この発明は、主として、手動開閉可能な扉を有する耐圧性の密閉容器と、この密閉容器を備える各種食品機械および蒸気滅菌機に関するものである。
たとえば蒸煮機は、密閉容器内へ蒸気が供給され、密閉容器内が高圧とされるので、この圧力に耐える扉閉鎖構造が要求される。そのため、下記特許文献1に開示されるように、いわゆるクラッチ式ロック機構が採用されることがある。従来のクラッチ式ロック機構は、特許文献1の図1を参照しつつ説明すると、容器本体(2)とその扉(3)の左右両端辺部に、それぞれ爪(13,16)が凹凸形成され、扉(3)に設けた爪(16)を容器本体(2)に設けた爪(13)間の切欠部(14)に通した後、両爪(13,16)が対面する位置まで扉(3)を上下方向にスライドさせ、その後、容器本体(2)の開口部(4)に沿って設けられるパッキン(27)にて、扉(3)の爪(16)を容器本体(2)の爪(13)へ押し付けて、容器本体(2)の開口部(4)を扉(3)で密閉する構造であった。
特開平11−342963号公報
従来のクラッチ式ロック機構の密閉容器は、扉はモータの駆動力により上下にスライドする構成であった。そのため、小型機にそのまま採用した場合、大掛かりな構成となり、コスト高を招くものであった。モータに代えて手動で扉をスライドさせることも考えられるが、いくら小型機とはいえ圧力容器の扉は重く、これを手動で上下動させるには問題点があった。
この発明が解決しようとする課題は、扉の重さによる手動操作の困難性を解決し、小型機にも容易に適用可能な密閉容器とこれを備える食品機械および蒸気滅菌機を提供することにある。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、前面へ開口して中空部を有する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する扉とを備え、前記扉の上下にはそれぞれ、複数の第一爪が左右に互いに離隔して設けられ、前記容器本体の前記開口部の上下にはそれぞれ、複数の第二爪が左右に互いに離隔して設けられ、前記扉は、前記第一爪を前記第二爪間の溝に通した後、前記第二爪と対面する位置まで左右にスライド可能とされ、前記容器本体の前記開口部と前記扉との間の隙間を封止するパッキンが進退可能に設けられていることを特徴とする密閉容器である。
請求項1に記載の発明によれば、扉は、従来のように上下方向のスライドではなく、左右方向にスライドする。そのため、扉のスライド操作を比較的軽く行うことができる。これにより、手動操作によるクラッチ式ロック機構の密閉容器を、簡易な構成で安価に提供することもできる。
請求項2に記載の発明は、前記容器本体は、略矩形のボックス状とされ、その前面には前記開口部を取り囲むようパッキン溝が形成され、このパッキン溝に収容された前記パッキンは、前記開口部を封止するよう閉鎖状態の前記扉に当接する前進位置と、前記扉から離隔して前記封止を解除する後退位置との間で、前後に進退可能とされ、前記容器本体には、その前面から前記第一爪の厚さよりも前方へ離隔し、かつ前記パッキン溝よりも上下方向外側の上下両端辺部に、複数の前記第二爪が左右に互いに離隔して上下方向内側へ延出して設けられており、前記扉は、略矩形の板状とされ、その上下両端辺部に、複数の前記第一爪が左右に互いに離隔して上下方向外側へ延出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の密閉容器である。
請求項2に記載の発明によれば、パッキンは、前進位置と後退位置との間で進退可能とされ、扉の第一爪および容器本体の第二爪は、それぞれ簡易な構成で設けられている。従って、簡易な構成および制御の密閉容器を提供することができる。
請求項3に記載の発明は、前記扉は、保持機構にて前記容器本体に対し、回転可能でかつ左右にスライド可能に保持され、この保持機構は、ヒンジを介して基端部を前記容器本体の一側端部に回転可能に保持されるアームと、このアームに対し前記扉を左右にスライド可能に、前記扉を前記アームに保持するスライド保持部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の密閉容器である。
請求項3に記載の発明によれば、扉は、その重量を保持機構にて保持されつつ、回転可能でスライド可能とされる。従って、手動操作可能なクラッチ式ロック機構の密閉容器を簡易に提供できる。
請求項4に記載の発明は、前記スライド保持部は、前記扉の外面に左右方向に沿って設けられるレールと、前記アームの先端部に上下方向に沿うピンまわりに回転可能に保持され前記レールに沿って相対移動可能なスライダーとを備えることを特徴とする請求項3に記載の密閉容器である。言い換えれば、請求項4に記載の発明は、前記扉は、保持機構にて前記容器本体に対し、回転可能でかつ左右にスライド可能に保持され、この保持機構は、前記扉の外面に左右方向に沿って設けられるレールと、ヒンジを介して基端部を前記容器本体の一側端部に回転可能に保持されるアームと、このアームの先端部に上下方向に沿うピンまわりに回転可能に保持され前記レールに沿って相対移動可能なスライダーとを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の密閉容器である。
請求項4に記載の発明によれば、扉は、容器本体の一側端部のヒンジと、スライダーのピンにて、それぞれ回転可能に設けられる。従って、密閉容器の使用時において、密閉容器内の圧力変化による扉の変位に対しても柔軟に対応することができる。
請求項5に記載の発明は、前記スライド保持部は、前記扉の外面に左右方向に沿って設けられるレールが、その下面を前記アームの先端部上面にスライド可能に載せ置かれて構成されることを特徴とする請求項3に記載の密閉容器である。
請求項5に記載の発明によれば、容器本体に設けたアームに、扉に設けたレールが載せ置かれる。これにより、扉は、その重量をアームに保持されつつ、アームに対しスライド可能とされる。従って、手動操作可能なクラッチ式ロック機構の密閉容器を簡易に提供できる。
請求項6に記載の発明は、前記扉の外面に、前方へ開口する作動溝が上下方向に沿って設けられており、前記アームには、前記扉に対し垂直に操作軸が回転可能に保持され、この操作軸は、その基端部に設けられた操作部の操作により、先端部に設けられた作動部が前記作動溝を介して前記扉を左右にスライドさせることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の密閉容器である。
請求項6に記載の発明によれば、操作部の操作にて操作軸を回転動作させることで、扉に設けた作動溝の側壁を、操作軸の先端側の作動部が押すことで、扉をスライドさせることができる。このようにして、簡易な構成で扉のスライドを実現することができる。
請求項7に記載の発明は、前記アームは、略L字形状に形成されており、その先端片が前記扉の外面と平行を維持するように、前記アームと前記扉との間に揺動規制手段を備えることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の密閉容器である。
請求項7に記載の発明によれば、アームの先端片に対し扉を平行に維持することができる。そのため、特に、扉をスライドさせる際に、容器本体の第二爪に、扉の第一爪が接触することが防止される。
請求項8に記載の発明は、前記容器本体の前記第二爪には、前記扉の前記第一爪が対面して前記パッキンにより押し付けられた状態で、前記扉が開く方向のスライドを阻止する係止部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の密閉容器である。
請求項8に記載の発明によれば、密閉容器の使用時には、容器本体の第二爪の係止部に、扉の第一爪が係止されて、扉が開く方向のスライドが防止される。従って、密閉容器の使用時に、扉が不用意に開かれることが防止される。
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の密閉容器と、前記扉にて前記開口部が封止された前記密閉容器内の空気を外部へ吸引排出して、前記密閉容器内を減圧する減圧手段と、減圧下の前記密閉容器内へ外気を導入して、前記密閉容器内を復圧する復圧手段とを備えることを特徴とする食品機械である。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の発明による作用効果を奏する真空冷却機などの各種食品機械を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、前記密閉容器内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記密閉容器内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段とをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の食品機械である。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の発明による作用効果を奏する蒸煮冷却機などの各種食品機械を提供することができる。
さらに、請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の密閉容器と、前記密閉容器内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記密閉容器内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段と、前記扉にて前記開口部が封止された前記密閉容器内の空気を外部へ吸引排出して、前記密閉容器内を減圧する減圧手段と、減圧下の前記密閉容器内へ外気を導入して、前記密閉容器内を復圧する復圧手段とを備えることを特徴とする蒸気滅菌機である。
請求項11に記載の発明によれば、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の発明による作用効果を奏する蒸気滅菌機を提供することができる。
この発明によれば、手動操作でも開閉可能なクラッチ式ロック機構の密閉容器と、これを備える各種食品機械および蒸気滅菌機を提供することができる。
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の密閉容器は、中空部を有する容器本体と、前記中空部の開口部を開閉する扉とを備えて構成される。密閉容器の用途は特に問わないが、真空冷却機、容器本体内を大気圧以上とする圧力容器としての蒸煮機(蒸し庫を含む)、蒸煮冷却機、蒸気滅菌機、オートクレーブなどのように、内部が大気圧よりも減圧または加圧される圧力容器として好適に用いられる。
扉にて開閉可能とされる開口部は、通常、容器本体に一つ設けられるが、容器本体に二つの開口部を対面して設け、各開口部を扉で開閉可能とした両扉式に構成してもよい。この場合、二つの扉の内、一方または双方に、後述の扉開閉構造を適用できる。この両扉式の密閉容器は、温度または機能が異なる空間同士を区切る隔壁部に設置することができ、各扉は前記各空間へ向けて配置される。そして、所望により二つの扉が同時に開かないように制御することもできる。
密閉容器は、典型的には略矩形のボックス状に形成された金属製の缶体である。密閉容器の容器本体には、前後左右の各側面の内、一側面へ開口して中空部が形成されている。ここでは、説明の便宜上、開口部を有する面を容器本体の前面と捕らえて説明する。この前面の開口部が扉で閉じられ、容器本体または扉に設けられたパッキンにて、両者間の隙間が封止されることで、前記中空部は密閉される。
扉は、本実施形態では略矩形板状とされ、保持機構により容器本体に対し回動可能に設けられる。これにより、扉は、容器本体の開口部を覆うスイング閉位置と、容器本体の開口部から離隔したスイング開位置との間で回動可能とされる。さらに、扉は、前記スイング閉位置において、扉面に沿って左右にスライド可能とされる。本実施形態の扉は、その回動動作やスライド動作を手動で行うことができるが、場合により、その一方または双方の動作をモータやシリンダ機構などを用いて行うよう構成してもよい。
扉には、その上下両端辺部に、第一爪が所定間隔で複数設けられる。この第一爪は、典型的には同じ形状および大きさの略矩形板状とされ、左右に等間隔に配置される。このような第一爪が所定間隔で複数設けられることで、扉には、略矩形状の第一凸部(第一爪)と略矩形状の第一凹溝とが交互に複数設けられる。
容器本体の一側端部に扉を保持する保持機構は、扉の外面に左右方向に沿って水平に保持されるレールと、典型的には略L字形状に形成されヒンジを介して基端部を容器本体の一側端部に回動可能に保持されるアームと、このアームの先端部に上下方向に沿うピンまわりに回動可能に保持されると共に前記レールに沿って相対移動可能なスライダーとを備える。このようにして、扉は、アームを介して容器本体の一側端部のヒンジまわりに回動可能に保持され、またスライダーの前記ピンまわりに回動可能である。さらに、アームに保持されたスライダーに沿ってレールが相対移動することで、アームに対し扉が水平方向にスライド可能である。
このように、保持機構により、扉は、容器本体に対し、回動可能でかつ左右にスライド可能に保持される。この保持機構は、ヒンジを介して基端部を容器本体の一側端部に回転可能に保持されるアームと、このアームに対し扉を左右にスライド可能に、扉をアームに保持するスライド保持部とを備えていれば、その構成は特に問わない。
特に、スライド保持部は、上述した構成,すなわち扉の外面に左右方向に沿って設けられるレールと、アームの先端部に上下方向に沿うピンまわりに回転可能に保持され前記レールに沿って相対移動可能なスライダーとを備える構成に限らない。すなわち、スライド保持部は、次のような構成とすることもできる。具体的には、スライド保持部は、扉の外面に左右方向に沿って設けられる板状レールが、その下面をアームの先端部上面にスライド可能に載せ置かれて構成されてもよい。
扉を左右に可動させるために、アームの先端部には、その板面に対し垂直(スイング閉位置において前後方向)に操作軸が回動可能に保持されている。操作軸の基端部には、操作レバーやノブなどの操作部が設けられている。一方、扉の外面には、前方へ開口して作動溝が上下方向に沿って設けられており、この作動溝内に操作軸の先端部に設けた作動部が突入されている。この作動部は、操作軸が回転されると、前記作動溝の側壁を左右方向へ押すよう構成されており、これによりアームに対し扉を左右にスライドさせることができる。
ところで、アームの先端片と扉の外面とがほぼ平行を維持するように、アームと扉との間には、扉の揺動規制手段が備えられている。この揺動規制手段は、アームの先端片に左右方向に長穴を形成し、扉の外面に対し垂直に設けた棒材を前記長穴に突入させ、この棒材の先端部をアームの外面において拡径して構成される。これにより、前記スライダーのピンまわりに扉が揺動しても、扉とアームとの離隔距離を規制することができる。そして、アームに対し扉がスライドする際には、前記長穴に沿って棒材が移動する。さらに、扉の外面とアームの内面との間には、コイルバネを配置するのが好ましい。
扉の閉鎖状態において、密閉容器内つまり前記中空部を密閉するために、容器本体と扉との隙間はパッキンにて封止される。このパッキンは、本実施形態では、前記開口部を取り囲むように容器本体に設けられる。具体的には、容器本体には、閉鎖状態の扉と対面する位置に、前記開口部に沿って連続的にパッキン溝が形成されている。そして、このパッキン溝には、その深さ方向(前後方向)に沿ってパッキンが進退可能に設けられる。すなわち、パッキンは、パッキン溝から突出する前進位置と、パッキン溝に収容される後退位置との間を進退可能とされる。
後退位置から前進位置へのパッキンの移動は、コンプレッサからの圧縮空気をパッキン溝内へ送り込むことで行われる。逆に、前進位置から後退位置へのパッキンの移動は、真空ポンプやアスピレータなどの吸引力を利用して、パッキン溝内の空気を吸引することで行われる。前進位置において、パッキンは閉鎖状態の扉の内面へ押し付けられ、密閉容器内が密閉される。一方、後退位置において、パッキンは扉への押付けを解除して、扉から離隔することで、密閉容器内の密閉が解除される。
さらに、容器本体には、その上下両端辺部に、第二爪が所定間隔で複数設けられる。この第二爪は、容器本体の前面から第一爪の厚さよりも前方へ離隔し、かつパッキン溝よりも外側の上下両端辺部に、上下方向内側へ延出して設けられる。この第二爪は、典型的には同じ形状および大きさの略矩形板状とされ、左右に等間隔に配置される。このような第二爪が所定間隔で複数設けられることで、容器本体には、略矩形状の第二凸部(第二爪)と略矩形状の第二凹溝とが交互に複数設けられる。
扉をスイング開位置からスイング閉位置まで回転させる際、容器本体の第二爪間の第二凹溝に、扉の第一爪が通される。逆にいうと、この際、扉の第一爪間の第一凹溝には、容器本体の第二爪が通される。これにより、容器本体の開口端面と第二爪との間に、扉の第一爪が配置される。
容器本体の開口部を扉で閉じて密閉するには、扉をスイング閉位置まで閉めた状態で、扉の第一爪が容器本体の第二爪と対面する位置まで、前記操作部を操作して扉を横方向にスライドさせる。さらに、容器本体の開口部の外側に沿って設けたパッキンを扉側へ押し出して、第一爪を第二爪へ押し付ければよい。この際、前記パッキンは、扉の内面(容器本体側の面)に連続的に接触される。
ところで、容器本体の第二爪には、扉の第一爪が対面してパッキンにより押し付けられた状態で、扉が開く方向のスライドを阻止する係止部を形成しておくのが好ましい。この係止部は、全ての第二爪に形成してもよいが、本実施形態では上下両端辺部のそれぞれにおいて、そのいずれか一つの第二爪にのみ形成している。スイング閉位置において扉が右側へスライドして第一爪と第二爪とが重ね合わされる場合、第二爪の左側端縁に後方へ突出して係止部が形成される。
以上の構成の密閉容器は、たとえば、周知の真空冷却機(たとえば特開2004−170060号公報に示されるもの)の処理槽や、蒸煮機もしくは蒸煮冷却機(たとえば特開2005−65797号公報に示されるもの)または蒸気滅菌機(たとえば特開2004−147888号公報に示されるもの)の処理槽として利用される。真空冷却機の処理槽として利用する場合、前記密閉容器には、減圧手段と復圧手段、およびこれら各手段を制御する制御手段が備えられる。一方、蒸煮機、蒸煮冷却機、または蒸気滅菌機として利用する場合、前記密閉容器には、減圧手段、復圧手段、給蒸手段、排出手段、およびこれら各手段を制御する制御手段が備えられる。
前記減圧手段は、扉にて前記開口部が封止された密閉容器内の空気を外部へ吸引排出して、密閉容器内を減圧する手段である。復圧手段は、減圧下の密閉容器内へ外気を導入して、密閉容器内を復圧する手段である。給蒸手段は、密閉容器内へ蒸気供給する手段である。排出手段は、密閉容器内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する手段である。
本実施形態の密閉容器によれば、扉は、その重量を保持機構にて保持されつつ、回転可能でスライド可能とされる。しかも、扉は、従来のように上下方向のスライドではなく、左右方向にスライドする。そのため、扉のスライド操作を比較的軽く行うことができる。これにより、手動操作によるクラッチ式ロック機構の密閉容器を、簡易な構成で安価に提供することができる。また、扉は、容器本体の一側端部のヒンジと、スライダーのピンにて、それぞれ回転可能に設けられる。従って、密閉容器の使用時において、密閉容器内の圧力変化による扉の変位に対しても柔軟に対応することができる。
ところで、本実施形態の密閉容器は、扉の上下部に設けた第一爪と、容器本体の上下部に設けた第二爪とを対面させて、互いに当接させることで、密閉容器内の圧力に耐える構成である。そのため、特に、正面視において横長の密閉容器の場合は、第一爪と第二爪との接触面積を大きく取れるので、そのような横長の密閉容器に好適に適用できる。
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の密閉容器の実施例1を示す概略斜視図であり、扉を開けた状態を示している。また、図2は、本実施例の密閉容器の一部を拡大して示す概略斜視図であり、扉をスライドさせる機構部を示している。
図1に示すように、密閉容器1は、容器本体2と扉3とを備える。本実施例の容器本体2は、略矩形の金属製ボックス状に構成されており、手前側(前方)へ開口部4を向けて略矩形の中空部5が形成されている。前記開口部4を開閉可能に、容器本体2には扉3が設けられる。本実施例の扉3は、略矩形板状の金属製である。
扉3は、容器本体2の手前側の右側端部に、保持機構6を介して回動可能に設けられる。この保持機構6は、扉3に設けられるレール7,7、平面視略L字形状のアーム8、アーム8の基端部を容器本体2に保持するヒンジ9,9、アーム8の先端部を前記レール7,7に保持するスライダー10を備える。
レール7は、細長い棒材から構成され、本実施例では丸棒状である。レール7は、扉3の外面に水平に固定される。具体的には、扉3の外面の左右には、略矩形のレール支持片11,11が固定され、この左右のレール支持片11,11間に、丸棒状のレール7が保持される。これにより、レール7は扉3の外面から離隔して、その左右両端部がレール支持片11,11を介して扉3に保持される。本実施例では、扉3には、二本のレール7,7が上下に離隔して平行に、同一の構成で設けられる。
アーム8は、図1および図3に示すように、略矩形状のアーム板12を備える。このアーム板12は、扉3の外面から離隔して、扉3と略平行に配置される。また、アーム板12は、扉3の略右半分に、そして扉3よりも右側へ延出して設けられる。そして、この延出部の後面には、アーム板12の板面に対し垂直に、略矩形板状の取付片13が設けられる。つまり、取付片13は、図3に示す扉3の閉鎖状態において、アーム板12の後面から後方へ延出して水平に設けられる。本実施例では、アーム板12の右側端部には、上下に離隔にて二箇所に、取付片13,13が平行に設けられる。このようにして、アーム8は、アーム板12と取付片13とにより、平面視略L字形状に形成される。
アーム8の基端部(図1において右側)の取付片13は、容器本体2にヒンジ9を介して回動可能に保持される。具体的には、容器本体2の手前側の右側端部には、上下に離隔して、略矩形状の保持ブロック14が二つ設けられる。各保持ブロック14の上面には、アーム8の取付片13がそれぞれ載せ置かれ、両者13,14は枢軸15にて連結される。上下の枢軸15,15は、同一軸線上に配置される。このような構成により、アーム8は、容器本体2の右側端部の前記枢軸15まわりに回動可能に、容器本体2に保持される。
アーム板12の先端部(図1において左側)の上下には、それぞれ上下に離隔して、一対のスライダー支持片16,16が設けられる。各スライダー支持片16は、水平に配置された略矩形板状で、アーム板12から後方へ延出すると共に、アーム板12の先端側へ延出する。アーム板12の上下にそれぞれ設けられた一対のスライダー支持片16,16間の先端部には、それぞれスライダー10が保持される。
本実施例のスライダー10は、直方体形状のブロック状とされ、図2に示すように、後方部には、左右方向に沿って横貫通穴17が形成され、前方部には、上下方向に沿って縦貫通穴18が形成される。スライダー10は、スライダー支持片16,16間にそれぞれ配置され、上下のスライダー支持片16,16を架け渡すよう設けられるピン19が縦貫通穴18に通される。これにより、スライダー10は、前記ピン19まわりに回動可能とされる。また、スライダー10の横貫通穴17には、丸棒状のレール7が通される。これにより、レール7に沿ってスライダー10が相対的にスライド可能とされる。
アーム板12の先端部の上下方向中央部には、先端側へ延出した中央延出部20を備える。この中央延出部20には、その板面と垂直に操作軸21が貫通して設けられる。この操作軸21は、中央延出部20に保持されたすべり軸受(不図示)に、回転可能に設けられる。操作軸21の基端部には、操作軸21を回動操作するための操作部22が設けられる。本実施例の操作部は、操作軸21の軸線と垂直に設けられた操作レバー22である。操作軸21の先端部には、操作軸21と垂直に径方向外側へL字状に屈曲された後、それと垂直にさらにL字状に先端側へ屈曲されて、作動部23が設けられる。この作動部23は、扉3の外面に設けられた作動溝24に突入される。
本実施例では、扉3の中央部の外面に略コ字形状材25が設けられることで、前記作動溝24が形成される。具体的には、略コ字形状材25は、その左右両端片26,27を手前側へ向けて、上下方向に沿って配置した状態で、その中央片28を扉3の外面に重ね合わせて固定される。また、本実施例では、この略コ字形状材25は、上方へ開口すると共に、下端部に底壁29が形成されている。作動溝24の左右方向幅寸法は、前記作動部23の直径とほぼ対応している。
図2において実線で示すように、操作レバー22が左に水平に保持された状態では、略コ字形状材25の底壁29に当接する位置に作動部23が配置される。従って、その状態においては、操作レバー22をそれ以上、反時計方向へ回転させることはできない。一方、その状態から操作レバー22を時計方向へ回転させると、操作軸21の軸線まわりに作動部23が旋回する。作動部23の旋回に伴い、作動部23は作動溝24内を上下に移動しつつ、略コ字形状材25の右端片27を右側へ押すことで、スライダー10に対しレール7を相対移動させて、扉3を右側へ移動させる。このようにして、図2において二点鎖線で示すように、操作レバー22が右に水平に保持された状態では、略コ字形状材25の底壁29に当接する位置に作動部23が配置される。従って、その状態においては、操作レバー22をそれ以上、時計方向へ回転させることはできない。
そして、その状態から、操作レバー22を反時計方向へ回転させれば、作動部23は作動溝24内を上下に移動しつつ、略コ字形状材25の左端片26を左側へ押すことで、スライダー10に対しレール7を相対移動させて、扉3を左側へ移動させて、図2において実線で示す状態へ戻すことができる。このようにして、操作レバー22を操作軸21まわりに上半周分だけ回転操作しつつ、扉3を左右にスライドさせることができる。扉3のスライドは、レール7の中央部において行われ、操作軸21の軸線と作動部23の軸線との偏心距離の二倍の長さだけが、扉3のスライド幅となる。
以上のようにして、扉3は、ヒンジ9まわりの回動と、操作レバー22の操作による左右のスライドが可能とされる。ヒンジ9まわりの回動について述べると、扉3は、容器本体2の開口部4を覆うスイング閉位置と、容器本体2の開口部4から離隔したスイング開位置との間で、ヒンジ9にて回動可能とされる。また、左右方向のスライドについて述べると、扉3は、前記スイング閉位置において、操作レバー22の回動動作により左右にスライド可能とされる。本実施例では、扉3のスイングがなされる状態においては、扉3はアーム板12に対し相対的に左に配置され、扉3の閉鎖時に右側へスライドさせて使用される。
扉3には、スイング閉位置において容器本体2の開口部4の上下方向外側位置に、左右方向に複数の第一爪30,30…が設けられる。この第一爪30は、扉3の上下両端辺部に、上下対称形状に設けられる。各第一爪30は、同じ形状および大きさの略矩形状とされる。このような第一爪30が左右に等間隔で複数設けられることで、扉3の上下両辺部には、略矩形状の第一凸部(第一爪)30と略矩形状の第一凹溝31とが交互に複数設けられる。
容器本体2の前面に配置される前記開口部4の周囲の端面は、垂直面とされ、扉3をスイング閉位置まで閉めた際の戸当り面32として機能する。また、その戸当り面32の上下両端辺部には、手前側へ延出して延出片33,33が設けられ、この延出片33の手前側端部には、上下方向内側へ延出して複数の第二爪34,34…が設けられる。この第二爪34は、容器本体2の上下両端辺部に、上下対称形状に設けられる。各第二爪34は、同じ形状および大きさの略矩形状とされる。このような第二爪34が左右に等間隔で複数設けられることで、容器本体2の上下両端部には、略矩形状の第二凸部(第二爪)34と略矩形状の第二凹溝35とが交互に複数設けられる。
扉3をスイング開位置からスイング閉位置まで回転させる際、容器本体2の第二爪34,34間の第二凹溝35に、扉3の第一爪30が通される。またこの際、扉3の第一爪30,30間の第一凹溝31には、容器本体2の第二爪34が通される。扉3は、その内面が前記戸当り面32(容器本体2の前面)に当接することで、スイング閉位置における位置決めが容易になされる。扉3がスイング閉位置にある場合には、容器本体2の戸当り面32と第二爪34との間に、扉3の第一爪30が配置される。
容器本体2の戸当り面32には、容器本体2の開口部4を取り囲むように連続的にパッキン36が設けられる。このパッキン36は、後方へ開口した略コ字形状断面に形成されており(図4)、容器本体2の開口部4を取り巻くように形成されたパッキン溝37内に収容されている。容器本体2の開口部4に扉3を密閉する際には、コンプレッサ(不図示)からの圧縮空気を利用してパッキン溝37を加圧することで、パッキン36を扉3側へ突出させて、扉3の内面に密着させればよい。逆に、容器本体2と扉3との密閉を解除する際には、真空ポンプ(不図示)やアスピレータ(不図示)などの吸引力を利用して、パッキン36をパッキン溝37内に戻して収容すればよい。
ところで、扉3が前記ピン19まわりに必要以上に揺動することを防止して、アーム板12と扉3とがほぼ平行を維持するように、アーム板12と扉3との間には揺動規制手段38が設けられる。本実施例では、アーム板12の先端側の上下方向中央部に、左右方向に沿って細長い長穴39を形成し、扉3の外面から垂直に延出する突出棒(ボルト)40の先端部を、前記長穴39に突入させている。この突出棒40には、アーム板12と扉3との間にコイルバネ41が配置されると共に、アーム板12を介して突出する先端部には拡径部(ナット)42が固定される。突出棒40に対する拡径部42の固定位置は、アーム板12が拡径部42に当接した状態で、アーム板12と扉3とが平行になる位置とされている。さらに、長穴39に沿って突出棒40が円滑にスライドするように、長穴39には円筒状のガイド(滑車体)43が回転しつつスライド可能に設けられ、このガイド43に突出棒40が貫通して設けられる。
突出棒40は、長穴39に沿って移動することで、アーム板12に対する扉3のスライドが可能とされる。すなわち、操作レバー22が図2において実線で示される状態では、長穴39の左端部に突出棒40が配置され、図2において二点鎖線で示される状態では、長穴39の右端部に突出棒40が配置される。そして、アーム板12は、扉面と拡径部42との間に移動規制され、その間に圧縮されたコイルバネ41が配置される。このようにして、扉3をアーム板12と平行に維持することができ、扉3の取り扱いを容易になすことができる。
次に、本実施例の扉3の開閉動作について説明する。初期状態において、扉3は、ヒンジ9の枢軸15まわりに回動して開口部4から離れており、スイング開位置にあるものとする。また、操作レバー22は、図2において実線で示すように、左側へ水平に倒されているとする。つまり、扉3は、アーム板12に対し左側へ移動した状態とされている。
図3は、本実施例の密閉容器1の斜視図であり、扉3をスイング閉位置にした状態を示している。また、図4は、その手前側の左下部を拡大して示す横断面斜視図である。図1の初期状態から、扉3を枢軸15まわりに、図3に示すスイング閉位置まで回動させたとする。この際、図4に示すように、容器本体2の第二爪34,34間の第二凹溝35に、扉3の第一爪30が通されると共に、扉3の第一爪30,30間の第一凹溝31に、容器本体2の第二爪34が通される。この状態では、容器本体2の戸当り面32に扉3の内面が当接され、戸当り面32と第二爪34との間に、扉3の第一爪30が配置される。
図5は、本実施例の密閉容器1の斜視図であり、スイング閉位置の扉3を右側へスライドさせた状態を示している。また、図6および図7は、その手前側の左下部を拡大して示す横断面斜視図であり、図6はパッキン36の引込み状態、図7はパッキン36の押出し状態を示している。図3の状態から、その操作レバー22を時計方向に180度だけ回転させると、前述したように、作動溝24に突入された作動部23の旋回により、扉3は右側へ所定距離だけ水平にスライドし、図5の状態となる。この状態では、図6に示すように、第一爪30が第二爪34と対面する位置に配置される。この状態で、図7に示すように、パッキン36をパッキン溝37から突出させて、パッキン36を扉3の内面に密着しつつ、扉3を外方へ移動させる。これにより、第二爪34に第一爪30を押し付けつつ、容器本体2の開口部4を扉3で気密状態に閉じることができる。
ところで、本実施例では、容器本体2の第二爪34は、扉3の第一爪30よりも、左右方向幅寸法が大きく形成されている。そして、図6および図7の状態では、第二爪34の左右方向中央部に、扉3の第一爪30が配置される。さらに、本実施例では、上下の各第二爪34の内、それぞれ最も左側に配置された第二爪34には、その左側端縁部が僅かに後方へ突出して係止部44が形成されている。図7に示すように、パッキン36が押し出された状態では、扉3の最も左側に配置された第一爪30は、その左側端部が前記係止部44に当接されることで、扉3が左側へ移動して、図4の状態へ戻るのが防止される。
このようにして容器本体2の開口部4を扉3で密閉した状態で、密閉容器1の目的に応じて、蒸煮処理や蒸気殺菌処理などがなされた後、パッキン36をパッキン溝37内へ収容して気密状態を解除し、前述と逆の要領で扉3を開放する。すなわち、操作レバー22を反時計方向へ180度だけ回転させて、図5の状態から図3の状態へ戻すことで、第二爪34,34間の第二凹溝35に第一爪30を配置し、その操作レバー22を手前側へ引いて、扉3を開放する。
ここで、図5の状態から図3の状態への移動操作の際に、特に、容器本体2を前方へ傾斜して設置している場合などには、つぎの操作が必要である。すなわち、この場合、扉3は開こうとする方向(前方)へ力が働いているので、そのままでは第一爪30と係止部44とが当接した状態を保持する。したがって、操作者は、扉3を戸当たり面32へ押しつけるようにして操作レバー22を反時計方向へ回転させることで係止部44に当接することなく扉3を右側へ移動できる。そして、扉3を枢軸15まわりに回転させることで、図3のスイング閉位置から図1のスイング開位置まで扉3を開けることができる。
ところで、本実施例の密閉容器1は、真空冷却機、蒸煮機、蒸煮冷却機、または蒸気滅菌機などの処理槽として利用される。真空冷却機の処理槽として利用する場合、容器本体2には、減圧手段と復圧手段、およびこれら各手段を制御する制御手段が備えられる。一方、蒸煮機、蒸煮冷却機、または蒸気滅菌機として利用する場合、容器本体2には、減圧手段、復圧手段、給蒸手段、排出手段、およびこれら各手段を制御する制御手段が備えられる。
前記減圧手段は、扉3にて前記開口部4が封止された密閉容器1内の空気を外部へ吸引排出して、密閉容器1内を減圧する手段である。この減圧手段は、容器本体2に接続された真空ラインに、真空ポンプ、蒸気エゼクタまたは水エゼクタなどを設けて構成される。また、復圧手段は、減圧下の密閉容器1内へ外気を導入して、密閉容器1内を復圧する手段である。この復圧手段は、容器本体2に接続された復圧ラインに、復圧操作弁やフィルターなどを設けて構成される。
さらに、給蒸手段は、密閉容器1内へ蒸気供給する手段であり、ボイラを備えて構成される。この際、一般的な一次ボイラからの蒸気を熱源として、二次ボイラ(リボイラ)にて軟水または純水から蒸気を生成し、そのクリーン蒸気を密閉容器1内へ供給するのが好ましい。また、排出手段は、密閉容器1内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する手段である。この排出手段は、容器本体2内に接続された開閉可能な排水ラインや排蒸ラインなどから構成される。
図8および図9は、本発明の密閉容器1の実施例2を示す概略斜視図であり、図8は扉3をスイング開位置にした状態を示し、図9は扉3をスイング閉位置にした状態を示している。また、図10および図11は、本実施例の密閉容器1の正面図であり、図10は扉3をスイング開位置からスイング閉位置にした状態を示し、図11はスイング閉位置の扉3を右側へスライドさせた状態を示している。さらに、図12から図14は、本実施例の密閉容器1の平面図であり、容器本体2を断面にすると共に一部を省略して示しており、図12は扉3のスイング開位置とスイング閉位置との間の回動状態を示し、図13はスイング閉位置の扉3を右側へスライドさせた状態を示し、図14はさらにパッキン36の押出し状態を示している。また、その状態における拡大縦断面図を図15に示した。
本実施例2の密閉容器1も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下では両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。本実施例2の密閉容器1も、前記実施例1と同様、真空冷却機、蒸煮機、蒸煮冷却機、または蒸気滅菌機などの処理槽として利用されるものである。
図8に示すように、本実施例2の密閉容器1も、前記実施例1と同様に、容器本体2は、前面へ開口して中空部5を有している。そして、容器本体2の前面(戸当り面)32には、開口部4を取り囲む位置に、パッキン36が前後に進退可能に設けられている。また、戸当り面32の上下両端辺部には、略矩形状の第二爪34と略矩形状の第二凹溝35とが交互に複数設けられる。
一方、扉3は、図8および図9に示すように、略矩形板状とされ、その上下両辺部に、略矩形状の第一爪30と略矩形状の第一凹溝31とが交互に複数設けられる。また、扉3の中央部の外面には、前記実施例1と同様に、作動溝24が形成される。本実施例では、上下に細長い略ロ字形状材45が、その中央穴を扉3の板面に対し垂直に配置されて、扉3の外面に固定されることで作動溝24が形成される。つまり、略ロ字形状材45は、その左右両端片26,27と底壁29および上壁46とで囲まれた中央穴が、作動溝24とされる。
このような構成の扉3は、前記実施例1と同様に、保持機構6を介して容器本体2に吊り下げられる。本実施例2の保持機構6は、扉3に設けられる板状レール7と、平面視略L字形状のアーム8と、このアーム8の基端部を容器本体2に回動自在に保持するヒンジ9,9とを備える。板状レール7は、左右に細長い略矩形状の板材からなり、扉3の外面上部に水平に固定される。
また、本実施例のアーム8は、扉3と平行に配置される略矩形状のアーム板12と、このアーム板12の右側端部に設けられる略矩形状の取付板47とにより構成される。その際、取付板47は、アーム板12の右側端辺部から、アーム板12に対し垂直後方へ僅かに延出して設けられる。これにより、アーム板12と取付板47とにより構成されるアーム8は、全体として平面視略L字形状に形成される。このような構成のアーム8は、その取付板47が容器本体2の右側端部にヒンジ9を介して保持される。このヒンジ9は、二枚の板片48,48が枢軸15まわりに回動可能に構成された従来公知の構造である。本実施例では、一方の板片48が容器本体2の手前側の右側部外面に固定され、他方の板片48にアーム8の取付板47の外面が固定される。このようにして、アーム8は、その右側端部の取付板47が、上下二箇所において、ヒンジ9,9により容器本体2に取り付けられる。
このようにして容器本体2に回動自在に保持されたアーム8には、扉3が保持される。具体的には、アーム板12の上端面に、扉3の板状レール7が載せられて、扉3がアーム板12に保持される。これにより、扉3は、アーム板12に対し左右にスライド可能で、且つ前後にも若干摺動可能に、保持される。また、その状態では、アーム板12は、扉3の外面から離隔して、扉3と略平行に配置される。
ところで、本実施例のアーム板12は、図8から図11に示されるように、その上下方向寸法が、扉3の上下方向寸法よりも小さく形成され、扉3の上下方向中央部に配置される。また、アーム板12は、前記実施例1と同様に、扉3の右側端部よりも右側へ延出すると共に、その延出部に設けられた取付板47により、前述したように容器本体2に取り付けられる。そして、アーム板12は、前記実施例1よりも左右方向寸法が大きく、扉3の中央部よりも左側へ延出する大きさである。
また、アーム板12の中央部には、略矩形状などの貫通穴49が形成され、この貫通穴49には、軸受用板50が固定される。この軸受用板50には、その板面と垂直に操作軸21が貫通して設けられる。この操作軸21は、軸受用板50に保持されたすべり軸受51に、回動可能に保持される。操作軸21の基端部には、操作軸21を回動操作するための操作部として、操作レバー22が設けられる。また、図12から図14に示すように、操作軸21の先端部には、本実施例では板材52を介して、作動部23が操作軸21の軸線と偏心して設けられる。この作動部23は、扉3の外面に設けられた前記作動溝24に突入される。
アーム板12と扉3との間には、前記実施例1と同様に、アーム板12と扉3とがほぼ平行を維持するように、揺動規制手段38が設けられる。本実施例2の揺動規制手段38は、前記操作軸21による扉3のスライド駆動部を取り囲む四ヶ所に設けられる。各揺動規制手段38は、前記実施例1と同様の構成であり、アーム板12には、左右方向に沿って細長い長穴39が貫通して形成される。そして、この長穴39には、ガイド43が脱落不能に保持される。このガイド43は、回転しつつ長穴39に沿ってスライド可能である。
一方、その長穴39に保持されたガイド43には、図15に示すように、扉3の外面から垂直に延出する突出棒40の先端部が貫通して設けられる。この突出棒40は、ボルトなどの棒材から構成され、アーム板12およびガイド43を介して突出する先端部には、ナットが固定されるなどして拡径部42が設けられる。また、突出棒40には、ガイド43と扉3との間に、圧縮されたコイルバネ41が配置される。従って、コイルバネ41の付勢力により、拡径部42にアーム板12(ガイド43)が当接されるよう位置決めされ、その状態では扉3とアーム板12とは平行に配置される。また、図14および図15に示すように、パッキン36の押出し時には、前記コイルバネ41の付勢力に対抗して、アーム板12の外面から突出棒40の先端部を突出させつつ、アーム板12に対し扉3が若干近接することになる。
次に、本実施例2の扉3の開閉について説明する。初期状態において、扉3は、図8および図12の二点鎖線で示すように、ヒンジ9の枢軸15まわりに回動して開口部4から離れており、スイング開位置にあるものとする。また、操作レバー22は、左側へ水平に倒されているとする。
この初期状態から、図10および図12の実線で示すように、扉3を枢軸15まわりにスイング閉位置まで回動させたとする。この際、容器本体2の第二爪34,34間の第二凹溝35に、扉3の第一爪30が通されると共に、扉3の第一爪30,30間の第一凹溝31に、容器本体2の第二爪34が通される。
次に、操作レバー22を時計方向に約180度回転させると、作動溝24に突入された作動部23の旋回により、扉3は右側へ所定距離だけ水平にスライドし、図11および図13に示すように、第一爪30が第二爪34と対面する位置に配置される。この状態で、図14および図15に示すように、パッキン36をパッキン溝37から突出させて、パッキン36を扉3の内面に密着しつつ、扉3を外方へ移動させる。これにより、第二爪34に第一爪30を押し付けつつ、容器本体2の開口部4を扉3で気密状態に閉じることができる。
ところで、本実施例では、スイング閉位置の扉3を右側へスライドさせた状態では、図11に示すように、操作レバー22は、水平位置よりもやや下方まで回されて止まる。従って,操作レバー22の反時計方向への不用意な回転が防止される。また、容器本体2の上下に設けた第二爪34,34…の内、それぞれ左右両端部に配置された各第二爪34には、前記実施例1と同様に係止部44(不図示)が設けられている。従って、図14および図15の状態において、扉3を強引に左側へ移動しようとすれば、扉3の第一爪30が係止部44に当接することで、扉3の強引な開放操作が防止される。
このようにして容器本体2の開口部4を扉3およびパッキン36で封止した状態で、密閉容器1の目的に応じて、蒸煮処理や蒸気殺菌処理などがなされた後、パッキン36をパッキン溝37内へ収容して気密状態を解除し、前述と逆の要領で扉3を開放する。すなわち、パッキン36の引込みにより、図14の状態から図13の状態にした後、操作レバー22を反時計方向へ約180度回転させて、図13の状態から図12の状態へ戻すことで、第二爪34,34間の第二凹溝35に第一爪30を配置する。そして、操作レバー22を手前側へ引いて、扉3を開放すればよい。
本実施例2の密閉容器1によれば、アーム8に扉3を載せて支えることにより、扉3の左右方向のズレ(振れ)を防止できる。また、揺動規制手段38により、扉3の前後方向のズレ(振れ)を防止できる。従って、扉3をスムーズにスライドすることができる。また、実施例1に比べて、構造の簡略化とコストダウンを図ることができる。
本発明の密閉容器1とこれを備える食品機械および蒸気滅菌機は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、扉3が回動可能で横方向にスライド可能な構成であれば、扉3の保持機構は適宜に変更可能である。また、図1などでは、扉3の外面に機構部が露出しているが、パネル(不図示)などで覆って使用可能なことは言うまでもない。
本発明の密閉容器の実施例1を示す概略斜視図であり、扉を開けた状態を示している。
実施例1の密閉容器の一部を拡大して示す概略斜視図であり、扉をスライドさせる機構部を示している。
実施例1の密閉容器の斜視図であり、扉をスイング閉位置にした状態を示している。
図3の密閉容器の手前側の左下部を拡大して示す横断面斜視図である。
実施例1の密閉容器の斜視図であり、スイング閉位置の扉を右側へスライドさせた状態を示している。
図5の密閉容器の手前側の左下部を拡大して示す横断面斜視図であり、パッキンの引込み状態を示している。
図5の密閉容器の手前側の左下部を拡大して示す横断面斜視図であり、パッキンの押出し状態を示している。
本発明の密閉容器の実施例2を示す概略斜視図であり、扉を開けた状態を示している。
実施例2の密閉容器の概略斜視図であり、扉をスイング閉位置にした状態を示している。
実施例2の密閉容器の正面図であり、扉をスイング開位置からスイング閉位置にした状態を示している。
実施例2の密閉容器の正面図であり、スイング閉位置の扉を右側へスライドさせた状態を示している。
実施例2の密閉容器の平面図であり、容器本体を断面にすると共に一部を省略して示しており、扉のスイング開位置とスイング閉位置との間の回動状態を示している。
図12のスイング閉位置の扉を右側へスライドさせた状態を示す図である。
図13の状態からさらにパッキンを押し出した状態を示す図である。
図14の状態における密閉容器の拡大縦断面図である。
符号の説明
1 密閉容器
2 容器本体
3 扉
4 開口部
5 中空部
6 保持機構
7 レール
8 アーム
9 ヒンジ
10 スライダー
12 アーム板(先端片)
19 ピン
21 操作軸
22 操作部(操作レバー)
23 作動部
24 作動溝
30 第一爪
34 第二爪
35 第二凹溝
36 パッキン
37 パッキン溝
38 揺動規制手段
44 係止部