図1は、本発明の実施の一形態の光走査装置9を備える発光装置10の基本的構成を示す一部の平面図である。なお、同図は、各発光素子Lの光の出射方向を紙面に垂直手前側として配置された発光装置10の平面を示し、発光信号伝送路12、第1共通導電路301、走査信号伝送路15、定電圧供給路302、スタート信号伝送路16、第2共通導電路303、発光素子遮光部23、トリガ信号発生素子遮光部121および表面電極25は図解を容易にするため、斜線を付して示されている。また同図では、第1絶縁層17および第2絶縁層304は図解を容易にするため、省略している。
発光装置10は、発光素子アレイ11と、発光信号伝送路12と、第1共通導電路301と、スイッチ素子アレイ13と、走査信号伝送路15と、定電圧供給路302と、走査スタート用スイッチ素子T0と、スタート信号伝送路16と、第2共通導電路303と、第1絶縁層17と、第2絶縁層304と、遮光層18と、発光素子遮光部23と、トリガ信号発生素子遮光部121とを含んで構成される。光走査装置9は、スイッチ素子アレイ13と、走査信号伝送路15と、定電圧供給路302と、第2共通導電路303とを含んで構成される。
発光素子アレイ11は、複数の発光素子L1,L2,…,Li−1,Li(記号iは、2以上の正の整数)を含んで構成され、各発光素子L1,L2,…,Li−1,Liが、相互に間隔W1をあけて配列される。以後、各発光素子L1,L2,…,Li−1,Liを総称する場合、および発光素子L1,L2,…,Li−1,Liのうち不特定のものを示す場合、単に発光素子Lと記載する場合がある。発光素子Lは、露光用の発光素子である。本実施の形態では、各発光素子Lは、等間隔に配列され、かつ直線状に配列される。各発光素子Lの配列方向Xは、図1において左右方向である。以後、各発光素子Lの配列方向Xを、単に配列方向Xと記載する場合がある。各発光素子Lの光の出射方向に沿う方向を厚み方向Zとし、前記配列方向Xおよび厚み方向Zに垂直な方向を幅方向Yとする。発光素子Lは、600nm〜800nmの波長の光を発光可能に形成される。
発光素子Lは、P型半導体層とN型半導体層とが交互に積層されて構成されるPNPN構造を有する発光サイリスタによって実現される。発光素子Lは、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。発光素子Lは、予め定める部位であるゲート124に、トリガ信号を与えることによって発光信号φEの電圧よりもしきい電圧が低下し、かつ前記発光信号φEが与えられたとき、または発光信号φEの電流よりもしきい電流が低下し、かつ前記発光信号φEが与えられたとき発光する。発光信号φEの電圧とは、発光信号φEが与えられることによって、発光素子Lのアノードおよびカソード間に印加される電圧であり、発光信号φEの電流とは、発光信号φEが与えられることによって発光素子Lに与えられる電流である。
配列方向Xの各発光素子Lの間隔W1と、発光素子Lの配列方向Xの長さW2とは、発光装置10が搭載される後述する画像形成装置87において形成すべき画像の解像度によって決定され、たとえば画像の解像度が600ドットパーインチ(dpi)の場合、前記間隔W1は、約24μm(マイクロメートル)に選ばれ、前記長さW2は、約18μmに選ばれる。また前記長さW2は、隣接する発光素子Lの間に、発光素子遮光部23を形成可能に選ばれる。発光素子Lの配列方向Xの寸法は、発光素子Lの幅方向Yの寸法よりも小さく選ばれる。これによって、各発光素子Lを配列方向Xに近接させて、集積密度を高めたときに、発光素子Lの光量が不足してしまうことが防止される。
発光信号伝送路12は、各発光素子Lに接続され、各発光素子Lに発光信号φEを伝送する。発光素子伝送路12は、前記配列方向Xに延在する信号路延在部21と、前記配列方向Xに相互に間隔をあけて信号路延在部21から幅方向一方Y1に突出して、各発光素子Lの厚み方向一端部に接続される素子接続部22とを有する。発光信号伝送路12は、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって、発光素子Lおよびスイッチ素子Tが発する波長の光を反射するように形成される。具体的には発光信号伝送路12は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、金と亜鉛との合金(AuZn)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などによって形成される。
第1共通導電路301は、各発光素子Lの第1の一方導電型半導体層とオーミック接合されて接続される。各発光素子Lは、第1共通導電路301に接続されて、接地される。このように第1共通導電路301は、接地端子として機能する。第1共通導電路301は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、およびニッケル(Ni)などによって形成される。
発光スイッチ素子アレイであるスイッチ素子アレイ13は、複数の発光スイッチ素子であるスイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tj(記号jは、2以上の正の整数)を含んで構成され、各スイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tjが、隣接するスイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tjからの光を受光するように相互に間隔W3をあけて配列される。以後、各スイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tjを総称する場合、およびスイッチ素子T1,T2,…,Tj−1,Tjのうち不特定のものを示す場合、単にスイッチ素子Tと記載する場合がある。本実施の形態では、各スイッチ素子Tは、等間隔に配置される。本実施の形態では、発光素子Lとスイッチ素子Tとの数は等しく、すなわち前記iと記号jとは等しい数に選ばれる。スイッチ素子Tの配列方向Xの中央と、発光素子Lの配列方向の中央とは、配列方向Xに垂直な同一の仮想一平面上に設けられる。
発光スイッチ素子である各スイッチ素子Tは、発光素子アレイ11の幅方向Yに隣接し、この発光素子アレイ11に沿って、複数の発光素子Lに対向した状態で直線状に配列される。したがって、各スイッチ素子Tの配列方向は、前記各発光素子Lの配列方向Xと同じである。
各スイッチ素子Tは、発光部Tsと、受光部Trと、接続部Tcとをそれぞれ含んで構成される。各スイッチ素子Tの発光部Tsを個別に示す場合、スイッチ素子Tの参照符号に添え字「s」を付して記載し、各スイッチ素子Tの受光部Trを個別に示す場合、スイッチ素子Tの参照符号に添え字「r」を付して記載し、各スイッチ素子Tの接続部rを個別に示す場合、スイッチ素子Tの参照符号に添え字「c」を付して記載する。たとえばスイッチ素子T1は、発光部Ts1、受光部Tr1および接続部Tc1を有する。
各スイッチ素子Tにおいて、発光部Tsと受光部Trとは、配列方向Xに隣接して設けられる。複数のスイッチ素子Tは、一方側に隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsに受光部Trを臨ませ、他方側に隣接するスイッチ素子Tの受光部Trに発光部Tsを臨ませて配列される。つまりスイッチ素子T1の発光部Ts1は、スイッチ素子T2の受光部Tr2に臨み、スイッチ素子T2の発光部Ts2は、スイッチ素子T3の受光部Tr3に臨む。
発光部Tsの予め定める部位である発光部Tsのゲート27と、受光部Trの予め定める部位である受光部Trのゲート28とは、接続部Tcによって電気的に接続される。
各スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Trは、P型半導体層とN型半導体層とが交互に積層されて構成されるPNPN構造を有する発光サイリスタによって実現される。スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Trは、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。スイッチ素子Tの受光部Trは、受光によって予め定める部位である受光部Trのゲート28にトリガ信号を発生する。受光部Trのゲート28に生成されたトリガ信号は、接続部Tcを介して発光部Tsのゲート27に与えられる。発光部Tsのゲート27にトリガ信号が与えられることによって、発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流が低下する。
発光部Tsは、走査信号伝送路15に接続され、走査信号伝送路15を介して与えられる走査信号φ1よりもしきい電圧が低下し、かつ前記走査信号φ1が与えられたとき、または走査信号φ1の電流よりもしきい電流が低下し、かつ前記走査信号φ1が与えられたとき発光する。走査信号φ1の電圧とは、走査信号φが与えられることによって、スイッチ素子Tの発光部Tsのアノードおよびカソード間に印加される電圧であり、走査信号φ1の電流とは、走査信号φが与えられることによってスイッチ素子Tの発光部Tsに与えられる電流である。
本実施の形態では、スイッチ素子Tのゲート24は、発光部のゲート27と受光部のゲート28とを含む。
配列方向Xの各スイッチ素子Tの間隔W3は、製造工程における制限を受けるので、スイッチ素子Tの厚み方向Zの高さの2倍以上に形成されるが、20μm未満に選ばれ、好ましくは10μm以下に選ばれる。本実施の形態では、スイッチ素子Tの高さを約4μmとしており、この場合には間隔W3は8μm程度になる。前記間隔W3が20μm以上になると、伝送効率が大きく低下してしまう。
スイッチ素子Tの配列方向Xの寸法は、スイッチ素子Tの幅方向Yの寸法よりも小さく選ばれる。これによって、各スイッチ素子Tを配列方向Xに近接させて、集積密度を高めたときに、スイッチ素子Tの発光部Tsの光量が不足してしまうこと、および受光部Trの受光量が不足してしまうことが防止される。
スイッチ素子Tの配列方向Xの長さW4は、前記配列方向Xの各発光素子Lの間隔W1と、発光素子Lの配列方向Xの長さW2と、配列方向Xの各スイッチ素子Tの間隔W3とによって決定される。すなわち配列方向Xの各発光素子Lの間隔W1と、発光素子Lの配列方向Xの長さW2とを加算した長さと、配列方向Xの各スイッチ素子Tの間隔W3とスイッチ素子Tの配列方向Xの長さW4とを加算した長さとが、等しく選ばれる。
走査信号伝送路15は、各スイッチ素子Tの発光部Tsに、各発光部Tsの極性が配列方向Xに交互に反転するように接続され、各スイッチ素子Tの発光部Tsに同じタイミングで走査信号φ1を与える。本実施の形態では、走査信号伝送路15は、各スイッチ素子Tのうち、配列方向一方X1の端から数えて奇数番目の各スイッチ素子Tの発光部Tsにおけるアノードに、第1の抵抗素子Rφを介して接続され、偶数番目の各スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Tsにおけるカソードに接続される。走査信号伝送路15は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、金と亜鉛との合金(AuZn)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などによって形成される。
定電圧供給路302は、各スイッチ素子Tのうち、前記配列方向Xに1つおきに配置される各スイッチ素子Tの発光部Tsに接続される。定電圧供給路302は、1つおきの各スイッチ素子Tの発光部Tsに一定レベルの電圧Vccを印加するために設けられる。本実施の形態では、定電圧供給路302は、各スイッチ素子Tのうち、配列方向一方X1から数えて偶数番目の各スイッチ素子Tの発光部Tsにおけるアノードに、第2の抵抗素子Rφを介して接続される。定電圧供給路302は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などによって形成される。
走査スタート用スイッチ素子T0は、P型半導体層とN型半導体層とが交互に積層されて構成されるPNPN構造を有する発光サイリスタによって実現される。本実施の形態では、走査スタート発光スイッチ素子T0は、3端子発光サイリスタよって実現される。走査スタート用スイッチ素子T0は、逆阻止3端子サイリスタと同様な負性抵抗特性を有する。走査スタート用スイッチ素子T0は、しきい電圧よりも高い電圧またはしきい電流よりも大きい電流を与えることによって発光する。
走査スタート用スイッチ素子T0は、スイッチ素子アレイ13の配列方向Xの端部に配置されるスイッチ素子Tに光を照射するように配置される。本実施の形態では、走査スタート用スイッチ素子T0は、スイッチ素子T1に光を照射するように配置される。したがって、走査スタート用スイッチ素子T0が配置される配列方向一方X1が、発光装置10における光の走査方向の上流側となる。
走査スタート用スイッチ素子T0は、厚み方向一方Z1の端部、すなわち図1の紙面に垂直な方向手前側に、表面電極25を有する。走査スタート用スイッチ素子T0の表面電極25は、スタート信号伝送路16に接続される。走査スタート用スイッチ素子T0のゲート26は、第2共通導電路303に電気的に接続されて、接地される。
スタート信号伝送路16は、走査スタート用スイッチ素子T0にスタート信号φSを伝送する。スタート信号伝送路16は、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される。具体的にはスタート信号伝送路16は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、金と亜鉛との合金(AuZn)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)などによって形成される。スタート信号伝送路16は、幅方向Yにおいて、走査信号伝送路15の発光素子Lとは反対側に設けられる。
第2共通導電路303は、各スイッチ素子Tのうち、配列方向一方X1の端から数えて奇数番目の各スイッチ素子Tにおけるカソードに、接続されるとともに、走査スタート用スイッチ素子T0におけるカソードおよびゲートに接続される。第2共通導電路303は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、およびニッケル(Ni)などによって形成される。
前述した発光素子L、スイッチ素子Tおよび走査スタート用スイッチ素子T0は、第1絶縁層17によって覆われる。第1絶縁層17は、走査信号伝送路15、定電圧供給路302、第1および第2共通導電路301,302と、各半導体層との電気的絶縁を確保する。第2絶縁層304は、走査信号伝送路15および定電圧供給路302と、第2共通導電路303との電気的絶縁を確保する。
遮光手段である遮光層18は、各スイッチ素子Tの厚み方向Zの一方側、すなわち各スイッチ素子Tの図1の紙面に垂直手前側から、各スイッチ素子Tを覆い、発光素子Lが発する光に、スイッチ素子Tが発する光が干渉しないように、スイッチ素子Tが発する光を遮光する。
発光素子遮光部23は、各発光素子Lの間、および発光素子アレイ11の配列方向Xの他端部の発光素子Liの配列方向他方X2に設けられ、隣接する発光素子Lから配列方向Xに向かう光を遮光する。
前述した発光素子L、発光信号伝送路12、第1共通導電路301、スイッチ素子T、走査信号伝送路15、定電圧供給路302、走査スタート用スイッチ素子T0、スタート信号伝送路16、第2共通導電路303、第1絶縁層17、第2絶縁層304、遮光層18、発光素子遮光部23およびトリガ信号発生素子遮光部121は、1つの基板31に集積されて形成される。発光装置10は、チップによって構成される。
以下、発光装置10の各構成について、さらに具体的に説明する。
図2は、図1の切断面線C1−C1から見た発光装置10の基本的構成を示す一部の断面図である。発光素子Lは、基板31の厚み方向Zの一表面31a上に形成される第1の一方導電型半導体層32、第1の他方導電型半導体層33、第2の一方導電型半導体層34および第2の他方導電型半導体層35を含む。
発光素子Lは、基板31の厚み方向Zの一表面31aに、第1の一方導電型半導体層32が積層され、第1の一方導電型半導体層32の厚み方向Zの一表面32a上に第1の他方導電型半導体層33が積層され、第1の他方導電型半導体層33の厚み方向Zの一表面33a上に第2の一方導電型半導体層34が積層され、第2の一方導電型半導体層34の厚み方向Zの一表面34a上に第2の他方導電型半導体層35が積層され、第2の他方導電型半導体層35の厚み方向Zの一表面35a上にオーミックコンタクト層37が積層されて構成される。
さらに具体的には、基板31は、高抵抗の一方導電型の半導体基板および半絶縁性の半導体基板などの、抵抗値の高い基板によって実現される。したがって基板30は、ほとんど電流を流さない。基板31は、III−V族化合物半導体およびII−VI族化合物半導体などの結晶成長が可能な半導体基板であり、たとえば、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムリン(InP)、ガリウムリン(GaP)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの半導体材料によって形成される。基板31は、III−V族化合物半導体およびII−VI族化合物半導体などの結晶成長が可能なものであれば絶縁性基板であってもよく、たとえばサファイアなどの材料によって形成されてもよい。
第1の一方導電型半導体層32は、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される。第1の一方導電型半導体層32のキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものが望ましい。
第1の他方導電型半導体層33は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第1の他方導電型半導体層33を形成する半導体材料には、第1の一方導電型半導体層32を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の一方導電型半導体層32を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第1の他方導電型半導体層33のキャリア密度は1×1017cm−3程度のものが望ましい。
第2の一方導電型半導体層34は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2の一方導電型半導体層34を形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層33を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の他方導電型半導体層33を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第2の一方導電型半導体層34のキャリア密度は、第1の一方導電型半導体層32、第1の他方導電型半導体層33、第2の一方導電型半導体層34および第2の他方導電型半導体層35の全層の中で最も小さく1×1016cm−3〜1×1017cm−3程度のものであることが望ましい。第2の一方導電型半導体層34は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成することによって、高い内部量子効率を得ることができる。
第2の他方導電型半導体層35は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2の他方導電型半導体層35を形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層33および第2の一方導電型半導体層34を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の他方導電型半導体層33および第2の一方導電型半導体層34を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが大きいものが選ばれる。第2の他方導電型半導体層35のキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものであることが望ましい。
オーミックコンタクト層37は、ガリウム砒素(GaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される他方導電型の半導体層であり、発光信号伝送路12とのオーミック接合を行うためのものである。オーミックコンタクト層37のキャリア密度は1×1019cm−3以上のものが望ましい。
第1の一方導電型半導体層32、第1の他方導電型半導体層33、第2の一方導電型半導体層34、第2の他方導電型半導体層35およびオーミックコンタクト層37が積層された積層体は、略直方体形状を有する。第1の一方導電型半導体層32、第1の他方導電型半導体層33、第2の一方導電型半導体層34、第2の他方導電型半導体層35およびオーミックコンタクト層37は、第1絶縁層17によって覆われる。第1絶縁層17は、電気絶縁性および透光性ならびに平坦性を有する樹脂材料によって形成される。第1絶縁層17は、ポリイミドおよびベンゾシクロブテン(BCB)などによって形成される。
第1絶縁層17のうち、隣接する発光素子Lの間の部分には、幅方向Yに垂直な仮想一平面において、V字形状となり、基板31の一表面31aまで達する溝部38が形成され、この溝部38に前記発光素子遮光部23が形成される。発光素子遮光部23は、溝部38の表面に沿って形成され、基板31の一表面31aからオーミックコンタクト層37の配列方向Xの側方にわたって設けられる。発光素子遮光部23は、発光素子Lの幅方向Yの一端部および他端部間にわたって形成され、発光素子Lの幅方向Yの端部よりも発光素子Lの幅方向一方Y1まで延びる。このような発光素子遮光部23を形成することによって、隣接する発光素子Lが発光したときにこの光を受光することが防止され、隣接する発光素子Lが発光しても、この発光に伴って発光素子Lのしきい電圧またはしきい電流が変化してしまうことがないので、発光素子Lを選択的に安定して発光させることができる。
オーミックコンタクト層37の厚み方向Zの一表面37aには、発光信号伝送路12の素子接続部22が接続される。第1絶縁層17のうち、オーミックコンタクト層37の厚み方向Zの一表面37a上に形成される部分には、貫通孔39が形成され、この貫通孔39に前記素子接続部22の一部が形成されて、素子接続部22がオーミックコンタクト層37に接触している。前記貫通孔39は、発光素子Lの配列方向Xの中央で、かつ発光素子Lの幅方向Yの中央が第1絶縁層17から露出するように形成されており、発光信号伝送路12からの電流を、発光素子Lの中央部に効率的に供給して、発光素子Lを発光させることができる。発光素子Lでは、主に第2の一方導電型半導体層34と、第2の他方導電型半導体層35との界面付近で、第2の一方導電型半導体層34寄りの領域において光が発生する。
発光信号伝送路12の素子接続部22の配列方向Xの長さW6は、発光素子Lの配列方向Xの長さW2の1/3以下に形成される。素子接続部22は、発光素子Lの光の出射方向の一部を覆うが、長さW6を前述したように選ぶことによって、発光素子Lから発せられ、厚み方向一方Z1に向かう光を、遮ってしまうことを可及的に防止する。また発光素子Lから発せられ、厚み方向一方Z1に向かい、発光信号伝送路12によって反射された光の一部は、発光素子遮光部23および基板31などによって反射されることによって、厚み方向一方Zへと向かう。
図3は、図1の切断面線C2−C2から見た発光装置10の基本的構成を示す一部の断面図である。トリガ信号発生素子Mは、基板31の厚み方向Zの一表面31a上に形成される第1の一方導電型半導体層232、第1の他方導電型半導体層233、第2の一方導電型半導体層234および第2の他方導電型半導体層235を含む。
トリガ信号発生素子Mは、基板31の厚み方向Zの一表面31aに、第1の一方導電型半導体層232が積層され、第1の一方導電型半導体層232の厚み方向Zの一表面232a上に第1の他方導電型半導体層233が積層され、第1の他方導電型半導体層233の厚み方向Zの一表面233a上に第2の一方導電型半導体層234が積層され、第2の一方導電型半導体層234の厚み方向Zの一表面234a上に第2の他方導電型半導体層235が積層され、第2の他方導電型半導体層235の厚み方向Zの一表面235a上に第3の他方導電型半導体層237が積層されて構成される。
第1の一方導電型半導体層232は、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される。第1の一方導電型半導体層232のキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものが望ましい。
第1の他方導電型半導体層233は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第1の他方導電型半導体層233を形成する半導体材料には、第1の一方導電型半導体層232を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の一方導電型半導体層232を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第1の他方導電型半導体層233のキャリア密度は1×1017cm−3程度のものが望ましい。
第2の一方導電型半導体層234は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2の一方導電型半導体層234を形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層233を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の他方導電型半導体層233を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第2の一方導電型半導体層234のキャリア密度は、第1の一方導電型半導体層232、第1の他方導電型半導体層233、第2の一方導電型半導体層234および第2の他方導電型半導体層235の全層の中で最も小さく1×1016cm−3〜1×1017cm−3程度のものであることが望ましい。第2の一方導電型半導体層234は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成することによって、高い内部量子効率を得ることができる。
第2の他方導電型半導体層235は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2の他方導電型半導体層235を形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層233および第2の一方導電型半導体層234を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の他方導電型半導体層233および第2の一方導電型半導体層234を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが大きいものが選ばれる。第2の他方導電型半導体層235のキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものであることが望ましい。
第3の他方導電型半導体層237は、ガリウム砒素(GaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される他方導電型の半導体層である。
第1の一方導電型半導体層232、第1の他方導電型半導体層233、第2の一方導電型半導体層234、第2の他方導電型半導体層235および第3の他方導電型半導体層237を積層が積層された積層体は、略直方体形状を有する。第1の一方導電型半導体層232、第1の他方導電型半導体層233、第2の一方導電型半導体層234、第2の他方導電型半導体層235および第3の他方導電型半導体層237は、第1絶縁層17によって覆われる。
第1絶縁層17のうち、隣接するトリガ信号発生素子Mの間の部分には、幅方向Yに垂直な仮想一平面において、V字形状となり、基板31の一表面31aまで達する溝部238が形成され、この溝部238に前記トリガ信号発生素子遮光部121が形成される。トリガ信号発生素子遮光部121は、溝部238の表面に沿って形成され、基板31の一表面31aから第3の他方導電型半導体層237の配列方向Xの側方にわたって設けられる。トリガ信号発生素子遮光部121は、トリガ信号発生素子Mの幅方向Yの一端部および他端部間にわたって形成される。このようなトリガ信号発生素子Mを形成することによって、スイッチ素子Tが発光したときに、スイッチ素子Tに対応するトリガ信号発生素子M以外のトリガ信号発生素子Mに光が照射されてしまうことを可及的に抑制することができる。これによってスイッチ素子Tの発光によって、このスイッチ素子Tに対応するトリガ信号発生素子M以外のトリガ信号発生素子Mがトリガ信号を発生してしまうことを可及的に抑制することができ、発光するスイッチ素子Tに対応しない発光素子Lのしきい電圧またはしきい電流が変化してしまうことがないので、発光素子Lを選択的に安定して発光させることができる。
トリガ信号発生素子Mの第1の一方導電型半導体層232と、発光素子Lの第1の一方導電型半導体層32とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またトリガ信号発生素子Mの第1の他方導電型半導体層233と、発光素子Lの第1の他方導電型半導体層33とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またトリガ信号発生素子Mの第2の一方導電型半導体層234と、発光素子Lの第2の
一方導電型半導体層34とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またトリガ信号発生素子Mの第2の他方導電型半導体層235と、発光素子Lの第2の他方導電型半導体層35とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またトリガ信号発生素子Mの第3の他方導電型半導体層237と、発光素子Lのオーミックコンタクト層37とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。
図4は、図1の切断面線C3−C3から見た発光装置10の基本的構成を示す一部の断面図である。スイッチ素子Tは、基板31の上に順次積層される第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43、第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45s,45rを有する。基板31の一表面31aに第1の一方導電型半導体層42が積層され、第1の一方導電型半導体層42の厚み方向一表面42aに第1の他方導電型半導体層43が積層され、第1の他方導電型半導体層43の厚み方向一表面に第2の一方導電型半導体層44が積層される。第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44の積層体は、略直方体形状に形成される。
第2の一方導電型半導体層44は、配列方向Xの一端部39rおよび他端部39sの厚みW7が、配列方向の中央部39cの厚みW8よりも厚く形成される。前記厚みW8は、厚みW7の50%〜90%程度に選ばれる。厚みW8が、小さすぎると抵抗値が増し、トリガ信号が減衰されてしまうが、厚みW8をこのように選ぶことによって、受光部Trで発生したトリガ信号をより確実に発光部Tsに伝達することができる。
第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39rで、厚みW7を有する部分の配列方向Xの長さW9と、第2の他方導電型半導体層44の他端部39sで、厚みW7を有する部分の配列方向Xの長さW10とは、等しく選ばれる。第2の他方導電型半導体層44の中央部39cで、厚みW8を有する部分の配列方向Xの長さW11は10マイクロメートル(μm)程度に選ばれる。
第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39rで、厚みW7を有する部分には、厚み方向一表面44a上に第2の他方導電型半導体層45rが積層され、第2の他方導電型半導体層45rの厚み方向Zの一表面上には、遮光部形成層46が積層される。第2の他方導電型半導体層45rおよび遮光部形成層46の積層体は、略直方体形状を有する。
第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの他端部39sで、厚みW7を有する部分には、厚み方向一表面44a上に第2の他方導電型半導体層45sが積層され、第2の他方導電型半導体層45sの厚み方向Zの一表面上には、オーミックコンタクト層47が積層される。第2の他方導電型半導体層45sおよびオーミックコンタクト層47の積層体は、略直方体形状を有する。スイッチ素子Tは、幅方向に垂直な仮想一平面における断面が厚み方向Zの一方に開口する略コ字状となる。
第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44は、発光部Tsおよび受光部Trにおいて共用される。発光部Tsは、第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44と、第2の他方導電型半導体層45sおよびオーミックコンタクト層47とを含んで形成され、受光部Trは、第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44と、第2の他方導電型半導体層45rおよび遮光部形成層46とを含んで形成される。発光部Tsおよび受光部TrのZ方向の厚みは、等しく選ばれ、幅方向Yにおいて受光部Trは、発光部Tsの一端部および他端部間にわたって延びる。
1つのスイッチ素子Tが有する発光部Tsの受光部Trとにおいて、配列方向Xで、発光部Tsの受光部Trに臨む面と、受光部Trの発光部Tsに臨む面との距離は、前述した長さW11となる。
発光部Tsの第2の他方導電型半導体層45sの厚みと、受光部Trの第2の他方導電型半導体層45rの厚みとは等しく選ばれ、オーミックコンタクト層47の厚みと遮光部形成層46の厚みとは等しく選ばれる。また発光部Tsの第2の他方導電型半導体層45sの幅方向Yの長さと、受光部Trの第2の他方導電型半導体層45rの幅方向Yの長さとは等しく選ばれ、オーミックコンタクト層47の幅方向Yの長さと遮光部形成層46の幅方向Yの寸法とは等しく選ばれる。また発光部Tsの幅方向Yの長さは、受光部Trの幅方向Yの寸法と等しく選ばれる。
本実施の形態では、スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Trは、配列方向Xに垂直な仮想一平面に関して面対称となるように形成される。
スイッチ素子Tの、一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43、第2の一方導電型半導体層44、第2の他方導電型半導体層45s,45rおよびオーミックコンタクト層47の各半導体層を構成する半導体材料のエネルギーギャップおよびキャリア密度は、スイッチ素子Tの受光部Trにおける受光感度と、発光部Tsにおける外部への光の取り出し効率および発光効率を高めるように設計することが好ましい。具体的には、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44を形成する半導体材料のエネルギーギャップに比べ、第1の一方導電型半導体層42および第2の他方導電型半導体層45を構成する半導体材料のエネルギーギャップを大きくすればよい。このようなエネルギーギャップとすることによって、第2の他方導電型半導体層45と第2の一方導電型半導体層44との界面付近で発生した光が、第1の一方導電型半導体層42および第2の他方導電型半導体層45に吸収されることなく隣接するスイッチ素子Tの受光部Trに照射されるため、光取り出し効率を向上させることができる。
第1の一方導電型半導体層42は、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される。第1の一方導電型半導体層42のキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものが望ましい。
第1の他方導電型半導体層43は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第1の他方導電型半導体層43を形成する半導体材料には、第1の一方導電型半導体層42を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の一方導電型半導体層42を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第1の他方導電型半導体層43のキャリア密度は1×1017cm−3程度のものが望ましい。
第2の一方導電型半導体層44は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。第2の一方導電型半導体層44を形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層43を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、もしくは第1の他方導電型半導体層43を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが小さいものが選ばれる。第2の一方導電型半導体層44のキャリア密度は、第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43、第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45sの全層の中で最も小さく1×1016cm−3〜1×1017cm−3程度のものであることが望ましい。第2の一方導電型半導体層44は、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成することによって、高い内部量子効率を得ることができる。
第2の他方導電型半導体層45s,45rは、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)およびガリウム砒素(GaAs)などの半導体材料によって形成される。特に第2の他方導電型半導体層45sを形成する半導体材料には、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44を形成する半導体材料のエネルギーギャップと同じ、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44を形成する半導体材料のエネルギーギャップよりもエネルギーギャップが大きいものが選ばれる。第2の他方導電型半導体層45sのキャリア密度は、1×1018cm−3程度のものであることが望ましい。
遮光部形成層46は、ガリウム砒素(GaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される他方導電型の半導体層であり、第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39r、第2の他方導電型半導体層45rとともに、発光部Tsから到来する光を遮る遮光部として機能する。
オーミックコンタクト層47は、ガリウム砒素(GaAs)およびインジウムガリウムリン(InGaP)などの半導体材料によって形成される他方導電型の半導体層であり、表面電極25とのオーミック接合を行うためのものである。オーミックコンタクト層47のキャリア密度は1×1019cm−3以上のものが望ましい。
スイッチ素子Tの第1の一方導電型半導体層42と、発光素子Lの第1の一方導電型半導体層32とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第1の他方導電型半導体層43と、発光素子Lの第1の他方導電型半導体層33とは、同じ半導体材料によって形成され、また層みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第2の一方導電型半導体層44と、発光素子Lの第2の一方導電型半導体層34とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第2の他方導電型半導体層45s,45rと、発光素子Lの第2の他方導電型半導体層35とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの発光部Tsのオーミックコンタクト層47および受光部Trの遮光部形成層46と、発光素子Lのオーミックコンタクト層37とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。
スイッチ素子Tの発光部Tsでは、第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45sによって主として光を発生する発光領域が形成され、受光部Trでは、第1の一方導電型半導体層42と第1の他方導電型半導体層43と第2の一方導電型半導体層44rとによって主として受光する受光領域、言い換えればフォトトランジスタ部が形成される。
スイッチ素子Tの第1の他方導電型半導体層43の厚みは、50Å〜1000Åに選ばれる。このように第1の他方導電型半導体層43の厚みを選ぶことによって、第1の一方導電型半導体層42と第1の他方導電型半導体層43と第2の一方導電型半導体層44とによって形成されるフォトトランジスタ部の電流増幅率が大きくなり、効率よく外部からの光を受光することができる。
オーミックコンタクト層47の厚み方向Zの一表面47a上には、表面電極25がオーミック接合されて設けられる。表面電極25は、オーミックコンタクト層47の厚み方向Zの一表面47aの周縁部を除く全領域にわたって形成される。これによってスイッチ素子Tの各半導体層への電界を均一化することができ、スイッチ素子Tから放射される光の発光強度を増加させることができる。表面電極25は、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される。具体的には表面電極25は、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)および金と亜鉛との合金(AuZn)などによって形成される。また表面電極25は、光を反射することによって、スイッチ素子Tの厚み方向一方Z1へ向かう光を遮光する。
第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43、第2の一方導電型半導体層44、第2の他方導電型半導体層45、オーミックコンタクト層47および表面電極25は、第1絶縁層17によって覆われ、隣接するスイッチ素子Tと電気的に絶縁される。前記発光部Tsには、隣接するスイッチ素子Tの受光部Trが臨んで配置されて、前述したように第1絶縁層17は、透光性を有するので、スイッチ素子Tの発光部Tsが発光すると、この光は第1絶縁層17を透過して、配列方向Xの他方に隣接するスイッチ素子Tの受光部Trに入射する。第1絶縁層17は、スイッチ素子Tが発する波長の光の95%以上を透過する樹脂材料によって形成される。所定のスイッチ素子Tの受光部Trの、隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsに臨む面と、前記所定のスイッチ素子Tに隣接するスイッチ素子Tの受光部Trの、前記所定のスイッチ素子Tの発光部Tsに臨む面との間の距離は、前述した間隔W3である。
図4の矢符で示すように、スイッチ素子Tの発光部Tsは、第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45sの界面付近で、第2の一方導電型半導体層44寄りの領域から主に発光する。また第1の一方導電型半導体層42および第1の他方導電型半導体層43の界面付近でもわずかに発光する。発光部Tsの第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45sの界面付近からは、光が全方向に放射される。
発光部Tsの第2の一方導電型半導体層44および第2の他方導電型半導体層45sの界面付近から、この発光部Tsを有するスイッチ素子Tの受光部Trに向かう方向、すなわち配列方向一方X1に向かう光は、受光部Trを構成する第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39r、第2の他方導電型半導体層45rおよび遮光部形成層46によって遮光される。
第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39r、第2の他方導電型半導体層45rおよび遮光部形成層46の、配列方向の長さW9は、20μm以上に選ばれ、好ましくは30μm以上に選ばれ、スイッチ素子Tの幅方向Yの長さW4の1/2未満に選ばれる。前記寸法W9が、20μm未満であると、第2の一方導電型半導体層44の配列方向Xの一端部39r、第2の他方導電型半導体層45rおよび遮光部形成層46を、光が透過してしまうおそれがあり、スイッチ素子Tの幅方向Yの長さW4の1/2以上となると、スイッチ素子Tに占める発光部Tsの体積が小さくなり、発光部Tsが発光したときに十分な光量を得がたくなるおそれがある。したがって、配列方向の長さW9を、20μm以上、好ましくは30μm以上、スイッチ素子Tの幅方向Yの長さW4の1/2未満に選ぶことによって、発光部Tsから到来する光を透過することなく、確実に遮光することができ、また発光部Tsのスイッチ素子Tに占める体積を大きくすることができる。また発光部Tsのスイッチ素子Tに占める体積を大きくすれば、発光部Tsが発光したときの光量を向上させることができる。
受光部Trの特に、第2の一方導電型半導体層44の一端部39rで、中央部39cよりも厚み方向一方Z1に突出する部分と、第2の他方導電型半導体層45rと、遮光部形成層46とが、発光部Tsから到来する光を遮光することによって、発光部Tsが発光したとき、この発光した発光部Tsを有するスイッチ素子Tの配列方向Xの一方に隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsにおいて、受光される光量を低減し、受光によってしきい電圧またはしきい電流が低下してしまうことを抑制することができる。
本実施の形態では、発光部Tsおよび受光部Trにおいて、第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43および第2の一方導電型半導体層44が共通に用いられており、接続部Tcは、第2の一方導電型半導体層44の中央部39cを含んで形成される。発光部Tsおよび受光部Trの第1の一方導電型半導体層42と、第1の他方導電型半導体層43と、第2の一方導電型半導体層44とは、一体形成されるので、発光部Tsおよび受光部Trの構成がさらに簡素化され、発光部Tsおよび受光部Trの作製がさらに容易となる。第2の一方導電型半導体層44の中央部39cが接続部Tcとして機能するので、接続部Tcを別途形成する必要がなく、スイッチ素子Tの構成をさらに簡素化することができ、これによって製造工程を可及的に少なくすることができ、生産性を向上させることができる。
スイッチ素子Tでは、配列方向一方X1に隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsが発光すると、この光を受光部Trによって受光する。受光部Trが受光すると光励起によって受光部Trの各半導体層に、受光強度に応じたキャリアが生成される。受光部のゲート28、発光部のゲート27および接続部Tcは、ともに第2の一方導電型半導体層44によって一体的に形成されているので、受光部Trにおいて光励起によって、受光部のゲート28にトリガ信号としてのキャリアが生成されると、このトリガ信号は、接続部Tcを介して発光部のゲート27に与えられ、発光部Tsにおいてもキャリアが生成される。キャリアの生成によって、第2の一方導電型半導体層44に蓄積される電子が、第2の一方導電型半導体層44のフェルミ準位を下げ、これによって第1の他方導電型半導体層43と第2の一方導電型半導体層44との接合部分において、なだれ現象が発生しやすくなり、発光部Tsにおけるしきい電圧またはしきい電流を低下させることができる。
第1絶縁層17を平坦性を有する樹脂材料によって形成することによって、第1絶縁層17を形成するときに、各スイッチ素子Tの間にも樹脂材料を充填して、第1絶縁層17を各スイッチ素子Tの間に確実に形成することができる。第1絶縁層17は、樹脂材料を塗付し、この樹脂材料を硬化させて形成される。第1絶縁層17を、ポリイミドおよびベンゾシクロブテン(BCB)などによって形成することによって、各スイッチ素子Tの間隔W3を前述のように選んでも、この空隙に第1絶縁層17を確実に形成することができ、また第1の一方導電型半導体層42、第1の他方導電型半導体層43、第2の一方導電型半導体層44、第2の他方導電型半導体層45s,45r、遮光部形成層46、オーミックコンタクト層47、表面電極25および基板31に第1絶縁層17を密着して形成することができる。第1絶縁層17が、スイッチ素子Tの表面から剥離してしまうと、この剥離した部分の界面によって、光が反射されてしまい、隣接するスイッチ素子Tからの光の受光量が低下してしまうおそれがあるが、このような問題が発生しない。
本実施の形態では、発光素子Lにおいては発光信号伝送路12がアノード端子として機能し、第1共通導電路301がカソード端子として機能する。またスイッチ素子Tにおいては、オーミックコンタクト層47,表面電極25がアノード端子として機能し、第2共通導電路303がカソード端子として機能する。第2の他方導電型半導体層45sを走査信号伝送路15と直接接続しないで、オーミックコンタクト層47および表面電極25を含むアノード端子を介して接続することによって、発光部Tsと走査信号伝送路15との接続部分において接触抵抗を可及的に低減することができ、スイッチ素子Tの発光部Tsにおける発熱を抑制し、また消費電力を抑制することができる。
各スイッチ素子Tの厚み方向Zの一方側において、第1絶縁層17および走査信号伝送路15は遮光層18によって覆われる。遮光層18の材料としては、電気絶縁性を有し、スイッチ素子Tから発せられる波長の光を、2μm〜3μm程度の厚みでほぼ完全に吸収するようなものであれば種々ものが使用可能である。本実施の形態では遮光層18は、緑色のポリイミドによって形成される。遮光層18の厚みは、5μm〜10μm程度に選ばれる。
スイッチ素子Tの発光部Tsから発せられ、厚み方向一方Z1へ向かう光は、第1絶縁層17と走査信号伝送路15と界面、走査信号伝送路15、第1絶縁層17と遮光層18との界面などによって反射されるか、遮光層18によって吸収される。各走査信号伝送路15および第1絶縁層17によって反射手段が形成される。これによって、スイッチ素子Tからの光が、発光素子Lから厚み方向一方Z1に出射される光に干渉してしまうことが防止される。したがって発光装置10を、後述する画像形成装置87の露光装置として用いた場合に、スイッチ素子Tからの漏れ光によって、画像の劣化が発生せず、優れた品質の画像を形成することができる。
第1絶縁層17と走査信号伝送路15とは、前述したように反射手段として機能し、スイッチ素子Tの発光部Tsから発せられた光を、発光部Tsに臨む受光部Trに反射することができる。これによって1つのスイッチ素子Tの発光部Tsから、この発光部Tsに受光部Trを臨ませて配置される配列方向Xに隣接するスイッチ素子Tの受光部Trに伝達する光の伝達効率を向上させることができる。これによって、発光したスイッチ素子Tに隣接するスイッチ素子Tの受光部Trにトリガ信号を確実に発生させることができ、発光したスイッチ素子Tに隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsのしきい電圧またはしきい電流を、確実に低下させることができ、スイッチ素子Tの光走査をより安定して行うことができる。また、発光した発光部Tsを有するスイッチ素子Tに隣接するスイッチ素子Tの発光部Tsのしきい電圧およびしきい電流を迅速に低下させることができるので、スイッチ素子Tの発光部Tsを配列方向に順番に発光させるスイッチ素子Tの発光部Tsの走査速度を向上させることができる。またスイッチ素子Tの発光部Tsが発する光量を小さくても、隣接するスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流を下げることができるので、スイッチ素子Tの発光に必要な電力を可及的に抑制して光走査を行うことができ、装置の消費電力を抑制することができる。このような反射手段を作製するために特別に反射層などを形成する必要がなく、既存の構成である第1絶縁層17および走査信号伝送路15を利用して形成することができる。したがって、発光装置10の作製工程が増加することなく、反射手段を形成することができる。
図5は、図1の切断面線C4−C4から見た発光装置10の基本的構成を示す一部の断面図である。発光素子Lとトリガ信号発生素子Mとは、幅方向Yに距離WLM離間して設けられる。発光素子Lのゲート124である第2の一方導電型半導体層34と、トリガ信号発生素子Mのゲート125である第2の一方導電型半導体層234とは、接続手段123によって電気的に接続される。発光素子Lとトリガ信号発生素子Mとの間には、この発光素子Lとトリガ信号発生素子Mとにわたって、素子間接続部241が設けられる。素子間接続部241は、第1の一方導電型半導体層242、他方導電型半導体層243および第2の一方導電型半導体層244が、基板31の一表面31aに、一表面31a側からこの順に積層されて形成される。第1の一方導電型半導体層242、他方導電型半導体層243および第2の一方導電型半導体層244の積層体の幅方向Yの長さは、発光素子Lおよびトリガ信号発生素子Mの幅方向の長さよりもわずかに小さく選ばれる。
素子間接続部241の第1の一方導電型半導体層242は、発光素子Lの第1の一方導電型半導体層32およびトリガ信号発生素子Mの第1の一方導電型半導体層232と同じ半導体材料によって形成され、またこれらと層厚が等しく形成される。素子間接続部241の第1の一方導電型半導体層242と、発光素子Lの第1の一方導電型半導体層32およびトリガ信号発生素子232とは、一体形成される。素子間接続部241の他方導電型半導体層243は、発光素子Lの第1の他方導電型半導体層33およびトリガ信号発生素子Mの第1の他方導電型半導体層233と同じ半導体材料によって形成され、またこれらと層厚が等しく形成される。素子間接続部241の他方導電型半導体層243と、発光素子Lの第1の他方導電型半導体層33と、トリガ信号発生素子Mの第1の他方導電型半導体層233とは、一体形成される。素子間接続部241の第2の一方導電型半導体層244は、発光素子Lの第2の一方導電型半導体層34およびトリガ信号発生素子Mの第2の一方導電型半導体層234と同じ半導体材料によって形成され、またこれらよりも層厚が薄く形成される。素子間接続部241の第2の一方導電型半導体層244と、発光素子Lの第2の一方導電型半導体層34と、トリガ信号発生素子Mの第2の一方導電型半導体層234とは、一体形成される。前記距離WLMは、接続手段123の抵抗値が、1kΩ(オーム)以下となるように選ばれる。抵抗値が高すぎると、トリガ信号発生素子Mから発光素子Lへのトリガ信号が減衰されてしまうが、接続手段123の抵抗値を前記範囲に選ぶことによって、トリガ信号発生素子Mから発光素子Lへのトリガ信号が減衰することなく伝達される。
前記素子間接続部241の第2の一方導電型半導体層244によって接続手段123が実現される。遮光層18は、トリガ信号発生素子Mを覆い、幅方向Yにおいて発光素子Lとトリガ信号発生素子Mとの中央まで延び、信号路延在部21の幅方向他方Y2の端部を覆うように設けられる。
トリガ信号発生素子Mと、このトリガ信号発生素子Mに対応するスイッチ素子Tとは、幅方向Yに隣接して配置される。トリガ信号発生素子アレイ122において各トリガ信号発生素子Mの幅方向Yのスイッチ素子T側の端部は、配列方向Xに揃う。またスイッチ素子アレイ13において、各スイッチ素子Tの幅方向のトリガ信号発生素子M側の端部は、配列方向Xに揃う。幅方向Yにおいて、トリガ信号発生素子Mのスイッチ素子Tに臨む幅方向他方Y2の表面256と、スイッチ素子Tの発光素子Lに臨む幅方向一方Y1の表面57とは、距離WTM離間して設けられる。前記距離WTMは、製造工程における制限を受けるので、スイッチ素子Tの厚み方向Zの高さの2倍以上に形成されるが、20μm未満に選ばれ、好ましくは10μm以下に選ばれる。本実施の形態では、スイッチ素子Tの高さを約4μmとしており、この場合には間隔WTMは8μm程度になる。前記間隔WTMが20μm以上になると、伝送効率が大きく低下してしまう。
第1絶縁層17は、トリガ信号発生素子Mおよびスイッチ素子Tの表面に沿って形成されており、トリガ信号発生素子Mとスイッチ素子Tと間にも形成され、トリガ信号発生素子Mとスイッチ素子Tとが第1絶縁層17によって電気的に絶縁される。トリガ信号発生素子Mとスイッチ素子Tと間に設けられる第1絶縁層17の厚みは、トリガ信号発生素子Mおよびスイッチ素子Tの厚みとほぼ等しい。
トリガ信号発生素子Mの厚み方向Zの長さは、スイッチ素子Tの厚み方向の長さと同じとなり、トリガ信号発生素子Mの配列方向Xの長さWm2は、スイッチ素子Tの配列方向Xの長さW4よりもわずかに小さいだけであるので、スイッチ素子Tが発光すると、この光は、トリガ信号発生素子Mに受光されるとともに、トリガ信号発生素子Mによって、発光素子L側に向かう光が遮光される。これによって、スイッチ素子Tの光が、発光素子Lと透過して、発光素子Lから光が漏れてしまうおそれがない。
また第1絶縁層17は、前述したような材料によって形成されるので、トリガ信号発生素子Mのスイッチ素子Tに臨む幅方向他方Y2の表面256と、スイッチ素子Tのトリガ信号発生素子Mに臨む幅方向一方Y1の表面57と、基板31の一表面31aとに密着して形成することができるので、第1絶縁層17が、剥離してしまい、剥離した部分の界面によって、光が反射されてしまい、発光素子Lにおける受光量が低下してしまうおそれがない。
走査スタート用スイッチ素子T0は、基板31の厚み方向Zの一表面31aに、第1の一方導電型半導体層が積層され、第1の一方導電型半導体層の厚み方向Zの一表面上に第1の他方導電型半導体層が積層され、第1の他方導電型半導体層の厚み方向Zの一表面上に第2の一方導電型半導体層が積層され、第2の一方導電型半導体層の厚み方向Zの一表面上に第2の他方導電型半導体層が積層され、第2の他方導電型半導体層の厚み方向Zの一表面上にオーミックコンタクト層が形成され、オーミックコンタクト層の厚み方向Zの一表面上に表面電極25が形成されて構成される。走査スタート用スイッチ素子T0の表面電極25は、オーミックコンタクト層67の一表面の周縁部を除く全領域に形成される。第1の一方導電型半導体層、第1の他方導電型半導体層、第2の一方導電型半導体層、第2の他方導電型半導体層、オーミックコンタクト層および表面電極25の積層体は、略直方体形状を有する。
スイッチ素子Tの第1の一方導電型半導体層42と、走査スタート用スイッチ素子T0の第1の一方導電型半導体層とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第1の他方導電型半導体層43と、走査スタート用スイッチ素子T0の第1の他方導電型半導体層とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第2の一方導電型半導体層44と、走査スタート用スイッチ素子T0の第2の一方導電型半導体層とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tの第2の他方導電型半導体層45と、走査スタート用スイッチ素子T0の第2の他方導電型半導体層とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。またスイッチ素子Tのオーミックコンタクト層47と、走査スタート用スイッチ素子T0のオーミックコンタクト層とは、同じ半導体材料によって形成され、厚みが等しく形成される。
各発光素子L、各トリガ信号発生素子M、各スイッチ素子Tおよび走査スタート用スイッチ素子T0は、基板31の一表面31aに、第1の一方導電型半導体層、第1の他方導電型半導体層、第2の一方導電型半導体層、第2の他方導電型半導体層、オーミックコンタクト層を、それぞれ形成するための半導体材料を、エピタキシャル成長および化学気相成長(CVD)法などによって順次積層した後、フォトリソグラフィによってパターニングおよびエッチングして形成される。したがって、一連の製造プロセスにおいて、発光素子L、スイッチ素子Tおよび走査スタート用スイッチ素子T0を同時に形成することができるので、製造コストを低減することができる。各半導体層を形成した後、導電体層を蒸着法などによって形成し、フォトリソグラフィによってパターニングおよびエッチングして、表面電極25を形成する。
図6は、発光素子L、トリガ信号発生素子M,スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Tr、ならびに走査スタート用スイッチ素子T0の、アノード電圧とアノード電流との関係である順方向電圧−電流特性を示すグラフである。なお、図6では、横軸をアノード電圧とし、縦軸をアノード電流として示されている。また図6には、負荷線72も示されている。発光素子L、トリガ信号発生素子M、スイッチ素子Tの発光部Tsおよび受光部Tr、ならびに走査スタート用スイッチ素子T0は、順方向電圧−電流特性を表す特性曲線と、負荷線72とが交わるオフ状態のb点と、特性曲線と負荷線72とが交わるオン状態のa点とを遷移する。アノード電圧は、カソードの電位を0(零)ボルト(V)としたときのアノードの電位を表し、アノード電流は、アノードに流れる電流を表す。
発光素子Lおよびスイッチ素子Tの初期のしきい電圧(ブレークオーバ電圧)、およびおよび走査スタート用スイッチ素子T0のしきい電圧をVBOとする。初期のしきい電圧とは、発光素子Lおよびスイッチ素子Tでは、受光していない状態のしきい電圧である。
発光素子Lおよびスイッチ素子Tでは、受光によってしきい電圧が、VBOから、図6の矢符P1で示すように、このVBOよりも小さな電圧であるVTHへと低下する。
図7は、図1に示される発光装置10の基本的構成を示す一部の等価回路を示す回路図である。発光装置10は、駆動手段73によって駆動される。駆動手段73は、走査信号伝送路15と、定電圧供給路302と、発光信号伝送路12と、スタート信号伝送路16とそれぞれに接続され、走査信号伝送路15に走査信号φ1を与え、定電圧供給路302に定電圧Vccを与え、スタート信号伝送路16にスタート信号φSを与え、発光信号伝送路12に発光信号φEをそれぞれ与える。駆動手段73は、駆動用ドライバーIC(
Integrated circuit)によって実現される。
駆動手段73は、外部から基準となるクロックパルス信号を入力して、このクロックパルス信号に基づいて、走査信号φ1、定電圧Vccおよびスタート信号φSを同期して出力し、走査信号伝送路15およびスタート信号伝送路16にそれぞれ与える。前記クロックパルス信号は、後述する画像形成装置87の制御手段96から与えられる。クロックパルス信号のクロック周期は、後述する画像形成装置87の制御手段96における制御周期よりも長く選ばれる。また駆動手段73は、クロックパルス信号とともに与えられる画像情報に基づいて、発光信号φEを出力して、発光信号伝送路12に与える。
走査信号伝送路15は、各スイッチ素子Tの発光部Tsに1つおきに発光部Tsの極性が反転するように接続される。走査信号伝送路15は、共通配線部15a、および共通配線部15aと各発光部Tsとを接続する個別配線部15bとを有する。走査信号伝送路15および定電圧供給路302のうち走査信号伝送路15のみが接続された各発光部Tsに対する走査信号伝送路15の個別配線部15bは、第1の抵抗素子Rφを含む。この抵抗素子Rφによって、駆動手段73から走査信号伝送路15に過電流が流れてしまうことを防止することができる。また抵抗素子Rφは、前記各発光部Tsに印加される電圧を分圧する分圧抵抗としての機能を有する。
定電圧供給路302は、1つおきのスイッチ素子Tの発光部Tsに接続される。定電圧供給路302は、共通配線部302a、および共通配線部302aと各発光部Tsとを接続する個別配線部302bとを有する。走査信号伝送路15および定電圧供給路302の両者が接続された発光部Tsに対する定電圧供給路302の個別配線部302bは、第2の抵抗素子Rφを含む。この抵抗素子Rφによって、駆動手段73から定電圧供給路302に過電流が流れてしまうことを防止することができる。また抵抗素子Rφは、前記各発光部Tsに印加される電圧を分圧する分圧抵抗としての機能を有する。抵抗素子Rφは、走査信号伝送路15および定電圧供給路302の両者が接続された発光部Tsに対する走査信号伝送路15の個別配線部15bに含まれていてもよく、この場合でも、同様の効果を達成することができる。
発光信号伝送路12には、各発光素子Lと直列に抵抗素子Rφがそれぞれ接続され、駆動手段73は、抵抗素子Rφを介して発光信号伝送路12に接続される。この抵抗素子Rφによって、駆動手段73から発光信号伝送路12に過電流が流れてしまうことを防止することができる。また抵抗素子Rφは、各発光素子Lに印加される電圧を分圧する分圧抵抗としての機能を有する。
スタート信号伝送路16には、走査スタート用スイッチ素子T0と直列に抵抗素子Rφが接続され、駆動手段73は、抵抗素子Rφを介してスタート信号伝送路16に接続される。この抵抗素子Rφによって、駆動手段73からスタート信号伝送路16に過電流が流れてしまうことを防止することができる。
このような発光装置10において、一方導電型をn型、他方導電型をp型とした場合、発光信号伝送路12、走査信号伝送路15または定電圧供給路302がアノード端子に接続される構成となり、接地端子に接続されるカソード電圧を0Vとすると、発光信号伝送路12、走査信号伝送路15または定電圧供給路302に印加する電源に正電源を用いることができるため好ましい。また、一方導電型をp型,他方導電型をn型としても、バイアス電圧の極を反対とすることにより一方導電型をn型、他方導電型をp型とした場合と同様の動作を得ることができる。このため、光取り出し効率および発光効率や受光感度が最適となるように構成する各半導体層の組み合わせを選択し、これらの各半導体層を作製するための製造上の観点から導電型を決定してもよい。
以下、一方導電型をn型,他方導電型をp型として説明する。これにより、光走査装置9は第2の他方導電型半導体層にアノード端子が接続され、第1の一方導電型半導体層にカソード端子が接続された構成となる。
図8は、駆動手段73が、スタート信号伝送路16に与えるスタート信号φSと、走査信号伝送路15に与える走査信号φ1と、定電圧供給路302に与える定電圧Vccと、発光信号伝送路12に与える発光信号φEと、発光素子L1の発光強度と、走査走査スタート用スイッチ素子T0およびスイッチ素子T1〜T4の発光強度との各波形を模式的に示す波形図である。発光素子L1および走査走査スタート用スイッチ素子T0ならびにスイッチ素子T1〜T4の発光強度は、ハイ(H)レベルのとき発光していることを表し、ロー(L)レベルのとき発光していないことを表す。図8において、横軸は時間であって、基準時刻からの経過時間を表す。
またスタート信号φS、走査信号φ1および発光信号φEについて、縦軸は、信号レベルを表す。信号レベルは、電圧の大きさを表し、スタート信号φS、走査信号φおよび発光信号φEがハイ(H)レベルのとき、高電圧が信号伝送路に与えられ、スタート信号φS、走査信号φ1および発光信号φEがロー(L)レベルのとき、低電圧が信号伝送路に与えられる。
以後、駆動手段73の動作について説明する。まず、時刻t0で、駆動手段73は、スタート信号φS、走査信号φ1および発光信号φEをローレベルとし、定電圧Vccをハイレベルとする。駆動手段は、定電圧Vccをハイレベルにすると、この状態を維持する。
この後、時刻t1で、駆動手段73は、スタート信号φSをローレベルからハイレベルに変化させる。スタート信号φSについて、信号レベルがハイレベルであるとき、スタート信号φSの電圧は、走査スタート用スイッチ素子T0の発光条件を満たす電圧である。このようにして、走査スタート用スイッチ素子T0がオン状態になり、発光する。時刻t1において、走査信号φ1および発光信号φEは、ローレベルである。走査スタート用スイッチ素子T0からの発光は、隣接するスイッチ素子アレイ13の配列方向Xの端部に配置されるスイッチ素子T1の受光部Tr1に最も強く入射する。
次に、走査スタート用スイッチ素子T0からスイッチ素子T1への発光状態の転送について説明する。走査スタート用スイッチ素子T0からの発光による光照射によって、スイッチ素子T1の受光部Tr1のしきい電圧が低下し、この受光部Tr1にゲート端子が接続されているスイッチ素子T1の発光部Ts1も同様にしきい電圧が低下する。
この状態で時刻t2において、駆動手段73は、走査信号φ1をローレベルからハイレベルに変化させる。このとき、走査信号伝送路15がアノード端子に接続されているスイッチ素子T3は、走査スタート用スイッチ素子T0から十分離れているため、走査スタート用スイッチ素子T0の発光の光照射による発光のしきい電圧の低下はほとんどない。そこで、走査信号φ1のハイレベルVH(φ1)を、スイッチ素子T3の発光のしきい電圧VTH(T3)とスイッチ素子T1の発光のしきい電圧VTH(T1)との間の電圧となるように設定することによって、すなわち、VH(φ1)を、VTH(T1)<VH(φ1)<VTH(T3)と設定することによって、スイッチ素子T1のみがオン状態になり発光する。
スイッチ素子T1がオン状態となって発光した後、時刻t3で、駆動手段73は、スタート信号φSをハイレベルからローレベルに変化させる。これによって走査スタート用スイッチ素子T0はオフ状態になり、発光が終了する。
このようにして、走査スタート用スイッチ素子T0から、スイッチ素子T1へと発光状態が遷移する。また時刻t3において、駆動手段73は、スタート信号φSをハイレベルからローレベルにし、次にスイッチ素子T1を発光させるときまで、走査スタート用スイッチ素子T0のオフ状態を維持させる。
スイッチ素子T1がオン状態となって発光した後、その発光は近接するスイッチ素子T2の受光部Tr2およびトリガ信号発生素子M1に入射して、そのしきい電圧を下げる。時刻t3が経過した時刻t4で、駆動手段73は、発光信号φEをローレベルからハイレベルにする。発光素子アレイ11の1番目の発光素子L1は対応するトリガ信号発生素子アレイ13のトリガ信号発生素子M1が光励起によりしきい電圧が下がった状態のため、接続されたゲート端子にかかる電圧が低下するが、発光素子アレイ11の2番目の発光素子L2はトリガ信号発生素子アレイ122の対応するトリガ信号発生素子M2が光励起をしていない状態であり、発光素子アレイ11の1,2番目の発光素子L1,L2の発光のしきい電圧をそれぞれVTH(L1),VTH(L2)とすると、前述したように発光信号φEのハイレベルVH(φE)をVTH(L1)<VH(φE)<VTH(L2)となるように設定することによって、発光素子L1のみオン状態となり発光する。
この後、時刻t4が経過した時刻t5で、駆動手段73は、発光信号φEをハイレベルからローレベルにする。これによって、発光素子アレイ11の1番目の発光素子L1はオフになり発光は終了する。
次に、スイッチ素子T1からスイッチ素子T2への発光状態の転送について説明する。スイッチ素子T1からの発光による光照射により、スイッチ素子T2の受光部Tr2のしきい電圧が低下し、ゲート端子が接続されているスイッチ素子T2の発光部Ts2も同様に発光のしきい電圧が低下する。この状態で、時刻t5が経過した時刻t6において、駆動手段73は、走査信号φ1をハイレベルからローレベルに変化させる。このとき、同じく走査信号伝送路15がカソード端子に、定電圧供給路302がアノード端子に、それぞれ接続されているスイッチ素子T4は、スイッチ素子T1から十分離れているため、スイッチ素子T1の発光の光照射による発光のしきい電圧の低下はほとんどない。また、光励起状態のスイッチ素子T2の発光部Ts2は、走査信号φ1がハイレベルからローレベルに変化し、スイッチ素子T1の発光が終了してもそのゲート電圧はすぐに元には戻らずに、しきい電圧が低下した状態となる。そこで、定電圧VCCを、スイッチ素子T4の発光のしきい電圧VTH(T4)とスイッチ素子T2の発光のしきい電圧VTH(T2)との間の定電圧となるように設定することによって、すなわち、VTH(T2)<VCC<VTH(T4)と設定することによって、スイッチ素子T2のみがオン状態になり発光する。
また、スイッチ素子T2の発光部Ts2が発光しているとき、ゲート端子同士が接続されているスイッチ素子T2の受光部Tr2はしきい電圧は低下した状態であるが、アノード端子が開放されているため発光しない。そのため、隣接するスイッチ素子T1およびT3のうち、T1の方向の発光は受光部Tr2によってその大部分が遮られ、T3の方向にのみ発光し、スイッチ素子T3のみを光励起状態にできる。
このように駆動手段73が、定電圧Vccをハイレベルにした状態で、走査信号φ1の信号レベルの切換えを繰り返すことによって、スイッチ素子T3,…,Tj−1,Tjにおいても、オン状態が配列方向Xに沿って順次転送される。スイッチTが発光しているとき、発光信号伝送路12の発光信号φEをローレベルからハイレベルにすることによって、この発光しているスイッチ素子Tに対応する発光素子Lのみを選択的に発光させることができる。
また走査信号伝送路15によって各スイッチ素子Tの発光部Tsに同じタイミングで走査信号φ1を与える構成であっても、スイッチ素子Tの発光部Tsを配列方向Xの一方から他方に順番に発光させることができる。したがって複数の走査信号伝送路に与える走査信号の同期を取る必要がなく、走査信号を与えるための駆動回路を簡略化することができる。
図9は、発光装置10を有する画像形成装置87の基本的構成を示す側面図である。画像形成装置87は、電子写真方式の画像形成装置であり、発光装置10を、感光体ドラム90への露光装置に使用している。発光装置10は、駆動手段73によって駆動される。発光装置10および駆動手段73は、回路基板に実装される。
画像形成装置87は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のカラー画像を形成するタンデム方式を採用した装置であり、大略的に、4つの発光装置10Y,10M,10C,10K、集光手段であるレンズアレイ88C,88M,88Y,88K、前記発光装置10および駆動手段73が実装された回路基板31およびレンズアレイ88を保持する第1ホルダ89C,89M,89Y,89K、4つの感光体ドラム90C,90M,90Y,90K、4つの現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写手段である転写ベルト92、4つのクリーナ93C,93M,93Y,93K、4つの帯電器94C,94M,94Y,94K、定着手段95および制御手段96を含んで構成される。
各発光装置10は、駆動手段73によって各色のカラー画像情報に基づいて駆動される。たとえば、4つ発光装置10の配列方向Xの長さW11は、たとえば200mm〜400mmに選ばれる。
各発光装置10の発光素子Lからの光は、レンズアレイ88を介して各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに集光して照射される。レンズアレイ88は、たとえば発光素子Lの光軸上にそれぞれ配置される複数のレンズを含み、これらのレンズを一体的に形成して構成される。
発光装置10が実装される回路基板およびレンズアレイ88は、第1ホルダ89によって保持される。第1ホルダ89によって、発光素子Lの光照射方向と、レンズアレイ88のレンズの光軸方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、たとえば円筒状の基体表面に感光体層を被着して成り、その外周面には各発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光を受けて静電潜像が形成される静電潜像形成位置が設定される。
各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kの周辺部には、各静電潜像形成位置を基準として回転方向下流側に向かって順番に、露光された感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに現像剤を供給する現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写ベルト92、クリーナ93C,93M,93Y,93K、および帯電器94C,94M,94Y,94Kがそれぞれ配置される。感光体ドラム90に現像剤によって形成された画像を記録シートに転写する転写ベルト92は、4つの感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kに対して共通に設けられる。
前記感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、第2ホルダによって保持され、この第2ホルダと第1ホルダ89とは、相対的に固定される。各感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kの回転軸方向と、各発光装置10の前記配列方向Xとがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
転写ベルト92によって、記録シートを搬送し、現像剤によって画像が形成された記録シートは、定着手段95に搬送される。定着手段95は、記録シートに転写された現像剤を定着させる。感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kは、回転駆動手段によって回転される。
制御手段96は、前述した駆動手段73にクロック信号および画像情報を与えるとともに、感光体ドラム90C,90M,90Y,90Kを回転駆動する回転駆動手段、現像剤供給手段91C,91M,91Y,91K、転写手段92、帯電手段94C,94M,94Y,94Kおよび定着手段95の各部を制御する。
このような構成の画像形成装置87では、露光装置として使用される発光装置10からバイアス光および漏れ光が発生しないので、高画質の画像を形成することができる。また発光サイリスタによるスイッチ素子Tおよび発光素子Lを集積化した発光装置10を露光装置に用いているので、このような露光装置は、安価に製造することができ、これによって画像形成装置87の製造コストを低減することができる。
各スイッチ素子Tは、隣接するスイッチ素子Tから発する光を受光することによって、そのしきい電圧またはしきい電流を低下させることができ、各スイッチ素子Tの予め定める部位に、転送方向指定のためのダイオードおよび電源との間に接続される負荷抵抗などを接続する必要がない。またスイッチ素子Tと発光素子Lとを配線によって接続する必要がない。したがって装置の構造を複雑にすることなく、可及的に少ない信号伝送路によって、複数配列される発光素子を選択的に発光させることができる。また従来の発光装置と比較して、装置の構造が簡素化されるので、製造工程を少なくすることができ、装置の生産性を向上させることができる。
またスイッチ素子Tと発光素子Lとは、電気的に絶縁状態となっているので、走査信号伝送路15と、発光信号伝送路16とにおいても、電気的に絶縁された状態となる。したがって、走査信号伝送路15と、発光信号伝送路16とがスイッチ素子Tおよび発光素子Lを介して短絡することがなく、装置の信頼性を向上させることができる。
またP型半導体とN型半導体とが交互に積層される単純な構成で、前記スイッチ素子T、トリガ信号発生素子Mおよび発光素子Lならびにスタート用スイッチ素子T0を実現することによって、発光装置10の作製が容易である。スイッチ素子Tとトリガ信号発生素子Mと発光素子Lとスタート用スイッチ素子T0とを基板31上に同一の製造プロセスによって形成することができ、発光装置10の製造工程を可及的に少なくすることができる。
さらに、同一の基板31上にスイッチ素子T、トリガ信号発生素子Mおよび発光素子Lならびにスタート用スイッチ素子T0が集積されて構成されるので、各素子を高密度に形成することができ、スイッチ素子アレイ13では配列方向Xに隣接するスイッチ素子T同士を密接させることができる。これによって各スイッチ素子Tは、隣接するスイッチ素子Tからの光を効率的に受光することができ、隣接するスイッチ素子Tの発光強度が小さい場合であっても、発光したスイッチ素子Tに隣接するスイッチ素子Tのしきい電圧またはしきい電流を低下させることができる。したがって、スイッチ素子Tを発光させるために必要な電力を小さくすることができ、より消費電力の小さな発光装置10を実現することができる。また発光素子Lにおいても、配列方向Xに隣接する発光素子L同士を密接させることができるので、画像形成装置87に用いて画像の解像度を向上させることができる。
また各スイッチ素子Tは、配列方向Xに沿って順番に発光するので、この光を遮光層18によって遮光し、発光素子Lが発する光に干渉しないようにすることによって、発光素子Lが発光しているときには、発光素子Lの光量が小さくなったり大きくなったりしてしまうことが防止され、安定した光量を得ることができる。また遮光層18によって、バイアス光が漏れることが防止されるので、画像形成装置87では、画像の品位を低下させることがなく、良好な品質の画像を形成することができる。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば高抵抗または半絶縁性基板31と、第1の一方導電型(n型)半導体層との間には、一方導電型(n型)バッファ層を介在させてもよい。この一方導電型(n型)バッファ層、もしくは第1の一方導電型(n型)半導体層のシート抵抗を、第2の一方導電型(n型)半導体層よりも小さくすることで、基板31と垂直方向に流れる電流を、発光信号伝送路12、走査信号伝送路15または定電圧供給路302の接続されたアノード端子のある発光領域に集中できるため、発光効率を高められる。