JP2007123054A - 液体燃料直接供給型燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 液体燃料直接供給型燃料電池の正極で生成される水を回収し、その水に含まれる金属イオンや金属片を除去して再利用に供する。
【解決手段】 電解質5を介して対設した負極6と正極7とを有し、負極6に液体燃料が供給され、正極7に酸化剤ガスが供給されるようにしたセル1または該セル1を複数個積層したセルスタックを発電ユニットとするとともに、前記正極7の電気化学反応によって生成した水を回収して燃料タンク2に戻すようにした水回収装置を設けた液体燃料直接供給型燃料電池システムにおいて、前記水回収装置が、生成した水を冷却する熱交換器8と、冷却された水から気体成分と液体成分とを分離する気液分離槽4と、分離された液体成分中の金属片または金属イオンを除去するフィルター11とを、少なくとも備えてなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は液体燃料直接供給型燃料電池システムに関するもので、さらに詳しく言えば、液体燃料と酸化剤ガスとを直接発電ユニットに供給して発電ができる、分散形電源、移動体用電源、小型携帯用電源に適した液体燃料直接供給型燃料電池の構造に関するものである。
近年、環境問題や資源問題への対策がクローズアップされ、その一環として燃料電池の開発が活発に行われている。特に、プロトン導電性固体高分子膜を電解質に用いた直接メタノール型燃料電池のような液体燃料直接供給型燃料電池は、燃料をガス化または改質せずに直接供給することによって発電できるという特徴を持っているため、構造がシンプルで、小型化、軽量化が容易であり、分散形電源、移動体用電源、小型携帯用電源として注目されている。
この直接メタノール型燃料電池は、プロトン導電性高分子固体高分子膜の電解質の両側に正極および負極を接合したセルをグラファイト製のセパレータで挟持されて、または該セルがグラファイト製のセパレータを介して多数積層されて発電ユニットを構成している。前記正極は多孔性のカーボンペーパーの表面に白金触媒を担持した炭素粉末が塗布されてなり、前記負極は同様のカーボンペーパーの表面に白金−ルテニウム触媒を担持した炭素粉末が塗布されてなる。
上記した直接メタノール型燃料電池は、負極に還元剤としてのメタノール水溶液を供給し、正極に酸化剤としての空気中の酸素を供給し、電解質を介した電気化学反応によって発電を行うものであり、その発電効率やエネルギー密度の点で、ニッケル−水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に代わる電源として注目されている。すなわち、負極に濃度が3%程度のメタノール水溶液を供給し、正極に空気を供給すると、負極の電気化学反応によって二酸化炭素が生成し、正極の電気化学反応によって水が生成し、負極側からは前述した二酸化炭素がメタノール水溶液とともに排出され、正極側からは前述した水が空気とともに排出される。
このような直接メタノール型燃料電池は、二酸化炭素とともに排出されたメタノール水溶液と、空気とともに排出された水とを、負極に供給するためのメタノール水溶液を貯蔵する燃料タンクに戻し、その濃度を3%程度に調製して、再度、負極に供給するようなシステム、すなわち、液体燃料直接供給型燃料電池システムに構成される。
しかしながら、上記したシステムにおいては、直接メタノール型燃料電池の運転温度が80℃程度であるため、正極側から排出される水の大部分は水蒸気としてシステム外に出てしまい、システム外に出なかった水と、二酸化炭素を除去した後のメタノール水溶液とを燃料タンクに戻して、再度負極に供給しようとすると、水が不足して、メタノール水溶液を適正な濃度にすることができないという問題があった。このような問題を解決するための方法の一つとして、特許文献1に開示されたような提案がなされている。
特開2005−108658号公報
特許文献1の提案は、正極側で生成した水蒸気を、ファンを備えたラジエータで冷却して液体の水として回収するものである。
上記のようなラジエータを設けると、正極側で生成した水蒸気を液体の水として回収することはできるが、回収された水には、負極の電気化学反応の過程で、負極側から正極側に透過してきたメタノールの酸化によって生成した、微量のホルムアルデヒドや蟻酸が副生成物として混在し、これらが、熱伝導率の高いことが求められるラジエータの材質である銅やアルミニウム等の金属を溶出させて、銅やアルミニウムの金属イオンを含有した水が前記燃料タンクに戻されるという問題があった。また、長期間の使用により、ラジエータの強度低下に起因する外部応力や残留応力によるストレス破壊の発生も考えられるため、ラジエータの材質である銅やアルミニウム等の金属片を含有した水が前記燃料タンクに戻されるという問題があった。そして、このような金属イオンや金属片がスタック内に入り込むと、電池特性を低下させるという問題もあった。例えば、金属イオンであれば、それがプロトン導電性高分子固体電解質膜に取り込まれて、そのイオン導電性を低下させて、出力特性を低下させることが考えられ、金属片であれば、液体燃料の供給路に蓄積して供給路を閉塞させて、液体燃料の供給不足に陥らせることが考えられる。
上記課題を解決するため、本発明は、プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質を介して負極と正極とを対設し、前記負極に液体燃料が供給され、前記正極に酸化剤ガスが供給されるようにしたセルまたは該セルを複数個積層したセルスタックからなる発電ユニットと、前記正極の電気化学反応によって生成した水を回収して前記負極に供給するための液体燃料を貯蔵する燃料タンクに戻す水供給装置とを備え、前記正、負極の電気化学反応によって起電力を得る液体燃料直接供給型燃料電池システムにおいて、前記水供給装置が、生成した水を冷却する熱交換器と、冷却された水から気体成分と液体成分とを分離する気液分離槽と、分離された液体成分中の金属片または金属イオンを除去するフィルターとを、少なくとも備えている(請求項1)ことを特徴とし、前記フィルターはイオン交換基を導入した不織布である(請求項2)ことを特徴とする。
本発明によれば、気液分離槽によって分離された液体成分中の金属片または金属イオンを除去するフィルターを備えていて、金属片はフィルターによって捕捉して除去し、金属イオンはフィルターに導入されたイオン交換基によって捕捉して除去するようにしたから、電池特性を低下させたり、液体燃料の供給路を閉塞させたり、といったことなく、回収した水を再利用に供することができる。
以下、本発明を、その実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液体燃料直接供給型燃料電池システムの例として示した直接メタノール型燃料電池システムの構成図であり、その特徴は、プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質5を介して負極6と正極7とを対設したセル1を発電ユニットとし、前記負極6に、液体燃料としてのメタノール水溶液を、その電気化学反応に適した濃度(約3%)にして貯蔵する燃料タンク2から供給し、正極7に、酸化剤ガスとしての空気を、図示していないポンプによって供給するようにしたことである。前記正極7では、その電気化学反応よって水が生成し、この水と反応に関与しなかった空気とが冷却ファン9の風が当たっている熱交換器8を通過して気液分離槽4に導入され、ここで気体と液体とに分離され、液体成分としての水が、ポンプ10によって、前記熱交換器8から溶出した金属イオンや金属片を除去するためのフィルター11を介して、燃料タンク2に導入され、負極6では、その電気化学反応によって二酸化炭素が生成し、この二酸化炭素と反応に関与しなかったメタノール水溶液とが気液分離槽3に導入され、ここで気体と液体に分離され、液体成分としてのメタノール水溶液が燃料タンク2に導入されるように構成される。また、気液分離槽4で分離された気体成分(空気)と気液分離槽3で分離された気体成分(二酸化炭素)とは気体成分回収手段12に導入され、必要な処理をした後大気中に放出される。
上記した実施の形態では、ポンプ10を設けたものを水供給装置としているが、気液分離槽4を燃料タンク2より上方に設けて重力によって生成した水が燃料タンク2に導入されるようにすれば、熱交換器8、気液分離槽4およびフィルター11のみで水供給装置としてもよい。
また、上記した実施の形態では、燃料タンク2に供給される水とメタノール水溶液によって電気化学反応に適した濃度(約3%)になるようにしているが、別に高濃度(約60%)のメタノール水溶液を貯蔵する高濃度メタノールタンクを設け、この高濃度メタノールタンクから高い濃度のメタノール水溶液を導入して前述した濃度になるように制御してもよい。
また、前記フィルター11は、熱交換器8の材質として広く用いられる銅やアルミニウムの金属片を除去する点では、耐熱性や耐酸性にすぐれた不織布がよく、さらにスルホン酸基やリン酸基のようなイオン交換基を導入した不織布やイオン交換樹脂とすることにより、前記金属片とともに銅イオンやアルミニウムイオンの除去も可能である。なお、ここで用いる不織布やイオン交換樹脂は、その形状については特に限定されるものではない。
図2は、図1の実施の形態に対し、セル1を密閉容器13に収納した例である。このようにセル1を密閉容器13に収納することにより、図1の実施の形態において懸念される廃熱などの熱管理のような問題の解消が可能である。
上記した実施の形態では、液体燃料にメタノール水溶液を用いた直接メタノール型燃料電池システムを例にして説明したが、メタノール水溶液以外の液体燃料、たとえばエチルアルコール、ブタノール、ジメチルエーテル等を用いた液体燃料直接供給形燃料電池にも適用することができる。
また、上記した実施の形態では、発電ユニットが単一のセル1からなるもので説明したが、このセル1を複数個積層したセルスタックとし、これを発電ユニットとしたものであってもよい。
以上のように、本発明によれば、メタノール水溶液を改質、ガス化することなく発電を行うことができる直接メタノール型燃料電池に代表される液体燃料直接供給型燃料電池を、携帯用電源、コンピューター用電源といった小型コンシューマー用途に適用するに際し、正極で生成される水を回収し、その水に含まれる熱交換器から溶出する金属イオンや金属片を確実に除去して再利用するから、上記した用途に適した、電池の連続運転時間を大きく向上させる直接メタノール型燃料電池システムの構成に寄与することができる。
本発明の実施の形態に係る液体燃料直接供給型燃料電池システムの構成図である。 図1の実施の形態の変形例に係る液体燃料直接供給型燃料電池システムの構成図である。
符号の説明
1 セル
2 燃料タンク
3、4 気液分離槽
5 電解質
6 負極
7 正極
8 熱交換器
9 ファン
10 ポンプ
11 フィルター
12 気体成分回収手段

Claims (2)

  1. プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質を介して負極と正極とを対設し、前記負極に液体燃料が供給され、前記正極に酸化剤ガスが供給されるようにしたセルまたは該セルを複数個積層したセルスタックからなる発電ユニットと、前記正極の電気化学反応によって生成した水を回収して前記負極に供給するための液体燃料を貯蔵する燃料タンクに戻す水供給装置とを備え、前記正、負極の電気化学反応によって起電力を得る液体燃料直接供給型燃料電池システムにおいて、前記水供給装置が、生成した水を冷却する熱交換器と、冷却された水から気体成分と液体成分とを分離する気液分離槽と、分離された液体成分中の金属片または金属イオンを除去するフィルターとを、少なくとも備えていることを特徴とする液体燃料直接供給型燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の液体燃料直接供給型燃料電池システムにおいて、フィルターはイオン交換基を導入した不織布であることを特徴とする液体燃料直接供給型燃料電池システム。
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