JP2007123134A - 電界放出形電子銃 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電界放出型電子銃を搭載する電子線装置において、試料上の電子線スポットの周りに拡がる散乱電子を除去する。
【解決手段】 引出電極5と加速電極6の間にリペラ電極10を配置し、リペラ電極10に所定の電圧を印加するためのリペラ電源11を設ける。エミッタから引き出された電子が引出電極5に衝突して発生し加速電極6側に流れ込む二次電子SEはリペラ電極10により跳ね返されて試料には到達しない。
【選択図】図2

Description

本発明は電子顕微鏡等に搭載される電界放出形電子銃(以下、FEGと略称する)に関わり、詳しくは試料面上に照射される散乱電子の量を大幅に減少させるように改良した電界放出形電子銃に関する。
FEGは、放射する電子線のエネルギー幅が極めて小さく、高輝度が得られるので、観察・分析の性能向上に適しており、電子顕微鏡を始めとして多くの電子線装置に使われている。FEGは、電子を放出するエミッタと引出電極の間に電圧を印加して、エミッタ先端部に形成された強電界によりエミッタから電子を引き出すようにしている。このFEGには、エミッタを加熱するサーマルタイプと加熱しないコールドタイプがある。エミッタから引き出された電子は加速電極(陽極又はアノードに同じ)により加速されて試料上に照射される。
図1は、従来のサーマルタイプのFEG断面の概略構成例を示した図である。図1において、電子銃1には、エミッタ2、エミッタ2の側面などから発生する熱電子を抑制するためのサプレッサ電極4、エミッタから電子を引き出すための引出電極5、電子に所定のエネルギーを与えるための加速電極6が配置されている。それぞれの電極は略円盤形状を為し、各電極の中央に電子線の通過する孔が設けられている。サプレッサ電極4と引出電極5には、それぞれサプレッサ電源7と引出電源8から必要な電圧が供給される。加速電極9は接地電位に保たれ、エミッタ2には加速電源9から負の高電圧が印加される。エミッタから放出された電子は、各電極の中央に設けられている孔を通過して所定のエネルギーを得るようになっている。なお図1の構成例では、サーマルタイプのFEGのためエミッタ加熱電源3とサプレッサ電極4、サプレッサ電源7が構成されているが、コールドタイプのFEGでは不要である。
図4に、従来のサーマルタイプのFEGの電極と電位の関係を表すグラフを示す。縦軸は電子線EBの光軸上の電位(−V)を表し、負に大きい方向を上方としている。また横軸は光軸上のエミッタからの距離を表している。エミッタ位置の電位は、絶対値が加速電圧に等しい負電位(−VA)となっており、サプレッサ電極位置の電位は、エミッタの電位より僅かに絶対値が大きい負電位(−VA−VS)となっている。引出電極にはエミッタから電子を引き出すための正電圧VEが印加されるため、引出電極位置の電位はエミッタより絶対値が小さい負電位(−VA+VE)となっている。加速電極位置の電位は接地電位(−V=0)に等しくなっている。
D.W. McComb and G.C. Weatherly, Ultramicroscopy 68, 61-67 (1997) 特開平5−275040号広報
FEGにおいては、エミッタから発生した電子を引き出す際に、引出電極に一般的に2〜4kV程度の引出電圧を印加する。この場合、引き出された電子は必ずしも引出電極の中央に設けられた孔を全て通過するとは限らず、孔の周りに衝突する割合も大きい。一次電子に与えられる2〜4kV程度の電圧は、一次電子が金属等に衝突して二次電子を発生させる効率の最も高い電圧領域である。そのため、引出電極の孔の周辺からは一次電子の衝突によって発生した多くの二次電子が、引出電極のアースに対する電圧に相当する加速電圧(VA−VE)を有して加速電極側に流れてくる。
図1において、引出電極5の中央の穴周辺で発生した二次電子SEが加速電極6の側に向かう様子を模式的に示している。このようにして発生した電子の発生領域は、FEGのエミッタから引き出される本来の領域の大きさに比べて桁違いに大きい。また、これら電子の持つ電圧に換算したエネルギーは、本来の加速電圧VAから引出電圧VEに相当する分だけ低い加速電圧(VA−VE)となり、加速電極の後に配置された電子レンズによる収束条件が加速電圧VAの電子とは異なるため正しく収束しないことになる。これら二つの理由により、本来の加速電圧VAを有する電子によって試料面上に細く絞られた電子線スポットが形成されても、その周りにそれよりも加速電圧の低い電子による拡がった電子線スポットが生じてしまう。
本来の電子線スポットの周りに拡がる邪魔な電子は一般に散乱電子と呼ばれる。図7はこの様子を模式的に示したもので、横軸は試料面上の距離、縦軸は電子線の強度分布を表す。(a)は 散乱電子が生じていない場合、(b)は広がりを持つ散乱電子が生じている場合を示している。(b)の状態では、走査電子顕微鏡の画像の分解能や画質に悪影響を及ぼし、分析の際には分析を目的とする領域の外側部分からの信号を検出して分析してしまうなど著しい不都合を生じる(例えば、非特許文献1を参照)。
一方、高温に加熱したW(タングステン)フィラメントやLaB6(6ホウ化ランタン)を電子源に用いる電子銃は、FEGが必要とする引出電極のような加速電圧に対して電圧差を有する電極を持たない。WフィラメントやLaB6を用いる電子銃を搭載した装置においては、本来の電子線スポットに対する散乱電子の強度の割合は、FEGを搭載する装置に比べて数10分の1以下である。引出電極を有しない電子銃を搭載する装置においては、電子線通路に設けられた各種絞りの孔の周辺に衝突した電子が散乱電子の主なものとなるが、これら電子は飛行方向が本来の電子線の光軸に対してある角度を有しているため、散乱電子を防止するための絞りを設けることによってその大部分を除去することが可能である(例えば、特許文献1の特開平5−275040号広報を参照)。
しかし、FEGの場合は、引出電極の中央に設けられた孔の壁面で発生した電子が引出電極と加速電極との間の電界によってその軌道を曲げられ、結果として光軸に一致し又は光軸近傍で平行な軌道を有するようになることもある。このような電子を主とする散乱電子は、単に電子線通路に絞りを追加しただけでは取り除くことができない。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、試料面上に照射される散乱電子の量を大幅に減少させることにより、走査電子顕微鏡像の分解能及び画質の向上と分析精度の向上を可能とするFEGを提供することを目的とする。
上記の問題を解決するために、本発明は、
エミッタと、前記エミッタから電子を引き出す引出電極と、前記引出電極から引き出した電子を加速する加速電極とを有する電界放出形電子銃であって、
前記引出電極を挟んで前記エミッタと対向する側に配置されるリペラ電極と、前記リペラ電極に所定の電圧を印加するリペラ電源を備え、
前記リペラ電極の電位が前記エミッタの電位と前記引出電極の電位との間の電位となるように、前記リペラ電源により前記リペラ電極に所定の電圧を印加するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記リペラ電極が前記引出電極と前記加速電極との間に配置されることを特徴とする。
また本発明は、前記リペラ電極が前記引出電極を挟んで前記エミッタと対向する側に配置されることを特徴とする。
本発明によれば、エミッタと、前記エミッタから電子を引き出す引出電極と、前記引出電極から引き出した電子を加速する加速電極とを有する電界放出形電子銃であって、前記引出電極を挟んで前記エミッタと対向する側に配置されるリペラ電極と、前記リペラ電極に所定の電圧を印加するリペラ電源を備え、前記リペラ電極の電位が前記エミッタの電位と前記引出電極の電位との間の電位となるように、前記リペラ電源により前記リペラ電極に所定の電圧を印加するようにしたので、
引出電極の中心に設けられた孔の近傍で生じた引出電極の電位に相当する加速電圧を有する電子をリペラ電極が形成する電場で抑止することにより、試料面上に達しないようにできる。そのため、本来の電子線スポットよりも拡がって試料面上に照射される散乱電子強度を大幅に減少させることができる。これにより、走査電子顕微鏡像の分解能及び画質の向上と分析精度の向上を図ることができる。
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図2は、本発明を実施するための電子銃100の概略構成例を示す図である。なお、図2において、図1の電子銃1と同じ又は類似の動作を行うものには共通の符号を付し説明の重複を避ける。図2においては、引出電極5と加速電極6の間にリペラ電極10が配置され、さらにリペラ電極10に所定の電圧を印加するためのリペラ電源11が設けられている。
図5に、電子銃100の電極と電位の関係を表すグラフを示す。図4と同様に、縦軸は電子線EBの光軸上の電位(−V)で負に大きい方向を上方とし、横軸は光軸上のエミッタからの距離を表している。また、図4と同じため図中には示していないが、光軸上のサプレッサ電極位置の電位は(−VA−VS)、引出電極位置の電位は(−VA+VE)である。加速電極位置の電位は接地電位(−V=0)に等しくなっている。
リペラ電極には、引出電極の電位に相当する加速電圧(VA−VE)を有する電子を引き出し電極側に跳ね返すために、リペラ電極の電位が引出電極の電位(−VA+VE)より負の方向に大きくなるような電圧(−VR)が印加されている。即ち、光軸上のリペラ電極位置の電位は(−VA+VE−VR)となっている。リペラ電極に印加する電圧(−VR)は、少なくともリペラ電極位置の電位が(−VA)と(−VA+VE)の間の電位となるような電圧であれば良いが、エミッタから引き出された電子が引出電極に衝突して発生する二次電子が持つ電圧に換算したエネルギーは、引出電極の電位に対してせいぜい数10Vでしかないので、実際にはVRも数10V程度に設定すれば充分である。図2中に、引出電極5の中央に設けられた孔の近傍で発生した二次電子SEが加速電極6の側に流れ込んだとき、リペラ電極10によって跳ね返される様子を模式的に示す。
次に、本発明の別の実施形態について説明する。図3は本発明を実施するための電子銃200の概略構成例を示す図である。なお、図3において図1の電子銃1と同じ又は類似の動作を行うものには共通の符号を付し、説明の重複を避ける。図3においては、加速電極6を挟んで引出電極5と反対側にリペラ電極20が配置され、さらにリペラ電極20に所定の電圧を印加するためのリペラ電源21が設けられている。
図6に、電子銃200の電極と電位の関係を表すグラフを示す。図4と同様に、縦軸は電子線EBの光軸上の電位(−V)で負に大きい方向を上方とし、横軸は光軸上のエミッタからの距離を表している。また、図4と同じため示していないが、図6において、光軸上のサプレッサ電極位置の電位は(−VA−VS)、引出電極位置の電位は(−VA+VE)である。加速電極位置の電位は接地電位(−V=0)に等しくなっている。
リペラ電極には、引出電極の電位に相当する加速電圧を有する電子を加速電極側に跳ね返すために、リペラ電極の電位が引出電極の電位(−VA+VE)より負の方向に大きくなるような電圧(−VR′)が印加されている。リペラ電極に印加する電圧(−VR′)は、少なくともリペラ電極位置の電位が(−VA)と(−VA+VE)の間の電位となるような電圧であれば良い。
なお、図3においては、接地電位に接続されたリペラ電源21からリペラ電極20に電圧(−VR′)を印加するようになっているが、リペラ電源21の正電位側を引出電極の電位に等しくなるように接続し、リペラ電極20に負電圧(−VR)を印加するようにしても良い。この時、光軸上のリペラ電極位置の電位は(−VA+VE−VR)となる。図3中に、引出電極5の中央に設けられた孔の近傍で発生した二次電子SEが加速電極6の側に流れ込んだとき、リペラ電極10によって跳ね返される様子を模式的に示す。
なお図2及び図3の構成例では、サーマルタイプのFEGのためエミッタ加熱電源3とサプレッサ電極4、サプレッサ電源7が構成されているが、コールドタイプのFEGでは不要である。
以上述べたように、リペラ電極を設けることによって、引出電極の中央に設けられた孔の近傍で発生した二次電子を試料に照射させないようにして、電子線スポットの周りに拡がる散乱電子を除去することができる。これにより、本発明のFEGを搭載する装置において、FEGの持つ性能を生かした高分解能且つ良質の画像による走査電子顕微鏡像の観察と正しい分析を行うことが可能となる。

従来の電界放出形電子銃の概略構成例。 本発明の実施の形態1における電界放出形電子銃の概略構成例。 本発明の実施の形態2における電界放出形電子銃の概略構成例。 従来の電界放出形電子銃の電極と電位の関係を説明するための図。 本発明の実施の形態1における電界放出形電子銃の電極と電位の関係を説明するための図。 本発明の実施の形態2における電界放出形電子銃の電極と電位の関係を説明するための図。 電子線スポットの周りに拡がる散乱電子が無い場合とある場合を比較比較した模式図。
符号の説明
(同一または類似の動作を行うものには共通の符号を付す。)
EB 電子線 SE 二次電子
1、100、200 電子銃 2 エミッタ
3 加熱電源 4 サプレッサ電極
5 引出電極 6 加速電極
7 サプレッサ電源 8 引出電源
9 加速電源 10、20 リペラ電極
11、21 リペラ電源

Claims (3)

  1. エミッタと、前記エミッタから電子を引き出す引出電極と、前記引出電極から引き出した電子を加速する加速電極とを有する電界放出形電子銃であって、
    前記引出電極を挟んで前記エミッタと対向する側に配置されるリペラ電極と、前記リペラ電極に所定の電圧を印加するリペラ電源を備え、
    前記リペラ電極の電位が前記エミッタの電位と前記引出電極の電位との間の電位となるように、前記リペラ電源により前記リペラ電極に所定の電圧を印加するようにしたことを特徴とする電界放出形電子銃。
  2. 前記リペラ電極が前記引出電極と前記加速電極との間に配置されることを特徴とする請求項1の電界放出形電子銃。
  3. 前記リペラ電極が前記引出電極を挟んで前記エミッタと対向する側に配置されることを特徴とする請求項1の電界放出形電子銃。

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