JP2007113097A - アルミニウム缶の製造方法および該方法で製造されたアルミニウム缶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム缶用有底円筒状の金属素地に化成皮膜を形成する際、化成処理工程で内面側を処理せず、外面側のみに化成皮膜を形成させ、化成処理後の水洗において、通常の水洗工程に続いてイオン交換水と調整水とを混合して電気伝導度を9〜20μS/cmとしたリンス水で5〜50℃で水洗する内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法および内面化成皮膜を有していないアルミニウム缶。
【選択図】図3
Description
化成液の組成は、一般的にフルオロジルコニウム酸アンモニウム、ふっ化水素酸とリン酸及び過酸化水素が含まれている。この様にして調製された化成液で処理された化成皮膜は、アルミニウム表面の耐食性を高め、殺菌処理などの温水接触による黒変を防止し、塗料との密着性を改善し且つ加工成形性を低下させるとしても表面硬度を高めるため表面処理としては極めて有効である。
内面側についても、ジルコニウム系化成皮膜の下地処理を全く行わないと、化成処理後、工業用水(水道水又はリンス水として使用済みの水等を含む)で水洗し、イオン交換水で水洗して水を乾燥させる水洗・乾燥工程で、内面ボトム部中央が褐変し、所謂ブラウンスポットが発生する。ブラウンスポットがあると、褐変しない部分のアルミ地との色調差がでるため、内面検査工程で異物が存在すると認識され、不良缶として排除されることになる。そのため従来の化成処理工程では、内面側も化成液をスプレーして、ジルコニウム系化成皮膜の下地処理を行うことにより、化成処理後の水洗・乾燥工程での変色を防止している。
内面側は、外面側よりもジルコニウム皮膜量を少なくしているが、ジルコニウム皮膜量が多いときは、ネック・フランジ加工時に硬度の高い(脆性のある)ジルコニウム皮膜が凝集破壊され内面塗膜の密着性が悪くなる。
特に、スポーツドリンク、ワイン等腐食性が強い内容物を充填する場合、ジルコニウム皮膜が破壊されたときはネック部が腐食しやすい。
従って、従来のジルコニウム皮膜量では、ブラウンスポット発生の防止とジルコニウム系皮膜の凝集破壊の防止は相反する要求であるが、この要求に応えることが出来る化成処理後の水洗・乾燥工程で、内面ボトム部中央にブラウンスポットが発生しない方法の確立が必要であった。
[1] アルミニウム缶用有底円筒状の金属素地に化成皮膜を形成する際、化成処理工程で内面側を処理せず、外面側のみに化成皮膜を形成させ、化成処理後の水洗において、通常の水洗工程に続いて電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水で水洗することを特徴とする内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法、
[2] リンス水がイオン交換水と水道水(調整水)とを混合して電気伝導度を9〜20μS/cmに調整したリンス水である上記[1]に記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法、
[3] 電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水での洗浄を、5〜50℃で行う上記[1]または[2]に記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法、
[4] 化成処理が、フルオロジルコニウム酸アンモニウム、ふっ化水素酸、リン酸を含み、ジルコニウムの濃度として20〜50ppmの化成液であり、20〜50℃、10〜25秒間処理する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法、
このため、化成処理においては、内側面に化成皮膜を設けないので、ネック・フランジ加工における内側面の化成皮膜の凝集破壊の問題を完全に解消しており、本発明の有底円筒体の縮径加工性は飛躍的に向上している。
DI加工後、洗浄により有底円筒体内外面の加工のために塗布した潤滑油を除去し、次いで本発明においては図2に示すように、ベルトコンベア1に倒立状態にセットした有底円筒体2の内面を化成処理せず、外面のみを化成処理して化成皮膜を有底円筒成形体2の外表面に形成させ、さらに缶内・外面を通常の水洗工程に続いて、図3に示すように、電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水10で缶内・外面を洗浄乾燥する点にある。その後一般的な製造法と同様に外面印刷クリア塗装、その焼付工程、内面塗装、その焼付工程、ネッキング加工工程、フランジ加工工程を経て、アルミニウム缶(フタ部分は別途製造する。)製品とする。
通常の水洗工程(リンス工程として使用済みの水でも可)に続いてのリンス水洗工程で用いるリンス水8は、電気伝導度が9〜20μS/cm、好ましくは10〜15μS/cmになっていれば良く、通常はイオン交換水(脱イオン水)と調整水、例えば水道水を混合して調整すればよい。この様な電気伝導度を有する水で水洗し、有底円筒体を乾燥するとき、驚くべきことに有底円筒体2のボトム内面のアルミニウム酸化物の生成を抑制し、変色を防ぐ働きをする。
本発明では、缶外面側だけジルコニウム系化成処理を行った缶の缶内・外面を、通常の洗浄工程につづき表1に記載したリンス水で水洗した。リンス水の電気伝導度、乾燥後のブラウンスポット発生状況、レトルト処理後の内面塗膜密着性(碁盤テープ法)を表1に示す。
リンス水は、電気伝導度2μS/cmのイオン交換水と電気伝導度162μS/cmの水道水を調整水として混合して作成した。水道水中には塩化物イオン5ppm、硝酸イオン0.4ppm、硫酸イオン1.5ppm、珪素20ppm、ナトリウム6ppm、カリウム3ppm、カルシウム12ppm、マグネシウム5ppmを含むものであった。
缶外面側だけを化成処理した有底円筒体を、通常の洗浄工程につづき、電気伝導度を調整したリンス水で水洗し、乾燥後、缶内面にブラウンスポットが発生するか目視観察した。缶水洗・乾燥後、リンス水残さ物が缶ボトム内面中央部に残るため、内面塗装・焼き付け後、内面塗膜の密着性を測定した。
実験の結果、ブラウンスポット発生抑制と内面塗膜密着性の両方を満足する範囲は、電気伝導度が9〜20μS/cmの範囲のリンス水で水洗すると良いことが分かった。
このリンス水は、電気伝導度2μS/cmのイオン交換水と電気伝導度162μS/cmの調整水であれば、95/5〜88/12の範囲で混合することで、9〜20μS/cmの範囲の電気伝導度のリンス水を得ることができる。
缶内面側を化成処理しなくても、電気伝導度9〜20μS/cmのリンス水(イオン交換水と調整水の混合物)を使用することで、ブラウンスポットが発生せず、内面塗膜密着性が良好であるアルミニウム缶を作成できる。且つ、内容物の耐食性が良好となる。
この結果、有底円筒体内面にはジルコニウム皮膜がないために、内面塗装との密着性が優れるだけでなく、大きな変形を伴うネック・フランジ加工が容易になったという効果がもたらされたもので、この結果アルミニウム缶製造方法としては有底円筒体の縮径加工性は飛躍的に向上できた。
2 アルミニウム有底円筒体(倒立)
3 化成液用スプレーノズル
4 ブロワー
5 水洗水ノズル
6 化成液循環ポンプ
7 化成液(貯槽)
8 電気伝導度9〜20μS/cmリンス水(槽)
9 水洗水ベント
10 乾燥炉
11 電気伝導度9〜20μS/cmリンス水供給ポンプ
12 リンス水(貯槽)
13 電気伝導度9〜20μS/cmリンス水スプレーノズル
14 水洗水タンク
15 水洗水循環ポンプ
Claims (5)
- アルミニウム缶用有底円筒状の金属素地に化成皮膜を形成する際、化成処理工程で内面側を処理せず、外面側のみに化成皮膜を形成させ、化成処理後の水洗において、通常の水洗工程に続いて電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水で水洗することを特徴とする内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法。
- リンス水がイオン交換水と調整水とを混合して電気伝導度を9〜20μS/cmに調整したリンス水である請求項1に記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法。
- 電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水での洗浄を、5〜50℃で行う請求項1または2に記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法。
- 化成処理が、フルオロジルコニウム酸アンモニウム、ふっ化水素酸、リン酸を含み、ジルコニウムの濃度として20〜50ppmの化成液であり、20〜50℃、10〜25秒間処理する請求項1〜3のいずれか1項に記載の内面側に化成皮膜がないアルミニウム缶の製造方法。
- アルミニウム缶用有底円筒状の金属素地に化成皮膜を形成する際、外面側にのみ化成皮膜が施され、化成処理後の水洗工程において、通常の水洗工程に続いて電気伝導度が9〜20μS/cmのリンス水で水洗した、内面化成皮膜を有していないアルミニウム缶。
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