JP2007125164A - 弁機構及び輸液セット - Google Patents
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Abstract
【課題】液送する液体の種類に関わらず用いることができ、液送ラインに液体を残留させつつ確実に液体を停止することのできる弁機構及び輸液セットを提供する。
【解決手段】液送ラインに設けられる輸液用弁機構1であって、上部に輸液製剤を流入させる流入部26を備え、下部に流入部26から流入した輸液製剤を流出させるテーパ孔40を有した流出部29を備えてなる弁保持容器2と、該弁保持容器2内に上下移動可能に保持され、テーパ孔40に当接してこれを開閉可能に閉塞する液止部5と該液止部5よりも上方に配置され浮力によって上昇する浮力部4とを有する弁体3と、から構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】液送ラインに設けられる輸液用弁機構1であって、上部に輸液製剤を流入させる流入部26を備え、下部に流入部26から流入した輸液製剤を流出させるテーパ孔40を有した流出部29を備えてなる弁保持容器2と、該弁保持容器2内に上下移動可能に保持され、テーパ孔40に当接してこれを開閉可能に閉塞する液止部5と該液止部5よりも上方に配置され浮力によって上昇する浮力部4とを有する弁体3と、から構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、医療用の液送ラインに用いられる弁機構及び輸液セットに関する。
病院で点滴を受ける際、輸液製剤(液体)の終了が近づくにつれ、点滴筒内が空になり、チューブ内に残留する輸液製剤までもが体内へ注入されて、さらにそのまま放置しておくと血管に繋がったチューブ内へ空気が貯留し、次の輸液製剤の注入の際に体内へその空気が注入される虞がある。このため、上述したような事態が生じることを避けようとする医療従事者の負担が大きい。また、血液(液体)がチューブ内に逆流して凝固してしまった場合、次の輸液を注入する際、体内に刺針された輸液用針(注入針)を再刺入しなければならず、患者の苦痛が増える虞がある。
そのため、輸液製剤の注入が完了しても、空気がチューブ内に進入しない機能を有した輸液ライン(液送ライン)が開示されている。
例えば、吊り下げた輸液瓶下部に差し込まれる瓶針と、点滴状態を確認する点滴筒と、クランプ及びその先端の静脈針とからなるセットに於いて、点滴筒内に輸液より軽いチェックボールを配置し、点滴筒内の輸液面と一緒に下降するチェックボールがチューブ入口を閉塞して空気のチューブへの流入を阻止するものがある(例えば、特許文献1参照)。
実開平5−7244号公報
しかしながら、このチェックボールは、輸液の比重よりも僅かに小さい比重を有するように形成されるもので、製造が困難となるだけでなく輸液製剤の種類に応じた比重のチェックボールを用意しなければならず汎用性に欠けてしまう。さらに、チェックボールの比重によっては輸液製剤内で浮きが弱く、輸液製剤が流れ難いという問題があった。また、チューブ入口を中央に有する点滴筒の底面は、液面に対して平行となっているため、点滴筒が少しでも傾くとチェックボールが左右にズレてしまい確実にチューブ入口を閉塞することができない虞も出てくる。さらに、液送すべき液体が輸液製剤ではなく、血液等の場合もあり、比重だけでなく液体の粘性によってもチェックボールの浮き沈みが不十分となり易い。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、液送する液体の種類に関わらず用いることができ、輸液ラインに液体を残留させつつ確実に液体を停止することのできる弁機構及び輸液セットを提供することにある。
目的を達成する請求項1記載の発明は、液送ラインに設けられる弁機構であって、上部に液体を流入させる流入部を備え、下部に前記流入部から流入した液体を流出させるテーパ孔部を有した流出部を備えてなる弁保持容器と、該弁保持容器内に上下移動可能に保持され、テーパ孔部に当接してこれを開閉可能に閉塞する液止部と該液止部よりも上方に配置され浮力によって上昇する浮力部とを有する弁体と、から構成されている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、浮力部は、下方に開口する御碗形状であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、浮力部は、内部が空洞に形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、液止部は、上方に開口する御碗形状であることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、液止部は、球状体であることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、弁保持容器は、弁体の浮力部に係止可能なガイド部を有することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、弁体は、可撓性材料からなることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、液止部の底部から突出して流出部内に挿入される軸部を設け、該軸部の下端部に、流出部に係合することで、浮力によって軸部が抜けることを規制する抜止部が設けられることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、抜止部は、軸部の下端部周縁から外方に張り出すとともに上側へと傾斜し、弁体が上昇すると流出部に係合して弾性変形することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項8又は9に記載の発明において、抜止部及び流出部のいずれか一方に液体を通過させる通過溝が形成されていることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の発明において、医療用の輸液ラインに設けられることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、一端側に輸液パックが連結可能であり、他端側に人体内へ刺入される注入針を有して輸液ラインを構成する輸液セットであって、液送ラインの途中に請求項11記載の弁機構を配置してなる。
請求項1に記載の発明によれば、液止部がテーパ孔部に当接することによって、弁保持容器内に液体を貯留させつつ液体の液送を停止させることができる。つまり、液体で満たされた弁保持容器内では浮力部の浮力によって浮いていた弁体が、液送する液体の終了が近づいて浮力部よりも液面が下がってくると、弁体を浮かせるだけの浮力が得られなくなった弁体が下降して、液止部が弁保持容器のテーパ孔部に当接することになる。よって、弁保持容器内を確実に閉塞することができる。したがって、弁体は液体の種類に関わらず浮力を生じさせることができるため、様々な液体に対応することができ、生産効率及び汎用性を高めることが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、浮力部の形状が、下方に開口する御碗形状であることによって、弁保持容器内が液体で満たされても浮力部の内部に空気を含むことができるため、弁体を上昇させるだけの十分な浮力を得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、浮力部の内部を空洞に形成することで、成形時に含まれる空気によって浮力を得ることができる。これにより、弁保持容器内が液体で満たされると浮力部の浮力によって弁体を上昇させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、液止部が上方に開口する御碗形状であることによって、内部に液体を貯留させることができる。そのため、液送する液体の終了が近づいて浮力部よりも液面が下がってくると、液止部内に貯留している液体の重みによって弁体が下降して液止部がテーパ孔部に当接することになる。この液止部内の液体の重みが当接状態を安定させ、したがって、弁保持容器内を確実に閉塞することができる。また、液体自体が重りとなるため、液体の種類に関わらず用いることができる。
請求項5に記載の発明によれば、液止部が球状体であることによって、テーパ孔部に良好に当接することができる。
請求項6に記載の発明によれば、弁体の浮力部に係止可能なガイド部を設けたことによって、弁保持容器内で上下移動する弁体の姿勢を安定させ、液止部を確実にテーパ孔部へと当接させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、弁体が可撓性材料からなることにより、テーパ孔部と液止部との封止力を高めることができる。
請求項8に記載の発明によれば、抜止部が設けられていることにより、浮力によって軸部が流出部内から抜けることを規制することができるので、液体の液送停止を確実に行うことができる。
請求項9に記載の発明によれば、弁体が上昇すると流出部に係合して弾性変形する抜止部によって、流入部から軸部が抜けることを規制するとともに弁体の上昇を規制する。つまり、抜止部が弾性変形することによって弁体の液止部とテーパ孔部との当接状態が解除され、これにより液体の液送が可能となる。また、弁体の上昇により弾性変形していた抜止部が、弁体の下降とともに弾性復帰する抜止部の弾性力によって、流出部から軸部を引き下げることができる。これにより、液止部をテーパ孔部に圧接させることになり、液体の液送停止をより確実なものとすることができる。さらに、抜止部の弾性復帰に伴う弾性力によって弁保持容器に対する弁体のブレを抑えることができる。
請求項10に記載の発明によれば、抜止部及び流出部のいずれか一方に液体を通過させる通過溝を形成したことにより、液体をスムーズに流出させることができる。
請求項11に記載の発明によれば、医療用の輸液ラインに設けられることにより、輸液ラインの途中で液体の輸液を停止することができ、体内へ空気が入り込む虞がなくなる。
請求項12に記載の発明によれば、一端側に輸液パックが連結可能であり、他端側に人体内へ刺入される注入針を有して構成される輸液セットの途中に弁機構を配置することによって輸液ラインの途中で液体の輸液を停止することができるので、体内へ空気が入り込む虞がなくなる。また、輸液パックを取り替えるだけで次の液体を輸液することができるので、輸液パックの交換ごとに注入針を体内へ再刺入する必要がなくなるため患者の負担を低減できる。さらに、この弁機構を例えば注入針側に設けることにより、液体を無駄にすることなく適量の液体を輸液ラインに残留させることができる。
次に、本発明の一実施形態を図1から図10を参照して以下に説明する。
本実施形態の輸液用弁機構(弁機構)1は、図1に示すように、輸液製剤(液体)を通過させる略円筒状の弁保持容器2と、該弁保持容器2内に上下動可能に保持される弁体3とから構成されており、弁保持容器2の両端部に、輸液製剤を輸液するための外部輸液手段(以下、チューブとする。)を装着可能に形成されている。
本実施形態の輸液用弁機構(弁機構)1は、図1に示すように、輸液製剤(液体)を通過させる略円筒状の弁保持容器2と、該弁保持容器2内に上下動可能に保持される弁体3とから構成されており、弁保持容器2の両端部に、輸液製剤を輸液するための外部輸液手段(以下、チューブとする。)を装着可能に形成されている。
弁体3は、図1〜図3に示すように、下向きに開口する御碗型の浮力部4と、上向きに開口するとともに浮力部4よりも小径をなす御碗型の液止部5を有した輸液受部6とから構成されており、その全体が可撓性材料から形成されるものである。浮力部4は、図2に示すように、内側に凹部(空気室)7を有する略半球状を呈するもので、開口部8の直径が後述する弁保持容器2の直径よりも小径となるよう形成されており、その深さは、空気室7内に空気を十分に貯留可能な深さと成っている。この浮力部4の中心部には、輸液受部6に取り付けるための取付孔9が形成されている。
輸液受部6は、図3に示すように、上下に軸線を配した細棒状の軸部10と、該軸部10の下端側に配置されるとともに上向きに開口する御碗型の液止部5と、軸部10の下端部に設けられる環状のフィン(抜止部)12とから形成されており、軸部10の上端に上記浮力部4を取り付け可能としたものである。軸部10は、その直径が浮力部4の取付孔9の直径と同径に形成してあり、浮力部4の取付孔9内に挿入可能となっている。軸部10は、その軸方向一端側に半径方向外側に突出する第1凸部13及び第2凸部14を有しており、先端に第1凸部13を、該第1凸部13よりも軸方向内側に第2凸部14を、互いに所定間隔をおいて連続して配設されている。さらに、軸部10の他端側に設けられているフィン12は、軸部10の端部周縁から外方に張り出すとともに上方へと傾斜し、先端に向かって薄肉に形成されているため、可撓性材料からなっている弁体3における他の箇所よりも弾性変形がし易くなっている。さらに、このフィン12は、図4に示すように、先端の周方向所定の箇所に、外方へと開口する通過溝15を有している。通過溝15の形状や個数については、輸液製剤の輸液速度に影響を与えないよう適宜設定される。
液止部5は、内側に凹部を有する略半球状を呈するもので、開口部18の直径が浮力部4の開口部8の直径よりも小径となるよう形成されており、その深さは、凹部に輸液製剤を十分に貯留可能な深さとなっている。液止部5は、その開口部18を第1凸部13及び第2凸部14側へ向けた状態で軸部10の軸方向中央部よりもフィン12側に偏って設けられ、軸部10が、液止部5の中心部を貫くようにして該液止部5の底部からその一部が突出している。
このような輸液受部6の一端側に、上述した浮力部4が取り付けられる。浮力部4は、その開口部8を液止部5の開口部18と対向させるようにして、取付孔9内に軸部10を挿入させ、軸部10の一端側に設けられている第1凸部13と第2凸部14との間に保持される。浮力部4は可撓性材料から形成されているため、軸部10に取り付ける際には、軸部10に浮力部4を押し付けることで取付孔9が弾性変形する。そのため、第1凸部13及び第2凸部14よりも小径をなす取付孔9であっても、拡径しながら第1凸部13を通過させ、弾性復帰することで第1凸部13と第2凸部14との間の軸部10に保持される。第1凸部13と第2凸部14との間隔を浮力部4の肉厚に合わせて設定しておくことで浮力部4が軸方向で動くことなく固定される。輸液受部6に保持された浮力部4が、第1凸部13あるいは第2凸部14を通過するためには、再び浮力部4に相当の外力が加えられない限り取付孔9が拡径することはない。これにより、浮力部4と輸液受部6とが一体的に保持されて弁体3が構成される。なお、輸液製剤を凹部内に貯留させ易くするため、液止部5の開口側を若干外方へと拡がりをなすように形成してもよい。
弁保持容器2は、図1に示すように、有蓋円筒形状の上位流入体20と、該上位流入体20に突き合わせ係合される有底円筒形状の下位流出体21とから構成されている。
上位流入体20は、図5に示すように、弁体3を挿入可能とする保持穴22を有した上位弁保持部23と、上位流入体20の一端を覆う蓋部24の略中央に設けられ、チューブを外装可能であるとともに該チューブから液送される輸液製剤を弁保持容器2(保持穴22)内に流入させるための流入孔25を有した円筒状の流入部26とからなり、該流入部26の外径はチューブの内径と同径であるか若しくは若干大径となるよう形成されている。
上位流入体20は、図5に示すように、弁体3を挿入可能とする保持穴22を有した上位弁保持部23と、上位流入体20の一端を覆う蓋部24の略中央に設けられ、チューブを外装可能であるとともに該チューブから液送される輸液製剤を弁保持容器2(保持穴22)内に流入させるための流入孔25を有した円筒状の流入部26とからなり、該流入部26の外径はチューブの内径と同径であるか若しくは若干大径となるよう形成されている。
下位流出体21は、図6及び図7に示すように、上記上位流入体20の蓋部24の直径と同径をなす底部27を有した下位弁保持部28と、底部27の略中央に設けられ、チューブを外装可能な円筒状の流出部29を有している。
下位流出体21は、一方に開口する流出穴部31を有している。この流出穴部31は、図6に示すように、中央に液止部5よりも大径を成すとともに弁体3の浮力部4よりも小径を成す円筒形状の中心穴32と、該中心穴32の周囲に、軸心を中心として互いに直交する直径上に略円筒形状の流出溝33を4つ有して構成されている。中心穴32の四方に配置される流出溝33の直径は、それぞれ同径をなすとともに、中心穴32に連通するようにその周方向の一部が軸方向に沿って開口している。
下位流出体21は、一方に開口する流出穴部31を有している。この流出穴部31は、図6に示すように、中央に液止部5よりも大径を成すとともに弁体3の浮力部4よりも小径を成す円筒形状の中心穴32と、該中心穴32の周囲に、軸心を中心として互いに直交する直径上に略円筒形状の流出溝33を4つ有して構成されている。中心穴32の四方に配置される流出溝33の直径は、それぞれ同径をなすとともに、中心穴32に連通するようにその周方向の一部が軸方向に沿って開口している。
中心穴32の外周に沿って連設される流出溝33同士の間に、下位流出体21の開口側端面34から軸方向内側へと所定の深さで凹むガイド部35が形成されている。このガイド部35は、弁体3の浮力部4を挿入可能な直径で下方に向かって縮径するテーパ壁部36と軸方向に対して垂直をなす穴底37とからなり、中心穴32の周方向に流出溝33とガイド部35とが交互に存在する。また、図7に示すように、中心穴32の孔径が弁体3の液止部5よりも大径を成すとともに弁体3の浮力部4よりも小径を成すことから、各ガイド部35の穴底37に上記弁体3の浮力部4の端部が当接することになって、弁体3を水平に保持することを可能にする。また、各流出溝33がガイド部35のテーパ壁部36よりも半径方向外側に突出するようにして形成されているため、下位流出体21の側部21Bの肉厚が部分的に若干薄肉とされている。そうは言うものの、上位流入体20の側部20B(図5参照)に比べるとその肉厚はかなり厚く形成されている。
流出部29は、図7に示すように、流出穴部31の中心穴32に連通する流出孔39を有しており、外径はチューブの内径と同径であるか若しくは若干大径となるよう形成されている。流出孔39は、互いに軸方向で分離する複数の孔からなるもので、詳しくは、上記流出穴部31の底面31bに開口し、中心穴32と軸心を一致させて底面31bの中央から下方に向かって縮径するテーパ孔(テーパ孔部)40と、該テーパ孔40の下端に連通するとともに上記弁体3の軸部10を挿通可能とする通過孔41と、該通過孔41の下端に連通するとともに通過孔41よりも大径をなし、弁体3のフィン12を係止可能とする流出穴42とから構成される。テーパ孔40の傾斜角度は、上記弁体3の液止部5の湾曲形状にできるだけ沿うような角度となっていて、液止部5が当接することを可能としている。
このような流出穴部31及び流出孔39からなる下位流出体21により、各流出溝33内の輸液製剤が中心穴32を介して流出孔39へと流出することになって、上位流入体20から流入した輸液製剤をチューブへ流出させることになる。
このような流出穴部31及び流出孔39からなる下位流出体21により、各流出溝33内の輸液製剤が中心穴32を介して流出孔39へと流出することになって、上位流入体20から流入した輸液製剤をチューブへ流出させることになる。
さらに、下位流出体21の開口側の端部には、その外周面に、上記上位流入体20の他端側を係合可能にする係合段部43が形成されている。この係合段部43により上位流入体20と下位流出体21との係合状態が確実となり、一体に接合されることで弁保持容器2が構成されることになる。また、係合段部43の段差量を、上位流入体20の側部20Bの肉厚に対応させておくと、互いに一体とすることで完成する弁保持容器2の側部が面一となるため、外観を良好に保つことができる。弁保持容器2の内部には、上位流入体20と下位流出体21とを係合させることで、保持穴22及び流出穴部31により構成される保持空間44が形成される。
弁体3は、上記のように構成される弁保持容器2の保持空間44内に保持される(図1参照)。弁体3を保持させる際には、弁体3の浮力部4が上方となるように、まず、下位流出体21の開口側から弁体3のフィン12側を挿入させていく。そして、流出穴部31の中心穴32を通過させて、さらに流出孔39内へと挿入させようとすると、軸部10の下端部に設けられているフィン12が流出部29のテーパ孔40に当接する。それにもかかわらず、弁体3を押し進めていくと、その弾性によって径方向内側に傾斜しながら通過孔41内を通過していき、外方へと抜け出るとすぐに弾性復帰することによって、該フィン12は元の形状に復元する。フィン12の直径が通過孔41の直径よりも大径をなしていることから、下位流出体21から弁体3を引き抜こうとしても、フィン12の先端が通過孔41の端部、つまり、流出穴42の底部に係止することになる。したがって、一旦下位流出体21に組み込まれた弁体3は外すことが困難となり、実質的に一体化される。
フィン12は通常、その先端が流出部29の流出穴42の底部に当接した状態で保持され、この状態のとき、弁体3の液止部5は流出穴部31内の中心穴32内に挿入されて流出孔39のテーパ孔40に当接し、浮力部4はガイド部35に当接している。このように弁体3が下位流出体21に組み込まれた後、上位流入体20が取り付けられて輸液用弁機構1が完成する。
本実施形態の輸液用弁機構1は、主に医療用の輸液ライン(液送ライン)に用いられるものであり、図8中符号50は輸液セットを示している。この輸液セット50は、一端側に輸液パック52を連結可能とし、他端側に人体内へ刺入される静脈針53(注入針)を有して輸液ラインを構成するものである。詳しくは、所定高さに吊り下げられる輸液製剤51の入った輸液パック52に一端が連結され、他端側に人体内へ刺入される静脈針53を有するチューブ54と、チューブ54の途中に設けられて輸液製剤51の滴下状態を確認する点滴筒55と、輸液速度を調節するクランプ56とを備え、輸液パック52内の輸液製剤51をチューブ54を介して人体内へと投与するものである。輸液用弁機構1は、このようなチューブ54における点滴筒55の下流に設けられるもので、弁保持容器2の流入部26を上流側にして、例えば、静脈針53の近傍に配置される。図8においては、クランプ56の下方に輸液用弁機構1が設けられているが、クランプ56と輸液用弁機構1との位置関係はこれに限ったものではない。さらに、輸液用弁機構1は、輸液ラインの途中に設けられていればよく、上述したようにチューブ54の途中に設けてもよいし、点滴筒55の底部に組み込んで該点滴筒55と一体的に形成するようにしてもよい。
輸液セット50に輸液用弁機構1を設けるには、チューブ54を点滴筒55を備える上方チューブ54aと静脈針53を備える下方チューブ54bとに分け、弁保持容器2に取り付ける。つまり、上方チューブ54aを上位流入体20の流入部26に外装させ、下方チューブ54bを下位流出体21の流出部29に外装させる。このとき、流入部26及び流出部29の外径をチューブ54の内径よりも若干大きい大きさに形成しておき、チューブ54a,54bを押し広げながら挿入させることで接着剤等を必要とすることなく互いを固定させることができる。こうして、使用時に直立状態となるように保持される輸液用弁機構1は、図1に示すように、弁体3の液止部5が弁保持容器2のテーパ孔40に当接した状態となっている。
輸液を開始、停止状態とする弁体3の動きについて、図8を参照しつつ、主に図9及び図10を用いて説明する。
輸液を開始するには、チューブ54内を輸液製剤51で満たして空気を完全に排出させなければならない。輸液パック52から点滴筒55及びクランプ56を介して一定の量で流出する輸液製剤51は、上方チューブ54aから流入部26の流入孔25内を通って保持空間44内に流入し、保持空間44内にその底部側から除々に貯留されていく。このとき、その液面が弁体3の液止部5の開口部18よりも上昇し、輸液製剤51の重みによって液止部5がテーパ孔40を十分に閉塞するまでは、テーパ孔40から輸液製剤51が流出部29へと流れる。しかし、流出部29から流出する輸液製剤51の量よりも流入部26から流入する輸液製剤51の量の方が多いので、保持空間44に輸液製剤51が除々に貯まっていくことになる。このようにして、保持空間44内に輸液製剤51が貯留していくと、その液面がさらに上がり、弁体3の浮力部4よりも上がる。すると、浮力部4内の空気は抜けずにそのまま浮力部4の空気室7内に貯留されることになる。そして、図9に示すように、浮力部4の浮力がフィン12の弾性力よりも大きくなって弁体3が上昇する。このとき、フィン12は弾性変形によってその傾斜角度を拡大させた状態となる。弁体3の浮力は、浮力部4の空気室7内に貯留している空気によって強められ、輸液製剤51の流動方向に反して確実に浮き上がることになる。弁体3が浮くことで液止部5と流入部26のテーパ孔40との間に隙間ができ、流出孔39への入り口を開口する。こうして輸液製剤51が自然と流れていくようになって輸液が開始される。そして、輸液製剤51は、流出部29のテーパ孔40、通過孔41及び流出孔39内をつたって、フィン12に形成された通過溝15(図4参照)から下方チューブ54bへと流れていく。
輸液を開始するには、チューブ54内を輸液製剤51で満たして空気を完全に排出させなければならない。輸液パック52から点滴筒55及びクランプ56を介して一定の量で流出する輸液製剤51は、上方チューブ54aから流入部26の流入孔25内を通って保持空間44内に流入し、保持空間44内にその底部側から除々に貯留されていく。このとき、その液面が弁体3の液止部5の開口部18よりも上昇し、輸液製剤51の重みによって液止部5がテーパ孔40を十分に閉塞するまでは、テーパ孔40から輸液製剤51が流出部29へと流れる。しかし、流出部29から流出する輸液製剤51の量よりも流入部26から流入する輸液製剤51の量の方が多いので、保持空間44に輸液製剤51が除々に貯まっていくことになる。このようにして、保持空間44内に輸液製剤51が貯留していくと、その液面がさらに上がり、弁体3の浮力部4よりも上がる。すると、浮力部4内の空気は抜けずにそのまま浮力部4の空気室7内に貯留されることになる。そして、図9に示すように、浮力部4の浮力がフィン12の弾性力よりも大きくなって弁体3が上昇する。このとき、フィン12は弾性変形によってその傾斜角度を拡大させた状態となる。弁体3の浮力は、浮力部4の空気室7内に貯留している空気によって強められ、輸液製剤51の流動方向に反して確実に浮き上がることになる。弁体3が浮くことで液止部5と流入部26のテーパ孔40との間に隙間ができ、流出孔39への入り口を開口する。こうして輸液製剤51が自然と流れていくようになって輸液が開始される。そして、輸液製剤51は、流出部29のテーパ孔40、通過孔41及び流出孔39内をつたって、フィン12に形成された通過溝15(図4参照)から下方チューブ54bへと流れていく。
輸液製剤51の終了が近づいて、液面が下がってくると、それにしたがって弁体3も沈んでくる。つまり、液面が弁体3の浮力部4よりも下になって浮力を受けなくなった弁体3は、図10に示すように、液止部5に貯留している輸液製剤51の重みによって下降して、浮力部4がガイド部35に当接すると同時に液止部5が弁保持容器2のテーパ孔40に当接する。またこれに同期して、弁保持容器2の流出孔39の底部に当接していたフィン12が弾性復帰することによって、弁保持容器2の保持空間44から弁体3をさらに引き下げることになる。すると、液止部5をテーパ孔40へより圧接させることになって輸液製剤51の通る隙間をなくし確実に閉塞させることができる。つまり、液止部5は、可撓性材料から形成されているため、弾性変形することによってテーパ孔40に対する密着性がより高められるのである。こうすることで、弁保持容器2内に残った輸液製剤51は、それ以上は輸液されず、空気が下方チューブ54b内へと入り込むことはない。よって、実質的にチューブ54を閉塞することになる。
このように、液止部5がテーパ孔40に当接することによって、弁保持容器2内に輸液製剤51を貯留させつつ輸液製剤51の輸液を停止させることができる。つまり、輸液製剤51で満たされた弁保持容器2内では浮力部4の浮力によって浮いていた弁体3が、輸液する輸液製剤51の終了が近づいて浮力部4よりも液面が下がってくると、弁体3を十分に浮かせるだけの浮力が得られなくなった弁体3は、液止部5の凹部に溜まっている輸液製剤51の重みと自重とによって下降して、液止部5が弁保持容器2のテーパ孔40に当接することになる。よって、弁保持容器2内を確実に閉塞することができる。
また、浮力部4の形状が下方に開口する御碗形状となっているため、弁保持容器2内がどのような種類の輸液製剤51で満たされても浮力部4の内部(空気室7)に空気を含むことができ、弁体3の浮力が高められて弁体3を上昇させるだけの十分な浮力を得ることができる。よって、弁保持容器2内を確実に開口することができる。
液止部5が上方に開口する御碗形状であることによって、内部に輸液製剤51を貯留させることができる。そのため、輸液する輸液製剤51の終了が近づいて浮力部4よりも液面が下がってくると、液止部5内に貯留している輸液製剤51の重みによって弁体3が下降して液止部5がテーパ孔40に当接することになる。この液止部5内の輸液製剤51の重みが当接状態を安定させ、したがって、弁保持容器2内を確実に閉塞することができる。また、輸液製剤51自体が重りとなるため、輸液製剤51の種類に関わらず用いることが可能となる。なお、液止部5の形状を御碗型にしたことによってその湾曲面がテーパ孔40に当接したとき、その弾性力がはたらき易い。
さらに、浮力によって弁体3が上昇すると流出部29に係合して弾性変形するフィン12によって、流入部26から軸部10が抜けることを規制するとともに弁体3の上昇を規制する。つまり、フィン12が弾性変形することによって弁体3の液止部5とテーパ孔40との当接状態が解除され、これにより輸液製剤51の輸液が可能となる。また、弁体3の上昇により弾性変形していたフィン12が、弁体3の下降とともに弾性復帰するフィン12の弾性力によって下方へ軸部10を引き下げることができる。これにより、液止部5をテーパ孔40に圧接させることになって、輸液製剤51の輸液停止をより確実なものとすることができる。弁体3は可撓性材料から形成されているため、テーパ孔40と液止部5との封止力をより高めることができる。さらに、フィン12の弾性復帰に伴う弾性力によって弁保持容器2に対する弁体3のブレを抑えることができる。また、浮力部4がガイド部35に当接していることで、弁体3が安定し、輸液用弁機構1が斜めに傾いたとしても液止部5とテーパ孔40との当接状態を良好に保つことができる。
フィン12に輸液製剤51を通過させる通過溝15を形成することにより、流出孔39の底部に常に当接しているフィン12から輸液製剤51をスムーズに流出させることができ、輸液速度を乱すことなく輸液可能にする。
一端側に輸液パック52が連結可能であり、他端側に人体内へ刺入される静脈針53を有して構成される輸液セット50の途中に輸液用弁機構1を配置することによって輸液ラインの途中で輸液製剤51の輸液を停止することができるので、体内へ空気が入り込む虞がなくなる。また、輸液パック52を取り替えるだけで次の輸液製剤51を輸液することができるので、輸液パック52の交換ごとに静脈針53を体内へ再刺入する必要がなくなり、患者の負担を低減できる。さらに、この輸液用弁機構1を静脈針53側に設けることにより、輸液製剤51を無駄にすることなく適量の輸液製剤51を輸液ラインに残留させることが可能である。したがって、チューブ54内に患者の血液が逆流したリ、血管内に空気が入り込む虞もなくなるので、患者及び医療従事者の負担を軽減することができる。
したがって、弁体3は輸液製剤51の種類に関わらず浮力を生じさせることができるため、様々な輸液製剤51に対応することができる。さらに、輸液製剤51だけでなく、粘性の高い血液等にも対応することができるようになり、汎用性及び生産効率を高めることが可能となる。よって、本発明の輸液用弁機構1は、輸液する液体の比重や粘性に関わらず用いることができる。
なお、弁体3の浮力部4は、上記実施形態に限らず、図11に示すように、内部を空洞に形成し、閉塞空間(空気室)58を有する浮力部59であっても良い。空洞にすることで予め空気を取り込んだ状態にでき、その空気の浮力によって輸液製剤51で満たされた弁保持容器2内で弁体3を上昇させることができる。このような浮力部59の形状は様々で、球状だけでなく、円柱状や球状をなすもの、平面視で楕円や多角形状をなすもの等でもよい。つまり、弁体3を上昇させる浮力を十分に得ることのできる空気を含んで形成されたものであればよい。しかしながら、弁保持容器2内のガイド部35に当接可能な形状及び大きさである必要がある。このように、浮力部59の内部を空洞に形成することで、成形時に含まれる空気によって浮力を得ることができるので、弁保持容器2内が輸液製剤51で満たされると、浮力部の浮力によって弁体57を上昇させることができる。
また、液止部5についても上記実施形態に関わらず、図12に示すような球状体からなる液止部45であってもよい。その直径は、テーパ孔40に良好に当接することを可能にする球面となるように設定する。
さらに、上記実施形態に於いては、弁体3にフィン12を形成したものを例に挙げたが、図13及び図14に示すようなフィン12を有しない弁体60及び63であってもよい。フィン12の弾性変形によって液止部5をテーパ孔40に圧接するほうが密着性が増して好ましいのであるが、液止部5に貯留した輸液の重みによって弁体60及び63が下降して液止部5,45がテーパ孔40に当接するだけでも十分に閉塞可能である。このような弁体60及び63は、一端に浮力部4を備えた軸部10の他端側に液止部5,45を有して構成される。
このようなフィン12のない弁体63を保持するためには、弁保持容器2に、例えば、図15に示すような弁体63の浮力部4と液止部5との間に突出する環状のガイド部61を形成し、浮力部4だけでなく液止部5も当接可能となるようにしておく必要がある。その中央に、軸部10よりも若干大径を成す孔部62を形成して、該孔部62に弁体3の軸部10を挿入させた状態で保持することで、浮力によって上下移動する弁体63の姿勢が安定し、液止部5を確実にテーパ孔40へと当接させることができる。また、弁体63が浮力によって上昇する際、液止部5がガイド部35に係止することによって弁体63の上昇を規制することができる。
弁体3は、以上に述べた浮力部4及び液止部5の実施形態を各々組み合わせて形成してもよい。
なお、通過溝15は、フィン12ではなく、流出部29に形成してもよい。その場合、フィン12の先端が通過孔41の端部、つまり、流出部29の流出穴42の底部に係止している状態でも流出孔39内をスムーズに輸液製剤51を輸液可能にするため、通過孔41と流出穴42とを連通させるようにして通過溝15を形成してもよい。
また、上記では、輸液用弁機構1を医療用の輸液ラインに設けることとしたが、これに限らず、産業用等の各種機器における液送ラインにも応用することができる。
1 輸液用弁機構(弁機構)
2 弁保持容器
3,57,63 弁体
4,59 浮力部
5,45 液止部
10 軸部
12 フィン(抜止部)
15 通過溝
29 流出部
26 流入部
35,61 ガイド部
40 テーパ孔(テーパ孔部)
50 輸液セット
52 輸液パック
53 静脈針(注入針)
2 弁保持容器
3,57,63 弁体
4,59 浮力部
5,45 液止部
10 軸部
12 フィン(抜止部)
15 通過溝
29 流出部
26 流入部
35,61 ガイド部
40 テーパ孔(テーパ孔部)
50 輸液セット
52 輸液パック
53 静脈針(注入針)
Claims (12)
- 液送ラインに設けられる弁機構であって、
上部に液体を流入させる流入部を備え、下部に前記流入部から流入した液体を流出させるテーパ孔部を有した流出部を備えてなる弁保持容器と、
該弁保持容器内に上下移動可能に保持され、前記テーパ孔部に当接してこれを開閉可能に閉塞する液止部と該液止部よりも上方に配置され浮力によって上昇する浮力部とを有する弁体と、から構成されていることを特徴とする弁機構。 - 前記浮力部は、下方に開口する御碗形状であることを特徴とする請求項1記載の弁機構。
- 前記浮力部は、内部が空洞に形成されていることを特徴とする請求項1記載の弁機構。
- 前記液止部は、上方に開口する御碗形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の弁機構。
- 前記液止部は、球状体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の弁機構。
- 前記弁保持容器は、前記弁体の前記浮力部に係止可能なガイド部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の弁機構。
- 前記弁体は、可撓性材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の弁機構。
- 前記液止部の底部から突出して前記流出部内に挿入される軸部を設け、該軸部の下端部に、前記流出部に係合することで、浮力によって前記軸部が抜けることを規制する抜止部が設けられることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の弁機構。
- 前記抜止部は、前記軸部の下端部周縁から外方に張り出すとともに上側へと傾斜し、前記弁体が上昇すると前記流出部に係合して弾性変形することを特徴とする請求項8記載の弁機構。
- 前記抜止部及び前記流出部のいずれか一方に前記液体を通過させる通過溝が形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の弁機構。
- 医療用の輸液ラインに設けられることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の弁機構。
- 一端側に輸液パックが連結可能であり、他端側に人体内へ刺入される注入針を有して輸液ラインを構成する輸液セットであって、
輸液ラインの途中に請求項11記載の弁機構を配置してなる輸液セット。
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