JP2007099980A - セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 - Google Patents
セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2007099980A JP2007099980A JP2005293547A JP2005293547A JP2007099980A JP 2007099980 A JP2007099980 A JP 2007099980A JP 2005293547 A JP2005293547 A JP 2005293547A JP 2005293547 A JP2005293547 A JP 2005293547A JP 2007099980 A JP2007099980 A JP 2007099980A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fatty acid
- acid ester
- cellulose
- cellulose fatty
- molecular weight
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
【課題】 熱流動性が高く成形性が良好な溶融成形に適したセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 分子量10万以上18万未満のセルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満のセルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】 分子量10万以上18万未満のセルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満のセルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、分子量10万以上18万未満の高分子量セルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満の低分子量セルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法である。
セルロースおよびセルロースエステルやセルロースエーテル等のセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また、環境中で生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。
最も一般的なセルロースエステルはセルロースアセテートであるが、セルロースアセテートは成形に必要な熱流動性を有しないため、一般的に有機溶媒を用いて湿式あるいは乾式で繊維、フィルムを製造する方法が知られている。しかし、この有機溶媒には有害なものが多く、環境負荷が懸念される。
このため、環境負荷の低減を目的として、セルロースエステルの側鎖に長鎖アルキルエステルを有するセルロース脂肪酸エステルを用い、成形に必要な熱流動性与えるために可塑剤を含有させることで、溶融紡糸により繊維を得る技術が検討されている(特許文献1参照)。
セルロース脂肪酸エステルはコットンリンター、木材パルプに代表される天然物由来のセルロースから製造されるため、ポリエステル、ナイロンに代表される合成ポリマーと比較して所望の分子量を有するセルロース脂肪酸エステルを得ることが難しい。また、セルロース脂肪酸エステルの製造工程においては、エステル化、置換度を低減する熟成工程等の各工程において熱履歴をうけるために分子量の低下が生じ、得られるセルロース脂肪酸エステルの分子量を一定に制御するには高い技術が必要である。
一方、連続して溶融紡糸を行う際に、途中で分子量の異なるセルロース脂肪酸エステル組成物を用いると溶融粘度が一定にならないことから、得られた繊維は長手方向の糸斑が生じる。また、口金吐出孔間の吐出斑が生じ、単糸間の繊度ばらつきが生じる。さらに、溶融粘度が大きく変動すると、口金からの吐出が不安定になり、糸切れが発生するという問題もある。
すなわち、溶融紡糸に代表される溶融成形を連続して行う際には、組成物の溶融粘度を一定にすることが求められるが、セルロース脂肪酸エステル組成物の溶融粘度を制御することは困難であるというのが現状である。
セルロースアセテートに低分子セルロースエステルを添加することで、低分子可塑剤を実質的に含有しないセルロースアセテート組成物が知られている(特許文献2参照)。該公報中では、低分子可塑剤を含有しないで成型加工性及び形状安定性に優れたフィルムを得ることができる酢酸セルロースエステル組成物を得ることを目的としたもので、溶融成形時の溶融粘度特性を一定にすることを目的とした本願と実質的に異なる。
特開2004−169242号公報(第1頁)
特開昭58−103538号公報(第1頁)
本発明の課題は、上記のような問題点を克服し、バイオマス系材料であるセルロース脂肪酸エステルを主成分とし、熱流動性が高く成形性が良好なセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法を提供する。
本発明は、分子量10万以上18万未満のセルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満のセルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法によって解決することができる。
本発明により、バイオマス系材料であるセルロース脂肪酸エステルを主成分とする環境負荷の小さい成分からなり、溶融成形に適したセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法を提供することが可能となる。本発明の製造方法によって得られるセルロース脂肪酸エステル組成物は、生分解性を活かした分野、すなわち、繊維、フィルム、樹脂等に好適に用いられる。
以下、本発明のセルロース脂肪酸エステルの組成物の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法で得られたセルロース脂肪酸エステル組成物は、分子量10万以上18万未満のセルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満のセルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むものである。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステルとは、セルロースの水酸基の少なくとも一部が、アセチル基および炭素数が3以上のアシル基によって置換されているものを言う。セルロース脂肪酸エステルは、少なくとも一部の水酸基が、炭素数3以上のアシル基によって置換されていることで、アセチル基のみで置換されたセルロースアセテートに比較して熱流動性が良好であり、熱履歴による着色を抑制することが可能となる。
セルロース脂肪酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。
セルロース脂肪酸エステルの置換度(DSace、DSacy)は下記式(I)、(II)、(III)を満たすことが好ましい。すなわち、セルロース脂肪酸エステルの全置換度(DSace+DSacy)が2.0以上2.9以下の範囲にあれば熱流動性が良好であり、溶融成形が可能となる。セルロース脂肪酸エステルの全置換度は、好ましくは2.4以上、2.8以下である。
(I)2.9≧DSace+DSacy≧2.0
セルロース脂肪酸エステルと可塑剤を含んでなる組成物の熱流動性及びセルロース脂肪酸エステルと可塑剤の相溶性の点から全置換度(DSace+DSacy)に占めるアセチル基の置換度(DSace)の割合は下記式(II)に示すとおり、0.9以下であることが好ましい。また、アセチル置換度は0.5以上であることが好ましい。そのアセチル置換度の割合は、さらに好ましくは0.7以上0.8以下である。
(II)0.9>DSace/(DSace+DSacy)>0.5
また、アセチル置換度(DSace)は、下記式(III)に示すとおりであることが好ましい。
(III)2.8>DSace>2.0
また、セルロース脂肪酸エステルはセルロースから従来公知の方法によって合成することができる。アセチル置換度は、例えば、反応においてアシル化剤として用いる無水酢酸及び炭素数3以上の酸無水物の割合を変えることで制御することができる。
(I)2.9≧DSace+DSacy≧2.0
セルロース脂肪酸エステルと可塑剤を含んでなる組成物の熱流動性及びセルロース脂肪酸エステルと可塑剤の相溶性の点から全置換度(DSace+DSacy)に占めるアセチル基の置換度(DSace)の割合は下記式(II)に示すとおり、0.9以下であることが好ましい。また、アセチル置換度は0.5以上であることが好ましい。そのアセチル置換度の割合は、さらに好ましくは0.7以上0.8以下である。
(II)0.9>DSace/(DSace+DSacy)>0.5
また、アセチル置換度(DSace)は、下記式(III)に示すとおりであることが好ましい。
(III)2.8>DSace>2.0
また、セルロース脂肪酸エステルはセルロースから従来公知の方法によって合成することができる。アセチル置換度は、例えば、反応においてアシル化剤として用いる無水酢酸及び炭素数3以上の酸無水物の割合を変えることで制御することができる。
本発明で用いるセルロース脂肪酸エステルは分子量の異なる2種類以上を用いる。高分子量セルロース脂肪酸エステルの分子量が10万以上18万未満である。10万以上であることで、本発明で得られたセルロース脂肪酸エステル組成物を成形体に用いた際に強度を維持することができ、18万未満であることで熱流動性が大きくなるため成形が容易になるため好ましい。高分子量セルロース脂肪酸エステルの分子量は11万以上が好ましく、13万以上がより好ましく、15万以上がさらに好ましい。低分子量セルロース脂肪酸エステルの分子量は4万以上10万未満である。4万以上にすることで、高分子量セルロース脂肪酸エステルとの相溶性が高くなり、10万未満にすることで高分子量セルロース脂肪酸エステルと混合した時の溶融粘度低減効果が大きくなる。低分子量セルロース脂肪酸エステルの分子量は5万以上が好ましく、6万以上がより好ましい。また、分子量は9万未満が好ましい。
本発明の製造方法で得られるセルロース脂肪酸エステル組成物中の高分子セルロース脂肪酸エステルの含有量は50〜80重量%である。50重量%以上であることで、本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物を用いて成形体をつくった際の強度が十分得られ、80重量%以下にすることで、低分子セルロース脂肪酸エステルおよび可塑剤を添加した際の熱流動性を与える効果が顕著に現れる。60重量%以上が好ましく、70重量%以下が好ましい。
本発明の製造方法で得られるセルロース脂肪酸エステル組成物中の低分子セルロース脂肪酸エステルの含有量は5〜30重量%である。5重量%以上にすることで、得られた組成物の溶融粘度を低減する効果が十分に発揮でき、30重量%以下にすることで得られた組成物を用いて成形体をつくった際の強度低下を抑制でき、実用に耐えうるものを得ることができる。
本発明の製造方法で得られるセルロース脂肪酸エステル組成物中の分子量が異なる2種以上のセルロース脂肪酸エステルの合計含有量は、80〜98重量%が好ましい。セルロース脂肪酸エステルの含有量を98重量%以下にすることにより、可塑剤を添加することによる熱可塑化効果が発現され、セルロース脂肪酸エステル組成物に成形可能な熱流動性を与えることができる。セルロース脂肪酸エステルの含有量は、より好ましくは95重量%以下である。また、セルロース脂肪酸エステルの含有量を80重量%以上にすることで、製造時の混練トルクが低くなりすぎずセルロースエステルが良好な混練性を有する。
本発明において、セルロース脂肪酸エステル組成物に可塑剤を2〜20重量%含有することが好ましい。本発明で具体的に用いることができる可塑剤としては、セルロース脂肪酸エステル組成物との相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピオレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物である。さらに可塑剤の分子量は250以上にすることにより、可塑剤の揮発による溶融成形時の発煙を抑えることができるので好ましい。可塑剤の分子量は310以上がより好ましい。可塑剤分子量の上限としてはセルロース脂肪酸エステルとの相溶性、可塑剤のブリードを抑制できる範囲が好ましく実質的には10000以下であることが好ましい。
具体的なグリセリンのエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されない。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンのエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるが限定されない。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジプロピオネート、ポリオキシエチレンジブチレート、ポリオキシエチレンジカプロエート、ポリオキシエチレンジヘプタノエート、ポリオキシエチレンジオクタノエート、ポリオキシエチレンジカプレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンモノアセテート、ポリオキシエチレンモノプロピオネート、ポリオキシエチレンモノブチレート、ポリオキシエチレンモノカプロエート、ポリオキシエチレンモノヘプタノエート、ポリオキシエチレンモノオクタノエート、ポリオキシエチレンモノノナネート、ポリオキシエチレンモノカプレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシプロピレンジアセテート、ポリオキシプロピレンジプロピオネート、ポリオキシプロピレンジブチレート、ポリオキシプロピレンジカプロエート、ポリオキシプロピレンジヘプタノエート、ポリオキシプロピレンジオクタノエート、ポリオキシプロピレンジカプレート、ポリオキシプロピレンジラウレート、ポリオキシプロピレンジミリスチレート、ポリオキシプロピレンジパルミテート、ポリオキシプロピレンジステアレート、ポリオキシプロピレンジオレート、ポリオキシプロピレンモノアセテート、ポリオキシプロピレンモノプロピオネート、ポリオキシプロピレンモノブチレート、ポリオキシプロピレンモノカプロエート、ポリオキシプロピレンモノヘプタノエート、ポリオキシプロピレンモノオクタノエート、ポリオキシプロピレンモノノナネート、ポリオキシプロピレンモノカプレート、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノミリスチレート、ポリオキシプロピレンモノパルミテート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンモノオレートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
可塑剤として用いるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物としては、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を用いるとセルロースエステルとの相溶性が良好になり好ましい。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(ただし、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
これは、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物がセルロースエステルとの相溶性に優れるため熱可塑化効果が顕著に表れるからである。さらに、ポリエーテル化合物自身の耐熱性が良好なこと、可塑剤量を少量とできるため、添加したポリマーの色調も良好になる効果を有するからである。さらには、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は溶融成形時の揮発性も非常に低く抑えることができる特徴も有している。
(ただし、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
これは、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物がセルロースエステルとの相溶性に優れるため熱可塑化効果が顕著に表れるからである。さらに、ポリエーテル化合物自身の耐熱性が良好なこと、可塑剤量を少量とできるため、添加したポリマーの色調も良好になる効果を有するからである。さらには、一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は溶融成形時の揮発性も非常に低く抑えることができる特徴も有している。
具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレートなどが挙げられるがこれに限定されない。
この中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジラウレートが好ましい。
ポリエーテル化合物の分子量としては、200〜1000であることでポリエーテル化合物の揮発が抑えられ、セルロースエステルとの相溶性も良好となるため好ましい。ポリエーテル化合物の分子量は300〜800がより好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸エステル組成物製造時にホスファイト系着色防止剤を添加することができる。ホスファイト系着色防止剤を添加すると加熱時に本発明で得られるセルロース脂肪酸エステル組成物着色防止効果が非常に顕著であり、色調が良好な組成物が得られる。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、セルロース脂肪酸エステル組成物の全量に対して、好ましくは0.005〜0.5重量%である。配合量を0.005重量%以上とすることで得られる組成物の着色が抑制できる。ホスファイト系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上である。一方、配合量を0.5重量%以下にすることにより、セルロース脂肪酸エステルの分子鎖が切断され重合度が低下することによる繊維の劣化を抑制できる。繊維の強度等の機械的特性の観点から、セルロース脂肪酸エステル組成物が含有するホスファイト系着色防止剤の含有率は、より好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
本発明においてはホスファイト系着色防止剤以外にも必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、チオエーテル、ヒンダードフェノール等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。また、その他有機酸系の生分解促進剤、抗酸化剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤等の添加剤を配合することは何らさしつかえない。
本発明における分子量10万以上18万未満のセルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満のセルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法は溶融混合が好ましいが、これに限定されない。本発明に用いることのできる成形機は、例えばニーダーやエクストルーダーのような押し出し成形機であっても射出成形機など通常使用されている公知の混合機を特に制限無く用いることができる。セルロース脂肪酸エステルへの熱履歴を抑制することのできるエクストルーダー(例えば二軸エクストルーダー)、ニーダーが好ましい。水および有機化合物を除去するためのベント孔を有することが好ましい。
分子量が異なる2種以上のセルロース脂肪酸エステルの溶融混合性を容易にするために粉砕機により予めセルロース脂肪酸エステルの粒子を50メッシュ以上に細かく粉砕しておいても良い。また、セルロース脂肪酸エステル合成時に可塑剤を添加し、セルロース脂肪酸エステルの製造と同時に可塑剤を含むセルロース脂肪酸エステルを得ても良い。
本発明の製造方法により得られたセルロース脂肪酸エステル組成物はエクストルーダー等から吐出する際に冷却した組成物をペレット状に切断した後に溶融紡糸、溶融製膜、溶融成形等に用いてもよいし、溶融状態で成形機に移行して成形物を製造してもよい。
本発明の製造方法により得られたセルロース脂肪酸エステル組成物は、原料となるセルロース脂肪酸エステル組成物の分子量が異なっていても、同一の溶融粘度を有することができるため、連続的に該組成物を用いて溶融成形を行う際に特に好ましく用いられる。
本発明で得られるセルロース脂肪酸エステル組成物は、260℃、1000sec−1における溶融粘度が20〜200Pa・secであることが好ましい。260℃、1000sec−1における溶融粘度が20Pa・sec以上である場合には、例えば製造時の混練トルクが低くなりすぎずセルロースエステルが良好な混練性を有すると同時に、得られたセルロース脂肪酸エステル組成物を、例えば繊維用途の用いる際に均一性の優れた紡糸後の固化が十分に進み、収束しても繊維同士が膠着することがない。また、この場合、口金背面圧が十分に得られるため、分配性も良好となり、均一性の優れた繊度が得られるという利点も有している。一方、溶融粘度が200Pa・sec以下である場合には、組成物の熱流動性が高くなり、得られたセルロース脂肪酸エステル組成物を、例えば繊維用途に用いる際に紡出糸条の製糸性が良好であり、十分な配向が得られて機械特性の優れた繊維となる。260℃、1000sec−1における溶融粘度は30〜140Pa・secであることが好ましく、40〜90Pa・secであることが最も好ましい。
また、本発明の製造方法により得られたセルロース脂肪酸エステル組成物は繊維、フィルム、樹脂等の溶融成形を行う分野で好ましく用いられる。例えば、該組成物を繊維とした場合には、衣料用フィラメント、衣料用ステープル、産業用フィラメント、産業用ステープル、医療用フィラメントとすることが可能であり、またメルトブロー法、スパンボンド法による不織布用繊維とすることも好ましく採用できる。
また、本発明の製造方法により得られたセルロース脂肪酸エステル組成物は繊維、フィルム、樹脂等の溶融成形を行う分野で好ましく用いられる。例えば、該組成物を繊維とした場合には、衣料用フィラメント、衣料用ステープル、産業用フィラメント、産業用ステープル、医療用フィラメントとすることが可能であり、またメルトブロー法、スパンボンド法による不織布用繊維とすることも好ましく採用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、セルロース脂肪酸エステルの置換度、分子量、溶融粘度、製糸性評価、単糸の繊度CV%および強伸度については、以下の方法で評価した。
(1)セルロース脂肪酸エステルの置換度
乾燥したセルロース脂肪酸エステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
乾燥したセルロース脂肪酸エステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/
[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace) }]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:炭素数3以上のアシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:炭素数3以上のカルボン酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と炭素数3以上のカルボン酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
(2)GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロースエステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
DSace=(162.14×TA)/
[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace) }]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:炭素数3以上のアシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:炭素数3以上のカルボン酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と炭素数3以上のカルボン酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
(2)GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロースエステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl
(3)260℃、1216s−1での溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、L=10mm、D=1mmのダイにて、温度260℃、シェアレート1216sec−1で粘度を測定し、溶融粘度とした。なお、樹脂は測定前に80℃の温度にて8hrの減圧乾燥を行い、測定時には熱劣化の影響を避けるため樹脂の充填開始後10min以内に測定を行った。
(4)製糸性
溶融紡糸において、ポリマー切り替え後1時間以内に糸切れが発生したものを製糸性×、糸切れがなく安定した製糸が可能なものを製糸性○とした。
(5)マルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%
溶融紡糸して得られた熱可塑性セルロースエステル系マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断し、その切断面を光学顕微鏡で撮影し、得られた画像からマルチフィラメントを構成する各単糸の単糸径を測定し、その値から各単糸の繊度を算出し、下式より単糸繊度CV%を算出した。
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl
(3)260℃、1216s−1での溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、L=10mm、D=1mmのダイにて、温度260℃、シェアレート1216sec−1で粘度を測定し、溶融粘度とした。なお、樹脂は測定前に80℃の温度にて8hrの減圧乾燥を行い、測定時には熱劣化の影響を避けるため樹脂の充填開始後10min以内に測定を行った。
(4)製糸性
溶融紡糸において、ポリマー切り替え後1時間以内に糸切れが発生したものを製糸性×、糸切れがなく安定した製糸が可能なものを製糸性○とした。
(5)マルチフィラメントを構成する単糸の繊度CV%
溶融紡糸して得られた熱可塑性セルロースエステル系マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断し、その切断面を光学顕微鏡で撮影し、得られた画像からマルチフィラメントを構成する各単糸の単糸径を測定し、その値から各単糸の繊度を算出し、下式より単糸繊度CV%を算出した。
単糸繊度CV%=(σ/X)×100
ただしXは単糸繊度の平均値およびσは標準偏差である。
ただしXは単糸繊度の平均値およびσは標準偏差である。
単糸繊度CV%が6%以下を繊維間の斑が小さいとして○、6%を越え、8%未満を問題のないレベルとして△、8%以上を繊維間の斑が大きいとして×とした。
(6)強伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回であり、その平均値を強度と伸度とした。
(6)強伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回であり、その平均値を強度と伸度とした。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ、相対粘度13.8)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃の温度で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、200分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、温度が40℃を超えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃の温度で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃の温度で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は15.2万であった。
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ、相対粘度13.8)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃の温度で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、200分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、温度が40℃を超えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃の温度で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃の温度で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は15.2万であった。
得られたセルロースアセテートプロピオネート82wt%とポリエチレングリコール{分子量600(三洋化成工業(株)製 PEG600)}17.9wt%、ホスファイト0.1wt%袋の中で混合して、エクストルーダーにフィードした。エクストルーダーのジャケットの温度は210℃とし、連続的に口金を取り付けた先端より押し出し、水冷後、カッターに導入してペレットとした。得られたペレットの260℃、1215cm-1での溶融粘度は130Pa・sであった。このペレットをペレットAとする。
合成例2
セルロースとして相対粘度13.8のものを用い、エステル化反応を150分間行うこと以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
セルロースとして相対粘度13.8のものを用い、エステル化反応を150分間行うこと以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
得られたセルロースエステルは実施例、比較例で用いた。
合成例3
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は8.2万であった。
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は8.2万であった。
合成例4
プロピオン酸の代わりに酪酸を用いる以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートブチレートを得た。アセチル基およびブチリル基の平均置換度は各々2.0と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は16.2万であった。
プロピオン酸の代わりに酪酸を用いる以外は合成例1と同様の手法でセルロースアセテートブチレートを得た。アセチル基およびブチリル基の平均置換度は各々2.0と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は16.2万であった。
合成例1と同様に得られたセルロースアセテートブチレートwt%とポリエチレングリコール9.9wt%、ホスファイト0.1wt%を混練してペレットを得た。得られたペレット260℃、1215cm-1での溶融粘度は120Pa・sであった。このペレットをペレットBとする。
合成例5
セルロースとして相対粘度13.8のものを用い、エステル化反応を150分間行うこと以外は合成例4と同様の手法でセルロースアセテートブチレートを得た。アセチル基およびブチリル基の平均置換度は各々2.1と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は18.1万であった。
セルロースとして相対粘度13.8のものを用い、エステル化反応を150分間行うこと以外は合成例4と同様の手法でセルロースアセテートブチレートを得た。アセチル基およびブチリル基の平均置換度は各々2.1と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は18.1万であった。
合成例6
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は合成例4と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は7.9万であった。
セルロースとして相対粘度7.5のものを用い、最終の加熱攪拌を1.5時間行うこと以外は合成例4と同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを得た。アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々2.0と0.6であり、重量平均分子量(Mw)は7.9万であった。
得られたセルロースエステルは実施例、比較例で用いた。
実施例1
○ペレット作成
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)70wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)12wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%とを袋の中で混合したものを2軸エクストルーダーの原料フィダーよりエクストルーダーに投入した。エクストルーダーのジャケットの温度は210℃とし、連続的に口金を取り付けた先端より押し出し、水冷後、カッターに導入してペレットとした。得られたペレットの260℃、1216cm−1での溶融粘度は110Pa・sであった。80℃の温度で8時間の真空乾燥を行った(乾燥後の含水分率は600ppm)。
○製糸性評価
合成例1で作成したペレットA(溶融粘度130Pa・s)を紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出している紡糸機に実施例1で作成したペレットを追加した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、ペレット切り替え時にも糸切れは発生しなかった。力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
○ペレット作成
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)70wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)12wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%とを袋の中で混合したものを2軸エクストルーダーの原料フィダーよりエクストルーダーに投入した。エクストルーダーのジャケットの温度は210℃とし、連続的に口金を取り付けた先端より押し出し、水冷後、カッターに導入してペレットとした。得られたペレットの260℃、1216cm−1での溶融粘度は110Pa・sであった。80℃の温度で8時間の真空乾燥を行った(乾燥後の含水分率は600ppm)。
○製糸性評価
合成例1で作成したペレットA(溶融粘度130Pa・s)を紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出している紡糸機に実施例1で作成したペレットを追加した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、ペレット切り替え時にも糸切れは発生しなかった。力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
実施例2
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)60wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)25wt%とポリエチレングリコール600を14.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は120Pa・sであった。
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)60wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)25wt%とポリエチレングリコール600を14.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は120Pa・sであった。
実施例1と同様に製糸性評価を行ったところ、製糸性、力学特性(表1)ともに良好であった。
実施例3
○ペレット作成
合成例5で得られたセルロースアセテートブチレート(分子量18.1万)70wt%、合成例6で得られたセルロースアセテートブチレート(分子量7.9万)20wt%とポリエチレングリコール600を9.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は110Pa・sであった。
○製糸性評価
合成例4で作成したペレットB(溶融粘度120Pa・s)を紡糸温度255℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出している紡糸機に実施例3で作成したペレットを追加した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、ペレット切り替え時にも糸切れは発生しなかった。力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
○ペレット作成
合成例5で得られたセルロースアセテートブチレート(分子量18.1万)70wt%、合成例6で得られたセルロースアセテートブチレート(分子量7.9万)20wt%とポリエチレングリコール600を9.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は110Pa・sであった。
○製糸性評価
合成例4で作成したペレットB(溶融粘度120Pa・s)を紡糸温度255℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出している紡糸機に実施例3で作成したペレットを追加した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後、ワインダーにて巻き取った。製糸性は良好であり、ペレット切り替え時にも糸切れは発生しなかった。力学特性を表1に示すが、良好な強伸度を有していた。
比較例1
セルロースアセテート(ダイセル化学工業社製、アセチル置換度2.5、分子量16.2万)60wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)10wt%、ポリエチレングリコール600を29.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの熱可塑化が不十分であった。得られたペレットの熱流動性が低く、溶融粘度、製糸性評価は行うことができなかった。
セルロースアセテート(ダイセル化学工業社製、アセチル置換度2.5、分子量16.2万)60wt%、合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)10wt%、ポリエチレングリコール600を29.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの熱可塑化が不十分であった。得られたペレットの熱流動性が低く、溶融粘度、製糸性評価は行うことができなかった。
比較例2
合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)82wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は20Pa・sと低かった。
合成例3で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量8.2万)82wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は20Pa・sと低かった。
実施例1と同様に製糸性評価を行ったところポリマー切り替え時に糸切れが多発した。得られた繊維の力学特性(表1)は低く、単糸の繊度間のばらつきも大きかった。
比較例3
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)82wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は160Pa・sと高かった。
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)82wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は160Pa・sと高かった。
実施例1と同様に製糸性評価を行ったところポリマー切り替え時に糸切れが多発した。得られた繊維の力学特性(表1)は低く、単糸の繊度間のばらつきも大きかった。
比較例4
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)70wt%と合成例1で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量15.2万)12wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は155Pa・sと高かった。
合成例2で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量17.8万)70wt%と合成例1で得られたセルロースアセテートプロピオネート(分子量15.2万)12wt%とポリエチレングリコール600を17.9wt%、ホスファイト化合物0.1wt%を用いる以外は実施例1と同様にペレットを得た。得られたペレットの溶融粘度は155Pa・sと高かった。
実施例1と同様に製糸性評価を行ったところポリマー切り替え時に糸切れが見られた。得られた繊維の力学特性(表1)は低く、単糸の繊度間のばらつきも見られた。
本発明により得られたセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融成形機で連続成形する際に、物性のばらつきの少ない成形体を得ることができる。得られる成形品は、生分解性を活かした分野、すなわち、繊維、フィルム、樹脂等に好適に用いられる。
Claims (4)
- 分子量10万以上18万未満の高分子量セルロース脂肪酸エステル50〜80重量%と分子量4万以上10万未満の低分子量セルロース脂肪酸エステル5〜30重量%を少なくとも含むことを特徴とするセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
- 可塑剤を2〜20重量%を少なくとも含んでなることを特徴とする請求項1記載のセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
- セルロース脂肪酸エステル組成物がセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1から2のいずれか一項記載のセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
- セルロース脂肪酸エステル組成物のアセチル置換度(DSAce)とアシル基置換度(DSAcy)が下記式(I)および(II)を満たすように置換されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のセルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法。
(I)2.9≧DSAce+DSAcy≧2.0
(II)0.9>DSAce/(DSAce+DSAcy)>0.5
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005293547A JP2007099980A (ja) | 2005-10-06 | 2005-10-06 | セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005293547A JP2007099980A (ja) | 2005-10-06 | 2005-10-06 | セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007099980A true JP2007099980A (ja) | 2007-04-19 |
Family
ID=38027230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005293547A Pending JP2007099980A (ja) | 2005-10-06 | 2005-10-06 | セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007099980A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107200870A (zh) * | 2016-03-16 | 2017-09-26 | 富士施乐株式会社 | 树脂组合物以及树脂成型体 |
-
2005
- 2005-10-06 JP JP2005293547A patent/JP2007099980A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107200870A (zh) * | 2016-03-16 | 2017-09-26 | 富士施乐株式会社 | 树脂组合物以及树脂成型体 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101427226B1 (ko) | 친환경 생분해성 복합섬유 및 그 제조방법 | |
KR101585284B1 (ko) | 열가소성 셀룰로오스 에스테르 조성물 및 이것으로 이루어지는 섬유 | |
JP3870944B2 (ja) | 熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれからなる繊維 | |
JP4093048B2 (ja) | 成形加工性に優れた熱可塑性セルロースエステル組成物およびそれから得られる繊維 | |
JP2007099980A (ja) | セルロース脂肪酸エステル組成物の製造方法 | |
JP4552460B2 (ja) | 熱可塑性セルロースエステル組成物の製造方法 | |
JP2000219777A (ja) | 熱可塑性セルロース誘導体組成物及びそれを用いた成形品 | |
JP4363173B2 (ja) | セルロースアセテートプロピオネート繊維およびその製造方法 | |
JPH09291414A (ja) | 生分解性セルロースアセテート系繊維及びその製造方法 | |
JPH0978339A (ja) | 生分解性セルロースアセテート系繊維及びその製造方法 | |
JP2004131670A (ja) | 溶融成形用熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物およびそれからなる繊維 | |
JPH11209482A (ja) | 生分解性フィルム及びシート | |
JP2007039862A (ja) | 溶融紡糸用セルロース脂肪酸エステル組成物およびそれからなる繊維およびその製造方法 | |
JP4207807B2 (ja) | セルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法 | |
JP2004010844A (ja) | 熱可塑性セルロースエステル組成物およびそれからなる繊維 | |
CN116981728A (zh) | 热塑性树脂组合物 | |
JP3958431B2 (ja) | セルロースアセテート系樹脂組成物及びその製造法 | |
JP2000219776A (ja) | 弱アルカリ崩壊性樹脂組成物 | |
JP3994863B2 (ja) | セルロースアセテートプロピオネート繊維およびその製造方法 | |
JP2006118060A (ja) | 熱可塑性セルロースエステル系マルチフィラメントおよびその製造方法 | |
JP2003082160A (ja) | 熱可塑化セルロースエステル組成物およびそれからなる繊維 | |
JPH1095860A (ja) | 生分解性と透湿性を有するフィルム及び複合紙 | |
JPH10317228A (ja) | 生分解性セルロースアセテート系繊維およびその製造方法 | |
JP2000043200A (ja) | 生分解性多層成形品 | |
JP2004196932A (ja) | 吸湿熱可塑性セルロースエステル組成物およびそれから得られる繊維 |