本発明において明度L*は粉体状態のトナーとして求めた値を示している。一般に明度L*は、L*a*b*系表色系において、色相及び彩度に関係なく比較できる色の明るさの度合いを0〜100の範囲で示すものである。本発明において、粉体状態のトナーにおけるL*は、分光式色差計「SE−2000」(日本電色工業社製)を用いて測定したものである。
本発明においてL*が45以上のトナー(以下、これを「トナーa」と表記することがある)とは、通常のトナーに比べ、着色力を抑え、明度を高くしたものである。明度の高いトナーを用いるとハイライト部の画像が良好である理由は以下の通りである。ハイライト部の画像を明度の低い(色の濃い)トナーで形成すると、トナーが現像された明度の低い部分は局部的に高い濃度となり、トナーの現像されない部分とくっきりしたコントラストが出来る。この場合ハイライト部では、当然トナーの現像されない部分が多く、そこに明度の低い高濃度の点がばらまかれた形状の画像が形成される。これは結果的には、極めて粒状感の目立つ画像となる。
そこで本発明では、ハイライト部を粒子当たりの明度が高いトナーを用いて紙とトナーとの明度の差を少なくし、その替わりに通常より多量のトナーで現像することにすれば、同一濃度が前記の現像より多数のトナー即ち画像点(色点)により形成されるので、結果的には前記画像より粒状性の点で良好な(粒状感の少ない)ハイライト部が形成されることになる。
本発明において、トナーの明度を定着した後の画像の分光感度特性ではなく、粉体状態における分光感度特性で規定したのは以下の理由による。定着器や記録部材には様々な種類が存在し、その条件及び組み合わせによって、同一のトナーを定着した場合にでも発現するグロスや色域は大きく変化する。また、定着器の圧力によって、トナーの潰れ方も異なり、それは粒状性(がさつき)に影響を及ぼす。その点、本発明による直接的な測色方法を採用すると、定着器の構成や転写物に影響されないため、トナーそのものの明度を的確に規定することができる。
形成される画像のベタ部に濃色トナー(以下、これを「トナーb」と表記することがある)を用い、ハイライト部は上記本発明の淡色トナー(トナーa)を用いるといった具合に、画像の濃度によってトナーを使い分け、画像を形成するとより好ましい効果が得られる。また、形成される画像の濃度階調に応じて、濃色トナー(トナーb)と淡色トナー(トナーa)とを適宜組み合わせて用いることも好ましい形態である。これは、マゼンタ(M)、シアン(C)いずれの色のトナーに用いても同様な効果が得られる。
確かにこの方法では、粒状感、がさつきを抑えた画像を出力することができた。しかし、ハガキ及びラベル紙等、比較的薄い紙(40g/m2紙)から比較的厚い紙(200g/m2紙)といった多種多様な画像担持体を選択できるようにするため、中間転写体を有する画像形成装置を用いた場合、新たな問題として特に環境変動において転写不良が原因の色味変動が発生し易いことが分かった。
本発明者らは、例えば高温高湿環境(30℃/湿度80%)及び常温低湿環境(23℃/湿度5%)の各環境で濃色、淡色のシアントナーセット、およびマゼンタトナーセットを用いて、それぞれシアン、マゼンタの色階調を出力し原因を確認したところ、濃色トナーと淡色トナーで環境によって最適な転写条件が異なることが分かった。そして本発明者らは濃色、淡色トナーで転写条件を最適化できる物性値に関する検討を試みた。そして鋭意検討の結果、転写性と相関があるトナーの弾性変形率を濃色トナーと淡色トナーで出来るだけ同等にすることで濃色トナーと淡色トナーの最適な転写条件を近づけることができるという新たな知見を得た。
本発明において、中間転写体を有する画像形成装置と、フルカラー画像形成に用いられるシアントナーa(淡色シアントナー)とシアントナーb(濃色シアントナー)とを用いる画像形成方法において、シアントナーaとシアントナーbの荷重9.8×10-5Nに対する最大変位量をそれぞれSa、Sbとし、塑性変位量をそれぞれIa、Ibとしたとき、下式
Ea=(Sa−Ia)×100/Sa
Eb=(Sb−Ib)×100/Sb
で表される弾性変形率Ea、Ebが
0%≦|Ea−Eb|≦10%
を満たすことが、環境特性に関わらず濃色、淡色シアントナーの最適な転写条件を近づけ、色味変動を防止するために重要である。
また、同様に中間転写体を有する画像形成装置と、フルカラー画像形成に用いられるマゼンタトナーa(淡色マゼンタトナー)とマゼンタトナーb(濃色マゼンタトナー)とを用いる画像形成方法において、マゼンタトナーaとマゼンタトナーbの荷重9.8×10-5Nに対する最大変位量をそれぞれSa、Sbとし、塑性変位量をそれぞれIa、Ibとしたとき、下式
Ea=(Sa−Ia)×100/Sa
Eb=(Sb−Ib)×100/Sb
で表される弾性変形率Ea、Ebが
0%≦|Ea−Eb|≦10%
を満たすことが、環境特性に関わらず濃色、淡色マゼンタトナーの最適な転写条件を近づけ、色味変動を防止するために重要である。
ここで、トナーの最大変位量(Sa、Sb)とは、特定の荷重に対してトナーが最大でどれだけ変形するのかを示す量であり、塑性変位量(Ia、Ib)とは特定の荷重を加えられて変形したトナーが、除荷された後に元に戻らずに変形した量を示す値である。そして最大変位量と塑性変位量から算出される弾性変形率(Ea、Eb)である。図12に荷重9.8×10-5N(10mgf)におけるトナーの変位量の測定結果を示す。
本発明ではトナーaとトナーbの弾性変形率(Ea、Eb)をできるだけ近づけることが重要である。
トナーの最大変位量はトナー中の結着樹脂の分子量や架橋密度に影響される。具体的には分子量分が大きく硬いトナーであると、トナーの最大変位量は小さくなる。トナーの結着樹脂の組成や製造方法によってトナーの最大変位量は調整可能であるが、製造方法で調整する具体的な手段としては、重合トナーでは反応時間、温度、開始剤の選択等がある。また粉砕トナーでは架橋剤を添加することによって分子量を大きくする方法、混練温度等の調整で混練シェアを大きくし、結着樹脂の分子鎖を切断するといった方法がある。
また、塑性変位量はトナー中の添加剤で調整できる。例えば、離型剤を添加する場合は塑性変位量は大きくなる。またフィラーとして働くような添加剤を選んで添加することにより、塑性変位量は小さくなる。
従来のトナーaとトナーbにおいては、着色剤の量を変えただけであったため、特に塑性変位量の値がトナーaとトナーbとで異なる。本発明者らの検討結果では、トナーaの方が塑性変位量が小さくなり、弾性変形率も差を生じる傾向にあった。また、トナーaとトナーbで着色剤の種類を同じにすることがトナー生産性やコストの面から好ましいが、この場合、トナーaとトナーbで色味が若干異なる傾向にある。このため、|Ea−Eb|が10%を超えると、環境変動において転写不良が原因の色味変動が発生し易くなる。
本発明においては、|Ea−Eb|を10%以下にする方法として、理想的には塑性変位量と最大変位量をトナーa、トナーbで近づけることで|Ea−Eb|を10%以下にすることであるが、トナーaとトナーbの塑性変位量と最大変位量の差をそれぞれ調整することで|Ea−Eb|を10%以下にする方法であっても良い。塑性変位量と最大変位量をトナーa、トナーbで同じにすることは困難であるため、塑性変位量と最大変位量をトナーa、トナーbで近づけながら、それぞれの塑性変位量と最大変位量を調整してトナーa、トナーbの弾性変形率を合わせ込むが、一例として粉砕トナーでは、トナーbに対して樹脂の組成は替えず、トナーaの離型剤を若干増やして混練シェアを大きくするといった方法で調整を行うことが出来る。
本発明では、トナーの荷重9.8×10-5Nに対する最大変位量(Sa、Sb)は特に規定はないが好ましくは0.05〜0.28μmである。
また、荷重9.8×10-5Nに対するトナーの弾性変形率(Ea、Eb)も特に規定はないが、好ましくは22%〜68%である。
さらにトナーの荷重9.8×10-5Nに対する塑性変位量(Ia、Ib)についても本発明においては特に限定はされなが、好ましい範囲としては、0.04〜0.25μmである。
また、中間転写体を有する画像形成装置を用いた場合、転写不良によって発生する画像の白抜けの発生、画像にスジが入るといった転写不良の痕跡が発生しやすくなる。これはトナーa、トナーbの組み合わせでより多くのトナーを使用することでフルカラー画像を形成するため、より多くの転写残トナーが発生することによるものであった。特に中間転写体から画像担持体へ画像の転写を行う2次転写の行程で顕著であった。
そこで本発明者らは、2次転写性を向上させるのに必要なトナー物性を規定し、トナー処方の設計を行うための指標を見出し、本発明に至った。
本発明では、シアントナーaおよびシアントナーbを荷重9.8×10-5Nで変形させたものを、更に9.8×10-5Nの荷重を加えたとき、トナーの弾性変形率(Ea2)、(Eb2)がそれぞれ55%以上であることが好ましい。同様にマゼンタトナーaおよびマゼンタトナーbを荷重9.8×10-5Nで変形させたものを、更に9.8×10-5Nの荷重を加えたとき、トナーの弾性変形率(Ea2)、(Eb2)もそれぞれ55%以上であることが好ましい。
最初の荷重9.8×10-5Nは、感光体等の第1の画像担持体と中間転写体との1次転写によるトナー変形を想定したものである。鋭意検討の結果、2次転写性に有利なトナーの物性として、一度負荷をかけられたトナー粒子が高い弾性を有しているものほど、2次転写の転写性に優れているという知見を得た。シアン及びマゼンタトナーの(Ea2)、(Eb2)が55%未満であると転写不良の痕跡が発生し易くなる。
(Ea2)、(Eb2)の調整方法は特に限定されるものではないが、トナーの最大変位量や塑性変位量と大きく関係しているため、トナーの弾性変形率と同様な調整方法で行うことが出来るが、トナーの形状(粒径、円形度)を変更することでも微調整することができる。
また、|Ea2−Eb2|も10%以下になることが、例えば高温高湿環境、常温低湿環境といった極端な環境差に対しても高い転写性を示し、且つ色味変動も防止できるため、特に好ましい。
本発明のトナーは、トナーに含まれる粒子のうち、円相当径が2μm以上の粒子の平均円形度が0.920〜0.970であることが、特に1次転写性に有利であるため好ましい。前記平均円形度は、トナー粒子の平均円形度を実質的には表しており、より好ましくは0.925〜0.965である。本発明のようなトナーセットで、さらにトナー粒子が特定の範囲内で球形化されることによって現像性を損なうことなく、安定した転写性を得ることが出来た。
前記平均円形度が0.920未満の場合は、外添剤による流動性付与の効果が小さくなるため、トナーの流動性が低下し、トナーの帯電量にバラツキが生じ、転写効率の低下やガサツキ性の悪化が生じやすくなる。そして(Ea2)、(Eb2)が小さくなる傾向にあり、(Ea2)、(Eb2)を55%以上にすることが若干難しくなる傾向にある。
また、前記平均円形度が0.970よりも大きい場合は、中間転写体のクリーニング性が悪くなる傾向にあり、転写不良の痕跡が発生し易くなる。前記平均円形度は、トナー粒子の球形化処理によって調整することが可能である。
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来電子写真用の結着樹脂として知られる各種の樹脂が用いられるが、その中でも(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、及び(f)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物のいずれかから選択される樹脂であることが好ましい。
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合は、2価以上のアルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物又はカルボン酸エステル等の2価以上の酸成分とが原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
2価の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び、これらの無水物やエステル化合物等が挙げられる。なお、3価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全モノマーを基準として0.1〜1.9mol%であることが好ましい。
本発明のトナーの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、上記各モノマーの中でも、特に、下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
更に、結着樹脂としてポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、更に良好なワックス分散性と、低温定着性,耐オフセット性の向上が期待できる。本発明に用いられるハイブリッド樹脂とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
ここでポリエステルユニットとは少なくともポリオールとポリカルボン酸の縮重合物であるものを言う。また、ビニル系ユニットとは1種又は2種以上のビニル系モノマーが重合してなるものを言う。
ビニル系重合体を生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
本発明ではビニル系重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明のビニル系重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明トナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系重合体製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はビニル系重合体(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル樹脂製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
(4)ビニル系重合体及びポリエステル製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂が製造される。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
なお、本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステルとビニル系重合体との混合物、上記ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂に加えてビニル系重合体の混合物を使用しても良い。
本発明のトナーに含有される着色剤として、黒色着色剤としては、カーボンブラック;磁性体;イエロー、マゼンタ、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色したものが利用される。黒色着色剤として磁性体を用いる場合には、他の着色剤と異なり、樹脂100質量部に対し5〜200質量部を添加して用いられる。
磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素等の元素を含む金属酸化物等がある。中でも四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものが好ましい。また、トナーの帯電性のコントロールの観点から、ケイ素元素及びアルミニウム元素等、他の金属元素を含有していてもよい。前記磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/g、特に3〜28m2/gであることが好ましく、更にモース硬度が5〜7であることが好ましい。
磁性体の含有量は、トナーaを調整する場合、結着樹脂100質量部に対し5〜20質量部が好ましい。またトナーbを調整する場合の着色剤の含有量は結着樹脂100質量部に対し総量で30〜200質量部が好ましい。
マゼンタトナー用着色顔料としてはC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
着色剤には、上記顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用染料としては、C.Iソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料が挙げられる。
シアントナー用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、及び下記式で示される構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20などが挙げられる。
イエロー用着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162等があり、顔料と染料を併用することも好ましい。
本発明における着色剤の含有量は、トナーaを調整する場合、結着樹脂100質量部に対し0.1〜2.0質量部が好ましい。またトナーbを調整する場合の着色剤の含有量は結着樹脂100質量部に対し総量で2.5〜15質量部が好ましい。
本発明では、離型剤を添加することも可能である。離型剤は一般にはオイルレス定着機構を有する電子写真機器においても優れた定着性を発揮するトナーを提供するために添加されるが、本発明ではトナーの塑性変形量や弾性変形率を調整するための材料としても好ましく用いることが出来る。
離型剤は市販の物が使用できるが、一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリルなどのエステルワックス、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量のポリアルキレンワックス、パラフィンワックス、石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス、高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー、一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行なったものが、より好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの[例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物];ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;パラフィンワックスが、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
本発明のトナーは、更に荷電制御剤をトナー粒子内に添加されて有していても良い。本発明においてトナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。その中でも芳香族オキシカルボン酸のアルミニウム化合物は、混練工程を有する粉砕法においては荷電制御剤としてだけではなく混練時に結着樹脂を架橋させる効果もあるので特に好ましい。
荷電制御剤のうちネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが利用できる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が利用できる。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましい。
本発明のトナーは、更に他の添加剤をトナー粒子に外添して有していてもよい。本発明においてトナー粒子に外添される添加剤としては、公知のものが利用できるが、特に、流動性向上剤が外添されていることが画質向上、高温環境下での保存性の点で好ましい。流動性向上剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粉体が好ましい。該無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
疎水化剤としては、シラン化合物、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカツプリング剤の如きカップリング剤が挙げられる。
具体的に例えばシラン化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
RmSiYn (2)
〔式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、フェニル基、メタアクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示し、nは1〜3の整数を示す。〕
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
その処理量は、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部である。
本発明で用いられるシラン化合物として特に好適なのは、下記一般式(3)で示されるアルキルアルコキシシランである。
CnH2n+1−Si−(OCmH2m+1)3 (3)
〔式中、nは4〜12の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。〕
上記一般式(3)で表されるアルキルアルコキシシランにおいて、nが4より小さいと、処理は容易となるが疎水化度が低く、好ましくない。nが12より大きいと、疎水性が十分になるが、酸化チタン微粒子同士の合一が多くなり、流動性付与能が低下しやすい。また、mが3より大きいと、アルキルアルコキシシランの反応性が低下して疎水化を良好に行いにくくなる。より好ましくはアルキルアルコキシシランはnが4〜8であり、mが1〜2であるものである。
アルキルアルコキシシランの処理量も、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部である。
疎水化処理は1種類の疎水化剤単独により行っても良いし、2種類以上を併用しても良い。例えば1種類の疎水化剤単独で疎水化処理を行っても良いし、2種類の疎水化剤で同時に、又は1種類の疎水化剤で疎水化処理を行った後、別の疎水化剤で更に疎水化処理を行っても良い。
流動性向上剤は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜5質量部添加することが好ましく、0.05〜3質量部添加することがより好ましい。
本発明のトナーは一成分現像方法にも、非磁性二成分現像方法にも好適に使用できるものである。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。磁性キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解又は懸濁させて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着させる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.1〜30質量%(好ましくは0.5〜20質量%)が好ましい。これらキャリアの個数平均粒径は10〜100μm、好ましくは20〜70μmを有することが好ましい。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
次に、本発明のトナーを製造する手順について説明する。
まず、トナー粒子を構成する少なくとも樹脂、着色剤などの材料(内添剤)を所定量秤量して配合し、混合する(これを「原料混合工程」という)。原料を混合する際に用いられる混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
次に、上記混合されたトナー原料を溶融混練して樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させることにより、着色樹脂組成物を得る(これを「溶融混練工程」という)。この溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。
更に、上記溶融混練工程よって得られた着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
次いで、得られた着色樹脂組成物の冷却物は、一般的には粉砕工程において所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径が3〜11μmの分級品を得る。
必要に応じて、表面改質工程で表面改質(即ち球形化処理)を行い、分級品としてもよい。このような表面改質を行う装置としては、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステム等が挙げられる。
また、必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。更に、外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することによりトナーを得ることができる。
次に本発明で好ましく用いられる表面改質装置の一例の構成を示す。
図1に示す回分式表面改質装置は、円筒形状の本体ケーシング30、本体ケーシングの上部に開閉可能なよう設置された天板43;微粉排出ケーシングと微粉排出管とを有する微粉排出部44;冷却水或いは不凍液を通水できる冷却ジャケット31;表面改質手段としての、本体ケーシング30内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク33を複数個有し、所定方向に高速に回転する円盤状の回転体である分散ローター32;分散ローター32の周囲に一定間隔を保持して固定配置された、分散ローター32に対向する表面に多数の溝が設けられているライナー34;微粉砕物中の所定粒径以下の微粉及び超微粉を連続的に除去するための分級ローター35;本体ケーシング30内に冷風を導入するための冷風導入口46;微粉砕物(原料)を導入するために本体ケーシング30の側面に形成された原料投入口37及び原料供給口39を有する投入管;表面改質処理後のトナー粒子を本体ケーシング30外に排出するための製品排出口40及び製品抜取口42を有する製品排出管;表面改質時間を自在に調整できるように、原料投入口37と原料供給口39との間に設置された開閉可能な原料供給弁38;及び製品排出口40と製品抜取口42との間に設置された製品排出弁41を有している。
ライナー34の表面は、図6(A)及び(B)に示すように溝を有していることが、トナー粒子の表面改質を効率的におこなう上でこのましい。角型のディスク33の個数は、図3(A)及び(B)に示すように、回転バランスを考慮して、偶数個が好ましい。角型のディスク33の説明図を図(A)及び(B)に示す。
図1、図2及び図7に示す分級ローター35は、分散ローター32の回転方向と同方向に回転するのが、分級の効率を高め、トナー粒子の表面改質の効率を高める上で好ましい。
微粉排出管は、分級ローター35により除去された微粉及び超微粉を装置外に排出するための微粉排出口45を有している。
該表面改質装置は、更に、図4(A)及び(B)に示すように、天板43に対して垂直な軸を有する案内手段としての円筒状のガイドリング36を本体ケーシング30内に有している。該ガイドリング36は、その上端が天板から所定距離離間して設けられており、分級ローター36の少なくとも一部を覆うようにガイドリングは、支持体により本体ケーシング30に固定されている。ガイドリング36の下端は分散ローター32の角形ディスク33から所定距離離間して設けられる。 該表面改質装置内において、分級ローター35と分散ローター32との間の空間が、ガイドリング36の外側の第一の空間47と、ガイドリング36の内側の第二の空間48とにガイドリング36によって二分される。第一の空間47は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分級ローター35へ導くための空間であり、第二の空間は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分散ローターへ導くための空間である。分散ローター32上に複数個設置された角型のディスク33と、ライナー34との間隙部分が表面改質ゾーン49であり、該分級ローター35及び該分級ローター35の周辺部分が分級ゾーン50である。
図7に示す如く、原料ホッパー380に導入された微粉砕物は、定量供給機315を経由して、投入管の原料投入口37から原料供給弁38を通って原料供給口39より装置内に供給される。表面改質装置には、冷風発生手段319で発生させた冷風を冷風導入口46から本体ケーシング内に供給し、さらに、冷水発生手段320からの冷水を冷水ジャッケト31に供給し、本体ケーシング内の温度を所定温度に調整する。供給された微粉砕物は、ブロアー364による吸引風量、分散ローター32の回転及び分級ローター35の回転により形成される旋回流により、円筒状のガイドリング36の外側の第一の空間47を旋回しながら分級ローター35近傍の分級ゾーン50に到達して分級処理が行われる。本体ケーシング30内に形成される旋回流の向きは、分散ローター32及び分級ローター35の回転方向と同じである。
分級ローター35によって除去されるべき微粉及び超微粉は、ブロワー364の吸引力より分級ローター35のスリット(図2参照)より吸引され微粉排出管の微粉排出口45及びサイクロン入口359を経由してサイクロン369及びバグ362に捕集される。微粉及び超微粉を除去された微粉砕物は第二の空間48を経由して分散ローター32近傍の表面改質ゾーン49に至り、分散ローター32に具備される角型ディスク33(ハンマー)と本体ケーシング30に具備されたライナー34によって粒子の表面改質処理が行われる。表面改質が行われた粒子はガイドリング36に沿って旋回しながら再び分級ローター35近傍に到達し、分級ローター35の分級により表面改質された粒子からの微粉及び超微粉の除去がおこなわれる。所定の時間処理を行った後、排出弁41を開き、表面改質装置から所定粒径以下の微粉及び超微粉が除かれた表面改質されたトナー粒子を取り出す。
所定の重量平均径に調整され、所定の粒度分布に調整され、さらに所定の円形度に表面改質されたトナー粒子は、トナー粒子の輸送手段321により外添剤の外添工程に移送される。
本発明に用いられる表面改質装置は、鉛直方向下側より分散ローター32、微粉砕物(原料)の投入部39、分級ローター35及び微粉排出部を有している。従って、通常、分級ローター35の駆動部分(モーター等)は分級ローター35の更に上方に設けられ、分散ローター32の駆動部分は分散ローター32の更に下方に設ける。本発明で用いる表面改質装置は、例えば特開2001―259451号公報に記載されている分級ローター35のみを有するTSP分級機(ホソカワミクロン社製)の様に、微粉砕物(原料)を分級ローター35の鉛直上方向より供給することは困難である。
本発明において、分級ローター35の最も径の大きい箇所の先端周速は30〜120m/secであることが好ましい。分級ローターの先端周速は50〜115m/secであることがより好ましく、70〜110m/secであることが更に好ましい。30m/secより遅い場合は、分級収率が低下しやすく、トナー粒子中に超微粉が増加する傾向にあり好ましくない。120m/secより速い場合は、装置の振動の増加の問題が生じやすい。
更に、分散ローター32の最も径の大きい箇所の先端周速は20〜150m/secであることが好ましい。分散ローター32の先端周速は40〜140m/secであることがより好ましく、50〜130m/secであることが更に好ましい。20m/secより遅い場合は、十分な円形度を有する表面改質粒子を得ることが困難であり好ましくない。150m/secより速い場合は、装置内部の昇温による装置内部での粒子の固着が生じやすく、トナー粒子の分級収率の低下が生じやすく好ましくない。分級ローター35及び分散ローター32の先端周速を上記範囲とすることにより、トナー粒子の分級収率を向上させ、効率良く粒子の表面改質をおこなうことができる。
次に、本発明のトナーセットを用い、本発明の画像形成方法を好適に実現できる画像形成装置の一例を示す。以下、本発明のトナーaとトナーbとを同時に用いる画像形成方法及びそれを好適に実現できる画像形成装置の例を、図9を参照しながら具体的に説明する。本発明で用いる画像形成装置について、入力をRGB、出力をシアントナーa(淡色シアントナー LC)、シアントナーb(濃色シアントナー C)、マゼンタトナーa(淡色マゼンタトナー LM)、マゼンタトナーb(濃色マゼンタトナー M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の6色で出力する場合について説明する。
カラー画像形成装置は、6つの画像形成ステーション101、102、103、104、105、106が紙送り方向に直列に並置されており、各画像形成ステーション101〜106には、それぞれ像担持体である感光ドラム101a、102a、103a、104a、105a、106a、露光装置101b、102b、103b、104b、105b、106b、現像装置101c、102c、103c、104c、105c、106c、クリーニング装置101d、102d、103d、104d、105d、106d、および1次転写装置101e、102e、103e、104e、105e、106eを備えている。
また、各画像形成ステーション101〜106の感光ドラム101a〜106aと1次転写装置101e〜106eとの間を通るように、中間転写体である中間転写ベルト112が矢印方向に移動可能に配置されている。
上記構成にて、まず、原稿台ガラス120上に載置された原稿Gをスキャンし、原稿情報をCCD113により電気的信号に変換し、画像処理を施した後、LEDを駆動させ、一様に帯電された感光ドラム101aに静電潜像を形成する。
LED露光により形成された静電潜像を現像装置101cによりトナー像として現像する。このトナー像を1次転写装置101eにより中間転写ベルト112に1次転写する。
上記と同様の処理を第2〜第6画像形成ステーション102〜106においても行い、中間転写ベルト112上に6色のトナーを重ねた画像が形成される。
一方、給紙カセット113から搬送されてきた転写材P上に2次転写装置111によって2次転写した後、定着装置109により定着し機外に排紙する。
次に画像信号の流れを示す。
まず、原稿台ガラス120上に載置された原稿Gをスキャンし、原稿情報をCCD113により電気的信号に変換し、デジタル信号化する。
デジタル信号化されたデータを画像処理ブロックで加工し、RGB信号を適当なデータとして変換し、実際に出力する色分解を行う。この色分解を行う際、ダイレクトマッピングによってY、K、C、LC、M、LMの6色を同時に行うことが好ましいが、まずY、K、C、Mの4色に色分解を行い、その後、CをLCとC、MをLMとMといった色分解を行うことも出来る。
以上のようにRGBデータを出力用の版データに変換した後、ガンマ補正及びハーフトーン処理を行い、階調データに応じてレーザ出力のパルス幅変調を行うことにより、レーザ出力量に応じた電位の静電潜像が感光ドラム101a〜106a上に形成される。
LCとC、あるいはLMとMの版データへの変換については、トナーの濃度レベルにより様々な組み合わせが考えられるが、図10に基本となる直線的な階調を示す。図示したとおり、ハイライトで先にトナーaが立ち上がり、中間階調付近からトナーbが入り始め、しばらくトナーa、トナーbの組み合わせで階調を再現しながら、高濃度部ではトナーaの使用が制限されていくものである。このときの階調の組み合わせは、粒状性や階調性、色域等の画像品質と、トナー消費量の関係より決定される。また本明細書では簡単のため、直線的な階調を図示したが、実際には図11に示したとおり、濃淡各トナーの濃度の入り始めは緩やかなカーブを描くことが好適である。
以下、本発明における各物性の測定方法について説明する。
<トナー及び中間転写体の最大変位量、塑性変位量の測定>
本発明においてトナー及び中間転写体の最大変位量、塑性変位量の測定は(株)エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100で測定した。使用圧子は100μm×100μm四方の平圧子を用い、測定環境は27℃,湿度60%で測定した。最大荷重9.8×10-5Nに対し、0.98×10-5N/secのスピードで荷重を掛ける。最大荷重に到達後、0.1secの間、その荷重で放置する。その時に変位している量を最大変位量とした。さらに最大荷重を経て0.98×10-5N/secのスピードで除荷し、荷重が0になったときの変位量を塑性変位量とした。
1)トナーの最大変位量、塑性変位量(弾性変形率 Ea、Eb)の測定
トナーの測定はセラミックセル上にトナーを塗し、トナーがセル上に分散するように微小なエアーを吹き付ける。そのセルを装置にセットして測定する。
測定は装置付帯の顕微鏡を覗きながら測定用写真画面(横幅:160μm 縦幅:120μm)にトナーが1粒で存在しており、測定するトナーの重量平均粒径±1μmのものを選択して測定する。なお、測定用写真画面から任意のトナーを選択して粒径を測定手段は超微小硬度計ENT1100付帯のソフトを用いて測定した。任意の場所から粒子100個を選んで測定し、測定結果の最大値、最小値それぞれ10個は除いて残り80個をデータとして使用し、その80個の平均から最大変位量、塑性変位量を求めた。
2)トナーの弾性変形率(Ea2、Eb2)の測定
1)の方法でトナーの最大変位量、塑性変位量(弾性変形率 Ea、Eb)を測定後、装置付帯の顕微鏡で測定前と同様にトナー粒子1粒が存在していることを確認する。トナー粒子が存在していない、もしくは複数存在するような場合は、平圧子を清掃し他の場所でトナー粒子1粒で存在しているものを選択し、1)からやり直す。
一度測定したトナー粒子に対して再度、同じ荷重とスピードで負荷、除荷を行う。このときの最大変位量(Sa2、Sb2)と塑性変位量(Ia2、Ib2)から弾性変形率(Ea2、Eb2)を算出した。
1)と同様に、一つのトナー処方につき100回測定し、測定結果の最大値、最小値それぞれ10個は除いて残り80個をデータとして使用し、その80個の平均からEa2、Eb2を求めた。
<平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
また、円形度標準偏差SDは、平均円形度C、各粒子における円形度ci、測定粒子数をmとすると次式から算出される。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナー粒子の平均円形度を求める。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
<粉体状態における明度L*の測定>
粉体状態のトナーにおけるL*は、JIS Z−8722に準拠する分光式色差計「SE−2000」(日本電色工業社製)を用い、光源はC光源2度視野で測定する。測定は付属の取り扱い説明書に沿って行うが、標準板の標準合わせには、オプションの粉体測定用セル内に2mm厚でφ30mmのガラスを介した状態で行うのが良い。より詳しくは、前記分光式色差計の粉体試料用試料台(アタッチメント)上に、試料粉体(トナー)を充填したセルを設置した状態で測定を行う。なお、セルを粉体試料用試料台に設置する以前に、セル内の内容積に対して80%以上粉体試料を充填し、振動台上で1回/秒の振動を30秒間加えた上で測定する。
<トナー粒度分布の測定>
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて測定することができる。また、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることも可能である。測定においては、電解液が使用されるが、この電解液には1%NaCl水溶液が使用される。1%NaCl水溶液は、1級塩化ナトリウムを使用して調製しても良いし、また例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)等の市販品を使用しても良い。
測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出し、重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
<GPCによる分子量測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
<ワックスの最大吸熱ピークの極大温度の測定>
温度曲線:昇温I(30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
降温I(200℃〜30℃、降温速度10℃/min)
昇温II(30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
トナー及びワックスの最大吸熱ピークは、示差走査熱量計(DSC測定装置)DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
測定試料は3〜7mg、好ましくは4〜5mgを精密に秤量する。それをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。ワックスのピーク温度は、昇温IIの過程でピークトップとなる温度を測定する。