JP2007090770A - 芳香族ポリイミドフィルム及び該ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリイミドフィルム及び該ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本願発明は、芳香族ポリイミドフィルムの表面突起粒子径を小さくし、しかも、十分なすべり性及びフィラーの脱落を防止することの出来る芳香族ポリイミドフィルム及び該ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【解決手段】
少なくとも熱可塑性ポリイミド樹脂層と耐熱性ポリイミドフィルム層を積層した芳香族ポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミドフィルム層に、平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子が各粒子の一部をそれぞれ埋設させて保持されていて、一部露出した前記無機質粒子からなる多数の突起が該フィルムの表面層の全域にわたって1×10〜5×108個/mm2の割合で均一に形成されていることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムを用いることにより上記課題を解決しうる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表面に微小突起が形成された芳香族ポリイミドフィルムに関するものであり、特に芳香族ポリイミドフィルム表面の微細突起径が小さく、フィルムのすべり性が充分あり、しかも、フィラーの脱落の無い芳香族ポリイミドフィルムに関する。
近年、フレキシブル金属積層板のベースフィルム(以下FPC用ベースフィルムと略す)表面に形成される電気配線間の線幅は非常に細線になってきており、微細な配線を形成するためのベースフィルムとしては、1)表面突起径が小さく出来る限り平滑で、2)ポリイミドフィルムのすべり性に優れ、しかも、3)フィルム表面のフィラーの脱落の生じないポリイミドフィルムが望まれている。
1)表面突起径が大きい場合には、微細な配線を形成した際に、配線間の巨大な突起が電気絶縁信頼性を低下させるだけでは無く、電気配線が突起により剥離する等の種々の問題を引き起こすことになる。
2)ポリイミドフィルムのすべり性が充分でない場合にはポリイミドフィルムを用いる際に搬送性が低下するために、充分なすべり性を有することが望ましい。
3)フィルム表面のフィラーが脱落する場合にはフィラーによる汚染が問題となる。
しかし、上記問題点を解決するために、ポリイミドフィルムの表面突起径を小さくさせるとフィルムのすべり性が低下してフィルムの安定した搬送が行えない問題が発生することが知られている。従来より用いられてきたポリイミドフィルム内に添加されている無機質粒子は粒子径が大きく、例えば、特許文献1には粒子が1〜5μmを主体とした無機粉体を、対フィルム樹脂重量当り、0.1乃至0.5重量%含む芳香族非熱可塑性ポリイミドフィルムが記載されている。このように大きな粒子を含有させることはすべり性を向上させる最適な方法であるが前述の表面突起径を小さくするには有効な手段ではなかった。
さらに、特許文献2には、ポリイミドフィルムの表面層に平均粒子径が0.01〜100μmである無機質粒子各粒子の一部をそれぞれ埋没させて保持されていて、一部露出した無機質粒子からなる多数の突起が表面層の全域にわたって均一に形成されているポリイミドフィルムが記載され、無機質粒子としてシリカが例示されている。特許文献2に記載されたフィルムは、フィルム内に内填された無機質粒子では十分な易滑性を付与したポリイミドフィルムが製造できない為、金属粒子を含有するバインダー樹脂を表面に積層する方法が提案されているが、本方法で製造されたポリイミドフィルムは表面に充分に接着していない無機微粒子が存在し、該微粒子がはずれて電気特性に影響する問題があった。
また、特許文献3には、脱水剤および触媒を含有する芳香族ポリアミド酸の有機極性溶媒溶液を、閉環イミド化して得られた、10〜90重量%の揮発物を含有する芳香族ポリイミドゲル化フィルムの少なくとも片面に、無機質粒子を含有する芳香族ポリアミド酸溶液からなるコーティング組成物を塗布し、得られた積層物を50〜200℃の温度で乾燥し、次いで300℃以上の温度での熱処理段階を含む熱処理に付することにより、表面粒子径の小さいポリイミドフィルムの製造方法が記載されている。
しかし、ゲルフィルム表面に無機質粒子を含有するポリアミド酸溶液を塗布した場合には、例えば熱融着性を有するポリイミド樹脂層を表面にコーティングさせる際には充分に内部ポリイミド層を焼成できない問題があり、無機質粒子を含有する表面層と内部のポリイミドフィルム層との接着力が充分ではない問題があった。
特公平6―65707 特開平5−25295 特公平6−55491
本願発明は、芳香族ポリイミドフィルムの表面突起粒子径を小さくし、しかも、十分なすべり性及びフィラーの脱落を防止することの出来る芳香族ポリイミドフィルム及び該ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
上記問題点を解決するための手法としては、
少なくとも熱可塑性ポリイミド樹脂層と耐熱性ポリイミドフィルム層を積層した芳香族ポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミドフィルム層に、平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子が各粒子の一部をそれぞれ埋設させて保持されていて、一部露出した前記無機質粒子からなる多数の突起が該フィルムの表面層の全域にわたって1×10〜5×108個/mm2の割合で均一に形成されていることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムを用いる。さらには、耐熱性ポリイミドフィルム表面に平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子を分散させた耐熱性ポリイミド樹脂溶液/もしくは耐熱性ポリイミド樹脂の前駆体である熱可塑性ポリアミド酸溶液を塗布して乾燥させて、熱可塑性樹脂を積層した耐熱性ポリイミドフィルムを高温度で加熱処理することを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムの製造方法を用いて製造されるポリイミドフィルムを用いる。
本発明によれば、フィルム表面の表面粒子径を小さくし、しかも、フィルムの静摩擦係数が小さく、易滑性を有し、フィラーの脱落の無いポリイミドフィルムを得ることができる。
本発明は、少なくとも熱可塑性ポリイミド樹脂層と耐熱性ポリイミドフィルム層を積層した芳香族ポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミドフィルム層に、平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子が内在されており前記無機質粒子からなる多数の突起が該フィルムの表面層の全域にわたって1×10〜5×108個/mm2の割合で均一に形成されていることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムに関する。さらには、耐熱性ポリイミドフィルムの片面もしくは両面に平均粒子径が0.004〜10μmである無機質粒子を分散させた耐熱性ポリイミド樹脂溶液/もしくは耐熱性ポリイミド樹脂の前駆体である熱可塑性ポリアミド酸溶液を塗布して乾燥させて、熱可塑性樹脂を積層した耐熱性ポリイミドフィルムを高温度で加熱処理することを特徴とする芳香ポリイミドフィルムの製造方法を用いて製造されるポリイミドフィルムに関する。本願発明に関する詳細を下記に記載する。
(1)熱可塑性ポリイミド樹脂
本願発明で用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂とは、最終的なポリイミド樹脂体としてそのガラス転移温度が350℃以下のポリイミド樹脂を差し、ガラス転移温度は公知公用の方法を用いて測定した値を使用することができる。例えば、DSC装置を用いてフィルムのガラス転移温度を測定した値をガラス転移温度とする。本願発明に好適に用いることのできる熱可塑性ポリイミド樹脂は、上記ガラス転移温度が350℃以下、好ましくは330℃以下である熱可塑性ポリイミド樹脂を用いることが、例えば銅箔との加熱・加圧接着を行う上で望ましい。
(熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液の調整方法)
本発明で用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液の調整方法について説明する。本発明に用いられるポリアミド酸は、有機溶剤中でジアミン化合物と酸二無水物とを反応させることにより得られるポリアミド酸溶液の形で重合されることが望ましい。
本願発明で用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミド酸を溶解するものであれば特に限定されない。つまり、ポリアミド酸溶液を溶解する溶液であれば例えば、2種類以上の有機溶剤を混合した有機溶剤溶液を用いた溶液でも問題はない。
本発明の方法で用いられる酸二無水物は特に限定されず、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物、あるいは脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物など任意の酸二無水物が用いられ得る。ここで、定義上、「芳香族テトラカルボン酸二無水物」とは、分子内に少なくとも1つの芳香族基を有するものをいい、「脂肪族テトラカルボン酸二無水物」とは、分子内に脂環式基および芳香族基を有さないものをいい、そして、「脂環式テトラカルボン酸二無水物」とは、分子内に少なくとも1つの脂環式基を含み、かつ芳香族基を有さないものをいう。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物(以下PMDAと略す)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下BTDAと略す)、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下BPADAと略す)、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3',4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAと略す)、2,3',3,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下a−BPDAと略す)、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリメリット酸物エステル酸無水物)(以下TMHQと略す)、m−フェニレン−ビス(トリメリット酸物エステル酸無水物)、4,4'−ビス(トリフェニルフタル酸)−ジフェニルエーテル二無水物、4,4'−ビス(トリフェニルフタル酸)−ジフェニルメタン二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(以下ESDAと略す)、3,3´,4,4´−エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGと略す)などが挙げられる。
あるいは、芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物、例えば、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンなどを挙げることができる。
脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
上記のような酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
中でも、本願発明の熱可塑性樹脂に好適に用いられる酸二無水物は、PMDA,BTDA,BPADA,BPDA,a−BPDA,TMHQ,ESDA、TMEGが熱融着性と耐熱性を両立する上で望ましい。
本発明の方法で用いられるジアミンは、種々ジアミンを用いることができる。本発明によれば、芳香族ジアミンおよび脂肪族または脂環式ジアミンなどの任意のジアミンが用いられ得る。ここで、定義上、「芳香族ジアミン」とは、分子内に少なくとも1つの芳香族基を有するものをいい、「脂肪族ジアミン」とは、分子内に脂環式基および芳香族基を有さないものをいい、そして、「脂環式ジアミン」とは、分子内に少なくとも1つの脂環式基を含み、かつ芳香族基を有さないものをいう。
芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン(以下PDAと略す)、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下3,4'−ODAと略す)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下4,4'−ODAと略す)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン(以下BAPS-Mと略す)、2,2'−ビス〔4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPと略す)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(以下、HABと略す)、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3'−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4'−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノ−5,5'−ジメトキシビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下APBと略す)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4'−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4'−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2'−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどが挙げられる。また、ジアミノテトラフェニルチオフェンなどの芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミンも挙げられる。
脂肪族または脂環式ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などのジアミンが挙げられる。
上記のようなジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本願発明に特に好適に用いることのできるジアミン成分は、3,4'−ODA、4,4'-ODA、BAPS-M、BAPP、APB、HABが好適に用いられる。
つまり、本願発明に好適に用いることのできる酸二無水物とジアミンの組み合わせは、酸二無水物として少なくともPMDA,BTDA,BPADA,BPDA,a−BPDA,TMHQ,ESDA、TMEGから選ばれる1種類以上を用い、さらに、ジアミンとして少なくとも3,4'−ODA、4,4'-ODA、BAPS-M、BAPP、APB、HABから選ばれる1種類以上のジアミンを用いることが望ましい。当然の事ながらこれらの酸二無水物およびジアミン以外にもこれまでに記載している酸二無水物およびジアミンより適宜選択して熱可塑性ポリイミド樹脂を製造することが望ましい。
重合反応に用いられる装置は、公知公用の反応装置を用いることができるが、ポリアミド酸溶液の調製時には反応熱が発生するために、温度管理を厳密に行う為にも、反応装置には反応温度を管理する装置および反応温度を制御する装置が設置されていることが望ましい。また、反応装置内部は、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性雰囲気ガスを導入し、不活性雰囲気としていることが望ましい。
本願発明のジアミン化合物と酸二無水物類の反応は、公知公用の方法を用いて実施する事ができる。例えば、(A)ジアミン成分−1及びジアミン成分−2を有機極性溶媒中に先に加えておき、ついで酸二無水物成分を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。また、(B)ジアミン成分−1を有機極性溶媒中に先に加えておき、酸二無水物成分を加えそのあとジアミン成分−2を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。(C)ジアミン成分−1を有機極性溶媒中に先に加えておき、ついで酸二無水物成分−1を加え、ついで酸二無水物−2を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。また、(D)ジアミン成分−1とジアミン成分−2を有機極性溶媒中に先に加えておき、酸二無水物成分−1を加え、ついで酸二無水物−2を加え、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。
上記の添加方法を逆にし、酸二無水物を先に加え、ジアミン成分を後に加えるようにしても実質上は同じである。
また、完全にランダム重合体を調製する方法として、例えば、(E)少なくとも1種類のジアミン成分を有機極性溶剤中に溶解させておき、該溶液中に少なくとも1種類の酸二無水物を添加溶解させて重合反応を行う方法、(F)少なくとも1種類以上の酸二無水物を溶解或いはスラリー状に分散させておき、該溶液中に少なくとも1種類以上のジアミンを添加溶解させて重合反応を行う方法などが用いられる。
この時の反応温度は、−20℃〜90℃が望ましい。反応時間は30分から24時間程度である。ポリアミド酸溶液の最終粘度は、23℃に保温された水浴中で1時間保温し、その時の粘度をB型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定を行いその粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは10Pa・s以上500Pa・s以下、最も好ましくは20Pa・s以上350Pa・s以下であることが最終的に耐熱性ポリイミドフィルム表面にコーティングしてフィルムに成形するときに取り扱い易く好ましい。また、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の固形分濃度は、5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%であることが好ましく、さらには13〜25wt%であることが好ましい。上記範囲内であれば、塗布溶液として用いる際に、取扱いやすくなる傾向にある。ポリアミド酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で5000〜1000000であることが望ましい。平均分子量が5000未満では、最終的な熱可塑性ポリイミド樹脂として成形した際に、分子量も低くなり、その樹脂が脆くなり好ましくない、一方、1000000を越えるとポリアミド酸ワニスの粘度が高くなりすぎ取扱いが難しくなって好ましくない。
(熱可塑性ポリイミド樹脂へのフィラーの充填方法)
本願発明のポリイミドフィルムを成形する上で、該熱可塑性ポリイミド樹脂内部に無機微粒子からなるフィラーを含有させておくことが好ましく、熱可塑性ポリイミド樹脂に含有される無機質粒子 は、0.004〜1.0μmの範囲内、特に好ましくは0.01〜1.00μmの範囲内の平均粒子径を有するものである。
このような無機質粒子 としては、上記のような平均粒子径を有する限り、シリカ、二酸化チタン、酸化アルミニウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイト、その他の不活性無機物質の微粒子を使用することができる。しかしながら、一般的にこれら無機物質の微粒子を得ることは難しく、上記不活性無機質粒子 としては、コロイダルシリカ、シリカ、二酸化チタンが最も好ましい。
また、本願発明で用いられるコロイダルシリカは水(またはアルコールまたは両者の混合物)分散ゾル中で、平均粒子径0.1μm以下の超微粒子状態で分散しており、これらの分散ゾル中の水およびアルコールを有機極性アミド系溶剤、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等で置換して得られたコロイダルシリカ有機極性アミド系溶剤分散ゾルの形で使用すると、有機極性アミド系溶剤中及び芳香族ポリアミド酸溶液中でも、その粒子径分布は余り変化しないため、前記コーティング組成物中でコロイダルシリカは上記超微粒子状態を維持することができるのである。
コロイダルシリカは通常、水分散ゾル、アルコール分散ゾル(例、メタノールなどの低級アルコールに分散された状態のゾル)などとして入手できる。その具体例としては、スノーテックス[日産化学工業(株)製]あるいはカタロイド[触媒化成工業(株)製]として販売されている各種グレード品を挙げることができる。
これらの水分散コロイダルシリカまたはアルコール分散コロイダルシルカは、有機極性アミド系溶剤で希釈し、必要に応じて減圧蒸留などの方法で脱水または脱アルコールするか、または水分散ゾルまたはアルコール分散ゾルの水またはアルコールを除去しながら有機極性アミド系溶剤を加えて、水またはアルコールを有機極性アミド系溶剤で置換して使用することが好ましい。
また、これらは必要に応じて機械的分散あるいは超音波分散を施し、また濾過、遠心分離等により分級して使用することができる。
本発明において、熱可塑性ポリイミド樹脂内の前記無機質粒子含有量は 熱可塑性ポリイミド樹脂もしくはポリアミド酸に対して、0.001〜1.0重量%、特に、0.01〜0.50重量%含有するものであることが好ましい。無機質粒子 の含有量が、上記範囲よりも少ないと、この組成物を用いて製造された芳香族ポリイミドフィルム の表面に充分な滑り性が付与され難い。また、無機質粒子 が上記範囲よりも多いと、無機質粒子 が重なりやすく、そのため芳香族ポリイミドフィルム 表面に形成される微小突起が不均一になり、さらにコーティング皮膜の機械的性質を損ねるなどの欠点が生ずる恐れがある。
組成物の製造方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、前記のようにして得られたコロイダルシリカ有機極性溶媒分散液に直接、芳香族テトラカルボン酸成分および芳香族ジアミン成分などの原料モノマーを添加して重合し、芳香族ポリアミド酸溶液にして、ポリアミド酸溶液を得ても良い。あるいは芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分のモル比を等量にせずに重合して低粘度の溶液を得て、これに前記コロイダルシリカ分散液を加えて、均一に攪拌した後、不足する成分を加えてさらに重合することによって芳香族ポリアミド酸溶液にしても良い。さらにまた、あらかじめ重合して得た芳香族ポリアミド酸に前記コロイダルシリカ分散液を加えて攪拌してポリアミド酸溶液を製造しても良い。
このように、コロイダルシリカ分散液は熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸溶液の製造工程のどこ段階においても任意の段階で添加することができる。
コロイダルシリカ以外の無機質粒子 を用いる場合にも上記と同様な方法を使用することが好ましい。
(熱可塑性ポリイミド樹脂溶液の調整方法)
本願発明においては、上記のポリアミド酸溶液を耐熱性ポリイミドフィルム表面に直接に積層して用いることもできるが、ポリアミド酸溶液を一度イミド化を行い、イミド化した熱可塑性ポリイミド樹脂を積層して用いることも可能である。特に、上記ポリアミド酸溶液をイミド化する方法としては、公知効用の方法を用いてイミド化することができる。中でも、(A)ポリアミド酸溶液を減圧下で加熱乾燥しながら、直接イミド化する熱イミド化方法や、(B)脱水剤及び触媒を添加した後、加熱することなくポリイミド樹脂を有機溶剤中から抽出して、再度ポリイミド溶液を得る方法、(C)脱水剤及び触媒を添加した後、200℃以下の温度で加熱してイミド化反応を促進し、ポリイミド樹脂を有機溶剤中から抽出して、再度ポリイミド溶液を得る方法、(D)脱水剤及び触媒を添加した後、加熱もしくは加熱することなくイミド化反応を進めた後に、抽出することなくイミド化溶液として用いる方法、(E)触媒を添加した後に、200℃以下で加熱を行いポリイミド溶液を得る方法、(F)触媒を添加した後に、200℃以下で加熱を行いポリイミド溶液を得、該ポリイミド溶液からポリイミド樹脂を抽出した後に再度、有機溶剤に溶解する方法などが用いられる。
熱イミド化反応を用いてポリイミド樹脂を得る具体的な方法について説明する。減圧下、加熱乾燥できるなら方法は問わないが、バッチ式の方法として、真空オーブン、連続式の方法として、例えば減圧装置の付随した2軸或いは3軸押出し機により実施できる。これらの方式は、生産量により選択される。ここでいう減圧装置の付随した2軸或いは3軸押出し機とは、熱可塑樹脂を加熱溶融押出しを行う、一般的な溶融押出し機に減圧して溶媒を除去する装置を付随させたものである。2軸あるいは3軸の押出し機によりポリアミド酸溶液が、押出し機により混練されながら溶媒とイミド化時に生成した水を除去され、熱可塑性ポリイミド となる。この熱可塑性ポリイミド樹脂を再度有機溶剤中に溶解することで本願発明に用いることの出来るポリイミド樹脂溶液を調整することができる。尚、上記熱イミド化反応としては、トルエン・キシレン等の共沸溶媒を加え共沸によりイミド化反応により生成する水分を除去する方法でポリイミド樹脂溶液を製造することも可能である。
また、化学イミド化反応を用いてポリイミド樹脂溶液を得るには、無水酢酸等の脂肪族酸二無水物とトリエチルアミン・ピリジン・ピコリン・イソキノリン等の3級アミンを加えて加熱攪拌することでイミド化反応を行い、例えばメタノールやブタノール等のポリアミド酸に対して貧溶媒となる溶液中に投入してイミド樹脂を抽出して、抽出したポリイミド樹脂を再度有機溶剤溶液に溶解させる方法がある。
(2)耐熱性ポリイミドフィルム
本願発明における耐熱性ポリイミドフィルムとは、下記ポリアミド酸溶液を調整した後に下記フィルム製造方法にて製造されるポリイミドフィルムである。
(A)ポリアミド酸
本発明における耐熱性ポリイミドフィルム用のポリアミド酸は、芳香族テトラカルボン酸成分および芳香族ジアミン成分から得られる。本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸とは、下記の一般式(2)で示すように、2つの無水ジカルボン酸構造を含む構造を有している。
Figure 2007090770
上記一般式(2)中のR1は、少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基であることが好ましいが、より好ましい構造としては、下記の一般式群(3)に示す芳香族残基が挙げられる。
Figure 2007090770
なお、上記一般式群(3)の芳香族残基に含まれる4価の構造上の位置は特に限定されるものではなく、上記各一般式中では、説明の便宜上、価を示す結合線は図示していないが、上記4価のうち、2価づつが対をなしている構造であることがより好ましい。
また、上記一般式群(3)の芳香族残基中のR2は、ベンゼン環またはナフタレン環を含む下記の一般式群(4)より選択される2価の有機基であることが好ましい。
Figure 2007090770
なお、上記一般式群(4)中のR3は、H−、CH3−、Cl−、Br−、F−、CH30−からなる群より選択される何れか1つの基であればよい。
上記構造を有する酸二無水物の具体的な例としては、例えば、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン―3,4,3’,4’―テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物,1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン酸二無水物が挙げられる。
耐熱性ポリイミドに用いられる芳香族ジアミンとは、下記の一般式(5)で示すように、2つのアミノ基を含む構造を有している。
Figure 2007090770
上記一般式(5)中のR4は、少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基であることが好ましいが、より好ましい構造としては、下記の一般式群(6)より選択される2価の有機基が挙げられる。
Figure 2007090770
なお、上記一般式群(6)中のR5は、H−、CH3−、Cl−、Br−、F−、CH30−からなる群より選択される何れか1つの基であればよい。
上記構造を有するジアミンの具体的な例としては、例えば、o−、m−またはp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジトリフルオロメチルベンジジン等の芳香族ジアミン、が挙げられる。特に耐熱性を付与する上でジアミン成分としては、p−フェニレンジアミンもしくは、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの内少なくとも一種を必須成分として含むポリイミドフィルムであることが望ましい。
ポリアミド酸溶液は、有機溶媒中にて一般式(2)記載の芳香族テトラカルボン酸二無水物類を少なくとも1種類以上と一般式(5)記載の芳香族ジアミン化合物類を少なくとも1種類以上とを選び、おおよそ等モル反応させポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を作製する。芳香族テトラカルボン酸二無水物類と芳香族ジアミン化合物類の混合割合は0.85〜1.15が好ましく、0.85以下の割合では臨界分子量以下となり、ポリイミドフィルムに成形した際に、剛性を充分に発現せずフィルム成型体への成型が困難になる。また、1.15以上になるとポリアミド酸溶液中に過剰の芳香族テトラカルボン酸二無水物が多く残り種々のカルボン酸に起因する問題が発生する。例えば、カルボン酸がポリイミドフィルム内に多く残る場合には、ポリイミドフィルムの加水分解速度が加速される問題があり、ポリイミドフィルムの安定性が低下する問題ある。その為に、実質的には等モルで合成するのが望ましい。
尚、本願発明に好適に用いることのモノマーの選定は、ポリイミドフィルムの引張り弾性率が4.2GPa以上6.9GPa以下であり、引張り伸び率が10%以上200%以下のポリイミドフィルムを用いることが好ましい。つまり、剛直な構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物もしくは剛直な構造を有する芳香族ジアミンの内どちらかの成分を必須成分として含有していることが耐熱性ポリイミドフィルムとして用いる場合には望ましい。
以下に重合方法の詳細を記述する。
本発明のポリアミド酸の重合に使用される有機溶媒としては、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−メチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いて良い。これらのうちDMF、DMAcなどのアミド類が好ましく使用される。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、特に好ましい重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。
生成する有機溶媒中のポリアミド酸の固形分濃度は、有機溶媒中にポリアミド酸が5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%、更に好ましくは、13〜25wt%溶解されているのが取り扱い面から好ましい。ここで、上記固形分濃度とは、ポリアミド酸溶液に含まれる重合用溶媒を除いた不揮発性成分全体の濃度を指すが、実質的には、ポリアミド酸溶液に含まれるポリアミド酸の濃度を指すことになる。したがって、ポリアミド酸溶液の総重量をWsとし、ポリアミド酸溶液に含まれるポリアミド酸の重量をWpとした場合に、上記固形分濃度Cは、次式(iii)で算出される。
固形分濃度C=(Wp/Ws)×100 ・・・(iii)
尚、ポリアミド酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で10000以上である方がフィルム物性上好ましい。
また、上記ポリアミド酸溶液の粘度は、23℃に保温された水浴中で1時間保温し、その時の粘度をB型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定を行いその粘度が50Pa・s以上1000Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは100Pa・s以上500Pa・s以下、最も好ましくは200Pa・s以上350Pa・s以下であることがフィルム成形体を作製する際に取扱う上で最も好ましい。
このポリアミド酸の製造には1つの反応装置で1段階で重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を生成することが好ましく、1段階で重合反応を行うためには、重合反応におけるモノマー成分からの不溶解原料や混入異物を取り除く為に、反応容器に添加直前にモノマーを有機溶媒中に溶解してフィルター等にて混入異物を取り除く工程を設けると、フィルム中の異物・欠陥を減少させることが可能である。或いは直接に粉末を篩にかけて直接に混入異物を取り除く工程設けてフィルム中の異物・欠陥を減少させた後に重合反応を行うことが好ましい。上記フィルターの目開きは、取得フィルム厚みの1/2、好ましくは1/5、更に好ましくは1/10が良い。なぜなら、不溶解原料や混入異物に起因する欠陥がポリイミドフィルム表面に存在するとポリイミドフィルム上への熱可塑性ポリイミド樹脂の積層工程後に耐熱性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミド樹脂の間の接着性が低下するからである。
また、このポリアミド酸有機溶媒溶液には必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、或いは、各種の強化剤を添加してもよい。
ポリアミド酸の重合反応時には、重合温度が高い場合にはポリアミド酸溶液の分解反応が進行しやすくなり、ポリアミド酸溶液の重合反応が進行しない問題が生じる。また、ポリアミド酸溶液の重合反応温度が低い場合には、芳香族テトラカルボン酸無水物もしくは芳香族ジアミンの溶解量が低下するので重合反応斑が発生することになるので、反応溶液の液温は60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましく、30℃以下であることが特に好ましい。
さらに、本発明にかかるポリアミド酸溶液に含まれているポリアミド酸は2種類以上であってもよい。例えば、本発明にかかる製造方法で製造したポリアミド酸溶液に、他の重合反応で製造したポリアミド酸溶液を添加して混合することで、2種以上のポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液とにしてもよい。また、ポリアミド酸重合工程における諸条件を変化させて、本発明にかかる製造方法を実施し、得られた平均分子量等が異なるポリアミド酸溶液を混合してもよい。
ただし、上記複数種類のポリアミド酸溶液を混合する場合には、ポリアミド酸の末端基の種類が一致している必要がある。具体的には、ポリアミド酸の末端基は、酸である場合とアミンである場合があるが、互いに混合可能なポリアミド酸は、酸末端のポリアミド酸同士、またはアミン末端のポリアミド酸同士であり、酸末端のポリアミド酸とアミン末端のポリアミド酸とは混合できない。
(ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明における耐熱性ポリイミドフィルムは、熱的に脱水閉環する熱的方法、脱水剤を用いる化学的方法の何れでも良いが、化学的方法によると生成するポリイミドフィルムの伸び率や引張強度等の機械的特性が優れ、短時間でイミド化する事ができる等の利点がある。尚、熱的方法と化学的方法を併用することもできる。
ポリアミド酸の有機溶媒溶液からポリイミドフィルムを製造する代表的な方法としては、上記ポリアミド酸の有機溶媒溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒を加えた混合溶液をスリット付き口金からドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延塗布してフィルムに成形し、支持体上で200度以下1〜20分間で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体よりフィルムを引き剥がす。次いで、フィルムの両端部を固定する。その後100度〜600度まで徐々にもしくは段階的に加熱することによりイミド化を進行させ、徐冷後、端部の固定を取り外しポリイミドフィルムを得る化学的閉環法。及び脱水剤と触媒を含有しないポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付き口金からドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延塗布してフィルムに成形し、支持体上で200度以下、1〜20分間で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体よりフィルムを引き剥がす。次いで、フィルムの両端部を固定する。その後100度〜600度まで徐々にもしくは段階的に加熱することによりイミド化を進行させ、徐冷後端部の固定を取り外しポリイミドフィルムを得る熱的閉環法がある。これら化学的閉環法及び熱的閉環法を併用することも可能である。
化学的閉環法に用いられる脱水剤としては、有機酸無水物、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、脂環式酸無水物、複素環式酸無水物またはそれらの二種以上の混合物が挙げられる。この有機酸無水物の具体例としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、ギ酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、安息香酸無水物、無水ピコリン酸などが挙げられる。特に、無水酢酸が好ましい。触媒としては、有機第三級アミン、例えば、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミンまたはそれらの二種以上の混合物があげられる。この有機第三級アミンの具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、β−ピコリン、イソキノリン、キノリンなどが挙げられる。特に、イソキノリンが好ましい。
上記芳香族ポリアミド酸溶液に脱水剤および触媒を添加混合する順序は特に限定されない。例えば、ポリアミド酸溶液に触媒、脱水剤の順に添加してもよく、脱水剤、触媒を均一に混合したものを添加してもよい。脱水剤、触媒以外に、更に遅延剤(例えば、アセチルアセトン)の如き第三成分を添加してもよい。
脱水剤及び触媒をポリアミド酸有機溶媒溶液と混合する前にフィルター等にて不溶解原料や混入異物を取り除く工程設けてフィルム中の異物・欠陥を減少させる。上記フィルターの目開きは、取得フィルム厚みの1/2、好ましくは1/5、更に好ましくは1/10が良い。
ポリアミド酸に対する脱水剤及び触媒の含有量は、ポリアミド酸を構成する構造式に依存するが、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましく、触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましい。更に好ましくは、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましく、触媒/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましい。なお、この場合には、アセチルアセトン等の反応遅延剤を併用しても良い。また、ポリアミド酸に対する脱水剤及び触媒の含有量は、0℃にてポリアミド酸と脱水剤・触媒混合物とが混合されてから粘度上昇が始まるまでの時間(ポットライフ)で規定しても良い。一般にはポットライフが0.1分〜60分、さらに好ましくは0.5分〜20分が好ましい。

(耐熱性ポリイミドフィルム表面への熱可塑性ポリイミドフィルムの積層)
本発明における熱可塑性ポリイミド樹脂層と耐熱性ポリイミドフィルム層からなるポリイミドフィルムとは、上記耐熱性ポリイミドフィルム表面に、少なくとも片面に前記熱可塑性ポリイミド樹脂もしくは熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液を流延、塗布した後に加熱乾燥を行ったフィルムであることが好ましい。特に耐熱性ポリイミドフィルム表面との接着性を向上させる上でポリアミド酸溶液を塗布し、その後、乾燥・加熱を施してポリイミドフィルムに成形することが望ましい。
熱可塑性樹脂の流延、塗布する方法については特に限定されず、ブレードコーター、ナイフコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター等、既存の方法を使用することができる。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂溶液もしくは、該熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液を流延、塗布した後にフィルムを250℃以下の温度で乾燥させた後に、いずれの塗布液においても、イミド化率を向上させるために加熱を行うが、その時の温度は、(熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移温度)〜(ガラス転移温度+200℃)の範囲内に設定することが好ましく、(熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度+20℃)〜(ガラス転移温度+150℃)の範囲内に設定することがより好ましい。高温で焼成することで耐熱性ポリイミドフィルム表面の熱可塑性ポリイミド樹脂のイミド化率が向上するとともに、内在しているフィラーが表面で突起を形成し易く、その表面に、平均突起径が5.0μm以下、そして突起数が1×10〜1×108個/mm2、好ましくは1×103〜1.0×107個/mm2の範囲にある微小突起が形成されたポリイミドフィルムを製造することができる。しかも、突起表面の一部が埋没した形で表面突起が形成されるため、表面からフィラーの脱落等が無くなるので好ましい。但し、高すぎると熱可塑性ポリイミドが熱分解を起こす可能性がある。一方、熱キュアの温度が低すぎると、イミド化反応が充分ではなく実使用上で問題となる可能性が高い。上記突起数が上記範囲よりも少ないと、ポリイミドフィルムの滑り性、走行耐久性が満足されず、また、上記範囲よりも多いと、突起の重なりが多くなり、表面突起粒子径が大きくなる問題が発生する。
乾燥・加熱時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には1〜600秒程度の範囲で適宜設定される。また、接着層の熔融流動性を改善する目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させることもできる。その手段としては、熱風炉、赤外線過熱炉などのそれ自体公知の種々の装置を使用して行なうことができる。
尚、本願発明での耐熱性ポリイミドフィルム表面への熱可塑性ポリイミド層の積層厚みは0.1μm〜30μmが好ましく、特に好ましくは1〜20μmであることが望ましい。
[実施例]
次に本発明の実施例と比較例を挙げる。
(熱可塑性樹脂合成例1)
窒素置換をした反応装置に0.50モルのBAPPをジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)中に投入し15分間攪拌した。続いて0.20モルのBTDAを投入した。続いて、0.25モルのTMEGを投入し30分間撹拌した。次いで、日産化学社製ジメチルアセトアミドに分散したシリカゾル(商品番号DMAC-ST-ZL:平均粒子径0.09μm)を徐々に添加して、30分間の撹拌の後、さらに0.05モルのTMEGを36.9gのDMFに溶かした溶液をフラスコ内の溶液の粘度に注意しながら徐々に投入し、その後1時間撹拌しながら放置し、ポリアミド酸固形分に対して0.15重量%のシリカを含有した固形分濃度(以下SCと略す)23%のポリアミド酸溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例2)
窒素置換をした反応装置に0.50モルのBAPPをDMF中に投入し15分間攪拌した。続いて0.10モルのBTDAを投入し、続いて、0.35モルのESDAを投入し30分間撹拌した。次いで、日本触媒製シリカビーズ(商品名:KEP10 平均粒子径0.11μm)をジメチルアセトアミドに分散した溶液を、徐々に添加して、30分間の撹拌の後、さらに0.05モルのESDAをDMFに溶かした溶液をフラスコ内の溶液の粘度に注意しながら徐々に投入し、その後1時間撹拌しながら放置し、ポリアミド酸固形分に対して0.15重量%のシリカを含有した固形分濃度(以下SCと略す)23%のポリアミド酸溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例3)
反応装置中で、DMF中に、BAPS−M0.112molを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、日本触媒製シリカビーズ(商品名:KEP100 平均粒子径1.00μm)をジメチルアセトアミドに分散した溶液を徐々に添加して、30分間攪拌を行った。この溶液中に、ESDA0.112molを徐々に添加した。その後、氷浴下で30分間攪拌し、粘度が1500poise に達したところで攪拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液をフッ素樹脂コートしたバットに移し、真空オーブンで200℃×3時間、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件で減圧加熱することによってポリアミド酸固形分に対して0.10重量%のシリカを含有した、熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂を再度DMF中に溶解してポリイミド樹脂溶液SC23%のポリイミド溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例4)
熱可塑性樹脂合成例3の重合方法において、BAPS−Mに代えて、APBを用いた以外は、熱可塑性樹脂合成例3と同一の量および同一の条件で、ポリアミド酸固形分に対して0.10重量%のシリカを含有した、熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂を再度DMF中に溶解してポリイミド樹脂溶液SC23%のポリイミド溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例5)
熱可塑性樹脂合成例3の重合方法において、ESDAに代えて、TMEGを用いた以外は、熱可塑性樹脂合成例3と同一の量および同一の条件で、ポリアミド酸固形分に対して0.10重量%のシリカを含有した、熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂を再度DMF中に溶解してポリイミド樹脂溶液SC23%のポリイミド溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例6)
反応装置中で、DMF中にBAPS−M0.112molを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、ESDA0.112molを徐々に添加した。添加直後、日本アエロジル社製二酸化チタン粒子(商品名:T805 平均粒子径0.02μm)をジメチルアセトアミドに分散した溶液を、徐々に添加して、氷浴下で30分間攪拌し、粘度が1500poiseに達したところで攪拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にDMF113g、β−ピコリン26g、無水酢酸45gを加え30分間撹拌した後、さらに100℃下で1時間撹拌し、イミド化させた。その後、高速で撹拌したメタノール中にこの溶液を少しづつ垂らした。メタノール中に析出した糸状のポリイミドをミキサーで粉砕し、メタノールでソックスレー洗浄を行い、110℃で2時間乾燥させ、ポリアミド酸固形分に対して0.18重量%の二酸化チタン粒子を含有した、ポリイミド粉末を得た。得られたポリイミド粉末を再度DMF中に溶解してポリイミド樹脂溶液SC23%のポリイミド溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例7)
反応装置中で、DMF中にAPB0.19モル、HAB0.01モルを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、富士チタン工業株式会社製二酸化チタン粒子(平均粒子径0.30μm)をジメチルアセトアミドに分散した溶液を、徐々に添加して30分間攪拌した。この溶液中に、TMEG0.20モルを徐々に添加した。添加後、氷浴下で30分間攪拌し、溶液の粘度が150Pa・s(1500ポイズ)に達した時点で攪拌を止めた。これにより、ポリアミド酸固形分に対して0.10重量%の二酸化チタンを含有した、SC20%のポリアミド酸重合体の溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例8)
反応装置中で、DMF中に4,4−ODAを0.1モル、3,4'-ODAを0.1モルを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、日産化学社製ジメチルアセトアミドに分散したシリカゾル(商品番号DMAC-ST:平均粒子径0.02μm)を徐々に添加して30分間攪拌した。この溶液中に、TMHQ0.20モルを徐々に添加した。添加後、氷浴下で30分間攪拌し、溶液の粘度が150Pa・s(1500ポイズ)に達した時点で攪拌を止めた。これにより、ポリアミド酸固形分に対して0.10重量%のシリカを含有した、SC20%のポリアミド酸重合体の溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例9)
反応装置中で、DMF中に4,4−ODAを0.1モル、3,4'-ODAを0.1モルを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら30分間攪拌した。この溶液中に、TMHQ0.20モルを徐々に添加した。添加後、氷浴下で30分間攪拌し、溶液の粘度が150Pa・s(1500ポイズ)に達した時点で攪拌を止めた。これにより、固形分を含まないSC20%のポリアミド酸重合体の溶液を得た。
(熱可塑性樹脂合成例10)
反応装置中で、DMF中に4,4−ODAを0.1モル、3,4'-ODAを0.1モルを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら味の素ファインテクノ社製リン酸水素カルシウム(平均粒子径3.0μm)を徐々に添加して30分間攪拌した。この溶液中に、TMHQ0.20モルを徐々に添加した。添加後、氷浴下で30分間攪拌し、溶液の粘度が150Pa・s(1500ポイズ)に達した時点で攪拌を止めた。これにより、ポリアミド酸固形分に対して0.10重量%のリン酸水素カルシウムを含有した、SC20%のポリアミド酸重合体の溶液を得た。
(耐熱性ポリイミドフィルム製造例1)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中で、4,4−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)50モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMHQ)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)50モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1000mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有するゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。得られたポリイミドフィルムの弾性率をJIS C2318の6.3.3に準拠した方法で測定した。弾性率は6.0GPaであった。
(耐熱性ポリイミドフィルム製造例2)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中で、4,4−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)70モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)30モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)100モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、1.5倍当量の無水酢酸と0.8倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1000mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有するゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、515℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。得られたポリイミドフィルムの弾性率をJIS C2318の6.3.3に準拠した方法で測定した。弾性率は4.2GPaであった。
(耐熱性ポリイミドフィルム製造例3)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中で、4,4−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)50モル%と、パラフェニレンジアミン(p−PDA)50モル%、ピロメリット酸二無水物(PMDA)70モル%、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)30モル%を該比率でこの順で添加して重合してポリアミド酸溶液を合成した。該ポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.3倍当量の無水酢酸と0.5倍当量のイソキノリンを添加し、焼成後20μmとなる厚さで、1000mm幅でエンドレスベルト上にキャストし、100℃〜130℃で熱風乾燥し、自己指示性を有するゲルフィルムを得た。その後ベルト上から引き剥がす。引き剥がしたゲルフィルムは幅方向両端をピン巾800mmで弛み無く固定した(ゲル幅は800mm)。該ゲルフィルムを、130℃(熱風オーブン)、260℃(熱風オーブン)、360℃(熱風オーブン)、450℃(熱風オーブン)、500℃(遠赤外線炉)と段階的に焼成してポリイミドフィルムへと焼成した。得られたポリイミドフィルムの弾性率をJIS C2318の6.3.3に準拠した方法で測定した。弾性率は5.4GPaであった。
(実施例1〜3)
熱可塑性樹脂合成例で得られた例1から例3のポリアミド酸溶液及びポリイミド樹脂を耐熱性ポリイミドフィルム(製造例1)の両面に、リバースコーターを用いて熱可塑性ポリイミド層の最終片面厚みが6μmとなるようにポリアミド酸を両面に塗布した後、120℃、250℃、390℃で各2分間加熱して、芳香族ポリイミドフィルムを得た。
(実施例4〜6)
熱可塑性樹脂合成例で得られた例4から例6のポリイミド樹脂を耐熱性ポリイミドフィルム(製造例2)の両面に、リバースコーターを用いて熱可塑性ポリイミド層の最終片面厚みが6μmとなるようにポリアミド酸を両面に塗布した後、120℃、250℃、390℃で各2分間加熱して、芳香族ポリイミドフィルムを得た。
(実施例7〜8)
熱可塑性樹脂合成例で得られた例7から例8のポリアミド酸溶液を耐熱性ポリイミドフィルム(製造例3)の両面に、リバースコーターを用いて熱可塑性ポリイミド層の最終片面厚みが6μmとなるようにポリアミド酸を両面に塗布した後、120℃、250℃、390℃で各2分間加熱して、芳香族ポリイミドフィルムを得た。
上記方法で得た熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミドフィルムについて下記分析を行った。測定結果を表1に纏める。
(1)平均突起径:フィルム表面を光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOT:デジタルカメラ(NikonDigitalCamera DXM1200))を用いて200倍で写真を撮影し、表面写真から突起の面積から円相当径を求め平均値を算出した。
(2)突起数:フィルム表面を光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOT:デジタルカメラ(NikonDigitalCamera DXM1200))を用いて200倍で写真を撮影し突起数を計算した。
(3)ポリイミドフィルムの静摩擦係数:ポリイミドフィルムを10×20cmに切り出してフィルムを平滑な金属基板上に固定して、更にポリイミドフィルム7×6cmに切り出したフィルムをその上に重ねて置き、底面積が36cm2、重さが860gの重りを7×6cmのフィルム上にのせてフィルムを200mm/分の速度で引張り、そのときにフィルムが動き出す瞬間に発生する力を静摩擦力とした。尚、垂直抗力は重りの重量から860gfとなる。
Figure 2007090770
本願発明に用いられるポリイミドフィルムは、上記静摩擦係数を測定した際に、その値が1.60以下であることが好ましい。この値以下であればポリイミドフィルムを例えばロールツーロールで搬送させた場合にフィルムがロールと密着して搬送事故を防止できるだけではなく、フィルムの繰り出し部位のテンションを緩やかにすることができ、繰り出しフィルムの巻き締りを防止する上でも効果的である。
(比較例1、2)
熱可塑性樹脂合成例9で得られたポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム(アピカル20μm厚みのNPI;鐘淵化学工業株式会社製)の両面に、リバースコーターを用いて熱可塑性樹脂合成例1で合成した熱可塑性ポリイミド樹脂を、熱可塑性ポリイミド層の最終片面厚みが6μmとなるようにポリアミド酸を両面に塗布した後、120℃、250℃、390℃で各2分間加熱して、芳香族ポリイミドフィルムを得た。
Figure 2007090770

Claims (3)

  1. 少なくとも1層の熱可塑性ポリイミド樹脂層と少なくとも1層の耐熱性ポリイミドフィルム層を積層した芳香族ポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミド樹脂に、平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子が内在されており前記無機質粒子からなる多数の突起が該フィルムの表面層に1×10〜5×108個/mm2の割合で形成されていることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルム。
  2. 耐熱性ポリイミドフィルムの片面もしくは両面に平均粒子径が0.004〜1.0μmである無機質粒子を分散させた耐熱性ポリイミド樹脂溶液/もしくは耐熱性ポリイミド樹脂の前駆体である熱可塑性ポリアミド酸溶液を塗布して乾燥させて、熱可塑性樹脂を積層した耐熱性ポリイミドフィルムを250℃以上の温度で加熱処理することを特徴とする芳香ポリイミドフィルムの製造方法。
  3. ポリイミドフィルム表面の表面突起径が5μm以下で、静摩擦係数が1.6以下となるポリイミドフィルム
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