JP2007134496A - 薄膜トランジスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 活性層としてアモルファス酸化物半導体を用いても、高いオンオフ比を安定して実現することができる薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】 薄膜トランジスタは、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In、Fe、GaまたはAl。m=1以上50未満の整数)を含有する活性層13と、この活性層13に接し、仕事関数の絶対値が4.5〜4.9eVの範囲であるソース電極14およびドレイン電極15とを備えたことを特徴とする。ソース電極14およびドレイン電極15は、クロム、鉄、モリブデン、タングステン、銅、ルテニウムおよびレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アモルファス酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに関する。
近年、情報機器用のフラットディスプレイの普及が目覚しい。このうち液晶ディスプレイは、液晶の光シャッター機能によりバックライトの光をオン/オフ制御し、カラーフィルターを用いて色彩を得る。これに対し、有機ELディスプレイ(あるいは有機LEDディスプレイ)は、各画素が個々に発光(すなわち、自発光)するため、視野角が広いという利点があるばかりでなく、バックライトが不要であることから薄型化が可能になり、かつフレキシブルな基板上に形成が可能である等の多くの利点を持っている。よって、有機ELディスプレイは次世代のディスプレイとして期待されている。
これらのディスプレイパネルの駆動方式は、大別して2つの種類に分けることができる。第一の駆動方式は、パッシブマトリックス型(あるいは、デューティー駆動方式、単純マトリックス方式)と呼ばれているものである。これは、複数のストライプ電極が行と列にマトリックス状に組み合わされ、行電極と列電極のそれぞれの交点に位置する画素を行電極と列電極に加えた駆動信号により発光させる。発光制御のための信号は、通常、行方向には1行毎に時系列で走査され、同一行の各列には同時に印加される。各画素には通常はアクティブ素子を設けず、行の走査周期のうち各行のデューティー期間にのみ発光制御するようにした方式である。
第二の駆動方式は、各画素にスイッチング素子を持ち、行の走査周期内にわたって発光が可能なアクティブマトリックス型と呼ばれるものである。例えば、100行×150列のパネル全面を100Cd/m2の表示輝度で発光させる場合を想定する。この場合、アクティブマトリックス型では各画素は基本的に常時発光しているため、画素の面積率や各種の損失を考慮しない場合には、100Cd/m2で発光させれば良い。しかし、パッシブマトリックス型で同じ表示輝度を得ようとすると、各画素を駆動するデューティー比が1/100になり、そのデューティー期間(選択期間)のみが発光時間となるため、発光時間内の発光輝度を100倍の10000Cd/m2とする必要がある。
ここで、発光輝度を増すためには発光素子に流す電流を増大させればよい。しかし、例えば有機EL発光素子においては電流を増大させるとともに発光効率が低下することが知られている。この効率の低下により、アクティブマトリックス型の駆動方式とパッシブマトリックス型の駆動方式を同じ表示輝度で比較した場合、パッシブマトリクス型では相対的に消費電力が大きくなる。また、有機EL素子に流す電流を増すと、発熱等による材料の劣化が生じやすく、表示装置の寿命が短くなるという不都合がある。一方、これらの効率及び寿命の観点から最大電流を制限すると、同じ表示輝度を得るために発光期間を長くする必要が生じる。しかしながら、パッシブマトリックス型駆動方式での発光時間を定めるデューティー比はパネルの行数の逆数であることから、発光期間の延長は、表示容量(駆動ライン数)の制限に結びつく。これらの点から、大面積、高精細度のパネルを実現するにはアクティブマトリックス型の駆動方式を用いる必要があった。通常のアクティブマトリックス駆動の基本回路は、スイッチング素子として薄膜トランジスタを用いた方式が知られている。
大面積、高精細度に適したアクティブマトリックス型の駆動方式では、画素のスイッチング素子としてポリシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT)が最も広く用いられている。しかしながら、例えば、ポリシリコンを用いるTFTを形成するプロセス温度は少なくとも250℃以上の高温であり、フレキシブルなプラスチック基板を用いることが困難である問題点がある。
また、室温で作製できる薄膜トランジスタとして有機薄膜トランジスタを用いることが検討されている。しかしながら、有機薄膜トランジスタの場合、高い移動度が得られるといわれているペンタセンでも、その移動度は高々1cm2/Vs程度であり有機EL素子を駆動するのに十分ではない。さらに、ペンタセン膜は多結晶体であるために、ディスプレイを駆動するために一番重要となる面内均一性に問題を抱えている。
こういった従来のディスプレイパネルが有する種々の問題点に対処するため、最近アモルファス酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタが提案されている。例えば、特許文献1には、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In、Fe、Ga、Al。m=1以上50未満の整数)膜を用いた電界効果トランジスタ(FET)が開示されている。また、非特許文献1には、室温で作製したInGaZnO4膜を用いたトランジスタが電界効果移動度8cm2/Vsを得たことが開示されている。この開示によれば、全ての製造プロセスを150℃以下で行うことが可能であり、プラスチック基板を用いることが可能となる。
特開2004−103957号公報 ノムラ、外5名,「アモルファス酸化物半導体を用いた透明フレキシブル薄膜トランジスタの室温製作」,ネイチャ(Nature),2004年11月25日、第432巻、p.488−492
しかしながら、このような薄膜トランジスタにおいては以下の問題があった。即ち、酸化物半導体として用いられる物質は、上記ホモロガス化合物InMO3(ZnO)mを含め、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなど全てn型半導体である。このため、薄膜トランジスタとして低いオフ電流を達成するためには、ソース電極およびドレイン電極としてp型伝導性を示す物質を使う必要がある。ところが、p型伝導性を示す酸化物半導体は作製することが難しく、オフ電流を低く維持することが困難であった。よってオフ電流に対するオン電流の比率(オンオフ比)が低いという問題があった。
そこで本発明は、上述の問題点に鑑み、活性層としてアモルファス酸化物半導体を用いても、高いオンオフ比を安定して実現することができる薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る薄膜トランジスタは、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In、Fe、GaまたはAl。m=1以上50未満の整数)を含有する活性層と、この活性層に接し、仕事関数の絶対値が4.5〜4.9eVの範囲であるソース電極およびドレイン電極とを備えたことを特徴とする。
ホモロガス化合物InMO3(ZnO)mを活性層として用いた際には、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値が小さいほどオン電流が高くなり、大きいほどオフ電流が低くなる傾向があり、オンオフ比は最大でも約200であったが、驚くべきことに仕事関数の絶対値が4.4〜4.9evの範囲の場合に限り、オンオフ比が約500以上と飛躍的に向上した。
仕事関数の絶対値が4.4〜4.9eVの範囲である物質として、クロム(Cr)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)等が挙げられる。よって、ソース電極およびドレイン電極として、これらの物質のうち少なくとも1つを含有することで、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値を上記の範囲に制御することができる。
本発明によれば、活性層としてアモルファス酸化物半導体を用いても、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値を所定の範囲に制御することによって、高いオンオフ比を安定して実現する薄膜トランジスタを提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る薄膜トランジスタの実施形態について説明する。図1は、本発明に係る薄膜トランジスタの構成の一例を示す断面図である。図1に示すように、この薄膜トランジスタは、基板10上に、ゲート電極11、ゲート絶縁膜12、活性層13が順次形成されている。そして、活性層13の表面にソース電極14およびドレイン電極15が形成されている。
基板10としては、各種のガラス基板の他、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)などの高分子フィルムを用いることができる。
ゲート電極11に用いる金属については、いずれの金属も適用可能であるが、材料コスト、薄膜形成のしやすさ、基板への密着性、大気中での安定性などを勘案して決定される。以上の観点から望ましい金属としては、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンなどが挙げられるが、それらに限定するものではない。
ゲート電極11は、真空蒸着法、スパッタ法などにて容易に形成することができる。また必要に応じてシャドウマスクやフォトプロセスによりパターニングすることができる。例えば、予めフォトレジストで面積を限定しその後フォトレジストを剥離するか、あるいは、薄膜形成後、フォトレジストを塗布し、露光現像後、適切なエッチング液等により不要部分を除去することで可能である。
ゲート絶縁膜12としては、二酸化ケイ素や、アルミニウム、タンタル、チタン、ストロンチウム、バリウム等の金属の酸化物、これら金属の陽極酸化膜、これら金属の混合酸化物を用いることができる。ゲート絶縁膜12の薄膜形成およびパターニングは、ゲート電極11と同様に、反応性蒸着やスパッタおよびフォトリソグラフにより容易に行うことができる。また、ゲート電極11の金属を大気中酸化や陽極酸化などの方法で酸化することによっても形成できる。
また、ゲート絶縁膜12としては、例えばポリスチレン、ポリビニールアルコール、ポリビニールフェノール、アクリルなどのポリマー材料も用いることができる。これらの材料薄膜は適当な溶剤に溶解して塗布することにより得ることができる。金属酸化物は高分子材料に比して誘電率が高い材料が多く、トランジスタを比較的低電圧で駆動することができるという特徴を有する。これに対し高分子材料は比較的誘電率が低いため、高速応答性が良いという特徴がある。また、高分子材料中に高誘電率の酸化物粒子を分散することにより薄膜の実効誘電率を上げることも可能である。
活性層(アモルファス酸化物半導体膜)13としては、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In、Fe、Ga、Al。m=1以上50未満の整数)を用いる。アモルファス酸化物半導体膜は、スパッタ法、レーザーアブレーション法により形成することができるが、これに限定されるものではなく、様々な製膜方法が適用可能である。また、フォトリソグラフ、シャドウマスクなどを用いて容易にパターニングすることができる。活性層の厚さは10〜1000nmの範囲が好ましい。
ソース電極14およびドレイン電極15としては、仕事関数の絶対値が4.4〜4.9eVの範囲であるクロム、鉄、モリブデン、タングステン、銅、ルテニウム、レニウム等の金属を用いることができる。これら金属をスパッタ法や真空蒸着法などにより形成することで、仕事関数の絶対値が4.4〜4.9eVの範囲のソース電極14およびドレイン電極15を形成することができる。なお、電極の仕事関数の絶対値が4.4〜4.9eVの範囲であれば、上記の金属を2以上含む合金としてもよいし、上記の金属とこれら以外の金属との合金としてもよい。
なお、より好ましい仕事関数の絶対値は4.5〜4.6eVの範囲であり、特にクロムおよび銅を用いることが好ましい。ソース電極14およびドレイン電極15は、フォトリソグラフ、シャドウマスクなどを用いて容易にパターニングすることができる。また必要により、ソース電極14とドレイン電極15を別々の金属から形成することもできる。
ソース電極14およびドレイン電極15の厚さは10〜1000nmの範囲が好ましい。ソース電極14とドレイン電極15の間のチャネル領域としては、チャネル長さ(ソース電極14とドレイン電極15の距離)を1〜100μm、チャネル幅(ソース電極14およびドレイン電極15の幅)を1〜1000μmとすることが好ましい。
なお、図1では、薄膜トランジスタの構造として、ゲート電極11が最下層にあり、ソース電極14およびドレイン電極15が最上層となるボトムゲート構造を示したが、この構造に限定されず、最上部にゲート電極のあるトップゲート構造や、SIT等の縦型構造などの公知の様々な構造に対して本発明は適用可能である。
(実施例1)
基板として、厚さ100nmの熱酸化膜がついたシリコンウエハを用いた。用いたシリコンウエハはハイドープしたp型でありゲート電極として機能し、また熱酸化膜はゲート絶縁膜として機能する。この熱酸化膜上に、酸化物半導体としてInGaZnO4のアモルファス膜を200nmの厚さで形成した。InGaZnO4のアモルファス膜は、InGaZnO4ターゲットを用い、アルゴンガス下、2Paの真空度にて高周波マグネトロンスパッタ法にて形成した。
次に、ソース電極およびドレイン電極として銅の蒸着膜をシャドウマスク法により形成し、実施例1の試料を得た。なお、ソース電極とドレイン電極の厚さは80nm、ソース電極とドレイン電極の間のチャネル領域はチャネル長さ50μm、チャネル幅2mmとした。上記の成膜に用いた蒸着装置は拡散ポンプ排気で、蒸着は4×10-4Pa(3×10-6torr)の真空度で行った。また、蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度はそれぞれ10nm/sec、0.4nm/secで行った。なお成膜時の基板温度は室温とした。
(実施例2)
ソース電極およびドレイン電極として、クロム膜を電子線蒸着法にて形成した以外は実施例1と同様にして実施例2の試料を得た。
(比較例1)
ソース電極およびドレイン電極として、金膜を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1の試料を得た。
(比較例2)
ソース電極およびドレイン電極として、アルミニウム膜を用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の試料を得た。
(比較例3)
ソース電極およびドレイン電極として、白金膜を用いた以外は実施例1と同様にして比較例3の試料を得た。
実施例1、2および比較例1〜3の各試料を作製する過程で、ソース電極とドレイン電極の仕事関数の絶対値を理研計器製FAC−1、AC−2を用いて測定した。また、これら各試料の電界効果トランジスタ特性(ドレイン電流)を微小電流計6487(ケースレー社製)を用いて測定し、ゲート電圧−ドレイン電流特性から飽和領域における電荷移動度を算出した。以上の結果を表1に示す。また、ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値を横軸にとった時のFET特性を図2に示す。なお、各試料ではそれぞれnチャンネル型のトランジスタ動作が確認された。
Figure 2007134496
表1に示すように、FAC−1で測定したソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値の値は、用いた金属の一般に報告されている値とほぼ一致していた。また、表1および図2に示すように、この仕事関数の絶対値が小さいほどオン電流、オフ電流ともに大きくなる傾向があった。
ソース電極およびドレイン電極として仕事関数の絶対値が4.5eV未満のアルミニウムを用いた比較例2ではオンオフ比が30であり、仕事関数の絶対値が4.9eVを超える金、白金を用いた比較例1、3もオンオフ比が235、124と低かった。一方、仕事関数の絶対値が4.65ev、4.5eVの銅、クロムを用いた実施例1、2は、485、1143と非常に高いオンオフ比が得られた。なお、実施例1、2の飽和移動度は5cm2/Vs以上と高かった。
本発明に係る薄膜トランジスタの構成の一例を示す断面図である。 ソース電極およびドレイン電極の仕事関数の絶対値に対する飽和移動度、ドレイン電流、オンオフ比の各変化を示すグラフである。
符号の説明
10:基板
11:ゲート電極
12:ゲート絶縁膜
13:活性層
14:ソース電極
15:ドレイン電極

Claims (2)

  1. ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In、Fe、GaまたはAl。m=1以上50未満の整数)を含有する活性層と、この活性層に接し、仕事関数の絶対値が4.5〜4.9eVの範囲であるソース電極およびドレイン電極とを備えた薄膜トランジスタ。
  2. 前記ソース電極および前記ドレイン電極が、クロム、鉄、モリブデン、タングステン、銅、ルテニウムおよびレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
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