JP2007135893A - イオントフォレーシス装置および作用側電極ユニット - Google Patents

イオントフォレーシス装置および作用側電極ユニット Download PDF

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Abstract

【課題】薬物イオンを生体に投与するイオントフォレーシス装置であって、薬物の経皮投与をより促進することができる。
【解決手段】薬物イオンを生体に投与するイオントフォレーシス装置10であって、主電源60における、薬物イオンと同じ導電型である第1導電型の端子62に電気的に接続される第1電極部材210、および、薬物を保持し、第1電極部材210により作られる電場内に配される薬液保持部240を有する作用側電極構造体200と、主電源60における、第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子64に電気的に接続される非作用側電極構造体300と、超音波を発振する超音波発振器410、および超音波発振器410から供給された超音波により振動する超音波振動子420を有する振動部400とを備え、超音波振動子420は、作用側電極構造体200の近傍に並設される。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオントフォレーシス装置および作用側電極ユニットに関する。特に本発明は、薬物イオンをイオントフォレーシスにより経皮的に投与するイオントフォレーシス装置、および、これに用いる作用側電極ユニットに関する。
人間または動物の身体の所望部位における皮膚または粘膜などの生体表面(以下、これらをまとめて「皮膚」と称す)に対して、薬物イオンをイオントフォレーシスにより経皮的に投与するイオントフォレーシス装置が知られている。さらに、このイオントフォレーシス装置の第1電極部材上に、振動体もしくは超音波振動体を設けた装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。なお、イオントフォレーシス(iontophoresis)は、イオントフォレーゼ、イオン導入法、イオン浸透療法などと呼ばれることもある。
特許第2788307号 特開平8−252329号公報
上記特許文献に記載されたイオントフォレーシス装置は、皮膚と薬物を投与する側の電極との間に薬物を配しているので、薬物と皮膚、および、薬物と電極、がそれぞれ当接している。したがって、電極上で薬物や水(薬物を溶解するための媒体)が電気分解することにより発生する有害物質が皮膚に熱傷または炎症などを起こす可能性がある。また、このような電気分解反応によって発生する水素ガスや酸素ガスによって、電極と薬物との接触が妨げられることで通電抵抗が大きくなり、薬物イオンの輸率が著しく低下することが懸念される。
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、イオン化した薬物を経皮投与するイオントフォレーシス装置であって、電源における、イオン化した薬物と同じ第1導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、薬物を含む薬液を保持しており、第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部を有する作用側電極構造体と、電源における、第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子に電気的に接続される非作用側電極構造体と、超音波を発振する超音波発振器、および超音波発振器から供給された超音波により振動する超音波振動子を有する振動部とを備える。これにより、作用側電極構造体と当接する皮膚の熱傷または炎症などを防ぐことができるので、薬物イオンを安全に生体へ投与することができる。さらに、超音波振動子が皮膚の内部にキャビテーションを起こすことで角質層のバリアー能を低下させることができるので、薬物イオンの経皮投与をより促進することができる。
また、作用側電極構造体は、さらに、第1電極部材に電気的に接続され、電解液を保持している第1電解液保持部、第1電極部材との間で第1電解液保持部を挟み、第2の導電型のイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン交換膜、および、第2導電型のイオン交換膜との間で薬液保持部を挟み、第1の導電型のイオンを選択的に透過する第1導電型のイオン交換膜をさらに有してもよい。これにより、作用側電極構造体と当接する皮膚の熱傷または炎症などを防ぐことができるだけでなく、安定した通電状態のもとで薬物イオンを投与することができるので、安全かつ効率よく薬物イオンを生体へ投与することができる。
また、非作用側電極構造体は、さらに、電源の端子に電気的に接続される第2電極部材、第2電極部材に電気的に接続され、電解液を保持している第2電解液保持部、第2電極部材との間で第2電解液保持部を挟み、第2電極部材と異なる電気的な極性を有するイオンを選択的に透過する第1導電型のイオン交換膜、第1導電型のイオン交換膜において第2電解液保持部と反対側に配され、電解液を保持している第3電解液保持部、および、第1導電型のイオン交換膜との間で第3電解液保持部を挟み、第2電極部材と同じ電気的な極性を有するイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン交換膜を有してもよい。これにより、非作用側電極構造体と当接する皮膚の熱傷または炎症などを防ぐことができるだけでなく、さらに安定した通電状態のもとで薬物イオンを投与することができるので、安全かつ効率よく薬物イオンを生体へ投与することができる。
また、上記イオントフォレーシス装置において、超音波振動子は、作用側電極構造体の近傍に並設されてもよい。これにより、超音波振動子が作用側電極構造体の上下または内部に配される場合に比べて、作用側電極構造体を振動させることがない。よって、振動によって作用側電極構造体と皮膚との当接状態が不安定になるのを抑えることができる。また、超音波振動子が作用側電極構造体の上下または内部に配される場合に比べて、作用側電極構造体と当接している皮膚に対して振動を伝えるための構成を作用側電極構造体に備えなくてもよいので、作用側電極構造体の構成を所望に選択できる。
また、超音波振動子は、第1電極部材を囲う環状に配されてもよい。これにより、作用側電極構造体と当接する皮膚に対して、超音波振動子より発生する振動をより確実に伝えることができるので、振動による薬物イオンの生体への投与に対する促進効果を大きくすることができる。
また、超音波振動子は、作用側電極構造体に対して着脱可能に取り付けられてもよい。これにより、超音波振動子を作用側電極構造体に装着した状態では、超音波振動子を作用側電極構造体と一体的に取り扱うことができるので、ユーザの操作性が向上する。また、超音波振動子を用いないときには、超音波振動子を作用側電極構造体から取り外すことにより軽量化を図ることができる。
また、上記イオントフォレーシス装置は、超音波振動子に接続された超音波発振器に電力を供給する振動用電源をさらに備えてもよい。これにより、電源が、作用側電極構造体、非作用側電極構造体、および振動部にそれぞれ電力を供給する場合と比べて、電源の容量を小さくすることができる。また、作用側電極構造体および非作用側電極構造体、ならびに振動部を別個に作動させることができる。
また、超音波振動子は、振動吸収材を介して作用側電極構造体に取り付けられてもよい。これにより、振動によって作用側電極構造体と皮膚との当接状態が不安定になるのをさらに抑えることができる。
また、上記イオントフォレーシス装置は、さらに、電源と、電源から作用側電極構造体、非作用側電極構造体および超音波振動子に供給する電力を制御する制御部とを備えてもよい。これにより、作用側電極構造体、非作用側電極構造体、および超音波振動子に供給する電力を、生体の投与部位などによって適切に制御することができるので、さらに安全かつ効率よく薬物イオンを生体に投与することができる。
本発明の第2の形態においては、薬物イオンを生体に投与するイオンフォトレーシス装置における作用側電極ユニットであって、電源における、第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、薬液を保持しており、第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部を有する作用側電極構造体と、超音波を発振する超音波発振器、および超音波発振器から供給された超音波により振動する超音波振動子を有する振動部とを備える。これにより、第1の形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明によれば、作用側電極構造体と当接する皮膚の熱傷または炎症などを防ぐことができるので、薬物イオンを安全に生体へ投与することができる。さらに、超音波振動子が皮膚の内部にキャビテーションを起こすことで角質層のバリアー能を低下させることができるので、薬物イオンの経皮投与をより促進することができる。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態に係るイオントフォレーシス装置10の斜視図である。図2は、イオントフォレーシス装置10の概略側面図である。図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10は、装置本体50、作用側電極構造体200、非作用側電極構造体300、および、上記作用側電極構造体200に並設された振動部400を備える。以下の説明において、正(+)または負(−)の一方の電気的な極性を第1導電型といい、他方を第2導電型という。
作用側電極構造体200は、装置本体50側から、皮膚に装着される場合の皮膚側に向かって、第1電極部材210、第1電解液保持部220、第2導電型のイオン交換膜230、薬液保持部240、および、第1導電型のイオン交換膜250をこの順に有し、上面および側面は、容器260で覆われている。第1電極部材210は、装置本体50に内蔵された主電源60の第1導電型である端子62に電気的に接続されている。
第1電解液保持部220は、第1電極部材210に電気的に接続され、電解液を保持する。この電解液には、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いる。第2導電型のイオン交換膜230は、第1電極部材210との間で第1電解液保持部220を挟み、第2導電型のイオンを選択的に透過する。薬液保持部240は、薬物イオンを含む薬液を保持する。ここで、薬物イオンとは、薬物がイオン解離したアニオンおよびカチオンの一方であって、薬効を担う第1導電型のイオンをいう。第1導電型のイオン交換膜250は、第2導電型のイオン交換膜230との間で薬液保持部240を挟み、第1導電型のイオンを選択的に透過する。
非作用側電極構造体300は、装置本体50側から、皮膚に装着される場合の皮膚側に向かって、第2電極部材310、第2電解液保持部320、第1導電型のイオン交換膜330、第3電解液保持部340、および、第2導電型のイオン交換膜350をこの順に有する。第2電極部材310は、装置本体50に内蔵された主電源60の第2導電型である端子64に接続されている。
第2電解液保持部320は、第2電極部材310に電気的に接続され、電解液を保持する。第1導電型のイオン交換膜330は、第2電極部材310との間で第2電解液保持部320を挟み、第1導電型のイオンを選択的に透過する。第3電解液保持部340は、第1導電型のイオン交換膜330において第2電解液保持部320と反対側に配され、電解液を保持する。第2導電型のイオン交換膜350は、第1導電型のイオン交換膜330との間で第3電解液保持部340を挟み、第2導電型のイオンを選択的に透過する。なお、第2電解液保持部320、および第3電解液保持部340が保持する電解液は、作用側電極構造体200の第1電解液保持部220が保持する電解液と同様に、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いる。
振動部400は、さらに、超音波を発振する超音波発振器410、および、超音波発振器410から供給された超音波により振動する超音波振動子420を有する。振動部400の少なくとも超音波振動子420は、作用側電極構造体200と振動吸収材80で接続されて、作用側電極構造体200を囲う環状に配される。なお、本実施形態において、第1電極部材210および薬液保持部240を有する作用側電極構造体200と、超音波発振器410および超音波振動子420と、作用側電極ユニットを構成する。
制御部70は、主電源60から、作用側電極構造体200、非作用側電極構造体300、および超音波発振器410に接続された超音波振動子420に供給される電力を制御する。この場合に、制御部70は予め記憶されたプログラムに従った制御をしてもよい。
図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10を用いて薬物イオンを生体に投与するにあたっては、作用側電極構造体200の少なくとも第1導電型のイオン交換膜250の外面(図1において並線を施した面)、および振動部400の少なくとも超音波振動子420の一つの面(図1において斜線を施した面)は、生体の投与対象部位に当接される。さらに、非作用側電極構造体300の少なくとも第2導電型のイオン交換膜350の外面(図1において網掛を施した面)は、生体の投与対象部位の周囲あるいは連接した部位に当接される。
このように、イオントフォレーシス装置10の作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300が皮膚と当接した状態で、主電源60から第1電極部材210および第2電極部材310に対して、イオントフォレーシスを適用するための電力が供給される(電圧がかけられる)と、第1電極部材210および第2電極部材310の間に皮膚を介して電流が流れ、通電状態となる。
ここで、薬物イオンがアニオンである場合を例に、図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10の具体的構成について説明する。この場合、第1導電型は負(−)であり、第2導電型は正(+)である。したがって、作用側電極構造体200の第1電極部材210はカソードとなり、非作用側電極構造体300の第2電極部材310はアノードとなる。また、作用側電極構造体200において、第2導電型のイオン交換膜230にはカチオン交換膜を用い、第1導電型のイオン交換膜250にはアニオン交換膜を用いる。また、作用側電極構造体200において、第1導電型のイオン交換膜330にはアニオン交換膜を用い、第2導電型のイオン交換膜350にはカチオン交換膜を用いる。
図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10は、通電状態において、以下の作用効果を奏する。すなわち、作用側電極構造体200では、薬液保持部240が保持する薬液に含まれる薬物イオンは、電気泳動によりカソードである第1電極部材210と反対側(皮膚側)へ移動し、薬液保持部240の皮膚側に配設されて皮膚と当接する第1導電型のイオン交換膜250を透過して速やかに皮膚へ浸透する。これに対し、生体内のカチオンは第1導電型のイオン交換膜250を透過して薬液保持部240側へ移動することがない。したがって、安定した通電状態のもとでイオントフォレーシスにより薬物イオンを生体へ導入することができる。また、薬液保持部240に含まれる、アニオンである薬物イオンと対を成すカチオンは、第1電極部材210側へ移動し、カチオン交換膜である第2導電型のイオン交換膜230を透過して第1電解液保持部220側へ移動する。したがって、通電状態において、薬液保持部240のイオンバランスが崩れないので、pHの変化は生じにくい。故に、通電抵抗が大きくなりにくいので、薬物イオンの輸送効率の低下を抑えることができる。
一方、非作用側電極構造体300では、第3電解液保持部340が保持する電解液に溶解している化合物が水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する化合物であるので、アノードである第2電極部材310において、水の電気分解反応は起こらない。したがって、水の電気分解反応で発生する気泡(酸素ガス)によって、第2電極部材310と第3電解液保持部340の保持する電解液との接触が妨げられることで通電抵抗が大きくなるのを防ぐことができる。
なお、薬物イオンがカチオンである場合は、第1導電型は正(+)であり、第2導電型は負(−)である。したがって、図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10における、第1電極部材210および第2電極部材310の電気的な極性は逆になり、また、第2導電型のイオン交換膜230、第1導電型のイオン交換膜250、第1導電型のイオン交換膜330、および第2導電型のイオン交換膜350の種類(イオン選択特性)はそれぞれ反対のものになる。
図1および図2に示すイオントフォレーシス装置10を用いて薬物イオンの生体への投与を開始すると、イオントフォレーシス装置10の装置本体50に内蔵された主電源60から、制御部70を介して振動部400の超音波発振器410へ電力が供給される。超音波発振器410は、供給された電力を高周波電圧に変換して、超音波振動子420に高周波電圧をかける。超音波振動子420は高周波電圧によって機械的に振動し、超音波振動子420と当設する皮膚に対して超音波振動が伝わる。この超音波振動により、皮膚の内部にキャビテーションが起きる。このキャビテーションは、細胞レベルで生じる無数の陰圧の気泡(空洞)である。この気泡が消滅するときに非常に大きなエネルギーが局所的に発生し、これらエネルギーが角質層に作用することによりバリアー能を低下させるので、薬物イオンの経皮吸収が増大する。
この場合に、振動部400の少なくとも超音波振動子420が、作用側電極構造体200と振動吸収材80で接続されているので、作用側電極構造体200側への振動が伝わらず、作用側電極構造体200の振動が抑えられる。したがって、振動によって作用側電極構造体200と皮膚との当接状態が不安定になるのを抑えることができる。また、イオントフォレーシス装置10において、超音波振動子420が作用側電極構造体200を囲う環状に配されているので、作用側電極構造体200と当接する皮膚に対して、超音波振動子420より発生する超音波振動をより確実に伝えることができる。
図3は、他の実施形態であるイオントフォレーシス装置10の概略側面図である。図3に示すイオントフォレーシス装置10は、図2の構成に加えて、さらに、超音波振動子420に接続された超音波発振器410に電力を供給する振動用電源66を備える。これにより、主電源60は、作用側電極構造体200の第1電極部材210、および非作用側電極構造体300の第2電極部材310に対して電力を供給するために十分な容量であればよいので、主電源60の容量を小さくすることができる。また、作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300、ならびに振動部400が、それぞれ主電源60、ならびに振動用電源66を備えているので、作用側電極構造体200および非作用側電極構造体300、ならびに振動部400を、それぞれ別個に作動させることができる。
図4は、イオントフォレーシス装置10における、超音波振動子420の他の配設形態を示す。図4に示すように、超音波振動子420が複数設けられて、互いに所定の振動モードで振動してもよい。振動モードの例としては、複数の超音波振動子420のすべてが同時に同方向に振動してもよいし、互いに向かい合う超音波振動子420は同位相で振動し、互いに向かい合う超音波振動子420の組同士は逆位相に振動してもよい。また、振動モードの他の例として、時計回りまたは反時計回りに並んだ順に位相をずらして超音波振動子420が振動してもよい。
また、図4に示すように、超音波振動子420を備える振動部400は、振動吸収材80により4カ所で嵌合することで作用側電極構造体200に対して着脱可能に取り付けられる。これにより、振動部400を作用側電極構造体200に装着した状態では、振動部400を作用側電極構造体200と一体的に取り扱うことができるので、ユーザの操作性が向上する。また、振動部400を用いないときには、これを取り外すことにより軽量化を図ることができる。
図5は、イオントフォレーシス装置10における、作用側電極構造体200が振動部400を囲う環状に配される形態を示す。図5に示すように、作用側電極構造体200は、振動部400を囲う環状に配されて振動吸収材80で接合される。これにより、超音波振動子420により振動させた皮膚の近傍において作用側電極構造体200から薬物イオンを生体に投与することができるので、振動による薬物イオンの生体への投与に対する促進効果を大きくすることができる。
図1〜図5に示す実施形態において、イオントフォレーシスを適用するための電圧は、0〜10V程度の直流電圧が好ましく、例えば、低周波治療器のようにパルス電圧をかけたり、また、徐々に電圧を上げたり、あるいは、下げてもよい。体内を流れる電流は0.01〜5mAの範囲が好ましいが、第1電極部材210および第2電極部材310の面積や投与部位、さらには患者の個体差などによって増減させて、痛みや熱感を与えない程度に制御部70が電流を制御する。
また、イオントフォレーシス装置10に適用される薬物イオンとしては、例えば次のようなものがある。正に帯電する薬物イオンとして、麻酔剤(塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど)、胃腸疾患治療剤(塩化カルニチンなど)、骨格筋弛緩剤(臭化バンクロニウムなど)、抗生物質(テトラサイクリン系製剤、カナマイシン系製剤、ゲンタマイシン系製剤)等が挙げられる。負に帯電する薬物イオンとして、ビタミン(以下、Vと略記する)剤(VB、VB12、VC、VE、葉酸など)、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン系水溶性製剤、デキサメサゾン系水溶性製剤、プレドニソロン系水溶性製剤など)、抗生物質(ペニシリン系水溶性製剤、クロウムフェニコール系水溶性製剤)等が挙げられる。
また、主電源60および振動用電源66は、装置本体50に内蔵する形態に限定されず、例えば、電池、定電圧装置、定電流装置、定電圧・定電流装置(ガルバノ装置)など、所望のものでよい。また、振動吸収材80は、例えば防振ゴムなどが適当である。
また、第1電極部材210、および第2電極部材310の電極材は、例えば、炭素、白金などの導電性材料など、薬物イオンの特性に応じて所望のものを用いてもよい。
また、作用側電極構造体200の第1電解液保持部220、非作用側電極構造体300の第2電解液保持部320および第3電解液保持部340は、上記のように、電解液として、水の電気分解反応(水の酸化および還元反応)と比較して水の酸化還元電位より低い酸化還元電位を有する酸化および還元しやすい化合物が溶解した溶液を用いることが好ましい。例えば、第一硫酸鉄(FeSO)と第二硫酸鉄〔Fe(SO〕の混合水溶液、アスコルビン酸ナトリウム水溶液、乳酸およびフマル酸ナトリウムの混合水溶液、などが挙げられる。また、これら電解液の保持形態は、例えば、ゲルや、所望の媒体(ガーゼ、吸水性高分子材料など)に含浸させたタイプのものや、電解液をそのまま保持する溶液タイプのものなどであってもよい。
また、アニオン交換膜は、例えば、高分子の側鎖に四級化されたアンモニウム基を有するもの、カチオン交換膜としては、例えば、高分子の側鎖にスルホン酸基を有するものなど所望のものでよく、これらは薬物イオンの種類などによって適宜組み合わせてもよい。
また、超音波発振器410は、帰還発振方式、あるいは周波数自動追尾方式と呼ばれるものでよく、本実施形態では、制御部70が超音波発振器410の機能の一部または全部を代替してもよい。また、超音波振動子420は、例えばピエゾ素子などのような、圧電または磁歪材料に20〜500kHzの高周波電圧を作用させることによって、超音波の機械的振動に変換するものでよい。
また、容器260および容器360は、非イオン伝導性および電気絶縁性を有し、さらに、可塑性、柔軟性、可撓性、および形状保持性の少なくとも一つを有する材料にて作製されるのが望ましい。例えば、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、およびこれらの素材の共重合体などが適当である。
また、作用側電極構造体200の少なくとも第1導電型のイオン交換膜250の外面、振動部400の少なくとも超音波振動子420の一つの面、および非作用側電極構造体300の少なくとも第2導電型のイオン交換膜350の外面を、それぞれ生体に当接させる手段は、例えば、装置本体50を手で持って皮膚に押し当てて当接させる、あるいは、粘着剤などで皮膚に貼り付ける、など所望の手段を用いてもよい。
以上、本実施形態によれば、イオントフォレーシス装置10において、振動部400の少なくとも超音波振動子420が、作用側電極構造体200と振動吸収材80で接続されているので、作用側電極構造体200側への振動が伝わらず、作用側電極構造体200の振動が抑えられる。したがって、振動によって作用側電極構造体200と皮膚との当接状態が不安定になるのを抑えることができる。また、イオントフォレーシス装置10において、超音波振動子420が作用側電極構造体200を囲う環状に配されているので、作用側電極構造体200と当接する皮膚に対して、超音波振動子420より発生する振動をより確実に伝えることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
本発明の実施形態に係るイオントフォレーシス装置10の斜視図である。 イオントフォレーシス装置10の概略側面図である。 他の実施形態であるイオントフォレーシス装置10の概略側面図である。 イオントフォレーシス装置10における、超音波振動子420の他の配設形態を示す。 イオントフォレーシス装置10における、作用側電極構造体200が振動部400を囲う環状に配される形態を示す。
符号の説明
10 イオントフォレーシス装置、50 装置本体、60 主電源、62 端子、64 端子、66 振動用電源、70 制御部、80 振動吸収材、200 作用側電極構造体、210 第1電極部材、220 第1電解液保持部、230 第2導電型のイオン交換膜、240 薬液保持部、250 第1導電型のイオン交換膜、260 容器、300 非作用側電極構造体、310 第2電極部材、320 第2電解液保持部、330 第1導電型のイオン交換膜、340 第3電解液保持部、350 第2導電型のイオン交換膜、360 容器、400 振動部、410 超音波発振器、420 超音波振動子

Claims (11)

  1. イオン化した薬物を経皮投与するイオントフォレーシス装置であって、
    電源における、イオン化した前記薬物と同じ第1導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、前記薬物を含む薬液を保持しており、前記第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部を有する作用側電極構造体と、
    前記電源における、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子に電気的に接続される非作用側電極構造体と、
    超音波を発振する超音波発振器、および前記超音波発振器から供給された超音波により振動する超音波振動子を有する振動部と
    を備えるイオントフォレーシス装置。
  2. 前記作用側電極構造体は、
    前記第1電極部材に電気的に接続され、電解液を保持している第1電解液保持部、
    前記第1電極部材との間で前記第1電解液保持部を挟み、前記第2の導電型のイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン交換膜、および、
    前記第2導電型のイオン交換膜との間で前記薬液保持部を挟み、前記第1の導電型のイオンを選択的に透過する第1導電型のイオン交換膜
    をさらに有する請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
  3. 前記非作用側電極構造体は、
    前記電源の前記端子に電気的に接続される第2電極部材、
    前記第2電極部材に電気的に接続され、電解液を保持している第2電解液保持部、
    前記第2電極部材との間で前記第2電解液保持部を挟み、前記第2電極部材と異なる電気的な極性を有するイオンを選択的に透過する第1導電型のイオン交換膜、
    前記第1導電型のイオン交換膜において前記第2電解液保持部と反対側に配され、電解液を保持している第3電解液保持部、および、
    前記第1導電型のイオン交換膜との間で前記第3電解液保持部を挟み、前記第2電極部材と同じ電気的な極性を有するイオンを選択的に透過する第2導電型のイオン交換膜
    を有する請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
  4. 前記超音波振動子は、前記作用側電極構造体の近傍に並設される請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
  5. 前記超音波振動子は、前記第1電極部材を囲う環状に配される請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
  6. 前記第1電極部材は、前記超音波振動子を囲う環状に配される請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
  7. 前記超音波振動子は、前記作用側電極構造体に対して着脱可能に取り付けられる請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
  8. 前記超音波振動子に接続された前記超音波発振器に電力を供給する振動用電源をさらに備える請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
  9. 前記超音波振動子は、振動吸収材を介して前記作用側電極構造体に取り付けられる請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
  10. 前記電源と、
    前記電源から前記作用側電極構造体、前記非作用側電極構造体および前記超音波振動子に供給する電力を制御する制御部と
    をさらに備える請求項1から9のいずれかに記載のイオントフォレーシス装置。
  11. 薬物イオンを生体に投与するイオンフォトレーシス装置における作用側電極ユニットであって、
    電源における、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の端子に電気的に接続される第1電極部材、および、前記薬液を保持しており、前記第1電極部材により作られる電場内に配される薬液保持部を有する作用側電極構造体と、
    超音波を発振する超音波発振器、および前記超音波発振器から供給された超音波により振動する超音波振動子を有する振動部と
    を備える作用側電極ユニット。
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