流量測定対象となるガス、水等の流体の流量を計測する流量計測装置としては、熱型のフローセンサを用いたものが知られている。このフローセンサは、流体の温度よりも高い温度を有するヒータを流体の流れの中に配置し、このヒータによって加熱された流体の温度分布が流速の増加に伴って変化するという原理を利用したものである。
このようなフローセンサとしては、特許文献1に示すものが知られており、この従来の熱型のフローセンサを、図9及び図10の図面を参照して説明する。なお、図9は従来の熱型のフローセンサの構成を示す構成図である、図10は図9に示すフローセンサの断面図である。
図9において、フローセンサ1は、Si基板(基体)2、ダイアフラム3、ダイアフラム3上に形成された白金等からなるマイクロヒータ4、マイクロヒータ4の下流側でダイアフラム3上に形成された下流側サーモパイル5、マイクロヒータ4に図示しない電源から駆動電流を供給する電源端子6A,6B、マイクロヒータ4の上流側でダイアフラム3上に形成された上流側サーモパイル8、上流側サーモパイル8から出力される上流側温度信号を出力する第1出力端子9A,9B、下流側サーモパイル5から出力される下流側温度信号を出力する第2出力端子7A,7B、を備える。
また、フローセンサ1は、マイクロヒータ4に対して流体の流れ方向(PからQへの方向)と略直交方向に配置され、流体の物性状態を検出し、右側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する右側サーモパイル11、この右側サーモパイル11から出力される右側温度検出信号を出力する第3出力端子12A,12B、マイクロヒータ4に対して流体の流れ方向と略直交方向に配置され、流体の物性状態情報を検出し、左側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する左側サーモパイル13、この左側サーモパイル13から出力される左側温度検出信号を出力する第4出力端子14A,14B、基体温度を得るための抵抗15,16、この抵抗15,16からの流体温度信号を出力する出力端子17A,17Bを備える。右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13は、温度センサを構成する。
上流側サーモパイル8、下流側サーモパイル5、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13は、熱電対から構成されている。この熱電対は、p++−Si及びAlにより構成され、冷接点5b,8bと温接点5a,8aとを有し、熱を検出し、冷接点5b,8bと温接点5a,8aとの温度差から熱起電力が発生することにより、温度検出信号を出力するようになっている。
また、図10に示すように、Si基板2には、ダイアフラム3が形成されており、このダイアフラム3には、マイクロヒータ4と、上流側サーモパイル8、下流側サーモパイル5、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13のそれぞれの温接点とが形成されている。
このように構成されたフローセンサ1によれば、マイクロヒータ4が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ4から発生した熱は、流体を媒体として、下流側サーモパイル5と上流側サーモパイル8のそれぞれの温接点5a,8aに伝達される。それぞれのサーモパイルの冷接点5b,8bは、Si基体(Si基板)上にあるので、基体温度になっており、それぞれの温接点は、ダイアフラム上にあるので、伝達された熱により加熱され、Si基体温度より温度が上昇する。そして、それぞれのサーモパイルは、温接点5a,8aと冷接点5b,8bの温度差より熱起電カを発生し、温度検出信号を出力する。
流体を媒体として伝達される熱は、流体の熱拡散効果とPからQに向かって流れる流体の流速との相乗効果によって、それぞれのサーモパイルに伝達される。すなわち、流速がない場合には、熱拡散によって上流側サーモパイル8と下流側サーモパイル5に均等に伝達され、上流側サーモパイル8からの上流側温度信号と下流側サーモパイル5からの下流側温度信号との差信号は、零になる。
一方、流体に流速が発生すると、流速によって下流側サーモパイル5の温接点5aに伝達される熱量が多くなり、上流側サーモパイル8の温接点8aに伝達される熱量は少なくなるため、前記下流側温度信号と前記上流側温度信号との差信号は流速に応じた正値になる。
一方、マイクロヒータ4が外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ4から発生した熱は、流体の流速の影響をほとんど受けずに流体の熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ4に対して流体の流れ方向と略直交方向に配置された右側サーモパイル11に伝達される。また、マイクロヒータ4に対して流体の流れ方向と略直交方向に配置された左側サーモパイル13にも、同様な熱が伝達される。このため、右側サーモパイル11の起電力により第3出力端子12A,12Bから出力される右側温度検出信号、及び/または左側サーモパイル13の起電力により第4出力端子14A,14Bから出力される左側温度検出信号は、熱伝導と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等の流体の物性状態に相関のあるデータであり、適当な処理をすることで物性状態を得ることもできる。
熱拡散定数等の大小は、上流側サーモパイル8が出力する上流側温度信号と下流側サーモパイル5が出力する下流側温度信号及び上流側温度信号にも影響し、右側及び左側サーモパイル出力の大小と同様に変化する。したがって、原理的には、上流側温度信号や下流側温度信号を、あるいは、これらの差を、右側及び/又は左側サーモパイル出力によって除することで、熱拡散定数等の異なる流体であっても、即ち、いかなる種類の流体であっても、正確な流量を算出することができることになる。
よって、図示しない流量計測装置は、第3出力端子12A,12Bから出力される右側温度検出信号、及び/または第4出力端子14A,14Bから出力される左側温度検出信号に基づき、熱伝導と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等の流体の物性状態情報を算出し、上流側サーモパイル8からの上流側温度信号と下流側サーモパイル5からの下流側温度信号との差信号をその物性状態情報で補正することで、高精度の計測を実現するようにしてきた。
一方、特許文献2に示すフローセンサも知られている。該フローセンサは、ヒータをダイアフラムの中央に配置し、前記ヒータの上流側に上流温度センサ、下流側に下流側温度センサを配置している。該フローセンサの動作は、基体上の周囲温度センサで計測された温度よりも一定温度高くなるようにヒータで流体を加熱して所定の温度分布を発生させ、その温度分布を上流側温度センサ及び下流側温度センサで計測することにより流体流量を計測するものであった。
しかしながら、上述したフローセンサ1では、流体の物性状態データで補正しているにも係わらず、測定精度の再現性が悪いという問題が生じていた。特に大流量の計測、つまり、流速が速い場合に再現性が悪く、流量計測範囲の限界の一要因となっていた。
そこで、この問題を鋭意調査したところ、マイクロヒータ4に電流が流れない状態、つまり、フローセンサ1が駆動されていない状態でも、その出力が変化していたことが判明した。以下にその詳細を説明する。
図11は従来の温度差によるサーモパイルの出力を示す模式図であり、図12は従来のフローセンサで計測された流体温度と基体温度との温度差とセンサ出力器差(測定誤差)との関係を示したグラフである。そして、測定は、流体の標準状態における100L/minで計測されている。
なお、図12中の縦軸が示す器差は、その単位が%RD(% of Reading:読値に対する百分率)となっている。そして、この%RDは、例えば、最大流量が100L/minのメータにおいて、10L/minの流量を計測した場合に、メータ出力が9L/minであると、その器差を−10%RDで示す。そして、このときの公差は−1%FS(計器の最大計測値に対する百分率)で示すことができる。
図11に示すように、前述の温度差がないときは、ヒータに電力印加がない場合、温度センサ出力は出力V0になり、ヒータに電力が印加されたときは出力V2になるとする。この状態のフローセンサ1でガス温度が基体温度より上昇すると、その分出力V0も出力V2も温度上昇し、それぞれ出力V1と出力V3になる。ところが、フローセンサ1は常に電力が印加されているため、出力V0や出力V1を計測することはできず、本来、出力V2である出力が出力V3に変化してしまう。
実際に図9に示すフローセンサ1の出力を計測して誤差を評価した結果が図12である。その器差は、―30度の温度差で約+20%RD、+30度の温度差で約−20%RDであることが判明した。
一方、上述した特許文献2のフローセンサの場合でも、測定精度の再現性が悪いという問題が生じていた。特に大流量の計測、つまり、流速が速い場合に再現性が悪く、流量計測範囲の限界の一要因となっていた。
この問題については、特許文献3の課題にもなっており、その原因は、本来、流体の温度を正確に測定する必要がある周囲温度センサが基体の温度を計測しているため、基体温度と流体温度に温度差が生じた場合には、流体の温度より一定温度高く加熱するという本来のヒータの制御ができないために、流量計測精度が悪くなっていた。
この問題を解決するために特許文献3では、ヒータの駆動を停止して、その停止時間内に、ヒータの抵抗値出力、若しくは、上流側温度センサそして/または下流側温度センサの温度出力によって、流体温度を計測し、流速計測の期間はこの方法で計測された流体温度よりも一定温度高くなるようにヒータを駆動しており、この方法では、流速の計測を一時的に停止する必要があるため、連続的な流量計測ができないという問題点があった。
特開2001−12988号公報
特開平4−34315号公報
特開2004−117157号公報
[第1の最良の形態]
以下、上述した背景技術で説明したフローセンサ1(図9,10を参照)を用いて、流体の流量を計測する本発明に係る流量計測装置の第1の最良の形態を以下に説明する。なお、本第1の最良の形態では、本発明のフローセンサ用補正ユニットを有する流量計測装置を実現する場合について説明する。また、フローセンサ1の基本構成については、背景技術のところで説明しているので、詳細な説明は省略する。
ここで、図2はフローセンサを用いた本発明の流量計測装置の概略構成の一例を示す構成図であり、図3は図2中の駆動部の本発明に係る構成例を示す図であり、図4は図2のCPUが実行する処理概要の一例を示すフローチャートである。
図1及び図2において、本発明の流量計測装置20は、背景技術で説明したフローセンサ1を用いて、流体であるガスの流量を計測するものである。そして、フローセンサ1は、基体2から熱的に遮断された状態で基体表面に設けられるダイアフラム3と、前記ダイアフラム3上に設けられて流路内を流れる流体の温度よりも高い温度で前記流体を加熱して所定の温度分布を発生するマイクロヒータ(ヒータ)4と、前記ヒータ4に対する前記流路の上流側の前記ダイアフラム3上に設けられて前記基体2と前記ダイアフラム3との温度差に基づいて前記流体の温度を検出して上流側温度信号を出力する上流側サーモパイル(温度センサ)8と、前記ヒータ4に対する前記流路の下流側の前記ダイアフラム3上に設けられて前記基体2と前記ダイアフラム3との温度差に基づいて前記流体の温度を検出して下流側温度信号を出力する下流側サーモパイル(温度センサ)5と、ダイアフラム3上に設けられて流体の流れ方向と略直交してヒータ4を通る略直交方向における前記温度分布に応じた前記流体の温度を検出して横側温度信号を出力する右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)と、を有する。
フローセンサ1の基体2には、上述したように測温抵抗15,16を設けており、これらの測温抵抗15,16は、基体2の基体温度を検出して基体温度信号を出力する。このように第1の最良の形態では、測温抵抗15,16を請求項中に記載の基体温度検出手段として機能させている。
流量計測装置20は、上述したフローセンサ1内の下流側サーモパイル5からの下流側温度信号とフローセンサ1内の上流側サーモパイル8からの上流側温度信号との差信号を増幅する差動アンプ33と、フローセンサ1内の右側サーモパイル11からの右側温度検出信号を増幅するアンプ35aと、フローセンサ1内の左側サーモパイル13からの左側温度検出信号を増幅するアンプ35bと、フローセンサ1内の測温抵抗15,16からの基体温度信号を検出する検出回路37と、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)40と、このMPU40によって制御されてマイクロヒータ4を駆動させる駆動部50と、を備えて構成される。そして、差動アンプ33とアンプ35a,b及び検出回路37と駆動部50との各々はMPU40に接続されている。
なお、第1の最良の形態では、既存のフローセンサ1に2つの測温抵抗15,16が設けられていたため、それらを基体温度検出手段として用いる場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、1つの測温抵抗で実現する、3つ以上の測温抵抗で実現するなど種々異なる形態とすることができる。
MPU40は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)41、CPU41のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM42、各種のデータを格納するとともにCPU41の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM43等を有して構成している。
ROM42には、フローセンサ1を用いてガスの流量を計測するのに当たり、CPU41(コンピュータ)を、上述した請求項中の温度差検出手段、補正情報抽出手段、補正手段として機能させるための各種プログラムを記憶している。また、本第1の最良の形態ではさらに、CPU41(コンピュータ)を、物性状態情報の検出、流量の算出等の各種手段として機能させるためのプログラムを記憶している。
CPU41は、下流側サーモパイル5及び上流側サーモパイル8からの下流側温度信号と上流側温度信号との差である差信号が差動アンプ33を介して入力される。なお、本最良の形態では、差動アンプ33を用いる場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、アンプで増幅して下流側温度信号及び上流側温度信号をそのままCPU41に入力するなど種々異なる形態とすることができる。
CPU41は、右側サーモパイル11からの右側温度検知信号がアンプ35aを介して入力されると共に、左側サーモパイル13からの左側温度検知信号がアンプ35bを介して入力される。なお、本最良の形態では、アンプ35a,35bの2つを用いる方法について説明するが、例えば、2つの信号の和を出力する増幅回路を1つのアンプで構築する方法など種々異なる方法を用いることができる。
駆動部50は、MPU40に接続しており、MPU40からの指示に応じてマイクロヒータ4に対する電力の供給を制御してマイクロヒータ4を駆動させる駆動回路等を有している。
駆動部50はさらに、図3に示すように、マイクロヒータ4に流れる電流を監視する電流監視部51を有している。この電流監視部51は、マイクロヒータ4を定電圧Voで駆動する定電圧源51aと、該定電圧源51aからマイクロヒータ4に電力を供給する供給ラインに直列に設けられる固定抵抗(シャント抵抗)51bと、該固定抵抗51bの両端の電位差を示す差信号を増幅する差動アンプ51cと、を有している。そして、差動アンプ51cの出力は、MPU40の入力ポート(図示せず)に接続しており、該入力ポートから差信号がMPU40に入力される。
なお、駆動部50については、マイクロヒータ4の駆動方法は、マイクロヒータ抵抗を計測することが可能であれば、例えば、定電力回路、定温度回路などを用いて種々異なる形態とすることができる。
MPU40は、入力された差信号に基づいて固定抵抗51bの両端の電位差を示す電圧Vmを計測し、該電圧Vmを固定抵抗51bの抵抗値Rmで除する(Vm/Rm)ことで、マイクロヒータ4を流れている電流Ihが求められる。そして、マイクロヒータ4に印加されている電圧Vhは、定電圧VoからVh=Vo−Vmで求められる。そして、マイクロヒータ4の抵抗値Rhは、Rh=Vh/Ihで求められ、温度依存抵抗体からなるマイクロヒータ4のヒータ温度Thを計測する。
また、MPU40は、検出回路37で基体2の基体温度Tbを検出する。なお、基体温度Tbの検出方法については、2つの測温抵抗15,16中の一方の基体温度信号に基づいて基体温度Tbを検出するなど種々異なる検出方法を用いることができる。
MPU40は、ヒータ温度Thから基体温度Tbを差し引くことで、温度差ΔT=Th−Tbを算出する。そして、後述する標準温度差情報が有する標準温度差ΔThoを温度差ΔTから差し引くことで、第2温度差ΔTg(=ΔT−ΔTho)を算出する。そして、流体温度と基体温度との間に差が生じている場合は、その差分が温度差ΔTに反映されることになるため、その第2温度差ΔTgに基づいて流体温度と基体温度との間に温度差が生じているか否かを判定することができる。
ROM42はさらに、上述した図12に示すように、ダイアフラム3上の流体の流体温度と基体2の基体温度との間に生じる温度差(図12中の横軸)と該温度差に対応して前記流量計測装置が有する器差(図12中の縦軸)との関係に基づいて予め定められた補正情報や、流体温度と基体温度との予め定められた所定状態におけるマイクロヒータ4のヒータ温度と基体温度との標準温度差を示す標準温度差情報等の各種情報を記憶している。
補正情報の一例としては、測定精度ズレを解消するように、図12に示す温度差と器差との関係に基づいて定められた右側及び左側温度検出信号を補正する補正係数データを有して構成しており、各補正情報の各々は、温度差(範囲)に対応させて設けている。このように補正情報をテーブルとして予めROM42に記憶しておくことで、温度差に対応する補正情報を特定することが可能な構成となっている。なお、補正情報としては、指定した温度差に対応する補正情報を出力する補正係数データを算出する算出式プログラムとするなど種々異なる形態とすることができる。
また、標準温度差情報の一例としては、流体温度と基体温度に温度差がない状態(所定状態)における温度差を示す標準温度差データを有して構成している。なお、加熱されたマイクロヒータ4は、流量の平方根に比例して冷却されることから、上述したΔThoは流速によっても異なるため、流体の全流量域に標準温度差データを対応させている。
例えば、測定対象となる流量域を複数の流量区分に区分し、各流量区分に対応した標準温度差データを有するように標準温度差情報を構成している。そして、RAM43に流量域データを記憶するエリアを設け、そして、その流量域データに流量区分を設定しておくことで、その設定値に基づいた流量区分の判定が可能な構成となっている。
なお、標準温度差ΔThoとして流量が0のときに対応したΔThooのみを記憶しておき、流体の流量によって冷却される熱量分の温度ΔTvを含めた第2温度差ΔTgによって補正する形態とすることもできる。但し、流量ありのときの流量算出係数を逆算で予め求めておく必要がある。或いは、ΔTgo=ΔT―ΔThooから仮の流速を求め、その仮流速とフローセンサ1の補正前出力との差から計測流量を補正することもできる。
また、第1の最良の形態では、ROM42を請求項中の補正情報記憶手段及び標準温度差情報記憶手段として機能させる場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、MPU40にメモリ、外部記憶媒体等を接続して実現させることもできる。
次に、上述した構成におけるMPU40のCPU41が実行する流量計測処理の一例を、図4に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
図4に示す流量計測処理が起動されると、ステップS11において、マイクロヒータ4の加熱開始が駆動部50に指示され、その後ステップS12に進む。この指示に応じて駆動部50は、マイクロヒータ4に一定の電圧が印加されるように駆動させる。この結果、マイクロヒータ4の周りのガスが加熱されて、所定の温度分布が発生することになる。
ステップS12において、上述したように測温抵抗15,16から検出回路37を介して入力される基体温度信号に基づいて基体2の基体温度Tbが検出されてRAM43に記憶されると共に、駆動部50の電流監視部51から入力される差信号に基づいて電位差Vmが検出され、上述したように電位Vmに基づいてマイクロヒータ4のヒータ温度Thが算出されてRAM43に記憶され、その後ステップS13に進む。
ステップS13(温度差検出手段)において、RAM43のヒータ温度Thと基体温度Tbとの温度差ΔTが算出され、該温度差ΔTとRAM43の流量区分データが示す流量区分に対応する標準温度差情報が示す標準温度差ΔThoとの第2温度差ΔTgが算出され、該第2温度差ΔTgと例えば予め定められた温度差変換テーブル、温度差変換プログラム等とに基づいて流体温度が求められ、該流体温度と基体温度との温度差がRAM43に記憶され、その後ステップS14に進む。
ステップS14(補正手段)において、RAM43の温度差に対応する補正情報が特定され、該補正情報に基づいて、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13からアンプ35a,bを介して入力される右側温度検出信号及び左側温度検出信号(横側温度信号に相当)が補正され、それらの信号値がマイクロヒータ4の駆動時における温度分布出力V3onとしてRAM43に記憶され、その後ステップS15に進む。
ステップS15(物性状態情報検出手段)において、RAM43の温度分布出力V3onに基づいて、流体の物性に応じた物性状態情報が算出(検出)されてRAM43に記憶され、その後ステップS16に進む。なお、この物性状態情報に基づいて流体の物性をある程度求めることもできる。
ステップS16において、フローセンサ1の下流側サーモパイル5及び上流側サーモパイル8がそれぞれ出力した上流側温度信号及び下流側温度信号の差信号が差動アンプ33を介して取り込まれ、その信号値がマイクロヒータ4の加熱時における温度差出力VonとしてRAM43に記憶され、その後ステップS17に進む。
ステップS17において、RAM43の温度差出力Von、物性状態情報V3on、後述する流量算出式を用いて算出されることで、1回の計測当たりの流量が算出されて流量情報としてRAM43に記憶され、その後、ステップS18において、流量情報は予め定められた例えば表示装置に出力されることで、表示装置に表示され、その後ステップS19に進む。
ステップS19において、算出された流量情報に基づいて、流量があるか否かが判定される。流量があると判定された場合は(S19でY)、ステップS20において、RAM43に流量域データに、その流量が該当する流量区分が設定され、その後ステップS22に進む。一方、流量がないと判定された場合は(S19でN)、RAM43の流量域データがクリアされ、その後ステップS22に進む。
ステップS22において、終了要求を受けたか否かが判定される。終了要求を受けていないと判定された場合は(S22でN)、ステップS12に戻り、一連の処理が繰り返される。なお、直ちにステップS12に戻る必要はなく、一定時間経過した後に戻るようにしてもよい。一方、終了要求を受けたと判定された場合は(S22でY)、ステップS23において、マイクロヒータ4の加熱終了が駆動部50に指示され、マイクロヒータ4の駆動が停止されると、その後処理が終了される。
以降も、ガスの計測期間中は、連続的に上述した処理を繰り返すことで、流量の計測時に、流体温度と基体温度との温度差を検出し、この温度差、流量に対応した補正情報で横側温度センサ出力を補正して流量の算出を連続的に行うことができる。
次に、上述した構成の流量計測装置20の動作(作用)の一例を、図5の図面を参照して以下に説明する。なお、図5は本発明による温度差と器差との関係を示すグラフである。
上述した発明が解決しようとする課題で説明した測定条件と同一の測定条件で温度差と器差との関係を確認したところ、図5に示す結果を得ることができた。詳細には、センサ基体とガス温度差とを約−30〜30度の範囲で変化させたとき、図5に示すように、その器差は−30度のときが約1%、−15度のときが約0%、−5度のときが約0.5%、5度のときが約0%、15度のときが約0%、30度のときが約−1%という測定結果を得ることができた。つまり、このように本発明の流量計測装置20によって、温度差の変化による器差の発生を解消することができた。
以上説明したように本発明の流量計測装置20によれば、流体判別装置に相当するCPU41が横側温度信号を補正し、該横側温度信号に基づいて物性状態情報を検出して流体を判別し、該物性状態情報に基づいて補正した温度信号に基づいて流体の流速に応じて変化した温度分布を検出し、該温度分布に基づいて流体の流量を計測するようにしたことから、流体温度と基体温度との間に温度差が生じても、その温度差による誤差を補正情報によって解消することができるため、出力精度を良い状態に保つことができる。従って、流体と基体と間に生じる温度差を正確に把握して、様々な種類の流体に対する計測精度を向上させることができる。
第1の最良の形態では、フローセンサ1の右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)を流体温度と基体温度との温度差に対応した補正情報で補正し、該横側温度信号に基づいて流体の物性状態情報を検出し、該物性状態情報に基づいて上流側温度信号及び下流側温度信号を補正し、それらの温度信号に基づいて流量を算出するようにしたことから、流体の物性状態に応じた補正を行うことができるため、連続的な計測中でも様々な種類の流体に対する計測精度を向上させることができる。
また、ヒータ温度を検出し、該ヒータ温度と基体温度との温度差から標準温度差を差し引いて第2温度差を算出し、該第2温度差に基づいて流体温度を求め、基体温度と流体温度との間に生じている温度差を検出するようにしたことから、マイクロヒータ(ヒータ)4の加熱状態であっても常に流体温度と基体温度との温度差を検出することができるため、ガス(流体)の計測期間中は常に最新の物性状態情報を得ることが可能となり、流路の外部の温度変化等によって基体2と流体との間に温度差が生じても、基体温度と流体温度とに温度差が生じたときに発生するオフセット出力をキャンセルすることができる。従って、流量計測装置20におけるヒータ駆動の制御、補正処理等を複雑化することなく、連続的な計測中でも様々な種類の流体に対する計測精度をより一層向上させることができる。
さらに、予め定められた複数の流量区分に対応させて標準温度差情報を記憶し、流量を算出した後は、該流量に応じた流量域を特定し、該流量域に対応する標準温度差情報に基づいて基体温度と流体温度との温度差を検出するようにしたことから、マイクロヒータ(ヒータ)4が流体の流れの影響を受けても、その流速によって冷却される熱量分を補正することができるため、基体2と流体との間に温度差が生じても、流体の流量の影響を受けることなく、基体温度と流体温度とに温度差が生じたときに発生するオフセット出力をキャンセルすることができる。従って、流体が流れている状態であっても、様々な種類の流体に対する計測精度をより一層向上させることができる。
[第2の最良の形態]
上述した第1の最良の形態では、横側温度センサにより流体の物性状態情報を得てその情報により流速に応じた温度分布を補正する方法について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、マイクロヒータ4の温度制御を基体温度よりも一定温度だけ上昇させる方式の第2フローセンサにも本発明を適用することができる。
なお、第2フローセンサは、背景技術で説明した図9中の11〜14の構成を削除したものであり、その他の構成は同一であることから詳細な説明は省略する。また、第2流量計測装置は、図2に示す構成から11,13,35a,35bを削除した構成となっている。
上述したフローセンサ1及び流量計測装置20の場合、マイクロヒータ4の加熱量が変動しても、その変動量を右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)がモニターし、上流側サーモパイル(上流側温度センサ)8及び下流側サーモパイル(下流側温度センサ)5の出力を補正するため、流量計測精度が維持される。
しかしながら、第2フローセンサの場合、横側温度センサがないため、その補正ができない。そこで、第2フローセンサ及びそれを用いた第2流量計測装置の場合は、マイクロヒータ4の加熱を十分制御する必要がある。制御の一例として、ここでは、基体温度よりも一定温度高い状態に制御する場合について説明する。
マイクロヒータの温度制御によって基体温度よりも一定温度だけ上昇させるため、駆動部によってヒータ温度Thを基体温度Tbより一定温度ΔThoだけ上昇させる。このとき、この一定温度ΔThoは、基体温度と流体温度との温度差ΔTgと電力による温度上昇ΔTeとの和(ΔTh=ΔTg+ΔTe)になる。そして、電力による温度上昇ΔTeは、マイクロヒータの消費電力Wh=Vh*Ihに比例することから、マイクロヒータの印加電圧Vhと印加電流Ihをモニターすることで予測することができる。
具体的な作用としては、基体温度より一定温度ΔThoだけ上昇するようにマイクロヒータ4を加熱したとき、基体温度と流体温度との温度差がない状態、つまり、ΔTg=0でのマイクロヒータ消費電力Whoから比例係数k(ΔTho=k*Who)を求めて記憶しておく。そして、ΔTg≠0のときのマイクロヒータ消費電力Whから電力によるマイクロ加熱温度ΔTe=k*Whが求められ、制御による温度上昇ΔThoとの差から温度差ΔTg(=ΔTho−ΔTe)を算出する。この温度差ΔTgから補正情報記憶手段41aを参照して補正情報を抽出し、第2フローセンサの出力を補正する。なお、実際のロジックではΔTgを求める必要はなく、ΔTeやWh等から補正情報を参照するようにすることもできる。
このように第2の最良の形態における第2流量計測装置によれば、フローセンサ用補正ユニットを設け、そして、流体温度と基体温度との間に生じる温度差と該温度差に対応して流体計測で生じる誤差(器差)との関係に基づいた補正情報で、上流側及び下流側の温度信号を補正するようにしたことから、流体温度と基体温度との間に温度差が生じても、その温度差に応じた誤差を補正情報によって解消することができるため、流体の流量を正確に計測することができる。従って、流体に対する計測精度を向上させることができる。
また、第2の最良の形態における第2流量計測装置によれば、基体温度と流体温度との温度差を計測するためにマイクロヒータ4の駆動を停止する必要がなく、連続的な流量計測ができるようになる。
[第3の最良の形態]
次に、上述した背景技術で説明したフローセンサ1(図9,10を参照)を用いて、流体の流量を計測する本発明に係る流量計測装置の第3の最良の形態を、図6〜図7の図面と上述した図面とを参照して説明する。なお、フローセンサ1の基本構成については、背景技術のところで説明しているので、詳細な説明は省略する。さらに、第1の最良の形態、及び、なお、従来の技術のところで説明したものと同一あるいは相当する部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
ここで、図6はフローセンサを用いた第3の最良の形態における流量計測装置の設置例を説明するための図であり、図7は図6に示す流量計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すフローセンサ1は、第1の最良の形態で説明したものと同様に、基体2と、ダイアフラム3と、マイクロヒータ(ヒータ)4と、上流側サーモパイル(上流側温度センサ)8と、下流側サーモパイル(下流側温度センサ)5と、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)と、を有する。
図6及び図7に示す流量計測装置20は、第1の最良の形態で説明した、差動アンプ33と、アンプ35a,35bと、検出回路37と、マイクロプロセッサ(MPU)40と、駆動部50と、を有している。
さらに、流量計測装置20は、フローセンサ1のヒータ4が発生する温度分布の影響を受けないように流路70内に設けられる参照部材1Aを有する。この参照部材1Aは、上方に設けているフローセンサ1と対向するように流路70の下方の内壁に設けられ、流路70内を流れるガスの流れ方向(図6中のPからQへの方向)に対する向きがフローセンサ1と同一になる向きとなるように配置されている。
なお、フローセンサ1と参照部材1Aとの配置関係は、断面形状等が変化していない直線状の流路70における上流に参照部材1Aと下流にフローセンサ1となるように配置するなど、種々異なる配置関係とすることができる。
また、流路70内における流れがほとんどない位置、流れの影響を受けない位置等に、参照部材1Aを配置することも考えられるが、流れがない位置(淀み位置)のガスは、流れているガスと同一温度であるとは限らないため、そのような位置に配置することは適切でなく、上述した配置関係とすることが好ましい。
さらに、流路70の同一断面形状の同一位置に配置していれば、お互いの距離が離れていても大きな問題はないが、圧力損失が大きい場合は、それに伴う温度低下があるため、計測精度を若干低下させる可能性があるため、お互いの距離は近いことが好ましい。
参照部材1Aは、フローセンサ1の基体2と同一の構成部材で形成される参照用基体2Aと、該参照用基体2Aから断熱された状態でその表面に設けられ、かつ、フローセンサ1のダイアフラム3と同一の構成部材で形成される参照用ダイアフラム3Aと、該参照用ダイアフラム3A上に設けられて参照用ダイアフラム3Aの参照用ダイアフラム温度を検出する参照用ダイアフラム温度検出手段として機能するマイクロヒータ4Aと、を有する。
なお、参照部材1Aについては、フローセンサ1と同一の構成からなる他のフローセンサを用いることもできる。また、参照部材1Aの参照用基体2Aの形状については、フローセンサ1の基体2と同一にする必要はなく、種々異なる形状とすることができる。
さらに、第3の最良の形態では、請求項中の参照用ダイアフラム温度検出手段をマイクロヒータ4Aで実現する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、参照部材1Aの構成に、例えば測温抵抗体、サーモパイル等の各種温度センサを設けて、参照用ダイアフラム温度検出手段として機能させるなど、種々異なる形態とすることができる。
流量計測装置20はさらに、第2駆動部50Aを有する。該第2駆動部50Aは、マイクロヒータ4Aに該マイクロヒータ4Aを加熱しない程度の微弱な定電流を印加する回路になっている。また、第2駆動部50Aはさらに、マイクロヒータ4Aの両端電位差Vmを増幅するアンプを有し、該アンプの出力はMPU40に入力されている。このような構成とすることで、MPU40は検出した出力Vmにより、Rm=Vm/Imの関係からマイクロヒータ4Aの抵抗値Rmが算出され、該抵抗値Rmと温度依存係数とからマイクロヒータ4Aの温度Thmを算出可能する。
なお、第2駆動部50Aについては、上述した構成に限定する必要はなく、マイクロヒータ4Aに加熱しない程度に定電圧を印可して電流値を計測する、マイクロヒータ4Aをマイクロヒータ4の温度の1/2程度まで印加してマイクロヒータ4Aの抵抗値を計測する、などの種々異なる構成とすることができる。
MPU40は、参照用ダイアフラム3A上の温度Thmを計測する。そして、第1の最良の形態で説明したように、フローセンサ1の測温抵抗15,16に基づいて基体2の基体温度Tbを計測し、参照用ダイアフラム3Aと基体2との温度差を流体温度と基体温度の温度差ΔTgとして検出する。
ROM42には、第1の最良の形態と同様に、図4に示すフローチャートを実現するための流量計測処理プログラムと、前記補正情報と、を記憶している。
次に、第3の最良の形態において、CPU41が実行する流量計測処理の一例を、図4に示すフローチャートを参照して以下に説明する。なお、上述した第1の最良の形態で説明した処理と同一の箇所については、詳細な説明を省略する。
図4に示す流量計測処理が起動されると、ステップS11において、マイクロヒータ4の加熱開始が駆動部50に指示されると共に、マイクロヒータ4Aの駆動開始が第2駆動部50Aに指示され、その後ステップS12に進む。この指示に応じて第2駆動部50Aは、マイクロヒータ4Aが発熱しない微弱の電流を流して駆動させる。この結果、マイクロヒータ4の周りのガスが加熱されて、所定の温度分布が発生することになり、一方の参照部材1Aのマイクロヒータ4Aは加熱されない。
ステップS12において、上述したように測温抵抗15,16から検出回路37を介して入力される基体温度信号に基づいて基体2の基体温度Tbが検出されてRAM43に記憶されると共に、第2駆動部50Aから入力される信号に基づいて電位差Vmが検出され、上述したように電位Vmに基づいてマイクロヒータ4Aのヒータ温度、つまり、参照用ダイアフラム3A上の参照用ダイアフラム温度Thmが算出されてRAM43に記憶され、その後ステップS13に進む。
ステップS13(温度差検出手段)において、RAM43の参照用ダイアフラム温度Thmと基体温度Tbとの温度差ΔTが算出され、該温度差ΔTとRAM43の流量区分データが示す流量区分に対応する標準温度差情報が示す標準温度差ΔThoとの差が、流体温度と基体温度との温度差ΔTgとしてRAM43に記憶され、その後ステップS14に進む。
そして、ステップS14〜S23の各処理は、第1の最良の形態と同一であることから、詳細な説明は省略する。つまり、第3の最良の形態は、第1の最良の形態のステップS11〜S13の各処理を、上述したように変更することで対応することができる。
次に、上述した構成における第3の最良の形態に係る流量計測装置20の動作(作用)の一例を、以下に説明する。
流量計測装置20によって上述した流量計測処理が実行されると、マイクロヒータ4が駆動される。そして、第2駆動部50Aからの出力に基づいて参照用ダイアフラム3Aの参照用ダイアフラム温度Thmを検出する。そして、参照用ダイアフラム温度Thmと基体温度Tbとの温度差ΔTを算出し、該温度差ΔTと標準温度差ΔThoとの差を流体温度と基体温度との温度差ΔTgとして算出する。
温度差ΔTgに対応する補正情報に基づいて、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13から入力される右側温度検出信号及び左側温度検出信号(横側温度信号に相当)を補正し、それらの信号値をマイクロヒータ4の駆動時における温度分布出力V3onとしてRAM43に記憶する。そして、この温度分布出力V3onに基づいて流体の物性に応じた物性状態情報を算出してRAM43に記憶する。
フローセンサ1の下流側サーモパイル5及び上流側サーモパイル8がそれぞれ出力した上流側温度信号及び下流側温度信号の差信号の信号値を温度差出力VonとしてRAM43に取り込む。そして、該物性状態情報(V3on)と温度差出力Vonと流量算出式とを用いてガスの流量を算出し、該流量を流量情報として例えば表示装置等に出力して表示させる。そして、計測した流量に応じた流量域は、RAM43の流量域データに設定される。
以降も、ガスの計測期間中は、上述した処理を繰り返すことで、流量の計測時に、流体温度と基体温度との温度差を検出し、この温度差、流量に対応した補正情報で横側温度センサ出力を補正して流量の算出を行う。
第3の最良の形態による流量計測装置20についても、上述した発明が解決しようとする課題で説明した測定条件と同一の測定条件で温度差と器差との関係を確認したところ、上述した図5に示す結果と同等の結果を得ることができた。つまり、このように本発明の流量計測装置20によって温度差の変化による器差の発生を解消することができた。
以上説明した第3の最良の形態による流量計測装置20によれば、流体温度と基体温度との間に生じる温度差と該温度差に対応して流量計測装置20が有する誤差(器差)との関係に基づいて、その誤差を解消するように横側温度信号を補正する補正情報を記憶しておき、流体温度と基体温度との温度差に対応した補正情報に基づいて右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)からの横側温度信号を補正し、該横側温度信号に基づいて物性状態情報を検出し、該物性状態情報に基づいて補正した上流側温度信号及び下流側温度信号に基づいて流体の流速に応じて変化した温度分布を検出し、該温度分布に基づいて流体の流量を計測するようにしたことから、流体温度と基体温度との間に温度差が生じても、その温度差を補正情報によって打ち消すことができるため、出力精度を良い状態に保つことができる。従って、連続的な計測中であっても様々な種類の流体に対する計測精度を向上させることができる。
また、フローセンサ1の基体2及びダイアフラム3とが同一となるように形成した参照部材1Aを、フローセンサ1のマイクロヒータ4が発生する温度分布の影響を受けないように流路内に設け、そして、該参照部材1Aの参照用ダイアフラム3A上の参照用ダイアフラム温度Thmを検出し、該参照用ダイアフラム温度Thmとフローセンサ1の基体温度Tbとの温度差ΔTを、基体温度と流体温度との温度差として検出するようにしたことから、マイクロヒータ4等で加熱されない参照用ダイアフラム3Aは流体温度の影響を受けるため、フローセンサ1におけるマイクロヒータ4の加熱状態であっても、流体と基体との間に生じる温度差を迅速に検出することができるため、基体温度と流体温度とに温度差が生じたときに発生する温度センサのオフセット出力をキャンセルすることができる。従って、流量計測装置20におけるヒータ駆動の制御、補正処理等を複雑化することなく、様々な種類の流体に対する計測精度をより一層向上させることができる。
なお、上述した本最良の形態では、請求項中の各手段をMPU40によって実現する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、DSP(digital signal processor)、ASIC(application specific IC)で実現するなど種々異なる形態とすることができる。
また、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13からの各信号をアンプ35a,35bで増幅し、かつ、参照用右側サーモパイル11A及び参照用左側サーモパイル13Aからの各信号をアンプ36a,36bで増幅してMPU40に入力する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、上流側温度信号及び下流側温度信号に対する差動アンプ33,34と同様に上述したアンプ35a,35bと36a,36bを差動アンプに置き換えなど、アナログ回路上で自動的に補正(引き算)することで、MPU40における演算処理のさらなる簡単化を図ることもできる。
また、上述した本最良の形態では、流量計測装置20について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、流量計測装置20をガスメータに組み込んで実現したり、水、薬品などの流体を計測する計器として実現するなど種々異なる形態とすることができる。
[第4の最良の形態]
次に、上述した背景技術で説明したフローセンサ1(図9,10を参照)を用いて、本発明のフローセンサ用補正ユニットを有する流体判別装置を実現する場合の最良の形態を以下に説明する。なお、従来の技術、第1〜第3の最良の形態のところで説明したものと同一あるいは相当する部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
流体判別装置は、上述した第1の最良の形態で説明した図6に示す流量計測装置20の構成と同様に、差動アンプ33と、アンプ35a,35bと、検出回路37と、マイクロプロセッサ(MPU)40と、駆動部50と、を有している。そして、フローセンサ1は、基体2と、ダイアフラム3と、マイクロヒータ(ヒータ)4と、上流側サーモパイル(上流側温度センサ)8と、下流側サーモパイル(下流側温度センサ)5と、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13(横側温度センサ)と、を有する。
なお、第4の最良の形態では、フローセンサ1が、基体2、ダイアフラム3、マイクロヒータ4、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13を有する構成とすることもできる。
ROM42はさらに、第1の最良の形態で説明した流体の物性状態情報に基づいて、流体を判別する流体判別手段、該判別結果を通知する通知手段としてCPU41を機能させるためのプログラムを記憶している。そして、本第4の最良の形態では、物性状態情報に基づいて流体を識別するための判別テーブル情報を記憶している。
図8は流体判別装置のCPUが実行する流体判別処理の一例を示すフローチャートである。そして、このフローチャートを参照して、流体判別処理の一例を以下に説明する。なお、この流体判別処理は、例えば、電源断、終了要求の発生等に応じて処理を終了する。
図8に示す流量判別処理が起動されると、ステップS51において、マイクロヒータ4の加熱開始が駆動部50に指示され、その後ステップS52に進む。この指示に応じて駆動部50は、マイクロヒータ4に一定の電圧が印加されるように駆動させる。この結果、マイクロヒータ4の周りのガスが加熱されて、所定の温度分布が発生することになる。
ステップS52において、上述したように測温抵抗15,16から検出回路37を介して入力される基体温度信号に基づいて基体2の基体温度Tbが検出されてRAM43に記憶されると共に、駆動部50の電流監視部51から入力される差信号に基づいて電位差Vmが検出され、上述したように電位Vmに基づいてマイクロヒータ4のヒータ温度Thが算出されてRAM43に記憶され、その後ステップS53に進む。
ステップS53(温度差検出手段)において、RAM43のヒータ温度Thと基体温度Tbとの温度差ΔTが算出され、該温度差ΔTと予め定められた標準温度差情報が示す標準温度差ΔThoとの第2温度差ΔTgが算出され、該第2温度差ΔTgと例えば予め定められた温度差変換テーブル、温度差変換プログラム等とに基づいて流体温度が求められ、該流体温度と基体温度との温度差がRAM43に記憶され、その後ステップS54に進む。
ステップS54(補正手段)において、RAM43の温度差に対応する補正情報が特定され、該補正情報に基づいて、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13からアンプ35a,bを介して入力される右側温度検出信号及び左側温度検出信号(横側温度信号に相当)が補正され、それらの信号値がマイクロヒータ4の駆動時における温度分布出力V3onとしてRAM43に記憶され、その後ステップS55に進む。
ステップS55(物性状態情報検出手段)において、RAM43の温度分布出力V3onに基づいて、流体の物性に応じた物性状態情報が算出(検出)されてRAM43に記憶され、その後ステップS56に進む。
ステップS56において、RAM43の物性状態情報に対応する物性が、前記判別テーブル情報に基づいて判別され、ステップS57において、その判別結果を示す判別結果情報が図示しない表示装置、通信装置、音声出力装置等に出力されることで、判別結果が通知され、その後処理を終了する。
次に、上述した構成の流体判別装置の動作(作用)の一例を以下に説明する。
流体判別装置によって上述した流体判別処理が実行されると、マイクロヒータ4が駆動される。そして、駆動部50の電流監視部51ヒータからの出力に基づいてヒータ4のヒータ温度Thを検出すると共に、測温抵抗15,16からの出力に基づいて基体2の基体温度Tbを検出する。そして、ヒータ温度Thと基体温度Tbとの温度差ΔTを算出し、該温度差ΔTと標準温度差ΔThoとの第2温度差ΔTgを算出する。
流体温度と基体温度との温度差ΔTgに対応する補正情報に基づいて、右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13から入力される右側温度検出信号及び左側温度検出信号(横側温度信号に相当)を補正し、それらの信号値をマイクロヒータ4の駆動時における温度分布出力V3onとしてRAM43に記憶する。そして、この温度分布出力V3onに基づいて流体の物性に応じた物性状態情報を算出してRAM43に記憶し、この物性状態情報と前記判別テーブル情報とに基づいて流体が判別され、その判別結果を通知する。
以上説明した流体判別装置によれば、フローセンサ1の右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13からの横側温度信号を流体温度と基体温度との温度差に対応した補正情報で補正し、該横側温度信号に基づいて流体の物性状態情報を検出して流体の判別を行うようにしたことから、流体温度とフローセンサ1の基体温度との間に温度差が生じても、その温度差による誤差を解消することができるため、その正確な横側温度信号に基づいて物性状態情報を検出して流体を正確に判別することができる。従って、流体温度と基体温度との間に生じる温度差を正確に把握して、様々な種類の流体に判別の精度を向上させることができる。