JP2007116037A - 配線基板の製造方法 - Google Patents

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健二 岩田
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潤 鎌田
Toru Tanaka
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Abstract

【課題】本発明の目的は、従来の導体回路形成方法における工程の煩雑さという課題を解決し、めっきやレジストを必要としない、大幅に簡略化された、導体回路の形成方法を提供することであり、また、その方法によって得られる配線基板を提供することである。
【解決手段】インクジェット装置を用いることにより、パターン化されたケイ素含有重合体の層を絶縁層上に形成した後、遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることにより、該ケイ素含有重合体層上に遷移金属層を形成することを特徴とする導体回路の形成方法。

Description

本発明は、配線基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、配線基板における導体回路の形成方法に関する。
従来、ビルドアップ配線基板等の導体回路はめっき法により形成されている。めっきの工程は、基板の洗浄、プレディップ、PdとSnを含む触媒塗布、アクセラレーター、レジスト前処理、レジストラミネート、露光、現像、めっき前処理、無電解めっき、レジスト剥離と多段階にわたり、非常に煩雑であるため、簡略化された配線の形成方法が望まれていた。
近年、ポリシランに代表される有機ケイ素重合体を、導電性材料として用いることが研究されている(非特許文献1)。また、ポリシランを銀イオンでドーピングすることで導電性を向上させる(特許文献1)、あるいはポリシランに弱く光照射した後に貴金属塩でドーピングして無電解めっきする(特許文献2)ことにより、基板上に金属薄膜を形成する方法が開発されている。さらに、ポリシランの貴金属還元性を利用して、インクジェット装置を用いて基板にポリシランをパターン状に塗布し、ポリシラン部分に貴金属微粒子を析出させ、さらに無電解めっきにより導電膜パターンを形成する方法が開発されている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献2および3に記載の貴金属塩でポリシランをドーピングしてめっきする方法は、高価な貴金属を用いるので用途が限定される。そこで、比較的安価な遷移金属塩を還元して導電膜パターンを形成する方法が開発できれば、めっきやレジストなどを必要としない大幅に簡略化された配線の形成が可能となる。また従来貴金属や銀を用いて高価だったこれらの導電性材料を、銅などの遷移金属をベースにしたものを用いることで、安価に供給することができるが、その方法は開発されていなかった。特許文献2の段落[0030]には、「標準酸化還元電位が0.54Vより低い銅やニッケルの塩では、本ケイ素系高分子で還元ができない」との記述がある。
特開平10−120907号 特開2002−105656号 特開2001−023527号 「有機ケイ素材料科学の新展開」桜井英樹監修、(株)シーエムシー出版刊、2001年
本発明の目的は、従来の導体回路形成方法における工程の煩雑さという課題を解決し、めっきやレジストを必要としない、大幅に簡略化された、導体回路の形成方法を提供することであり、また、その方法によって得られる配線基板を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、従来遷移金属を還元することはできないと考えられていたケイ素含有重合体が、遷移金属塩のアニオンを選択することにより、還元できることを見出した。さらにケイ素含有重合体の還元性を利用して、重合体上あるいは重合体中に遷移金属微粒子を析出させることを見出した。この方法の条件を検討すれば、めっき工程なしに導電性金属薄膜をもつ基体が得られる。また、特定の粘度のケイ素含有重合体溶液をインクジェット装置により基板上に所望の形状に塗布し、遷移金属薄膜を生成させることにより、パターン化された導体回路が得られることを見出した。
すなわち、本発明は25℃での溶液の粘度が1〜1000mPa・sであり、25℃における蒸気圧が0.133〜6650Paであるケイ素含有重合体の溶液を、基板上の回路を形成する部分にインクジェット装置を用いて吐出した後乾燥し、これに、カウンターアニオンがケイ素含有重合体のケイ素原子に配位しうる遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液を接触させて遷移金属を還元析出させることにより、ケイ素含有重合体上に遷移金属層からなる配線層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法である。
ケイ素原子に配位しうる遷移金属塩のカウンターアニオンは、アニオン中心の原子のポーリング(Pauling)電気陰性度が好ましくはBr(臭素)の値を超えるものである。
また本発明の配線基板の製造方法は、前記遷移金属塩が、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
本発明によれば、配線基板の導体回路形成において、めっきやレジストを必要とせず、煩雑な工程を簡略化することができる。
本発明の配線基板の製造方法は、1)基板表面の導体回路(配線層)を形成する部分および/またはスルーホール部分に、インクジェット装置によりケイ素含有重合体を吐出して乾燥させることによりパターン化された被覆層であるケイ素含有重合体薄膜を形成し、2)該被覆層に、ケイ素原子に配位し得る遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液を接触させることを特徴とする。この構成を採ることによって、基板表面の導体回路(配線層)を形成する部分および/またはスルーホール部分に遷移金属が選択的に析出し、導体回路(配線層)が形成され、また基板の表裏が導通し、配線基板が製造される。
本発明のケイ素含有重合体としてはSi−H結合またはSi−Si結合を有する化合物が好ましい。これらは適切な溶媒に少量溶解する溶媒溶解特性を有する。これらの化合物の中でも、ポリシランまたはポリカルボシランが好ましい。
ポリシランとしては、式(1)で表されるポリシランを単一であるいは式(1)の中の異種を混合して用いることが特に好ましい。
(RSi)n …(1)
(式中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキン基、アリール基、複素環基を表し、nは5〜100,000の整数を表す。)
またこの中でもR、Rのいずれかが水素であることがさらに好ましい。ケイ素含有重合体の重量平均分子量は、該ケイ素樹脂が溶媒に可溶であって、基体上に薄膜を形成できれば特に限定されないが、合成の容易さ、溶媒への溶解性、成膜性などから、500〜6,000,000の範囲が好ましい。
本発明で用いるケイ素含有重合体は、ウルツ(Wurtz)法やメタロセン法などの既知の合成法で合成できる。
本発明で用いるケイ素含有重合体は、既知の合成法で合成でき、高純度の窒素雰囲気下で製造するのが望ましい。
本発明において基板にケイ素含有重合体のパターン化された薄膜を形成する方法としては、ケイ素含有重合体の溶液を調製し、該溶液をインクジェット装置により吐出した後、常圧あるいは減圧で常温下、または加温して溶媒を揮散させ薄膜を得る方法が挙げられる。
基板としては、ケイ素含有重合体が塗布できる材料であれば特に問わないが、さまざまな用途で実績のあるガラス、石英、ポリイミド、シリコン、ガラスエポキシ樹脂が好ましい。さらにケイ素含有重合体の溶液は、通常は、基板のスルーホール部や配線を要する箇所のみに吐出されるが、基板の全面に吐出してもよい。スルーホール内にケイ素含有重合体の層を形成することにより、スルーホール内に金属層が形成されて、配線基板としての表裏の導通をとることができる。
本発明によればインクジェット方式によりパターン化されたケイ素含有重合体の還元性により、ケイ素含有重合体を塗布した部分に遷移金属微粒子を還元しながら選択的に析出できることを利用し、導電性の遷移金属層を基体上の該ケイ素含有重合体上に形成できる。
本発明に用いるケイ素含有重合体溶液は25℃における蒸気圧が0.133Pa(約0.001mmHg)以上、6650Pa(約50mmHg)以下となるように調整することが望ましい。蒸気圧が6650Paより高くなると、インクジェット式記録ヘッドから液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こりやすくなり、安定した吐出が困難となり好ましくない。また、蒸気圧が0.133Paより低くなると、吐出した液滴の乾燥が遅くなり好ましくない。
ケイ素含有重合体溶液の粘度は、JIS K1603の方法に準拠し、E型粘度計(東京機器社製、VISCONIC ED型)を用い、温度25℃、ローター回転速度50rpmで測定開始後1分後の粘度を測定した。ケイ素含有重合体溶液は、粘度が1mPa・s以上、1000mPa・s以下となるように調整する。粘度が1000mPa・sより大きくなると、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり、また、1mPa・sより小さくなると、ノズル周辺部が溶液の流出により汚染されるからである。粘度は、例えばシクロヘキシルベンゼンやドデシルベンゼン、またはデュレンなどを溶液中に適量混合させることにより調整することができる。
本発明において用いるインクジェット装置には、通常の構成のインクジェット装置を用いることができる。通常の構成とはインクジェット式記録ヘッド、タンク、駆動機構および制御回路等を備える構成である。
遷移金属塩としては、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩、カルボン酸塩などが挙げられる。
遷移金属としてはさまざまな用途に用いられる、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、クロム、マンガンが好ましく、なかでも銅、ニッケル、鉄、コバルトが実用的に特に好ましい。遷移金属塩の量は、ケイ素含有重合体100質量部に対して通常1〜1,000質量部、好ましくは1〜100質量部である。遷移金属塩溶液あるいは懸濁液の溶剤としては、該遷移金属塩をある量溶解し、該ケイ素含有重合体を少量のみ溶解する溶媒が好ましい。具体的にはアセトニトリル,メタノール,エタノール,2−プロパノールが好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は特に断らない限り「質量部」を意味する。
(実施例1)
(CSi−H)n(式(1)においてR=C、R=H)1部を9部のトルエンに溶解し、シクロへキシルベンゼンを加えて粘度が5mPa・sとなるように調整した。沸点法から算出した25℃の溶液の蒸気圧は2650Paであった。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。nは30〜100である。次に、この基板を室温、窒素雰囲気下で0.3部の酢酸銅(I)を99.7部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、10秒間アセトニトリルで洗浄し、5分間窒素気流で乾燥し、ポリシラン上にのみ金属光沢を呈する導電性の銅層をもつ基板を作成した。形成されたポリシラン上の銅層の厚さは約0.1μmであった。
(実施例2)
p−アニシルヒドロポリシラン(式(1)において、R=Ph−p−OCH、ここでPh=フェニレン基、R=H)1部を9部のトルエンに溶解した。溶液の粘度は50mPa・sであった。沸点法から算出した25℃の溶液の蒸気圧は3800Paであった。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。nは30〜100である。この基板を室温、窒素雰囲気下で0.3部の塩化銅(I)を99.7部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、10秒間アセトニトリルで洗浄し、5分間窒素気流で乾燥し、ポリシラン上にのみ金属光沢を呈する導電性の銅層をもつ基板を作成した。形成されたポリシラン上の銅層の厚さは約0.1μmであった。
(実施例3)
p−アニシルヒドロポリシラン2部を8部のトルエンに溶解した。溶液の粘度は350mPa・sとなるように調整した。沸点法から算出した25℃の溶液の蒸気圧は3460Paであった。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。nは30〜100である。この基板を室温、窒素雰囲気下で0.3部の銅エトキシド(I)を99.7部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、10秒間アセトニトリルで洗浄し、5分間窒素気流で乾燥したことにより、ポリシラン上にのみ金属光沢を呈する導電性の銅層をもつ基板を作成した。形成されたポリシラン上の銅層の厚さは約0.1μmであった。
(実施例4)
p−アニシルヒドロポリシラン2部を8部のトルエンに溶解し、シクロヘキシルベンゼンを加えて粘度が180mPa・sとなるように調整した。沸点法から算出した25℃の溶液の蒸気圧は3220Paであった。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。nは30〜100である。この基板を室温、窒素雰囲気下で0.3部のシュウ酸銅(I)を99.7部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、10秒間アセトニトリルで洗浄し、5分間窒素気流で乾燥したことにより、ポリシラン上にのみ金属光沢を呈する導電性の銅層をもつ基板を作成した。形成されたポリシラン上の銅層の厚さは約0.1μmであった。
(実施例5)
ヒドロ(2−チエニル)ポリシラン(式(1)においてR=2−チエニル、R=H)1部を9部のトルエンに溶解し、シクロヘキシルベンゼンを加えて粘度が5mPa・sとなるように調整した。沸点法から算出した25℃の溶液の蒸気圧は2550Paであった。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。nは30〜100である。この基板を室温、窒素雰囲気下で0.3部の炭酸銅(I)を99.7部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、10秒間アセトニトリルで洗浄し、5分間窒素気流で乾燥したことにより、ポリシラン上にのみ金属光沢を呈する導電性の銅層をもつ基板を作成した。形成されたポリシラン上の銅層の厚さは約0.1μmであった。
(比較例1)
実施例1と同様に、(CSi−H)n 1部を9部のトルエンに溶解し、シクロへキシルベンゼンを加えて粘度が5mPa・sとなるように調整した。この溶液をインクジェット装置を用いてガラスエポキシ基板上に吐出し、150℃で1時間減圧乾燥し、基板上に100μm幅のポリシランパターンを形成した。次に、この基板を室温、窒素雰囲気下で1部の臭化銅(I)を99部のアセトニトリルに懸濁させた溶液に攪拌しながら24時間浸漬し、5分間窒素気流で乾燥したが、導体層は全く形成できなかった。
結果を表1にまとめる。遷移金属塩のアニオン中心原子のポーリング電気陰性度が臭素より大きいものについては、銅層の形成が認められた。
Figure 2007116037
回路基板、半導体基板等に広く用いることができる他、自動車、モーターなどの部品にも応用可能である。

Claims (2)

  1. 25℃での溶液の粘度が1〜1000mPa・sであり、25℃における蒸気圧が0.133〜6650Paであるケイ素含有重合体の溶液を、基板上の回路を形成する部分にインクジェット装置を用いて吐出した後乾燥し、これに、カウンターアニオンがケイ素含有重合体のケイ素原子に配位しうる遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液を接触させて遷移金属を還元析出させることにより、ケイ素含有重合体上に遷移金属層からなる配線層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
  2. 前記遷移金属塩が、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
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