JP2007126726A - 電着塗装における通電方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塗料槽の電極と同槽内に浸漬された被塗装物との間で印加された電圧下、電着塗装に必要な時間の間、通電する方法において、
印加電圧として初期の最小値から最終の最大値までの間で順に増大する幾つかの電圧値を予め定め、且つ、定められた順に増大する幾つかの印加電圧値に到達するまでの昇圧通電時間、並びに、到達した当該電圧値をほぼ一定に暫時維持する定圧通電時間をそれぞれ予め設定し、そして、
設定された昇圧通電時間及び定圧通電時間に基づく制御に従い、印加電圧を初期の最小値から最終の最大値まで各々の設定値に段階的に上昇させながら上記の通電を為すことを特徴とする、電着塗装における通電方法。
【選択図】なし
Description
V)から、最終の最大値(Vmaxp)まで、ほぼ一直線に昇圧される。そしてその後、印加電圧(Vp)は、この最大値Vmaxpにて所定の時間維持され、被塗装物に対して所定の厚
さの塗膜が電着した後、0まで急速に低下される。こうして通電の停止により、電着塗装は完了する(通電時間:Tp)。
而して電着塗装において、生産性の一層の向上のためには、被塗装物、例えば自動車ボディーに対して所定の膜厚は確保された上で、通電時間を短縮し、それによりタクトアップを図ることが求められる。被塗装物に電着される塗料の膜厚は、電極と被塗装物との間で印加された電圧と、その際の通電電流値、及び通電時間の積により、すなわちクーロン量により決定される。印加電圧の最大値をより高くすると、通電電流値もより高くなり、結果として通電時間を短縮することが可能になる。
ところで、かかる通電方法の提案例としては、例えば以下2つの特許文献が挙げられる。このうち特許文献1は、ワークの表面積と塗装すべき塗膜の厚さとによって必要クーロン量を決め、塗装中クーロン量を計測しながら前記必要クーロン量に達するまで通電して塗膜を形成させる電着塗装方法を記載している。そして、特許文献2は、被塗装物に所定の積算通電量を行う電着塗装方法において、第一次通電として前記積算通電量の5〜50%を被塗装物に通電し、1〜60秒間被塗装物への通電を停止した後、第二次通電として前記積算通電量のうち残りの通電量を被塗装物に通電することを特徴とする電着塗装方法を記載している。
すなわち、本発明の第一の態様は、
塗料槽の電極と同槽内に浸漬された被塗装物との間で印加された電圧下、電着塗装に必要な時間の間、通電する方法において、
印加電圧として初期の最小値から最終の最大値までの間で順に増大する幾つかの電圧値を予め定め、且つ、定められた順に増大する幾つかの印加電圧値に到達するまでの昇圧通電時間、並びに、到達した当該電圧値をほぼ一定に暫時維持する定圧通電時間をそれぞれ予め設定し、そして、
設定された昇圧通電時間及び定圧通電時間に基づく制御に従い、印加電圧を初期の最小値から最終の最大値まで各々の設定値に段階的に上昇させながら上記の通電を為すことを特徴とする、電着塗装における通電方法に関する。
本発明の第二の態様は、
上記の段階的に上昇する各々の印加電圧値及び昇圧通電時間は、塗装時に通電される電流の電流値が、当該電着塗装装置において通電可能な上限の電流値を超えない範囲で、なるべくより高い水準に保たれるように設定されていることを特徴とする、第一の態様に記載の通電方法に関する。
本発明の第三の態様は、
上記の定圧通電時間は、塗装時における通電電流値の経時グラフにおいて、幾つかのピークを持つ波形曲線が表れるように設定されていることを特徴とする、第一の態様又は第二の態様に記載の通電方法に関する。
本発明の第四の態様は、
バッチ式電着塗装装置を用いた電着塗装において使用される第一の態様ないし第三の態様のうちいずれか一の態様に記載の通電方法に関する。
本発明の第五の態様は、
スリッパーディップ式電着塗装装置を用いた一段目の電着塗装において使用される第一の態様ないし第三の態様のうちいずれか一の態様に記載の通電方法に関する。
また、本発明の第六の態様は、
塗料槽の電極と同槽内に浸漬された被塗装物との間で印加された電圧下、電着塗装に必要な時間の間、通電する装置において、
上記通電の制御装置が備えられ、
該通電制御装置には、印加電圧として初期の最小値から最終の最大値までの間で順に増大する幾つかの電圧値が予め定められ、且つ、定められた順に増大する幾つかの印加電圧値の各々のについて、当該電圧値の前のより低い電圧値から当該電圧値に到達するまでの昇圧通電時間、並びに、到達した当該電圧値をほぼ一定に暫時維持する定圧通電時間がそれぞれ予め設定されており、そして、
該通電制御装置の運転により、設定された昇圧通電時間及び定圧通電時間に基づいて、印加電圧を初期の最小値から最終の最大値まで各々の設定値に段階的に上昇させながら上記通電の制御を為すことができるようになっていることを特徴とする、電着塗装における通電装置にも関する。
また、各々の印加電圧値及び昇圧通電時間を、塗装時に通電される電流の電流値が、当該電着塗装装置において通電可能な上限の電流値を超えない範囲で、なるべくより高い水準に保たれるように設定することによって、最終の印加電圧値をより一層高い水準に設定することができ、これにより、通電時間をより短縮し得るという効果を奏する。
さらに、定圧通電時間が、塗装時における通電電流値の経時曲線グラフにおいて、幾つ
かのピークを持つ波形曲線が表れるように設定されることにより、電着塗料の泳動性が高まり、もって、外板よりも塗装されにくい被塗装物の内板にまで塗料が均一に電着され得るという利点を有する。
また、本発明においては、印加電圧が前述の予め定められた印加電圧値のとおりに最小値から最大値に到達するまでの間において、昇圧通電時間及び定圧通電時間が予め設定される。昇圧通電時間は、予め定められたある印加電圧値から、その次に定められた印加電圧値までの昇圧に要する時間を指す。定圧通電時間は、到達した印加電圧値をほぼ一定に暫時維持する時間を指す。昇圧された印加電圧値をほぼ一定にしばらく維持することは、昇圧通電時間の間において上昇した通電電流値の更なる上昇を抑え、又はそれを一時的に降下させるという効果を奏し、これにより、通電電流値を、通電可能な上限の値を超えないように制御することができる。通電時間の短縮という観点から、定圧通電時間はより短いことが望ましいが、あくまで通電電流値の上昇の抑制効果を生じる範囲内において暫時の時間が定められる。定圧通電時間の間、印加電圧値もまた、前記の効果を奏する範囲内においてほぼ一定に維持されていればよく、例えば、定圧通電時間の間、やや上昇又はやや低下してもよいし、上昇と下降を繰り返してもよい。また、定圧通電時間は、通電電流値の経時グラフにおいて、幾つかのピークを持つ波形曲線が表れるように設定されていることがより望ましい。つまり、昇圧通電時間の間において上昇した通電電流値が、定圧通電時間の間において降下することによって、前記経時グラフにおいて山なりの曲線を描くように定圧通電時間が設定される。ただし、通電時間の短縮を大きく妨げるほどに、通電電流値が低下するような設定であってはならない。このように、定圧通電時間が、幾つかのピークを持つ波形曲線が表れるように設定されることにより、電流値変動に合せて電着塗料がより良好に泳動するので、比較的電着されにくい被塗装物の内板部にまで電着され易くなるという効果が得られる。
本発明において好ましくは、上昇する各々の印加電圧値及び昇圧通電時間は、塗装時に通電される電流の電流値が、当該電着塗装装置において通電可能な上限の電流値を超えない範囲で、且つ、なるべくより高い水準に保たれるように設定される。これによって、クーロン量をより一層高め得るため、通電時間をさらに短縮することが可能となる。
以上のように、本発明においては、通電時間には、昇圧通電に続いて定圧通電を為すことによって、つまり、予め設定された昇圧通電時間と定圧通電時間とが交互に経過されながら、印加電圧がその最小値から最大値まで段階的に昇圧される。そして、昇圧通電時間の間において通電電流値が上昇するが、これに続く定圧通電時間の間において、上昇した
通電電流値の上昇は抑制され得るため、塗装時に通電される電流値が当該電着塗装装置において通電可能な上限の電流値を超えないように制御することができ、よって、最大印加電圧値を従来の通電方法におけるそれよりもより高い水準にまで上げることが出来る。したがって、電着塗装における通電時間を効果的に短縮することができる。
本発明はまた、電着塗装において上記の条件に従い通電を行い、及び該通電を制御するための通電装置にも関する。通電装置は、電圧を印加し通電を行うための直流電源装置及び該通電を制御し得る通電制御装置を備える。通電制御装置としては、具体的には電圧設定器、例えばプログラム式の電圧設定器を挙げることができ、本発明の通電方法を実施する通電制御装置を用いることにより、上述したような、通電の間の幾つかの電圧値が予め定められ、さらに、幾つかの印加電圧値につき各々の昇圧通電時間及び定圧通電時間が設定され、そしてこの通電制御装置の運転により、印加電圧が設定通りに昇圧及び定圧を繰り返して段階的に上昇して通電が行われる。
可能な上限の電流値とする。
図1に示す通電方法においては、本発明に従い印加される印加電圧(図中の実線Vi)
は、例えば、初期の最小値(0V)から最終の最大値(Vmaxi)まで、増大する順に各々V1、V2、V3、V4、及びVmaxiの5段階に予め定められている。そして、各々の印加電圧値に順に到達するまでの各昇圧通電時間を、S1、S2、S3、S4、Smaxiにそれぞれ設定する。さらには、本発明においては、各段階の印加電圧値をそれぞれほぼ一定に暫時維持するための定圧通電時間H1、H2、H3、H4、及びHmaxiをも設定する。各々の印加電圧の設定は例えば、既設の直流電源装置をアナログ入力で電圧設定できるようにするため、プログラム式電圧設定器を設置し、そして直流電源装置にアナログ信号を送信することにより為され得る。他方、従来の通電方法においては、印加電圧は、最終の最大値(Vmaxp)まで、一段階で、ほぼ直線的に昇圧するように設定されている。通電を開始すると、本発明に従う印加電圧(Vi)は、上記設定の制御に従い、まずは初期の最小値(0V)
から、第一段階の電圧値V1まで、昇圧通電時間S1をかけて昇圧する。次に、印加電圧(Vi)は、このV1値において、定圧通電時間H1の間その数値が一定に維持される。そし
て定圧通電時間H1が経過後、印加電圧(Vi)は、今度は第二段階目の電圧値V2まで、
昇圧通電時間S2をかけて昇圧し、そしてその後、定圧通電時間H2の間、この電圧値V2
にて維持される。この後、印加電圧(Vi)は、第三段階の電圧値V3、第四段階の電圧値V4、及び第五段階のVmaxiまで、設定されたとおりに、S3、S4、及びSmaxiの昇圧通
電時間、並びに、H3、H4、及びHmaxiの定圧通電時間が費されて最終の最大値に到達する。全体として見れば、本発明に従う通電方法は、印加電圧(Vi)が段階的に、つまり
階段状に昇圧され、最終の最大印加電圧値Vmaxiは、従来の通電方法におけるVmaxpよりもより高い。本発明においては、塗装不良の防止のため、予め定められる各段階の電圧値は、0≦V1≦V2≦V3≦V4≦Vmaxiに設定され、且つ、昇圧通電時間は、10秒≦S1
≦60秒、2秒≦S2、S3、S4、Smaxi≦10秒に設定されることが望ましい。そして
定圧通電時間は、0秒≦H1、H2、H3、H4≦10秒(但し、H1、H2、H3及びH4は同時に0秒となることはない。)であることが望ましい。一方、印加電圧(Vi)の印加に
伴い、本発明の通電方法に従う通電電流(Ai)は、従来の通電方法における通電電流(
Ap)とほぼ同様に、電圧印加の時点から急速に上昇する。しかし、第二段階の電圧値V2が定圧通電時間H2において一定に維持されるため、通電電流(Ai)の上昇が抑制され、最大の電流値Amaxiを示した後に、降下する(P1部分)。そして通電電流(Ai)は、
電圧値V3までの電圧の昇圧中に再び上昇を始めるが、定圧通電時間H3の間に再び抑制される(P2部分)。その後、通電電流(Ai)は、Vmaxiの維持のための定圧通電時間Hm
axiが終了するまでの間に、上昇と降下を繰り返しながら(P3及びP4部分)全体的に
下降する。これに対し、従来の通電方法における通電電流(Ap)は、通電の開始から、
印加電圧の上昇とともにAmaxpまで一気に上昇する。したがって、通電電流(Ap)がALを超えてしまうおそれがあるため、印加電圧(Vp)をVmaxp以上に昇圧することは事実
上困難である。
結果として、本発明の通電方法は、上記の構成を採用することによって、通電電流(Ai)の急速な上昇を複数回にわたり抑え、もって、印加電圧として従来の方法における最
大電圧値Vmaxpよりもより高い最大電圧値Vmaxiを達成することが出来る。それにより、電着塗装に必要な通電時間を、従来のTpからTiへと効果的に短縮することが可能となる。
本実施例においては、図1の電圧パターンに示す本発明の通電方法に従い制御された、図2に示すバッチ式電着塗装装置を用い、被塗装物としてT社製W251の自動車ボディーを電着塗装した例を挙げる。
本実施例において使用した図2の電着塗装装置1はバッチ式のもので、塗料槽2には電着塗料3が貯留されるとともに、電極4が設置されている。そして、電極4が陽極となり、ハンガ5に吊り下げられた被塗装物6が給電バー7と接続され陰極となるように通電する直流電源装置8が設けられている。直流電源装置8は、その出力電圧を制御するプログラム式電圧設定器9に接続され、この電圧設定器9にて、予め幾つかの印加電圧値を設定することが出来る。本実施例においては、この電圧設定器9を操作して、図1に示す印加電圧Viのとおりに増大する幾つかの電圧値(V1〜Vmaxi)、昇圧通電時間(S1〜Smaxi)及び定圧通電時間(H1〜Hmaxi)をそれぞれ予め設定し、その設定に従い通電運転されるようにプログラムした。これら各パラメータは以下のとおりであった。
予め設定された電圧値(V) 昇圧通電時間(秒) 定圧通電時間(秒)
V1:230V S1:15 H1:5
V2:280V S2:5 H2:5
V3:330V S3:4 H3:11
V4:350V S4:4 H4:12
Vmaxi:390V Smaxi:4 Hmaxi:75
総通電時間:140秒
そして、入出槽装置10を入槽方向(図中の矢印d)に駆動し、被塗装物6を電着塗料3中に全没し、続いて、直流電源装置8をオンにし、電極4と被塗装物6との間に通電を開始した。その後、印加電圧はプログラムされたとおりに昇圧及び定圧を繰り返して段階的に最大の電圧値に到達し、所定の時間維持された後、直流電源装置8をオフにして通電を停止した。通電の間に、被塗装物6の表面には所定の膜厚の塗膜が形成され、通電の停止後には、入出槽装置10を出槽方向(図中の矢印u)に駆動し、被塗装物6を塗料槽2から出槽して電着塗装を完了した。その後、ボディーの種々の部分に電着された塗料の膜厚が、許容値に達しているかを調べた。その結果を図4の膜厚グラフに示す。図4のグラフの縦軸は膜厚を示し、上方に向ってより厚くなる。横軸はボディーの各部分を示している。図4中のバー印は、ボディー各部分に対する膜厚の許容水準を表し、丸印は実施例1に従い形成された膜厚を表し、矩形印は比較例に従い形成された膜厚を表す。
本実施例においては、図1の電圧パターンに示す本発明の通電方法に従い制御された、
図3に示すスリッパーディップ式電着塗装装置の一段目において、被塗装物としてT社製W251の自動車ボディーを電着塗装した例を挙げる。
図3の二段通電式のスリッパーディップ式電着塗装装置11には、船形の塗料槽12が備えられ、この塗料槽12内には電着塗料13が貯留されるとともに、電着塗装の一段目の位置X及び二段目の位置Y(被塗装物の搬送方向を示す矢印gに向って一段、二段とする。)に対応する位置に電極14,14’がそれぞれ設置されている。そして、ハンガ15,15’に吊り下げられ、及びこれらハンガ15,15’に設けられた集電子16,16’を介して、給電バー17,17’と電気的に接続された被塗装物18,18’が陰極となり、被塗装物18,18’にそれぞれ対向する電極14,14’が陽極となるように通電する直流電源装置19,19’を備える。特に、一段目の電着塗装において使用される直流電源装置19は、その出力電圧を制御するプログラム式電圧設定器20に接続されている。この二段通電式の電着塗装装置11は、各被塗装物18,18’が電着塗料13内に全没したときに、一段目Xにて直流電源装置19で0Vから所定の電圧まで印加し、次に、二段目Yにて直流電源装置19’で前記一段目に印加される電圧値よりもより高い高電圧を印加するものである。この電着塗装装置11の一段目の電着塗装において、実施例1において述べたように、電圧設定器20を用いて、幾つかの印加電圧値、昇圧通電時間及び定圧通電時間をそれぞれ予め設定し、その設定に従い通電運転されるようにプログラムした。設定されたこれら各パラメータは実施例1と同様とした。そして、被塗装物18,18’を搬送する搬送レール21を矢印g方向に駆動して、被塗装物18を電着塗料13中に全没した後に、直流電源装置19をオンにし、電極14と被塗装物18との間に通電を開始した。印加電圧は、設定されたとおりに昇圧及び定圧を繰り返して段階的に最大の電圧値に到達し、所定の時間維持された後、直流電源装置19をオフにして通電を停止し、一段目の電着塗装を完了した。その後、二段目Yにおける電着塗装を行わずに、搬送レール21を矢印g方向にさらに駆動して被塗装物18を出槽させ、実施例1と同様に、ボディー各部分に電着された塗料の膜厚が許容値に達しているかを調べた。
図5に示す従来の通電方法に従い制御された図2に示すバッチ式電着塗装装置を用いて、被塗装物としてT社製W251の自動車ボディーを電着塗装した例を挙げる。電着塗装装置の構造は実施例1と同様であるが、開始35秒で0Vから最大値である330Vまでほぼ一直線に一気に昇圧し、以後、この330Vにて140秒間維持されるよう電圧を設定した(総通電時間:175秒)。その後、通電方法と条件を除いて実施例1と同様に電着塗装を行い、そして電着された塗料の膜厚を調べた。その結果を図4の膜厚グラフに示す。
結果
実施例1及び2の通電方法によると、最大電圧値Vmaxiは390Vにまで到達し、比較例の通電方法における最大電圧値Vmaxp330Vを60Vも上回っている。しかし、それにかかわらず、実施例1及び2においては、その最大の電流値Amaxiが720Aを示し、750Aを示した比較例の最大電流値Amaxpよりも、通電電流の急激な上昇が効果的に抑えられたことが判る。そしてこれらの結果として、実施例1及び2の通電方法は、比較例の通電方法と比較して、35秒もの通電時間の短縮に成功した。また、図4の膜厚グラフから、比較例はすべての部分において許容値に達しているものの、サーチャ部(内板部)に対しては塗膜が薄く、平面部及び垂直部に対して厚く塗装されている。つまり、塗装箇所により塗膜厚の偏りがより大きい。これに対し、実施例1(実施例2も同様の結果であった。)は、許容値にすべて達し、且つ、平面部及び垂直部は比較例よりもやや薄く塗装され、サーチャ部分については厚く塗装されている。つまり、図4において、実施例1及び2は、比較例よりも、塗装箇所による塗膜厚の偏りがより小さく、この意味で、被塗装物の全体にわたって均等に塗装されていることが示されている。
Claims (6)
- 塗料槽の電極と同槽内に浸漬された被塗装物との間で印加された電圧下、電着塗装に必要な時間の間、通電する方法において、
印加電圧として初期の最小値から最終の最大値までの間で順に増大する幾つかの電圧値を予め定め、且つ、定められた順に増大する幾つかの印加電圧値に到達するまでの昇圧通電時間、並びに、到達した当該電圧値をほぼ一定に暫時維持する定圧通電時間をそれぞれ予め設定し、そして、
設定された昇圧通電時間及び定圧通電時間に基づく制御に従い、印加電圧を初期の最小値から最終の最大値まで各々の設定値に段階的に上昇させながら上記の通電を為すことを特徴とする、電着塗装における通電方法。 - 上記の段階的に上昇する各々の印加電圧値及び昇圧通電時間は、塗装時に通電される電流の電流値が、当該電着塗装装置において通電可能な上限の電流値を超えない範囲で、なるべくより高い水準に保たれるように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の通電方法。
- 上記の定圧通電時間は、塗装時における通電電流値の経時グラフにおいて、幾つかのピークを持つ波形曲線が表れるように設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の通電方法。
- バッチ式電着塗装装置を用いた電着塗装において使用される請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の通電方法。
- スリッパーディップ式電着塗装装置を用いた一段目の電着塗装において使用される請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の通電方法。
- 塗料槽の電極と同槽内に浸漬された被塗装物との間で印加された電圧下、電着塗装に必要な時間の間、通電する装置において、
上記通電の制御装置が備えられ、
該通電制御装置には、印加電圧として初期の最小値から最終の最大値までの間で順に増大する幾つかの電圧値が予め定められ、且つ、定められた順に増大する幾つかの印加電圧値の各々について、当該電圧値の前のより低い電圧値から当該電圧値に到達するまでの昇圧通電時間、並びに、到達した当該電圧値をほぼ一定に暫時維持する定圧通電時間がそれぞれ予め設定されており、そして、
該通電制御装置の運転により、設定された昇圧通電時間及び定圧通電時間に基づいて、印加電圧を初期の最小値から最終の最大値まで各々の設定値に段階的に上昇させながら上記通電の制御を為すことができるようになっていることを特徴とする、電着塗装における通電装置。
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