JP2007095544A - アルカリ二次電池用正極板およびアルカリ二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性の多孔質基板の空孔に、水酸化ニッケルを主体とする活物質粒子を含む正極合剤が充填されているアルカリ二次電池用正極板において、活物質粒子は、水酸化ニッケルを主体とし、当該水酸化ニッケルの一部または全部が高次の水酸化ニッケルに転化している球状の粒子と、水酸化ニッケルを主体とする非球状の粒子とを含むことを特徴とするアルカリ二次電池用正極板。
【選択図】なし
Description
例えばニッケル水素二次電池の場合、まず、負極端子も兼ね、円筒形状をした有底の外装缶の中に電極群が収容される。
この電極群は、発泡ニッケル基板のような導電性の多孔質基板に水酸化ニッケルのような活物質粒子を含む正極合剤が充填されている正極板と、水素吸蔵合金粒子を含む負極合剤を導電シートに塗着して成る負極板とを、両者の間に電気絶縁性と通液性を備えるセパレータを配置した状態で渦巻状に巻回して製造される。
ついで、外装缶の中に、例えばKOH電解液のようなアルカリ電解液の所定量を注液したのち、外装缶の上部開口を正極端子も兼ねる蓋で密封して目的とする電池が組立てられる。
このペースト式の正極板は、概ね次のようにして製造されている。すなわち、例えば水酸化ニッケル単体やこれにCo,Znなどを共晶させた活物質粒子と結着材と水を所定の割合で混合して所定粘度のスラリ状の正極合剤を調製し、この正極合剤を導電性で3次元網状構造の多孔質基板の空孔に充填したのち、圧延・乾燥処理を施し、最後に所定の寸法形状に加工する。
なお、高次化された水酸化ニッケルとは、水酸化ニッケルに酸化処理を施して水酸化ニッケルの一部または全部をオキシ水酸化ニッケルに転化したものであって、ニッケルの価数が水酸化ニッケルにおけるニッケルの価数よりも高次になっている材料のことである。
例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)などの直鎖状の結着材、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)などの親水性樹脂、各種の界面活性剤、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが使用されている。
また、正極合剤のスラリに水酸化コバルトを添加するとスラリの粘度が安定して正極合剤の充填密度は高まるが、その場合、活物質として高次化された水酸化ニッケルを用いると、組み立てた電池の活性化処理前に水酸化コバルトが安定で高次化された状態になってしまい、結局、得られた電池は添加した水酸化コバルトの分だけ容量低下するという問題が発生する。
この場合、2種類の粒子の混合割合を調整することにより、高次化された水酸化ニッケルの表面積が制御できるため、高次化された水酸化ニッケルへの結着材の吸着反応を低減させてスラリの安定性を高めることが可能である。
また、高次化された水酸化コバルトを含むスラリに、更に界面活性剤を添加することが提案されている(特許文献6を参照)。
本発明は、高次の水酸化ニッケルを活物質として含む正極合剤のスラリにおける上記した問題を解決し、スラリの安定性を高め、多孔質基板への均一充填を実現し、もって正極合剤が高密度で充填されているアルカリ二次電池用正極板、およびこれを組み込んだ高容量でしかもサイクル寿命特性が優れているアルカリ二次電池の提供を目的とする。
前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを主体とし、当該水酸化ニッケルの一部または全部が高次の水酸化ニッケルに転化している球状の粒子と、水酸化ニッケルを主体とする非球状の粒子とを含むことを特徴とするアルカリ二次電池用正極板が提供され、
好ましくは、
導電性の多孔質基板の空孔に水酸化ニッケルを主体とする活物質粒子を含む正極合剤が充填されているアルカリ二次電池用正極板において、
前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを主体とし、当該水酸化ニッケルの一部または全部が高次の水酸化ニッケルに転化している球状の第1粒子と、水酸化ニッケルを主体とする球状の第2粒子と、水酸化ニッケルを主体とする非球状の第3粒子とを含むことを特徴とするアルカリ二次電池用正極板が提供され、
より好ましくは、
前記活物質粒子における第1粒子と第2粒子の含有率をそれぞれx質量%、y質量%としたときに、x,yは、次式:
10≦100×x/(x+y)≦40、60≦100×y/(x+y)≦90の関係を満足しているアルカリ二次電池用正極板が提供される。
4≦100×z/(x+y+z)≦12
の関係を満たし、前記正極合剤には、界面活性剤が添加されていることを好適とするアルカリ二次電池用正極板が提供される。
しかしながら、本発明の正極板の場合、活物質粒子として後述の第1粒子と第3粒子、または、第1粒子、第2粒子、第3粒子の3種類の粒子を所定の割合で含むものを用いることが従来とは異なる特徴点である。
第2粒子におけるコバルト化合物層は負荷放置特性改善、放電性の向上のために設けられ、その目的を実現するために、コバルトはその価数が2.8価以上と高次化されている。
正極合材の多孔質基板への充填密度の問題を考えると、その充填密度を高めるためには、正極合剤中の各粒子ができるだけ密に存在していることが好ましい。このようなことから、第2粒子としては、タップ密度が2.30〜2.45g/cm3の範囲にあるものを用いることが好適である。正極合剤の充填密度が高くなるからである。
10≦100×x/(x+y)≦40、60≦100×y/(x+y)≦90の関係を同時に満たすような値に設定される。
すなわち、第1粒子と第2粒子の混合割合では、高次化されて表面が活性になっている第1粒子の相対的な割合を小さくする。このようにすることにより、前記したように、スラリに添加される結着材が第1粒子と相互作用して結着材の機能が減殺されることによって生起するスラリの不安定化を抑制して、正極合剤の多孔質基板への充填性を高めることができ、第1粒子を用いたことによるリザーブ制御のメリットを確保しながら、電池の高
容量化を実現することができる。
配合する界面活性剤の種類は格別限定されるものではなく、例えばアルキルエーテル型、アルキルフェノール型などの非イオン性界面系の界面活性剤が使用でき、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、フェノールエトキシレート等を使用することができる。
しかし、高次化された水酸化ニッケルの表面に対する界面活性剤の作用は強いので、高次化された水酸化ニッケルの表面張力が選択的に小さくなり、その結果、スラリの粘度は大幅に低下してスラリは不安定化する。
このような作用効果を発揮する第3粒子は、活物質粒子におけるその含有率をz質量%としたときに、zは、次式:
4≦100×z/(x+y+z)≦12の関係を満たす値であることが好ましい。
そして、この正極板を組み込むことにより、注液するアルカリ電解液の流量をVe(ml)とし、また組立てた電池の0.2C容量をQ(Ah)としたとき、Ve/Qで示される容量液比が0.85ml/Ah以下という生産効率の高いニッケル水素二次電池を製造することができる。それは、体積エネルギ密度が340〜500Wh/lという形状特性の良好な電池でもある。
表面が水酸化コバルトで被覆されている平均粒径10μmの球状の水酸化ニッケル粒子を空気中で熱アルカリ処理することにより、コバルトの価数が3.2価に高次化された第2粒子を製造した。
この第2粒子の一部を分取し、それを濃度10%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に投入し、温度60℃で所定時間撹拌して、水酸化ニッケルの一部を酸化することにより、ニッケルの平均価数が2.3価に高次化された水酸化ニッケルから成る第1粒子を製造した。
これらの粒子を、表1で示す割合で混合して全体で100質量部とし、これに対しカルボキシメチルセルロース(結着材)を0.18質量部添加して混合した。更に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)を表1で示した割合で添加したのち、水30質量部を添加して混合し、スラリを調製した。
ついで、調製した各種組成のスラリを発泡ニッケル板に充填し、乾燥したのちロール圧延を行って実施例1の正極板を製造した。
公知の組成の水素吸蔵合金粉末を使用し、親水性樹脂から成る結着材を0.3質量%添加、混合し、更に30質量部の水に加えて混錬することによりスラリを調製し、このスラリをパンチドメタルから成る芯体に塗布、乾燥、圧延することにより負極板を製造した。
上記のようにして製造した正極板と負極板を、セパレータを介して渦巻状に巻回して電極群を製造し、これを有底外装缶の中に収容し、アルカリ二次電解液を注液したのち封口することにより、AA型2700mAhのニッケル水素二次電池(アルカリ二次電池)を組み立てた。このニッケル水素二次電池に所定の条件で活性化処理を施し、実施例1のアルカリ二次電池とした。
(1)正極合剤の充填密度
実施例1〜8、比較例1〜4の正極板につき、正極合剤の充填密度を計算し、結果を表1に示した。
充填密度は、発泡ニッケル板の全空孔容積をS(cm3)とし、正極合剤の充填量をM(g)としたとき、M/Sで表してある。その場合、正極合剤の充填量は正極板全体の質量から基板の質量を減算した値とし、また基板の全空孔容積は、正極板の全体積から、基板の質量を当該基板材料の比重で除算した値を減算した値を用いた。
製造歩留りは上記したようにして製造した正極板を用いてアルカリ二次電池を組み立てるときに、電池組み立て時に使用した正極板の数に占める、活性化終了後に最終的に良品電池として得られたアルカリ二次電池数の百分率、すなわち、(最終良品電池数/極板裁断枚数)×100(%)で定義した。
初期活性化処理を施した各電池についてサイクル寿命特性を評価し、その結果を表1に示した。
サイクル寿命特性は、サイクルごとに放電容量を測定し、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%以下になるサイクル数をサイクル寿命として計数した。
なお、条件は、充電:1C(−ΔV、10mV)カット、休止:30分、放電:1C、1Vカット、休止:30分である。
(1)実施例1〜8は、比較例1〜4に比べて製造歩留りが優れていることがわかる。
(2)また、実施例の正極板の場合、正極合剤の充填密度を3.20g/cm3以上に高密度化することが可能になっている。また、この正極板が組み込まれているアルカリ二次電池はサイクル特性に優れていることがわかる。
Claims (8)
- 導電性の多孔質基板の空孔に、水酸化ニッケルを主体とする活物質粒子を含む正極合剤が充填されているアルカリ二次電池用正極板において、
前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを主体とし、当該水酸化ニッケルの一部または全部が高次の水酸化ニッケルに転化している球状の粒子と、水酸化ニッケルを主体とする非球状の粒子とを含むことを特徴とするアルカリ二次電池用正極板。 - 導電性の多孔質基板の空孔に水酸化ニッケルを主体とする活物質粒子を含む正極合剤が充填されているアルカリ二次電池用正極板において、
前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを主体とし、当該水酸化ニッケルの一部または全部が高次の水酸化ニッケルに転化している球状の第1粒子と、水酸化ニッケルを主体とする球状の第2粒子と、水酸化ニッケルを主体とする非球状の第3粒子とを含むことを特徴とするアルカリ二次電池用正極板。 - 前記活物質粒子における第1粒子と第2粒子の含有率をそれぞれx質量%、y質量%としたときに、x,yは、次式:
10≦100×x/(x+y)≦40、60≦100×y/(x+y)≦90の関係を満足している請求項2のアルカリ二次電池用正極板。 - 前記活物質粒子における前記第3粒子の含有率をz質量%としたときに、zは、次式:
4≦100×z/(x+y+z)≦12
の関係を満たしている請求項1〜3のいずれかのアルカリ二次電池用正極板。 - 前記正極合剤には、界面活性剤が添加されている請求項1〜4のいずれかのアルカリ二次電池用正極板。
- 前記多孔質基板の全空孔容積をS(cm3)、前記正極合剤の充填量をM(g)としたとき、M/Sで示される前記正極合剤の充填密度が3.20〜3.40g/cm3である請求項1〜4のいずれかのアルカリ二次電池用正極板。
- アルカリ電解液と、請求項1〜6のいずれかの正極板と、負極板とをセパレータを介して積層して成る電極群が、有底外装缶に封入されているアルカリ二次電池において、
前記アルカリ電解液の液量をVe(ml)、組立てた電池の0.2C容量をQ(Ah)としたときに、Ve/Qで示される容量液比が0.85ml/Ah以下であるアルカリ二次電池。 - 体積エネルギ密度が340〜450Wh/Lである請求項7のアルカリ二次電池。
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