JP2007107012A - 射出成形体とその製造方法、並びに、射出成形体に用いられるペレット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の射出成形体は、(A)乳酸系樹脂、及び、(B)セルロース40質量%〜60質量%とリグニン10質量%〜30質量%とを含有する天然繊維、を含む樹脂組成物であって、(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維とを質量比で99:1〜70:30の割合で含有し、かつ、(A)乳酸系樹脂が、L乳酸:D乳酸=100:0〜97:3、又は、L乳酸:D乳酸=0:100〜3:97である樹脂組成物を用いてなる。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これらの複合材料では耐熱性が未だ十分ではなく、実用上問題を生じることがあった。
本発明の射出成形体は、(A)乳酸系樹脂、及び、(B)セルロース40質量%〜60質量%とリグニン10質量%〜30質量%とを含有する天然繊維、を含む樹脂組成物であって、(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維とを質量比で99:1〜70:30の割合で含有し、かつ、前記(A)乳酸系樹脂が、L乳酸:D乳酸=100:0〜97:3、又は、L乳酸:D乳酸=0:100〜3:97である樹脂組成物を用いてなることを特徴とする。
また、射出成形体の荷重たわみ温度は133℃以上であることができる。
あるいは、引き抜き成形によって前記(B)天然繊維を(A)乳酸系樹脂に含浸(浸漬)させた被覆物と、(A)乳酸系樹脂とを混練した後、形成されてもよい。
本発明の射出成形体は、(A)乳酸系樹脂、及び、(B)セルロース40質量%〜60質量%とリグニン10質量%〜30質量%とを含有する天然繊維、を含む樹脂組成物を用いてなる。ただし、(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維とを質量比で、(A)乳酸系樹脂:(B)天然繊維=99:1〜70:30の割合で含有することが必要であり、95:5〜80:20の割合で含有することが好ましい。(B)天然繊維の含有量が1質量%より下回ると、耐熱性、結晶化速度の向上効果が乏しく、一方、30質量%より上回ると、得られる射出成形体の耐衝撃性が低下するため実用上問題を生じる。
さらにまた、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
本発明においては、射出成形体の耐久性を向上させるために、さらに加水分解防止剤(C)を配合することができる。ここで、加水分解防止剤(C)の配合量は、乳酸系樹脂(A)と天然繊維(B)との合計質量が100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。加水分解防止剤の添加量が0.1質量部以上、5.0質量部以下であれば、十分な耐久性を付与することができ、生分解性が損なわれることがなく、また、加水分解防止剤がブリードアウトせず、外観不良や、可塑化による機械物性の低下が生じない。
−(N=C=N−R−)n−
ただし、式中、Rは有機系結合単位を示し、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族であることができる。nは1以上の整数を示し、通常は1〜50の間で適宜決められる。nが2以上の場合に、2以上のRは同一でも異なっていてもよい。
カルボジイミド化合物の具体例としては、ラインケミー社製の「スタバクゾール」、日清紡(株)製の「カルボジライト」等を挙げることができる。
本発明の射出成形体は、まず、引き抜き成形によって、天然繊維に乳酸系樹脂を含浸させたものから被覆物ペレットを形成し、この被覆物ペレットと、乳酸系樹脂と、必要に応じて、その他の添加剤等を、二軸押出機を用いてストランド形状に押出してペレットを作製しておき、このペレットを再度射出成形機に入れて射出成形することにより形成することができる。あるいは、乳酸系樹脂及び天然繊維等を、二軸押出機等に投入し、直接混練して射出成形することにより射出成形体を得ることもできる。本発明においては、前者の方法、すなわち、引き抜き成形によって被覆物ペレットを形成した後、乳酸系樹脂と混練して成形する方法を用いることが好ましい。引き抜き成形によって天然繊維に乳酸系樹脂を含浸させることによって、繊維の嵩密度が高いことにより起因するフィード不良が緩和され、二軸押出機で混練する際に、天然繊維の分散性が更に向上し、耐熱性、結晶化速度の向上効果を最大限に発揮することができる。なお、乳酸系樹脂は、溶融成形時に加水分解を起こしやすいので、あらかじめ乾燥するか、真空ベント押出工程を経ることが好ましい。
日本工業規格 JIS K−7191に基づいて、長さ(L)が120mm、幅(W)が11mm、厚さ(t)が3mmの試験片を作製し、この試験片について、(株)東洋精機製作所製の「S−3M」を用いて荷重たわみ温度(HDT)の測定を行った。ただし、測定は、フラットワイズ方向、試験片に加える曲げ応力は45.1N/cm2の条件で行った。
日本工業規格 JIS K−7171に基づいて、長さ(L)が80mm、幅(W)が10mm、厚さ(t)が4mmの試験片を作製し、この試験片について、(株)インテスコ製の精密万能材料試験機「MODEL2010」を用いて、80℃における曲げ弾性率の測定を行った。
射出成形体から約10mgの鱗片状片を削り出して試験片とした。この試験片を、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC−7」を用い、日本工業規格 JIS K−7121に基づいて降温測定を行った。射出成形体試験片を、200℃で2分間加熱して融解させ、その後、10℃/minの条件下で降温し、測定を行った。この降温過程で結晶化ピークが出現した温度を結晶化熱量ピーク温度とした。
乳酸系樹脂としてカーギル・ダウ社製のNature Works 4032D(L−乳酸/D−乳酸=99/1、重量平均分子量20万)を用い、天然繊維として、オージー株式会社製のケナフ繊維(セルロースの含有量が53質量%、リグニンの含有量が18質量%、平均直径が17mm)を用いた。引き抜き成形用クロスヘッドダイを連結したシリコ−プラ工業社製の30mmφ単軸押出機に、乳酸系樹脂を供給した。また、一方で、この単軸押出機のクロスヘッドダイのホールにケナフ繊維を通して、樹脂温度が180℃でケナフ繊維を乳酸系樹脂に含浸させて樹脂被覆を行い、水槽で冷却した後、ペレカッターを通して被覆物ペレットを作製した。得られた被覆物ペレットの平均直径は1.5mmであり、平均長さは3mmであった。また、被覆物ペレット中の乳酸系樹脂に対するケナフ繊維の割合は、(A)乳酸系樹脂:(B)ケナフ繊維=70:30(質量%)であった。
1)温度条件:シリンダー温度(195℃) 金型温度(20℃)
2)射出条件:射出圧力(115MPa) 保持圧力(55MPa)
3)計量条件:スクリュー回転数(65rpm) 背圧(15MPa)
実施例1において、射出成形体の形成に用いられるペレットの(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維との含有割合を、Nature Works 4032D:ケナフ繊維=90:10(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、射出成形体の形成に用いられるペレットの(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維との含有割合を、Nature Works 4032D:ケナフ繊維=80:20(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、天然繊維をオージー(株)製のタケ繊維(セルロース含有量が53%、リグニン含有量が27%、平均直径10mm)に変更し、(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維との割合を、Nature Works 4032D:タケ繊維=90:10(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、乳酸系樹脂として、Nature Works 4032Dの替わりに、Nature Works 5040D(L−乳酸/D−乳酸=97.7/2.3、重量平均分子量が20万)を用いた以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)を作製した。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、(B)天然繊維を使用せずに、乳酸系樹脂であるNature Works 4032Dのみを用いた以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)を作製した。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、(B)天然繊維の替わりに、日本板硝子(株)製のガラス繊維(平均厚さ5mm、平均長さ2mm)を用い、乳酸系樹脂とガラス繊維との割合が、Nature Works 4032D:ガラス繊維=90:10(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、(B)天然繊維の替わりに、帝国繊維(株)製の亜麻繊維(セルロース含有量が80質量%、リグニン含有量が1質量%、平均直径が20mm)を用い、乳酸系樹脂と亜麻繊維との割合が、Nature Works 4032D:亜麻繊維=90:10(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた板材について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1で使用したケナフ繊維を、亜塩素酸ナトリウム、氷酢酸、蒸留水の混合溶液を用い、70〜80℃で加熱還流したもの(リグニン含有量が8.5質量)を天然繊維として用いた。すなわち、実施例1において、天然繊維として、セルロース含有量が58質量%、リグニン含有量が8.5質量%)を用い、乳酸系樹脂と天然繊維との割合が、Nature Works 4032D:天然繊維=90:10(質量%)となるように変更した以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)の作製を行った。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
実施例1において、乳酸系樹脂として、Nature Works 4032Dの替わりに、Nature Works 4050D(L−乳酸/D−乳酸=95.0/5.0、重量平均分子量が18万)を用いた以外は実施例1と同様にして、射出成形体(板材)を作製した。
得られた射出成形体(板材)について、実施例1と同様の評価(測定)を行った。その結果を表1に示す。
一方、比較例1〜5の射出成形体は、荷重たわみ温度が132℃以下であり、曲げ弾性率も低く、結晶化熱量ピーク温度は96℃以下であることが分かった。
すなわち、所定の乳酸系樹脂に、セルロース含有量が40〜60質量%、リグニン含有量が10〜30質量%の天然繊維を配合することによって、結晶化促進効果に優れ、かつ、結晶化促進と繊維補強の相乗効果による耐熱性の向上を同時に実現することができた。
Claims (5)
- (A)乳酸系樹脂、及び、(B)セルロース40質量%〜60質量%とリグニン10質量%〜30質量%とを含有する天然繊維、を含む樹脂組成物であって、(A)乳酸系樹脂と(B)天然繊維とを質量比で99:1〜70:30の割合で含有し、かつ、前記(A)乳酸系樹脂が、L乳酸:D乳酸=100:0〜97:3、又は、L乳酸:D乳酸=0:100〜3:97である樹脂組成物を用いてなることを特徴とする射出成形体。
- 前記樹脂組成物の結晶化熱量ピーク温度(Tc)が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の射出成形体。
- 射出成形体の荷重たわみ温度が133℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形体。
- 前記(B)天然繊維を(A)乳酸系樹脂に含浸させた被覆物と、(A)乳酸系樹脂とを混練した後、形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の射出成形体。
- 引き抜き成形によって前記(B)天然繊維を(A)乳酸系樹脂に含浸させた被覆物と、(A)乳酸系樹脂とを混練した後、形成されることを特徴とする請求項4記載の射出成形体。
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