JP2007126593A - 樹脂複合材料成型品およびセパレーター、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決しようとする課題】
電気および/または熱伝導性樹脂複合材料の電気および/または熱伝導性を向上させるためには、フィラーを高充填化する必要があるが、充填率を高くすると十分な成型加工性が得られず、安定した生産ができないと言う課題があった。
【解決手段】
最大粒径が、成型品の厚みの0.25倍〜2倍のフィラーを、少なくともフィラーの5体積%以上含んだ樹脂複合材料組成物を使用して、成型品厚み方向と平行な一軸方向に圧力を印加する成型方法を採用することで、樹脂成型品内部のフィラー同士が互いに圧接され、成型品表面にフィラーの一部が露出することで厚み方向に伝導パスを確保することが可能となる樹脂複合材料成型品を提供する。またその応用製品である固体電解質型燃料電池用セパレーターを提供する。
【選択図】
図2
電気および/または熱伝導性樹脂複合材料の電気および/または熱伝導性を向上させるためには、フィラーを高充填化する必要があるが、充填率を高くすると十分な成型加工性が得られず、安定した生産ができないと言う課題があった。
【解決手段】
最大粒径が、成型品の厚みの0.25倍〜2倍のフィラーを、少なくともフィラーの5体積%以上含んだ樹脂複合材料組成物を使用して、成型品厚み方向と平行な一軸方向に圧力を印加する成型方法を採用することで、樹脂成型品内部のフィラー同士が互いに圧接され、成型品表面にフィラーの一部が露出することで厚み方向に伝導パスを確保することが可能となる樹脂複合材料成型品を提供する。またその応用製品である固体電解質型燃料電池用セパレーターを提供する。
【選択図】
図2
Description
本発明は、高い電気伝導性および/または高い熱伝導性を有する樹脂複合材料成型品、およびその製造方法、およびその応用製品である固体高分子型燃料電池用のセパレータに関するものである。
一般に高分子からなる樹脂は、金属に比べて電気や熱を伝導しにくい性質を持っている。従って樹脂成型品に熱および/または電気を伝導させる機能を付与する目的で、アルミニウムなどの電気伝導性をもつ金属粉や炭素材をフィラーとして充填した樹脂複合材料が使用されている。これらの樹脂複合材料は、静電気帯電防止用の製品や電磁波吸収シートの素材として利用されている。特にアルミニウムなどの金属フィラーは熱伝導性も高いため、IC冷却用の放熱体に使用される樹脂複合材料用の素材としても利用されている。
一方、高い熱伝導性が望ましいが、電気的な絶縁が必要な用途に対しては、熱伝導性が高く、かつ電気的に絶縁性の高いアルミナなどの電気絶縁性のセラミックスをフィラーとして充填した樹脂組成物が使用されている。窒化アルミをフィラーとした熱伝導性樹脂複合材料について特許文献1に開示されている。
この中で使用されているフィラーは平均粒径で50μm以下であり、充填率を50〜95wt%と高くし、フィラー同士の接触を確保して高い熱伝導性を実現している。また特許文献2では炭素系フィラーを使用した熱伝導材が開示されている。その実施例で示されているフィラーの粒径は10〜500μmであり、その成型方法は、ごく一般的な成型方法の一例として熱プレス成形が選択されている。
この中で使用されているフィラーは平均粒径で50μm以下であり、充填率を50〜95wt%と高くし、フィラー同士の接触を確保して高い熱伝導性を実現している。また特許文献2では炭素系フィラーを使用した熱伝導材が開示されている。その実施例で示されているフィラーの粒径は10〜500μmであり、その成型方法は、ごく一般的な成型方法の一例として熱プレス成形が選択されている。
近年、燃料電池の実用化に向けて、各種材料で製造されたセパレーターが提案されている。固体高分子型燃料電池は反応温度が比較的低く、酸素と水素の反応により発生した高温の水を除去するための溝が表面に配されており、非常に複雑な形状を有している。従って、その製造方法には射出成型や圧縮成形が採用されることが多く、カーボンブラックなどの炭素材をフィラーとしてPPS樹脂に充填した、PPS系樹脂複合材料が検討されている。また、使用されるフィラーの粒径が小さいほど樹脂組成物の均一性が向上することが期待されるために、粒径が数μmから数十μmのフィラーが一般的に使用される。カーボン材としては表面活性の高いカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなどを使用したものも提案されている。これらの技術ではアスペクト比の大きなフィラーを採用することによってフィラー同士の接触を確保するものや、単にフィラー充填率を高めるものが一般的である。
しかしながら、たとえば板状の成型品を製造するために使用される樹脂組成物に充填されるフィラーに関しては、加工上の問題等から、成型品の肉厚よりも小さい粒径、たとえば使用されるフィラー平均粒径が、目的とする成型品肉厚の0.001倍〜0.1倍程度であるのが一般的である。例えば、特許文献3には人造黒鉛を使用した樹脂複合材料で製造したセパレーターについて開示されており、使用されているフィラーは粒径が50〜300μmであった。燃料電池用セパレーターの厚みが3mmで評価されていたので、フィラーの粒径は成型品肉厚の0.1倍程度であることになる。
特開平07−252377
特開2002―088250
特開2002−083609
本発明は、以上に述べたような電気伝導性および/または熱伝導性の高い樹脂組成物の製造工程および成型品における下記のような問題を解決しようとするものであり、高い電気および/または熱伝導性を有する樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物成型品およびその応用製品である固体燃料電池用セパレータを提供することにある。
電気伝導性樹脂複合材料と熱伝導性樹脂複合材料の両方において、それらが抱える品質上、製造上の技術課題には共通性がある。つまり高伝導性フィラーを低伝導性樹脂に分散させた樹脂複合材料において高い伝導性を確保する上で生じる品質上、製造上の課題であり、伝導する目的物が電気であるか熱であるかという違いがあるものの、同様の原因から生じる課題が存在する。そこで、電気伝導性樹脂を用いてその課題を以下に具体的に説明してゆくが、熱伝導性樹脂複合材料についても同様の課題を抱えている。
一般的な電気伝導性フィラーと樹脂からなる電気伝導性樹脂組成物は、電気伝導性の低い樹脂の中に電気熱伝導性の高いフィラーが均一に分散された構成になっており、電気はこれらのフィラーを介して樹脂複合材料組成物の中を伝導してゆく。従って、フィラー同士が接触していなければ電気が伝導せず、電気抵抗値が部分的に高くなってしまい、樹脂複合材料の品質を著しく低下させてしまう。つまり、電気の伝導性を高めるためには、充填されたフィラー同士が物理的に接触する確率を高くすれば電気の伝導パスが確保でき、結果としてより高い電気伝導性を実現できる。
従来の樹脂複合材料においては、目的とする成型品の肉厚に対して0.001倍〜0.1倍と比較的小さい粒径のフィラーが使用されるために、確実にフィラー同士の接触を確保するためには、必然的にフィラー充填率を高くする必要がある。つまり、必要とする特性を得るには、粒径の細かいフィラーを少量の樹脂に対し、多量に充填する必要がある。従来の樹脂複合材料成型品断面におけるフィラーの分散状態を表した概念図を図1に示す。成型品の肉厚に対して0.1倍以下の粒径のフィラーが高充填化されている。また、ファイバー等のアスペクト比の高いフィラーを共存させることによって、フィラー同士の接触確率を高めている。また、成型品の表面にフィラーが露出する割合が低く、成型品の厚み方向の電気伝導に対してバリヤ層として働く樹脂リッチ層が、成型品のごく表層に存在している。ここで、樹脂リッチ層とは均一に分散された樹脂複合材料本来の樹脂とフィラーの存在比率よりも樹脂比率の高い層を示しており、成型工程において金型表面に接する形成品表面に形成されたり、フィラーの凝集によって、その他の場所に樹脂リッチ層が発生したりする。このような樹脂リッチ層の部分的な存在によって、素材全体として要求される電気伝導性が安定して達成できないといった問題があった。
例えば、板状の形状をした樹脂複合材料組成物成型品の厚み方向において電気伝導性を必要とする場合には、特にこの成型品表面付近に存在する樹脂リッチ層で電気抵抗が大きくなってしまい、たとえ樹脂組成物の素材自体の電気伝導性が高いとしても、実際の成型品としては、期待したほどの電気伝導性が得られないという問題があった。
また、樹脂複合材料を製造するために樹脂にフィラーを複合化させる場合には、一般の一軸、或いは二軸押し出し機やニーダーやローラーなどの混練機を使用して、フィラーの凝集をほぐしながら樹脂と複合化する。そのときには莫大なエネルギーが必要であり、フィラーの充填率が高くなると混練の際に大きなトルクが発生し、実際に安定して製造することが著しく困難となるという問題があった。
例えばフィラーとして平均粒径が50μm程度の炭素系フィラーを用いたPPS系の電気伝導性樹脂複合材料の場合には、10mΩ・cm以下の電気抵抗値を達成するためには、その充填率を75〜80体積%程度まで高める必要がある。このように高充填に炭素系のフィラーをPPS樹脂と複合化しようとすると、混練工程において混練トルクが高くなるため、押し出し量を低く抑えなければならず、生産性が低くなってしまう。最悪の場合には混練機が停止してしまうといった製造上の問題があった。
また、たとえ樹脂とフィラーを均一に複合化できたとしても、樹脂組成物の加工時の粘度が高いために、成型における樹脂組成物の金型転写性が悪く、要求する寸法精度の樹脂組成物成型品を得ることができない結果となってしまうという問題があった。最悪の場合には成型ができないという場合もあった。特に、樹脂組成物成型品の表面性状が悪い場合やフィラーの分散が不十分な場合には、フィラーが成型品表面から脱落してしまうことにより、表面における特性ばらつきの原因となったり、成型品の平滑性が損なわれるといった問題もあった。
上述したような従来の技術における課題を解決するために、樹脂組成物に充填するフィラーの粒径や成型方法などを広範にわたって検討した結果、以下に説明するように使用するフィラーの粒径を適切に選択し、適切な成型方法を採用することで、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は所望の形状の樹脂複合材料成型品に使用される樹脂複合材料組成物において、成型品の肉厚の0.25倍〜2倍の最大粒径を有するフィラーを選択して製造した樹脂複合材料を用いて、成型工程において該樹脂複合材料組成物に対して一軸方向に圧力を印加することのできる成型方法で成型することで、隣接するフィラーを圧接させ、さらにはフィラーを押しつぶすことでフィラー同士の接触面積を大きくすることとなり、結果として電気伝導性の高い樹脂複合材料成型品を提供できるものである。
上記構成および製造方法を採用することで、成型工程において樹脂組成物全体が一軸方向に圧縮され、フィラー同士を外力と平行な方向に沿って接近させる様に作用する。フィラーの最大粒径が成型品肉厚に対して0.25倍〜2倍と比較的大きいため、この圧縮力によりフィラー同士が接触を容易にしている。この圧縮工程においては、樹脂はフィラーより粘度が低いために樹脂組成物内を移動し易いがフィラーは実質的に流動しないので、加圧前にはフィラーの間に均一に分散していた樹脂が外力の印加とともに接触しようとするフィラーの間から絞り出されるように別の部分へ移動してしまい、ついにはフィラー同士がほぼ直接接触した状態となる。本発明ではこの状態をフィラーが圧接された状態と表現している。この状態はフィラーが単に確率的に接触しているのではなく、外力印加方向に沿った方向での接触がより高確率で起こる。つまり、成型品に含まれるフィラーが、隣接する他のフィラーと、少なくともその一部が圧接された状態で互いに接触することによって、電気の伝導パスがより確実に確保され、高い電気伝導が実現でき、体積抵抗値は低くなる。フィラーは成型加工時に印加される外力の方向に接触しやすいので、外力印加方向に対して伝導パスが確保されやすい。たとえば、電気伝導性樹脂複合材料を使用して、板状成型品を板圧方向に圧縮して製造した場合には、板状成型品の厚み方向に貫通する電気抵抗値を低くすることができるものである。
一方、成型品の最表面においても、金型表面とフィラーの間で同様の現象が起こり、印加される外力はフィラーの一部を金型表面へ直接押しつけるよう作用する。さらに印加された力により樹脂複合材料組成物が一軸方向に圧縮力を受けると、印加された外力の大部分をフィラーが直接受けることになり、最初は金型表面と点で接触していたフィラーが、接触点付近で変形し、より接触面積が大きくなる様に作用する。その結果、成型品の表面にフィラーの一部が露出した状態になりやすい。たとえその表面に樹脂が存在していたとしてもその厚さはごくわずかであり、従来のような樹脂リッチ層が存在する成型品と比較すると、本発明による樹脂複合材料成型品の電気抵抗値は非常に低く、電気伝導性への悪影響は非常に小さい。さらに、圧縮力がフィラーの強度に対して大きい場合には、成型品細表面のフィラーが金型に押しつけられて、その一部が変形し、フィラーの露出面積が大きくなる。この部分が成型品表面における電気伝導の接点として作用することで、より高い電気伝導性を実現する。
本発明により製造された樹脂複合材料成型品の断面におけるフィラーの分散状態を示す概略図を図2に示す。成型品内部のフィラーが隣接する他のフィラーと、その少なくとも一部が圧接された状態で互いに接触している。また、成型品表面においてはフィラーの一部が露出している。さらに、少なくともその一部が成型品表面で変形して露出しているために、単に確率的に成型品の表面にフィラーの一部が露出している場合に比較して、露出面積がより大きくなることがわかる。フィラーが成型品表面に露出した部分の面積が大きいことによって成型品表面における接点の役割をする部分の面積が大きくなり、成型品表面における電気抵抗値を下げる効果がある。
フィラーが熱伝導性フィラーの場合でも同様の現象が起こり、本発明の構成によって製造された樹脂複合材料は高い熱伝導性を発揮することとなる。
本発明を以下に詳しく説明する。本発明におけるフィラーの粒径は、最終的な成型品の厚さ、特に実際に必要な伝導性を確保したい部分の厚さと、共存させるフィラーの粒径やフィラーの充填率やフィラーの組み合わせ比率などから適宜選択する。
本発明におけるフィラーの粒径は、成型品肉厚の0.25〜2倍の範囲であればよい。フィラーの粒径が成型品肉厚の2倍を超えると、同じ体積%であればフィラーの数が減少するため、フィラー同士の接触点数が少なくなり必要な伝導性が確保できないため好ましくない。また粒径が0.25倍以下になると成型において一軸方向に外力を印加しても電気抵抗値低減効果が小さく好ましくない。射出圧縮成形など金型内へ樹脂組成物を流し込む製造方法の場合には、成型品肉厚よりもフィラー粒径が小さい方が金型摩耗を抑制する効果があるため、肉厚の1倍以下が好ましい。フィラーの最大粒径を成型品肉厚の0.25倍〜1倍程度にすると、フィラー同士の接触点数が比較的多くなるため特性ばらつきが低減されるため、より好ましい。0.5倍〜1倍にすると、加工性と特性のバランスが良くなり、さらに好ましい。
また、使用されるフィラーは上記のような粒径の大きいフィラーと、従来より使用されていたような粉末状、繊維状、チューブ状などの各種フィラーと組み合わせても良い。その場合には成型品厚みに対して0.25〜2倍のフィラーの比率がフィラー全体の5体積%以上であれば、電気抵抗値低下効果が認められるため、好ましい。この比率は組み合わせるフィラーの粒径によっても変わるが、粒径の大きいフィラーの比率が大きいほど電気抵抗値低下効果も大きく、フィラー全体の30体積%以上になると加工性が良くなるためさらに好ましい。
また、固体高分子型燃料電池用セパレーターの厚さは一般的に1〜3mm程度であり、さらに部分的に溝加工が施されてあるため、薄い部分は厚さが0.5〜0.8mm程度である。この用途に使用される樹脂複合材料組成物の生産性がよく、得られる成型体の体積抵抗値が低いなどの観点から、使用されるフィラーの粒径は300〜2000μmが好ましい。また、フィラーの粒径が300〜1000μmであっても、得られる成型品の体積抵抗値が10mΩ・cm以下と非常に低くなるため好ましい。また、従来の技術で使用されている様な100μm以下の粉末状のフィラーへ、本発明で使用されるような500μm以上の粉粒体フィラーを組み合わせて使用しても良い。その比率は、粉粒体フィラーをフィラー全体の5体積%以上添加することによっても格段に固体高分子型燃料電池用セパレーターの体積抵抗値を低下させる効果がある。
本発明において使用されるフィラーの種類は、複合化する樹脂よりも熱、電気をより伝達しやすい良導体であれば良く、使用される目的によって選択すればよい。たとえば電気伝導性付与のためには電気伝導性の高いフィラーを、熱伝導性付与のためには熱伝導性の高いフィラーを適宜選択すればよい。
また、フィラー同士の接触の確率をより高くするためには、フィラーの形状は球形が最適である。また、球形でない場合でも、アスペクト比のできるだけ小さいものが好ましい。たとえばアスペクト比の大きい扁平粉末や繊維などをフィラーとして用いた場合には、成型時の樹脂組成物の流れや、印加される外力に対してフィラーが機械的に配向しやすくなり、フィラーの間に均一に樹脂が分散した状態が維持されやすくなる。たとえば扁平な形状のフィラーの場合には、加圧方向に対して垂直な方向にフィラーが並びやすくなり、フィラーの間に存在する樹脂が絞り出されるような効果が得られにくいために、加圧してもフィラー同士が接触しにくくなる。これが伝導パスを妨げることになり、結果として板状成型品の厚み方向に対してフィラー同士のコンタクトが確保しにくくなり、電気伝導性を低下させてしまうため好ましくない。
たとえば、電気伝導性を付与する場合のフィラーとしては、アルミ、亜鉛、銅、鉄、ニッケル等の電気伝導性金属をベースとする合金系の粉粒体の他、炭素系等の粉粒体が好ましい。さらに酸化亜鉛、酸化錫などの半導体系の粉粒体などもフィラーとして使用できる。
金属系のものを選択すると、セラミックスなどに比べて延性に富み、外力により容易に変形するため、成型時に印加される圧力によって互いに押しつけられたフィラー同士が接触面において変形して接触面積が大きくなり、より確実な伝導性確保が期待できるので好ましい。
粉粒体の形状の観点から、ガスアトマイズ、ミズアトマイズなどの方法による球状に近い金属粉粒体を選択するのがより好ましい。
粉粒体の形状の観点から、ガスアトマイズ、ミズアトマイズなどの方法による球状に近い金属粉粒体を選択するのがより好ましい。
フィラーとして炭素系粉粒体を使用した場合には、その圧縮強度が比較的小さいため、成型工程において印加する力が小さくても、たとえば0.5t/cm2程度でも確実にフィラーが変形もしくは、その一部が破壊してフィラー同士の接触面積をより大きくするように作用するために好ましい。また、炭素系材料は熱の伝導度も比較的高いので熱伝導性付与を目的としたフィラーとしても好ましい。
フィラーとして炭素材を選択する場合には、人造黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。体積抵抗値を低くする効果があり、人造黒鉛がさらに好ましい。特に球状の高分子等を出発物として製造された人造黒鉛は形状が球形に近いために、なお好ましい。なお、本発明における人造黒鉛とは、現在一般的に市販されている天然黒鉛と区別したものであり、電気および/または熱伝導性の高く、アスペクト比が小さいものであればよい。
熱伝導性フィラーとしては、複合化する樹脂よりも熱伝導性の高いフィラーであれば良く、熱伝導性の金属系、アルミナ、窒化アルミ、窒化ボロン等のセラミックス系、炭素系の粉粒体でも良い。
本発明の樹脂組成物は、強度の補強のためのフィラーとして、繊維状、ファイバー状などの立体障害の大きいものを添加しても良い。たとえば、ピッチ系、パン系、ミルド系の炭素繊維、金属メッキされた炭素繊維、ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミ繊維、銅繊維といった金属繊維などを、特定の粒径の大きいフィラーと共存させて配合しても良い。
本発明に使用される樹脂は、熱可塑性、熱硬化性、またはそれ以外のゴムなど特に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、フッ素系樹脂、及び前記樹脂を改質した種種のエラストマーや、アロイ樹脂などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は少なくとも1種類が使用され、更には二種以上を組合わせて使用することもできる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、フッ素系樹脂、及び前記樹脂を改質した種種のエラストマーや、アロイ樹脂などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は少なくとも1種類が使用され、更には二種以上を組合わせて使用することもできる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、アミノ樹脂などが例示できる。これらの熱硬化性樹脂は少なくとも1種類が使用され、更には二種以上を組合わせて使用することもでき、特に限定されるものではない。また、これらに使用される硬化剤、硬化促進剤等の種類においても組み合わせることもできる。
本発明の成型品として固体高分子型燃料電池用のセパレーターを製造する場合には、その作動温度が80〜120℃程度であり、セパレータは導電膜上の電池反応による酸化還元雰囲気、また発生する水分に常時さらされるという要請から、樹脂複合材料としたときに耐熱温度が120℃以上となるような樹脂が好ましく、具体的には融点または軟化点が150℃以上の樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、PPS系樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。さらに熱水に対しての安定性の高い樹脂が好ましく、耐熱性、耐薬品性、耐久性、成型性、機械的強度などの点から、PPSが特に好ましい。また、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが使用できる。
熱伝導性樹脂複合材料の場合には、使用される環境温度以上の耐熱性があればよい。しかし比較的高温にさらされる場合が多いため、融点または軟化点の高い樹脂が好ましく、たとえば、融点が200℃以上であるポリイミド、ポリイミン、PEEK、PPS、液晶ポリマー等のスーパーエンプラが特に好ましい。
本発明における樹脂とフィラーとの割合は、フィラー/樹脂=40/60〜80/20(体積%)程度の範囲から選択でき、通常55/45〜75/25(体積%)、より好ましくは60/40〜70/30(体積%)程度である。フィラーの体積%が40体積%未満であると、樹脂とフィラーの海(樹脂)島(フィラー)の状態になってフィラー同士の接触する確率も低下するため、十分にフィラー同士が圧接されるほどの接点を得られず、電気伝導性を高くできない。また、海島状態となった成型品表面においては表面抵抗のばらつきが大きくなるため好ましくない。一方、フィラー充填率が80体積%以上であると成型性、機械強度が著しく低下し、成型品が未充填気味になるためにガス透過率も大きくなるといった問題を発生させるため好ましくない。
さらに、本発明に使用する前記のフィラー、或いはフィラーと樹脂との混合物は、必要に応じて公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤)などで処理して用いることもできる。さらには、本発明の炭素材と樹脂との混合物は、可塑剤、外部離型剤、内部離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、摺動剤、安定剤などを配合しても良い。
本発明の樹脂組成物の溶融混練工程は、公知の方法によって樹脂とフィラーの複合化を実施すればよい。例えば、樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、フィラーと樹脂を万能混合機であらかじめ混合し、ニーダーで加熱混練しても良い。熱硬化性樹脂の場合には、フィラーと樹脂を万能混合機で混合、混練しても良い。さらに樹脂がゴムの場合にはロール型混練機で混練しても良い。
本発明における成型方法は、成型時に樹脂複合材料に一軸方向に圧縮力をかけるための外力を印加できるような機構を持つ成型方法であれば良い。印加する外力はフィラーの一部を変形させるのに十分であると、フィラー同士の接触がより確実になるためさらに好ましい。また、成型方法は使用する樹脂の種類によって適宜選択されるべきである。たとえば、ゴム等に分散させる場合にはロール成型や、押し出し成型後にプレス成型を別工程で行っても良い。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性の樹脂の場合には、熱プレス成型や射出圧縮成型等が使用できる。加工時の粘度が高い樹脂複合材料に関しては、特に熱プレス成型が好ましい。また十分に射出成型が可能な程度まで加工粘度が低い樹脂複合材料に関しては、生産性などの点で射出圧縮成型が好ましい。
ここで射出圧縮成型とは、あらかじめ開いていた金型を、射出成型の射出タイミングに合わせて閉じることで、
射出成型時に金型開閉方向と平行な方向に一軸方向の外力をかけることができる成型方法である。この成型方法によれば、金型内へ射出された半溶融状態の流動性の残った材料に圧縮力を施すことができるため、射出タイミングと金型を閉じるタイミングを調整することで、板状の成型品を効率よく製造できるというものである。
射出成型時に金型開閉方向と平行な方向に一軸方向の外力をかけることができる成型方法である。この成型方法によれば、金型内へ射出された半溶融状態の流動性の残った材料に圧縮力を施すことができるため、射出タイミングと金型を閉じるタイミングを調整することで、板状の成型品を効率よく製造できるというものである。
また熱プレス成型は、一軸方向に外力が印加でき、それ以外の方向への力が働きにくいため、樹脂組成物内での厚みに方向以外の方向へのフィラーの滑りなどが起こりにくいため、印加される外力がフィラーをプレス方向、つまり成型品の厚み方向に樹脂組成物を圧縮する様に効率的に作用する。したがって、本発明の効果が大きい。ここで熱プレス成型とは一軸方向へ圧縮成型する際に金型を所定の加工温度に加熱することのできる成型機である。従って使用する樹脂によっては加熱する必要がない場合もあり得る。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物成型品に含まれているフィラーの粒径が大きいため、従来のものに比べてフィラー同士が接触する確率が高くなり、高い電気および/または熱伝導性が得られるものである。従来から使用されているような粒径が比較的小さい粉末状のフィラーの一部を本発明に使用される粒径の大きいフィラーで置き換えることで、従来よりも電気伝導性を大きく向上させることができる。
さらに、樹脂組成物成型品に含まれているフィラーが互いに圧接されているので、隣接するフィラー同士がより確実に接触しやすく、結果として電気および/または熱の伝導性を高めることが可能となる。さらに、圧接された部分が変形すると接触面積がより大きくなるために、伝導性がさらに高くなる効果がある。
また、樹脂組成物成型品の表層にフィラーの一部が露出しやすいので、成型品表面において抵抗が高くなることを防止できる。また成型品表面におけるフィラーの露出面積が大きいため、表面での接点がより確実に確保できる。このために成型品としても、期待通りの電気伝導性が実現できるものである。さらに、使用されるフィラーの粒径が従来のものに比べて大きいためにその比表面積が小さく、同じフィラー充填率であっても樹脂に濡れやすいために加工が容易であり、樹脂複合材料の生産において安定した生産性が実現できるものである。また、成型加工性が良いために成型品表面に露出したフィラーをより確実に樹脂によって固定することが可能となり、成型品表面からのフィラーの脱落等も格段に減らすことができる。また、同じフィラー充填率でも高い電気伝導性が確保できるために、フィラー充填率を低減することも可能となり、原材料費を低減できる。
フィラーが微粉末の場合に比べて粉砕などのフィラー加工コストも低く抑えられることから、原材料費を安価に抑えられるというメリットもある。
特に電気伝導性フィラーとして最大粒径が2000μmの人造黒鉛炭素材を採用し、樹脂としてPPSを採用した樹脂複合材料を使用して厚さ1〜2mmの固体高分子型燃料電池のセパレーター成型品を成型する場合において、電気伝導性の高いセパレーターを安定して製造できる。特に本発明による成型方法で製造した場合に貫通方向の電気伝導性が高くなる。
本発明は、フィラーとして高い熱伝導性フィラーを選択することによって、電気伝導性だけでなく熱伝導性向上に対しても高い効果を発揮する。
以下に実施例、及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明してゆくが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、求められる目的や用途によって最良の形態は変わってくるので、以下に示す実施例は一例にすぎない。
実施例1〜7、および比較例1〜9に対応する樹脂複合材料組成物および樹脂複合材料成型品は以下の手順で製造した。
(樹脂複合材料組成物の製造)
PPS樹脂と表1に示されたフィラーを、表1に示すフィラー充填率になるようにそれぞれ計量し、ミキサーを用いて3分間乾式混合した。得られた混合物を引き続き2軸混練機(スクリュー径Φ29mm)を用いて300〜330℃程度で溶融押し出して、時間あたり1kgの処理速度で樹脂複合材料組成物を製造した。
PPS樹脂と表1に示されたフィラーを、表1に示すフィラー充填率になるようにそれぞれ計量し、ミキサーを用いて3分間乾式混合した。得られた混合物を引き続き2軸混練機(スクリュー径Φ29mm)を用いて300〜330℃程度で溶融押し出して、時間あたり1kgの処理速度で樹脂複合材料組成物を製造した。
また製造安定性の評価指標として、2軸混練機での溶融押し出し性を採用した。その評価は、一番良い状態、つまり製造時における押し出し機の押し出しトルク、すなわち主軸モーターの電流値が10A以下と低く、その変動が小さく安定し、さらに樹脂組成物の吐出に脈動がなく安定している場合を◎と表示し、一番悪い状態、すなわち押しだし状態が不安定であり安定して製造できない状態、つまり溶融押し出しにトルクがかかり、主軸モーターの電流値変動が大きく、一時的にトルクオーバーしてしまい、押し出し機が停止してしまう場合、または押しだし状態が不安定であり、ダイス部でつまりが生じたような場合を×とした。それらの中間で、押し出し機主軸電流値が10A以上の高い値になるが、安定して製造できる状態を○とし、一時的にトルクオーバーし、連続して製造できないが、時間あたりの処理量を半分以下にすると製造できる状態を△と判定した。表1に製造安定性をまとめた。
(樹脂複合材料成型品の製造)
得られたコンパウンドを粉砕機にかけ形状を細かくした後、縦80mm、横80mm、厚さ3mmの板状成型品用の金型に投入し、330℃まで昇温させ、成型圧力1.8t/cm2で3分間圧力保持する条件で熱プレス成型した。
得られたコンパウンドを粉砕機にかけ形状を細かくした後、縦80mm、横80mm、厚さ3mmの板状成型品用の金型に投入し、330℃まで昇温させ、成型圧力1.8t/cm2で3分間圧力保持する条件で熱プレス成型した。
(体積抵抗値の測定)
体積抵抗値はJIS K7194に準拠した4探針法を用いて測定した。固体高分子型燃料電池用のセパレーターとしては、体積抵抗値で100mΩ・cm以下が望ましい。表1に成型体体積抵抗値をまとめた。
体積抵抗値はJIS K7194に準拠した4探針法を用いて測定した。固体高分子型燃料電池用のセパレーターとしては、体積抵抗値で100mΩ・cm以下が望ましい。表1に成型体体積抵抗値をまとめた。
(比較例1)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)をPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定していた。得られたコンパウンドを熱プレス成型にて板状の成型体を成型した。体積抵抗値を測定したところ1905mΩ・cmと体積抵抗値が高いものであった。
(比較例2)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的トルクが高く不安定であった。体積低効値は比較例1に対し208mΩ・cmと約1桁体積抵抗値の低いものが得られた。
(比較例3)(2a)天然黒鉛粉末(粒度範囲 〜150μm、平均粒径70μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較例2と同じく比較的トルクが高く不安定であった。その体積低効値は、170mΩ・cmであった。
(比較例4)(2b)天然黒鉛粉末(粒度範囲 500μm〜、平均粒径650μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定した。体積抵抗値は、鱗片粉の圧着により100mΩ・cmを下回る値まで体積抵抗値が下がった。フィラーの粒径が大きくなるとフィラー同士の接触を確保しやすくなっていることを示唆している。
(比較例5)(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)をPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的トルクが高く不安定であった。体積抵抗値は100mΩ・cm以下であった。比較例4に比べて充填率が低いにもかかわらず、さらに低い体積抵抗値を示したことからもフィラーの種類、特にフィラーの形状が電気抵抗値に大きく寄与していることがわかる。膨張黒鉛は科学的処理によって層状の炭素化合物の層間を広げているものであり、見かけ上アスペクト比を小さくする効果があると考えられる。
(比較例6)(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性はトルクが高く不安定であった。体積抵抗値を測定したところ、充填率を10体積%も高くしたにもかかわらず、体積抵抗値は比較例5に対して約半分程度の低下にとどまった。
(比較例7)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)を11対1の割合でPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較例1に比べて大きく安定していた。体積抵抗値は、149mΩ・cmと、比較例1とフィラー充填率が同じであるにもかかわらず、1桁も体積抵抗値の低いものが得られたが、体積抵抗値としては不十分であった。
(比較例8)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)、更に(4a)ナノ繊維粉末(繊維長範囲 10〜20μm、平均粒径17μm)を54対5対1の割合でPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定した。体積抵抗値は51mΩ・cmであった。繊維状のフィラーを組み合わせることでも、比較例7に比べてさらに向上していたが、体積抵抗値は不十分であった。
(比較例9)(1b)人造黒鉛粉末(粒度範囲75〜300μm、平均粒径180μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定していた。体積抵抗値は70mΩ・cmであり、体積抵抗値としては不足であった。比較例1と比べて使用するフィラーの粒径を大きくすることで体積抵抗値は2桁も低下しており、使用するフィラーの粒径による効果が現れているが、体積抵抗値としては不十分であった。
(実施例1)(1c)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜1000μm、平均粒径850μm)をPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性が十分にあり、非常に安定していた。体積抵抗値は34mΩ・cmであった。成型品表面には接点となりうる炭素材の一部が露出した箇所が点在して見られた。
比較例に比べて充填率が低いにもかかわらず、比較的低い体積抵抗値が得られた。
(実施例2)(1c)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜1000μm、平均粒径850μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり非常に安定していた。体積抵抗値は8mΩ・cmであり、実施例1に対して3桁低い抵抗値を示した。また、成型品表面には接点となる炭素材の一部が露出した箇所が多所に見られ、表面の抵抗の均一性も良好であった。
(実施例3)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に55体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり非常に安定していた。体積抵抗値7mΩ・cmであり、充填率が5体積%も低いにも係わらず、実施例2と同レベルの体積抵抗値を示した。成型品表面には接点となる炭素材の一部が露出しているが、その間隔は広いため若干抵抗値が高めになっている箇所が観測されたが、10mΩ・cm以下であった。
(実施 4)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に65体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積抵抗値は、実施例3と同様に10mΩ・cm以下の値を示していた。更に成型品表面に露出したフィラーの数も増え不通な箇所が減少した。
(実施 5)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積抵抗値は、実施4と同様に10mΩ・cm以下の値を示し、成型品表面には接点となるフィラーの一部が露出した箇所が頻繁に見られ、表面の抵抗の均一性も良好であった。しかし、炭素材の粒度が粗く、実施例2に対して成型品表面の露出したフィラーの形状に起因すると思われる起伏が見られた。
(実施 6)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)と(4b)カーボンブラック(粒度範囲〜1μm、平均粒径55nm)を12対1の割合でPPS樹脂中に65体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積低効値は、実施例4と同様10mΩ・cm以下の値を示し、成型品表面に露出した炭素材の数や状態に殆ど変化ないが、不通になる箇所が更に減少し、成型品表面での抵抗均一性の向上が見られた。
このように粒径の大きいフィラーと比較的小さい粒径のフィラーを組み合わせることで表面抵抗値のばらつきが低減でき、さらに表面が平滑な成型品が得られた。
(実施例 7)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)を12対1の割合でPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、比較的安定していた。体積抵抗値は、78mΩ・cmの値を示した。充填率の同じ比較例2と比べても、溶融混練加工性はトルクが安定して製造しやすくなり、また体積抵抗値が1/10以下にまで低減されており、粒径300〜2000μmの人造黒鉛を添加することで生産性と品質がともに改善された。
(比較例2)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的トルクが高く不安定であった。体積低効値は比較例1に対し208mΩ・cmと約1桁体積抵抗値の低いものが得られた。
(比較例3)(2a)天然黒鉛粉末(粒度範囲 〜150μm、平均粒径70μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較例2と同じく比較的トルクが高く不安定であった。その体積低効値は、170mΩ・cmであった。
(比較例4)(2b)天然黒鉛粉末(粒度範囲 500μm〜、平均粒径650μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定した。体積抵抗値は、鱗片粉の圧着により100mΩ・cmを下回る値まで体積抵抗値が下がった。フィラーの粒径が大きくなるとフィラー同士の接触を確保しやすくなっていることを示唆している。
(比較例5)(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)をPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的トルクが高く不安定であった。体積抵抗値は100mΩ・cm以下であった。比較例4に比べて充填率が低いにもかかわらず、さらに低い体積抵抗値を示したことからもフィラーの種類、特にフィラーの形状が電気抵抗値に大きく寄与していることがわかる。膨張黒鉛は科学的処理によって層状の炭素化合物の層間を広げているものであり、見かけ上アスペクト比を小さくする効果があると考えられる。
(比較例6)(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性はトルクが高く不安定であった。体積抵抗値を測定したところ、充填率を10体積%も高くしたにもかかわらず、体積抵抗値は比較例5に対して約半分程度の低下にとどまった。
(比較例7)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)を11対1の割合でPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較例1に比べて大きく安定していた。体積抵抗値は、149mΩ・cmと、比較例1とフィラー充填率が同じであるにもかかわらず、1桁も体積抵抗値の低いものが得られたが、体積抵抗値としては不十分であった。
(比較例8)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と(3a)膨張黒鉛粉末(粒度範囲 〜500μm、平均粒径350μm)、更に(4a)ナノ繊維粉末(繊維長範囲 10〜20μm、平均粒径17μm)を54対5対1の割合でPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定した。体積抵抗値は51mΩ・cmであった。繊維状のフィラーを組み合わせることでも、比較例7に比べてさらに向上していたが、体積抵抗値は不十分であった。
(比較例9)(1b)人造黒鉛粉末(粒度範囲75〜300μm、平均粒径180μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は比較的安定していた。体積抵抗値は70mΩ・cmであり、体積抵抗値としては不足であった。比較例1と比べて使用するフィラーの粒径を大きくすることで体積抵抗値は2桁も低下しており、使用するフィラーの粒径による効果が現れているが、体積抵抗値としては不十分であった。
(実施例1)(1c)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜1000μm、平均粒径850μm)をPPS樹脂中に60体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性が十分にあり、非常に安定していた。体積抵抗値は34mΩ・cmであった。成型品表面には接点となりうる炭素材の一部が露出した箇所が点在して見られた。
比較例に比べて充填率が低いにもかかわらず、比較的低い体積抵抗値が得られた。
(実施例2)(1c)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜1000μm、平均粒径850μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり非常に安定していた。体積抵抗値は8mΩ・cmであり、実施例1に対して3桁低い抵抗値を示した。また、成型品表面には接点となる炭素材の一部が露出した箇所が多所に見られ、表面の抵抗の均一性も良好であった。
(実施例3)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に55体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり非常に安定していた。体積抵抗値7mΩ・cmであり、充填率が5体積%も低いにも係わらず、実施例2と同レベルの体積抵抗値を示した。成型品表面には接点となる炭素材の一部が露出しているが、その間隔は広いため若干抵抗値が高めになっている箇所が観測されたが、10mΩ・cm以下であった。
(実施 4)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に65体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積抵抗値は、実施例3と同様に10mΩ・cm以下の値を示していた。更に成型品表面に露出したフィラーの数も増え不通な箇所が減少した。
(実施 5)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)をPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積抵抗値は、実施4と同様に10mΩ・cm以下の値を示し、成型品表面には接点となるフィラーの一部が露出した箇所が頻繁に見られ、表面の抵抗の均一性も良好であった。しかし、炭素材の粒度が粗く、実施例2に対して成型品表面の露出したフィラーの形状に起因すると思われる起伏が見られた。
(実施 6)(1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)と(4b)カーボンブラック(粒度範囲〜1μm、平均粒径55nm)を12対1の割合でPPS樹脂中に65体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、非常に安定していた。体積低効値は、実施例4と同様10mΩ・cm以下の値を示し、成型品表面に露出した炭素材の数や状態に殆ど変化ないが、不通になる箇所が更に減少し、成型品表面での抵抗均一性の向上が見られた。
このように粒径の大きいフィラーと比較的小さい粒径のフィラーを組み合わせることで表面抵抗値のばらつきが低減でき、さらに表面が平滑な成型品が得られた。
(実施例 7)(1a)人造黒鉛粉末(粒度範囲20〜100μm、平均粒径50μm)と1d)人造黒鉛粉末(粒度範囲300〜2000μm、平均粒径1500μm)を12対1の割合でPPS樹脂中に70体積%配合し、溶融混練した。溶融混練性は可塑性があり、比較的安定していた。体積抵抗値は、78mΩ・cmの値を示した。充填率の同じ比較例2と比べても、溶融混練加工性はトルクが安定して製造しやすくなり、また体積抵抗値が1/10以下にまで低減されており、粒径300〜2000μmの人造黒鉛を添加することで生産性と品質がともに改善された。
本発明による成型品は、電気伝導性樹脂複合材料としては通電材料、燃料電池用セパレーター、半導体製造用の帯電防止トレー、帯電防止容器等に利用可能であり、熱伝導性樹脂複合材料としては放熱版、熱伝導材料等に利用可能である。
1 樹脂複合材料成型品の表面
2 フィラー
3 樹脂
4 成型時に印加される外力の方向を示す矢印
2 フィラー
3 樹脂
4 成型時に印加される外力の方向を示す矢印
Claims (5)
- 少なくとも樹脂とフィラーを含む樹脂複合材料成型品において、含まれているフィラーの少なくとも5体積%以上の割合のものが、該成型品の肉厚に対して0.25倍以上2倍未満の粒径であることが特徴の樹脂複合材料成型品。
- 前記フィラーが人造黒鉛である請求項1記載の樹脂複合材料成型品。
- 前記樹脂が融点または軟化点が150℃以上である樹脂または熱硬化性樹脂である請求項1または請求項2記載の樹脂複合材料成型品。
- 請求項3に記載された樹脂複合材料成型品であることが特徴の固体高分子型燃料電池用セパレーター。
- 成型工程において一軸方向に外力を印加する成型方法により製造したことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の樹脂複合材料成型品の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2005321856A JP2007126593A (ja) | 2005-11-07 | 2005-11-07 | 樹脂複合材料成型品およびセパレーター、およびその製造方法 |
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JP2005321856A JP2007126593A (ja) | 2005-11-07 | 2005-11-07 | 樹脂複合材料成型品およびセパレーター、およびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114957914A (zh) * | 2022-03-28 | 2022-08-30 | 中建工程产业技术研究院有限公司 | 碳纤维复合材料、碳纤维复合材料制备及回收方法 |
-
2005
- 2005-11-07 JP JP2005321856A patent/JP2007126593A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114957914A (zh) * | 2022-03-28 | 2022-08-30 | 中建工程产业技术研究院有限公司 | 碳纤维复合材料、碳纤维复合材料制备及回收方法 |
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