JP2007100893A - 動力伝達装置及びこれに用いる当接部材の押付力設定方法 - Google Patents

動力伝達装置及びこれに用いる当接部材の押付力設定方法 Download PDF

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元昭 吉田
Keiichi Ichinose
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Abstract

【課題】ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することのできる動力伝達装置及びこれに用いる当接部材の押付力設定方法を提供する。
【解決手段】各リベット41と各被挟持部32cとの距離L1によって当接部材40による押付力が設定されることから、ハブ20と当接部材40との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができ、例えば車両の種類によってエンジンで発生する回転変動の大きさが異なる場合でも、各被挟持部32cを挟持する力を回転変動による加振力よりも常に大きく設定することができる。即ち、回転変動による加振力により各被挟持部32cがハブ20及び当接部材40に対してプーリ10の回転方向に振動することがなく、回転力を遮断する遮断トルクを安定させる上で極めて有利である。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば車両用空気調和装置に用いられる圧縮機に車両の駆動源からの動力を伝達するための動力伝達装置及びこれに用いる当接部材の押付力設定方法に関するものである。
従来、この種の動力伝達装置としては、図17及び図18に示すように、エンジンからの動力によって回転するプーリ101と、従動側機器100の一部に固定され、プーリ101を回転自在に支持するベアリング102と、従動側機器100の回転軸100aに固定されるとともに、軸方向一端面がプーリ101の軸方向一端面と軸方向に対向するハブ103と、プーリ101の軸方向一端面に緩衝部材106を介して取付けられた伝達部材104と、伝達部材104の一部に設けられた被挟持部104aにプーリ101側から軸方向に当接する当接部材105と、ハブ103と当接部材105とを軸方向に締結する締結部材106とを備え、ハブ103と当接部材105との間に被挟持部104aが挟持されるとともに、締結部材106と被挟持部104aとの間の当接部材105が軸方向に弾性変形して被挟持部104aが当接部材105によってハブ103の軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材104を介してプーリ101からハブ103に回転力が伝達され、プーリ101とハブ103との間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、被挟持部104aが当接部材105の押付力に抗してハブ103と当接部材105との間から離脱することにより、プーリ101からハブ103に伝達される回転力を遮断するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第3421619号公報
ところで、前記動力伝達装置では、被挟持部104aに当接部材105側に球面状に突出する突出部104bが設けられるとともに、当接部材105に突出部104bに対応した軸方向貫通孔105aが設けられ、被挟持部104aがハブ103と当接部材105との間に挟持されると、突出部104bが軸方向貫通孔105aにプーリ101の回転方向に係止するようになっている(図18参照)。また、プーリ101とハブ103との間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、突出部104bの周縁部の傾斜面によって当接部材105が軸方向に弾性変形し、突出部104bと軸方向貫通孔105aとの係止が解除されるようになっている。
ここで、エンジンからプーリ101に入力される動力にはエンジンで発生する回転変動が含まれているので、被挟持部104aを挟持する力が回転変動による加振力よりも小さい場合は、被挟持部104aがハブ103及び当接部材105に対してプーリ101の回転方向に振動する。被挟持部104aがハブ103及び当接部材105に対して振動すると、突出部104bの周縁部が軸方向貫通孔105aとの接触によって変形し、突出部104bの周縁部の形状が滑らかではなくなるので(図19参照)、所定の大きさ以上のトルクで突出部104bと軸方向貫通孔105aとの係止が解除されず、プーリ101からハブ103に伝達される回転力を所定のトルクで遮断することができないという問題点があった。
また、ハブ103及び当接部材105が防錆のために塗装されている場合は、被挟持部104aがハブ103及び当接部材105に対して振動すると、塗装の軟化及び硬化が繰り返されてハブ103及び当接部材105と被挟持部104aとが塗装によって固着し、プーリ101からハブ103に伝達される回転力を所定のトルクで遮断することができないという問題点があった。
一方、被挟持部104aを挟持する力を大きくすると、プーリ101からハブ103に伝達される回転力を遮断するのに必要なトルクが大きくなり、また、車両の種類によってエンジンで発生する回転変動の大きさや回転力を遮断する遮断トルクの大きさが異なるので、被挟持部104aを挟持する力を無用に大きくすることができないという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することのできる動力伝達装置及びこれに用いる当接部材の押付力設定方法を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の外周面側に互いにプーリの周方向に等角度間隔をおいて設けられた複数の被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、互いにプーリの周方向に等角度間隔をおいて設けられ、ハブと当接部材とを軸方向に締結する被挟持部と同数の締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に各被挟持部が挟持されるとともに、各締結部材と各被挟持部との間の当接部材が各締結部材の締結により軸方向に弾性変形して各被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、各被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置において、前記各締結部材を、各被挟持部の周方向中間位置よりも周方向の何れか一方にずれた位置に設けている。
これにより、各締結部材の位置が各被挟持部の周方向中間位置よりも周方向の何れか一方にずれることにより各被挟持部と各締結部材との距離が変わるとともに、各締結部材と各被挟持部との距離によって当接部材による押付力が設定され、例えば各締結部材と各被挟持部との距離を小さくすると、各締結部材と各被挟持部との間の当接部材を軸方向に弾性変形させるために大きな力が必要になり、当接部材による押付力が大きくなることから、ハブと当接部材との間に伝達部材の各被挟持部を挟持する力を任意に設定することができる。
また、本発明は、従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置において、前記当接部材の一部をハブ側に押圧することにより締結部材と被挟持部との間の当接部材を軸方向に弾性変形させる押圧部材を備えている。
これにより、押圧部材によって当接部材を押圧すると押圧部材と被挟持部との間の当接部材が軸方向に弾性変形し、例えば押圧部材と被挟持部との距離を小さくすると押圧部材と被挟持部との間の当接部材を軸方向に弾性変形させるために大きな力が必要になり、当接部材による押付力が大きくなることから、ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することができる。
また、本発明は、従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力が伝達され、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するように構成した動力伝達装置において、前記当接部材に、当接部材の他の部分よりもハブ側に突出し、被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する突出部を設けている。
これにより、突出部がハブ側に突出する分だけ当接部材の軸方向の変形量が大きくなり、当接部材による押付力が大きくなることから、突出部の突出量を調整することにより、ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することができる。
また、本発明は、従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置に用いる当接部材の押付力設定方法において、前記当接部材による押付力が所定の大きさになるように被挟持部と締結部材との距離を設定するようにしている。
これにより、締結部材と被挟持部との距離によって当接部材による押付力の大きさが設定され、例えば締結部材と被挟持部との距離を小さくすると、締結部材と被挟持部との間の当接部材を軸方向に弾性変形させるために大きな力が必要になり、当接部材による押付力が大きくなることから、ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することができる。
本発明によれば、ハブと当接部材との間に伝達部材の被挟持部を挟持する力を任意に設定することができるので、例えば車両の種類によってエンジンで発生する回転変動の大きさが異なる場合でも、被挟持部を挟持する力を回転変動による加振力よりも常に大きく設定することができ、回転力を遮断する遮断トルクを安定させる上で極めて有利である。
図1乃至図10は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は動力伝達装置の側面断面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図2におけるB−B線断面図、図4及び図5は動力伝達装置の動作説明図、図6は伝達部材の正面図、図7は当接部材の正面図、図8はハブの正面図、図9はリベットと被挟持部との距離によって押付力が変化することを表すグラフ、図10は被挟持部に対するリベットの角度によって押付力が変化することを表すグラフである。
本実施形態の動力伝達装置は、図示しないエンジンからの動力が伝達されるプーリ10と、プーリ10を回転自在に支持するためのベアリング11と、プーリ10の軸方向に対向して配置されたハブ20と、プーリ10とハブ20との軸方向の隙間に配置された伝達部材30と、伝達部材30の一部に設けられた複数の被挟持部32cをハブ20に押付けるための当接部材40と、プーリ10に設けられ、伝達部材30をプーリ10に弾性支持する緩衝機構50とを備えている。
プーリ10は外周面に図示しないVベルトを巻掛け可能であり、ベアリング11を介して圧縮機1に回転自在に支持されている。プーリ10の圧縮機1側の端面には周方向に延びる環状の溝部10aが設けられている。
ベアリング11は圧縮機1のハウジングの外周面に固定され、プーリ10を回転自在に支持している。
ハブ20は、圧縮機1のシャフト2と連結するための円筒状の連結部21と、連結部21と一体に形成され、連結部21におけるプーリ10と反対側の軸方向端部側から径方向外側に延びる円板状のフランジ部22とを有する。
連結部21の内周面はシャフト2の先端部に設けられたスプライン2aに回転方向に係合し、連結部21はシャフト2の先端に螺合するナット2bによってシャフト2に固定されている。
フランジ部22の軸方向一端面はプーリ10の軸方向一端面と軸方向に対向し、フランジ部22とプーリ10との間に所定の隙間が設けられている。フランジ部22には互いに周方向に等角度間隔をおいて複数のリベット孔22aが設けられている。また、フランジ部22の外周面には互いに周方向に等角度間隔をおいて複数の径方向延設部22bが設けられ、各径方向延設部22bはフランジ部22の外周面から径方向外側に延びている。各リベット孔22aと各径方向延設部22bとは同数である。
伝達部材30はバネ用鋼板から成り、環状である本体部31と、本体部31の外周面側から本体部31の周方向に延びる複数の延設部32とを有する。各延設部32はハブ20の各リベット孔22aと同数である。各延設部32の基端側は本体部31の外周面と一体である。また、各延設部32の延設方向中央部にはプーリ10側からハブ20のフランジ部22側に向かって傾斜する傾斜部32aが設けられている。さらに、各延設部32の基端側には取付孔32bが設けられている。また、各延設部32の先端側によってそれぞれ被挟持部32cが形成され、各被挟持部32cにはプーリ側に突出する係合突起32dが設けられている。各被挟持部32cは互いに周方向に等角度間隔をおいて設けられている。
本体部31の内周面側には互いに周方向に等角度間隔をおいて複数の開口部31aが設けられている。各開口部31aはハブ20の各リベット孔22aと同数であり、本体部31を軸方向に貫通している。各開口部31aはハブ20の各リベット孔22aと対応する位置に設けられている。
当接部材40はバネ用鋼板から成り、円板形状である。当接部材40は互いに周方向に等角度間隔をおいて複数のリベット孔40aを有する。各リベット孔40aはハブ20の各リベット孔22aと同数であり、各リベット孔22aと対応する位置に設けられている。また、当接部材40の外周面には互いに周方向に等角度間隔をおいて複数の径方向延設部40bが設けられ、各径方向延設部40bは当接部材40の外周面から径方向外側に延びている。各径方向延設部40bはハブ20の各リベット孔22aと同数であり、ハブ20の各径方向延設部22bと対応する位置に設けられている。各径方向延設部40bには軸方向に貫通する貫通孔40cがそれぞれ設けられている。
ハブ20及び当接部材40の各リベット孔22a,40aにはそれぞれ締結部材としてのリベット41が挿通し、当接部材40は各リベット41によってハブ20と軸方向に締結されている。この時、当接部材40の各径方向延設部40bが伝達部材30の各被挟持部32cにプーリ10側から軸方向に当接するとともに、各径方向延設部40bによって各被挟持部32cがハブ20側に押付けられ、各延設部32の先端側がハブ20側に弾性変形している。また、各被挟持部32cがフランジ部22における各径方向延設部22bの軸方向一端面に押付けられ、各被挟持部32cが当接部材40の各径方向延設部40bとハブ20の各径方向延設部22bによって挟持されている。各リベット41と各被挟持部32cとの間の当接部材40は軸方向に弾性変形し、当接部材40の弾性変形による反力によって各被挟持部32cがハブ20の各径方向延設部22bに押付けられている。
ここで、各リベット41と各被挟持部32cとの距離L1を小さく設定すると、当接部材40の弾性変形による反力が大きくなり、各被挟持部32cがハブ20に押付けられる押付力が大きくなる。また、各被挟持部32cに対する各リベット41の位置を周方向に移動させることにより、各被挟持部32cと各リベット41との距離L1を設定することができる。例えば、図2に示すように、各リベット41を各被挟持部32cの周方向の中間である位置P1に設けることにより、各被挟持部32cと各リベット41との距離L1を最大とすることができ、各リベット41を位置P1に対して周方向にずれた位置P2に設けることにより、各被挟持部32cと各リベット41との距離L1を小さく設定することができる。各リベット41の位置を周方向に移動させる場合は、ハブ20及び当接部材40の各リベット孔22a,40aを各径方向延設部22b、40bに対して周方向に移動させた位置に形成する。
また、各係合突起32dは各径方向延設部40bの貫通孔40cにプーリ10の回転方向にそれぞれ係合している。
緩衝機構50はプーリ10の溝部10a内に配置され、溝部10aに沿うように設けられたダンパー保持部材51と、ダンパー保持部材51に保持され、互いにプーリ10の周方向に間隔をおいて設けられた複数のダンパ−52とを有する。
ダンパー保持部材51はプラスチック材料から成り、プーリ10の溝部10aに沿うように設けられた環状の保持部材本体51aと、保持部材本体51aから圧縮機1側の軸方向に延びる筒状部51bとを有する。筒状部51bは内側にダンパー52を配置可能である。また、筒状部51bが設けられた部分の保持部材本体51aは軸方向に開口している。さらに、保持部材本体51が開口している部分に対応してプーリ10も開口している。また、筒状部51bは複数のリブ51cによって補強されている。さらに、ダンパー保持部材51は互いにプーリ10の周方向に間隔をおいて設けられた複数のリベット51dによってプーリ10に固定されている。
各ダンパー52は、内周面に雌ネジが設けられた円筒状の螺合部材52aと、螺合部材52aの外周面と筒状部51bの内周面との間に設けられたダンパーゴム52bとを有する。各ダンパー52の螺合部材52aには伝達部材30の取付孔32bを挿通したボルト52cがそれぞれ螺合する。即ち、伝達部材30は各ダンパー52及び保持部材51を介してプーリ10に取付けられている。
以上のように構成された動力伝達装置において、プーリ10に図示しないエンジンから動力が伝達されると、プーリ10の回転力は伝達部材30を介してハブ20に伝達される。
一方、例えば圧縮機1が焼付きを生じてシャフト2の回転が規制されることにより、プーリ10とハブ20との間に所定の大きさ以上の回転力が生ずると、各被挟持部32cが当接部材40の各径方向延設部40bとハブ20の各径方向延設部22bとの間から離脱する。詳しくは、図4及び図5に示すように、プーリ10とハブ20との間に生ずる回転力により、各被挟持部32cが当接部材40の押付力に抗して移動するとともに、当接部材40が各係合突起32dの周縁部の傾斜面によってプーリ10側に弾性変形し、各係合突起32dと各貫通孔40cとの係合が解除される。
また、当接部材40とハブ20との間から離脱した各被挟持部32cは各延設部32の復元力によりプーリ10側に移動する。一方、当接部材40の各径方向延設部40bも復元力によりハブ20のフランジ部22側に移動する。これにより、各被挟持部32cが離脱した後は伝達部材30とハブ20及び当接部材40とが干渉せず、プーリ10からハブ20に伝達される回転力を確実に遮断することができる。
ここで、エンジンからプーリ10に伝達される動力にはエンジンで発生する回転変動が含まれているので、ハブ20及び当接部材40によって挟持されている各被挟持部32cにも回転変動が入力される。従って、各被挟持部32cを挟持する力が回転変動による加振力よりも小さい場合は、各被挟持部32cがハブ20及び当接部材40に対してプーリ10の回転方向に振動するが、各被挟持部32cに対する各リベット41の周方向の位置によって各被挟持部32cと各リベット41との距離L1が設定されるとともに、各リベット41と各被挟持部32cとの距離L1によって当接部材40による押付力が設定されるので、ハブ20と当接部材40との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができる。例えば、各被挟持部32cと各リベット41との距離L1を小さくすることにより、当接部材40による押付力が大きくなり(図9参照)、各被挟持部32cに対する各リベット41の周方向の角度αを変えることにより、当接部材40による押付力が変化する(図10参照)。即ち、図9及び図10のようなグラフに基づき、当接部材40のよる押付力を各被挟持部32cと各リベット41との距離によって設定することができる。
また、以上のように構成された動力伝達装置は、当接部材40による押付力がエンジンの回転変動の大きさや遮断トルクの大きさに応じた大きさになるように各被挟持部32cと各リベット41との距離を設定し、当接部材40における前記設定距離に対応する位置を各リベット41によって締結することにより製造される。このため、当接部材40の板厚や形状を変更することなく当接部材40による押付力を設定することができ、製造コストの低減を図る上で有利である。
このように、本実施形態によれば、各リベット41と各被挟持部32cとの距離L1によって当接部材40による押付力が設定されることから、ハブ20と当接部材40との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができ、例えば車両の種類によってエンジンで発生する回転変動の大きさが異なる場合でも、各被挟持部32cを挟持する力を回転変動による加振力よりも常に大きく設定することができる。即ち、回転変動による加振力により各被挟持部32cがハブ20及び当接部材40に対してプーリ10の回転方向に振動することがなく、回転力を遮断する遮断トルクを安定させる上で極めて有利である。
また、各リベット41を各被挟持部32cの周方向の中間である位置P1に対して周方向にずれた位置P2に設けることにより、各被挟持部32cと各リベット41との距離L1を小さく設定することができるので、ハブ20と当接部材40との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができる。
さらに、各リベット41の位置によって当接部材40による押付力が設定されることから、当接部材40の押付力を設定するための専用の部材を設けることなく当接部材40の押付力を任意に設定することができ、製造コストの低減を図る上で極めて有利である。
尚、本実施形態では、各リベット41の位置を変えることにより、当接部材40による押付力を設定するようにしたものを示したが、図11に示すように、ハブ20と当接部材40とを軸方向に締結するとともに、当接部材40をハブ20側に押圧する複数の押圧部材42をリベット41の他に設け、各押圧部材42の位置によって当接部材40による押付力を設定することも可能である。
この場合、各押圧部材42は周知のリベットから構成され、各リベット41と周方向に互い違いに設けられている。各押圧部材42はハブ20及び当接部材40に設けられた図示しないリベット孔を挿通することにより、ハブ20と当接部材40とを軸方向に締結している。各押圧部材42によってハブ20と当接部材40とを締結することにより、各押圧部材42と各被挟持部32cとの間の当接部材40が軸方向に弾性変形し、当接部材40の弾性変形による反力によって各被挟持部32cがハブ20に押付けられる。即ち、例えば各押圧部材42と各被挟持部32cとの距離L2を小さく設定すると、当接部材40の弾性変形による反力が大きくなり、各被挟持部32cがハブ20に押付けられる押付力が大きくなる。
このように、各押圧部材42と各被挟持部32cとの距離L2によって当接部材40による押付力が設定されることから、ハブ20と当接部材40との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができ、例えば車両の種類によってエンジンで発生する回転変動の大きさが異なる場合でも、各被挟持部32cを挟持する力を回転変動による加振力よりも常に大きく設定することができる。即ち、回転変動による加振力により各被挟持部32cがハブ20及び当接部材40に対してプーリ10の回転方向に振動することがなく、回転力を遮断する遮断トルクを安定させる上で極めて有利である。尚、各押圧部材42によって当接部材40をハブ20のフランジ部22側に押圧する力を変えることにより、当接部材40による押付力を設定することも可能である。
また、本実施形態では、各リベット41の位置をプーリ10の周方向に変えることにより、当接部材40による押付力を設定するようにしたものを示したが、各リベット41の位置をプーリ10の径方向に変えることにより、当接部材40による押付力を設定することも可能である。
図12乃至図14は本発明の第2の実施形態を示すもので、図12は当接部材の正面図、図13は図12におけるC−C線断面図、図14は動力伝達装置の側面断面図である。尚、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
本実施形態の動力伝達装置は、第1の実施形態と同等のプーリ10、ベアリング11、ハブ20、伝達部材30、リベット41及び緩衝部材50と、伝達部材30の一部に設けられた複数の被挟持部32cをハブ20に押付けるための当接部材60とを備えている。
当接部材60はバネ用鋼板から成り、円板形状である。当接部材60は互いに周方向に等角度間隔をおいて複数のリベット孔60aを有する。各リベット孔60aはハブ20の各リベット孔22aと同数であり、各リベット孔22aと対応する位置に設けられている。また、当接部材60の外周面には互いに周方向に等角度間隔をおいて複数の径方向延設部60bが設けられ、各径方向延設部60bは当接部材60の外周面から径方向外側に延びるとともに、その先端側にそれぞれ突出部としての折返し部60cを有する。折返し部60cは径方向延設部60bが径方向内側に折返されて形成され、折返し部60cは当接部材60の他の部分よりもハブ20のフランジ部22側に突出している。各径方向延設部60bはハブ20の各リベット孔22aと同数であり、ハブ20の各径方向延設部22bと対応する位置に設けられている。各径方向延設部60bには軸方向に貫通する貫通孔60dがそれぞれ設けられている。
ハブ20及び当接部材60の各リベット孔22a,60aにはそれぞれリベット41が挿通し、当接部材60は各リベット41によってハブ20と軸方向に締結されている。この時、当接部材60の各径方向延設部60bにおける折返し部60cが伝達部材30の各被挟持部32cにプーリ10側から軸方向に当接するとともに、各折返し部60cによって各被挟持部32cがハブ20側に押付けられ、各被挟持部32cが当接部材60の各折返し部60cとハブ20の各径方向延設部22bによって挟持されている。各リベット41と各被挟持部32cとの間の当接部材60は軸方向に弾性変形し、当接部材60の弾性変形による反力によって各被挟持部32cがハブ20の各径方向延設部22bに押付けられている。
ここで、各折返し部60cの突出量L3を大きく設定すると、当接部材60の軸方向の変形量が大きくなり、各被挟持部32cがハブ20に押付けられる押付力が大きくなる。
以上のように構成された動力伝達装置において、プーリ10に図示しないエンジンからの動力が伝達されると、プーリ10の回転力は伝達部材30を介してハブ20に伝達される。
ここで、エンジンからプーリ10に伝達される動力にはエンジンで発生する回転変動が含まれているので、ハブ20及び当接部材60によって挟持されている各被挟持部32cにも回転変動が入力される。従って、各被挟持部32cを挟持する力が回転変動による加振力よりも小さい場合は、各被挟持部32cがハブ20及び当接部材60に対してプーリ10の回転方向に振動するが、各折返し部60cの突出量L3によって当接部材60による押付力が設定されるので、ハブ20と当接部材60との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができる
このように、本実施形態によれば、当接部材60において各被挟持部32cに当接する各折返し部60cが当接部材60の他の部分よりもハブ20側に突出し、各折返し部60cの突出量L3の分だけ当接部材60の軸方向の変形量が大きくなり、当接部材60による押付力が大きくなることから、各折返し部60cの突出量L3の調整により、ハブ20と当接部材60との間に伝達部材30の各被挟持部32cを挟持する力を任意に設定することができる。即ち、回転変動による加振力により各被挟持部32cがハブ20及び当接部材40に対してプーリ10の回転方向に振動することがなく、回転力を遮断する遮断トルクを安定させる上で極めて有利である。
尚、本実施形態では、当接部材60の各径方向延設部60bを径方向内側に折返した折返し部60cにより、当接部材60の他の部分よりもハブ20側に突出した部分を形成したものを示したが、図15及び図16に示すように、各径方向延設部60bをハブ20側に押出すことにより、当接部材60の他の部分よりもハブ20側に突出した部分を形成することも可能である。
本発明の第1の実施形態を示す動力伝達装置の側面断面図 図1におけるA−A線断面図 図2におけるB−B線断面図 動力伝達装置の動作説明図 動力伝達装置の動作説明図 伝達部材の正面図 当接部材の正面図 ハブの正面図 リベットと被挟持部との距離によって押付力が変化することを表すグラフ 被挟持部に対するリベットの角度によって押付力が変化することを表すグラフ 本実施形態に押圧部材を追加した場合の図1におけるA−A線断面図 本発明の第2の実施形態を示す当接部材の正面図 図10におけるC−C線断面図 動力伝達装置の側面断面図 本実施形態における変形例を示す当接部材の正面図 図13におけるD−D線断面図 従来の動力伝達装置の側面断面図 従来の動力伝達装置の要部断面図 従来の動力伝達装置の要部断面図
符号の説明
1…圧縮機、2…シャフト、10…プーリ、11…ベアリング、20…ハブ、22…フランジ部、22b…径方向延設部、30…伝達部材、31…本体部、31a…開口部、32…延設部、32a…傾斜部、32c…被挟持部、32d…係合突起、40…当接部材、40b…径方向延設部、40c…貫通孔、41…リベット、42…押圧部材、50…緩衝機構、51…ダンパー保持部材、52…ダンパー、60…当接部材、60b…径方向延設部、60c…折返し部。

Claims (4)

  1. 従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の外周面側に互いにプーリの周方向に等角度間隔をおいて設けられた複数の被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、互いにプーリの周方向に等角度間隔をおいて設けられ、ハブと当接部材とを軸方向に締結する被挟持部と同数の締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に各被挟持部が挟持されるとともに、各締結部材と各被挟持部との間の当接部材が各締結部材の締結により軸方向に弾性変形して各被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、各被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置において、
    前記各締結部材を、各被挟持部の周方向中間位置よりも周方向の何れか一方にずれた位置に設けた
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  2. 従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置において、
    前記当接部材の一部をハブ側に押圧することにより締結部材と被挟持部との間の当接部材を軸方向に弾性変形させる押圧部材を備えた
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  3. 従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力が伝達され、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上の回転力が生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するように構成した動力伝達装置において、
    前記当接部材に、当接部材の他の部分よりもハブ側に突出し、被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する突出部を設けた
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  4. 従動側機器に回転自在に支持され、外部からの動力によって回転するプーリと、従動側機器の回転軸に連結され、軸方向一端面がプーリの軸方向一端面と軸方向に対向するハブと、プーリの軸方向一端面に取付けられ、プーリからハブに回転力を伝達可能な伝達部材と、伝達部材の一部に設けられた被挟持部にプーリ側から軸方向に当接する当接部材と、ハブと当接部材とを軸方向に締結する締結部材とを備え、ハブと当接部材との間に被挟持部が挟持されるとともに、締結部材と被挟持部との間の当接部材が締結部材の締結により軸方向に弾性変形して被挟持部が当接部材によってハブの軸方向一端面に押付けられることにより、伝達部材を介してプーリからハブに回転力を伝達し、プーリとハブとの間に所定の大きさ以上のトルクが生ずると、被挟持部が当接部材の押付力に抗してハブと当接部材との間から離脱することにより、プーリからハブに伝達される回転力を遮断するようにした動力伝達装置に用いる当接部材の押付力設定方法において、
    前記当接部材による押付力が所定の大きさになるように被挟持部と締結部材との距離を設定する
    ことを特徴とする動力伝達装置用当接部材の押付力設定方法。

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