JP2007153001A - 車載電装品における通信経路を切り替える装置及び方法 - Google Patents

車載電装品における通信経路を切り替える装置及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】車載電装品、特に電動パワーステアリング制御装置において、制御データを送受する通信回線が故障しても、通信を断絶することなく予備の回線に切り替える(無瞬断切り替え)ことで制御を続行する。
【解決手段】2つ以上用意された通信経路に仮想スイッチを用意し、通信回線に運用系(現在使用されている回線)であるか、予備系(非運用系)(予備として切り替え可能である回線)であるかを仮想定義し、伝送データにその識別情報をもたせ、識別情報の切り替えを行うように構成する。これにより、データを途絶させること無く運用系を切り替えることが可能となり、制御の続行が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、電動パワーステアリング制御装置等の車載用電装品(モジュール、システムを含む)における通信経路を冗長化し、通信回線に異常が認められたとき又はメンテナンス等のために必要なときにその通信回線を切り替える装置及び方法に関する。
例えば電動パワーステアリング制御装置において、制御ユニット(CPUを内装)間の通信手段を冗長して構成したものは、例えば、特開2004年173370(特許文献1)及び特開2004年173371(特許文献2)等に開示されている。
前者の文献に開示の装置は、シリアル通信ライン(主回線)とパラレル通信ライン(副回線)とを設け、シリアル通信が正常に行われていないと判断したときは、パラレル通信ラインを介し送られてきた指令値を用いて、操舵補助を行うためのモータを制御する。
また後者の文献に開示の装置は、シリアル又はパラレル通信ライン(主回線)とアナログ通信ライン(副回線)とを設け、シリアル又はパラレル通信が正常に行われていないと判断したときは、アナログ通信ラインを介し送られてきた指令値を用いて、操舵補助を行うためのモータを制御する。
特開2004年173370 特開2004年173371
これらの文献に開示の従来の装置では、主たる通信回線における伝送エラーを、その回線のハードウェアが持つデータの異常検出機能によって検出し、又はソフトウェアが付与したエラーチェック情報を基にして検出している(例えばチェックサムなど)。
しかし、これらの文献には、冗長化された副回線が正常であるか否かを検出する手段について特段の開示は無い。従って、主たる回線における場合と同様な手段を用いるか、あるいは全くそのような手段を設けていない。
主たる通信回線及び副回線の双方にそれぞれ同様の検出手段を設けるとしたら、構成が煩雑となりまたそれだけコスト高となる。他方、副回線にそのような検出手段を設けていないとしたら、副回線を介して伝送されるデータの品質は保証されない。
また、冗長化された副回線は、結局予備の回線としてのみ使用されるから、主たる回線と同等の品質でデータを伝送するものではない。従って、主回線における障害が復旧しない場合、あるいは復旧に困難を伴う場合、フェールセーフに基づき車載電装品自体の動きを停止させることもあり得る。さらに、主回線における障害発生時に、副回線の情報に切り替える場合、同じタイミングで必ずしも情報が伝達されているとは限らないため、切り替えた時点で、順序逆転や情報そのものの欠落等、情報の混濁が発生し得る。よって副回線への切り替え時点を含めた前後の情報を正確に対向側に伝達することが困難である。
本発明は、上述した従来の装置における問題点を解決するために開発されたもので2つ以上用意された通信経路の送受信処理部に仮想スイッチを用意し、通信回線に運用系(現在使用されている回線)であるか、予備系(非運用系)(予備として切り替え可能である回線)であるかを仮想定義し、伝送データにその識別情報をもたせ、仮想スイッチにて運用系のみの情報を選択するようにし、結果的に運用系のみを伝わって情報が送られてきたように見せ、この識別情報の切り替えを行うことで運用系が切り替えられるように構成する。これにより、データを途絶させること無く運用系を切り替えることが可能となる。
なお、通信経路に情報を送信する側は、同じデータをほぼ同じタイミングで送信し、若干のズレは情報を受信する側にて補正する。
従来の車載用電装品、例えば電動パワーステアリング制御装置では、通信経路の障害発生時、フェールセーフのためにアシスト制御を停止するものが多いが、本件発明を、電動パワーステアリング制御装置に適用した場合では、障害発生と共に、運用系と同じデータを伝送する予備の回線へ切り替わるから、アシスト制御はそのまま継続できる。即ち、従来の電動パワーステアリング制御装置では、障害発生時にアシスト制御を停止するため、データの欠落の概念自体が無い、もしくは障害発生時にアシスト制御を続行する場合でも、回線を切り替えた場合に発生し得るデータの順序逆転や欠落等の問題に対する概念そのものがないか、あったとしても確実とはいえない。かかる事情は、他の車載用電装品でも同様である。
本発明では、回線切り替え時に通信が断絶しないから、データの欠落なくして予備の回線へ切り替えることが可能である(無瞬断切り替え機能)。
本発明では、定期的に回線を切り替えることで予備側の回線のチェックができるから、冗長化された回線の信頼性が向上し、運用系の障害時に予備側の回線にいつ切り替えても問題無く動作する。
少なくとも2つ以上の回線から同時にデータを受信することになるので、受信側では、従来のエラーチェックの他に、さらに受信したデータ同士を比較することで、データの正常、異常を判断することが可能となる。そのため、より高品質なデータの転送が可能となり、データの信頼性、精度が格段に向上する。
障害発生時に運用系を予備系(非運用系)に切り替えるが、この場合、今まで運用系であった回線は予備系(非運用系)となるので、予備となった状態でハードウェアの初期設定を行うなどして、通信障害を復旧させることが可能である(システムの延命措置を取ることが可能)。
本発明では、障害発生時に、無瞬断で通信回線の切り替えを行い、障害復旧処理を行うが、通信経路が二重化である場合、復旧を行う期間予備系回線への切り替えが出来なくなるため、電動パワーステアリング制御装置に対し、電流出力制御等を行うことによって、復旧期間中、車両の運転者(ドライバ)に対して危険な挙動を与えないように配慮することが出来る。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る、車載用電装品(モジュール、システムを含む)の通信経路を切り替える装置の一実施例を示すブロック図である。
車載用電装品、例えば電動パワーステアリング制御装置では、操舵トルク及び車速等に基づいてモータ指令値を演算する第1の処理ユニット(CPU0)と、この第1の処理ユニットにより算出された指令値に基づいてモータ(図示せず)を駆動する第2の処理ユニット(CPU1)とを有し、これらの両処理ユニットは、送受信部を介し、通信回線で相互に接続されている。
本発明では、この通信回線として、運用系(現在使用されている回線)及び予備系(非運用系)を含む少なくとも2回線を設ける(図示では、双方向の通信が可能な回線L1,L2を設けている、ただし双方向であることは必須ではない)。運用系・予備系(非運用系)の定義は仮想であり、運用系回線か予備系回線かはハードウェア固有の情報やハードウェアに依存する情報ではなく、転送データの一部に、それぞれの回線を示すために付与された識別情報(通信回線が2回線の場合は識別データは1ビットで済む)によって区別される。詳細は後述する。
図1において、第1処理ユニットCPU0は、アプリケーションAP0、仮想スイッチSW0、送受信部(送信S00,受信R00、送信S10,受信S10)で構成され、第2処理ユニットCPU1は、アプリケーションAP1、仮想スイッチSW1、送受信部(送信S01,受信R01、送信S11,受信S11)で構成されている。ただし、アプリケーション、仮想スイッチ、送受信部は、処理ユニット内部の物理的な構成要素をそのまま表現したものではなく、機能的な構成を示す要素として理解されたい。また、図示実施例では、これらの素子は、処理ユニットに内装されたものとして表現したが、本発明は、これに限定されない。いくつかの要素は、処理ユニットの外部に設けることも可能である。なお、送受信部は、具体的には、データの送信及び/又は受信ポート又はユニット(インターフェイスを含む)等に対応する。
仮想スイッチSW0,SW1は、各処理ユニットにおいて、アプリケーションレイヤとデータ送受信部との中間に設けられる。この実施例では、データ送信側の仮想スイッチSW0が、伝送するデータ上に、運用系の回線で伝送するデータであるか、予備系(非運用系)の回線で伝送するデータであるかを区別するための識別情報を付与し、当該識別情報を付与したデータ(データの内容は運用系、予備系とも同一である)を、前記送受信部を介し、運用系及び予備系(非運用系)の通信回線に、実質的に同じタイミングで伝送する。
データ受信側の仮想スイッチSW1は、前記識別情報により、どちらの回線が運用系であるかを認識するとともに、運用系回線で送られてきたデータを選択し、アプリケーションレイヤに伝送する。
上述の構成をとることで、例えば、運用系の通信回線に異常が認められたとき、本発明に係る装置では、送信側で、転送データに付与された識別情報を切り替える(入れ替える)ことで、通信を断絶することなく無瞬断で、図示の通信回線L1を予備系(非運用系)に、通信回線L2を運用系に切り替えることができる。あるいは、受信側で、予備系(非運用系)の回線を介した受信したデータを選択し、以降、これまでの予備系(非運用系)回線を運用系回線とすることも可能である。
なお、通信回線の切り替えは、通信回線に異常が認められたときの他、例えばメンテナンス等のために必要なときに行う(定期的に行うことを含む)ことができる。
図示の実施例では、送信側の仮想スイッチSW0が、識別情報を付与し、該識別情報を含むデータを通信回線に実質的に同じタイミングで伝送し、また受信側の仮想スイッチSW1が、前記前記識別情報に従い通信回線を切り替え/選択するものとして説明した。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、送受信部で識別情報を付与することも、また送受信部で、当該データを通信回線に実質的に同じタイミングに合わせて送受信するようにしてもよい。
なお送信するデータの速度が速くなると、多重化された回線を用いて運用系/予備系を切り替えた場合、データの損失、順序逆転が発生することがある。これを回避するために、本発明では、バッファを使用して流量制御(ここでは流量制限、即ち切り替えの瞬間だけバッファに送信データを退避し、切り替え後に排出する)を行うことができる。これについては、図4,5及び7に関連して後述する。
また、本発明では、運用系及び予備系それぞれの通信回線を介し受信された情報の位相あわせ(位相ずれの補正)を行う補正手段を設けることができる。これについても、図6及び7に関連して後述する)。
次に、本発明の装置では、更に、前記運用系及び予備系(非運用系)それぞれの通信回線を介し受信されたデータを比較し、そのデータの正常/異常、又は品質等を判別する手段を設けることもできる。例えば、予備系(非運用系)の回線を介し受信したデータを、運用系の回線を介し受信したデータと位相あわせを行って比較することによって、そのデータの正常/異常、又は品質等を判別する。
もし、この判別手段が、運用系の通信回線に異常が生じていると判断したとき、前記仮想スイッチ(SW0,SW1)が、運用系の通信回線から予備系(非運用系)の通信回線に切り替え/選択することができる。なお、通信回線の異常を検知する手段は、上記判別手段に替えて、あるいは該判別手段とともに従来の異常を検知手段を用いることもできる。
本発明に係る装置では、例えば前記判別手段によって、情報の異常(欠落を含む)が検出されたときに、その情報の受信側の送受信部(ポート又はユニット等)が、送信側の送受信部に対し、その情報の再送を要求することができる。この場合、受信側の送受信部は、送信側の送受信部(ポート又はユニット等)に対し、その情報を受信した時点から異常が検出された時点までの全ての情報の再送を要求することができ、又はその異常が発生した時点の情報のみの再送を要求することができる。
本発明に係る装置を、全ての情報を再送する方法と部分的な情報を再送する方法の両方に対応できるように構成したとき、回線上に流れる情報量を調整することができる。例えば、エラーが発生したとき、毎回全ての情報を送り直していては、回線上でやり取りされるデータ量はその分多量に必要となる。しかし部分的に再送する機能を持っていれば、エラーの発生以前のデータを再度やり取りする必要がないので、その分通信帯域を空けることができる。
また、本発明を、電動パワーステアリング制御装置等の車載電装品に適用した場合において、通信回線の異常により前記仮想スイッチが通信回線を切り替え/選択したとき、車両の運転手に対し警告又は通知をする手段を設けることもできる。この警告、通知は、前記判別手段の判別結果に従い行うこともできる。
また、本発明を、電動パワーステアリング制御装置等の車載用電装品に適用した場合において、通信回線の異常により前記仮想スイッチが通信回線を切り替え/選択したとき、その電動パワーステアリング制御装置等の動作を規制する手段を設けてもよい。例えば、操舵補助を行うためのモータへの通電電流を制限することでアシスト量を制限し、通信障害を起因とする車両の運転手が意図しないアシストを抑制する。この規制は、前記判別手段の判別結果に基づき行うこともできる。
更に、本発明に係る装置では、前記仮想スイッチが、定期的に、前記通信回線を切り替え/選択するように構成することもできる。これにより、通信回線に異常が発生した場合の予備系(非運用系)回線への切り替えを、スムーズにかつより高い信頼性をもって行うことができる。
上述の実施例における構成は、1対1の通信を行うことを例に説明をしたが、本発明はこれに限らず、1対n(複数)の通信を行う構成であっても適用可能である。その場合に、必要に応じて、転送データに、処理ユニットを識別するための識別情報を付与することができる。また1対nの構成において、装置を、前述した如く、全ての情報を再送する方法と部分的な情報を再送する方法の両方に対応できる構成にすると、回線上に流れる情報量を有効に制限することができ、1対1の通信の場合に比べ、その効果は顕著となるであろう。 次に本発明におけるデータ通信について説明する。
一般的に通信メッセージは、ヘッダ情報、転送データ、トレーラの三つの要素で構成され、送信側にてカプセル化(encapsulation)し、受信側にて組み立て(de-capsulation)を行う。本発明では、冗長構成化された通信経路の一方を運用系、もう一方に予備系(非運用系)という状態定義を設け、通信ヘッダ情報にその情報を搭載させる。また、冗長構成化された通信経路では、同時に同じ情報を伝送する。完全に同期していなくても良く、ほほ同時であれば良い。これについては後述する位相合わせにおいて解説する。
送信側処理ユニット(図1のCPU0)は、運用系となっている経路で送信する通信メッセージ(データ)のヘッダ情報に、運用系の通信経路を通過したデータであることが識別できる情報を持たせる。一方、予備系(非運用系)となっている経路で送信する通信メッセージ(データ)のヘッダ情報には、予備系(非運用系)の経路を通過したデータであることが識別できる情報を持たせる。
受信側の処理ユニット(図1のCPU1)は、受信したデータのヘッダ情報の運用系/予備系(非運用系)を識別する情報を判定し、運用系となっている経路で送信されてきたデータを採用する。
運用系側の通信回線が正常である場合、予備系(非運用系)の識別ヘッダを持つメッセージは受信した過去数個分のデータを保存し、それ以前のデータは廃棄する。過去の受信データの保存数はシステムにより能動的に変更可能である。この格納されたデータは、冗長化された通信経路それぞれを介し受信したデータの位相合わせをするために用いる。
実際に障害が発生した場合(障害が検知された場合)は、予備系(非運用系)側の通信回線のデータを使用するとともに、経路切り替えを送信側の処理ユニットに通知することで、通信経路の切り替えを実現する。
このような構成及び動作を行わせることで、間欠障害(通信障害が間欠であって、従来は、復旧までの期間通信が断絶した状態におかれていた)が発生した場合でも、通信を断絶させること無く障害となった経路を切り離し、通信を継続させることができる。
図2は、一般的なデータ通信で用いられる通信メッセージ(データ)のフレーム構成を示す。この通信メッセージは、送信側から、ヘッダ→メッセージ→トレーラの順に転送される。これらのデータの送信は、図1に示すような冗長化された回線の双方に対し行われる。
図3は、本発明における送信データのフレーム中のヘッダの構成例を示す。図示の如く、ヘッダの一部に運用系か予備系(非運用系)かを識別するためのフィールドを設ける。図1の構成では、例えば、回線L1の側を運用系とし、回線L2の側を予備系(非運用系)とするよう、識別フィールドに識別情報(識別子)を設定する。例えば、2回線しかない場合は、識別情報は1ビットで、運用系を経由するときは「1」を、予備系(非運用系)を経由するときは「0」を設定する。回線データの受信側では、当該ビットが「1」の回線データのみを受け取り、「0」の回線データを廃棄する。このようにして、回線データは運用系及び予備系(非運用系)の両方を経由するものの、結果的に運用系だけを選択して経由してきたように見える。
この運用系か予備系(非運用系)か識別するための識別情報は排他制御される。即ち、二重化された通信制御装置のうち、一方で識別情報を「1」にする場合は、他方の装置では必ず識別情報を「0」にする。なお、この、識別情報は、ソフトウェア、あるいはハードウェアどちらで設定しても良い。
次に、図4は、受信側処理ユニットCPU1でデータを受信した際に行われるバッファリングの例を示す。バッファリングは、受信したデータを一時的に保存し、データの欠落やデータのオーバーフロー等に対応する。
受信側処理ユニットCPU1の送受信部(図1における受信R01に対応)によって受信されたデータのバッファリングは、RAMを用いても良いし、FIFOメモリなどのハードウェアを用いても良い。また、バッファリングは、例えばキューイングを利用したソフトウェアにより実現してもよい。
以下は、メッセージキューイング方式を利用したバッファリングの例を説明する。
図4において、ヘッダ・ポインタ(Header pointer)とテイル・ポインタ(Tail pointer)の初期値は0とする。処理ユニット間を接続する通信回線からデータを受信した場合、ヘッダ・ポインタ(Header pointer)の示す領域(バッファ・エリア)にデータを格納してヘッダ・ポインタ(Header pointer)の値を+1更新する。
一方、処理ユニットCPU1におけるパケット・フレーム(メッセージフレーム)組み立て処理部は、ヘッダ・ポインタ(Header pointer)を参照し、テイル・ポインタ(Tail pointer)の値と比較することで、バッファ(Buffer)にどれだけのデータが格納されているかを識別し、ヘッダで指定された分の長さのパケット・フレームの組み立て処理を行なう。パケット・フレーム組み立て処理部がバッファ(Buffer)からデータを取り込んだ後、読み込んだ位置まで、テイル・ポインタ(Tail pointer)の値を更新する。
なお、Header pointer 値= Tail pointer値の状態は全バッファ空きである。また、ヘッダ・ポインタ(Header pointer)とテイル・ポインタ(Tail pointer)は更新後の値がバッファの最大値n+1となった場合は0に戻し、サイクリックに使用する。
またHeader pointer+1の値がTail pointer値となる場合は受信バッファビジー(Full)の扱いとなる。この場合、例えば、帯域使用制限が必要なときは、送り側の処理ユニットCPU0に対して自身が輻輳状態にあることを通知するようにしてもよい。
送り側では、このような輻輳状態の通知を受けて、流量制御(ここでは帯域使用制限、即ち流量制限)を行う。加えて情報転送の周期が早い場合、つまりアプリケーション部から送信部への情報量が多い場合は、回線切り替えをする際に流量制限を行わないと、旧運用系と新運用系の情報とで順序逆転の問題が発生し得る。即ち、このような高速データ転送が必要な通信手段の場合、送信処理部は切り替え前にバッファからのデータ読み出しを一時的に停止させ、切り替え終了後にバッファからの読み出しを行う必要がある。図5は、このような流量制限のために設けた、送信側のバッファの一例である。なお、受信側のバッファについても、単なるデータ蓄積用ではなく、バッファからの読み出し速度を変更することでデータの流量制限を実現することが可能である。またバッファの容量は、前述した「データの欠落やデータのオーバーフロー等」の外に、ここで述べた「切り替え時の流量制限」が実現可能であることを考慮して決める必要がある。
次に、通信回線L1及びL2を介し受信したデータの位相合わせについて、説明する。
図6は、位相合せの必要性を説明するための図である。図示の如く位相のずれたデータが受信されたと仮定する。運用系で「2」のデータが正常に受信された後に、何らかの障害が発生して回線の切り替えが必要になったとする。この時、予備系で受信しているデータは未だ「1」であるので、位相のずれたまま回線が切り替わって予備系であった「1」のデータがそのままアプリケーションに送られると、「1」のデータが重複して送られてしまう。また同図において予備系と運用系の関係が逆(図示で上段のデータが予備系、下段のデータが運用系)の場合は、運用系(下段)の「2」のデータが正常に受信された後に、何らかの障害が発生して回線の切り替えが必要になったとき、予備系(上段)で受信しているデータは既に「3」であるので、回線が切り替わってこの「3」のデータが送られると、結果的に「2」のデータはアプリケーションには伝わらず、データの追い越しが発生する。このようなデータの重複や追い越しが発生しないように、位相合わせ処理を行う必要がある。この位相合わせ処理の実現手段として最も簡単な方法としては、順に送られてくる双方のデータを一時メモリに蓄積して順序性を照合する等し、その後仮想スイッチ部に送り出す方法である。このように位相あわせ処理をメモリを用いて行えば、切り替え時点にデータが蓄積されていて、かつ位相が合っているデータが仮想スイッチに送り出される。
なお、通信回線L1及びL2を介し受信したデータの位相合わせには、先ず通信回線の対応するもの(処理ユニット)同士が同期を取っていることが前提となる。同期化の手段は限定しない任意の方法で実現する。例えば、実質的な情報通信を開始する前に、所定の期間何らかの同期化情報を通信して同期化する。なお、本発明では、回線の二重化あるいはそれ以上の冗長構成をとっているので、それぞれの回線の同期化よりも、送信速度(回線速度)を同一にすることの方がより重要となる。位相合わせ後に、運用系側の回線を介し受信したデータを主とし、予備系(非運用系)側の回線を介し受信したデータを従として、両方のデータを比較し、一致したものを上位レイヤ(図1では、例えばアプリケーション)へ伝達する。この処理もソフトウェアで実現するに限らず、専用のハードウェアを用いても良い。
図7は、受信側処理ユニットに、上述した位相合わせ処理を行う手段と、前述した流量制御処理とを行う手段(バッファ)とを明示的に含めた構成例を示す。この構成によれば、アプリケーションが決まった周期でデータを必要とする場合に、データ転送速度が動的に変更してしまう場合でも、位相合せ処理手段の後段で行われる流量制御処理のためのバッファを設け、バッファから一定周期でデータを読み出すように制御する(即ち、流量の調整をする)。こうすると、アプリケーションにとっては、常に一定の速度で情報が送られてきたようにみせかけることが可能となる。
通常回線上で障害が発生した場合(例えば運用系からのデータの途絶(予備系は正常)、複数回リトライを試みても復活しない場合等)、受信側は送信側に対して、回線障害通知を行う。これにより送信側は通信回線の障害を検知するとともに、予備系(非運用系)の回線を運用系の回線とする処置を行う。即ち、送信側の処理ユニットCPU0は、転送データ上の識別情報を切り替える制御を行う(無瞬断の系切り替え)。
なお、位相合わせが正常に行われた個所を記憶することとし、最終的にパケット・フレームを組み立てた段階で、データに異常が認められた場合は、位相ずれが発生した時点からの再送、もしくは全パケット・フレームの再送が可能であるようにしておくとよい。この選択は、データの優先度に応じて、ソフトウェアによる設定、もしくはソフトウェアを介しハードウェアに対し設定することで任意に選択可能であるように構成することができる。例えば、図8は、優先度や、異常検出時の再送方法を指定する情報をヘッダー部にもたせる例を示す。図3に示すヘッダフォーマットと比較すればわかるように、優先度・再送方法の指定に係る情報がヘッダー部に追加され、受信側にどのような要求を持った情報転送なのか識別させることで、優先度と再送方法の選択が実現可能となる。冗長構成された回線であっても、常に運用系側しか使用しない場合、障害発生時に予備系(非運用系)側の回線に正しく切り替えることができないこともありえる。この問題を避けるため、一定周期で運用系と予備系(非運用系)の回線を切り替えし、冗長構成化された回線双方の正常性を定期的に監視するようにしてもよい。
また、定期切り替えや異常時の無瞬断の系切り替えの後に、回線障害の復旧中や、復旧できない場合は、例えば電動パワーステアリング制御装置のアシスト力を制限する等、ドライバに対して危険な挙動を与えないように、処理ユニットが制御をすることも考えられる。また、双方の回線に障害が発生した場合についても障害が復旧されるまでの間同様の扱いとしても良いし、フェールセーフに基づき制御を終了させても良い。
以上詳記した本発明の構成及び効果を、要約すると以下の通りである。
2以上の処理ユニットで構成される、例えば電動パワーステアリング制御装置において、処理ユニット間を接続する通信回線を冗長構成化して2以上の回線を設け、また、仮想的に何れか一方の回線を運用系、もう一方の回線を予備系(非運用系)として位置付ける。
更に、処理ユニットにおけるデータ送受信部の前段(アプリケーションレイヤ側)に仮想スイッチを設ける。送信側の仮想スイッチは、転送するデータに運用系・予備系(非運用系)を識別する情報を付与し、受信側の仮想スイッチは運用系として識別された回線からの受信データを有効として、アプリケーションレイヤに渡す。
一方の通信回線に異常が発生した場合等、運用系通信が利用不可となるような場合、予備系(非運用系)回線に「無瞬断」で通信回路の切り替えを行う。これにより、通信回路に異常が発生した場合でも、処理ユニット間の通信を途絶えさせること無く、継続して通信を可能とするようにする。
運用系から予備系(非運用系)への切り替えは、転送データ上に持たせている運用系/予備系(非運用系)識別情報を入れ替えることで実現する。
さらに、通信回線を切り替えた後、障害が発生した側(旧運用系)の通信経路の復旧措置を行うことができる。これにより、通信経路を冗長化し、異常検出後に、通信回線の切り替えを行って、異常となった通信回線を一時的(仮想的)にシステムから切り離すことで、障害が発生した経路に対して復旧措置を取ることが可能となる。
定期的に冗長化された回線の切り替え(運用系・予備系(非運用系)の切り替え)を行うことで、定常的に予備系(非運用系)回線の信頼性を確認する。
なお、本発明は、同一制御装置内の処理ユニット間の通信に限定せず、例えば電動パワーステアリング制御装置の処理ユニットと、この制御装置の外部にある処理ユニット(通信機能を備えたもの)との間の通信等にも適用することが可能である。
障害による切り替えが発生した場合、ドライバに対して障害の発生とその障害の程度とを通知することも可能である。また、あわせて、アシスト量の制限等を行うことも可能であって、冗長化された一方の回線が破綻したことによって、ドライバに対して与える危険度を従来に比べて、より安全な範囲に留めることが可能である。
冗長化された運用系・予備系(非運用系)回線それぞれから受信したデータの位相あわせを行う手段を設ける。これは、無瞬断の系切り替えを保証するが、あわせて冗長回線から受信されたデータを比較することにより、従来技術と比較して、通信データの異常を早期に検知することが可能であり、よりデータ転送品質を高くすることが可能である。
また、運用系転送データにエラーが検出された場合に的確な再送を行う手段を実装させることも可能となる。
通信回線に間欠的な障害が発生した場合、従来システムでは間欠障害が復旧するまで、通信が断絶した状態となるが、本発明では、無瞬断の系切り替えにより、これを未然に防ぐことが出来る。また、本発明では、通信回線が冗長構成となっているので、障害発生し、正常である経路が選択され使用されている間に、障害が発生した通信経路の復旧措置を行うことができる。
本発明は、上述した構成及び特徴を持つので、車載電装におけるシリアル回線、パラレル回線、アナログ/デジタル変換ポートを使用した情報伝送、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)等に適用可能である。
本発明の一実施例の構成の概要を示すブロック図である。 一般的なデータ通信に用いられる通信メッセージのフレーム構成を示す図である。 本発明における通信フレーム中のヘッダ部分の構成例を示す図である。 本発明の受信側において用いられるバッファの一例を示す説明図である。 本発明の送信側において用いられるバッファの一例を示す説明図である。 本発明における受信データの位相合わせを説明するためのブロック図である。 本発明における別の実施例を示すブロック図である。 本発明における通信フレーム中のヘッダ部分の別の構成例を示す図である。

Claims (26)

  1. 車載用電装品における通信回線の切り替え装置であって、
    運用系及び予備系を含む少なくとも2回線の通信回線と、
    この通信回線を介して相互に接続され、該通信回線を介して情報を送信及び/又は受信する送受信部と、
    前記通信回線の運用系/予備系を識別するための識別情報とともに、互いに同じ内容の伝送データを、運用系及び予備系のそれぞれの通信回線に伝送する手段と、
    前記識別情報を切り替える切り替え手段と、
    前記前記識別情報に従い所定の通信回線を介し受信した情報を選択する手段とを有する装置。
  2. 請求項1に記載の装置において、前記伝送手段が、識別情報の付加された伝送データを、前記運用系及び予備系のそれぞれの通信回線に、実質的に同じタイミングで送ることを特徴とする装置。
  3. 請求項1又は2に記載の装置において、前記切り替え手段と前記選択手段とによる通信回線の切り替えは、通信を断絶させること無く無瞬断で行われることを特徴とする装置。
  4. 請求項1又は2に記載の装置において、前記切り替え手段と前記選択手段とによる通信回線の切り替えは、運用系の通信回線に異常が認められたときに行われ、又はメンテナンス等のために必要なときに行われることを特徴とする装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の装置において、更に、送信側及び/又は受信側に、送信する及び/又は受信した情報の流量を制御する流量制御手段を設けたことを特徴とする装置。
  6. 請求項5に記載の装置において、前記流制御手段は、情報をバッファリングし、その読み出しを制御することを特徴とする装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の装置において、更に、前記運用系及び予備系それぞれの通信回線を介し受信された情報の位相のずれを補正する補正手段を設けたことを特徴とする装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の装置において、更に、前記運用系及び予備系それぞれの通信回線を介し受信された情報を比較し、その情報の正常/異常、又は品質等を判別する手段を設けたことを特徴とする装置。
  9. 請求項8に記載の装置において、前記判別手段による判別は、前記補正手段による補正が行われる際に行われることを特徴とする装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の装置において、前記情報の異常が検出されたとき、その情報の受信側の送受信部は、送信側の送受信部に対し、その情報の再送を要求することができることを特徴とする装置。
  11. 請求項10に記載の装置において、前記情報の異常が検出されたとき、その情報の受信側の送受信部は、送信側の送受信部に対し、その情報を受信した時点から異常が検出された時点までの全ての情報の再送を要求することができ、又はその異常が発生した時点の情報のみの再送を要求することができることを特徴とする装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載の装置において、更に、運用系及び/又は予備系の通信回線の異常が認められて前記切り替え手段及び前記選択手段が通信回線を切り替えるとき、本装置を搭載した車両の運転手に対し警告又は通知をする手段を設けたことを特徴とする装置。
  13. 請求項1乃至12のいずれかに記載の装置において、更に、運用系及び/又は予備系の通信回線の異常が認められて前記切り替え手段及び前記選択手段が通信回線を切り替えるとき、本装置を搭載した車載用電装品に対して、例えば電動パワーステアリング制御装置であれば操舵アシスト力の出力を制限する等の規制を行うよう通知する手段を設けたことを特徴とする装置。
  14. 車載用電装品における通信回線の切り替え方法であって、
    運用系及び予備系を含む少なくとも2回線の通信回線を介して情報を送信及び/又は受信するステップと、
    前記通信回線の運用系/予備系を識別するための識別情報とともに、互いに同じ内容の伝送データを、運用系及び予備系のそれぞれの通信回線に伝送するステップと、
    前記識別情報を切り替えるステップと、
    前記前記識別情報に従い所定の通信回線を介し受信した情報を選択するステップとから成る方法。
  15. 請求項14に記載の方法において、前記伝送ステップが、識別情報の付加された伝送データを、前記運用系及び予備系のそれぞれの通信回線に、実質的に同じタイミングで送ることを特徴とする方法。
  16. 請求項14又は15に記載の方法において、前記切り替えステップと前記選択手ステップとによる通信回線の切り替えは、通信を断絶させること無く無瞬断で行われることを特徴とする方法。
  17. 請求項14又は15に記載の方法において、前記切り替えステップと前記選択ステップとによる通信回線の切り替えは、運用系の通信回線に異常が認められたときに行われ、又はメンテナンス等のために必要なときに行われることを特徴とする方法。
  18. 請求項14乃至17のいずれかに記載の装置において、更に、送信側及び/又は受信側に、送信する及び/又は受信した情報の流量を制御する流量制御ステップを設けたことを特徴とする方法。
  19. 請求項18に記載の装置において、前記流量制御ステップは、情報をバッファリングし、その読み出しを制御することを特徴とする方法。
  20. 請求項14乃至19のいずれかに記載の方法において、更に、前記運用系及び予備系それぞれの通信回線を介し受信された情報の位相のずれを補正する補正ステップを設けたことを特徴とする方法。
  21. 請求項14至20のいずれかに記載の方法において、更に、前記運用系及び予備系それぞれの通信回線を介し受信された情報を比較し、その情報の正常/異常、又は品質等を判別するステップを設けたことを特徴とする方法。
  22. 請求項21に記載の方法において、前記判別ステップによる判別は、前記補正ステップによる補正が行われる際に行われることを特徴とする方法。
  23. 請求項14乃至22のいずれかに記載の方法において、前記情報の異常が検出されたとき、その情報の受信側は、送信側に対し、その情報の再送を要求することができることを特徴とする方法。
  24. 請求項23に記載の方法において、前記情報の異常が検出されたとき、その情報の受信側は、送信側に対し、その情報を受信した時点から異常が検出された時点までの全ての情報の再送を要求することができ、又はその異常が発生した時点の情報のみの再送を要求することができることを特徴とする方法。
  25. 請求項14乃至24のいずれかに記載の方法において、更に、運用系及び/又は予備系の通信回線の異常が認められて前記切り替えステップ及び前記選択ステップが通信回線を切り替えるとき、本方法を適用した車両の運転手に対し警告又は通知をするステップを設けたことを特徴とする方法。
  26. 請求項14乃至25のいずれかに記載の方法において、更に、運用系及び/又は予備系の通信回線の異常が認められて前記切り替えステップ及び前記選択ステップが通信回線を切り替えるとき、本方法を適用した車載用電装品に対して、例えば電動パワーステアリング制御装置であれば操舵アシスト力の出力を制限する等の規制を行うよう通知するステップを設けたことを特徴とする方法。
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