JP2007109805A - 電磁波抑制部材及び半導体デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電磁波抑制部材1を、電気的極性を有する液状材料および/またはゲル状材料で構成された電磁波抑制材料2と、この電磁波抑制材料2を封止する封止材3a〜3cとを有し、これら電磁波抑制材料2と封止材3a〜3cとによって、少なくとも波長400nm〜780nmの光に対し、常圧条件下で光透過性を有する透明構造体4が形成される構成とする。
【選択図】図1
Description
これらの事情により、潜在的に電磁波発生源とも干渉被害側ともなりうる規格や電子機器等の、数や多様性が指数関数的に増加していることから、干渉の起こるリスクも天文学的に増加している。
このような考え方は、電磁気的両立性(EMC: Electromagnetic Compatibility)と称され、電磁環境下において電子機器がこの電磁両立性を確立するために、様々な規格が定められている。
このような妨害抑制素子は、希望の信号が素子を通過する際には損失が小さく、妨害波に対しては大きな反射損失や通過損失を持つように設計され、ほとんどの電子回路に適切な方法で組み合わされて使用されている。
妨害抑制素子には、インダクタ素子やコンデンサ素子、コイルを組み合わせたLCフィルタやバリスタなど様々なものがある。
したがって、回路設計によるのみで、電磁環境下における充分なEMC対策を進めることは困難とされてきた。
回路設計では補うことのできないEMC問題は、実装設計に提起され、近年、その解決策として、磁性粉末を樹脂と混合してシート化した電磁波抑制体(電磁波吸収体)を用いる手法が注目されている。
なお、このような電磁波抑制体における電磁波の熱エネルギーへの変換量は、単位体積あたりの電磁波吸収エネルギーP[W/m3]として、電界E,磁界Hおよび周波数fを用いて〔数1〕のように表される。〔数1〕において、第1項,第2項,第3項は、それぞれ、導電損失,誘電損失,磁性損失を表しており、これらの3種類の損失により、電磁波の熱エネルギーへの変換量(電磁波吸収量)が規定される。
なお、この磁性シートの使い方は、主に2通りである。ひとつはアンテナ源から輻射された電磁波を吸収する使い方と、もうひとつは、アンテナ源に高調波ノイズ成分が乗ることを未然に抑制する高調波フィルタとしての使い方である。
また、近年においては、テレビやパソコンなどのディスプレイ部分からの電磁波漏洩も懸念されており、このことからも、光透過性(透明性)を有する電磁波抑制体が求められている。
この電磁波抑制体は、抵抗皮膜の膜厚変化によって表面抵抗率が変化する性質、すなわち、膜厚を大きくすると表面抵抗率が小さくなって電波反射能を発揮し、逆に膜厚を小さくすると表面抵抗率が大きくなって電波吸収能を発揮するという性質を利用したものである。
したがって、特許文献1〜3に記載された構成による電磁波抑制体は、結果的に反射波を少なくすることはできるものの、材料そのものが電磁波を熱に変えるような、つまり前述した磁性シートにおけるような、〔数1〕で示される電磁波吸収効果を本質的に有するものではない。
〔数1〕における第2項の誘電率ε’’が高い材料としては、一般的にチタン酸バリウムなどの固体の強誘電体が知られており、その名の通り高い誘電率を示すものの、共鳴現象の周波数帯が比較的低いために、MHz,GHz帯域の周波数における誘電率の分散特性をほとんど有しておらず、〔数1〕における誘電率ε’’も低い値となってしまう。
このため、現在までのところ、高周波数帯域における電磁波抑制材料としては、前述の磁性材料が主流となっていた。
そして、この電磁波抑制材料が、光透過性を有する封止材にて封止された本発明構成により、本来光透過性が求められる箇所への応用として、例えば、テレビやパソコンなどのディスプレイ部分や、建造物の窓部分、更には電波暗室の窓における電磁波抑制も可能となる。
図1Aに示すように、本実施形態に係る電磁波抑制部材1は、少なくとも、高分子材料と電気的極性を有する液状材料とが混合されて構成されたゲル状材料による電磁波抑制材料2が、例えばガラスによる第1及び第2の封止材3a及び3bに挟持されている。
更に、第3の封止材3cが、第1及び第2の封止材3a及び3bの間に、電磁波抑制材料2を取り囲むように配置されることにより、第1及び第2の封止材3a及び3bに挟持されるのみでは露出面が残ってしまう電磁波抑制材料2が、外気と遮断されて密封封止された構成とされ、電磁波抑制部材1の主要部となる透明構造体4が形成される。
一般に、分子量が大きい液体や分子間の相互作用が強い(粘度が高い)液体ほど緩和時間が長く、分散が低周波数のところにあらわれる。例えば、水(H2O)を特徴づける誘電緩和は、約25GHzのところに存在する。メタノール(CH3OH)では3GHz、エタノール(C2H5OH)では1GHzである。この誘電分散は、イオンを含む電解液でも同様に存在する現象である。
図2より、水の緩和現象は25GHz付近において、特に大きく存在していることが分かる。また、この25GHz付近における比誘電率の損失部εr’’のピーク値は40程度とかなり高い値を示している(25GHz loss peak)。
この帯域における、従来の磁性シートの比透磁率の損失部μr’’が10以下であることと比較すると、水をはじめとして、電気的極性を有する液状材料の電磁波吸収率は、磁性シートに比して充分大きいことがわかる。
このように、電磁波抑制材料2を構成する液状材料および/またはゲル状材料の組成を変化させることによって、目的とする対象電磁波の周波数帯に応じた電磁波抑制部材1を構成することができる。
特に、高分子材料等を混合させた構成による場合には、高分子材料等の周囲の水溶液の誘電緩和分散が高分子材料等の影響を受けるために、単体の液状材料が本来有する周波数帯域から、所期の周波数帯域にその誘電緩和分散をシフトさせることも可能となる。更に、このような液状および/またはゲル状の電磁波抑制材料2を、後述するように光透過性を有する材料で構成することにより、電磁波抑制部材1全体に可視光を中心とする光透過性を付与することも可能となる。
イオン電解液としては、塩化ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、ヨウ化ナトリウム水溶液、ヨウ化カリウム水溶液、塩化カリウム水溶液等を用いることができる。すなわち、電磁波抑制材料2を、1A族元素とハロゲン元素の化合物水溶液と、2A族元素とハロゲン元素の化合物水溶液とのうち、少なくとも一方を含んで構成することができる。
上記電気的極性を有する低分子および/または高分子材料の代表的なものは、ポリアクリルアミド系、エチレングリコール系等を用いることができる。
上記吸水、保水特性を有する低分子および/または高分子材料の代表的なものは、ポリエチレン系、ポリアクリルアミド系等を用いることができる。
なお、本例におけるように複数種の封止材を用いることなく、1種類の封止材を用い、電磁波抑制材料2を充填した後に端部の溶融封止により密閉構造とされた構成によることもできる。
本検討においては、電磁波抑制材料として、アクリルアミドに架橋材としてメチレンビスアクリルアミドを混合させ、電解液溶媒として塩化ナトリウムを溶かした塩溶液を用いて、アクリルアミド系ゲルに、電解液材料である塩化ナトリウム1mol/Lを有する塩溶液を膨潤させた。詳細には、アクリルアミド:1mol/Lとメチレンビスアクリルアミド:0.5mol%/L、ならびに熱架橋開始材として過硫酸アンモニウム:0.2mol%/Lを混合し、シート状にした状態にて70℃でゲル化させて作製した。形状は、4×4×1mmである。
図3A及び図3Bより、塩濃度(mol/l)が高くなるにつれて、比誘電率の実部(εr’)が徐々に低下し、逆に比誘電率の虚部(εr’’)が大きく増大していることがわかる。〔数1〕より、虚部(εr’’)が大きいほど電磁波抑制・吸収特性が向上することから、磁性シートの比透磁率の損失部μr’’が1GHz付近で10程度であることと比較しても、本発明の材料は0.1(mol/l)以上の塩濃度では、磁性シートよりもはるかに電磁波吸収率が大きく、特に2GHz周辺よりも低い帯域においては、十分な電磁波吸収能を有することが確認できた。
測定は、電波暗室にて、図4Aに示すような電波受信アンテナ方向に対して0°方向に指向性を有するメアンダアンテナを設置して行った。指向性方向(0°方向)に20mmの間隔にて4×4×1mmの市販の磁性シート及び本透明電磁波抑制材料のいずれか一方のみを測定サンプルとして適宜設置し、その材料における電磁波抑制効果(電磁波分布)を測定した。測定周波数は1.2GHzとした。
これは、電磁波抑制体においては、反射によって電磁波の進行方向を変化させるよりも、吸収によって電磁波の存在自体を低減することがより好ましく、より実用的と考えられるためである。
市販の磁性シートを設置した場合(一点鎖線図示)、電波受信アンテナ方向に対して0°方向の電磁波の放射は抑制しているものの、l80°方向の電磁波量が増大してしまっていることが分かる。このことから、市販の磁性シートでは、電磁波が反射してしまっていることが確認できた。電波受信アンテナにて観測される全角度方向における電磁波量は、メアンダアンテナのみの場合(実線図示)と比較するとほぼ同等であり、磁性シートにおける電磁波吸収量は微小であるということができる。
以上の測定結果より、本実施形態に係る電磁波抑制部材1を構成する電磁波抑制材料は、良好な電磁波吸収効果/抑制効果を有していることが分かる。
このような透過率の値は、封止材や電磁波抑制材料の厚さや組成によっても変動するため、厚さならびに組成については、人間の眼で透明性を感知できる程度に適宜選定することが好ましい。
すなわち、電解液や電気的極性を有する分子液体材料などの電気的極性を有する液状材料/ゲル状材料による電磁波抑制部材は、電磁波吸収・抑制が高効率であり、光透過性を有するEMC対策部品として形成できる。
なお、光学部材を設ける場合には、これを構成する第2の材料が、常圧条件下で、第2の材料と電磁波抑制材料の屈折率差が、第2の材料と空気の屈折率差と電磁波抑制材料と空気の屈折率差との少なくとも一方に比して小さいか、第2の材料と空気の屈折率差と封止材と空気の屈折率差との少なくとも一方に比して小さいことが好ましく、空気や真空状態の介在する間隙を低減することが好ましい。
なお、低分子および/または高分子材料は、必ずしもゲルを構成しなくとも、電磁波抑制材料を構成する溶媒(液状材料)に添加されることによって、溶媒の誘電緩和周波数をシフトさせることが可能であり、これによっても、所定の周波数の電磁波抑制を目的として、誘電率の周波数分散特性を調整することが可能となる。
Claims (17)
- 少なくとも、電気的極性を有する液状材料および/またはゲル状材料で構成された電磁波抑制材料と、該電磁波抑制材料を封止する封止材とを有し、
前記電磁波抑制材料と前記封止材とによって、少なくとも波長400nm〜780nmの光に対し、常圧条件下で光透過性を有する透明構造体が形成される
ことを特徴とする電磁波抑制部材。 - 前記液状材料が、分子液体材料または電解液材料により構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記ゲル状材料が、低分子および/または高分子材料と、電気的極性を有する液状材料との混合により構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記低分子および/または高分子材料が、吸水特性と保水特性の少なくとも一方を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁波抑制部材。 - 前記ゲル状材料が、前記液状材料を保持して構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記液状材料が、1A族元素とハロゲン元素の化合物水溶液と、2A族元素とハロゲン元素の化合物水溶液とのうち、少なくとも一方を含んで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記封止材のみに対する、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率が、常圧条件下で80%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体に対する、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率が、常圧条件下で80%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体に対する、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率が、常圧条件下で、界面に空気層を挟み込んだ前記封止材のみに対する透過率よりも大となる
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記封止材のみに対する、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率が、常圧条件下で80%以上90%以下であり、
前記透明構造体に対する、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率が、常圧条件下で90%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体に対する、紫外光の透過率が、常圧条件下で、少なくとも波長400nm〜780nmの光の透過率よりも小となる
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体中に、前記電磁波抑制材料及び前記封止材とは異なる第2の材料を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体中に、前記電磁波抑制材料及び前記封止材とは異なる第2の材料を有し、
常圧条件下で、前記第2の材料と前記電磁波抑制材料の屈折率差が、前記第2の材料と空気の屈折率差と、前記電磁波抑制材料と空気の屈折率差との、少なくとも一方に比して小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体中に、前記電磁波抑制材料及び前記封止材とは異なる第2の材料を有し、
常圧条件下で、前記第2の材料と前記封止材の屈折率差が、前記第2の材料と空気の屈折率差と、前記封止材と空気の屈折率差との、少なくとも一方に比して小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記透明構造体中に、前記電磁波抑制材料及び前記封止材とは異なる第2の材料を有し、
前記第2の材料が、前記電磁波抑制材料に対する雰囲気を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 前記電磁波抑制材料の表面積のうち、前記封止材に対する接触面積が最も大となる
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制部材。 - 電磁波抑制部材を有する半導体デバイスであって、
前記電磁波抑制部材が、
少なくとも、電気的極性を有する液状材料および/またはゲル状材料で構成された電磁波抑制材料と、該電磁波抑制材料を封止する封止材とを有し、
前記電磁波抑制材料と前記封止材とによって、少なくとも波長400nm〜780nmの光に対し、常圧条件下で光透過性を有する透明構造体が形成される
ことを特徴とする半導体デバイス。
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Cited By (2)
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