JP2007090492A - 熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体への穴開け加工時に、バリの発生を防止する熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法を提供する。
【解決手段】
平均粒子径が0.01μm〜30μmの無機質粉末10〜80重量部と、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂90〜20重量部を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体に、直径20〜200μmのドリル刃で穴開け加工を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高融点を有する熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を成形し生成された熱可塑性樹脂成形体に、直径20μm〜200μmという高精度な穴開け加工を実現する熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法に関するものである。
近年、半導体検査用ソケット、プリント基板検査治具、フレキシブルプリント基盤検査治具、TAB(Tape Automated Bonding)テープ検査治具およびウエハ検査用プローブカードなど、コンタクトプローブピンを使用する装置は、半導体や部品の細密化に伴い高精密化が進んでいる。
これらの用途には、高度な寸法安定性が要求されるため、コンタクトプローブピンの保持部やガイド部には、低吸水率で低線膨張係数の面から、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアミドイミド樹脂(PAI),ポリエーテルイミド樹脂(PEI)およびポリエーテルサルフォン樹脂(PES)など各種のスーパーエンプラ成形体やセラミック成形体に、直径が30μm〜200μmで、ピッチが50μm以上という精密な穴が多数切削加工された板状の熱可塑性樹脂成形体が使用されている。
しかしながら、これらの熱可塑性樹脂は、樹脂自体の粘り強さが特徴であるため、かかる熱可塑性樹脂成形体に穴開け加工を施すと、穴開けされた開口部周辺に削り屑と本体切削面が結合して形成される直径が5μm〜1mm、長さが10μm〜3mm程度のひも状屑(いわゆるバリ)が発生し、このバリが、コンタクトプローブピンの挿入不良や誤作動などを発生させる原因となっている。
従来、このようなバリ対策としては、穴開け加工の後にブラシ等を用いて、手作業でバリ取りの作業を行っている。しかしながら、最近の細密化による、直径が100μ以下の穴では、手作業によるバリ取りも不可能であり、バリの発生した穴を有する樹脂成形体は使用不可能となるため、不良率が著しく高くなるという傾向にある。
また、熱可塑性樹脂成形体の切削や穴あけなどの機械加工性に優れた機械加工用素材において、導電性充填材を用いることによりバリを押さえる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、導電性の樹脂成形体には適しても絶縁体を実現し得ないこと、さらに、導電性充填材として炭素繊維を使用した場合は、樹脂成形体内の炭素繊維にドリル刃があたって、穴位置がずれるという欠点がある。
特開2005−226031号公報
本発明の目的は、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体への穴開け加工時に、バリの発生を防止する熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法を提供することである。
本発明の他の目的は、上記の切削加工方法で穴開け加工されてなる、バリのない切削開口部を有する熱可塑性樹脂成形体を提供することにある。
本発明は上記目的を達成せんとするためのものであって、次の構成を有するものである。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法は、平均粒子径が0.01μm〜30μmの無機質粉末10〜80重量部と、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂90〜20重量部を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体に、直径20〜200μmのドリル刃で穴開け加工を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法である。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法の好ましい態様によれば、前記の樹脂成形体の破断伸びは0〜10%であり、また、前記の樹脂成形体が板状形態の成形体であることである。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法の好ましい態様によれば、前記の樹脂成形体は絶縁性樹脂成形体であり、前記の無機質粉末は絶縁性無機質粉末である。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、前記の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法で穴開け加工されてなる切削開口部を有する熱可塑性樹脂成形体であり、ドリル刃による切削屑と樹脂切削面との連結により形成される直径が5μm〜1mmで、長さが10μm〜3mmのひも状屑が、切削加工時に穴開け切削開口部から分離されてなる熱可塑性樹脂成形体である。
上述したように、本発明によれば、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂の特徴となる粘り強さを抑制し、特定の無機粒子を配合して破断伸びを0〜10%に改質した樹脂組成物からなる樹脂成形体を、穴開け用素材として使用することにより、直径20μm〜200μmという高精度な穴開け加工において、穴加工時にバリを防止することができ、高精度が要求される穴加工を実現することができる。
本発明は、平均粒子径が0.01μm〜30μmの無機質粉末10〜80重量部と、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂90〜20重量部を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体に、直径20〜200μmのドリル刃で穴開け加工を施す熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法である。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアミドイミド樹脂(PAI),ポリエーテルイミド樹脂(PEI)およびポリエーテルサルフォン樹脂(PES)など各種のスーパーエンジニアリング・プラスチックが挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、吸水率が低く、寸法安定性の高いポリフェニレンサルファイド樹脂が特に好ましく用いられる。
本発明では、特に、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂が用いられる。融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上である熱可塑性樹脂は、穴開け加工時にドリル刃と切削面との摩擦によって生じる熱によって変形および変色がおきにくくなり、好適である。また、押出成形や射出成形での加工性の点から、融点ついては上限は350℃であることが好ましく、ガラス転移温度については上限300℃であることが好ましい。
融点およびガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、試料温度を上昇させていくときに試料に吸収される熱量を測定して得られる値である。示差走査熱量計(DSC)は、温度プログラムされたヒーターを用いてヒートシンクを昇・降温することで、試料と比較材料とに流れる熱量差を測定し、温度差信号として検出し、SC信号として出力する。融点およびガラス転移温度はその信号によって描かれるピークによって判定される。
本発明で用いられる無機質粉末としては、例えば、水酸化マグネシウム、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、ワラステナイトおよび水酸化アルミニウムなどが挙げられ、体積固有抵抗値が1012Ωを超える絶縁性を持った無機材により形成される粉末が好適に用いられる。体積固有抵抗は、断面積W(巾)×t(厚)に一定電流I(A)を流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差V(v)を測定し、次の数式により計算される。
体積固有抵抗=V/I×W/L×t
これらの無機質粉末の中でも、より均質な平均粒子径を得られることおよび樹脂との混練の容易さの観点から、水酸化マグネシウムおよびマイカが特に好ましく用いられる。
本発明で用いられる無機質粉末は、平均粒子径が0.01μm〜30μmのものであり、より好ましくは0.1μm〜10μmのものである。
本発明に用いられるドリルの直径の下限は20μmであり、10μmを超える平均粒子径の無機質粉末は、穴開け加工時にドリル刃と接触した場合にドリル位置のずれを生じさせることがあるため、ドリル刃の直径の半分である10μ以内の平均粒子径の無機質粉末が特に好ましい。また、0.1μmを下回る平均粒子径の無機質粉末は、熱可塑性樹脂との混練時の飛散など扱いが難しく、平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましい。
平均粒子径は、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求める方法であるレーザー回折・散乱法によって測定される数値である。
本発明においては、前記の熱可塑性樹脂と前記無機質粉末を含む樹脂組成物を成形する。熱可塑性樹脂と無機質粉末の配合割合は、熱可塑性樹脂/無機質粉末(重量比)=90/10〜20/80(重量比)であり、より好ましくは 機械的強度の保持、および熱可塑性樹脂と無機質粉末との混練の容易さから60/40〜30/70(重量比)である。
このような割合で無機質粉末を上記熱可塑性樹脂に配合された樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂の特徴である樹脂の粘りを抑制し,破断伸びを0〜10%に抑えることが可能となる。本発明において、樹脂成形体は体積固有抵抗が1012Ωを超える絶縁性の樹脂成形体であることができる。
本発明において、上記の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機質粉末の他に、本発明の効果を妨げない範囲で他の添加剤成分を配合させることができる。他の添加剤成分としては、例えば、機械的強度向上を目的とするオレフィン系エラストマー、導電性や耐電防止性を付与するカーボン系粒子やカーボン系繊維等が挙げられる。
本発明においては、前記の熱可塑性樹脂と前記無機質粉末を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体とする。本発明においては、その際、熱可塑性樹脂と無機質粉末との混合物をそのまま成形することも可能であるが、事前に熱可塑性樹脂と無機質粉末を含むペレット状樹脂生成物とし、それを押出成形、射出成形または圧縮成形等によって成形体を作成することが好ましい。量産性を考慮した場合、押出成形あるいは射出成形が特に好ましい。
本発明で用いられる樹脂成形体の形状は、任意であるが、目的とする製品との関係から、板状形態の樹脂成形体であることが好ましい。板状形態においては、使用される用途の要求から0.5mm〜15mmの厚さであることが好ましい。本発明において、穴開け加工性と穴と穴の間の隔壁部の強度保持の点から、より好ましい厚さは1mm〜5mmである。
本発明では、このように準備された樹脂成形体を穴開け用素材として用いる。穴開け用素材として用いられる樹脂成形体は、成形された成形体をそのまま用いてもよく、また、成形された成形体を切削加工して用いることもできる。例えば、成形された板状の樹脂成形体の両表面を切削して、厚さを薄くすることができる。
このようにして準備された樹脂成形体は、ドリル刃で穴開け加工が施される。形成される穴は本発明が使用される主な用途でのコンタクトプローブピンの直径が20μm〜200μmであることから、直径20μm〜200μmの高精密な微細穴であり、そのために、直径20μm〜200μmのドリル刃が用いられる。本発明では、より好ましくは、直径50μm〜100μmのドリル刃が用いられる。
本発明において用いられるドリル刃の材質は、好ましくはタングステン鋼であり、より好ましくはタングステン鋼の先端部にセラミックを溶射して耐摩耗性を改善したドリル刃であることが好ましい。また、ドリル刃の回転数は、20000回転/分〜40000回転/分であることが好ましい。また、穴開け加工される穴数は、使用される製品の設計によって決定されるが、5mm×5mm〜100mm×100mmの面積に30〜1000穴が一般的である。
穴と穴間の距離も、使用される製品の設計によって決定されるが、穴と穴との間を仕切る壁部の強度保持の観点から50μm以上とすることが好ましい。
本発明によれば、上記のように穴開け用素材として準備された樹脂成形体は、硬くて脆くなり、ドリル刃によって形成される削り屑と切削面との間の樹脂の伸びを抑制することが可能となる。そのため、削り屑はドリル刃によって切削面から完全に切断され,上記種類の熱可塑性樹脂の成形体の穴開け加工時に通常生じる、切削面に結合した直径が5μm〜1mmで、長さが10μm〜3mmのひも状屑(いわゆるバリ)の発生を防止することが可能となる。
このようにして、穴開け加工時において、バリのない切削開口部を有する熱可塑性樹脂成形体が得られ、穴開け加工後にバリを除去する作業工程が不要となる。
本発明で得られる切削開口部を有する熱可塑性樹脂成形体は、プリント基板検査治具、フレキシブルプリント基板検査治具、TABテープ検査治具およびウエハ検査用プローブカード、半導体用ハンダボール吸着治具などに好適に用いられる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。評価方法は、次のとおりである。
(a)破断伸び: ASTM D638(2003年版)に基づいて測定した。
(b)バリの評価:次の基準で判定した。バリ本数は20の穴の平均値にて算出した。
A.評価基準については、直径が5μm〜1mm、長さが10μm〜3mmのバリの 発生がないもの。
B.直径が5μm〜1mm、長さが10μm〜3mmのバリが、1つ穴あたりで1〜10本発生したもの。
C.直径が5μm〜1mm、長さが10μm〜3mmのバリが、1つ穴あたりで10本を超え発生したもの。
(実施例1)
表1に示す熱可塑性樹脂(融点278℃、ガラス転移温度90℃)と無機質粉末の各構成成分を、ミキサーで均一にブレンドした後、2軸混練押出機を用いてペレット形状の樹脂生成物に成形した。得られたペレット形状の樹脂生成物を、射出成形機にて厚さ3mm、巾5cm、長さ8cmの平板(破断伸び:0.8%)に成形した。
このようにして得られた平板の両面を切削して、厚さ2mmの平板とし、直径80μmのドリル刃を使用して、ドリル回転数30000〜35000回転/分の条件で穴開け加工を行い、穴の開口周囲に発生したバリ長と個数を電子顕微鏡を用いて評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、無機質粉末を用いなかったこと以外は、実施例1と同様ににして平板(破断伸び:23%)を作成し、穴開け加工を行い、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2007090492
本発明においては、上記のように引っ張り破断伸びが小さくなった樹脂成形体を穴開け用素材として使用するため、ドリルでの穴加工時に、削られた部分がドリル刃により容易に切断されて本体から分離されやすくなり、粉末状の切り粉として外部に排出される。そのため、切削屑と切削面とが結合したまま残ることはなく、バリの発生を防止することが可能となっている。
本発明は、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂の特徴となる粘り強さを抑制し、特定の無機粒子を配合して破断伸びを0〜10%に改質した樹脂組成物からなる樹脂成形体を、穴開け用素材として使用することにより、直径20μm〜200μmという高精度な穴開け加工において、穴加工時にバリを防止することができ、高精度が要求される穴加工を実現することができる。

Claims (7)

  1. 平均粒子径が0.01μm〜30μmの無機質粉末10〜80重量部と、融点が220℃以上またはガラス転移温度が170℃以上の熱可塑性樹脂90〜20重量部を含む樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体に、直径20〜200μmのドリル刃で穴開け加工を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
  2. 樹脂成形体の破断伸びが0〜10%であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
  3. 樹脂成形体が板状形態の成形体であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
  4. 樹脂成形体が絶縁性樹脂成形体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
  5. 無機質粉末が絶縁性無機質粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の切削加工方法で穴開け加工されてなる切削開口部を有する熱可塑性樹脂成形体。
  7. ドリル刃による切削屑と樹脂切削面との連結により形成される直径が5μm〜1mmで、長さが10μm〜3mmのひも状屑が、切削加工時に穴開け切削開口部から分離されてなることを特徴とする請求項6記載の熱可塑性樹脂成形体。
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