JP2007096687A - 配線基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】分岐された差動配線での放射ノイズの低減を図った配線基板を提供する。
【解決手段】差動信号出力素子からの差動信号が接続点から差動信号バス配線に入力され、接続点と両端それぞれN対の分岐配線で分岐され、2N個の差動信号入力素子に入力される。差動信号出力素子から差動信号入力素子間の配線の実効長を半波長とする周波数fにおいて、分岐配線および差動信号入力素子の全体での入力インピーダンスZbnと、差動バス配線の特性インピーダンスZ1とが0.8・Z1≦Zbn/N≦1.2・Z1の関係を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、配線基板に係り、特に、差動信号を分岐する分岐配線を有する配線基板に係わる。
CPUと複数のメモリ間でデータを送受したり、電子機器によりディスプレイを駆動したりする場合、1つの送信側ICから複数の受信側ICを駆動することが多い。この場合、1本の信号配線を複数の配線に分岐する分岐配線が用いられる。分岐配線では、配線の分岐部や受信側ICの入力端等で信号が反射して、不要輻射ノイズ、すなわち、EMI(Electro Magnetic Interference)の原因となる可能性がある。
ここで、高速な信号を伝送する場合、一対の差動信号線によって差動信号を伝送する差動信号伝送技術が用いられる(例えば、特許文献1参照)。差動信号伝送では一対の差動信号線間で電界が閉じるため、EMIを小さくすることが容易になる。
特開2004−96351号公報
分岐配線と差動信号伝送を組み合わせることで、分岐配線でのEMIを低減することが考えられる。即ち、分岐前の配線、分岐後の分岐配線それぞれに差動信号配線を用いる。
しかし、分岐配線に差動信号配線を用いただけで、EMIを完全に除去するのは困難である。例えば、差動信号の立ち上がりと立下りのアンバランス等によるコモンモードノイズがEMIの原因となる可能性がある。
上記に鑑み、本発明は分岐された差動配線での放射ノイズの低減を図った配線基板を提供することを目的とする。
本発明に係る配線基板は、差動信号を供給する出力素子と、前記差動信号が供給される一対の接続点を中央部にそれぞれ有する一対のバス配線と、前記バス配線それぞれの両端を互いに接続する一対の終端抵抗と、前記バス配線の終端と前記接続点との間でそれぞれN対が配置されて、前記バス配線からそれぞれ分岐される2N対の分岐配線と、前記2N対の分岐配線とそれぞれ接続される2N個の受信素子と、を具備し、前記出力素子から前記受信素子に至る配線の実効長を半波長とする周波数fにおいて、前記バス配線の特性インピーダンスZ1と、前記バス配線からみたときの前記分岐配線および前記受信素子の全体での入力インピーダンスZbnが0.8・Z1≦Zbn/N≦1.2・Z1の関係にあることを特徴とする。
分岐された差動配線での放射ノイズの低減を図った配線基板を提供できる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線基板100を表す上面図である。図2は、配線基板100を図1のA1−A2に沿って切断した状態を表す断面図である。
配線基板100は、第1、第2、第3の配線基板110、120(120R(1)〜120R(N),120L(1)〜120L(N))、130を有する。
第1の配線基板110は、例えば、プリント基板であり、層をなして配置される第1〜第4の絶縁層111〜114、駆動用IC141、差動信号配線142(142a、142b)、差動信号バス配線143(143a,143b)、終端抵抗144(144R,144L)、分岐配線145(145R(145R(1)〜145R(N))、145L(145L(1)〜145L(N))、接地配線146(146R(1)〜146R(N),146L(1)〜146L(N))、接地電極層(グラウンド面)147,電源配線148を有する。
駆動用IC141(送信側IC)は、第1の絶縁層111上に配置され、後述のレシーバIC131を駆動するためのものであり、差動信号を出力する出力端を有し差動信号出力素子として機能する。駆動用IC141から出力される信号は、例えば、所定のクロック周波数に基づくデジタル波形である。
差動信号配線142a、142bは、第2、第3の絶縁層112、113の間に配置され、駆動用IC141と、差動信号バス配線143a,143bとを電気的に接続する。
差動信号バス配線143a,143bは、第1の絶縁層111上に互いに略並列に近接して配置され、差動信号を伝送し、分岐配線145へと分岐するためのバス配線である。本実施形態では差動信号バス配線143a,143bそれぞれの中央近傍に差動信号配線142a、142bが接続される接続点が配置される。
終端抵抗144R,144Lは、第1の絶縁層111上に配置され、差動信号バス配線143a,143bの左右の両端それぞれを互いに接続、終端して、差動信号バス配線143a,143bの両端での信号の反射を低減する。
分岐配線145は、第2、第3の絶縁層112、113の間に配置され、差動信号バス配線143a,143bと、後述のレシーバIC131とを接続するための配線である。分岐配線145は、2N個のレシーバIC131それぞれ一対の差動入力端子に応じて、2N対が配置される。即ち、分岐配線145は、差動信号バス配線143a,143b上の差動信号配線142a、142bとの接続箇所(接続点)の両側それぞれにN対ずつ接続される。このように、差動信号バス配線143の中央部に差動信号配線142が接続され、その両側に同数の分岐配線145が接続されているものをT字分岐という。
接地配線146(146R(1)〜146R(N),146L(1)〜146L(N))は、第1の絶縁層111上に配置され、スルーホールを通じて接地電極層147に接続される。接地配線146は、後述のレシーバIC131と接地電極層147とを電気的に接続する。
接地電極層147は、分岐配線145からのコモンモードノイズによる放射を低減するために配置される。一対の分岐配線145が差動信号を伝達していることから、信号の伝達自体に接地電極層147は必ずしも必要ではない。しかし、波形の立ち上がり、立下りのアンバランス等で生じた同相成分のノイズによるコモンモードノイズが発生する可能性がある。コモンモードノイズは、小さな電流でも大きな放射を引き起こす原因となるため、接地電極層147を分岐配線145に対向して配置し、放射を低減している。
電源配線148は、第3、第4の絶縁層の間に配置され、駆動用IC141に電力を供給するための配線である。なお、電源配線148と駆動用IC141との接続は図示を省略している。
第2の配線基板120R(1)〜120R(N)、120L(1)〜120L(N)は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)基板であり、その下面に分岐配線121(121R(121R(1)〜121R(N))、121L(121L(1)〜121L(N)))、接地配線122(122R(1)〜122R(N),122L(1)〜122L(N))が配置される。
2N対の分岐配線121はそれぞれ、2N対の分岐配線145と接続される。
接地配線122は、接地配線133と、接地配線146とを電気的に接続する。
第3の配線基板130は、例えば、ガラス基板であり、レシーバIC131(131R(131R(1)〜131R(N)、131L(131L(1)〜131L(N)))、分岐配線132(132R(132R(1)〜132R(N))、132L(132L(1)〜132L(N)))、接地配線133(133R(1)〜133R(N),133L(1)〜133L(N))が配置される。
レシーバIC131(受信側IC)は、第3の配線基板130上に、例えば、COG(Chip on Glass)で実装される。COGは、半導体のチップ(レシーバIC131)をガラス基板(第3の配線基板130)に直接実装する方法であり、OLB(outer lead bonding)ではなく、ILB(Inner lead bonding)である。このため、第3の配線基板130上でレシーバIC131の実装に要する面積を低減できる。第3の配線基板130が液晶表示素子等の表示素子の場合に、表示領域の周りの非表示領域を狭くすることができる(狭額縁)。
分岐配線132は、レシーバIC131と分岐配線121とを電気的に接続する配線である。
第3の配線基板130がガラス基板のときには、分岐配線132の構成材料として、Al、MoWなどCuと比べて高抵抗な配線材料を用いるのが通例である。このように比較的高抵抗の配線材料を用いることで、分岐配線132の特性インピーダンスを制御して、分岐配線132を一種の終端抵抗として利用し、EMIを低減することが容易となる。なお、この詳細は後述する。
接地配線133は、レシーバIC131と、接地配線122とを電気的に接続する配線である。
駆動用IC141からの信号が、差動信号バス配線143、分岐配線145,121、分岐配線132を経由して、レシーバIC131に接続され、その後、接地配線133、122,146を経由して、接地電極層147で終端される。
2N個のレシーバICそれぞれに応じて、差動信号バス配線143が左右N対の分岐配線145,121に分岐され、分岐配線145,121それぞれの特性インピーダンスに応じて、電流が流れる。
このとき、EMIが生じる可能性がある。駆動用IC141がノイズ源となり、そのノイズ(信号)が分岐配線145で伝達され(伝達経路)、分岐配線121、分岐配線132をアンテナとして電磁波が放射される。分岐配線145は接地電極層147と対向していることから電磁波が放射され難いが、分岐配線121、分岐配線132ではこれと対向するグラウンド面が配置されていないことから、アンテナとして作用する。分岐配線121のインピーダンスと、分岐配線121、分岐配線132のインピーダンスとが異なると、インピーダンスの不整合により信号が反射され、EMIが大きくなる。
分岐配線121および分岐配線132の配線長が十分短い場合には、その共振周波数は高周波化しているため、大きな放射は起きにくい。分岐配線121および分岐配線132の配線長がある程度長くなり、その共振周波数が低周波化した場合(例えば、CISPRR(EMIの国際規格)の規制周波数、駆動用IC141のクロック周波数の20次の高調波成分よりも低周波化される場合)、大きな放射が起こる可能性がある。
(等価回路モデル)
図3は、配線基板100の等価回路モデルを表す図である。
ここで、インピーダンスZ1、Z2はそれぞれ、差動信号バス配線143および分岐配線145一本当たりの特性インピーダンスであり、差動信号バス配線143および分岐配線145と接地電極層147との間で定義した同相モードで定義される。なお、差動信号バス配線143および分岐配線145の配線の材質、幅、厚さを調節し、特性インピーダンスZ1、Z2の値を実質的に同一にすることにより、特性インピーダンス不整合による反射を防止することが通例である。
インピーダンスZbnは、レシーバIC131、分岐配線132,121の全体を第1の配線基板110側からみたときの入力インピーダンスである。
A.インピーダンスの整合
インピーダンスZ1、Zbnを整合させ、信号の反射が小さくなる条件を以下に示す。駆動用IC141の左側でのインピーダンスZbnの総和をインピーダンスZleftとする。ここで、インピーダンスZ2はインピーダンスZ1とほぼ同じ特性インピーダンスであり、またインピーダンスZ2に対応する配線長はインピーダンスZbnに対応する配線長に比べて短い。このため、整合条件を考える時、インピーダンスZ2をバス配線のインピーダンスZ1に含めて考える。
このとき、N対の分岐配線121、132はそれぞれ並列に接続されるため、インピーダンスZleftは次の式(1)、(2)で表される。
1/Zleft =(1/Zbn)・N (1)
left = Zbn/N (2)
分岐配線121、132は差動信号バス配線143に接続されている。そのため、差動信号バス配線143のインピーダンスZとインピーダンスZleftが同一になると、反射が起こらなくなる。即ち、式(2)から次の式(3)のときにインピーダンスが整合され、分岐配線121および分岐配線132からの放射が小さくなる。
= Zbn/N (3)
なお、N本まとめて考えたのは、駆動用IC141から見た場合の特性インピーダンスを考慮したためである。駆動用IC141の左右両端に終端抵抗144があるため、左右別々に特性インピーダンスの整合を考慮した。
式(3)を完全に満たしていなくても、次の式(4)のようにある程度の範囲で放射が低減される。
0.8×Z≦Zbn/N≦1.2×Z(4)
以上のように、インピーダンスZbnを調節して、インピーダンスを整合させ、EMIを低減することができる。
このときのインピーダンスZbnを調整する手法として、(1)分岐配線132の抵抗値を変化させる、(2)分岐配線121の配線長を変更する等が考えられる。
例えば、分岐配線132が幅Wを30μm、厚さtを0.6μm、配線長lを6mm、抵抗率ρを5.0×10−7[Ω・m]とすると、抵抗Rは次の式で表される。
R=ρ・l/(W・t)=151Ω
なお、分岐配線132の配線長lが長くなると特性インピーダンス中のインダクタンス成分も無視できなくなる。分岐配線132の厚さtを薄くしたり、構成材料の抵抗率ρを上げたりすることで、配線長lをさほど長くせずに分岐配線132の抵抗値を調節できる。
第2の配線基板120にグラウンド面がない場合など、分岐配線121にインダクタンス成分があるときには、インピーダンスZbnの値に周波数依存性が出てくる。この場合には、どの周波数で終端抵抗の最適化(分岐配線132によるインピーダンス制御)を行うべきかを注意しなければならない。
B.インピーダンスZbnの詳細
次に、インピーダンスZbnを、分岐配線121のインダクタンス成分、分岐配線132の配線抵抗によって表す。
図4は、一本の分岐配線121,132、レシーバIC131の入力部を等価回路として表す図である。
インダクタンスLfpcは分岐配線121のインダクタンス成分、抵抗Rglは分岐配線132の抵抗、容量Cinおよび抵抗Rinはそれぞれ、レシーバIC131の入力容量および入力抵抗である。
差動配線の一方での分岐配線121,132、レシーバIC131全体でのインピーダンスZbnを導出する。なお、他方の差動配線でも同等である。
Zbn=iωLfpc+Rgl+1/((1/Rin)+iωCin
=i2πf[Lfpc−Cin/((1/Rin+(2πfCin)]
+Rgl+(1/Rin)/((1/Rin+(2πfCin
ここで、f:周波数である。
周波数fが100MHz以上では、(2πfCin>(1/Rinであるから、次の式が成立する。
Z= i[2πfLfpc−1/2πfCin
+Rgl+1/(Rin(2πfCin
インピーダンスZの絶対値は以下の式(6)で表される。
|Z|= [(2πfLfpc−1/2πfCin
+(Rgl+1/(Rin(2πfCin))1/2 (5)
式(5)が正しいことを確かめるために、EMIシミュレーションを行った。
図5は、半分岐数N=3(全分岐数2N=6)の配線基板100において、分岐配線132の抵抗値Rglを変化させて、放射強度(EMI(垂直成分)の最大値)を測定した結果を表すグラフである。ここで、グラフG11〜G14はそれぞれ、分岐配線121の配線長30mm、40mm、60mm、100mmに対応する。
理想的には(3)式より、N=3の場合、次の条件でEMIが低減すると予測される。
bn=Z1×3=150(Ω)
図5より、分岐配線121の配線長が40mm、60mmの場合、分岐配線132の抵抗Rglが150Ωのときに放射強度が極小となることが判る。また、分岐配線121の配線長が100mmの場合、分岐配線132の抵抗値Rglが高いときに放射強度が低減されている。分岐配線121の配線長30mmの場合、ガラス基板の抵抗値が100Ωで放射強度が極小とならない。この理由は、分岐配線121が短いため分岐配線121での反射の影響が小さいためと思われる。以上のように、式(3)が、シミュレーションからも裏付けられた。
図6は、半分岐数N=3(全分岐数2N=6)の配線基板100において、分岐配線132の抵抗値を100ΩとしたときのインピーダンスZbnの周波数依存性を示す図である。グラフG21〜G23がそれぞれ、分岐配線121の配線長20mm、40mm、60mmに対応する。周波数fが700MHz〜1.5GHz、分岐配線121の配線長20mm、40mmのときに、インピーダンスZはすべて100Ω程度になっている。しかし、分岐配線121の配線長Lが100mmのとき、500MHzでインピーダンスZbnは極小値をとる。
C.分岐配線121の配線長の影響
図5において、分岐配線121の配線長40mm、60mmの場合を比較すると、放射強度(垂直成分の最大値)が20dB相違している。即ち、分岐配線121の配線長に応じて、分岐配線132の抵抗Rglを調節するのが好ましい。
分岐配線の配線長によって、分岐配線の長さをλ/4のn倍とする共振周波数が異なる。
駆動用IC141の出力部からレシーバIC131の入力部までの距離が最も長い分岐配線の配線長(最長分岐配線長)をlfarとする。図1では、差動信号配線142,差動信号バス配線143,分岐配線145L(N),121L(N)、132L(N)を通る経路の総和が最長分岐配線長lfarに対応する。
最長分岐配線長lfarの実効配線長(空気換算長)lfar,airは、次の式で表される。
far,air =lpr ×√εpr+lFPC×√εFPC+lgl ×√εgl
ここで、差動信号配線142,差動信号バス配線143から分岐配線145の末端に至るまでの配線長lpr、その実効誘電率εpr、分岐配線121の配線長lFPC、その実効誘電率εFPC、分岐配線132の配線長lgl、その実効誘電率εglとする。
なお、分岐配線132の配線長が配線長lpr、lFPCに比べて小さければ、実効配線長lfar,airは次の式で表すことができる。
far,air =lpr ×√εpr+lFPC×√εFPC (6)
farがλ/2共振を起こす周波数fbn,λ/2は以下の式(7a)で表される。ここで、光の速度をc(m/s)、波長をλとする。
far at air=λ/2
c=fbn,λ/2×2×lfar at air
bn,λ/2=c/(2×lfar at air) (7a)
λ/2共振では駆動IC141側が電流の節で最小値、受信IC側131側が電流の節で最小値になる。このときに放射が増大する。
同様に、lfarがλ/4共振を起こす周波数fbn,λ/4は以下の式(7b)で表される。
bn,λ/4=c/(4×lfar at air) (7b)
λ/4共振では駆動IC141側が電流の腹で最大値、受信IC側131側が電流の節で最小値になる。このときにも放射が増大する。
図7は、分岐配線121の配線長と、λ/4共振、λ/2共振が起こる共振周波数の対応関係を表すグラフである。分岐配線121の配線長が40mm、60mm、100mmの場合、300MHz、280MHz、210MHzにおいてλ/24共振を起こし、分岐配線121を流れる高周波ノイズが増加する可能性がある。
D.第1の配線基板のバス配線の水平方向の共振の考慮
第1の配線基板110の水平方向の差動信号バス配線143の両端に終端抵抗144R,144Lが配置されている。分岐配線145があることにより、電流は終端抵抗144の設置箇所で最小とならない。そこで、水平方向のバス配線143で共振が発生すると、リターン電流が流れるグラウンド面においても多くの電流が流れ、放射が増大する。水平方向のバス配線143のリターン電流が、分岐配線145の下部にも広がり、コモンモードノイズの要因となる。このため、大きな放射を引き起こす可能性がある。
水平方向のバス配線143の最低次の共振は一端が電流の節、一端が電流の腹となるλ/4共振である。
このとき、分岐配線121の配線長による共振周波数(7b)が上記第1の配線基板の水平方向バス配線の共振の周波数と一致、あるいは低周波化したときに、ノイズ電流が第1の配線基板110のグラウンド内に流れ込み、放射が増加すると予想される。
次に、第1の配線基板110のバス配線143の水平距離を1/4波長とする共振周波数fbus,z1λ/4を求める。
バス配線143の水平方向の長さをlbus,pr、第1の配線基板の比誘電率をεprとする。
bus,pr×√εpr=λ/4
c/√εpr=fbusλ/4×4×lbus,pr
bus,z1λ/4=c/(√εpr×4×lbus,pr) (8)
例えば、バス配線143の配線長の長さが0.12mの場合、バス配線143の水平方向の長さから求められるλ/4共振を起こす周波数fbus,λ/4は、以下のようになる。
bus,λ/4=300/(0.12)/4/√4.6=290[MHz]
分岐配線145の最大値(最長分岐配線長)においてλ/4共振を起こす周波数fbn,λ/4と、バス配線143の水平方向の長さにおいてλ/4共振が起こる周波数fbus,λ/4の関係は以下のようになる。
bn,λ/4(304MHz at 50mm)
≧fbus,λ/4(290MHz)
≧fbn,λ/4(283MHz at 40mm) (9)
分岐配線145の配線長での共振周波数fbn,λ/4がバス配線143の共振周波数fbus,λ/4よりも低くなると、大きな放射ノイズを引き起こすことが確かめられた。すなわち、周波数fbus,λ/4,fbus,λ/4を空気換算長に修正した配線長に書き換え、次の式を満たすようにするとEMIが低減する。
far,air≦lbus,air
(6)式を用いると、FPC配線長50mmの場合、
far,air=265mm
で、FPC配線長40mmの場合、
far,air=247mm
である。
ここで、lbus,air=258mmである。FPC配線長50mmの場合
far,air≧lbus,air
で、放射が増大し、FPC配線長40mmの場合
far,air<lbus,air (10)
のため、放射が増大しない。
F.分岐配線での共振
分岐配線121の配線長が十分短ければ、分岐配線の共振による高周波ノイズが差動信号バス配線143での共振を引き起こさない。この場合、式(4)に示すように、並列のN本の分岐配線121全体でのインピーダンスZbn/Nと、差動信号バス配線143のインピーダンスZ1とを整合させることで放射を低減できる。
しかし、分岐配線121の配線長が長い場合には、最長分岐配線長lfarに対して分岐配線132の抵抗を最適化することが好ましい。
今まで、バス配線143から2N対の分岐配線145を見た場合、バス配線143のインピーダンスと整合させることにより、反射を低減することを試みてきた。
ここで、分岐配線145を左側、右側に分けて考えてきた。この理由は、それぞれ左右に終端抵抗144が配置されていることによる。即ち、分岐配線145の左側において、第1の配線基板110上の差動配線145の1本あたりの特性インピーダンスであるZと、分岐配線145の1本あたりの特性インピーダンスZbnとを整合させる。また、分岐配線145の右側においても同様に、第1の配線基板上の差動配線の1本あたりの特性インピーダンスであるZと、分岐配線1本あたりの特性インピーダンスZbnを整合させる。以上のように、分岐配線145を左側、右側に分けて考えていた。
しかし、分岐配線145の配線長が長くなるにつれて、第1の配線基板110上のバス配線143よりも、分岐配線145の1本の特性インピーダンス、配線長が支配的になる。すなわち、第1の配線基板110上の左右の終端抵抗144が高周波電流の終端抵抗としての機能を十分には果たさなくなる。そうなると、分岐配線145の内、最も長い左右の分岐配線145L(N),145R(N)において、特性インピーダンスの整合をとり、反射を小さくすることで、放射を低減することが必要となってくる。
既述の図3の等価回路に示されるように、構成要素がほぼ左右対称に配置されていることから、左右両方の分岐配線145が共振周波数に影響する。差動信号配線142に対して左右並列に並んだ分岐配線145に対応するインピーダンスZbnが、差動信号バス配線143のインピーダンスZの2倍のときに、インピーダンスが整合し、反射、ひいては放射ノイズが小さくなる。すなわち、次の式(11)が成立する場合である。
= Zbn/2 (11)
例えば、Z=50Ωとすれば、Zbnが100Ωとなる時に放射ノイズが低減する。
図8は、半分岐数N=3(全分岐数2N=6)の配線基板100において、分岐配線121の配線長lFPCを100mmとしたときのインピーダンスZbnの周波数依存性を示す図である。グラフG31、G32がそれぞれ、分岐配線132の抵抗値Rgl=75Ω、100Ωに対応する。
図6、図8から、周波数によっては、必ずしもRglとZbnとが対応しないことが判る。特に、周波数が500MHz以下になるとZbnが増大している。
図8より、周波数280MHz(分岐配線121の配線長が60mmにおいてλ/4共振が起こる周波数(図7参照))で、差動信号バス配線143の特性インピーダンスの2倍の100Ωに近づけるためには、Rglを100Ωとするより、75Ωとする方がよいことがわかる。図5より、分岐配線121の配線長100mmの場合、分岐配線132の抵抗値が75Ω近傍で放射強度が極小となる。
抵抗値Rglの最適値にある程度の範囲を持たせることができ、この範囲で、抵抗値Rglのばらつきを許容できる。図5のグラフより、以下の式(12)となるように、ZbnをRglにより、調整するとよい。
2×0.8×Z<Zbn<2×1.2×Z
1.6×Z<Zbn<2.4×Z (12)
分岐配線145のインピーダンスZbnがバス配線143の特性インピーダンスZよりも小さくなった場合、高周波電流は左右のバス配線143の終端抵抗144側にはほとんど流れず、分岐配線145側に流れることになる。すなわち、式(13)が成立するとき、分岐配線145に多くの高周波電流が流れ、放射が増大する。このため、式(13)の成立は避けるべきである。
>Zbn (13)
現実的には、式(13)に関して、マージンを持たせることにより、制限すべき分岐配線145の特性インピーダンスZbnを設定できる。具体的には、インピーダンスZbnがバス配線143の特性インピーダンスZbnの1.2倍より大きくなるようにする。
1.2×Z<Zbn<2.4×Z (14)
以上のように、式(12)に換えて、式(14)を適用することも可能である。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施の形態を詳細に説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る配線基板200を表す上面図である。
本実施形態では、第1の配線基板110の第1の絶縁層111上に2N対(4N個)のキャパシタ201(201R(201R(1)〜201R(N),201L(201L(1)〜201L(N))が配置される。それぞれのキャパシタ201の一端は2N対の分岐配線145にそれぞれ接続され、他端はスルーホールを経由して、接地電極層(グラウンド面)147に接続される。キャパシタ201は、例えば、チップコンデンサであり、容量Cp[F/m]の容量性部品として機能する。
キャパシタ201によって配線基板200上での特性インピーダンスを整合させることがより容易になる。また、分岐配線121がインダクタンス(L成分)を有する場合には、このL成分とキャパシタ201のC成分とが結合してLCフィルタを構成することができる。このLCフィルタによって、分岐配線145上の高周波ノイズを接地電極層147に流し込むことができる。なお、キャパシタ201を第2の配線基板120の直前に配置すると、そのフィルタ効果を大きく見込むことができる。
これ以外の点では、本実施形態に係る配線基板200は、第1の実施形態に係る配線基板100と本質的に相違する訳ではないので、構成の詳細な説明を省略する。
図10は、配線基板200の等価回路モデルを表す図である。
分岐配線のインピーダンスZ3を求める。
Z3=1/((iωCp)+(1/Z0))
=1/(iωCp+1/(A+iB))
=(A+iB)((1−BωCp)−iωCpA))
/(1−BωCp)+(ωCpA)
=A−iωCp(B+A)/(1−2ωCpB+ωCp(B+A))
|Z3|=(A+ωCp(B+A1/2
/(1−2ωCpB+ωCp(B+A)) (15)
ここで、ω=2πf,A=Rgl、B=2πfLfpc−1/2πfCin
A.キャパシタの最適値
図11〜図13は、分岐配線のインピーダンスZbnの周波数特性を表すグラフである。
図11では、分岐配線121の配線長が60mm、分岐配線132の抵抗Rglが153Ωとしている。グラフG41〜G43がそれぞれキャパシタ201の容量値Cp0pF(キャパシタ無し)、3pF、6pFに対応する。
キャパシタ201の容量値Cpが3pFだと、周波数が100MHz以上で特性インピーダンスが50Ω以上100Ω以下になっている。容量値が6pFだと、周波数が400MHz以上で特性インピーダンスが50Ω以下になっている。
図12では、分岐配線121の配線長が60mm、分岐配線132の抵抗Rglが63Ωとしている。グラフG51〜G53がそれぞれキャパシタ201の容量値Cp0pF(キャパシタ無し)、3pF、6pFに対応する。
図13では、分岐配線121の配線長が60mm、分岐配線132の抵抗Rglが75Ωとしている。グラフG61〜G63がそれぞれキャパシタ201の容量値Cp0pF(キャパシタ無し)、3pF、6pFに対応する。
図14は、キャパシタ201の容量値Cpが0pF、3pF、4pF、6pFにおける配線基板からの水平方向の放射強度の周波数依存性を示すグラフである。図14より、いずれの容量値においても周波数300MHzの放射強度は10dB低減している。しかし866MHzでの放射強度は容量値3pFで7dB低減し、容量値4pF、6pFでは放射強度は低減していない。これから、容量値3pFが300〜1000MHzの放射強度を低減するのに有効であることが判る。
この理由は以下のようである。即ち、キャパシタ201の容量値4pF以上では、周波数300〜1000MHzでのインピーダンスZbnは50Ω以下になり(図10参照)、第1の配線基板110がプリント配線基板の通常の特性インピーダンスと対応する。この場合、差動信号バス配線143(主配線)から分岐配線145に高周波電流が流入し、その高周波電流を起因とする放射強度が増加する。
以上のように、3pFの容量のキャパシタ201によって放射低減を図ることができる。このとき、ある周波数範囲で式(13)を満たすことができる。
B.キャパシタと第3の配線基板上の配線の抵抗値との組み合わせ
図15は、遠方界における水平成分の放射強度の周波数依存性を表すグラフである。
ここでは、分岐配線132の配線長60mm、キャパシタ201の容量値Cpを3pFとして、分岐配線132の抵抗値Rglを153Ω、63Ωと変化させ、EMIシミュレーションを行った。周波数866MHzにおいて、Rglが153Ωの方が63Ωより放射が6dB低減している。
この理由は以下のように説明できる。図11、図12を比較する。抵抗値Rgl=153Ω、容量値Cp=3pFの場合、インピーダンスZbn=60Ωである。一方、抵抗値Rgl=63Ω、容量値Cp=3pFの場合、インピーダンスZbn=50Ωである。即ち、インピーダンスZbnがインピーダンスZ1の2倍である100Ωに近い抵抗値Rgl=153Ω、容量値c=3pFにおいて放射が低減している。
C.キャパシタを用いない方が良い場合
図13に示すように、分岐配線132の配線長100mmで、容量値Cp=3pFの時に、100〜1000MHzの範囲で、特性インピーダンスが大きく変化する。特に、配線長100mmの場合、200MHz〜400MHzにおいて放射が増大するため、図13よりZbnが300〜400MHzにおいて50Ωになるため、高周波電流が多く流れ、放射が増大する
以上のように、本発明の第1、第2の実施形態では、第1の配線基板110上の駆動用IC141、差動信号バス配線143、第2の配線基板120上の分岐配線121、第3の配線基板130上の分岐配線132、レシーバIC131が順次接続されている。このとき、第3の配線基板130上の分岐配線132の抵抗値を調節することで、分岐配線121での反射による高周波ノイズ、ひいては不要放射ノイズを低減できる。
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の第1の実施形態に係る配線基板を表す上面図である。 本発明の第1の実施形態に係る配線基板を切断した状態を表す断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る配線基板の等価回路モデルを表す図である。 本発明の第1の実施形態に係る配線基板の分岐配線、レシーバICの入力部を等価回路として表す図である。 配線基板からの放射強度を測定した結果を表すグラフである。 インピーダンスZbnの周波数依存性を示す図である。 分岐配線の配線長と、λ/2共振が起こる共振周波数の対応関係を表すグラフである。 インピーダンスZbnの周波数依存性を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る配線基板を表す上面図である。 本発明の第2の実施形態に係る配線基板の分岐配線、レシーバICの入力部を等価回路として表す図である。 分岐配線のインピーダンスZbnの周波数特性を表すグラフである。 分岐配線のインピーダンスZbnの周波数特性を表すグラフである。 分岐配線のインピーダンスZbnの周波数特性を表すグラフである。 配線基板からの放射強度の周波数依存性を表すグラフである。 配線基板からの放射強度の周波数依存性を表すグラフである。
符号の説明
100…配線基板、110…第1の配線基板、111…絶縁層、112…絶縁層、120…第2の配線基板、121…分岐配線、122…接地配線、130…第3の配線基板、131…レシーバIC、132…配線、133…接地配線、141…駆動用IC、142…差動配線、143…差動信号バス配線、144…終端抵抗、145…分岐配線、146…接地配線、147…接地電極層、148…電源配線

Claims (6)

  1. 差動信号を供給する出力素子と、
    前記差動信号が供給される一対の接続点を中央部にそれぞれ有する一対のバス配線と、
    前記バス配線それぞれの両端を互いに接続する一対の終端抵抗と、
    前記バス配線の終端と前記接続点との間でそれぞれN対が配置されて、前記バス配線からそれぞれ分岐される2N対の分岐配線と、
    前記2N対の分岐配線とそれぞれ接続される2N個の受信素子と、を具備し、
    前記出力素子から前記受信素子に至る配線の実効長を半波長とする周波数fにおいて、前記バス配線の特性インピーダンスZ1と、前記バス配線からみたときの前記分岐配線および前記受信素子の全体での入力インピーダンスZbnが0.8・Z1≦Zbn/N≦1.2・Z1の関係にあることを特徴とする配線基板。
  2. 第1、第2、第3の絶縁基板をさらに具備し、
    前記バス配線が、前記第1の絶縁基板に配置され、
    前記分岐配線が、前記第1の絶縁基板に配置される第1の分岐配線と、前記第2の絶縁基板に配置される第2の分岐配線と、前記第3の絶縁基板に配置される第3の分岐配線と、を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
  3. 前記入力インピーダンスZbnが次の式で表されることを特徴とする請求項2記載の配線基板。
    Zbn=[(2・π・f・L−1/(2・π・f・Cin))
    +(R+1/(Rin・(2・π・f・Cin)))1/2
    L:第2の分岐配線のインダクタンス
    R:第3の分岐配線の抵抗
    Cin:差動信号入力素子の入力容量
    Rin:差動信号入力素子の入力抵抗
  4. 前記N対の第1の分岐配線と接続される一端をそれぞれ有するN対の容量Cpの容量素子をさらに具備し、
    前記入力インピーダンスZbnが次の式で表されることを特徴とする請求項2記載の配線基板。
    Zbn=(R+ω・Cp・(B+R1/2
    /(1−2・ω・Cp・B+ω・Cp・(B+R))
    ω=2・π・f,B=2・π・f・L−1/(2・π・f・Cin
  5. 差動信号を供給する出力素子と、
    前記差動信号出力素子に電力を供給する電源配線が配置される電源電極層と、
    前記差動信号出力素子を接地するための接地電極層と、
    前記差動信号が供給される一対の接続点を中央部にそれぞれ有する一対のバス配線と、
    前記バス配線それぞれの両端を互いに接続する一対の終端抵抗と、
    前記バス配線の終端と前記接続点との間でそれぞれN対が配置されて、前記バス配線からそれぞれ分岐される2N対の分岐配線と、
    前記2N対の分岐配線とそれぞれ接続される2N個の受信素子と、を具備し、
    前記電源電極層と前記接地電極層との間での共振周波数f1において、前記バス配線の特性インピーダンスZ1と、前記バス配線からみたときの前記分岐配線および前記受信素子の全体での入力インピーダンスZbnが1.6・Z1≦Zbn≦2.4・Z1の関係にあることを特徴とする配線基板。
  6. 前記2N個の受信素子のうち、前記出力素子から最大配線長を持つ素子までの空気換算長をlfar,airとし、水平方向での前記バス配線の配線長の全長の空気換算長をlbus,airとしたとき、lfar,air<lbus,airの関係にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線基板。
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