し、1時間反応させた。更に1,6−へキサンジオール(HDO)10.2部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,100のポリエチレンアジペート(PEA)を69.1部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
得られた両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.308の質量比で、ポリウレタン弾性繊維用円筒形反応機に連続的に供給した。反応機内での平均滞留時間は約1時間、反応温度は約197℃であった。
得られた紡糸用ポリマーを固化することなく、197℃の温度に保った8ノズルの紡糸ヘッド2台に導入した。紡糸用ポリマーをヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルターでろ過後、1ホールのノズルから紡糸筒内に吐出させ、紙管に巻き取り、33dtexのポリウレタン弾性繊維を得た。
なお、全低分子量ジオール(BDO+HDO)に対するBDOの割合は70モル%であった。また、紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.43%であった。
得られた巻糸体を直ちに温度40℃で相対湿度80%の部屋の中で5日間固相反応させた。
ポリウレタン弾性繊維(表層)を2倍に伸長した状態で140℃に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、熱処理を行った。熱処理前の繊維に対する耐熱強力保持率は57%であった。また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を2倍に伸長した状態で150℃に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、熱処理を行った。熱処理前の繊維に対する耐熱強力保持率は40%であった。
ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、30%であった。熱セット率は、140℃の場合が50%、150℃の場合が59%であった。
なお、ここで表層とは、巻糸体の最表層及びそこから巻き取り量全体の10質量%分の領域をさす。
シングルカバリングヤーン(SCY)の作製
得られたポリウレタン弾性繊維(33dtex)を芯糸とし、被覆糸としてナイロンフィラメント糸13dtex5フィラメントを使用し、ドラフト倍率2.3倍、撚り数600T/Mでカバリングした。
パンティストッキングの作製
SCYパンスト編地の作製パンスト編機(ロナティ社製L416/R、釜径:4インチ、針数400本)の給糸口にSCYを給糸して、カウント2400コース、伸び寸45cmとし、SCYのみでパンスト編地を作製した。
熱セット
(株)芦田製作所製スチームセッターを使用し、幅11cmのアルミ製型板に入れた状態で、ウェル方向に1.2倍の伸長し、その状態に保ったまま、編地を湿熱115℃及び120℃で、それぞれ20秒間セットした。
ラン評価
SCY編地の片面の任意の5箇所の編目をはさみで切断し、カーブのついたアクリル板(チェトメ社製の靴下・ストッキングのサイズ採寸測定器ミズラトーレに付属したアクリル板を使用した。該アクリル板の概寸は、幅約20cm、長さ約80cm、凹部の深さ最大約4cm)に該編地を挿入する。
この時、編目を切断した面が板の凹側になるよう挿入する。該編面は板面と接触しないで挿入されるので、ラン(伝線)が最も発生し易い状態となり、この時のランの有無でパンストの耐ラン性を評価した。
なお、該アクリル板へ編地を挿入する際は、着用時のパンストへかける力と同等ないし同等以上の力を加えることが好ましい。例えば、手で素早く挿入してもよいし、あるいは編地に定荷重(1kgf)の力を加え挿入してもよい。実施例及び比較例では、当該編地を手で素早く挿入することで評価した。カーブのついたアクリル板への挿入は合計2回繰り返し、その後ランの発生状態を観察した。
○:ランが発生しない
×:ランが発生する
ストッキング編地斑評価
ストッキング編地をアクリル製で黒の平板(幅10cm、長さ88cm)に通し、斑の状態を目視で評価する。
○:編地の均整度が高く、良好なレベル
△:編地の均整度は多少劣るが、使用は可能なレベル
×:編地の均整度が低く、使用できないレベル
SCY編地法における熱融着力は、湿熱115℃の場合が0.65cN/dtex、120℃の場合が1.12cN/dtexであった。ラン評価において、いずれもランは発生せず、熱融着性が優れていることが確認できた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度が高く、斑がなかった。
また、湿熱でのセット率が良好であるため、大きく仕上がったため、着用しやすかった。また、洗濯を10回繰り返しても編目の安定性に優れているために編目が揃った美しい編面を保持していた。
[実施例2]溶融紡糸法によるポリウレタン弾性繊維の製造(低分子ジオール第二成分入り(ii))
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を23.9部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)49.0部を撹拌しながら注入し、1時間反応させた。次いで低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)22.5部を注入し、1時間反応させた。更に1,5−ペンタンジオール(PEDO)4.6部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
実施例1と同様にして、両末端イソシアネート基プレポリマーを合成した。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
得られた両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.308の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。
なお、全低分子量ジオール(BDO+PEDO)に対するBDOの割合は85モル%であった。また、紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留NCO%は0.43%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は52%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は29%であった。
ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、33%であった。熱セット率は、140℃の場合が58%、150℃の場合が65%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地法における熱融着力は、湿熱115℃の場合が0.59cN/dtex、120℃の場合が、1.03cN/dtexであった。ラン評価において、ランは発生せず、熱融着性が優れていることが確認できた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度が高く、斑がなかった。また、湿熱でのセット率が良好であるため、大きく仕上がった。また、洗濯を10回繰り返しても編目の安定性に優れているために、編目が揃った美しい編面を保持していた。
[実施例3]溶融紡糸法によるポリウレタン弾性繊維の製造(低N%)
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を24.0部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)49.3部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)26.6部を更に注入し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜にジイソシアネートとしてMDIを23.8部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.2部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,100のポリエチレンアジペート(PEA)を74.9部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.205の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は2.7%であり、残留NCO%は0.43%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は45%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は20%であった。
また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、35%であった。熱セット率は、140℃の場合が60%、150℃の場合が67%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地法における熱融着力は、115℃の場合が0.45cN/dtex、120℃の場合が0.85cN/dtexであった。ラン評価において、ランは発生せず、熱融着性が優れていることが確認できた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度が高く、斑がなかった。また、湿熱でのセット率が良好であるため、大きく仕上がった。また、洗濯を10回繰り返しても編目の安定性に優れているために、編目が揃った美しい編面を保持していた。
[実施例4]溶融紡糸法によるポリウレタン弾性繊維の製造(低分子量ジオール第2成分入り)
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を23.5部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)48.1部を撹拌しながら注入し、1時間反応させた。次いで低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)18.2部を注入し、1時間反応させた。更に1,6−へキサンジオール(HDO)10.2部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールした80℃の反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,000のPTMGを69.1部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.308の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。
なお、全低分子量ジオール(BDO+HDO)に対するBDOの割合は70モル%であった。また、紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留NCO%は0.35%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は63%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は57%であった。
また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、24%であった。熱セット率は、140℃の場合が48%、150℃の場合が53%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地法における熱融着力は、115℃の場合が0.89cN/dtex、120℃の場合が1.10cN/dtexであった。ラン評価において、ランは発生せず、熱融着性が優れていることが確認できた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度はやや劣るが使用可能なレベルであった。また、湿熱でのセット率が良好であるため、大きく仕上がった。洗濯した際の編目の安定性に優れており、洗濯を10回繰り返しても維持した。
[実施例5]溶融紡糸法によるポリウレタン弾性繊維の製造(低N%)
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を24.0部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)49.3部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)26.6部を更に注入し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールした80℃の反応釜にジイソシアネートとしてMDIを23.8部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.2部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,000のPTMGを75部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.210の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は2.7%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.30%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は71%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は53%であった。
また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、25%であった。熱セット率は、140℃の場合が49%、150℃の場合が57%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地法における熱融着力は、115℃の場合が0.44cN/dtex、120℃の場合が0.82cN/dtexであった。ラン評価において、ランは発生せず、熱融着性が優れていることが確認できた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度はやや劣るが使用可能なレベルであった。また、湿熱でのセット率が良好であるため、大きく仕上がった。洗濯した際の編目の安定性に優れており、洗濯を10回繰り返しても維持した。
[比較例1]
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を24.0部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)49.3部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)26.6部を更に注入し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,100のポリエチレンアジペート(PEA)を69.1部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.291の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.85%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は100%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は93%であった。
また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、25%であった。熱セット率は、140℃の場合が39%、150℃の場合が42%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地における熱融着力は、115℃の場合が0.07cN/dtex、120℃の場合が0.12cN/dtexであった。ラン評価において、ランが発生し、熱融着性は劣っていた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度が高く斑がなかったが、仕上がり寸法は実施例1より20%小さく、着用しやすさは実施例1に劣った。
[比較例2]
両末端水酸基プレポリマーの合成
ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を23.5部、窒素ガスでシールされた80℃の温水ジャケット付き反応釜に仕込み、ここにポリマージオールとして数平均分子量1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)48.3部を撹拌しながら注入した。1時間反応後、低分子量ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDO)26.6部を更に注入し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン(BHPS)1.0部を添加して15分撹拌して両末端水酸基プレポリマーを合成した。
両末端イソシアネート基プレポリマーの合成
これと並行して、窒素ガスでシールした80℃の反応釜にジイソシアネートとしてMDIを29.6部仕込み、紫外線吸収剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール(TIN234):20%)、酸化防止剤(3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン:50%)、光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート:30%)の混合物1.3部を添加し、撹拌しながら数平均分子量2,000のPTMGを75.0部注入し、40分間撹拌を継続して、両末端イソシアネート基プレポリマーを得た。
ポリウレタン弾性繊維の溶融紡糸
両末端イソシアネート基プレポリマーと両末端水酸基プレポリマーを、1:0.308の質量比でポリウレタン弾性繊維用反応機に連続的に供給し、実施例1と同様な方法で33dtexのポリウレタン弾性繊維を製造した。紡糸直後のポリウレタン弾性繊維に含まれる窒素含有率(N%)は3.2%であり、残留イソシアネート基(残留NCO%)は0.42%であった。
完成した糸の物性を実施例1と同様に測定したところ、140℃熱処理後の強力保持率は64%であった。また、150℃熱処理後の強力保持率は62%であった。
また、ポリウレタン弾性繊維(表層)を300%伸長した直後の残留歪みは、35%であった。熱セット率は、140℃の場合56%、150℃の場合63%であった。
実施例1と同様にSCY、及びパンスト編地を作製し、湿熱セットした。
SCY編地法における熱融着力は、115℃の場合が、0.14cN/dtex、120℃の場合が0.24cN/dtexであった。ラン評価において、ランが発生し、熱融着性は劣っていた。
パンストの編地斑評価は編地の均整度はやや劣るが使用可能なレベルであった。仕上がり寸法は実施例1より15%小さく、着用しやすさは実施例1より劣った。
実施例1〜5及び比較例1,2の結果を下記表1にまとめて示す。
Figure 2007154321

Claims (20)

  1. シングルカバリングヤーン編地法において、120℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  2. シングルカバリングヤーン編地法において、115℃で20秒間湿熱処理したときの熱融着力が0.30cN/dtex以上である請求項1記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  3. 300%伸長した直後の残留歪みが、40%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  4. ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して55モル%以上80モル%未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  5. 紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.8質量%以上4.2質量%以下である請求項4項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  6. ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して80モル%以上98モル%未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  7. 紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下である請求項6記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  8. (I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマーを溶融紡糸してなる請求項4乃至7のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  9. 炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールが、炭素数2及び/又は4のジオールと、炭素数3、5及び6のジオールから選ばれる少なくとも1種の低分子量ジオールとからなり、主となる低分子量ジオールが炭素数2及び/又は4のジオールである、又は炭素数6のジオールと、炭素数3及び/又は5のジオールとからなり、主となる低分子量ジオールが、炭素数6のジオールである請求項4乃至8のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  10. ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて得られるポリマーであって、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して98モル%以上100モル%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  11. (I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、(II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマーを溶融紡糸してなる請求項10記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  12. 主となる低分子量ジオールが、炭素数2、4及び6のジオールより選ばれる少なくとも1種のジオールである請求項10又は11記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  13. 紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満である請求項10、11又は12記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  14. 第一及び第二ポリオールが、ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールであり、全ポリオールに対するポリエステルジオールの割合が55モル%以上95モル%以下である請求項4乃至13のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  15. 第一及び第二ポリオールが、ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールであり、全ポリオールに対するポリエーテルジオールの割合が60モル%以上100モル%以下である請求項4乃至13のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維。
  16. 請求項1乃至15のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維単独又はこれと他の繊維とを混用して製織編してなるポリウレタン弾性繊維混用織編物。
  17. 請求項1乃至15のいずれか1項記載の熱融着性ポリウレタン弾性繊維と、少なくとも1種類の非弾性糸とを含み、湿熱処理により熱融着性ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はこれと非弾性糸との交差部を熱融着させてなる請求項16記載のポリウレタン弾性繊維混用織編物。
  18. (I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
    (II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
    (III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
    (IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
    を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して55モル%以上80モル%未満であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.8質量%以上4.2質量%以下であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法。
  19. (I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
    (II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも2種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
    (III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
    (IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
    を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して80モル%以上98モル%未満であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上4.2質量%以下であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法。
  20. (I)第一ポリオール及びジイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基プレポリマーを合成する工程、
    (II)第二ポリオール、ジイソシアネート及び炭素数2〜6の少なくとも1種の低分子量ジオールを反応させて両末端水酸基プレポリマーを合成する工程、
    (III)両末端イソシアネート基プレポリマー及び両末端水酸基プレポリマーを反応させて紡糸用ポリマーを合成する工程、
    (IV)紡糸用ポリマーを溶融紡糸する工程
    を含み、低分子量ジオールのうち主となる低分子量ジオールの含有率が、全低分子量ジオールに対して98モル%以上100モル%以下であると共に、紡糸直後のポリマーの窒素含有率が2.2質量%以上2.8質量%未満であることを特徴とする熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造方法。
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