JP2007138606A - 制振装置 - Google Patents

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一朗 岩間
Shoichi Yonetani
庄一 米谷
Tetsuo Nishizawa
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Abstract

【課題】 軽量で任意の上下寸法の開口部に容易に対応できる施工性に優れた制振装置の提供。
【解決手段】 四周枠1と制振ダンパー2とを備え、制振ダンパーはダンパー保持板13と変位増幅板11と斜材とを有し、ダンパー保持板は上枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材12a,12b,12a,12bが一端部を上枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略W字形に配置してあり、中間横枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材12c,12d,12c,12dが一端部を中間横枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略逆W字形に配置してあり、変位増幅板は上端部をダンパー保持板の左右方向中央部に連結してあると共に上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあり、ダンパー保持板と変位増幅板の間に制振ゴム15が設けてあり、変位増幅板の下部と下枠との間に2本の斜材12e,12eが逆V字形に架設してある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、地震や強風等による建物の揺れを抑える制振装置に関するものである。
建物の制振装置として、非特許文献1には、壁内の上下の梁と左右の柱とに囲まれた開口部内側の上部にヘッドパネルを、下部にアンダーパネルをそれぞれ設置し、ヘッドパネルの下端部とアンダーパネルの上端部とに軸着してセンターパネルを取付け、ヘッドパネルには高減衰ゴムが組み込まれた制振ダンパーが支持してあり、センターパネルの上端部を制振ダンパーに連結してあり、地震の揺れにより、ヘッドパネルとアンダーパネルの間に左右方向のずれが生ずると、センターパネルが回転してテコの原理によりそのずれを増幅して制振ダンパーに伝え、制振ダンパーが地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、建物の揺れを効果的に抑えられるようにしたものが記載されている。
"MISAWA HYBRID MGEO"、[online]、ミサワホーム株式会社、[平成17年7月15日検索]、インターネット<URL: http://www.misawa.co.jp/kodate/tokutyou/pop-up/h-mgeo/tech01.html>
上記従来の制振装置は、ヘッドパネルやアンダーパネルが大きな鉄板で形成されていて重いため、施工が大変であり、また制振装置を設置する開口部の上下寸法が異なる場合には、アンダーパネル等の形状をその都度変更しなければならず、対応が容易ではなかった。本発明は以上に述べたような実情に鑑み、軽量で、任意の上下寸法の開口部に容易に対応できる、施工性に優れた制振装置の提供を目的とする。
上記の課題を達成するために、請求項1記載の発明による制振装置は、四周枠と制振ダンパーとを備え、四周枠は、左右の柱に固定する左右の竪枠と、上下の横架材に固定する上枠及び下枠と、左右の竪枠の上下方向中間部に架設する中間横枠とからなり、制振ダンパーは、ダンパー保持板と変位増幅板と斜材とを有し、ダンパー保持板は、四周枠内の中間横枠より上側に位置し、上枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を上枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略W字形に配置してあり、中間横枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を中間横枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略逆W字形に配置してあり、変位増幅板は、上端部をダンパー保持板の左右方向中央部に連結してあると共に上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあり、ダンパー保持板と変位増幅板の間に制振ゴムが設けてあり、変位増幅板の下部と下枠との間に2本の斜材が逆V字形に架設してあることを特徴とする。
請求項2記載の発明による制振装置は、四周枠と制振ダンパーとを備え、四周枠は、左右の柱に固定する左右の竪枠と、上下の横架材に固定する上枠及び下枠と、左右の竪枠の上下方向中間部に架設する中間横枠とからなり、制振ダンパーは、ダンパー保持板と変位増幅板と連結板と斜材とを有し、ダンパー保持板は、四周枠内の中間横枠より上側に位置し、上枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を上枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略W字形に配置してあり、中間横枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を中間横枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略逆W字形に配置してあり、変位増幅板は、上端部をダンパー保持板の左右方向中央部に連結してあると共に上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあり、ダンパー保持板と変位増幅板の間に制振ゴムが設けてあり、変位増幅板の下端部に連結板が軸着してあり、連結板の下部と下枠との間に2本の斜材が逆V字形に架設してあることを特徴とする。
請求項1記載の発明による制振装置は、ダンパー保持板をヘッドパネルで支持する代わりに、上枠とダンパー保持板との間に4本の斜材を略W字形に配置し、中間横枠とダンパー保持板との間に4本の斜材を略逆W字形に配置して支持し、尚且つ変位増幅板の下部と下枠との間に2本の斜材を逆V字形に架設することで、アンダーパネルを無くしたので、従来のものと比べて大幅な軽量化を図ることができる。また、制振装置を取付ける開口部の上下方向寸法に合わせて、左右の竪枠材と、変位増幅板と下枠との間に架設する斜材の長さを調節することにより、任意の上下方向寸法の開口部に容易に対応できる。変位増幅板は、下部が下枠に2本の斜材で連結してあり、上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあるので、地震や風による水平荷重が作用して中間横枠が下枠に対して左右方向に変位すると、それに伴って変位増幅板が中間横枠に軸着した軸に引っ張られて傾き、中間横枠の左右方向の変位が変位増幅板の上端部において増幅されるから、ダンパー保持板と変位増幅板の間に設けた制振ゴムにより地震等のエネルギーを効率良く吸収し、建物の揺れを効果的に抑えることができる。
請求項2記載の発明による制振装置は、ダンパー保持板をヘッドパネルで支持する代わりに、上枠とダンパー保持板との間に4本の斜材を略W字形に配置し、中間横枠とダンパー保持板との間に4本の斜材を略逆W字形に配置して支持し、尚且つ変位増幅板の下端部に軸着した連結板と下枠との間に2本の斜材を逆V字形に架設することで、アンダーパネルを無くしたので、従来のものと比べて大幅な軽量化を図ることができる。また、制振装置を取付ける開口部の上下方向寸法に合わせて、左右の竪枠材と、連結板と下枠との間に架設する斜材の長さを調節することにより、任意の上下方向寸法の開口部に容易に対応できる。変位増幅板は、下枠に2本の斜材で固定した連結板に下部が軸着してあり、上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあるので、地震や風による水平荷重が作用して中間横枠が下枠に対して左右方向に変位すると、それに伴って変位増幅板が中間横枠に軸着した軸を支点として回転し、中間横枠の左右方向の変位が変位増幅板の上端部において増幅されるから、ダンパー保持板と変位増幅板の間に設けた制振ゴムにより地震等のエネルギーを効率良く吸収し、建物の揺れを効果的に抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図8は、本発明に係る制振装置の第一実施形態を示している。本制振装置は、図1に示すように、軸組工法の木造住宅の一階部分の壁の内部の、左右の柱3,3と梁5と土台6とで形成される開口部17内に設置したものであり、開口部17の内側に取付ける四周枠1と、四周枠1の内側に組み込まれた制振ダンパー2とを有している。
四周枠1は、左右の柱3,3の対向する側面に固定した左右の竪枠4,4と、梁5の下面に固定した上枠7と、土台6の上面に固定した下枠8と、左右の竪枠4,4の上下方向中間部に架設した中間横枠9とを有している。竪枠4は、図6に示すように、対向する一対の見付壁18,18と、見付壁の枠外周側端部を連結する見込壁19とを有するコ字形断面のアルミ押出形材であり、図5に示すように、見込壁19に形成した縦長孔20からコーチねじ21を打ち込んで柱3に固定してある。上枠7も、図5に示すように、枠内周側が開口したコ字形断面のアルミ押出形材であり、見込壁に形成した円孔から梁5にコーチねじ21を打ち込み、梁5下面に固定している。上枠7は、見付壁18,18の間隔が竪枠4より若干広くなっており、上枠7の左右方向端部の見込壁18,18の間に竪枠4上端部を嵌合させて、室内外方向に貫通するボルト・ナット22aにより上枠7と竪枠4の端部同士を固定している。下枠8は、上枠7と同一の断面形状を有し、下枠8の左右端部に縦枠4の下端部を嵌合し、ボルト・ナット22aで枠の端部同士を固定してある。また下枠8は、図8(a)に示すように、見込壁19の上に鉄製の補強板23を載置してあり、基礎24から立設したアンカーボルト25を下枠8の見込壁19と補強板23に挿通し、アンカーボルト25に螺合した二つのナット26a,26bで見込壁19と補強板23を上下から挟み込んで保持するとともに、図8(b)に示すように、見込壁19と補強板23に形成した円孔から土台6にコーチねじ21を打ち込んで、下枠8を土台6及び基礎24に強固に固定している。さらに下枠8には、開口部を塞ぐように、一対の見付壁18の内側に断面コ字形の下枠補助材27を取付けている。中間横枠9は、図5に示すように、矩形中空断面のアルミ押出形材であり、左右の端部を竪枠4の見付壁18,18の内側に嵌合し、ボルト・ナット22bで固定している。竪枠4の見付壁18に形成したボルトの挿通孔は、図2と図3に示すように、横長孔28となっている。中間横枠9の上壁と下壁には、左右方向の中央部に変位増幅板11を挿通するための四角い孔29が開けてある。
制振ダンパー2は、図1と図2に示すように、四周枠1内の中間横枠9より上側に配置したダンパー保持板13と、上枠7とダンパー保持板13上部との間に略W字形の配置で設けた4本の斜材12a,12b,12a,12bと、中間横枠9とダンパー保持板13下部との間に略逆W字形の配置で設けた4本の斜材12c,12d,12c,12dと、ダンパー保持板13の左右方向中央部に上端部を連結し且つ上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠9の左右方向中央部に軸着した変位増幅板11と、変位増幅板11の下端部と下枠8との間に逆V字形に架設した2本の斜材12e,12eとで構成している。
ダンパー保持板13は、横長の長方形のアルミの板を使用しており、図4に示すように、室内外方向に間隔を置いて2枚配置してあり、2枚のダンパー保持板の間に変位増幅板連結板14が配置してあり、室内外のダンパー保持板13と変位増幅板連結板14との間には制振ゴム15が設けてある。制振ゴム15には、高減衰ゴムを使用している。変位増幅板連結板14は、ダンパー保持板13の左右方向中央部に位置している。
上枠7とダンパー保持板13上部との間の斜材12a,12b,12a,12bは、上端部を上枠7にボルト・ナット22cで軸着し、下端部を2本ずつ交差させてあり、交差した斜材の下端部をダンパー保持板13の上側の角部二箇所にボルト・ナット22dで軸着してある。中間横枠9とダンパー保持板13下部との間の斜材12c,12d,12c,12dは、下端部を中間横枠9にボルト・ナット22eで軸着し、上端部を2本ずつ交差させてあり、交差した斜材の上端部をダンパー保持板13の下側の角部二箇所にボルト・ナット22dで軸着してある。各斜材12a,12b,12c,12dは、矩形中空断面のアルミ押出形材であり、交差する2本の斜材12a,12bと12c,12dのうちの一方の斜材12a,12cは、他方の斜材12b,12dよりも室内外方向の寸法が大きくなっており、図3に示すように、一方の斜材12a,12cの端部に切り欠き部30を設けて他方の斜材12b,12dと交差させている。
変位増幅板連結板14は、ダンパー保持板13から下方に突出しており、図4に示すように、変位増幅板連結板14の下部と変位増幅板11の上端部に室内側と室外側から継ぎ板31を当てがい、4組のボルト・ナット22fでこれらを固定している。変位増幅板11は、図3に示すように、上下方向の略中間の左右方向中央位置に縦長孔32を有しており、図4に示すように、中間横枠9の左右方向中央部に形成した円孔と変位増幅板11の縦長孔32に横軸33を挿通し、変位増幅板11は横軸33により中間横枠9に回転自在に軸着してある。横軸33は、室内側と室外側にネジ部34を突出して有し、両側のネジ部34に座金35を挿通してナット36で締め付けることで中間横枠9に固定している。変位増幅板11は、地震等による水平荷重がかかっていない状態で、縦長孔32の下部に横軸33が位置する高さで配置してある。
変位増幅板11の下端部と下枠8の間に架設する2本の斜材12e,12eは、矩形中空断面のアルミ押出形材であり、上端部は図4に示すように切り欠き部37を設けて変位増幅板11を差し込み、室内外方向の一組のボルト・ナット22gで変位増幅板11と軸着してあり、下端部は下枠8の左右端部の見付壁18,18内側に嵌合し、二組のボルト・ナット22hで下枠8に固定している。
次に、本制振装置を施工する際の手順を、図9−1、図9−2に基づいて説明する。まず、図9−1(a)に示すように、制振装置を取付ける開口部17の左右寸法A、上下寸法B、対角寸法Cを測定する。これらの寸法に基づいて、竪枠4、上枠7、下枠8、中間横枠9の各枠材の長さ、斜材12eの長さと端面の切断角度を決定する。竪枠4は、開口部の上下寸法Aより所定の長さだけ短く、上枠7と下枠8は、開口部の左右寸法Bより所定の長さだけ短くする。アンカーボルト25が基礎に設置されていないときは、所定の位置に設置しておく。次に、図9−1(b)に示すように、アンカーボルト25に通して下枠8と補強板23を土台6の上に配置し、アンカーボルト25のナット26aを仮止めする。次に、図9−1(c)に示すように、左側の柱3と土台6とのコーナー部にスペーサー38を配置した上で、該スペーサー38を介して左側の竪枠4の下端部を下枠8端部の見付壁18,18間に落とし込んで立たせる。次に、図9−1(d)に示すように、右側の竪枠4を、下端部を下枠8右端の見付壁18,18間に差し込むと共に上端部を左側の竪枠4に建て掛けるようにして斜めに配置する。その後、上枠7を右側の竪枠4の背後から斜めに差し込み、図9−1(e)に示すように、上枠7の両側の端面と柱3との隙間にクサビ39を打ち込み、上枠7を仮固定する。次に、右側の柱3と土台6とのコーナー部にスペーサー38を配置した後、右側の竪枠4を起こして立たせる。次に、図9−1(f)に示すように、左右の竪枠4,4と上枠7と下枠8にコーチねじ21を打ち込んで、各枠材を柱3と梁5と土台6にそれぞれ固定し、アンカーボルト25のナット26aを締め付ける。次に、下枠8と上枠7の端部に予め開けておいた円孔40aに合わせて、左右の竪枠4の上下端部にボルト挿通用の孔をドリルで開け、上枠7、下枠8の端部と竪枠4の端部をボルト・ナット22aにより固定する。このように四周枠を開口部に固定したら、スペーサー38とクサビ39を抜き取る。次に、図9−2(g)に示すように、ダンパー保持板13と斜材12a,12b,12c,12dと変位増幅板11とを工場で予め組み立てておいたダンパーユニット41を、上枠7に下方から配置し、上枠7と斜材12a,12bをボルト・ナット22cで固定する。次に、図9−2(h)に示すように、中間横枠9をダンパーユニット41の下方より配置し、ダンパーユニットの斜材12c,12dと中間横枠9をボルト・ナット22eで固定するとともに、中間横枠9と変位増幅板11に横軸33を挿通し、横軸端部のネジ部34にナット36を締め付けて横軸33を固定する。次に、図9−2(i)に示すように、2本の斜材12e,12eの上端部を変位増幅板11にボルト・ナット22gで固定し、2本の斜材12e,12eの下端部を左右に均等に振り分けた後、斜材12e,12eの下端部に下枠8の円孔40bに合わせてボルト挿通孔を4箇所ドリルで孔開けし、斜材12e,12eの下端部をボルト・ナット22hで下枠に固定する。次に、竪枠4の横長孔28の中心めがけて中間横枠9にボルト挿通孔をドリルで孔開けし、図9−2(j)に示すように、中間横枠9の両端部を左右の竪枠4にボルト・ナット22bで固定する。最後に、下枠8に下枠補助材27を取付ける。
以上に述べたように、本制振装置は、ダンパー保持板13と変位増幅板11以外のほとんどの部材をアルミ押出形材で構成してあるので、鉄製のヘッドパネルとアンダーパネルを用いる従来の制振装置と比べて大幅に軽量化でき、施工が容易となるとともに、上枠7とダンパー保持板13との間に略W字形に配置した4本の斜材12a,12b,12a,12bと、中間横枠9とダンパー保持板13との間に略逆W字形に配置した4本の斜材12c,12d,12c,12dと、変位増幅板11の下部と下枠8との間に逆V字形に配置した2本斜材12e,12eにより、面内剛性を効率良く高めることができる。また、四周枠1を構成する各部材と斜材12eの長さを調節することにより、任意の上下方向寸法A、左右方向寸法Bの開口部17に容易に対応できるため、生産コストの削減にもつながる。
アルミ押出形材からなる部材同士の接合部は、接合する二つの部材のうちの一方の部材に予めボルト挿通孔を加工しておき、両部材を所定の位置に配設した後、一方の部材のボルト挿通孔に合わせて他方の部材に現物合わせでボルト挿通孔を加工することで、施工を容易に行えるようにしている。現物合わせでボルト挿通孔を加工するのは、左右の竪枠4の端部と上枠7、下枠8の端部との接合部(計4箇所)、左右の竪枠4と中間横枠9との接合部(計2箇所)、斜材12eの下端部と下枠8との接合部(計4箇所)である。また、ダンパー保持板13と斜材12a,12b,12c,12dと変位増幅板11を工場でユニットとして予め組み立てておくことで、建築現場での施工時間が短縮できるとともに、制振性能を一定に維持しながら寸法誤差吸収することが可能である。
図10は、本制振装置に地震や風による水平荷重Fが掛かったときの変形の様子を示している。地震による水平荷重Fにより建物に層間変位が生じ、上枠7が下枠8に対してX1だけ水平荷重Fの方向に移動し、四周枠1が平行四辺形状に変形したとする。中間横枠9は、上枠7と斜材12a,12b,12c,12dでトラス状に連結してあるとともに、中間横枠9端部を竪枠4に接合しているボルト・ナット22bの竪枠4側のボルト挿通孔が横長孔28となっていることから、上枠7の移動量X1と略同じ量だけ荷重方向に移動する。変位増幅板11は、上下方向の中間部が中間横枠9に横軸33で軸着してあり、下端部が2本の斜材12e,12eで下枠8に連結してあるので、横軸33に引っ張られて荷重方向に傾き、変位増幅板11の上端部の移動量X2は横軸33の移動量X1に対して増幅される。変位増幅板11の上端部は、変位増幅板連結板14と制振ゴム15を介してダンパー保持板13に連結してあり、変位増幅板11上端部の移動に伴って制振ゴム15が変形し、地震のエネルギーを効率良く吸収できる。また本制振装置は、四周枠1に中間横枠9を設けることで面外変形が抑制され、制振ゴム15に入力される水平荷重のロスが小さくなるため、制振ゴム15によるエネルギー吸収の効率を高められる。
さらに本制振装置は、上枠7と中間横枠9の間に斜材12a,12b,12c,12dがトラス状に配設してあり、中間横枠9に軸着した変位増幅板11の下端部と下枠8間に2本の斜材12e,12eが逆V字形に架設してあることで、地震や風による水平荷重Fを四周枠1と斜材12a,12b,12c,12d,12eを通して直接基礎24へ伝達し、軸組に掛かる負担を軽減する働きもある。
図11から図13は、本発明の制振装置の第二実施形態を示している。第一実施形態のものと異なる部分について説明すると、変位増幅板11は、中間横枠9に軸着している横軸33よりも下側が短くカットしてあり、変位増幅板11の下端部に連結板16の上端部が横軸42で回転自在に軸着してある。さらに、連結板16の下部と下枠8との間に2本の斜材12e,12eを架設している。連結板16は、図13に示すように、変位増幅板11の下部を室内外から挟む2枚の板を有し、2枚の連結板16,16と変位増幅板11とを横軸42と座金35とナット36により回転自在に軸着している。2枚の連結板16,16の下部にはスペーサー43を挟み、斜材12eの上端部の切り欠き37に連結板16,16下部を差し込み、ボルト・ナット22gで固定している。
この制振装置の施工手順を説明すると、左右の竪枠4,4と上枠7と下枠8を躯体の開口部17内周に固定し、上枠7にダンパーユニット41を取付け、ダンパーユニット41の斜材12c,12dに中間横枠9を取付けるところまでの手順は、第一実施形態の場合の図9−1(a)〜(f)、図9−2(g)(h)までの手順と同じである。その後、図14(b)に示すように、変位増幅板11の下端部に連結板16を横軸42で軸着する。次に、図14(c)に示すように、連結板16の下部に斜材12eの上端部をボルト・ナット22gで固定する。次に、2本の斜材12e,12eの下端部を左右に均等に振り分けた後、斜材12e,12eの下端部に下枠の円孔40bに合わせてボルト挿通孔を4箇所ドリルで孔開けし、斜材12e,12eの下端部をボルト・ナット22hで下枠8に固定する。次に、竪枠4の横長孔28の中心めがけて中間横枠9にボルト挿通孔をドリルで孔開けし、図14(d)に示すように、中間横枠9の両端部を左右の竪枠4にボルト・ナット22bで固定する。最後に、下枠8に下枠補助材27を取付ける。
図15に示すように、地震や風による水平荷重Fが作用し、上枠7が下枠8に対して左右方向にX1だけ移動すると、中間横枠9もそれと略同じ移動量X1だけ左右方向に移動する。変位増幅板11は、上下方向中間よりも下側の位置で中間横枠9に横軸33で軸着してあり、下端部を連結板16に横軸42で軸着してあり、横軸33は中間横枠9とともにX1だけ移動するが、変位増幅板11と連結板16とは横軸42による軸着部で折れ曲がるために、連結板16側の横軸42はほとんど移動しない。そのため変位増幅板11は、中間横枠9に挿通した横軸33を支点として荷重方向に回転し、横軸33の移動量X1が変位増幅板11の上端部において増幅され、変位増幅板11上端部に連結した変位増幅板連結板14がX2だけ水平荷重Fの方向に移動し、ダンパー保持板13と変位増幅板連結板14の間に設けた制振ゴム15が変形して地震のエネルギーを効率よく吸収する。また本実施形態のものは、変位増幅板11の回転の支点となる横軸33を変位増幅板の上下方向中間よりも下側に設けており、この横軸33と横軸42との間の距離に比較して横軸33から変位増幅板11上端部までの距離が長いため、横軸33の移動量X1がこの両者の距離の比によって増幅されることから、増幅の度合いがより一層高められる。変位増幅板11の、横軸33を挿通する孔を縦長孔32とすることで、変位増幅板11が回転しやすくしている。
第二実施形態のものは、変位増幅板11の下端部と斜材12eとの間に連結板16を設けたことで、変位増幅板11と連結板16とが軸着部で折れ曲がるため、変位増幅板11の下端部に斜材12eの上端部を直接連結した第一実施形態のものと比較して、同じ強さの水平荷重Fが作用した場合に変位増幅板11の回転する量が大きくなり、変位増幅板11による層間変位の増幅度合いも大きくなるため、小さな層間変位でも制振ゴム15が大きく変形して効率よくエネルギー吸収が行われることから、制振性能はより優れている。一方、第一実施形態のものは、連結板16を用いないことで、施工性、コストの面では第一実施形態のものより有利となる。
本発明は、以上に述べた実施形態に限定されない。竪枠、斜材等の断面形状は、適宜変更してもよい。部材同士の接合には、ボルト・ナット以外に、リベット等を用いてもよい。また、変位増幅板連結板を用いることなく、変位増幅板の上端部を直接制振ゴムでダンパー保持板に連結したものであってもよい。本制振装置は、木造住宅に限らず、鉄骨造の建物に用いることもできる。
本発明の第一実施形態に係る制振装置の正面図である。 第一実施形態に係る制振装置の上部を拡大した正面図である。 第一実施形態に係る制振装置上部の縦断面図である。 図2のA−A断面図である。 図2のB−B断面図である。 図2のC−C断面図である。 第一実施形態に係る制振装置の下部を拡大した正面図である。 (a)は図7のD−D断面図であり、(b)は図7のE−E断面図である。 第一実施形態に係る制振装置の施工手順(途中まで)を順に示す正面図である。 第一実施形態に係る制振装置の施工手順(図9−1の続き)を順に示す正面図である。 第一実施形態に係る制振装置に、地震による水平荷重が作用した場合の変形の様子を示す図である。 本発明の第二実施形態に係る制振装置の正面図である。 第一実施形態に係る制振装置の上部を拡大した正面図である。 図12のA−A断面図である。 第二実施形態に係る制振装置の施工手順を、途中から順に示す正面図である。 第二実施形態に係る制振装置に、地震による水平荷重が作用したときの状態を示す正面図である。
符号の説明
1 四周枠
2 制振ダンパー
3 柱
4 竪枠
5 梁(横架材)
6 土台(横架材)
7 上枠
8 下枠
9 中間横枠
11 変位増幅板
12a,12b,12c,12d,12e 斜材
13 ダンパー保持板
15 制振ゴム
16 連結板

Claims (2)

  1. 四周枠と制振ダンパーとを備え、四周枠は、左右の柱に固定する左右の竪枠と、上下の横架材に固定する上枠及び下枠と、左右の竪枠の上下方向中間部に架設する中間横枠とからなり、制振ダンパーは、ダンパー保持板と変位増幅板と斜材とを有し、ダンパー保持板は、四周枠内の中間横枠より上側に位置し、上枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を上枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略W字形に配置してあり、中間横枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を中間横枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略逆W字形に配置してあり、変位増幅板は、上端部をダンパー保持板の左右方向中央部に連結してあると共に上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあり、ダンパー保持板と変位増幅板の間に制振ゴムが設けてあり、変位増幅板の下部と下枠との間に2本の斜材が逆V字形に架設してあることを特徴とする制振装置。
  2. 四周枠と制振ダンパーとを備え、四周枠は、左右の柱に固定する左右の竪枠と、上下の横架材に固定する上枠及び下枠と、左右の竪枠の上下方向中間部に架設する中間横枠とからなり、制振ダンパーは、ダンパー保持板と変位増幅板と連結板と斜材とを有し、ダンパー保持板は、四周枠内の中間横枠より上側に位置し、上枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を上枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略W字形に配置してあり、中間横枠とダンパー保持板との間に、4本の斜材が一端部を中間横枠に軸着し他端部をダンパー保持板に軸着して略逆W字形に配置してあり、変位増幅板は、上端部をダンパー保持板の左右方向中央部に連結してあると共に上下方向中間部の左右方向中央部を中間横枠の左右方向中央部に軸着してあり、ダンパー保持板と変位増幅板の間に制振ゴムが設けてあり、変位増幅板の下端部に連結板が軸着してあり、連結板の下部と下枠との間に2本の斜材が逆V字形に架設してあることを特徴とする制振装置。
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