JP2007117272A - キット製剤用注射器、注射器型キット製剤用中間摺動弁、及び、注射器型キット製剤、並びにキット製剤用注射筒の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】直列順次分注型キット製剤用注射器において、使用時における破壊が生じるおそれがなく、あるいは、注射筒内面に様々な問題を引き起こすような可能性のある、不要な凹凸がない注射筒を提供することを目的とする。
【解決手段】注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、該中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、前記注射筒の注射針装着側端部の肉厚を、他の部分の肉厚に比べて厚くしたキット製剤用注射器。
【選択図】図12
【解決手段】注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、該中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、前記注射筒の注射針装着側端部の肉厚を、他の部分の肉厚に比べて厚くしたキット製剤用注射器。
【選択図】図12
Description
本発明は、キット製剤用注射器に関する。
本発明は、内部に中間摺動弁を摺動可能に有し、かつ該中間摺動弁のプランジャ操作側の注射筒内に他の摺動弁(プランジャ摺動弁あるいは他の中間摺動弁)とともに形成する空間にあらかじめ充填された薬液を有する注射器型キット製剤、そのようなキット製剤を可能とするキット製剤注射器、キット製剤用注射筒の製造方法に関する。
本発明は、内部に中間摺動弁を摺動可能に有し、かつ該中間摺動弁のプランジャ操作側の注射筒内に他の摺動弁(プランジャ摺動弁あるいは他の中間摺動弁)とともに形成する空間にあらかじめ充填された薬液を有する注射器型キット製剤、そのようなキット製剤を可能とするキット製剤注射器、キット製剤用注射筒の製造方法に関する。
X線CTスキャンやMRI(核磁気共鳴画像診断)では、患部の詳細を診察するために造影剤を被診断者の体内に導入する。この際、予め、所定の造影剤の適量が充填された注射器形状のキット製剤を用い、オートインジェクターにこのキット製剤をセットして、キット製剤の注射筒からエクステンションチューブを経由して静脈などへ翼状針などの留置針により体内へ造影剤を導入している。
しかしながら、オートインジェクターによるキット製剤への操作が終了した後も、造影剤はチューブ内に残留すると云う問題があった。このため、特に商品名オムニスキャンやマグネビストとして市販されているMRI用の、比較的少量(例えば20mL)の造影剤が充填されたキット製剤の場合、造影剤として充分な量が所定箇所に導入できず、造影剤の効果が得られないという問題が生じた。
そこで、医療従事者は、用時において、キット製剤の注射器容器中の造影剤を取り出してより大型の注射器容器に充填しなおし、その注射器容器にさらに等量程度の生理食塩水を導入して希釈することで増量させる調製(用時調製)を行うことで、チューブ内に残留する造影剤成分を相対的に減らしたり、あるいは、キット製剤注射器は別に生理食塩水を充填した注射器を準備し、これら2つを三方活栓で接続してキット製剤からの造影剤の導入が終了した後に、三方活栓を切り替えて生理食塩水をチューブ内へ導出する(いわゆる、フラッシング)ことにより、チューブ内に残留している造影剤を被診断者に導入すること(Bolus法(ボーラス法))が行われている。
ここで、造影剤の導入後にさらに体内へ導入される生理食塩水は、臓器に導入された造影剤を速やかに臓器外に排出させる働きを有するとともに、主要血管系の造影効果の向上および静脈周囲のアーチファクト(虚像)の軽減効果が得られ、より確実な診断が可能となるため、造影剤導入後に、積極的に多めの生理食塩水を導入することも行われる。また、これら2法を併用して、前者の、希釈した造影剤の導入終了後に、生理食塩水を導入することも行われている。
しかしながら、前者では落下菌による汚染のおそれがあり、さらに、バイアル瓶ゴム栓の穿刺によるコアリング(ゴム片が穿刺により削り取られること)も懸念される。
後者では、導入作業を容易にするための専用の並列2連式のオートインジェクターが市販されてはいるが、すでに普及している通常の(単式の)オートインジェクターの2倍以上の価格の、高価な2連式のオートインジェクターを新たに購入する必要があり、またこのような高価な2連式のオートインジェクターを用いた場合であっても、接続箇所が各シリンジ−三方活栓間及び三方活栓−留置針間と多くなる上、2連式のオートインジェクターおよび三方活栓の操作等、繁雑で、間違えやすい操作が必要となり、医療ミスの原因となるおそれがある。
このような問題を解決するものとして、本発明者等が提案してきた直列順次分注型キット製剤用注射器(特許文献1等)が挙げられる。ここでこのような直列順次分注型キット製剤について図14を用いて説明する。
図14(a)に示されたキット製剤は一端に注射針接続部kaを有し、他端のプランジャ操作側端に開口を有する注射筒k内に、1個の中間摺動弁l(図15(a)〜(c)に示したもの)及び1個のプランジャ摺動弁mとが摺動可能に収められ、注射筒k内部はこれら中間摺動弁l及びプランジャ摺動弁mによりその前後で水密に区画されている。さらに、注射筒kの注射針装着部kaがエラストマー性を有する素材からなるキャップnにより密栓され、前記中間摺動弁lの注射筒針側空間には第1の薬液oが、中間摺動弁lとプランジャ摺動弁mとの間の空間には第2の薬液pがそれぞれ充填されている。
ここで中間摺動弁lを図15に示す。図15(a)は側面図、図15(b)は摺動弁進行方向後方からの斜視図、図15(c)は摺動弁進行方向前方からの斜視図である。
この中間摺動弁lは注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画するリップ部l8を1つ有する中間摺動弁である。この中間摺動弁lのリップ部l8の進行方向後ろ側には後方薬液用通路l1とそれに接続する拡大部l6が設けられている。
一方、図16には、上記中間摺動弁とともに特許文献1の直列順次分注型キット製剤用注射器で用いられる注射筒kを示す。図16(a)にその断面(連通通路keを含む面での断面図)を、図16(b)にその先端側を斜視図で示す。
この注射筒kはその内壁の注射針装着側端付近に、上記中間摺動弁l8が注射筒k内の最も注射針装着側に達したときにリップl8前後の空間を連通させて、中間摺動弁lのプランジャ操作側の薬液を、中間摺動弁lをバイパスして、該中間摺動弁の注射筒内注射針装着側に供給可能とする連通通路keを有している注射筒である。
注射筒kでは連通通路keは幅が狭く、円筒状の注射筒の筒部内側面の注射針装着側端に、注射筒k注射針装着側底面に設けられた注射針への液導入孔ka1に接続された溝状の注射針装着側面液通路kgと一体となるように、注射筒の円筒の中心線に対して互いに180°となる位置に2つ設けられている。なお、図16(c)は注射筒kの連通通路keを含まない面での断面図を示す。
図14(a)に示されるキット製剤は使用に先立ち、図14(b)に示すよう注射筒kの注射針接続部kaに注射針qが装着される(なお、この例では注射針qのを装着して注射として用いる例を示しているが、上記のように造影剤のキット製剤場合には通常、留置針に接続されたチューブが接続される)。またプランジャ摺動弁mにはプランジャ操作部maが取り付けられる。
次いで注射針qを要注射部位に刺し、その後プランジャ操作部maを注射筒k注射針装着側に移動させる操作を行って第1の薬液oを注射する(図14(c)参照)。
その後、さらにプランジャ操作部maの操作を続けると、今度は第2の薬液pが要注射部位に注射される。このとき中間摺動弁lが注射筒注射針装着側に移動して注射筒先端部(最も注射針装着側)に達する(図17参照)。
このとき、中間摺動弁lの後方薬液用通路l1は拡大部l6を介して、注射筒1の内壁の注射針装着側端付近に設けられた連通通路keに接続し、さらに連通通路keは注射筒k注射針装着側底面に設けられた注射針装着側面液通路kgに接続しているため、中間摺動弁lのプランジャ操作側空間の後方薬液6は後方薬液用通路l1、拡大部l6(図15参照)、連通通路ke、注射針装着側面液通路kgを経て注射針へ導入される。
なお、中間摺動弁lが注射筒1先端部に達していないときには拡大部l4は注射筒k内面によって密封されているために中間摺動弁lのプランジャ操作側空間の後方の第2の薬液pの中間摺動弁lの注射筒内注射針装着側への移動は生じない。
図18はプランジャ操作部maの操作が終了し、第2の薬液pの注射が終了した状態(注射完了状態)を示す。
このようなキット製剤用注射器に第1の薬液oとして造影剤を所定量、第2の薬剤として例えば生理食塩水を充填して用いれば、すべての問題は解決できると思われたが、実際の応用検討で問題が生じた。
第1に、これら造影剤分野において、必要な造影剤の量は最大150MLと比較的多く、そのような場合、キット製剤用注射器に用いる注射筒もこのような造影剤の液量に対応した大型(太径)のものを用いる必要がある。しかしながら注射筒は大型化すると、操作に必要な力が大きくなるためか、注射筒の針装着部側底部にクラックが生じたり、割れが生じて、甚だしいときには内容液が漏れる、飛び散るなどが生じるおそれがあることが判った。
第2は注射筒製造上の問題である。このような直列順次分注型キット製剤用注射器に用いられる注射筒には、注射筒の筒部内側面の注射針装着側端付近に、連通通路が設けられているが、このような注射筒の射出成形による製造には中型として特許文献1で示したような、図19あるいは図20にモデル的に示される分割式の金型を用いた。
これら円柱状の中型が、複数の割型部(図19(a)に示す中型の場合には2つの割型部10a、図20(a)に示す中型の場合には4つの割型部10a’をそれぞれ有する)と、これら割型部10a同士あるいは10a’同士の間に位置し、該割型部10aあるいは10a’とともに円柱状の中型10あるいは10’の、成形される注射筒の注射針装着側底面を形成する面と、注射筒内側面を形成する面とを構成し、かつ、プランジャ注射筒プランジャ操作側に摺動可能なスライダ部10b(図19(b)参照)あるいは10b’(図20(b)参照)とにより構成されている。
スライダ部10b(図19(b)参照)および10b’(図20(b)参照)は注射筒プランジャ操作側(図中右側)になるほど厚くなる、いわゆるテーパー状となっており、各割型部はそれに応じて薄くなっている、逆テーパー状となっている。
2つの割型部10aには両方に、および、4つの割型部10a’の2つには上記連通通路を形成するための連通通路形成用凸部10a1および10a1’がそれぞれ設けられており、キャビティ内に導入された樹脂の硬化あるいは凝固後に図19(c)あるいは図20(c)に示すようにテーパー形状を有するスライダ部10b、スライダ部10b’が注射筒プランジャ操作側(図19(c)、図20(c)における実線矢印方向)にスライドして形成された空間に、連通通路形成用凸部が設けられた割型部を含むすべての割型部10aあるいは10a’が退避する(その方向を図19(c)、図20(c)中に波線矢印で示した)ことにより、連通通路形成用凸部10aあるいは10a’と形成された注射筒の連通通路との嵌合が解除された後に製造された注射筒を取り出すことにより、図16に示すようなキット製剤用注射筒kを得ることができる。
ここで、上記分割式の中型は、注射筒のプランジャ操作側に相当する部分から導入されるため、整形される注射筒の長さにほぼ等しい長さとなる。ここで、体内へ導入量が多くなる造影剤用キット製剤注射筒の場合、注射筒の長さ自体も当然長くなり、その成形に用いられる中型も必然的に長くなる。
このような長い中型を上記のような分割式にして用いる成形方法で製造された注射筒では、中型の分割線によって、注射筒内側面に注射筒長さ方向に沿って畝状の凸部が不可避的に形成されてしまう。このような注射筒を用いてキット製剤とした場合、この畝状の凸部によって中間摺動面と注射筒内面との水密性が失われたり、あるいは、中間摺動弁を構成するエラストマーに傷が生じて微粉が生じる可能性があり、このとき、被治療者、被診断者の体内に導入されるおそれが生じる。あるいは、実際にはこれらのような問題が生じなくても、使用者に不信感を与えるおそれがあり、改善が求められていた。
特開2004−129695公報
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、直列順次分注型キット製剤用注射器において、使用時における破壊が生じるおそれがなく(第1の課題)、また、注射筒内面に様々な問題を引き起こすような可能性のある、不要な凹凸がない(第2の課題)注射筒を提供することを目的とする。
本発明のキット製剤用注射器は課題を解決するため、請求項1に記載の通り、注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、該中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、前記注射筒の注射針装着側端部の肉厚を、他の部分の肉厚に比べて厚くしたキット製剤用注射器である。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項2に記載の通り、注射筒の注射針装着側底面、及び、該底面に連なる注射筒側面の一部が肉厚となっていることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載のキット製剤用注射器において、上記中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに中間摺動弁と注射筒の注射針装着側底面との密着を防止する、密着防止凸部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、上記キット製剤用注射器の注射筒の針装着部周囲にルアーロック部を有するとともに、該針装着部をシールするためのキャップを別部材として有し、かつ、該キャップにルアーロック部の一部と係合し、該ルアーロック部に着脱可能に保持される係合部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、上記第1の薬液が造影剤であり、第2の薬液が生理食塩水であることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、真空充填打栓法により充填されたことを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項7に記載の通り、注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、該中間摺動弁が注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、該注射筒の注射針装着部を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とを結合してなることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項8に記載の通り、請求項7に記載のキット製剤用注射器において、上記注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、前記結合の結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界にあることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項9に記載の通り、請求項7に記載のキット製剤用注射器において、上記注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、上記結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部にあることを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項10に記載の通り、請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、上記結合の結合面が前記連通通路を含むことを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項11に記載の通り、請求項10に記載のキット製剤用注射器において、上記結合面の注射筒内側面での結合線が前記連通通路の注射針装着側端に一致することを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項12に記載の通り、請求項7ないし請求項11のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、上記先端部と主筒部とにそれぞれ互いに螺合するねじ部が設けられ、これらねじ部を螺合させて、上記結合を行うことを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射器は、請求項13に記載の通り、請求項7ないし請求項12のいずれかに記載のキット製剤用注射器において、上記結合に際して超音波溶着処理を行うことを特徴とする。
また、本発明のキット製剤用注射筒の製造方法は、請求項14に記載の通り、注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、該中間摺動弁が注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器に用いられる注射筒の製造方法において、該注射筒の注射針装着部を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とをそれぞれ別部品として成形した後に、これら先端部と主筒部とを結合して注射筒を形成することを特徴とする。
また、本発明のキット製剤は、請求項15に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のキット製剤用注射筒において、上記請求項14に記載のキット製剤用注射筒の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明のキット製剤用注射器によれば、直列順次分注型キット製剤用注射器において、使用時における破壊が生じるおそれがなく、万一の事故が予め防止されていると共に、使用者においても安心感を与える優れたキット製剤用注射器となる。
また、請求項2に記載の本発明のキット製剤用注射器によれば、注射筒の注射針装着側底面、及び、該底面に連なる注射筒側面の一部が肉厚となっているので、破壊防止効果がより高まる。
また、請求項3に記載の本発明のキット製剤用注射器によれば、注射筒の注射針装着側底面に溝状のような肉薄となる脆弱部を設けなくても、中間摺動弁をバイパスした中間摺動弁2のプランジャ操作側の薬液を、注射針やチューブなどへ供給できるので、上記破壊防止効果がより確実に得られる。
また、請求項4に記載の本発明のキット製剤用注射器によれば、キャップがルアーロック部に着脱可能に保持されるため、注射器内部に薬液を充填してキット製剤としたときの、運搬・搬送時にもキャップが外れることが防止されているので、内部薬液の漏出や汚染を確実に防止することができる。
また、請求項5に記載の本発明の本発明のキット製剤は、上記第1の薬液が造影剤であり、第2の薬液が生理食塩水であり、造影剤を用いる診断等に、用時調製等や複雑な操作なしに、特殊なオートインジェクターを用いることなしで容易に用いることができる。
また、請求項6に記載の本発明のキット製剤用注射器によれば、本発明のキット製剤は、真空充填打栓法により充填されているため、極めて衛生的であり、第1の薬液、第2の薬液ともに気泡の混入がない。
また、請求項7に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、注射筒内面に様々な問題を引き起こすような可能性のある、不要な凹凸がなく、歩留まり良く、かつ、容易に製造が可能で、安価なキット製剤用注射筒が可能となる。
また、請求項8に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、かつ、結合箇所が目立たない、丈夫な注射筒を得ることができる。
また、請求項9に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、結合強度の高い、丈夫な注射筒を得ることができる。
また、請求項10に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、生産性が良く、金型作成が容易で、安価なキット製剤用注射筒を得ることができる。
また、請求項11に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、製造に必要な金型作製がより容易にすることができる。
また、請求項12に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、より丈夫なの高い注射筒とすることができる。
また、請求項13に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、さらに丈夫な、水密性に優れた注射筒を得ることができる。
請求項14に係る本発明のキット製剤用注射筒によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかに係る注射筒を、容易に、安価に、かつ、生産性良く得ることができる。
本発明に係るキット製剤用注射器は、注射筒内に挿入された中間摺動弁あるいはプランジャ摺動弁によって水密に区画された2つの空間にあらかじめそれぞれ薬液が充填され、該薬液がプランジャの操作によって混合されることなく順次排出される直列順次分注型注射器を用いるキット製剤であり、注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、中間摺動弁が注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器である。
このようなキット製剤用注射器を用いるキット製剤の一例(キャップ6を外した状態)を図1に示す。図1(a)は注射針接続部1a側から見た部分斜視モデル図、図1(b)はモデル断面図である。
注射筒1は注射針接続部1aに続く注射針装着側底面1b、注射針装着側底面1bから指かかり部1dに続く筒状の筒部1cを有し、注射針接続部1aには筒部1c内部に連通する、筒部1cの内部の薬液を注射針へ導入する液導入孔1a1があり、また注射針接続部1a周囲にはルアーロック部1a2が設けられ、かつ、ルアーロック部1a2の外周周囲を一周する凸部からなるキャップ係止部1a3が設けられている。
すなわち、このキット製剤用注射器にはキット製剤用注射器の注射筒の針装着部周囲にルアーロック部を有するとともに、該針装着部をシールするためのキャップを別部材として有し、かつ、該キャップにルアーロック部の一部と係合し、該ルアーロック部に着脱可能に保持される係合部が設けられている。
このキット製剤用注射器は注射筒1内部に、注射筒1内壁に接して注射筒1の前後の空間を水密に区画するリップ部2aを1つ有する中間摺動弁2を摺動可能に有している。この注射筒の筒部1c内側面の注射針装着側端付近に、中間摺動弁2が注射筒内の最も注射針装着側に達したときにリップ2a前後の空間を連通させて、中間摺動弁2のプランジャ操作側の薬液(第2の薬液5)を、中間摺動弁2をバイパスして中間摺動弁2の注射筒1内注射針装着側に供給可能とする連通通路1eが溝部として設けられている。なお、本発明では注射針を用いない場合でも、注射筒に充填された液が導出される方向を「注射針装着側」と云う。
この注射筒1の注射針装着側端部の肉厚は、他の部分の肉厚に比べて厚くなっている。
注射筒の注射針装着側底面1b3mm(3mm以上4mm以下の範囲であることが好ましい)、及び、該底面に連なる注射筒側面の一部(底面から約4cmの範囲)が4mm程度(4mm以上5mm以下の範囲であることが好ましい)と、注射筒側面のその他の部分(2mm程度)に比して肉厚となっていて、肉厚部1fを形成している。
注射筒の注射針装着側底面1b3mm(3mm以上4mm以下の範囲であることが好ましい)、及び、該底面に連なる注射筒側面の一部(底面から約4cmの範囲)が4mm程度(4mm以上5mm以下の範囲であることが好ましい)と、注射筒側面のその他の部分(2mm程度)に比して肉厚となっていて、肉厚部1fを形成している。
このような肉厚部1fの形成により、この注射筒1は大容量であるにもかかわらず、かつ、注射筒の内部の圧力が高くなるオートインジェクターでの操作であっても、破壊、割れ、クラックが生じず、また、そのような問題が生じるおそれが全くない。
注射筒1内の、中間摺動弁2の注射針装着側空間には第1の薬液4(この例では造影剤75mL)が、中間摺動弁2とプランジャ摺動弁3との間の空間には第2の薬液5(この例では生理食塩水25mL)が充填されている。
図2(a)及び図2(b)に中間摺動弁2のモデル斜視図を示す(図2(a)は中間摺動弁2進行方向前側から見た斜視図、図2(b)は中間摺動弁2進行方向後側から見た斜視図である)。
中間摺動弁2の進行方向前側の面2bは凸状となっていて、その形状は注射針装着側底面1bの内側にほぼ沿う形状となっている。ここで面2bには密着防止凸部2b1がこの例では4つ設けられ、中間摺動弁2が注射筒内の最も注射針装着側に達したときにでも、中間摺動弁2と注射筒1の注射針装着側底面1bとの密着を防止しているため、注射筒1の注射針装着側底面1bに図16(b)に示したような溝状の注射針装着側面液通路kgのような、肉薄となる脆弱部を設けなくても、中間摺動弁2をバイパスした中間摺動弁2のプランジャ操作側の薬液を、液導入孔1a1に供給できるので、注射針装着側底面1bの破壊防止効果がより確実となる。なお、この例では密着防止凸部は中間摺動弁2に設けたが、注射筒の注射針装着側底面に設けても良い。
また中間摺動弁2の進行方向後方には、注射筒内側面に接して、中間摺動弁2の進行方向前側の面2bの注射筒1の注射針装着側底面1bへの正対を保つための、放射状に突出した突出部2cがこの例では6つ設けられている。この突出部2cは互いに間隔を開けて設けられているため、中間摺動弁2の側面と注射筒1内側面との間には気泡の原因となるような密閉空間は形成されない。
キャップ6と注射筒1の注射針装着側底面1b付近とのモデル断面図である図3の図3(a)においてキャップ6が外れた状態を、また、図3(b)にキャップ6がルアーロック部1aに固定された状態を、それぞれ示す。
キャップ6(エラストマー性を有する)は注射筒1の注射針接続部1aを水密に封止するための水密形成部6aと注射筒1のルアーロック部1a3を覆うカバー部6bとによって形成され、カバー部6b内側にはルアーロック部1a2の外周周囲を一周する凸部からなるキャップ係止部1a3に対応する溝(凹部)6b1が設けられており、溝(凹部)6b1とキャップ係止部1a3の係合によってキャップ6はルアーロック部1a2により着脱可能に固定される。なお、溝(凹部)6b1やキャップ係止部1a3はこの例では連続的に形成されているが、連続した溝や凸部でなくてもよく、またキャップ6のカバー部6bに凸部を設け、ルアーロック部1a2周囲に凹部を設けても良く、これらも本発明に属する。
図4には他のキャップの例を示した。キャップ6’と注射筒1’の注射針装着側底面1b付近とのモデル断面図である図4の図4(a)においてキャップ6’が外れた状態を、また、図4(b)にキャップ6’がルアーロック部1a’に固定された状態を、それぞれ示す。
キャップ6’には図4(a)に示すようにルアーロック部1a2’の雌ねじ部1a4’に対応する雄ねじ部6a1’が注射筒1’の注射針接続部1a’を水密に封止するための水密形成部6a’の周囲に形成されていて、キャップ6’をルアーロック部1a2’にねじ込むことにより図4(b)に示すように注射筒1を水密に封止することが可能となる。
次にこのような直列順次分注型キット製剤の使用方法について図5を用いて説明する。
図5(a)はキャップ6による封止がなされた状態のキット製剤である。
図5(a)はキャップ6による封止がなされた状態のキット製剤である。
図5(b)に示すようにプランジャ摺動弁3にはその進行方向後方(プランジャ操作側。図中右側)に開口を有するねじ穴3aが形成されており、このキット製剤に付属のプランジャ操作部3bをその雄ねじ部3b1を利用して接続させる。
次いでキャップ6をルアーロック部1a2から外し、そのルアーロック部1a2にチューブ7(図示しない翼状針などの留置針に接続される)をルアーロック部1a2のねじを利用して固定する(図5(b)参照)。
次いで、図示しないオートインジェクターを利用してプランジャ操作部3bを操作してチューブ7内の残留空気を押出ながら、チューブ7内を第1の薬液4で満たし、留置針内まで第1の薬液4が満たされたら、例えば静脈に留置針の先を導入する。
次いでさらにプランジャ操作部3bの操作を行うと第1の薬液4が全量チューブへ導入されるとともに、中間摺動弁2が注射筒1内の最も注射針装着側に達する(図5(d)参照)。
このときの中間摺動弁2付近の拡大断面モデル図を図6に示す。中間摺動弁2はこのとき、注射筒1内の最も注射針装着側に達する。中間摺動弁2の進行方向前側の面2bは凸状となっていて、その形状は注射針装着側底面1bの内側にほぼ沿う形状となっているが、中間摺動弁2の進行方向前側の面2bに設けられた密着防止凸部1b1によって中間摺動弁2の中間摺動弁2と注射筒1の注射針装着側底面1bとの密着が防止されているので、さらにプランジャ操作部3bを操作することにより中間摺動弁2をバイパスして中間摺動弁の注射筒内注射針装着側に供給可能とする連通通路1eにより中間摺動弁2をバイパスした中間摺動弁2のプランジャ操作側の薬液5を、液導入孔1a1へ供給できる。
このとき、上述のように、中間摺動弁2の進行方向前側の面2bは凸状となっていて、その形状は注射針装着側底面1bの内側にほぼ沿う形状となっているため、この部分でのデッドボリュームが小さく、その結果、第1の薬液4と第2の薬液5とは殆ど混じり合うことなく順次チューブ7へと導出される。
図5(e)にはこのようにさらにプランジャ操作部3bを操作すると注射筒1内の第2の薬液5がチューブ7へと送出されて、操作が完了する。
このような順次分注型キット製剤用注射器を用いた場合、例えば第1の薬液4が造影剤であり、第2の薬液を生理食塩水とすることにより、単にプランジャ操作部を通常の注射器同様に操作するだけで、すなわち、繁雑で落下菌による汚染のおそれがある用事調製や、接続や切替動作が不要で、特殊で高価な装置も不要としながらも、チューブ7中の造影剤の残留をなくして、有効利用することが可能となり、あるいは、さらに生理食塩水の効果により、造影剤の体内からの排出を促進させることが可能となり、医療ミスの撲滅、院内感染の防止、高齢化による医療関係費増大の抑制等々、21世紀での医療に求められる、これら要求をすべて満たすことができる。
ここで、このようなキット製剤は真空充填打栓方式によって充填されることが望ましい。
このような直列順次分注型キット製剤は図7中(a)〜(g)にモデル的に示す真空充填打栓方式により、製造することができる。
まず、注射筒1の注射針装着部1aに上述のキャップ6により密栓を施す(図7(a)参照)。
このようにキャップ6により密栓した注射筒1に第1の薬液4を注入し(図7(b)参照)、次いで注射筒1内部を減圧雰囲気とし、この減圧雰囲気を維持しながら、中間摺動弁2を注射筒1のプランジャ操作側開口部に浅く挿入し(図7(c)参照)、その後注射筒1外部雰囲気の圧力を常圧に戻すことにより、該中間摺動弁2を前記薬液4の液面ないし液面付近まで移動させる(図7(d)参照)。
次いで、所定の第2の薬液5を所定量充填し(図7(e)参照)、再度注射筒1内を減圧雰囲気とした状態で、プランジャ摺動弁3を注射筒1のプランジャ操作側開口部に浅く挿入し(図7(f)参照)、その後注射筒外部雰囲気を常圧にもどすことにより、プランジャ摺動弁3を前記第2の薬液5の液面ないし液面付近まで移動させて(図7(g)参照)充填が終了する。なお、上記の減圧雰囲気での取り扱い時での薬液の突沸・飛散を防ぐため、これら薬液は予め脱泡処理等を行うことが望ましい。
このような真空充填打栓方式によれば、複雑に見える直列順次分注型キット製剤も非常に容易に、かつ、低コストで製造することができる。
ここで本発明に係る、このような直列順次分注型キット製剤用注射器に用いる注射筒の製造法について説明する。
本発明の直列順次分注型キット製剤用注射器に用いる注射筒の製造は、注射筒の注射針装着部を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とを結合することによって行う。
すなわち、注射筒の注射針装着側端を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とをそれぞれ別部品として成形した後に、これら先端部と主筒部とを接合して注射筒を形成する。このようにすることにより、図19及び図20に示すような長い分割中型を用いることなしに注射筒内面に凹状の連通通路を設けることができるので、分割中型を用いた場合であっても注射器内部にその中型の分割線の痕跡が残留せずに整形可能となり、あるいは、中型部分にアンダーカット部を設けることなしに成形が可能となるので分割中型が不要となる。
まず、注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、前記結合の結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界にある例を図7に図示する。
図8(a)は注射筒の注射針装着側端を含む先端部α1と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部α2とを組み合わせる前の状態、図8(b)は組み合わせたときの状態、及び、図8(c)は超音波溶着を行って注射筒1が形成された後の状態を、それぞれ示すモデル断面図である。
図8(a)に示すように結合面は、注射筒軸に対して単純に垂直ではなく段部が形成されて結合面(注射筒軸に対して垂直な面)は2つに分割されている。この2つの結合面のうち、主筒部α2の外側面側の結合面(プランジャ操作部に近い方の面)は図中上方に拡大して示すように、先端部α1に対してわずかに凸となっている。このため先端部α1と主筒部α2とを組み合わせると、図8(b)の上方の拡大図に示すように、この凸部が対応する先端部α1の対応面(先端部の2つの結合面のうちの外側面側の面)に当接するが、この段階では先端部α1および主筒部α2のそれぞれの2つの結合面のうちの内側面側の面(注射針接続部に近い面)は当接し合わない。
このように先端部α1と主筒部α2とを組み合わせた状態で、例えば先端部α1に超音波ホーンによって超音波溶着を行うと、図8(c)に示すように先端部α1と主筒部α2とが一体となって注射筒1が形成される。このとき、主筒部α2の外側面側の結合面の凸部が、同材ながら、いわば接着剤として機能して、先端部α1と主筒部α2とを一体に、水密に、かつ、堅固に接合する。なお、この際、上述のように結合面が2つに分割され、両者の間に段差が設けられているために、溶着処理条件を調節することにより、上記超音波溶着処理で、最初に溶解した上記凸部の樹脂成分は注射筒1の内側面側には達せず、注射筒1の接合箇所の内側面側には摺動弁の摺動を妨げたり、あるいは、目視により観察されるような凸部の発生を防止することができる。
一方、上記凸部由来の樹脂成分は注射筒外側面側に若干はみ出すが、結合面の注射筒外側面での結合線が肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界となるために図8(c)の上方の拡大図に示すように、肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との段差部にこのはみ出し部が形成されるため、目視での違和感が生じないので、強力な接合が得られるよう上記凸部を大きくすることが可能となる。
ここで、上記のように超音波溶着法を用いる場合には、注射筒は、超音波溶着が可能な、硬質な熱可塑性樹脂材料からなることが必要であり、また、先端部と主筒部との材質は通常同じものとする。
次に図9に注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、前記結合の結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界にあり、かつ、上記結合の結合面が前記連通通路を含む例について示す。
図9(a)は注射筒の注射針装着側端を含む先端部α3と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部α4とを組み合わせる前の状態、図9(b)は組み合わせたときの状態、及び、図9(c)は超音波溶着を行って注射筒1が形成された後の状態を、それぞれ示すモデル断面図である。
図9(a)に示すように結合面は、注射筒軸に対して単純に垂直ではなく段部が形成されて結合面(注射筒軸に対して垂直な面)は2つに分割されている。この2つの結合面のうち、主筒部α4の外側面側の結合面(プランジャ操作部に近い方の面)には図示しないが、上記主筒部α2同様に超音波溶着時に溶融して、いわば接着剤として機能する凸部が設けられている。このため図9(b)に示すように先端部α3と主筒部α4とを組み合わせ、次いで、注射筒内側面に溶着痕が残らない条件でに超音波溶着を行うと、得られた注射筒1(図9(c)に示す)の肉厚部1f外側面にはわずかな溶着痕が生じる。しかし、この方法によれば、溶着による結合面は肉厚部1fに形成されるので、その結合面積が大きく、強度に優れた接合が可能となる。さらに、この例では上記結合の結合面が連通通路を含むために、先端部α3の成形に当たってはアンダーカット部が存在しないので、金型製造が容易にそのコストが安価となるが、この例では注射筒内側面での結合線が連通通路1eのプランジャ操作側端に一致するためさらに金型製作が容易になる。
結合面の形状は様々なものが可能であり、2つの例について図10(a)及び図10(d)に示す。これらはそれぞれ図10(b)及び図10(e)に示すように組合せ、溶着してそれぞれ図10(c)及び図10(f)に示すように注射筒が形成される。なお、ここに示した2例は共に、その側面の注射針装着側端付近の厚さが注射筒側面のその他の部分に比して肉厚となっている注射筒であり、かつ、上記結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界で溶着する例である。
ここで、接合において、接合箇所に互いに螺合するねじ部を形成してこれらねじ部を螺合させて、接合させればこれらの接合強度は非常に高くなる。接合部分はパッキンを用いて水密としても良く、また超音波溶着技術を併用して水密としても良い。なお、ねじ部の形成形状を工夫することにより、超音波溶着によりねじ部に気泡を残さずに溶着可能である。
図11にこのような例を示した。この例によれば、注射筒の側面の注射針装着側端付近の厚さが注射筒側面のその他の部分に比して肉厚となっている注射筒であり、かつ、上記結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界で溶着された注射筒が製造可能である。
図11(a)に斜視図を、図11(b)には断面図をそれぞれ示すように、注射筒の注射針装着側端を含む先端部α5のプランジャ操作側には雌ねじ部α51が、注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部α6の注射針装着側には雄ねじ部α61がそれぞれ形成されている。
これらねじ部α51及びα61は互いに螺合するので図11(c)に示すように組合せ、次いで、超音波溶着処理を行うことにより一体として注射筒とすることができる。このように作製された注射筒の接合箇所の接合強度は非常に高い。なお、これらねじ部は肉厚部1fに形成されるのでその設計自由度は高い。
図12を用いて、結合面の注射筒内側面での結合線が注射針装着側底面と注射筒側面との境界にある(結合面の注射筒内側面での結合線が前記連通通路の注射針装着側端に一致する)例について説明する。
図12(a)に部分断面図で、図12(b)には斜視図でそれぞれ示すように、注射筒の注射針装着側端を含む先端部α7のプランジャ操作側には雌ねじ部α71が、注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部α6の注射針装着側には雄ねじ部α81がそれぞれ形成されている。
これらねじ部α71及びα81は互いに螺合するので図12(c)に部分断面図で、図12(d)中に斜視図で示すように螺合させて組合せ、次いで、超音波溶着処理を行うことにより一体として注射筒とすることができる。このように作製された注射筒の接合箇所の接合強度は非常に高い。また、主筒部α8の成形時における連通通路1eの形成は連通通路1e部分がアンダーカットとならないために金型製作が容易で、かつ、低コストとなる。さらにこの例では主筒部α8の注射針装着側端(内側面)が注射針装着側底面と側面との境界に一致しているために、上記同様に接合強度が高いのみならず、超音波溶着の場合に、内側面側に溶着線として凸部が形成された場合であっても、その高さが充分低ければ、中間摺動弁の摺動の妨げにもならず、また、中間摺動弁のプランジャ操作側の薬液の、中間摺動弁の針装着側空間への流通の妨げにならない。その結果、これら主筒部α6及び先端部α7の設計や金型製作が容易になり、かつ、超音波溶着時の歩留まりの向上が可能となる。なお、この例でも、溶着面は肉厚部1fに形成されているので、その設計自由度は高い。
上記ではキット製剤用注射器に用いる注射筒として、注射筒の筒部内側面の注射針装着側端付近に設けられた、中間摺動弁が注射筒内の最も注射針装着側に達したときにそのリップ前後の空間を連通させて、中間摺動弁のプランジャ操作側の薬液を、中間摺動弁をバイパスして該中間摺動弁の注射筒内注射針装着側に供給可能とする連通通路が、注射筒の軸を中心として0°、120°及び240°の位置にそれぞれ溝状に、計3つ設けられている注射筒を用いた例について示した。
しかし、本発明において、連通通路の形状は、上記機能を果たす限りにおいて、自由に選択できる。ここで図13には注射筒の筒部内側面の注射針装着側端付近に全周に亘って溝状に設けられた例を示す。この例でも図12の場合と同様に、注射針装着側底面と側面との境界で接合される。
図13(a)に部分断面図で、図13(b)には斜視図でそれぞれ示すように、注射筒の注射針装着側端を含む先端部α9のプランジャ操作側には雌ねじ部α91が、注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部α10の注射針装着側には雄ねじ部α101がそれぞれ形成されている。
これらねじ部α91及びα101は互いに螺合するので図13(c)に部分断面図で、及び、図11(d)に斜視図で示すように螺合させて組合せ、次いで、超音波溶着処理を行うことにより一体として、注射筒の筒部内側面の注射針装着側端付近に全周に亘って溝状の連通筒路1e”が形成された注射筒1”とすることができる。このように作製された注射筒の接合箇所の接合強度は非常に高い。また、主筒部α10の成形時における連通通路1e”の形成はアンダーカットとならないために金型製作が容易で、かつ、低コストとなる。さらにこの例では主筒部α10の注射針装着側端(内側面)が注射針装着側底面と側面との境界に一致しているために、上記同様に接合強度が高いのみならず、超音波溶着の場合に、内側面側に溶着線として凸部が形成された場合であっても、その高さが充分低ければ、中間摺動弁の摺動の妨げにもならず、また、中間摺動弁のプランジャ操作側の薬液の、中間摺動弁の針装着側空間への流通の妨げにならない。その結果、これら主筒部α10及び先端部α9の設計や金型製作が容易になり、かつ、超音波溶着時の歩留まりの向上が可能となる。なお、この例でも、溶着面はこの例では肉厚部1f’に形成されているので、その設計自由度は高い。なお、図8〜13に示した注射筒で注射筒の注射針装着側底面の厚さを、この底面に連なる注射筒側面の一部と同様に、他の部分の肉厚に比べて厚くなっているが、特に強度が求められない場合には肉厚部を設けなくても良く、また、接合強度を高めることを可能とするために、注射針接続側底面に連なる注射筒側面の一部のみを他の部分に比べ厚くしても良い。
本発明に係る注射筒は、例えばX線CTスキャンやMRI(核磁気共鳴画像診断)では、造影剤を被診断者の体内に導入するためのキット製剤用注射器として好適に用いることができる。
1a 注射針接続部
1a1 液導入孔
1a2 ルアーロック部
1a3 キャップ係止部
1b 注射針装着側底面
1c 筒部
1d 指かかり部
1e 連通通路
1f 肉厚部
2 中間摺動弁
2a リップ部
2b1 密着防止凸部
3 プランジャ摺動弁
3a ねじ穴
3b プランジャ操作部
3b1 雄ねじ部
4 第1の薬液
5 第2の薬液
6、6’ キャップ
6a 水密形成部
6b カバー部
6b1 溝
1a1 液導入孔
1a2 ルアーロック部
1a3 キャップ係止部
1b 注射針装着側底面
1c 筒部
1d 指かかり部
1e 連通通路
1f 肉厚部
2 中間摺動弁
2a リップ部
2b1 密着防止凸部
3 プランジャ摺動弁
3a ねじ穴
3b プランジャ操作部
3b1 雄ねじ部
4 第1の薬液
5 第2の薬液
6、6’ キャップ
6a 水密形成部
6b カバー部
6b1 溝
Claims (15)
- 注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、
該中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、
前記注射筒の注射針装着側端部の肉厚を、他の部分の肉厚に比べて厚くしたことを特徴とするキット製剤用注射器。 - 注射筒の注射針装着側底面、及び、該底面に連なる注射筒側面の一部が肉厚となっていることを特徴とする請求項1に記載のキット製剤用注射器。
- 上記中間摺動弁が注射筒内の注射針装着側に達したときに中間摺動弁と注射筒の注射針装着側底面との密着を防止する、密着防止凸部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキット製剤用注射器。
- 上記キット製剤用注射器の注射筒の針装着部周囲にルアーロック部を有するとともに、該針装着部をシールするためのキャップを別部材として有し、かつ、該キャップにルアーロック部の一部と係合し、該ルアーロック部に着脱可能に保持される係合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のキット製剤用注射器。
- 上記請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のキット製剤用注射器を用いるキット製剤であって、上記第1の薬液が造影剤であり、第2の薬液が生理食塩水であることを特徴とするキット製剤。
- 真空充填打栓法により充填されたことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のキット製剤。
- 注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、
該中間摺動弁が注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器において、
該注射筒の注射針装着部を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とを結合してなることを特徴とするキット製剤用注射器。 - 上記注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、前記結合の結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部と側面の肉厚部以外の部分との境界にあることを特徴とする請求項7に記載のキット製剤用注射器。
- 上記注射筒の注射針装着側底面に連なる注射筒側面の一部の肉厚が、注射筒側面の他の部分の肉厚に比べ厚く、かつ、上記結合面の注射筒外側面での結合線が該肉厚部にあることを特徴とする請求項7に記載のキット製剤用注射器。
- 上記結合の結合面が前記連通通路を含むことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のキット製剤用注射器。
- 上記結合面の注射筒内側面での結合線が前記連通通路の注射針装着側端に一致することを特徴とする請求項10に記載のキット製剤用注射器。
- 上記先端部と主筒部とにそれぞれ互いに螺合するねじ部が設けられ、これらねじ部を螺合させて、上記結合を行うことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載のキット製剤用注射器。
- 上記結合に際して超音波溶着処理を行うことを特徴とする請求項7ないし請求項12のいずれかに記載のキット製剤用注射筒。
- 注射筒内壁に接して注射筒の前後の空間を水密に区画する中間摺動弁を注射筒内部に摺動可能に有し、かつ、
該中間摺動弁が注射針装着側に達したときに前記中間摺動弁前後の空間を連通させる連通通路を有して、該中間摺動弁前後の空間にそれぞれ充填された、第1の薬液と第2の薬液とを順次導出可能なキット製剤用注射器に用いられる注射筒の製造方法において、
該注射筒の注射針装着部を含む先端部と注射筒のプランジャ操作側端を含む主筒部とをそれぞれ別部品として成形した後に、これら先端部と主筒部とを結合して注射筒を形成することを特徴とするキット製剤用注射筒の製造方法。 - 上記請求項14に記載のキット製剤用注射筒の製造方法によって製造されたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のキット製剤用注射筒。
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