今日、世の中はマルチメディア時代に入り、記録媒体に対して記録を行う記録装置や記録媒体に対して記録及び再生を行う記録再生装置の必要性は重要度を増しており、その記録密度も年々上昇している。光情報記録媒体においても、CD(コンパクトディスク)から、DVD(Digital versatile disc)、そしてBlueRay(ブルー・レイ)ディスクといった進歩が見られる。光情報記録媒体における進歩に対応して、ディスクを用いた光情報記録装置及び光情報記録再生装置においても使用する光の波長の短波長化により記録密度を上昇させてきている。近年では、ホログラフィックメモリという新しい記録方式が提案されている。ホログラフィックメモリは、記録すべき情報に応じたホログラムを記録媒体中に形成することにより、情報の記録を行うものである。ホログラムを使用することの特徴から、多重記録が可能であって、隣接するホログラムが相互に重なり合う部分を有していてもこれらのホログラムから独立して情報を再生できる。したがって、ホログラフィックメモリでは、従来の光情報記録媒体では得られないような高記録密度を達成することができる。
ホログラフィックメモリについては、例えば非特許文献1において解説がなされている。図16は、ホログラフィックメモリによる従来の記録再生装置であって、コリニア方式と呼ばれる同軸タイプのホログラフィックメモリシステム(光情報記録再生装置)の光学系を説明している。
この光情報記録再生装置は、例えばディスク状であるホログラム記録媒体216に対して情報の記録及び再生を行うものである。具体的には、情報によって変調された信号光と情報によっては変調されていない参照光とを同時に記録媒体216に照射して干渉させることによって、記録媒体216内に体積ホログラムを形成し、情報を記録する。また、弱い参照光を記録媒体216に照射することによって、体積ホログラムの再生像を取得し、情報を再生する。なお、体積ホログラムとは、記録媒体の体積ホログラムとは、記録媒体の厚み方向も積極的に利用し、3次元的に干渉縞を書き込む方式であり、厚みを増やす事で、回折効率を高め、多重記録を用いて記録容量を増大する方式である。デジタル体積ホログラムとは、体積ホログラムと同様の記録方式を用いつつも、記録する画像情報は2値化したデジタルパターンに限定したホログラム記録方式である。
図示された光学系は、情報の記録及び再生に用いるレーザ光を発生する第1の光源201と、信号光を変調するための空間光変調素子(spacial light modulator;以下、SLMと略記する)204と、再生光を検出するための2次元の受光素子219を備えている。
まず、上記光学系を用いて、ディスク状の記録媒体216に対して記録を行う場合について説明する。
緑色レーザ等からなる第1の光源201から出射された光束は、コリメータ202によって平行光束とされ、ミラー203を経由し、SLM204を照明する。図16に示したものでは、SLM204として、DMD(Deformable Mirror Device)が使用されている。このようなSLM204は、2次元に配置された多数の光変調素子(画素)を有し、各画素ごとに「0」、「1」を表わすことができるようになっている。SLM204において、「1」の情報を表わす画素で反射された光は、記録媒体216の方向へ反射され、「0」の情報を表わす画素で反射された光は記録媒体216の方向へ反射されない。コリニア方式のホログラフィックメモリシステムで用いられるSLM204では、その中央部分が、情報光206を変調する部分とされており、それを環状に取り巻く部分は、参照光205を変調する部分となっている。
SLM204において「1」の情報を表わす画素で反射された情報光206及び参照光205は、いずれも、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと略記する)207をP偏光で透過する。そして、第1のリレーレンズ208、ミラー209、第2のリレーレンズ210、ダイクロイックビームスプリッタ(以下、DBSと略記する)211を経由して記録媒体216に向けられる。DBS211の通過後、1/4波長板(以下、QWPと略記する)212を透過して円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された参照光205と情報光206は、ミラー213で反射されて、焦点距離Fの対物レンズ214に入射する。SLM204上に表示されたパターンは、第1及び第2のリレーレンズ208、210により、対物レンズ214からFだけ手前に中間像を形成する。これにより、SLM204上のパターン像(図示せず)、対物レンズ214、記録媒体216がいずれもFの距離だけ離れて配置される、4F光学系が構成される。
ディスク状の記録媒体216は、スピンドルモータ215上に回転可能に保持されている。対物レンズ214によって、参照光205と情報光206は記録媒体216に集光され、干渉して干渉縞を形成する。記録媒体216中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、その結果、デジタル体積ホログラムが形成される。SLM204により、記録すべき情報に応じて情報光206を変調すれば、記録媒体216に、その情報に応じたデジタル体積ホログラムが形成される。特に、SLM204の情報光領域において、記録すべき情報に応じて画素ごとに変調を行えば、記録媒体216に、そのような画素数に応じた情報量を有するデジタル体積ホログラムが形成されることとなる。なお、記録媒体216中には、反射膜が設けられている。
光情報記録再生装置には、ホログラム化された光情報の記録再生を行う第1の光源201以外に、記録媒体216に対する感光性のない赤色レーザ等からなる第2の光源220が設けられている。この第2の光源220を用いて、記録媒体216の反射膜を基準面として、記録媒体216の変位を高精度に検出することが可能である。これより、記録媒体216に面ブレや偏心が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターンを記録することができる。以下、このようなトラッキングについて、簡単に説明する。
赤色レーザ等からなる第2の光源220から出射された直線偏光光束は、ビームスプリッタ(以下、BSと略記する)221を透過し、レンズ222で平行光束とされ、ミラー223とDBS211で反射されて、記録媒体216に向けられる。QWP212を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー213で反射されて対物レンズ214に入射して、記録媒体216の反射膜に微小な光スポットとして集光される。反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされ、ミラー213で反射されてQWP212を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束に変換される。DBS211で反射された光束は、往路と同様にミラー223、レンズ222を経由し、BS221で反射されて、光検出器224に導かれる。光検出器224は、複数の受光面を有していて、反射面の位置情報を検知する、この検知結果に基づいて対物レンズ214のフォーカスとトラッキングを行うことができる。このようなフォーカス及びトラッキングは、CDやDVDなどを用いる従来からよく知られた光情報記録再生装置において行われるものと同様のものである。
次に、上記光学系を用いて、記録媒体216に記録されている情報の再生を行う場合について説明する。第1の光源201から出射された光束は、記録時と同様にSLM204を照明する。再生時は、SLM204の参照光205を変調する部分のみが「1」の情報を表示し、情報光206を変調する部分はすべて「0」の情報を表示する。したがって、参照光205の部分の画素で反射された光だけが、記録媒体216の方向へ反射され、情報光206は記録媒体216の方向へ反射されない。
記録時と同様に参照光205は、円偏光(例えば、右回りの円偏光)となって記録媒体216に集光され、記録されている干渉縞(デジタル体積ホログラム)から情報光を再生する。記録媒体216中の反射膜で反射された情報光は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされ、ミラー213で反射されてQWP212を透過して、往路での偏光とは垂直な直線偏光光束(S偏光)に変換される。この時、対物レンズ214からFの距離に再生されたSLM204の表示パターンの中間像が形成される。
DBS211を透過した光束は、第2のリレーレンズ210、ミラー209、第1のリレーレンズ208を経由してPBS207に向けられる。PBS207で反射された光束は、SLM204と共役の位置に、SLM204の表示パターンの中間像として再結像される。この位置には開口217が予め置かれていて、情報光の周辺部にある不要な参照光が遮蔽される。そして、レンズ218により、再結像された中間像は、CMOSセンサ等の受光素子219上に、情報光の部分のみのSLM204の表示パターンを形成する。これにより、不要な参照光205が受光素子219に入射しないので、S/N(信号対ノイズ比)の良い再生信号が得られる。
結局、この光情報記録再生装置では、記録すべき情報を2次元デジタルパターン情報に展開し、この2次元デジタルパターン情報によって情報光が変調される。この処理により、記録情報が2次元空間の光強度分布画像情報となった情報光が生成される。そして情報光と参照光とを干渉させることによって、その干渉縞が記録媒体に記録される。再生時には、参照光を照射する事で再生される光強度分布画像情報から2次元デジタルパターン情報を抽出し、デコードする。このデジタル処理により、S/N比の劣化による再生誤り率の低下を抑えることが可能となり、また、2値化データをコード化してエラー訂正を行うことで、極めて忠実に、記録情報を再現することが可能となる。
上述したコリニア方式のホログラフィックメモリシステムでは、情報光と参照光とが角度を持たない同軸上の光学配置を有するので、1つの対物レンズを用いて記録再生を行うことができる。そのため、情報光と参照光とを別々の光路から記録媒体に照射させる2軸2光束干渉方式と比較して、光学系が簡単になるという利点を有する。また、反射膜を有する記録媒体の構造により、ディスク状の記録媒体の片面側に光学系を配置することができる利点を有する。
堀米 秀嘉ほか、「離陸間近のホログラフィック媒体 2006年に200Gバイトを実現」、日経エレクトロニクス第891号、第105〜114頁、2005年1月17日
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の光情報記録再生装置を説明するにあたり、まず、この光情報記録再生装置において用いられる空間光変調素子を説明する。本実施形態では、反射型の光干渉変調素子を用いて空間光変調素子を構成している。図1は、本実施形態における空間光変調素子を説明するための等価回路図である。
この空間光変調素子は、2次元に配列された複数の単位変調素子(画素)を備え、画素ごとに光の「0」、「1」を変調できるようにしたものである。複数の垂直信号線と、複数の駆動線(走査線)がマトリクス配線を構成しており、垂直信号線と駆動線との交差位置がそれぞれ画素に対応する。画素ごとに、スイッチングトランジスタからなる画素スイッチ、干渉構造部、保持容量を備えている。画素スイッチのゲートは対応する駆動線に接続し、ドレインは対応する垂直信号線に接続する。保持容量は画素スイッチのソースと定電位点(例えば接地電位点)との間に設けられている。さらに、干渉構造部も画素スイッチのソースに接続している。図1では、2本の垂直信号線301、302と2本の駆動線315,316が示されており、4画素分の領域が示されている。これら4画素の画素スイッチが符号303〜306で、干渉構造部が符号307〜310で、保持容量が符号311〜314で示されている。各干渉構造部は、各画素に共通な共通対向電極322も備えている。
垂直信号線301、302の一端は、それぞれサンプリングスイッチ320、321を介して水平信号線319に共通に接続している。サンプリングスイッチ320、321のゲートは、水平シフトレジスタ317に接続する。また、駆動線315、316の一端は、垂直シフトレジスタ318に接続している。
図1では2行2列で画素が配置しているが、本実施形態での空間光変調素子は、例えば1000行1000列のような多画素のマトリクスとすることもでき、その場合も同様の構成を有する。
以下、本実施形態における反射型の光干渉変調素子を用いた空間光変調素子の回路動作について説明する。
まず垂直シフトレジスタ318から駆動線315にオン信号が入力され、画素スイッチ303、304をオン状態にする。この状態で、水平シフトレジスタ317が順次動作し、水平信号線319から垂直信号線301、302に信号を伝達する。すなわち、まずサンプリングスイッチ320をオンにして、垂直信号線301に水平信号線319の信号を書き込む。すると、干渉構造部307において、画素スイッチ303を通して保持容量311に電荷が蓄積され、共通対向電極322との間に電界を生じさせる。この電界により干渉構造部307を変化させ、入射光に対する反射率を所望の値に変調させる。次いで、サンプリングスイッチ320をオフにした後にサンプリングスイッチ321をオンにして、今度は水平信号線319の信号を垂直信号線302に書き込み、画素スイッチ304を通して保持容量312に書き込む。このシーケンスでX方向(図示水平方向)に順次信号を画素に書き込んでいく。1行全て書き込んだ後に、駆動線315をオフ状態にし、今度は駆動線316にオン信号が入力され、画素スイッチ305、306をオン状態にする。その後は前述同様に水平方向に順次書き込んでいく。Y方向(図示垂直方向)に配列した行のすべてに信号を書きこんだ後に、再びこの動作を第一行から繰り返し各画素の信号を書き換えていく。
図2に、本実施形態における反射型光干渉変調素子を用いた空間光変調素子の画素部(干渉構造部)の断面図である。
本実施形態における反射型光干渉変調素子は、画素(干渉構造部)ごとに、光を反射する反射電極330と、反射電極330の前方に配置され、光に対して半透過性を有する半透過膜331とを備えるものである。半透過膜331は、複数の画素にまたがって設けられており、上述した共通対向電極322として機能する。半透過膜331では、入射光のうち透過しなかった部分は反射されるようになっている。この構成において、反射電極330と半透過膜331との空間距離(エアギャップ)を変化させることにより、反射電極330で反射された反射光と半透過膜331で反射された反射光との干渉作用によって、全体としての反射光の強度を制御することができる。半透過膜331には、厚さが5nmから15nm程度の薄膜金属材料、例えばTiを用いることができるが、特にTi限定されるものではない。反射電極330と半透過膜331との間の距離を保持するために、これらの間には、支柱状の絶縁膜332が設けられている。絶縁膜332は、隣接する画素の反射電極330間の間隙の位置のみに設けられるようにすることが好ましい。絶縁膜332としては、例えばシリコン窒化膜が用いられる。半透過膜331の表面のうち、反射電極330に対向しない方の面の全面には、例えばシリコン酸化膜からなる保護膜333が設けられている。
反射電極330には、光の反射率の高い材料を用いることが好ましく、Al,AlSi,AlCu,Ti,Ta,W、Ag、Pt、Ru,Ni,Au,TiN等の金属膜、あるいはこれら金属の化合物膜、あるいは積層膜を用いることができる。ただし、反射電極33の材料はこれらのものに限定されるものではない。絶縁膜332と保護膜333は、異なる材料で構成しても同じ材料でも構成してもよく、絶縁材料であれば電気的に問題なく、材質が特に限定されるものではない。反射電極330は、画素ごとに設けられて、図1に示す等価回路において、それぞれ画素スイッチのソースに接続するものである。
次に、図2を用いて干渉構造部の動作について説明する。
まず半透過膜331の共通電極には、例えば0Vの接地電位を与える。図1を用いて説明したアクティブマトリクス動作により、反射電極330に信号に応じた電圧が与えられ、反射電極330と半透過膜331に電位差が生じる。そしてその電位差によって発生するクーロン力により、画素ごとに反射電極330と半透過膜331との間のエアギャップが変化する。
図3は、半透過膜331の厚さが10nmであって、エアギャップが180nmのときとエアギャップが30nmのときのそれぞれについて、半透過膜331側から入射する光の反射率の値を縦軸に、光の波長を横軸に示したグラフである。図3より、反射電極330に与えた信号の電圧に応じてエアギャップが30nmから180nmへと変化すると、それに伴い反射率が大きく変化することが分かる。これは、反射電極330で反射した光と半透過膜331で反射した光との干渉作用によるものであるが、この干渉作用は、光の波長や半透過膜の材料、エアギャップによりそれぞれ設計可能である。したがって、乾燥構造部における物理的な強度や、反射光において必要とされるコントラスト比等の特性を鑑みて、干渉構造部として必要な構成をとることが重要である。
このような空間光変調素子は、半導体装置製造技術を用いて、シリコン半導体基板の表面に形成されるものである。すなわち、半導体基板に上述した各配線や画素スイッチや保持容量を形成した後、それらの配線、画素スイッチ、保持容量を覆うように、反射電極330が設けられる。図2に示したものでは、反射電極330は、シリコン基板の表面に層間絶縁膜を介して設けられている。反射電極330の下方に下地配線層334が設けられて、層間絶縁膜を貫通するプラグ336を介して反射電極330と電気的に接続する。さらに層間絶縁膜には、反射型光干渉変調素子を用いた空間光変調素子に入射された光が干渉構造部の下部に配置された画素スイッチであるトランジスタの領域に届かないようにするための遮光膜335が設けられている。
図4(a),(b)は、それぞれこのような反射型光干渉変調素子の平面図と斜視図である。ここでは2画素分の領域が示されており、図示左側の画素は、黒表示状態の反射型光干渉変調素子40であり、図示右側の画素は、白表示状態の反射型光干渉変調素子41である。ここでは、これらの画素をまたぐように全面に半透過膜42が設けられていることが示されている。図4に示したものは、デジタル表示で信号を書き込んだ例で、反射型光干渉変調素子41は、中心部のエアギャップが狭くなり反射率が増大して白くなっている。このような「0」、「1」のパターンを形成することで、記録情報とすることができる。隣接する画素(反射型光干渉変調素子)40,41の間の領域は、構造にもよるが、黒にすることも白にすることも可能である。しかしながら、ホログラフィックメモリシステムへの応用という観点からすれば、隣接する画素間の領域を黒にした方が擾乱はないといえる。素子間の領域を黒にすることは、反射電極330の下部に光吸収層を積層させることで実現できる。
なお、反射電極331に与えられる信号電圧をアナログ的に連続に変調させると、反射電極330と半透過膜331との間のエアギャップも連続的に変化し、そのエアギャップに応じて反射率も連続的に変化するため、アナログの記録情報とすることもできる。
図5は、上述したような反射型光干渉変調素子を用いた空間光変調素子を有する半導体チップの平面図である。ここでは、コリニア方式のホログラフィックメモリシステムに対して空間光変調素子を用いることとしているので、参照光のための反射領域(参照光領域45)も設けられている。参照光領域45は、常に白状態で光を反射すればよいので、この領域には半透過膜42は設けられていない。これに対し、情報光領域46では、半透過膜42が配置され、反射型光干渉変調素子が設けられている。本実施形態では、参照光領域45は情報光領域46の周辺に配置されている。これにより、光学系の構成自体が簡素化されとともに、単一の空間光変調素子を用いて情報光と参照光の両方を形成することができる。
次に、先に説明した反射型光干渉変調素子を用いた空間光変調素子の作製方法について簡単に述べる。
n型単結晶シリコン半導体基板を部分熱酸化し、LOCOS(Local Oxdation of silicon)酸化膜を形成する。ついでLOCOS酸化膜をマスクとして、ボロン(B)をドーズ量1011 cm-2程度でイオン注入し、p型不純物領域であるp型ウエルを形成する。この基板を再度熱酸化し、厚さ60nmのゲート酸化膜を形成する。
次に、リン(P)を1020 cm-3程度ドープしたn形型ポリシリコンからなるゲート電極を形成した後、基板全面にリンをドーズ量1013 cm-2程度でイオン注入し、不純物濃度1018 cm-3程度のn形不純物領域であるn型低濃度ドレインを形成する。引き続き、パターニングされたフォトレジストをマスクとして、リンをドーズ量1015 cm-2程度でイオン注入し、不純物濃度1020 cm-3程度のソース・ドレイン領域を形成し、nMOSトランジスタを形成する。同様にpMOSトランジスタを形成する。その後、基板全面に層間絶縁膜(不図示)を形成する。層間絶縁膜には、PSG(Phospho-silicate Glass)膜やNSG(Nondope Silicate Glass)/BPSG(Boro-Phospho-Silicate Glass)膜、あるいは、TEOS(テトラエトキシシラン)によるCVD(化学気相成長)膜等を用いることが可能であり、特に限定されるものではない。
次に、ソース・ドレイン領域の直上にコンタクトホールをパターニングし、スパッタリング等によりアルミニウム(Al)層を蒸着した後パターニングし、下地配線層334を形成する。この下地配線層334と、ソース・ドレイン領域とのオーミックコンタクト特性を向上させるために、Ti/TiN等のバリアメタルを下地配線層334とソース・ドレイン領域との間に形成することが望ましい。その後、層間絶縁膜を形成し、さらに金属膜によって遮光膜335を形成する。遮光膜335には、例えばTi、TiN、Al、Ag等の金属膜もしくはそれらの積層膜を用いることができ、特に限定されるものではない。遮光膜335をパターニングした後、さらに層間絶縁膜を形成し、下地配線層334上の所定の位置にコンタクトホールを開ける。次いで、コンタクトホールにタングステンを堆積した後にCMP(化学機械研磨)法により平坦化してプラグ336を形成する。
その後、金属層をスパッタ法によりおよそ厚さ300nm堆積し、パターニングして反射電極330を形成する。ついでシリコン窒化膜をプラズマCVD法により厚さ300nm形成し、パターニング後のエッチングにより、支柱状の絶縁膜332を形成する。その後、レジストを塗布し平坦化した後におよそ高さ180nmの支柱状の絶縁層332が均一に残るように平坦化する。次に、低温のスパッタ法により、Ti層を厚さ10nm堆積して、さらにシリコン酸化膜を厚さ300nm堆積する。パターニングした後にドライもしくはウエットエッチングでシリコン窒化膜とTi層をエッチングし、その後レジストをウエットエッチングにより除去して半透過膜331と保護膜333を形成する。その後、ワイアボンディングで電極を取り出す。
このような製造工程を経ることにより、反射型光干渉変調素子を有する空間光変調素子を作製できた。
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態における反射型光干渉変調素子の平面図である。第1の実施形態では、半透過膜が画素間をまたがって全面に一様に設けられていた。これに対し本実施形態では、隣接する反射型光干渉変調素子(画素)40,41の間の位置で半透過膜47におけるつなぎ目を細くして、半透過膜47が低電圧で駆動できるようにして反射型光干渉変調素子を形成した。図7は、反射型光干渉変調素子における信号電圧を横軸とし、反射率を縦軸として、電圧−反射率特性を示したグラフである。図7においては、第1の実施形態で示した全面一様に形成された半透過膜42を有する素子の特性をAで示し、本実施形態における画素間のつなぎ目を細く形成した半透過膜47を有する素子の特性をBとして示した。図7より、本実施形態の反射型光干渉変調素子は、全面一様の形状のものと比べて低電圧駆動が実現できているとともに、素子の反射率も増加していることが分かる。これは、1つの反射型光変調素子の中でエアギャップの狭くなる領域が大きくなるためで、白状態の開口率が大きい素子といえる。ホログラフィック記録においては、情報光の白と黒とのコントラストが高いほどホログラフ干渉縞のコントラストも高くなるので、本実施形態の反射型光干渉変調素子を用いることにより、再生時にエラーの少ない読み出しが可能となる。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態における反射型光干渉変調素子の平面図である。ここでは、第2の実施形態と同様に、隣接する反射型光干渉変調素子(画素)40,41の間の位置で半透過膜におけるつなぎ目を細くして半透過膜を低電圧で駆動できるようにしているが、つなぎ目の形状において第2の実施形態と異なっている。すなわち、半透過膜42を保持する際の信頼性を向上するために、隣接する画素間の領域では平行な3本の継ぎ目に分離するように、半透過膜42を構成している。このように継ぎ目を複数箇所に設けることで、半透過膜42における安定な平面構造が実現する。
以上、本発明の好ましい反射型光干渉変調素子について説明したが、この光干渉変調素子は、光の干渉を利用して光の強度変調を行っている。そのため、半透過膜や反射電極における表面の平坦度は重要な要素であり、表面の平坦度が悪く、光の反射方向が微妙に変化すると、それに応じてホログラムによる干渉縞が所望のものから変化してしまう。本発明の光情報記録装置あるいは光情報記録再生装置では、空間光変調素子として、第1から第3の実施形態で示した素子構造を有するものを任意に選択することができるが、これらのものに限定されるものではない。例えば、第1から第3の実施形態の反射型光干渉変調素子を組み合わせて構成された空間光変調素子を用いることも可能である。
(第4の実施形態)
次に、上述した本発明に基づく空間光変調素子を用いた、本発明に基づく光情報記録再生装置について説明する。本実施形態の光情報記録再生装置は、コリニア方式ホログラフィックメモリシステムとして構成されたものであり、空間光変調素子と、再生光を検出するためのCMOSイメージセンサなどの受光素子とを同一の半導体チップ上に形成したものである。図9〜図11は、本実施形態の光情報記録再生装置の光学系を説明する図である。図9は、記録時における光源から空間光変調素子までの光学系を示し、図10は、記録時における空間光変調素子からホログラムディスク(記録媒体)までの光学系を示し、図11は、再生時の光学系を示している。
本実施形態の光情報記録再生装置は、例えばディスク状であるホログラム記録媒体186に対して、体積ホログラムの書き込みによって情報の記録を行い、体積ホログラムの再生像を取得することによって情報の再生を行うものである。図示された光学系は、情報の記録及び再生に用いるレーザ光を発生する第1の光源101と、信号光を変調するための空間光変調素子(SLM)と再生光を検出するための2次元の受光素子とを一体的に設けた変調/受光素子(SLM/CMOS)108とを備えている。変調/受光素子108におけるSLM部分としては、上述の第1乃至第3の実施形態に記載された、反射型光干渉変調素子を有する空間光変調素子が好ましく使用される。そして、隣接する反射型光干渉変調素子(画素)の領域に、各画素に対応した受光セル(例えばフォトダイオード)が配置されており、これにより、SLMによる光変調と受光素子による受光とを同軸で行うことができるようになっている。後述するように、再生時には情報光の領域でのみ光学的な像パターンを検出すればよいので、受光素子は、SLMにおける情報光領域にのみ配置すればよい。あるいは、後述するように、シリコン半導体基板上に、反射型光干渉変調素子からなる空間光変調素子と受光素子とを縦方向に一体化して設けたもの(言い換えれば両者を積層したもの)であってもよい。
まず、図9及び10を用いて、記録媒体118に記録を行う場合について説明する。図9において、緑色レーザ等からなる第1の光源101から出射された光束は、コリメータ102で平行光束とされ、マスク素子103に入射する。マスク素子103は、光束の中心部の情報光に相当する部分をマスクする働きを有する。光束の中心部を遮蔽するマスクを光路に挿入してもよい。情報の記録時には、このマスク素子103は機能せず、すべての光束を透過させている。マスク素子103を透過した光は、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと略記する)104に入射する。
P偏光でPBS104を透過した光束は、1/4波長板(以下、QWPと略記する)105を透過して円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換され、第1のリレーレンズ106及び第2のリレーレンズ107を経由し、変調/受光素子108に照射される。変調/受光素子108内のSLMで「1(白)」の情報を表わす画素によって反射された光は、高い反射率で記録媒体118の方向へ反射され、SLMの「0(黒)」の情報を表わす画素で反射された光は、干渉により記録媒体118の方向へはわずかしか反射されない。従来例と同様に、そして、図5にも示したように、コリニア方式のSLMには、情報光110を変調する部分とそれを環状に取り巻く参照光109を変調する部分が設けられている。
以下、図10によって説明すると、変調/受光素子108のSLMによって反射された光束は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)とされる。第2のリレーレンズ107及び第1のリレーレンズ106を経由した光束は、QWP105を透過してS偏光に変換され、PBS104で反射されて記録媒体118の方向に向けられる。
変調/受光素子108のSLMにおいて、「1」の情報を表わす画素にて反射された情報光110及び参照光109は、PBS104で反射され、第3のリレーレンズ111、ミラー112、第4のリレーレンズ113、ダイクロイックビームスプリッタ(以下、DBSと略記する)114を経由して記録媒体118に向けられ、ミラー115で反射されて焦点距離Fの対物レンズ116に入射する。変調/受光素子108のSLMに表示されたパターンは、第3及び第4のリレーレンズ111、112により、対物レンズ116からFだけ手前に中間像を形成する。これにより、変調/検出素子108のSLM上のパターン像(不図示)、対物レンズ116、記録媒体118とがいずれもFの距離だけ離れて配置されている、4F光学系が構成されたことになる。
ディスク状の記録媒体118は、スピンドルモータ117上に回転可能に保持されている。対物レンズ116によって、参照光109と情報光110は記録媒体118に集光され、干渉して干渉縞を形成する。記録媒体118中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、デジタル体積ホログラムが形成される。特に、記録すべき情報に応じて情報光110を変調すれば、記録媒体118に、その情報に応じたデジタル体積ホログラムが形成されることになる。なお、記録媒体118中には反射膜が設けられている。
従来のものと同様に、本実施形態の光情報記録再生装置には、ホログラム化された光情報の記録再生を行う第1の光源101以外に、記録媒体118に対する感光性のない赤色レーザ等からなる第2の光源119が設けられている。この第2の光源119を用いて、記録媒体118の反射膜を基準面として、記録媒体118の変位を高精度に検出することが可能である。これより、記録媒体118に面ブレや偏心が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターン(デジタル体積ホログラム)を記録することができる。以下に簡単に説明する。
第2の光源119から出射された光束は、ビームスプリッタ(以下、BSと略記する)120を透過し、レンズ121で平行光束とされ、ミラー122とDBS114で反射されて、記録媒体118に向けられる。その後、ミラー115で反射されて対物レンズ116に入射して記録媒体118の反射膜に微小な光スポットとして集光される。反射された光束は、対物レンズ116に再入射して平行光束とされ、ミラー115、DBS114で順次反射され、往路と同様にミラー122、レンズ121を経由し、ビームスプリッタBS120で一部の光束を反射されて、光検出器123に導かれる。光検出器123は、複数の受光面を有していて、公知の方法で反射面の位置情報を検知し、それに基づいて対物レンズ116のフォーカスとトラッキングを行うことができる。
次に、図11を用いて、記録媒体118にデジタル体積ホログラムとして記録されている情報を再生する場合の動作を説明する。第1の光源101から出射された光束は、記録時と同様に、変調/受光素子108に照射される。この際、第1の光源101からの光の強さは、記録媒体118に記録されている情報を破壊しないように、記録時に用いられた強度よりも小さいものとされる。再生時において、マスク素子103は、光束の中心部の情報光に相当する部分をマスクする。
第1のリレーレンズ106及び第2のリレーレンズ107は、マスク素子103の像を変調/受光素子108のSLMに結像させる役目を有する。これにより、参照光の部分の素子のみが照明され、情報光の部分はマスク素子103の像によりきちんと遮光がなされることになる。変調/受光素子108のSLMにおいては、参照光109を変調する部分のみが「1(白)」の情報を表示し、情報光110を変調する部分は、すべて「0(黒)」の情報を表示する。したがって、参照光109を変調する部分の画素で反射された光だけが、記録媒体118の方向へ反射される。情報光110を反射する部分の画素の光束は、記録媒体118の方向へ反射されないばかりかもともと照明すらされないので、従来例と比較して、一段とS/Nの良い情報光の再生が可能となる。
記録時と同様に参照光109は、PBS104で反射され、記録媒体118に集光され、記録された干渉縞から情報光を再生する。記録媒体118中の反射膜で反射された情報光(すなわち再生光)は、対物レンズ116に再入射して平行光束とされ、ミラー115で反射される。この時、対物レンズ116からFの距離に再生されたSLMの表示パターンの中間像が形成される。
DBS114を透過した光束は、第4のリレーレンズ113、ミラー112、第3のリレーレンズ111を経由してPBS104に向けられ、第4のリレーレンズ113と第3のリレーレンズ111とにより、マスク素子103と共役の位置にSLMの表示パターンの中間像として再結像される(図示せず)。そして、この再結像された中間像は、PBS104で反射され、第1のリレーレンズ106及び第2のリレーレンズ107により、変調/受光素子108上に結像される。上述したように、変調/受光素子108の受光素子部分は、情報光が照明される部分の画素間のみに配置されている。なお、本実施形態では、受光素子として、画素ごとに、フォトダイオードとフォトダイオードで検出した受光信号を増幅するMOSトランジスタとを有する、CMOSセンサを用いている。
上述したようにマスク素子103を用いることにより、この光情報記録再生装置では、受光素子が形成されている情報光部分の画素間の領域には不要な参照光は入射しないので、S/Nの良い再生信号を得ることができる。
次に、本実施形態の光情報記録再生装置における、記録・再生の回路動作を説明する。図12は、本実施形態において用いられた、反射型干渉変調素子を用いたSLMとCMOSセンサからなる受光素子とを一体型とした変調/受光素子を説明するための等価回路図である。図12において、符号1〜10までは、空間光変調素子に係る構成要素に付与され、符号21〜33は、CMOSイメージセンサとして構成されている受光素子に係る構成要素の付与されている。
列方向(図示垂直方向)に延びる複数の垂直信号線1,1a,…と、行方向(図示水平方向)に延びる複数の駆動線(走査線)2,2a,…とが設けられてこれらはマトリクス配線を構成しており、垂直信号線と駆動線との交点がそれぞれ画素に対応する。したがって、画素はマトリクス状に配置されていることになり、画素配列の列ごとに垂直信号線が設けられ、行ごとに駆動線が設けられていることになる。垂直信号線1,1a,…は空間光変調素子のためのものであり、これと同様に、列ごとに、受光素子のための垂直信号線26,26a,…が設けられている。さらに、行ごとに、受光素子のための水平読出し線27,27a,…、水平リセット線28,28a,…、水平選択線29,29a,…が設けられている。
各画素には、空間光変調素子のために、スイッチングトランジスタからなる画素スイッチ3,3a,…と、干渉構造部4,4a,…と、保持容量5,5a,…が設けられている。また、各画素には、受光素子のために、フォトダイオード21,21a,…と、トランジスタからなる転送スイッチ22,22a,…と、トランジスタからなるリセットスイッチ23,23a,…と、増幅トランジスタ24,24a,…と、トランジスタからなる選択スイッチ25,25a,…とが設けられている。
各画素の空間光変調素子の部分では、画素スイッチ3,3a,…のゲートは対応する駆動線2,2a,…に接続し、ドレインは対応する垂直信号線1,1a,…に接続する。保持容量5,5a,…は、画素スイッチのソースと定電位点(例えば接地電位点)との間に設けられている。さらに、干渉構造部4,4a,…も画素スイッチのソースに接続している。各干渉構造部は、各画素に共通な共通対向電極6も備えている。垂直信号線1,1a,…の一端は、それぞれサンプリングスイッチ9,9a,…を介して空間光変調素子のための水平信号線10に接続し、サンプリングスイッチ9,9a,…のゲートは、区間光変調素子の水平シフトレジスタ8に接続する。また駆動線2,2a,…の一端は垂直シフトレジスタ7に接続する。
各画素の受光素子の部分では、フォトダイオード21,21a,…のアノードは接地され、カソードはそれぞれ転送スイッチ22,22a,…の一端に接続している。転送スイッチ22,22a,…のゲートは対応する水平読出し線に接続し、他端はリセットスイッチの一端に接続している。リセットスイッチ23,23a,…は、フォトダイオード及びそれに対して電気的に接続するフローティングディフュージョン(FD)領域を所定電位までリセットするためのものであって、他端には所定の電位が印加されるとともに、ゲートは水平リセット線に接続している。さらに、転送スイッチ22,22a,…の他端は、フォトダイオード21,21a,…による信号電荷を増幅するための増幅トランジスタ24,24a,…のゲートにも接続している。増幅トランジスタ24,24a,…の一端には所定電位が印加され、他端は、選択スイッチ25,25a,…を介して、受光素子の対応する垂直信号線に接続する。選択スイッチのゲートは、対応する水平選択線に接続する。受光素子の垂直信号線26,26a,…の一端は、サンプリングスイッチ32,32a,…を介して、受光素子の水平信号線33に接続する。サンプリングスイッチ32,32a,…のゲートは、受光素子の水平シフトレジスタ31に接続する。受光素子のための水平読出し線27,27a,…、水平リセット線28,28a,…、水平選択線29,29aの各一端は、いずれも、受光素子の垂直シフトレジスタ30に接続している。
図12では、2行2列で画素が配置しているが、当然のことながら、本実施形態の光情報記録再生装置における変調/受光素子108の回路は、例えば1000行1000列のような多画素のマトリクス構成とすることもできる。
本実施形態の変調/受光素子108の回路動作について説明する。まず、書き込みモードについて説明する。書き込み時の動作は、一般の表示装置などにおけるアクティブマトリクス動作と同様の動作である。
まず垂直シフトレジスタ7から駆動線2にオン信号が入力され、画素スイッチ3,3aがオン状態になる。この状態で、水平シフトレジスタ8が順次動作し、水平信号線10から垂直信号線1に信号を伝達する。すなわち、まずサンプリングスイッチ9がオンになって、垂直信号線1に水平信号線10の信号が書き込まれ、画素スイッチ3を通して保持容量5に信号に応じた電荷が蓄積される。SLMとして第1〜第3の実施形態において示したような反射型光干渉変調素子を用いる場合、干渉構造部4の反射電極(不図示)と共通対向電極6との間の電位差が印加され、この間に電界が生じる。この電界により、干渉構造部4を変化させ、入射光に対する反射率を所望の値に変調させることができる。ホログラフィックメモリシステムにおけるSLMとしては白と黒の2階調があればよいので、反射率としては最大反射率あるいは最小反射率が得られる電圧を干渉構造部4に与えることになる。次いでサンプリングスイッチ9をオフにした後にサンプリングスイッチ9aをオンにして、今度は、水平信号線10の信号を垂直信号線1aに書き込み、この信号を、画素スイッチ3aを介して保持容量5aに書き込む。このようなシーケンスで、水平方向(行方向)に順次信号を画素に書き込んでいく。
1行全て書き込んだ後に、駆動線2がオフにされ、今度は駆動線2aに、画素スイッチ3b、3cをオン状態にするべく信号が入力される。後は前述同様に、水平方向に順次画素に信号を書き込んでいく。すべての行に電圧を書きこんだ後に、再びこの動作を第一行から繰り返し、各画素の電圧を書き換えていく。このようにして全画素に信号を書き込んだ後、第1の光源101からの光を変調/受光素子108に入射させれば、それぞれの画素において変調された光として反射し、その反射光は、参照光109と干渉して記録媒体118に記録される。
参照光109を変調する画素、すなわち参照光領域にある画素は、一定の反射率になるように設定される。例えば、情報光が当たる画素と同じ構造にして、最大反射率が得られるような電圧を与える。また例えば、干渉構造は形成せずに、単純にミラー構造としてもよい。
次に、読出しモードについて説明する。
記録媒体118に記録された情報が参照光109により再生され、受光画素に「1」(白)あるいは「0」(黒)に相当する光強度が入射され、それに応じた量の電荷がフォトダイオード21,21a…に蓄積される。垂直シフトレジスタ30から水平読出し線27にオン信号を出力し、転送スイッチ22をオン状態にすることで、フォトダイオードに貯められた電荷が増幅トランジスタ24のゲートの電位を変化させ、その結果、フォトダイオードに蓄えれた信号に応じた電圧が増幅トランジスタ24のドレインに出力される。垂直シフトレジスタ30から水平選択線29によって選択スイッチ25をオン状態にすると、増幅トランジスタ24の出力が垂直信号線26に伝達する。水平シフトレジスタ31を順次動作させて、サンプリングスイッチ32をオンにすることにより、垂直信号線26から水平信号線33へ情報が送られる。サンプリングスイッチ32をオフにした後、次列のサンプリングスイッチ32aがオンとなって、同様に信号が送られる。1行すべての信号が送られた後は、垂直シフトレジスタ30により、次の行に移行し、同様にして、順次、信号が読み出される。あとは読み出された信号に基づいて、記録媒体118に記録されている信号を再生すればよい。
なお、反射型光干渉光変調素子を用いたSLMと受光素子であるCMOSセンサとをシリコン基板上に積層して一体化した場合、あるいは、画素間の位置に受光素子を配置した場合、受光素子も干渉構造部の上述した半透過膜の下側に位置することになる。したがって、読出しモードを行う直前に、情報を受光するすべての画素のSLMのトランジスタ3、3a、3b、…を一度オン状態にして、干渉構造部4,4a,4b,…が同程度の透過率を示す状態に保持しておく必要がある。
なお、SLMと受光素子とを縦方向に積層した構成の変調/受光素子を用いる場合を説明したが、同一のシリコン基板において基板表面の異なる位置にSLMと受光素子とを配置した場合においても、回路構成としては上述と同様のものである。すなわち、本実施形態では、シリコン半導体基板の表面において横方向に隣接してSLMとCMOSセンサとを配置したものも変調/受光素子として使用できる。
次に、本実施形態における反射型光干渉光変調素子を用いたSLMと受光素子であるCMOSセンサとを縦に一体化にした、すなわち積層した変調/受光素子の構造について説明する。図13はそのような変調/受光素子の要部の断面構造を示している。ここでは、2画素分の領域が示されている。受光素子として高速読み出しが可能なCMOSセンサを用いる例を説明しているが、受光素子の種類は特に限定されるものではなく、CCDやその他の光センサでもよい。
単結晶シリコン(Si)基板51の表面にフォトダイオード52が形成され、また、CMOSセンサの転送スイッチのゲート電極53が設けられている。これらの全面を覆うように層間絶縁膜60が設けられ、層間絶縁膜60内には、CMOSセンサの配線54、SLMの配線55及び遮光膜56が設けられている。そして層間絶縁膜60の最表面近くには、反射電極57が設けられている。配線54は、コンタクトホールを介して転送スイッチのソース/ドレイン電極と接続し、配線55はコンタクトホールを介して反射電極57に接続する。層間絶縁膜60の表面であって、反射電極57の周縁部にあたる位置には、支柱状の絶縁膜61が設けられており、この絶縁膜61に保持されるようにして、半透過膜58が設けられている。半透過膜58と反射電極57との間には、空間(エアギャップ)62が形成されている。半透過膜58の表面のうち、空間62に面しない方の表面の全面に保護膜59が形成されている。この図では、素子間絶縁するためのLOCOS酸化膜等や、CMOSセンサの他のトランジスタ、配線、SLMの画素スイッチや配線は省略してある。
この変調/受光素子では、入射される光に対して反射電極57と半透過膜58との間で干渉を生じさせ、その間の空間(例えば空気)62の距離(エアギャップ)を変化させることで、反射率及び透過率を変化させている。この構成では、反射型光干渉光変調素子を用いたSLMと受光素子であるCMOSセンサを縦に一体化した構成となっている。そのため、受光素子であるCMOSセンサに入射する光を読み取る際に透過モードも使用するため、両ミラー(半透過膜68及び反射電極57)とも半透明である必要がある。しかしながら、横配置の場合には、干渉構造部4では透過モードを使用する必要が無いので、反射電極57は半透明である必要はない。反射電極57が半透明でない場合には、反射電極57として、反射率の高い材料を用いることが好ましく、例えば、Al,AlSi,AlCu,Ti,Ta,W、Ag、Pt、Ru,Ni,Au,TiN等の金属膜、あるいはこれら金属の化合物膜を用いることができる。ただし、反射電極の材質はここに示したものに限定されるものではない。反射電極57と半透過膜58との間に配置された支柱状の絶縁膜61は、例えばシリコン窒化膜で形成され、半透過膜58の保護膜59は、例えばシリコン酸化膜で形成される。なお、支柱状の絶縁膜61、層間絶縁膜60、保護膜59としては、電気的な絶縁材料であれば特に限定されることなく使用することができ、またこれらを異なる材料で構成しても同じ材料で構成してもよい。
次に、この変調/受光素子の干渉構造部としての動作について説明する。まずTiからなる半透過膜58には、例えば0Vのグランド電位を与える。前述したアクティブマトリクス動作により、反射電極57には、信号に応じた電圧が与えられ、反射電極57と半透過膜58との間に電位差が生じ、それによって発生するクーロン力によりエアギャップが変化する。図14は、半透過膜58が厚さ5nmのTi、反射電極57が厚さ15nmのTiの層構成の干渉構造部を構成した場合に、エアギャップが170nmの時と10nmの時での反射率の波長変化を表わしたグラフである。保護膜59としては、厚さ10nmのSiO2が用いられている。図14に示すように、波長550nmの光において、エアギャップが170nmの時の反射率は52.5%であり、10nmの時の反射率は、1.2%である。反射電極57に与える信号の電圧により、エアギャップを10nmから170nmへと変化させると、それに伴い反射率が大きく変化することが分かる。この干渉作用は、波長や半透過膜材料、エアギャップによりそれぞれ設計可能であり、したがって、物理的な強度やコントラスト比等の特性を鑑みて、干渉構造部として必要な構成をとることが重要である。
読出しモードの場合には、少なくとも情報光が入射する画素では、光干渉の状態は同じ状態にして透過率を一定にしておく必要がある。そこでこの変調/受光素子においてエアギャップを10nmにした場合の透過率に波長変化を図15に示す。この場合、透過率は23.0%と比較的低いが、一定であることが重要であって透過率の絶対値はそれほど重要ではない。透過率を一定に保つことにより、再生光の強度をCMOSセンサで判別し、白画素なのか黒画素なのかを識別することが可能になる。
本実施形態では、SLMと受光素子であるCMOSセンサとを同一のチップに配しているので、両者間を位置合わせさせるための複雑な機構や高価なリレーレンズ系を廃することができ、光学系のコストダウンとコンパクト化を図ることができる。
本実施形態によれば、情報光と参照光との干渉によって生じる干渉縞を記録して情報を記録させる光情報記録装置あるいは光情報記録再生装置において、情報を書き込むための素子として空間光変調素子を用いている。そして空間光変調素子は、ライン状もしくはマトリクス状に複数存在する反射型の光干渉変調素子を有する。各光干渉変調素子は、光源からの光を反射する反射電極と、反射電極上に空間を介して配置された半透過性の電極とによって構成されている。そして各光干渉変調素子では、反射電極の電位を制御し、反射電極と半透過性の電極との間の間隔を変化させることにより、反射光の強度を変調することができる。このような構成の反射型光変調素子を空間光変調素子は、微細に形成することが可能なシンプルな構造を有する。したがって本実施形態によれば、光情報記録装置あるいは光情報記録再生装置を低コストに構成することができる。