JP2007151470A - 試料を用いた核酸増幅方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は,試料中の核酸を増幅するにあたって、核酸分解の原因となる試料中のヌクレアーゼの活性を抑制して長期間保存された試料からも効率よく核酸を増幅させることを可能とする試料の保存方法を提供することを課題とする。
【解決手段】1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は,核酸増幅用の試料の保存方法に関する。本発明は,遺伝病の診断,塩基多型解析等に際して特に有用である。
PCR法は,核酸の変性工程,プライマーのアニーリング工程及びDNAポリメラーゼによるプライマーの伸長反応工程を含む一連の操作を繰り返すことにより,特定の核酸配列を増幅する方法である。これらの工程を含む操作を多数回繰り返すことにより,特定配列のコピー数を著しく増大させることができる。PCR法により,従来非常に困難であった生物試料中の極微量な核酸の検出が可能となって,遺伝子解析が飛躍的に容易になった。またPCR法は,感染症や遺伝子疾患などのDNAまたはRNAレベルでの診断に利用されている。
遺伝子診断を行う際の試料として,血液試料や組織細胞試料が用いられる場合が多いが,これらの生物試料中にはタンパク質,脂質,糖質などの夾雑物質が大量に含まれており,核酸の増幅や検出を妨げる恐れがある。従って,生物試料中の核酸を増幅するに当たっては,予め生物試料中の夾雑物質を除去する操作,又は生物試料から核酸を抽出し,精製する操作が必要となる。
核酸の抽出方法としては,フェノールや水酸化ナトリウムを用いる方法が知られているが,これらの物質は取り扱いに注意を要し,また廃棄方法が煩雑である。さらに,これらの方法は,操作に技術的な熟練を要し,試料中の核酸の回収量が一定しない場合も多く,再現性よく実施するのは困難な方法である。
生物試料の中で,採取が容易かつ感染性の低いものとしては口腔内細胞や唾液が挙げられる。口腔内細胞はブラシや綿棒等の採取具で採取し,抽出操作を行うために採取具を緩衝液などの液中に沈めて細胞を採取具から外す操作が必要となる。この時,採取具から外れない細胞もかなり多く,また採取具による細胞採取量のばらつき等が原因で核酸増幅に十分な収量が得られない場合もある。一方,唾液は液体である為,増幅反応に直接持ち込むことが可能であり,抽出操作による検体量の損失が全くないため,安定した量の核酸を得ることができる。
唾液試料を直接増幅反応液に用いる方法として,反応前に唾液試料を加温処理することを特徴とする方法が知られている(特許文献1)。この方法は,唾液試料を加温処理或いは糖分解酵素で処理した後,増幅反応液に使用する方法である。
通常,唾液中にはヌクレアーゼが存在し,唾液中の核酸を分解してしまうことから,長期間保存された唾液試料を用いて核酸増幅を行うことは非常に困難である。しかし特許文献1に記載の方法は,唾液試料を加温処理或いは糖分解酵素で処理することによりPCR抑制の原因となっている唾液中の糖を分解する方法であり,ヌクレアーゼの活性を抑制しようとするものではない。
長期間保存された唾液試料からの核酸増幅方法については知られていない。
また、一般的に核酸増幅に用いる試料の保存方法としては、冷蔵もしくは冷凍保存が用いられているが、多数の試料を保存する場合には、必要以上のスペースを必要としていた。
特開平10−80280号公報
本発明は,試料中の核酸を増幅するにあたって、核酸分解の原因となる試料中のヌクレアーゼの活性を抑制して長期間保存された試料からも効率よく核酸を増幅させることを可能とする試料の保存方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね,本願発明の試料保存用溶液を唾液試料と混和することにより,試料中のヌクレアーゼの活性を抑制でき得ることを見出した。また驚くべきことに、4℃よりも高い温度でも試料中に含まれる核酸の劣化を伴うことなく、試料の保存が可能であることも見いだした。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり,以下の方法を提供する。
1.生体からの採取した試料中の核酸を増幅する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法。
2.さらに、第1工程と第2工程の間に、試料を保存する工程を含むことを特徴とする1の試料核酸増幅方法。
3.1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする1または2の試料核酸増幅方法。
4.試料保存用溶液が緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする1〜3のいずれかの試料核酸増幅方法。
5.試料が唾液であることを特徴とする1〜4のいずれかの試料核酸増幅方法。
6.生体からの採取した試料の核酸を保存する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加し、4℃より高い温度で保存することを特徴とする試料核酸保存方法。
7.1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする6の試料核酸保存方法。
8.試料保存用溶液が緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする6または7の試料核酸保存方法。
9.試料が唾液であることを特徴とする6〜8のいずれかの試料核酸保存方法。
10.1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液。
11.1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする10の試料保存用溶液。
12.緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする10または11の試料保存用溶液。
13.10〜12のいずれかの試料保存用溶液を含むキット。
14.さらに、塩基多型を検出するための標識オリゴヌクレオチド及び2種の核酸増幅用オリゴヌクレオチド,DNAポリメラーゼ,4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含むことを特徴とする13のキット。
本発明によれば,試料について非常に簡単な前処理を行うだけで,長期間保存された唾液試料からでも効率的にその中に含まれる核酸を増幅させることができる。本発明の方法は,取り扱いに注意を要する試薬を用いることなく,また試料に依存せず安定的に効率良く核酸を増幅させることができる。また,本発明によれば,操作手順が少ないため環境中の細菌,取扱者のDNAポリメラーゼ,RNAポリメラーゼなどのコンタミネーションが生じにくい。さらには、4℃以上の温度でも保存可能であり、冷蔵もしくは冷凍の設備、スペース等を必要としない。
本願発明は、生体からの採取した試料中の核酸を増幅する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法である。
さらには、生体からの採取した試料中の核酸を増幅する方法であって、100mM以上の1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法である。
また、生体からの採取した試料の核酸を保存する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加し、4℃より高い温度で保存することを特徴とする試料核酸保存方法である。
さらには、生体からの採取した試料の核酸を保存する方法であって、100mM以上の1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加し、4℃より高い温度で保存することを特徴とする試料核酸保存方法。
また、1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液である。
さらには、100mM以上の1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液である。
また、1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液を含むキットである。
さらには、100mM以上の1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液を含むキットである。
以下,本発明を詳細に説明する。
試料
本発明に用いられる試料は、生体から得られる体液などの流動性の液体が好ましく使用される。体液とは尿、血液、血清、羊水、唾液、涙、胃液、膵液、胆汁、鼻水、膣液、結膜液、大便、精液、及び汗などが含まれる。好適には唾液を試料として用いることが出来る。試料の由来は特に限定されない。本願発明の方法は,生物種及び固体差を問わず,効率的にその中に含まれる核酸を効率的かつ再現性よく増幅できる点に特徴がある。
試料保存用溶液
本願発明に使用される試料保存用溶液は核酸増幅反応を阻害しないものであれば特に限定されない。また,核酸増幅を阻害しない限度で有機溶媒や界面活性剤が含まれていてもよく,懸濁液であってもよい。
試料保存用溶液に使用される緩衝剤は,核酸を用いた実験に一般に使用されているものであればよく,特に限定されない。本願発明の「緩衝化」とは、緩衝剤の作用によりpHが一定の範囲内に保たれている状態を示す。本願発明の試料保存用溶液は,緩衝剤によりpHが6〜9程度に緩衝化されておればよい。好ましくはpH7〜9、さらに好ましくはpH8〜9がよい。
緩衝剤として、例えばクエン酸塩、リン酸塩、HEPES、トリス等を使用してもよい。また、N.E.Goodら(1966)が開発した両性イオン緩衝液(zwitter-ionic buffer)などを使用してもよい。両性イオン緩衝液として、MES、Bis-tris、ADA、Bis-tris プロパン、PIPES、ACES、コラミンクロリド、BES、MOPS、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、グリシンアミド、Bicine、TAPSなどが例示される。EPPS, HEPPSO, MOPSO, POPSO, TAPSOなども例示される。また、本発明の効果を損なわなければ、CAPSなどを使用してもよい。好ましくは、クエン酸塩、リン酸塩、HEPES、トリスがよく、特に好ましくは、トリスがよい。
これらの緩衝液は単独で使用しても構わないが、混合して使用しても構わない。これらの緩衝液の試料保存用溶液中の体積モル濃度は10mM以上500mM以下で使用すればよく、好ましくは20mM以上300mM以下、さらに好ましくは50mM以上200mMがよい。
本発明の試料保存用溶液は、1価カチオンの塩が含まれていればよい。本明細書中で使用する「一価カチオン」なる用語は、一価の正電荷を有するイオンを意味する。たとえば、Na、K、NH やアミノ基などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
例えば、1価カチオンの塩は、アルカリ金属類の塩、アンモニウム塩などを含んでいても良い。また、1価カチオンで構成される緩衝剤などの塩、例えばトリス塩酸塩を含んでいても良い。
アルカリ金属類の塩化物としては、ハロゲン化塩、酢酸塩、硫酸塩などでもよい。アルカリ金属類として特に限定されないが、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)などが利用できる。好ましくは、ナトリウム、カリウムが利用できる。例えば、ナトリウム、カリウムの塩化物として塩化カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが利用できる。
アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらの塩のうち、塩化カリウム, 塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム、よう化ナトリウムが好ましく、さらに好ましくは塩化カリウム, 塩化ナトリウムがよい。
本発明の試料保存用溶液は1価カチオンの塩を含んでいても良いが、一つまたは二つ以上の塩が混在していても構わない。これら塩の体積モル濃度としては、100mM以上であれば良く、好ましくは200mM以上、より好ましくは300mM以上、さらに好ましくは400mM以上である。上限に特に制限はなく塩が溶解できる限度で使用してもよく、好ましくは3000mM以下、より好ましくは2000mM以下、さらに好ましくは1000mM以下がよい。より望ましい範囲は、例えば、好ましくは100mM以上から3000mM以下、さらに好ましくは200mM以上から2000mM以下、特に好ましくは300mM以上から1000mM以下であればよい。
本発明の試料保存用溶液の好ましい一例としては、100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KClがあげられるが、これに限定されるものではない。
本願発明の試料保存用溶液において、緩衝剤により緩衝化されていることが好ましいが、1価カチオンの塩以外の添加物は実質的に必須ではなく、特に含まれていなくてもよい。従って、市販の核酸増幅キットにそのまま供することが出来る。しかし、本願発明の効果を損なわない程度ならば、含まれていても差し支えない。
ここで、「市販の核酸増幅キット」とは、オールラウンドで使用できる核酸増幅キットを意味し、ある特定の目的に最適化された核酸増幅キットではないことを意味する。
例えば、本願発明の試料保存用溶液に必須ではないが、二価金属イオンのキレート剤などが含まれていてもよい。二価金属イオンのキレート剤としては特に限定はされないが、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、Bicine、NTA(ニトリロ三酢酸)などがあげられる。
所望によりこれらのキレート剤を入れるときには、後の増幅工程に供したときに増幅反応に対する影響が最小限になるようにすればよい。影響を最小限にする方法として、増幅反応において二価金属イオンが増幅反応に必要であるならば、増幅反応に必要な二価金属イオン量と増幅反応系に持ち越されるキレート剤の量を導きだし、差し引きすることで、キレートされていない二価金属イオン量が増幅反応に適切な量だけ存在するように設定すればよい。例えば、一般的に増幅反応で使用されるMgClの体積モル濃度は25mM前後なので、キレートされていないMgClの体積モル濃度がそのようになるよう調整すればよい。
また、本願発明の試料保存用溶液に必須ではないが、所望により界面活性剤を入れるときには、後の増幅工程に供したときに増幅反応に対する影響が最小限になるようにすればよい。増幅反応において界面活性剤が増幅反応に必要であるならば、増幅反応系に持ち越される界面活性剤の量を導きだし、増幅反応系における界面活性剤の量と合算することで、界面活性剤量が増幅反応に適切な量だけ存在するように設定すればよい。例えば、一般的に増幅反応で使用されるTriton X-100の濃度は0.01%前後なので、Triton X-100の終濃度がそのようになるよう調整すればよい。
このように、本願発明の試料保存溶液に、緩衝液と塩以外の添加物を加える場合、市販の核酸増幅キットの改造や、最適化が必要となる場合もある。
試料保存用溶液の使用方法
本願発明の試料保存用溶液と試料を混合することで、試料を長期に保存することが出来る。例えば、試料と試料保存用溶液を試料:試料保存用溶液=1/100〜10:1などの混合比率で混合すればよいが、これに限定されるものではない。
試料と試料保存用溶液の混合後の緩衝剤の終体積モル濃度は、1mM以上であれば良く、好ましくは1mM以上500mM以下で使用すればよく、より好ましくは5mM以上300mM以下、さらに好ましくは20mM以上200mMがよい。
試料と試料保存用溶液の混合後の塩の終体積モル濃度は、99mM以上であれば良く、好ましくは100mM以上、より好ましくは150mM以上、さらに好ましくは200mM以上である。上限に特に制限はなく塩が溶解できる限度で使用してもよく、好ましくは3000mM以下、より好ましくは2000mM以下、さらに好ましくは1000mM以下がよい。なお、塩の上限と下限を設定する場合には、上記記載の組み合わせから選択すればよい。より望ましい範囲は、例えば、好ましくは99mM以上から2990mM以下、さらに好ましくは148mM以上から1980mM以下、特に好ましくは198mM以上から990mM以下であればよい。
一例をあげるならば、試料保存用溶液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)を使用する場合、試料:試料保存用溶液=1:1で混合すると、緩衝剤の終体積モル濃度は50mM、KClの終体積モル濃度は250mMとなる。
本願発明の試料保存用溶液であれば、冷蔵もしくは冷凍の必要はない。すなわち、試料の保存温度は、通常の冷蔵温度である4℃より高い温度であってもよい。さらに、室温で、4ヶ月以上保存してもよい。室温とは、一般的に25℃前後を意味するが、8℃以上であっても、10℃以上であっても、20℃以上であっても30℃以上であってもかまわない。37℃前後であれば、4ヶ月以上保存できる。また、保存溶液を輸送する場合など、一時的に37℃よりも高い温度になっても構わない。また、50℃よりも高い温度の場合、保存出来る期間が減少するが、本願発明の効果を損なわない程度であれば構わない。
保存に好ましい温度としては50℃以下、さらに好ましくは45℃以下、特に好ましくは40℃以下である。なお、本発明の保存溶液で、冷蔵もしくは冷凍で保存しても構わないし、4℃以下で保存しても一向に差し支えない。
試料保存用溶液からの増幅方法
本願発明の核酸増幅方法においては,試料と試料保存用溶液の混和液をそのまま用いて核酸増幅反応を行う。試料に含まれる細胞中には,通常DNA及びRNAの双方が含まれる。口腔内細胞または唾液試料中にはウィルスや細菌などが存在する場合もあるため,DNAとしては,2本鎖DNAの他に1本鎖DNAが含まれる場合もあり,ゲノムDNAの他にcDNAなどが含まれる場合もある。またRNAとしては,通常t−RNA,m−RNA,r−RNAなどが含まれる。
本願発明の最も重要な開示の一つは、本願発明の試料保存溶液と試料との混和液をそのまま、核酸増幅反応に供することが出来る点である。通常は、二価イオンのキレート剤や界面活性剤などの添加物が含まれているので、市販の核酸増幅反応に今日するためには、それらの添加物を除く工程が必要であり、多大な労力と手間を必要とした。しかし、本願発明の試料保存溶液はこのような添加物を必要としないので、そのまま市販の核酸増幅反応に供することが出来る。通常、二価イオンのキレート剤は核酸分解酵素のインヒビターとして、界面活性剤は防腐剤として、用いられており、当業者において、これらの添加剤を試料保存溶液に入れるのは常識とされていた。本願発明者らにとっても、これら添加物非存在下で試料が長期に保存でき、しかもそのまま増幅反応に使用できるということは、全く予想さえ出来ないことであった。本願発明者らは、「長期保存」と、「市販の増幅キットにそのまま供することが出来る」という二律背反する課題を克服し、本願発明に至った。
公知の核酸増幅反応としては,PCR法(polymerase chain reaction;米国特許4,683,195号),LCR法(ligase chain reaction;欧州特許出願320,308号),SDA法(strand displacement amplification;特公平7-114718号),LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification;),ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids;)などを挙げることができる。
本願発明において,核酸増幅反応の代表例であるPCRにより核酸増幅を行う場合について説明する。プライマーセット,DNAポリメラーゼ及び4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸および反応緩衝液を含む増幅反応液に対して,試料と試料保存用溶液を通常2〜10容量%程度添加する。
試料保存用溶液中には高体積モル濃度の緩衝剤と塩が含まれているが、増幅反応系の終体積モル濃度、すなわち増幅反応液の塩濃度において、100mM程度以下にすればよい。また、本発明の効果を損なわない程度であれば、100mM程度以上の終体積モル濃度でも構わない。
プライマー,DNAポリメラーゼ,緩衝液,熱サイクル条件などは通常のPCRの条件とすればよい。例えばプライマーは,通常10〜50bp程度,好ましくは15〜30bp程度の長さのものを使用すればよい。増幅反応液に含まれるプライマー量は0.1〜100pmol程度,好ましくは1〜40pmol程度とすればよい。DNAポリメラーゼとしては,KOD DNAポリメラーゼ,Taq DNAポリメラーゼ,Tth DNAポリメラーゼ,Pfu DNAポリメラーゼ,Vent DNAポリメラーゼなどを使用できる。
遺伝子増幅用の緩衝液としては,例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH7.5〜9程度)を使用することができ,これにMgCl2 ,KClなどの無機塩や,トリトンX−100などの界面活性剤,BSAなどのタンパク質を含んでいてもよい。
試薬キット
本発明において,試薬キットとしては,試料保存用溶液を含むキットである。試料保存用溶液は、上記に示したような組成と体積モル濃度の緩衝液と塩を含む溶液であればよい。
試料と、このキットに含まれる試料保存用溶液を1/100〜10:1比率で混合すればよい。混合後は、4℃より高い温度で保存してもよい。50℃よりも高い温度の場合、保存出来る期間が減少するが、本願発明の効果を損なわない程度であれば構わない。
保存に好ましい温度としては50℃以下、さらに好ましくは45℃以下、特に好ましくは40℃以下である。なお、本発明の保存溶液で、冷蔵もしくは冷凍で保存しても構わないし、4℃以下で保存しても一向に差し支えない。
また、本発明のキットには、塩基多型を検出するための標識オリゴヌクレオチド及び2種の核酸増幅用オリゴヌクレオチド,DNAポリメラーゼ,4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む塩基多型検出用試薬キットを含んでいてもよい。
以下,本発明を実施例を示してより詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例) Beta3 Adrenergic Receptor 遺伝子の塩基多型の検出
唾液試料を用いてBeta3 Adrenergic Receptor 遺伝子の塩基多型の検出を行った。なお,検出方法は「試料中に含まれる特定の塩基多型部位を含む核酸配列に,標識されている野生型用または変異型用オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせた後,核酸特異標識を作用させて,該オリゴヌクレオチドの標識と核酸特異標識との相互作用を検出して塩基多型を同定する方法(特開2004-121232)」を用いた。
(1)Beta3 Adrenergic Receptor遺伝子多型を検出するオリゴヌクレオチドの合成
配列番号1〜3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下,オリゴ1〜3)をDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス,(株)プロリゴジャパン)に依頼した。
オリゴ1(配列番号1)は多型部位を5’末端から13番目の位置に有し,その配列がAであり,3’末端にテキサスレッドが標識されている。
オリゴ2(配列番号2)とオリゴ3(配列番号3)はヒトBeta3 Adrenergic Receptor 遺伝子の塩基多型 (Trp64Arg)部位を含む核酸断片を増幅させるオリゴヌクレオチドで,79bp(プライマー含む)の増幅産物を得ることができる。
(2)試料の前処理
採取した唾液試料A,Bをそれぞれ滅菌水または緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)に等量混和し,37℃で保存した。
混和直後,混和してから1週後,2週後,2ヶ月後,4ヶ月後に以下(3)および(4)の操作を行った。
(3)PCR法による増幅反応
下記条件によりヒトBeta3 Adrenergic Receptor 遺伝子の塩基多型 (Trp64Arg )部位を含む核酸断片を増幅した。
試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Taq DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1 30pmol
オリゴ2 30 pmol
オリゴ3 3 pmol
×10緩衝液 2.5 μl
2mM dNTP 2.5 μl
25 mM MgCl 2.5 μl
2000倍希釈Syber Green I (Molecular probes社) 2.5μl
10M ベタイン 5.0μl
Taq DNAポリメラーゼ(東洋紡績(株)) 1.25U
唾液試料混和物 1μl

増幅条件
95℃・5分
95℃・30秒,65℃・30秒,72℃,30秒(45サイクル)
72℃・2分。
(4)「融解曲線による検出
(3)の増幅反応が終了したプレートをABI7700にセットし,ソフトSDSを使用して,下記の条件で反応及び測定を行った。
反応条件
95℃・30秒
40℃・1分
40℃から80℃へ10分で昇温し,蛍光測定
ABI7700からエクスポートした融解曲線のRaw dataをMicrosoft社製Excelを用いて,移動平均し,負の1次微分をすることによって得られた微分融解曲線を図1〜図11に示す。
また,水または緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して4ヶ月後の唾液試料を用いてPCRを行った増幅反応液5μlを2%アガロース及び0.05μl/ml臭化エチジウムを含むゲルで電気泳動し,紫外線照射によりDNAバンドを検出した泳動写真を図12に示す。
図1〜11の微分融解曲線を用いることにより,ヒトBeta3 Adrenergic Receptor 遺伝子の塩基多型 (Trp64Arg)を判別することができる。
野生型ホモ:70℃付近にのみピークが現れる
変異型ホモ:63℃付近にのみピークが現れる
ヘテロ:63℃付近と70℃付近にピークが現れる
唾液試料を滅菌水や緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和した直後のものでは多型解析の精度に大差は見られない(図1および図2)。
しかし,混和してから1週後,唾液試料を滅菌水と混和したものより,唾液試料を緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和したものの方が明確に塩基多型を判別することができている(図3および図4)。
以後,混和してから2週後(図5および図6),混和してから2ヶ月後(図7および図8),混和してから4ヶ月後(図9および図10)においても,滅菌水と混和したものについては塩基多型を判別することはできないが,緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和したものについては明確な塩基多型の判別が可能となっている。
図11は,ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法を用いて核酸を抽出した試料を用いてPCR,検出を行った結果を示している。「野生型ホモ」「変異型ホモ」「ヘテロ」の塩基多型の判別をする際の基準として用いる。
4ヶ月後の唾液試料を用いてPCRを行った結果を示す 図12の泳動写真においても,滅菌水と混和したもの(レーン3および4)については79bpの増幅バンドを確認することはできないが,バンドを緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和したもの(レーン1および2)については良好な増幅バンドを確認できる。
本発明によれば,試料について非常に簡単な前処理を行うだけで,長期間保存された試料からでも効率的にその中に含まれる核酸を増幅させることができ、さらには、4℃以上の温度でも保存可能であることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。
滅菌水と混和した直後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和した直後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 滅菌水と混和して1週後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して1週後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 滅菌水と混和して2週後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して2週後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 滅菌水と混和して2ヶ月後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して2ヶ月後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 滅菌水と混和して4ヶ月後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの 緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して4ヶ月後の唾液試料を用いてPCR,検出を行ったもの ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法を用いて核酸を抽出した試料を用いてPCR,検出を行ったもの 水または緩衝液(100mM Tris-HCl(pH8.3),500mM KCl)と混和して4ヶ月後の唾液試料を用いてPCRを行った増幅産物の泳動写真

Claims (14)

  1. 生体からの採取した試料中の核酸を増幅する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法。
  2. さらに、第1工程と第2工程の間に、試料を保存する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の試料核酸増幅方法。
  3. 1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の試料核酸増幅方法。
  4. 試料保存用溶液が緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試料核酸増幅方法。
  5. 試料が唾液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の試料核酸増幅方法。
  6. 生体からの採取した試料の核酸を保存する方法であって、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加し、4℃より高い温度で保存することを特徴とする試料核酸保存方法。
  7. 1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする請求項6に記載の試料核酸保存方法。
  8. 試料保存用溶液が緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする請求項6または7に記載の試料核酸保存方法。
  9. 試料が唾液であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の試料核酸保存方法。
  10. 1価カチオンの塩を試料保存の有効成分として含有していることを特徴とする試料保存用溶液。
  11. 1価カチオンの塩が,塩化カリウム,塩化ナトリウム,トリス塩酸塩,塩化アンモニウム及びよう化ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の塩であることを特徴とする請求項10に記載の試料保存用溶液。
  12. 緩衝剤により緩衝化されていることを特徴とする請求項10または11に記載の試料保存用溶液。
  13. 請求項10〜12のいずれかに記載の試料保存用溶液を含むキット。
  14. さらに、塩基多型を検出するための標識オリゴヌクレオチド及び2種の核酸増幅用オリゴヌクレオチド,DNAポリメラーゼ,4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含むことを特徴とする請求項13に記載のキット。
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WO2018138913A1 (ja) * 2017-01-30 2018-08-02 株式会社テクノスルガ・ラボ 保存溶液およびその保存溶液を用いた検体の保存方法、特に、検体のdnaおよび有機酸やポリアミン類などの化学物質の保存溶液およびその保存溶液を用いた保存方法

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