近年、電子写真法等を利用したレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機などの画像形成装置においては、印刷の高速化、マシンの小型化、マシン寿命の高耐久化が著しく進んでいる。また、性能として求められているのは、高解像度・高画質・高耐久が当然となってきているが、印刷速度の高速化により、印刷速度に合わせた画像特性、耐久性向上を得るためには、帯電特性の安定化したトナーが必要不可欠であって、長期にわたり安定したトナー薄層を形成し、かつ各プロセスの工程に影響を与えない、特に画質を決定付ける感光体ドラムに対する影響が少なくなるようなトナーが望まれている。
こういった電子写真法等を利用したレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機などの画像形成装置においては、まず、潜像担持体(感光体)の表面を帯電手段によって一様に帯電させ、次いで、半導体レーザー、発光ダイオード等の露光手段によって露光して潜像を形成後、この潜像を、現像手段によって現像または反転現像してトナー像に顕像化し、そして、このトナー像を転写手段によって紙などの被印刷物の表面に直接に転写するか、もしくは中間転写体の表面に転写し、次いで紙などの被印刷物の表面に再転写した後、定着手段によって定着させることで一連の画像形成の工程が完了する。
このような潜像をトナー像に現像するための現像方式としては、大別して乾式、湿式の2つがあるが、現在は乾式の現像方式が広く普及している。また、乾式の現像方式は、トナーおよび鉄粉などのキャリアを用いる2成分現像方式とキャリアを用いない1成分現像方式に分類され、さらに使用するトナーの種類から考えると、結着樹脂からなるトナー粒子中に磁性粉を添加した磁性トナーを用いる現像方式(磁性1成分現像方式、磁性2成分現像方式)と、磁性粉を添加しない非磁性トナーを用いる現像方式(非磁性1成分現像方式、非磁性2成分現像方式)とに分類される。
2成分現像方式は、初期的には比較的安定して良質の画像を提供することができるが、長期にわたって使用する場合、キャリア表面にトナーが付着するスペント現象によってトナーが劣化し、キャリアの帯電付与能力が低下して良質な画像が得られなくなる等の問題や、トナーとキャリアの混合比率が一定に保ちにくいため、長期耐久性に欠けるという欠点を有する。
それに対してトナーのみよりなる1成分現像剤を用いる1成分現像方式では、キャリアを用いないから2成分現像剤における長期耐久性の欠如、という問題点を解決することができ、また、現像器そのものを非常に小さく、かつ、簡単な構成とすることができる。そして1成分現像方式の中でも、磁性紛を内添させたトナーを採用した磁性1成分現像方式が一般によく知られ活用されている。
この磁性1成分現像方式では、潜像担持体と対面させて固定磁石を組み込んだトナー担持体上に上記磁性トナーを薄層化しながら供給し、前記潜像担持体上の潜像を前記磁性トナーで現像する。また、磁性1成分現像方式には、導電性を有する磁性トナーを用いる現像方式と、絶縁性の磁性トナーを用いる磁性1成分ジャンピング現像方式と呼ばれる現像方式とがあり、現在は後者の磁性1成分ジャンピング現像方式が広く普及している。
この磁性1成分ジャンピング現像方式では、まず磁性トナーを固定磁石を内蔵して回転するトナー担持体と、当該トナー担持体に近接させて配設した磁性ブレードとの隙間を通過させることで摩擦帯電させ、トナー担持体の表面に供給して内蔵した固定磁石の磁力によって保持させて、トナー担持体の表面に磁性トナーの薄層を形成する。
そしてこのトナー担持体を、形成した薄層と接触しないように潜像担持体と間隙を保持して対峙させ、交流あるいは直流のバイアス電圧を印加することで、トナー担持体上に形成された薄層から帯電した磁性トナーを潜像担持体の表面に飛翔させ、潜像をトナー像に顕像化する。
この磁性1成分ジャンピング現像方式では、絶縁性の磁性トナーを用いているために導電性のトナーを用いた場合には不可能であった、形成したトナー像を電界を利用して紙等の被印刷物の表面に転写することが可能となり、また、潜像担持体が電気的リークによって破壊されるのを防止することもできる。
また、絶縁性の磁性トナーは帯電させやすいこと、磁力によって磁性トナーを保持した状態でトナー担持体と十分に摩擦できること、潜像と非接触の状態で潜像を現像できることから、形成画像の非印字部分や余白部分にトナーが付着する地カブリの発生を防止し、画質の優れた画像を形成できるという利点もある。
上記磁性1成分ジャンピング現像方式に用いる潜像担持体としては、他の現像方式の場合と同様、有機および無機の種々の電子写真感光体を用いることができるが、特にその耐久性等を考慮すると、導電性基体上にアモルファスシリコン(以下a−Siと略称する)感光層を形成したa−Si感光体が好適である。このa−Si感光体は、例えば、結着樹脂中に顔料や電荷輸送剤等を含有させた有機の感光層を有する有機感光体と比べ、画像形成枚数で表しておよそ10倍以上という高い耐久性を有しており、これは、被印刷物や次に述べる弾性ブレード等と摺擦されることによって摩耗して感光層の厚みが減少する速度が、有機感光層のおよそ1/100以下と摩耗しにくいことから得られる結果である。
しかしながら、a−Si感光体の最大のデメリットはその生産性の低さである。すなわちa−Si感光体は、導電性基体の表面に例えばCVD法等の気相成長法によってa−Si感光層を成膜することで製造されるが、かかる気相成長法では、結着樹脂等を含む塗布液を導電性基体上に塗布して乾燥させるだけで形成される有機感光層に比べ、所定の厚みを有する感光層を形成するために要する時間が著しく長くかかる上、気相成長法はバッチ式であって連続的な生産ができないため、どうしても生産性が低くなってしまう。
そこで、前記のようにa−Si感光層が有機感光層に比べて摩耗しにくいことを利用して、その厚みをこれまでよりも小さくし、a−Si感光体の生産性を向上することが一般化しつつある。すなわち、これまでは30〜60μm程度あったa−Si感光層の厚みを30μm以下にし、薄膜型としたa−Si感光体が普及し始めている。
こういった薄膜型のa−Si感光体の主なメリットは、言うまでもなく、従来のものに比べて生産性に優れることであるが、さらに、薄膜化した方が形成画像の解像度が向上するというメリットもある。
一方、トナー像を紙等の被印刷物の表面に転写した後、a−Si感光体の表面に残留したトナーはクリーニング手段により除去されるが、このクリーニング手段は、可動部分を極力少なくして画像形成装置のコンパクト化、機構の簡素化等を図るため、当該a−Si感光体の表面に圧接させた弾性ブレードが好適である。
トナー像を被印刷物の表面に転写させた後、a−Si感光体の表面に残留した磁性トナーの大半は、上記弾性ブレードによって感光体の表面から掻き取られて除去されるが、その一部、すなわちトナー粒子やその破片としての磁性粉や樹脂片、あるいは流動性、帯電性等を改善するため磁性トナーに外添されるシリカ等の外添剤の一部は、弾性ブレードの先端部分、すなわちa−Si感光体への圧接部分に滞留する。
そして、これらの滞留物が、弾性ブレードおよびa−Si感光体と長期間に亘って摩擦されると、所定の帯電量以上に過帯電するいわゆるチャージアップを生じ、その帯電量が限界値、すなわちa−Si感光層の耐圧値を超えると、感光体の極微小領域に向かって放電(一点放電)し、a−Si感光体を絶縁破壊させて修復不能な欠陥を生じさせる場合がある。この放電は、主に弾性ブレードの先端部分の稜線部で発生する。
a−Si感光体は本来的に絶縁破壊に弱いため、上記の絶縁破壊を生じやすい。そのため、a−Si感光体と弾性ブレードと磁性トナーとを用い、磁性1成分ジャンピング現像による画像形成を繰り返すと、上記のメカニズムによって短期間で異常放電(一点放電、火花放電)が発生し、a−Si感光体が絶縁破壊されて欠陥を生じるおそれがある。このような欠陥を生じたa−Si感光体を用いて画像形成を続けると、当該欠陥の部分はキャリア阻止層が破壊されて帯電工程で帯電させることができないため、形成した画像に微小な黒点を生じるという問題がある。
この問題は、特に、薄膜型としたa−Si感光体では大きな問題となる。すなわち、絶縁破壊によるa−Si感光層の欠陥の発生は感光体の針耐圧(V)に依存するところが大きいが、薄膜型としたa−Si感光体では通常よりも耐圧値が低くなり、膜厚が薄ければ薄いほど、絶縁破壊による欠陥が発生しやすくなる。
そのため、このようなa−Si感光体における絶縁破壊に対しては、使用するトナーに過剰な帯電がたまらないようトナー設計することが回避する一つの方法であるが、感光体の絶縁破壊を回避するためトナーを帯電量が溜まりにくい、すなわち帯電が逃げやすいトナーとしてしまうと帯電量不足のため画像濃度が低くなってしまい、特に、高温高湿環境のような非常に帯電量が低くなりやすい環境下ではその影響は顕著である。
この感光体における絶縁破壊に対しては、従来より様々な対策が考えられてきた。例えば、特許文献1では、感光体の絶縁破壊を防止するため、感光体の表面保護層の膜厚や固有抵抗を規定し、さらにトナー中の遊離磁性粉の数を規定することが提案されている。
また、特許文献2では感光体の電荷注入阻止層の膜厚を既定し、残留トナーをクリーニング装置で引き剥がす際の剥離放電で表面保護層が損傷しても、電荷注入阻止層の絶縁破壊による画像欠陥を低減できるようにした電子写真装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1における遊離磁性粉は、内添されていた磁性粉がトナーより脱落したものであるため、実際にはその遊離を定量的に制御することは困難である。また、この文献では、トナーよりも感光体自身の改良による効果によって絶縁破壊を防止する内容となっている。
また、特許文献2に示された電子写真装置でもトナーに関しては特別な規定がなく、本来絶縁破壊の原因となっているはずであるトナーで対策しないため、今後特性の異なるトナーを使用した場合には感光体の絶縁破壊が再び懸念される。
感光体における絶縁破壊は、先に述べたようにトナーの帯電量が大きく関与している。すなわち、トナーがブレード部において過帯電すると感光体に向かって放電してしまい、感光体を絶縁破壊するのである。したがって、根本的な対策としては感光体における対策ではなく、トナー自体で対策をすることが必要であり、トナー帯電量を適切に制御することが求められている。磁性1成分トナーにおいては、その内添された磁性粉によってトナー帯電量は大きく変化するため、従来より様々な形状の磁性粉が検討されてきた。
現在、トナーに内添させる磁性粉としては、6個の四角形で囲まれた凸多面体である六面体(立方体、直方体)状のものや、8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体状のもの等の、多面体状の磁性粉と球状の磁性粉とが一般的に用いられる。
このうち、多面体状の磁性粉を用いた磁性トナーは、トナー粒子の表面に露出した磁性粉の尖った頂点や、隣り合う面間の尖った稜線から電荷が放出されやすいことから、磁性トナーが弾性ブレードの先端部分に滞留して長期間に亘って摩擦されても、a−Si感光層が絶縁破壊を起こす前にその帯電電荷を上記頂点や稜線を通して放出させ、トナー粒子が過剰に帯電するのを防止することができる。そのため、a−Si感光層の絶縁破壊は起こりにくい。
しかしながら、逆に、磁性粉の尖った頂点や隣り合う面間の尖った稜線から電荷が放出されやすいことから電荷のリークが必要以上に起こりやすく、また、多面体状の磁性粉は流動性が低くて結着樹脂に対する分散性が悪いことから、当該結着樹脂中に均一に分散させることが難しい。そのため、個々のトナー粒子における磁性粉の分散状態にばらつきを生じやすいことから、個々の磁性トナーの帯電のしやすさや帯電量などにもばらつきを生じやすく、多面体状の磁性粉を用いた磁性トナーは、帯電量が速やかに立ち上がりにくい上に帯電量自体も低くなってしまう。
一方、球状の磁性粉を用いた磁性トナーは尖った頂点や稜線等を有さず、トナー粒子の表面に露出した磁性粉から電荷が放出されにくいことから電荷のリークは起こりにいくい。また、球状の磁性粉は、多面体状のものに比べて流動性に優れると共に結着樹脂に対する分散性にも優れることから、結着樹脂中に均一に分散させるのが容易で個々の磁性トナーにおける磁性粉の分散状態にばらつきが生ぜず、帯電のしやすさや帯電量などを均一化することもできる。しかし逆に、電荷がたまり過ぎるためにトナーが所定の帯電量以上に過帯電する、いわゆるチャージアップを生じやすく、その帯電量が耐圧値を超えると、a−Si感光層を前記したように絶縁破壊させ、それ以降の形成画像に微小な黒点を生じさせることになる。
従って、前記した薄膜型のa−Si感光体と、弾性ブレードと、従来の球状の磁性粉を含む磁性トナーとを組み合わせた場合には、チャージアップにより、極めて短期間で、a−Si感光層が絶縁破壊するおそれがある。
そのため、チャージアップの防止のみを考慮すれば多面体状の磁性粉を使用するのが好ましいことになるが、この多面体状の磁性粉は前記したようにトナー粒子の表面に露出した磁性粉の尖った頂点や、隣り合う面間の尖った稜線から電荷が放出されやすく、電荷のリークが起こりやすい。また多面体状の磁性粉は流動性が低く、結着樹脂に対する分散性が悪いことから当該結着樹脂中に均一に分散させるのが難しい。そのため、個々のトナー粒子における磁性粉の分散状態にばらつきを生じやすく、個々の磁性トナーの帯電のしやすさや帯電量などにもばらつきを生じてしまう。
したがって、多面体状の磁性粉を用いた磁性トナーは帯電量が速やかに立ち上がりにくい上に帯電量自体も低くなってしまい、結果として、画像濃度の低下や地カブリの発生といった画像欠陥を生じやすいという問題がある。また、画像形成時の温度、湿度環境によって帯電のしやすさや帯電量が変動しやすいことから、特に、高温、高湿環境などの帯電しにくい環境下において上記の画像欠陥をさらに生じやすくなるという問題もある。
そのため、球状磁性粉と多面体状磁性粉の両方の長所を活かすため、例えば、特許文献3〜5には、前記六面体や八面体などの多面体の頂点や稜線を、多面体を構成する各面よりも小さな平面によっていわゆる面取りをしたような粒子形状を有する磁性粉が開示されている。また、特許文献6には、立方体を基準としてその各頂点および稜線が曲面状とされた粒子形状を有する磁性粉が開示され、かかる磁性粉をトナー粒子に内添させることも記載されている。
しかし、この特許文献3〜5に示された磁性粉においても、依然として多面体を構成する面と面取りした小さな平面との間には尖った稜線が存在し、この稜線から電荷が放出されやすいことから根本的に多面体形状磁性粉と同様の傾向があり、このような磁性粉を使用した場合、電荷がリークし、1成分現像部分では画像濃度低下のような画像欠陥が生じるおそれがある。
このように、従来から様々な形状の磁性粉が検討されてきたが、これらの磁性粉を内添ではなく、外添することでトナー帯電量を制御することも可能である。現在、磁性粉を外添剤として用いる際には、主に感光体やトナー担持体へのトナー付着防止や研磨効果を目的として使用されている。
例えば特許文献6には、ワックスによる感光体ドラムフィルミング障害を解決するため、磁性粉末を外添したトナーが提案され、特許文献7には、外添剤として八面体磁性粉を添加してクリーニング効果を高めたトナーが提案されている。
また特許文献8には、比抵抗の異なる2種類の外添剤を含んでいると共に、比抵抗の小さい外添剤の遊離率が比抵抗の大きい外添剤の遊離率より大きく設定され、比抵抗の小さい外添剤によってトナーの帯電が適切に調整できるようにしたトナーが提案されている。
特開2003−149857号公報
特開2002−287391号公報
特開平11−153882号公報
特開2000−162817号公報
特開2000−242029号公報
特開平9−73186号公報
特開2003−66647号公報
特開2003−280254号公報
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図3は、本発明の磁性トナーとそれを用いた画像形成方法を実施する画像形成装置の構造の概略を示す図、図4は本発明に用いる感光体ドラム(静電潜像担持体)11の断面図、図5はアモルファスシリコン感光体の膜厚と絶縁破壊を起こす針耐圧との関係を示したグラフである。図中、アモルファスシリコン(以下a−Siと略称する)で構成した感光体ドラム11は、正帯電a−Siを感光体とした、例えばφ30のドラムで構成され、その周囲には、例えばスコロトロンを用いた帯電器12、露光器13、固定磁石を内蔵して前記潜像担持体と接触しないよう間隔を保持して対面し、表面にトナーを保持して回転するトナー担持体141を有する現像器14、転写手段たる転写ローラ15、クリーニング手段たるクリーニングブレード(弾性体、ゴムなど)16、除電装置である除電ランプ17が感光体ドラム11の回転方向に沿って配置されており、感光体ドラム11と転写ローラ15との間に紙やOHPフィルムなどの図示していない転写材が通され、下流となる転写材の排出経路上に図示していない定着装置が設けられている。
(帯電器の構成)
本発明の画像形成装置に用いられる帯電器12は、例えばスコロトロン帯電器12であり、これはシールドケース、コロナワイヤ、グリッドから構成され、帯電幅は周方向に12.0mm、ドラム軸方向に242mmで、ワイヤとグリッド間の距離は5.8mmと設定するのが好ましい。またグリッドとa−Si感光体との距離は0.4〜0.8mmとするのが好ましく、0.4未満であると火花放電の可能性があり、0.8mm以上であると帯電能が低くなってしまう。
(a−Si感光体ドラムの構成)
感光体ドラム11を構成するアモルファスシリコン感光体としては、例えば図4に示したように、ドラム状などの所定の形状に形成した導電性基体21の表面にアモルファスシリコン系の感光層19を形成したものが用いられ、特に、その感光層19の膜厚を10〜30μmとした薄膜型のアモルファスシリコン感光体が好適である。
なお、アモルファスシリコン系の感光層19は、アルミ等の導電性基体21のロール上に実際に感光層19として機能する単層もしくは2層以上の感光層19の他に、キャリア阻止層20、表面保護層18等を有していてもよく、これら多層構造の感光層の場合には、そのトータルの膜厚が10〜30μmの範囲であるのが好ましい。かかる薄膜型のアモルファスシリコン感光体は、先に説明したように生産性に優れる上、解像度の高い画像を形成できるという利点がある。
(感光体の膜厚)
本実施形態においてa−Si感光体の膜厚とは、a−Si感光体における基体21の表面から基体21と反対側の感光体表面までの膜厚を言い、キャリア阻止層20、感光層19、表面保護層18の総和となる。本実施形態のa−Si感光体における、導電性基体21上の感光層19の膜厚を10〜30μmの範囲とするのは、感光体の膜厚が10μm未満だと感光体としての帯電能が低くなって所定の表面電位を得ることが困難となり、また、導電性基体21の表面でレーザ光が乱反射することにより、ハーフパターンにおいては干渉縞が発生する不具合が生じるからである。
一方、感光体の膜厚が30μm以上になると、熱キャリアの移動速度が速くなるため暗減衰特性が低下し、結果的に感光体表面方向への潜像の流れが発生し易くなって解像度が低下する原因となる。a−Si感光体に限らずOPC感光体においても、感光体の膜厚は薄いほど解像度が向上することは公知であり、コスト面においても、感光体の膜厚が厚いほど成膜時間が長くなること、成膜時間が長くなることによって異物等の付着確率が高くなり、歩留まりも悪くなることなどにより、感光体の膜厚は薄いほどコストも安く、品質も安定する。
よって、感光体の総膜厚については、帯電能力、耐圧、暗減衰特性、製造コスト、品質面より10〜30μm以下の範囲で使用することが好ましい。より好ましくは、表面保護層の厚さを20000Å以下、さらに5000〜15000Åとするのが好ましい。
これは、表面保護層の厚さが5000Å未満になると転写ローラからの負電流の流れ込みに対して耐圧特性が低下し、その結果15000枚以下の早い段階でSiC層が劣化するからであり、一方表面保護層の厚さが20000Åを超えると、成膜時間が長くなってコスト的に不利になるためである。
一方、問題としているアモルファスシリコン感光体へのリーク黒点の発生は、アモルファスシリコン感光体の針耐圧(V)に依存するところが大きい。つまり、図5に示したように、膜厚が厚くなればなるほど絶縁破壊に要する電圧が大きくなっていき、逆に薄膜になればなるほど絶縁破壊に要する電圧は小さくなる。よって、30μm以下の薄膜a−Si感光体を用いると、多少のチャージアップで感光体へのリークが顕著になるのである。なお、この図5において横軸はアモルファスシリコン感光体の膜厚、縦軸は放電破壊を起こす針耐圧である。
(感光体材料)
アモルファスシリコン系の感光層19は、例えばグロー放電分解法、スパッタリング法、ECR法、蒸着法などの気相成長法によって形成することができ、その形成にあたっては、Hやハロゲン元素を含有させることもできる。また感光体の特性を調整するためにC、N、O等の元素を含有させたり、周期表(長周期型)の13族元素や15族元素を含有させたりしてもよい。
具体的には感光層19は、例えばa−Siの他、a−SiC、a−SiO、a−SiONなどのアモルファスシリコン系の、光導電性を有する種々の材料にて形成することができる。特に、a−SiCを用いるのが好ましく、その場合はSi1−xCxのxの値を0.3≦x<1.0、さらに好ましくは0.5≦x≦0.95に設定するのがよい。この範囲であればa−SiC層を、良好なキャリアの輸送を維持しつつa−Si層よりも高抵抗にし、感光体の光感度特性を向上することができる。13族元素や15族元素としては、それぞれBやPが共有結合性に優れ、半導体特性を敏感に変え得る点で、また優れた光感度が得られるという点で望ましい。
この理由は、このようなa−SiCは1012〜1013Ωcmという高い抵抗を有しており、感光体表面方向の潜像電荷の流れが少なく、静電潜像の維持能力及び耐湿性にも優れているためである。
(OPCとアモルファスの区別すべき特徴)
一般的にOPC感光体は、表面抵抗が1013Ω/cmオーダーとa−Si感光体のそれ(108Ω/cmオーダー)よりも極端に高く、絶縁破壊されにくい特徴がある。よって、OPC感光体はリーク黒点の心配が少ない。
(感光体の表面電位)
画像形成する際のアモルファスシリコン感光体の帯電電位は特に限定されないが、+200〜+500Vの範囲内の値とすることが好ましい。感光体の表面電位が+200V未満だと現像電界が不十分となり、画像濃度の確保が困難となる。一方、+500Vを超えると、感光体の膜厚によっては帯電能力が不足すること、絶縁破壊による黒点が発生し易くなること、あるいはオゾンの発生量が増加してしまうなどの問題がある。特に膜厚を薄くした場合には、それに対応して感光体の帯電能力が低下する傾向にある。したがって、現像性と感光体の帯電能力とのバランスの観点から、表面電位の値は+200V〜+500Vの範囲内の値に、さらに好ましくは、表面電位の設定を+200V〜+300V設定することが好ましい
(現像器)
本発明になる静電潜像現像用トナーを用いる現像器14には、感光体11に対向して設けられて内部に磁石ローラを内蔵した現像スリーブからなるトナー担持体141が配され、このトナー担持体141表面にトナー薄層が担持されて、トナーを感光体に飛翔させる手段たる図示していない交流あるいは直流のバイアス電源から供給される電圧が印加され、磁性1成分ジャンピング現像方式で感光体11上に形成されている静電潜像がトナー像に顕像化される。
このトナー担持体表面は粗面であり、トナー担持体の回転によってトナーを搬送し、図示していない磁性ブレードとトナー担持体141との隙間を通過させることにより、トナー担持体141の表面にトナー薄層を形成する。トナー担持体141のスリーブ表面は、十点平均粗さRz=2.0μm以上〜6.0μm未満としている。
この十点平均粗さRzが2.0μm未満になると、トナー搬送力の低下によって画像濃度が満足できるものにならず、また、6.0μmを超えると、画質が悪くなると共にスリーブ表面の突起部から感光体ドラムへのリークが発生し、画像黒点が生じて画像品質を損なう。これら十点平均粗さRzは、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器、サーフコーダSE−30Dを用いて測定することができる。
この現像スリーブに用いる材質としては、例えば、アルミ、SUS等を用いることができる。高耐久性を考慮する場合、用いるスリーブ材質としてはSUSを使用することが好ましく、例えば、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316等が用いることができる。また、磁性が弱く、かつ加工しやすいSUS305を使用することがより好ましい。
(転写ローラ)
潜像担持体としてのアモルファスシリコン感光体11の表面に潜像を保持させるためには、従来同様、スコロトロン帯電器等を用いた帯電器12で感光体ドラム11の表面を一様に帯電させた後、半導体レーザー、発光ダイオード等の露光器13によって露光し、露光部分の電荷を除去する。また、アモルファスシリコン感光体11の表面に形成されたトナー像を被印刷物の表面に転写させるためには、例えばコロナ帯電器、鋸歯状電極、転写ロール等が用いられ、特に転写ローラ15が好ましい。
転写ローラ15は、アモルファスシリコン感光体の表面に接触させた状態で、感光体の表面に対して3〜5%の線速差をつけて回転させるのが好ましく、線速差が3%未満ではトナー像の転写性が低下して文字の中抜け等を生じるおそれがあり、5%を超える場合は感光体表面に対するスリップ量が大きくなって、転写像のずれ、いわゆるジッタが大きくなるおそれがある。転写ローラ15としては、例えば発泡EPDM等の軟質の発泡体からなるローラが好ましく、発泡体のローラを使用した場合には、紙詰まり等が発生した際に転写ロールに付着したトナーが発泡体の気泡中に入り込むことにより、運転再開時における被印刷物の裏汚れ等を防止することができる。したがって、転写ロールのクリーニングが不要になり、イニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。また、軟質の発泡体からなる転写ロールの硬さは、アスカーC硬さで表して30〜40°であるのが好ましく、この範囲より軟らかい場合は転写不良が発生するおそれがあり、逆にこの範囲より硬い場合は感光体との間のニップが小さくなって、被印刷物の搬送力が低下するおそれがある。
(クリーニング装置)
アモルファスシリコン感光体で構成された感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が、紙などの被印刷物に転写された後の感光体表面にはトナーが残る。この残留トナーをクリーニング除去するためのクリーニング手段としては、アモルファスシリコン感光体の表面に圧接させた弾性ブレードを用いるのが好ましい。また、弾性ブレードとしては、ゴムや軟質の樹脂等からなる、従来公知の種々の弾性ブレードを採用することができる。具体的には、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ウレタン樹脂等からなる弾性ブレードが挙げられる。弾性ブレードは、磁性トナーを良好にクリーニング除去すると共に、アモルファスシリコン感光体の表面に圧接痕等を生じないことを考慮すると、10〜50g/cmの線圧で圧接させるのが好ましい。
本発明になる画像形成装置の動作概略を簡単に説明すると、潜像担持体としての前記アモルファスシリコン感光体ドラム11と、固定磁石を内蔵して回転し、その表面に磁性トナーの薄層が形成されるトナー担持体(現像スリーブ141)とを、薄層とアモルファスシリコン感光体とが接触しないように間隔を保持して対峙させ、帯電器12によって感光体ドラム11の感光層19を一様に帯電した後、露光器13で原稿の反射光或いはコンピュータなどからの電気信号により原稿に対応するドット光を感光体ドラム表面に照射し、光照射部分の電位を光減衰させて静電潜像を形成する。
この静電潜像は、前記したようにトナー担持体141表面に担持されたトナー薄層が、このトナー担持体141と感光体との間に印加される図示していない交流あるいは直流のバイアス電源からの電圧により、磁性1成分ジャンピング現像方式で感光体11に飛翔することで現像され、感光体ドラム11の表面にトナー像が形成される。そしてこのトナー像は、転写材に転写ローラ15によって転写され、図示されていない定着装置に搬送されて熱と圧力により、転写材の表面に定着される。一方、トナー像が転写材上に転写された後、感光体ドラム11の表面に残存するトナーはクリーニング装置を構成するクリーニングブレード16により掻き取られて回収され、除電装置である除電ランプ17による光照射によって表面電荷が除去されて、次の画像形成プロセスが行われる。
(トナー)
本発明のトナーは、結着樹脂中に、着色剤などの種々のトナー配合剤を分散させて得られたトナーに磁性紛を外添することにより得られる。本発明におけるトナーに使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
より具体的には、ポリスチレン系樹脂として、スチレンの単独重合体でもスチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。共重合モノマーとしては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどの他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデンなどのN−ビニル化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合させることができる。
また、ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものであれば使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。まず、2価または3価以上のアルコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が例示される。
また、2価または3価以上のカルボン酸成分としては、2価または3価カルボン酸、この酸無水物またはこの低級アルキルエステルが用いられ、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキルまたはアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が例示される。また、ポリエステル系樹脂の軟化点は、110〜150℃であることが好ましく、より好ましくは120〜140℃である。
また、結着樹脂は、熱硬化性樹脂であっても良い。このように一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性や形態保持性、あるいは耐久性をより向上させることができる。よって、トナーの結着樹脂として熱可塑性樹脂を100質量部使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、あるいは、熱硬化性樹脂を一部使用することも好ましい。したがって、熱硬化性樹脂として、エポキシ系樹脂やシアネート系樹脂等が使用することができる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等の1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
本発明の磁性トナーには、例えば着色剤、電荷制御剤、ワックス等の従来公知の種々の添加剤を含有させることもできる。このうち着色剤としては、色調を調整するためにカーボンブラック等の顔料や、アシッドバイオレット等の染料が挙げられる。着色剤の含有割合は、結着樹脂100重量部に対して1〜10重量部程度であるのが好ましい。
電荷制御剤は、帯電レベルや帯電立ち上がり特性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)を著しく向上させ、耐久性や安定性に優れた特性を得るために配合されるものである。即ち、トナーを正帯電させて現像に供する場合には正帯電性の電荷制御剤を添加し、負帯電させて現像に供する場合には負帯電性の電荷制御剤を添加することができる。
このような電荷制御剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、正帯電性の電荷制御剤の具体例として、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンなどのアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダ−クグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEWおよびアジンディーブラック3RLなどのアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体などのニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZなどのニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を例示することができ、これらは、1種単独でも2種以上を併用して使用することもできる。特に、ニグロシン化合物は、より迅速な立ち上がり性が得られる観点から、正帯電性トナーとしての使用には最適である。
また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩或いはカルボキシル基を官能基として有する樹脂またはオリゴマ−なども正帯電性電荷制御剤として使用することができる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
特に、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂は、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる観点から最適である。この場合において、上記スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。誘導されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジ(低級アルキル)アミノエチル(メタ)アクリレート;ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが好適である。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性を示す電荷制御剤としては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としてはアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等があり、特にアセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体または塩が好ましく、特にサリチル酸系金属錯体またはサリチル酸系金属塩が好ましい。
上述した正帯電性或いは負帯電性の電荷制御剤は、一般に1.5〜15質量部、好ましくは2.0〜8.0質量部、最も好ましくは3.0〜7.0質量部の量でトナー中に含まれているのがよい(トナーの全体量を100質量部とする)。電荷制御剤の添加量が上記範囲よりも少量であると、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となる傾向があり、該トナーを用いて静電潜像の現像を行って画像形成を行ったとき、画像濃度が低くなったり画像濃度の耐久性が低下する傾向がある。また、電荷制御剤の分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなる等の傾向がある。一方、電荷制御剤が上記範囲よりも多量に使用されると、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる傾向がある。
定着性やオフセット性を向上させるために使用されるワックス類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロン(登録商標)系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等を使用することが好ましい。また、これらワックスは2種以上を併用しても構わない。かかるワックスを添加することにより、オフセット性や像スミアリングをより効率的に防止することができる。
上述したワックス類は、特に制限されるものではないが、一般に、トナー中に(トナー全体量を100質量部とする)、1〜5質量部の量で配合されていることが好ましい。ワックス類の添加量が1質量部未満では、オフセット性や像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、5質量部を超えると、トナー同士が融着して保存安定性が低下する傾向がある。
本発明のトナーは結着樹脂中には磁性粉を配合し、磁性1成分現像剤とするが、このようなトナーに内添する磁性粉としては、それ自体公知のもの、例えば、フェライト、マグネタイトを初めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、もしくは合金またはこれらの元素を含む化合物、あるいは、強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、または二酸化クロム等を挙げることができる。
これらの磁性粉は、平均粒子径が0.1〜1μm、特に0.1〜0.5μmの範囲内の微粉末の形で、上述した結着樹脂中に均一に分散される。また、磁性粉は、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施して使用することもできる。また磁性粉は、トナー中に35〜60質量部、特に40〜60質量部の量で含有されていることが好ましい(トナー全体量を100質量部とする)。上記範囲よりも多量に磁性粉を用いると、画像濃度の耐久性が悪くなり、また、定着性が極度に低下する傾向があり、上記範囲よりも少量では、画像濃度耐久性におけるカブリが悪くなってしまう。
本発明のトナーは、前述した結着樹脂と電荷制御剤など各種のトナー配合剤とを混合し、押出機等の混練機を用いて溶融混練した後、これを冷却し、粉砕及び分級することにより得られる。また得られるトナー粒子は平均粒径5.0〜10.0μmであることが好ましい。これより大きいと流動性の低下やカブリの原因となってしまう。またこれより大きい場合には画質が低下してしまう。
このようにして得られたトナー粒子の表面に本発明では、外添剤微粒子を外添して1成分現像剤とする。この時の外添剤としては磁性粉を用い、該磁性粉の形状は、図1に示すように8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体を基本とし、頂点および稜線が曲面状である磁性紛であり、更にこの磁性粉の遊離率が10〜25%であることが好ましい。ここでの遊離率は、後記するパーティクルアナライザーでの分析結果より求められるものであり、トナー母粒子由来の炭素原子に対する遊離した磁性粉由来の鉄原子の割合である。
この図1(a)〜(c)に示した磁性紛は、一点鎖線1aで示すように8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体2を基本とし、その頂点および稜線が曲面状とされた磁性粉1であり、図2に示す、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した写真(投影像)に見られるように、八面体を基本とし、その頂点と稜線が曲面状であり、電荷の放出点となる尖った頂点や稜線が存在しないことが特徴である。また、頂点と稜線が曲面状であるといっても、その曲率半径が大きすぎて隣り合う頂点や稜線の曲面が繋がってしまい、投影像の外周部に直線とみなせる部分を有しない球形に近いものではなく、図2に見るように、投影像の外周には直線とみなせる部分が残っている八面体としての特徴を残していることも特徴である。
このような磁性粉をトナーに外添処理することにより、a−Si感光体11における絶縁破壊を防止する効果があるが、その磁性粉のトナー母粒子からの遊離が多い場合、トナー担持体141に付着して核となり、薄層形成不良を引き起こして致命的な画像不良となってしまうことがあるため、磁性粉の遊離を抑える必要がある。
しかし一方で、磁性粉の遊離を極端に抑えてしまうとトナーが過帯電となり、a−Si感光体11の絶縁破壊を防止する目的で磁性粉を外添しているにもかかわらず、絶縁破壊が発生して磁性粉外添の効果が得られなくなる。
したがって、磁性粉はトナー母粒子に対して薄層形成不良などの不具合が発生しない範囲において遊離していることが必要であり、遊離した磁性粉の効果によりトナー過帯電を抑え、a−Si感光体11の絶縁破壊を効果的に防止することが必要であり、この遊離範囲が前記した10〜25%である。
なお、ここに示した遊離率を測定する方法は、電子写真学会年次大会(通算95回)、Japan Hardcopy‘97論文集、「新しい外添評価方法パーティクルアナライザーによるトナー分析」、に開示されている方法で行うことができる。このトナー分析法は、トナー粒子をプラズマ中に導入することでトナー粒子を励起させ、この励起に伴う発光スペクトルを検出することにより分析を行うものであり、この分析法では、複数元素の励起に伴う発光スペクトルを同時検出することが可能であり、さらに発光スペクトル周期性についても測定することができる。
より具体的には、トナーの樹脂母粒子に前記したように磁性紛を内添させ、さらに前記した頂点および稜線が曲面状である八面体形状の磁性紛を外添させたトナー粒子がプラズマに導入されると、トナー母粒子と磁性粉とが同時にプラズマ中に導入されることで、トナー母粒子と磁性粉とは同時に発光することになる。そのため、トナー母粒子と磁性粉とが同時に発光する場合はトナー母粒子と磁性粉とが同期している状態にあるとされ、磁性粉がトナー母粒子に付着して遊離していない状態を表すことになる。
一方、磁性粉が付着していないトナー母粒子や、トナー母粒子から遊離した磁性粉(この遊離磁性紛は、外添した磁性紛だけでなく、内添して脱離した磁性紛も含む)がプラズマ中に導入された場合、上述の場合と同様にトナー母粒子および磁性粉はいずれも発光するが、このとき、トナー母粒子と磁性粉とが異なる時間にプラズマに導入されるから、トナー母粒子と磁性粉とは異なる時間に発光することになる。例えば、トナー母粒子が磁性粉より先にプラズマに導入されると先にトナー母粒子が発光し、その後、遅れて磁性粉が発光することになる。
このようにトナー母粒子と磁性粉とが互いに異なる時間に発光する状態では、トナー母粒子と磁性粉とが同期していない、つまり、非同期である状態にあるとされ、磁性粉がトナー母粒子に対して付着しておらず、遊離した状態であることを表すことになる。
更に具体的測定方法としては、DP−1000(堀場製作所株式会社製パーティクルアナライザー)を用い、測定条件として一回の測定における炭素原子の検出数を2500〜3000個とし、分析波長は炭素原子(C原子)247.86nm、鉄原子(Fe原子)239.56nmとして得られた炭素原子を基準とした鉄原子の発光の同期性から、AをFe原子の遊離率(%)、NをC原子と同時に発光しなかったFe原子のカウント数、MをC原子と同時に発光したFe原子のカウント数として下記(1)式に当てはめて磁性粉の遊離率を求めた。
A(%)=N×100/(N+M) …………… (1)
こうして求めた遊離率が、前記したように10〜25%となるようにすることにより、前記したような効果が得られることになる。
また、上記磁性粉は、平均粒子径が0.01〜0.50μmであることが望ましい。平均粒子径が0.01μm未満である磁性粉は現像ロールへの付着が発生しやすくなり、現像ロール上のトナー薄層形成不良を引き起こしてしまうという問題が生じる場合がある。一方、平均粒子径が0.50μmを超える磁性粉は感光体ドラムを傷つけやすい傾向にあり、高耐久なシステムにおいては致命的な欠陥を引き起こしてしまう可能性がでてくる。
なお、効果のバランスを考慮すると、磁性粉の平均粒子径は、上記の範囲内でも特に、0.05〜0.35μmであるのが好ましく、0.15〜0.30μmであるのがさらに好ましい。
磁性粉の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡によって撮影した写真(倍率1万倍)を4倍に拡大し、写真に写された300個の磁性粉について測定したマーチン径(円相当径)の平均値である。
磁性粉としては、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属やその合金、またはこれらの元素を含む化合物、あるいは、強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、もしくは二酸化クロム等からなるものを挙げることができ、中でもフェライト、マグネタイトからなる磁性粉が好ましい。特に、磁性トナーに良好な磁気特性を付与することを考慮すると、磁性粉としては、Feに対して0.1〜10原子%の、Mn、Zn、Ni、Cu、Al、Ti、およびSiから選ばれる少なくとも1種の元素を含むマグネタイトによって形成した磁性粉を用いるのが好ましい。
上記マグネタイトからなり、八面体の各頂点および稜線が曲面状であると共に、その投影像の外周部に直線とみなせる部分を有し、かつ平均粒子径が前記の範囲内に規定される磁性粉は、例えば、下記の方法によって製造することができる。
すなわち、1.5mol/LのFe2+を含む硫酸第一鉄塩水溶液26.7Lを、あらかじめ反応容器中に準備した3.4Nの水酸化ナトリウム水溶液25.9L(Fe2+に対し1.10当量に相当する)に加え、90℃に加熱して、pHを10.5に維持しながら水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩懸濁液を生成する。
次に、上記懸濁液の液温を90℃に維持しながら、毎分100Lの空気を80分間に亘って吹き込んで、第一鉄塩の酸化反応率が60%になるまで酸化反応させる。そして上懸濁液に、そのpHが6.5になるように硫酸水溶液を添加した後、液温を90℃に維持しながら毎分100Lの空気を50分間に亘って吹き込み、懸濁液中にマグネタイト粒子を生成させる。
そして、上記マグネタイト粒子を含む懸濁液に、そのpHが10.5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、液温を90℃に維持しながら毎分100Lの空気を20分間にわたって吹き込んだ後、生成したマグネタイト粒子を常法により水洗し、濾別し、乾燥したのち、マグネタイト粒子の凝集物を粉砕する。
そうすると、粒子形状が八面体を基本とし、その頂点および稜線が曲面状であるマグネタイト粒子からなる磁性粉が合成される。なお上記の合成を行なう際の酸化反応のpHを調整することで、磁性粉の形状を制御することが可能である。
また、上記の合成反応を行う際、水酸化アルカリ水溶液、もしくは水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液に、水可溶性ケイ酸塩等の水溶性の各種金属化合物を、各々の金属に換算してFeに対し、0.1〜10原子%の割合で加えると共に、第1段階の反応において酸素含有ガスの通気を開始する際の液のpHを8.0〜9.5に調整すると、合成される磁性粉1は、上で述べたFeに対し、上記所定の割合でMn、Zn、Ni、Cu、Al、Ti、およびSiから選ばれる少なくとも1種の元素を含むマグネタイトからなるものとなる。
外添する磁性粉のトナー母粒子100質量部に対する割合は、0.1〜5.0質量部であるのが好ましい。磁性粉の割合がこの範囲未満では、磁性粉を含有させたことによる効果が得られない。また、配合割合がこの範囲を超える場合、トナーの帯電量を大幅に低下させて画像濃度が低下するおそれがある。
本発明におけるトナーは、上記に述べた磁性粉以外にさらにトナーの流動性、保存安定性を維持する目的で、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素等でトナー粒子表面を処理することができる。
また、これら外添剤は必要によって、アミノシラン、シコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の表面処理をすることもできる。
また、この微粒子外添剤は、トナーの表面処理によって、流動性、保存安定性、クリーニング性等を向上させるために使用されるものである。また、これらシリカ微粒子、酸化チタンの外添処理は、磁性トナーと乾式で攪拌混合することにより行われるが、この攪拌混合は、微粒子がトナー中に埋め込まれないようにヘンシェルミキサーやナウターミキサーなどを用いて行うのがよい。ただし攪拌混合は、先に述べた磁性粉の遊離率を達成することができるように行う必要がある。
(実施例1)
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、以下の説明に本発明の範囲を限定されるものではない。
まず、本発明に用いる結着樹脂を次のようにして製造した。温度計、撹拌機、窒素導入管のついた反応器中にキシレン300部を入れ、窒素気流下で、スチレン845部、アクリル酸n−ブチル155部の混合モノマーとジ−tert−ブチルペルオキサイド(重合開始剤)8.5部とキシレン125部の混合溶液を用い、170℃で3時間かけて滴下した。滴下後、170℃で1時間反応させ、重合を完了した。その後、脱溶剤して結着樹脂を得た。
このようにして製造したスチレン−アクリル共重合体結着樹脂(低分子量ピーク分子量7000、高分子量ピーク分子量140,000、ガラス転移点Tgが55℃であるもの)49質量部に、磁性粉(球状、平均粒子径0.20μm)45質量部、離型剤としてのワックス(サゾールワックスH1、サゾール社製)3質量部、正電荷制御剤として4級アンモニウム塩(ボントロンP−51、オリエント化学社製)3質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、2軸押出機にて溶融混練したのち冷却してハンマーミルにて粗粉砕した。機械式粉砕機にてさらに微粉砕したものを気流式分級機により分級し、体積平均粒径8.0μmの磁性トナーを得た。
上記で得られたトナー粉体(磁性トナー)母粒子100質量部に対し、酸化チタン(ST−100、チタン工業社製)を2.0質量部、シリカ(RA−200H、日本アエロジル社製)を1.0質量部、外添用とした前記磁性粉を1.0質量部、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製、FM10C/I)を用いて回転数3000rpm、撹拌時間4minの条件により外添し、磁性トナー粉末の表面に付着させて磁性1成分正帯電現像剤を調製した(これを実施例1のトナーとする)。
この現像剤において、トナー母粒子に対する磁性粉の遊離率は15.6%であった。なお用いた外添用の磁性粉は、粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体形状で、かつ、その頂点および稜線が曲面状の平均粒子径0.2μmの磁性粉である。
(実施例2〜4)
次いで図6の表1の外添処方一覧に示したように、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、これも実施例1に用いた平均粒子径0.20μmの外添用磁性紛を前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3500rpmで撹拌時間5min、回転数2000rpmで撹拌時間4minの条件でそれぞれ外添し、遊離率10.7(%)、24.1(%)の実施例2、実施例3の現像剤を得た。また、平均粒子径0.22μmの外添用磁性紛を前記ヘンシェルミキサーにより、回転数2000rpmで撹拌時間5minの条件で外添し、遊離率21.0(%)の実施例4の現像剤を得た。
(比較例1)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、実施例1とは異なり、粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体状で、かつその頂点および稜線が曲面状でない、平均粒子径が0.22μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3000rpmで撹拌時間4minの条件で外添し、遊離率13.3(%)の比較例1の現像剤を得た。
(比較例2)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体状で、かつその頂点および稜線が特許文献3の図6(b)に見られるように、八面体を構成する各面よりも小さな平面によって面取りされた、平均粒子径が0.20μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3000rpmで撹拌時間4minの条件で外添し、遊離率14.2(%)の比較例2の現像剤を得た。
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、粒子形状が立方体状で、平均粒子径が0.22μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3000rpmで撹拌時間4minの条件で外添し、遊離率12.1(%)の比較例3の現像剤を得た。
(比較例4)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、粒子形状が立方体状で、かつその頂点および稜線が特許文献3の図6(f)に見るように、立方体を構成する各面よりも小さな平面によって面取りされた平均粒子径が0.20μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3000rpmで撹拌時間4minの条件で外添し、遊離率14.9(%)の比較例4の現像剤を得た。
(比較例5)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、粒子形状が球状で、かつその平均粒子径が0.22μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3000rpmで撹拌時間4minの条件で外添し、遊離率18.0(%)の比較例5の現像剤を得た。
(比較例6)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、実施例1の磁性紛と同じ粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体形状で、かつ、その頂点および稜線が曲面状で、かつその平均粒子径が0.22μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数3700rpmで撹拌時間6minの条件で外添し、遊離率8.8(%)の比較例6の現像剤を得た。
(比較例7)
また、実施例1のトナーと同様にしてトナー粉体を製造した後、実施例1の磁性紛と同じ粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体形状で、かつ、その頂点および稜線が曲面状であり、さらにその平均粒子径が0.20μmである磁性粉を同量用い、前記ヘンシェルミキサーにより、回転数1800rpmで撹拌時間3minの条件で外添し、遊離率26.5(%)の比較例7の現像剤を得た。
これらの現像剤を用い、a−Si感光体搭載の京セラミタ製ページプリンタFS−3820Nを評価用とし、常温常湿環境(20℃、65%RH)にて10万枚連続印字(印字率5%)を行い、感光体絶縁破壊の状態および表面状態、スリーブ上のトナー薄層状態、画像特性、現像剤帯電特性を評価した。また、高温高湿環境(33℃、85%)においても同様に10万枚連続印字(印字率5%)を行い、画像特性を評価した。
なお、使用した磁性粉の形状と、得られた現像剤の磁性粉の遊離率を図6の表1に示し、評価結果を図7の表2、および図8の表3に示した。また、図6の表1に示す磁性粉の粒子形状の欄における符号は下記の通りであり、各特性の評価方法は以下に記載した。
八−丸:八面体状で、かつ頂点および稜線が曲面状とされたもの。
八−角:八面体状で、かつ頂点および稜線が曲面状とされていないもの。通常の八面体。
八−面:八面体状で、かつ頂点および稜線が小さな平面で面取りされたもの。
立−角:通常の立方体。
立−面:立方体状で、かつ頂点および稜線が小さな平面で面取りされたもの。
球 :球状のもの。
(感光体絶縁破壊の状態)
上記ページプリンタを用い、10万枚印字した時の感光体上の絶縁破壊により発生する黒点数をドットアナライザー(王子計測機器株式会社製、DA−5000S)を用いて測定して数え、印字枚数に対する感光体膜の絶縁破壊回数、つまり印刷紙上の黒点数を測定した。測定した黒点数の測定範囲はA4横方向、5mm×210mmの領域とした。
(感光体表面)
上記プリンタを使用して、10万枚印字時の感光体上における傷発生の有無を目視にて観察した。なお感光体汚染の評価以下の判断基準を用いた。
○:表面に傷は見られない
△:極微小の傷が見られる
×:明らかに傷が見られる
(トナー薄層状態)
トナー担持体141上のトナー薄層状態については、10万枚印字後にスリーブ上の状態を目視にて確認を行い、評価については以下の判断基準を用いた。
○:薄層が均一に形成され、スリーブへの付着やムラがない
△:層厚が厚い部分がある、場所によっては若干不均一(部分的な薄層形成不良)
×:ムラやスリーブへの付着が生じており、薄層は不均一状態(薄層形成不良)
(画像特性)
常温常湿環境(20℃、65%RH)にて、初期時に上記ページプリンタにより画像評価パターンを印字して初期画像とし、その後、10万枚連続通紙を行って再度画像評価パターンを印字して耐久後画像として、それぞれソリッド画像をマクベス反射濃度計(RD914)を用いて測定、画像特性評価を行った。画像濃度は1.30以上をOKとした。
(帯電特性)
上記ページプリンタのトナー担持体141上における磁性トナーの帯電量を、TRek社製吸引式帯電量測定装置(Q/M Meter210HS)を用いて測定し、その際の重量変化から、現像剤1gあたりの帯電量μC/gを求めた。なお、上記ページプリンタを用いて上記現像剤で画像形成を行い、初期画像特性評価の為の画像を出力した後に測定した帯電量を初期帯電量、10万枚連続通紙(印字率5%)を行った後のトナー帯電量を耐久後の帯電量とした。
図7の表2、図8の表3に示したように、実施例1〜4では、粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体を基本とし、かつ頂点および稜線が曲面状とされた形状の磁性粉を外添すると共に、その遊離率が10.7〜24.1(%)であるため、画像特性および感光体絶縁破壊、トナー薄層状態等のいずれも全く問題がなかった。これは高温高湿環境においても同様で、濃度低下は見られなかった。
一方、八面体状で頂点および稜線を曲面状としていない磁性粉を用いた比較例1、八面体状で頂点および稜線を小さな平面で面取りした磁性粉を用いた比較例2、立方体状の磁性粉を用いた比較例3、立方体状で頂点および稜線を小さな平面で面取りした磁性粉を用いた比較例4を外添した磁性トナーは、磁性紛がいずれも尖った頂点や稜線の存在するような形状であるため、それら頂点や稜線からリークして帯電量が低くなり、画像濃度が低くなった。特に高温高湿環境においては顕著であり、それに加えて耐刷後には感光体表面に傷が見られた。
また、球状の磁性紛を用いた比較例5では、球状の磁性粉を外添しているにもかかわらず感光体における絶縁破壊が発生し、加えて、薄層形成不良も発生した。
さらに、粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体を基本とし、かつ頂点および稜線が曲面状とされた形状の磁性粉を外添したにもかかわらず、遊離率が8.8%と低い比較例6、26.5%と高い比較例7では、比較例6では遊離率が小さいために感光体絶縁破壊の発生が見られ、比較例7では遊離率が大きすぎる為、トナー担持体への付着が発生して薄層形成不良となった。それに加え、帯電量低下に伴う画像濃度低下があり、特に高温高湿環境ではその傾向が顕著であった。
以上の結果から、外添する磁性紛としては粒子形状が8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体を基本とし、その八面体の各頂点および稜線が曲面状であって、その投影像の外周部に直線と見なせる部分を有する磁性紛が好ましく、また、該磁性粉の遊離率が10〜25%であることが好ましいことがわかる。