JP2007110953A - 高濃度のγアミノ酪酸を含むサワー生地の製造方法と利用法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 中温性乳酸球菌および高温性乳酸桿菌・球菌を配合原材料に添加し、発酵させることによって、本発明の課題が解決された。高温性乳酸球菌としては、Streptococcus thermophilusの細菌および桿菌としては、代表的には、Lactobacillus属の細菌からなる群から選択される細菌が使用され、中温性乳酸球菌としては、代表的には、Lactococcus属の細菌が使用される。
【選択図】 なし
Description
(1)サワー生地の製造方法であって、
(a)穀粒粉ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を培養する工程、を包含する、方法。
(2)前記高温性乳酸菌が、Streptococcus属の細菌、および、Lactobacillus属の細菌からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(3)前記Lactobacillus属の細菌がLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusのJCM1002株である、項目2に記載の方法。
(4)前記Streptococcus属の細菌が、Streptococcus thermophilusのNBRC13957株である、項目2に記載の方法。
(5)前記中温性乳酸球菌が、Lactococcus属の細菌である、項目1に記載の方法。
(6)前記Lactococcus属の細菌が、Lactococcus lactis subsp. cremorisのNBRC13957株である、項目5に記載の方法。
(7)前記Lactococcus属の細菌が、Lactococcus lactis subsp. lactisのNBRC12007株、JCM1158株およびJCM5805株からなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(8)前記培養が23〜30℃で行われる、項目1に記載の方法。
(9)サワーブレッドの製造方法であって、
(a)配合原材料、ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を培養する工程、
を包含する、方法。
(10)項目1に記載の方法であって、ここで、前記工程(a)において、配合原材料の一部のみを混捏した生地が使用され、そして、該方法は、さらに、以下:
(b)該工程(a)によって得られた菌を分離する工程;および
(c)残りの配合原材料と、該分離した菌とを混合、混捏して、培養する工程、
を包含する、方法。
(11)項目1に記載の方法であって、ここで、前記工程(a)が、配合原材料の一部のみを含む溶液中で行われ、そして、該方法は、さらに、以下:
(d)残りの配合原材料に、工程(a)の培養溶液を添加、混捏する工程、
を包含する、方法。
(12)項目1に記載の方法であって、ここで、使用する小麦粉総量に対して:
5〜100重量部の、(i)ライ麦粉、(ii)粉乳、または(iii)ライ麦粉および粉乳;
1〜20重量部の、高たん白質食品素材;および
50〜75重量部の、水、
が培養物に添加される、方法。
(13)項目12に記載の方法であって、ここで、20重量部の高たん白質食品素材が培養物に添加される、方法。
(14)項目12に記載の方法であって、ここで、5重量部の高たん白質食品素材が培養物に添加される、方法。
(15)項目12に記載の方法であって、ここで、65重量部の水が培養物に添加される、方法。
(16)項目1の方法によって製造されたサワー生地。
(17)γアミノ酪酸を25mg/100g生地 以上含む、項目16に記載のサワー生地。
(18)項目1の方法によって製造されたサワー生地を用いて製造された、パン酵母を含まない、パン類。
(19)γアミノ酪酸を20mg/100g生地 以上含む、項目18に記載のパン類。
(20)サワー生地の製造法であって、以下の工程:
(a)小麦粉、配合原材料、水、ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を26℃以下に保ちながら混捏する工程:および
(b)26〜30℃で48時間〜96時間、工程(a)の混捏物を発酵する工程、
を包含し、ここで、該発酵後のサワー生地は、pHが4.0以下であり、滴定酸度が13以上であり、25mg/100g生地 以上のγアミノ酪酸を含む、方法。
(21)項目20に記載の方法であって、ここで、前記工程(a)が26℃で行われる、方法。
(22)項目20に記載の方法であって、ここで、前記工程(b)が28℃で行われる、方法。
(23)項目20に記載の方法であって、ここで、前記滴定酸度が14以上である、方法。
(24)パン類を製造する方法であって、以下:
(i)項目20に記載の方法によって製造された前記サワー生地;または
(ii)項目20に記載の方法によって製造された前記サワー生地と項目20に記載の配合原材料と同一組成の配合原材料との混合物であって、ここで、該サワー生地の量が、対配合原材料あたり100〜80重量部である、混合物、
を発酵させる工程を包含する、方法。
(25)前記生地原料とパン酵母の混合物の量が、対小麦粉あたり3重量部である、項目24に記載の方法。
(26)項目24に記載の方法によって製造された、γアミノ酪酸を10mg/100gパン 以上含む、パン類。
(27)飲食品の製造方法であって、以下:
(a)以下、(i)項目20に記載の方法によって製造されたサワー生地、(ii)該サワー生地の重量の5倍以下の水、および、(iii)調味素材、果実、野菜、果実乾燥粉末、および野菜乾燥粉末からなる群から選択される材料、を含む混合物をホモゲナイズする工程;ならびに
(b)該ホモゲネートを、加熱、濃縮、またはゲル状にする工程、
を包含する方法であって、該食品は、γアミノ酪酸を10mg/100g以上含む、方法。
(28)項目27に記載の方法によって製造された、食品。
(29)項目1に記載の方法であって、前記混合物が、ライ麦粉および粉乳の少なくとも1つを含有する、方法。
(30)前記粉乳がホエイ粉末である、項目29に記載の方法。
(31)中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物。
(32)中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌を含有する、サワー生地を製造するための組成物。
(i)本発明の上記サワー種生地の製造法によって製造されたサワー生地;または
(ii)本発明の上記サワー種生地の製造法によって製造されたサワー生地と本発明の上記サワー種生地の製造法において使用される配合原材料と同一組成の配合原材料との混合物であって、ここで、サワー生地の量が、対配合原材料あたり100〜80重量部である、混合物、のいずれかを発酵させる工程を包含する。必要に応じて、対粉あたり0.1〜10重量部の、好ましくは3〜5重量部の、パン酵母を添加してもよい。
(a)以下、(i)請求項20に記載の方法によって製造されたサワー種生地、(ii)該サワー種生地の重量の5倍以下の水、および、(iii)調味素材、果実、野菜、果実乾燥粉末、および野菜乾燥粉末からなる群から選択される材料、を含む混合物をホモゲナイズする工程;ならびに
(b)該ホモゲネートを、加熱、濃縮、またはゲル状にする工程、
が行われる。従って、パンの摂食がし難い高齢者に対し、より摂取しやすくパン原料を素材とした、美味な、保存性のよいゲル状食品及びこれを用いた飲食品が提供される。
従来法と同様に、高温性乳酸菌を用いた培養(発酵)を以下の配合原材料を用いて行った。
薄力小麦粉 20重量部
ライ麦粉 20重量部
調製豆乳粉末 7重量部
高温性乳酸菌懸濁液(YC−180) 20重量部
食塩 2重量部
水道水 50重量部
これらを加えて、26℃以下で6分間混捏し、そして、さらに3分間混捏した後、大型の蓋付プラスチック容器に入れ、28℃のインキュベータに入れ発酵を促した。24時間後に大型スプーンで生地をかき混ぜ、ガス抜きを行った後、再びインキュベータに入れ、発酵を促した。さらに、24時間ごとに同様の操作を行った。
(1)Lactobacillus derbrueckii subsp. bulgaricus
(2)Streptococcus thermophilus
(3)Lactococcus lactis subsp. lactis。
高温性乳酸菌を用いることなく、中温性乳酸球菌懸濁液のみを用いた培養(発酵)を以下の配合原材料を用いて行った。
薄力小麦粉 20重量部
ライ麦粉 20重量部
調製豆乳粉末 7重量部
中温性乳酸球菌懸濁液(D−1) 20重量部
食塩 2重量部
水道水 50重量部
これらを加えて、26℃、6分間、さらに3分間混捏した後、大型の蓋付プラスチック容器に入れ、28℃のインキュベータに入れ発酵を促した。24時間後に大型スプーンで生地をかき混ぜ、ガス抜きを行った後、再びインキュベータに入れ、発酵を促した。さらに、24時間ごとに同様の操作を行った。
(1)Lactococcus lactis subsp. lactis
(2)Lactococcus lactis subsp. cremoris。
中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を用いた培養(発酵)を以下の配合原材料を用いて行った。
薄力小麦粉 20重量部
ライ麦粉 20重量部
調製豆乳粉末 7重量部
中温性及び高温性乳酸菌懸濁液(FRC−60) 20重量部
食塩 2重量部
水道水 50重量部
これらを比較例1と同様に混捏・発酵を行わせた当該生地は、表3に示すように生地pH、滴定酸度ともに比較例1の生地同様の経過を示した。また同様に、乳酸菌の特徴的な香りが感じられるサワー種生地が得られた。なお、当該生地は、γアミノ酪酸(GABA)を30mg/100g生地 以上を含有した。
(1)Lactococcus lactis subsp. lactis
(2)Lactococcus lactis subsp. cremoris
(3)Streptococcus thermophilus
(4)Lactobacillus derbrueckii subsp. bulgaricus。
比較例1、または実施例1で得られたサワー種生地に、それに用いたと同じ量の
小麦粉 100重量部
ライ麦粉 20重量部
水 65重量部
を同様に加え、混捏後、分割・成型を行い、23℃、18時間発酵させた後、焼成した。十分膨らんだ形の、形態上通常のパンに比し、何ら遜色のない、γアミノ酪酸(GABA)をほとんど含まないか(比較例1の生地を用いた場合)、または14mg/100gパン 以上を含む(実施例1の生地を用いた場合)、風味の良い、美味なパンが得られた。
比較例1の使用原料のうち調製豆乳粉末7重量部をホエイたん白WPC80、6重量部に置き換え、同様にして48時間発酵を行わせたサワー種生地に、それに用いたと同じ量の、以下の配合原材料
強力小麦粉 80重量部
薄力小麦粉 20重量部
ライ麦粉 20重量部
ホエイたん白WPC80 6重量部
中温性及び高温性乳酸菌懸濁液(FRC−60) 20重量部
食塩 2重量部
水道水 40重量部
市販パン酵母 3重量部
を加えて、同様に混捏した。これを分割・成型し、32℃で2時間発酵を行わせた後、焼成し、焼き色の濃い、12.5mg/100gパン のγアミノ酪酸(GABA)を含む、香味の優れたパンが得られた。
実施例1と同様の割合で、小麦粉及びライ麦粉に食塩を添加し、さらにホエイたん白WPC80(ラクトアルブミン)を小麦粉に対し5重量部、所定量の水道水、および菌混合物を添加した。菌混合物としては、(i)強力小麦粉10g、薄力小麦粉20g、ライ麦粉15g、ホエイ粉末 15g、食塩3g、蒸留水300gに中温性及び高温性乳酸菌菌末(FRC−60)0.5gを添加し、28℃、36時間培養した培養液を、小麦粉に対し5重量部、または(ii)殺菌生理食塩水100gにFRC−60菌末1gを添加・分散させた乳酸菌乾燥菌体復水液、20重量部を用いた。その後、26℃以下で6〜9分間混捏し、生地を調製した。これを蓋付容器に入れ、28℃、24時間ごとに撹拌、手入れを行って72時間発酵を行わせると柔らかく、粘着性で、伸縮性が弱い、酸味が強く、かつうまみの強いサワー種生地が得られた。このサワー種生地には、γアミノ酪酸が少なくとも29mg/100g生地 含まれていた。
ライ麦粉およびホエイ粉末の乳酸菌増殖促進に対する効果を検討した。乳酸菌FRC−60.5gに対して、以下の配合原材料を添加した:
配合原料(1)
強力小麦粉 10g
薄力小麦粉 20g
ライ麦粉 0g
ホエイ 15g
食塩 3g
蒸留水 300g。
強力小麦粉 10g
薄力小麦粉 20g
ライ麦粉 15g
ホエイ 0g
食塩 3g
蒸留水 300g。
強力小麦粉 10g
薄力小麦粉 20g
ライ麦粉 15g
ホエイ 15g
食塩 3g
蒸留水 300g。
強力小麦粉 10g
薄力小麦粉 20g
ライ麦粉 0g
ホエイ 0g
食塩 3g
蒸留水 300g。
以上のように、高温性乳酸菌のみを用いると72時間の発酵によって約5mg/100g生地のGABAが産生され、中温性乳酸球菌のみを用いると72時間の発酵によって約0.5mg/100g生地のGABAが産生された。これに対して、高温性乳酸菌と中温性乳酸球菌の共存下での培養によって、約30mg/100g生地に近いGABAが産生されたという結果が得られた。従って、GABAの高生産には、高温性乳酸菌と中温性乳酸球菌の共存が必要である。
Claims (20)
- サワー生地の製造方法であって、
(a)穀粒粉ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を23〜30℃で培養する工程、を包含する、方法。 - 前記高温性乳酸菌が、Streptococcus属の細菌、および、Lactobacillus属の細菌からなる群から選択され、前記中温性乳酸球菌が、Lactococcus属の細菌である、請求項1に記載の方法。
- サワーブレッドの製造方法であって、
(a)配合原材料、ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を培養する工程、 包含する、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記工程(a)において、配合原材料の一部のみを混捏した生地が使用され、そして、該方法は、さらに、以下:
(b)該工程(a)によって得られた菌を分離する工程;および
(c)残りの配合原材料と、該分離した菌とを混合、混捏して、培養する工程、を包含する、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記工程(a)が、配合原材料の一部のみを含む溶液中で行われ、そして、該方法は、さらに、以下:
(d)残りの配合原材料に、工程(a)の培養溶液を添加、混捏する工程、を包含する、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、ここで、使用する小麦粉総量に対して:
5〜100重量部の、(i)ライ麦粉、(ii)粉乳、または(iii)ライ麦粉および粉乳;
1〜20重量部の、高たん白質食品素材;および
50〜75重量部の、水、
が培養物に添加される、方法。 - 請求項1の方法によって製造されたサワー生地。
- γアミノ酪酸を25mg/100g生地 以上含む、請求項7に記載のサワー生地。
- 請求項1の方法によって製造されたサワー生地を用いて製造された、パン酵母を含まない、パン類。
- γアミノ酪酸を20mg/100g生地 以上含む、請求項9に記載のパン類。
- サワー生地の製造法であって、以下の工程:
(a)小麦粉、配合原材料、水、ならびに中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物を26℃以下に保ちながら混捏する工程:および
(b)26〜30℃で48時間〜96時間、工程(a)の混捏物を発酵する工程、
を包含し、ここで、該発酵後のサワー生地は、pHが4.0以下であり、滴定酸度が13以上であり、25mg/100g生地 以上のγアミノ酪酸を含む、方法。 - パン類を製造する方法であって、以下:
(i)請求項11に記載の方法によって製造された前記サワー生地;または
(ii)請求項11に記載の方法によって製造された前記サワー生地と請求項11に記載の配合原材料と同一組成の配合原材料との混合物であって、ここで、該サワー生地の量が、対配合原材料あたり100〜80重量部である、混合物、
を発酵させる工程を包含する、方法。 - さらに、対小麦粉あたり0.1〜10重量部のパン酵母を添加する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
- 請求項12に記載の方法によって製造された、γアミノ酪酸を10mg/100gパン 以上含む、パン類。
- 飲食品の製造方法であって、以下:
(a)以下、(i)請求項11に記載の方法によって製造されたサワー生地、(ii)該サワー生地の重量の5倍以下の水、および、(iii)調味素材、果実、野菜、果実乾燥粉末、および野菜乾燥粉末からなる群から選択される材料、を含む混合物をホモゲナイズする工程;ならびに
(b)該ホモゲネートを、加熱、濃縮、またはゲル状にする工程、
を包含する方法であって、該食品は、γアミノ酪酸を10mg/100g以上含む、方法。 - 請求項15に記載の方法によって製造された、食品。
- 請求項1に記載の方法であって、前記混合物が、ライ麦粉および粉乳の少なくとも1つを含有する、方法。
- 前記粉乳がホエイ粉末である、請求項17に記載の方法。
- 中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌の混合物。
- 中温性乳酸球菌および高温性乳酸菌を含有する、サワー生地を製造するための組成物。
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