JP2007090126A - ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束とその製造方法および血液浄化器 - Google Patents
ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束とその製造方法および血液浄化器 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系中空糸膜束において、該中空糸膜束よりのポリビニルピロリドンの溶出が10ppm以下で、かつ過酸化水素の溶出が5ppm以下であるポリスルホン系選択透過性中空糸膜束である。また、過酸化水素含有量が300ppm以下であるポリビニルピロリドンを原料とするポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法である。さらに、中空糸膜束の乾燥を減圧下でマイクロ波を照射して乾燥することを特徴とする前記したポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
本発明に用いる中空糸膜束は、ポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系樹脂で構成されているところに特徴を有する。本発明におけるポリスルホン系樹脂とは、スルホン結合を有する樹脂の総称であり特に限定されないが、例を挙げると
例えば、本発明の乾燥条件を実施する一応の目安として、中空糸膜束1本当たり50gの水分を有する中空糸膜束を20本乾燥した場合、総水分含量は50g×20本=1,000gとなり、この時のマイクロ波の出力は1.5kW、減圧度は5kPaが適当である。
該マイクロ波照射による乾燥は中空糸膜束を均一に加熱し乾燥することが重要である。上記したマイクロ波乾燥においては、マイクロ波の発生時に付随発生する反射波による不均一加熱が発生するので、該反射波による不均一加熱を低減する手段を取る事が重要である。該方策は限定されず任意であるが、例えば、特開2000−340356号公報において開示されているオーブン中に反射板を設けて反射波を反射させ加熱の均一化を行う方法が好ましい実施態様の一つである。
(1)熱水洗浄の場合は、中空糸膜束を過剰のRO水に浸漬し70〜90℃で15〜60分処理した後、中空糸膜束を取り出し遠心脱水を行う。この操作をRO水を更新しながら数回繰り返して洗浄処理を行う。
(2)加圧容器内の過剰のRO水に浸漬した中空糸膜束を121℃で2時間程度処理する方法をとることもできる。
(3)エタノールまたはイソプロパノール水溶液を使用する場合も、(1)と同様の操作を繰り返すのが好ましい。
(4)遠心洗浄器に中空糸膜束を放射状に配列し、回転中心から40℃〜90℃の洗浄水をシャワー状に吹きつけながら30分〜5時間遠心洗浄することも好ましい洗浄方法である。
前記洗浄方法を2つ以上組み合わせて行ってもよい。いずれの方法においても、処理温度が低すぎる場合には、洗浄回数を増やす等必要になりコストアップにつながることがある。また、処理温度が高すぎるとポリビニルピロリドンの分解が加速し、逆に洗浄効率が低下することがある。上記洗浄を行うことにより、外表面ポリビニルピロリドンの存在率の適正化を行い、固着抑制や溶出物の量を減ずることが可能となるとともに、過酸化水素溶出量の低減にもつながる。
また中空糸膜束の偏肉度が、上記した潜在的な欠陥の発生抑制に対して有効である。
透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子により流れを止め、全ろ過とする。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した透析器へ純水を送り、透析液側から流出したろ液をメスシリンダーで測定する。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させろ過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出する。このときTMPとろ過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜束の透水性は膜面積と透析器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜束の透水性(mL/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m2)である。
透析器の膜面積は中空糸の内径基準として求める。
A=n×π×d×L
ここで、nは透析器内の中空糸本数、πは円周率、dは中空糸の内径(m)、Lは透析器内の中空糸の有効長(m)である。
約10,000本の中空糸膜束よりなるモジュールの透析液側を水で満たし栓をする。血液側から室温で乾燥空気または窒素を送り込み1分間に0.5MPaの割合で加圧していく。圧力を上昇させ、中空糸膜束が加圧空気によって破裂(バースト)し、透析液側に満たした液に気泡が発生した時点の空気圧をバースト圧とする。
中空糸100本の断面を200倍の投影機で観察する。一視野中、最も膜厚差がある一本の糸断面について、最も厚い部分と最も薄い部分の厚みを測定する。
偏肉度=最薄部/最厚部
偏肉度=1で膜厚が完ぺきに均一となる。
透析型人工腎臓装置製造基準に定められた方法で抽出し、該抽出液中のポリビニルピロリドンを比色法で定量した。
乾燥中空糸膜モジュールの場合には、中空糸膜束1gに純水100mlを加え、70℃で1時間抽出する。得られた抽出液2.5ml、0.2モルクエン酸水溶液1.25ml、0.006規定のヨウ素水溶液0.5mlをよく混合し、室温で10分間放置した、後に470nmでの吸光度を測定した。定量は標品のポリビニルピロリドンを用いて上記方法に従い測定する事により求めた検量線にて行った。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、モジュールの透析液側流路に生理食塩水を500mL/minで5分間通液し、ついで血液側流路に200mL/minで通液した。その後血液側から透析液側に200mL/minでろ過をかけながら3分間通液した後にフリーズドライして乾燥膜を得て、該乾燥膜を用いて上記定量を行った。
ポリビニルピロリドンの溶出量測定法において記載した方法で抽出した抽出液を分光光度計(日立製作所製、U−3000)を用いて波長範囲200〜350nmの吸光度を測定し、この波長範囲での最大の吸光度を求めた。
該測定は、中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜束1gをはかりとり全サンプルについて測定した。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、ポリビニルピロリドン溶出量の測定と同様に処理することにより得た乾燥膜を用いて測定した。
前記した方法で抽出した抽出液2.6mlに塩化アンモニウム緩衝液(PH8.6)0.2mlとモル比で当量混合したTiCl4の塩化水素溶液と4−(2−ピリジルアゾ)レゾルシノールのNa塩水溶液との混合液を加え、さらに0.4mMに調製した発色試薬0.2mlを加え、50℃で5分間加温後、室温に冷却し508nmの吸光度を測定した。標品を用いて同様に測定して求めた検量線を利用して定量値を求めた。
該測定は、中空糸膜束を長手方向に2.7cmずつ10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜束1gをはかりとり全サンプルについて測定した。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、ポリビニルピロリドン溶出量の測定と同様に処理することにより得た乾燥膜を用いて測定した。また、湿潤状態の中空糸膜束について定量する場合は、フリーズドライ法で乾燥して得た乾燥膜について測定した。
クエン酸を添加し、凝固を抑制した37℃の牛血液を、血液浄化器に200mL/minで送液し、20mL/minの割合で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。60分間後に血液浄化器のろ液を採取し、赤血球のリークに起因する赤色を目視で観察する。この血液リーク試験を各実施例、比較例ともに各30本の血液浄化器を用い、血液リークしたモジュール本数を調べた。
各実施例および比較例で得られた乾燥状態の中空糸膜約10,000本をポリエチレン製パイプに挿入し、所定の長さに切断しバンドルとした。得られたバンドルを充填率60vol%でケースに充填し、端部をウレタン樹脂で接着し、樹脂を切り出し中空糸膜面積が1.5m2のモジュールとした。該モジュールにRO水を充填し25kGyの吸収線量でγ線を照射し架橋処理を行った。γ線照射後のモジュールを室温で一年間保存した後、前記した方法でUV(220−350nm)吸光度を測定した。該保存によるUV(220−350nm)吸光度の増加度で安定性を判定した。該増加度は中空糸膜束を長手方向に10個に等分し、それぞれのサンプルについて測定し、その平均値で判定した。平均値が0.10を超えないものを合格とした。なお、架橋処理済みの中空糸膜束の場合は、上記の架橋処理を取り止めて保存し評価した。
γ線照射後の中空糸膜を10g取り、室温で100mlのジメチルホルムアミドにより溶解する。遠心分離機で1500rpm、10分間かけた後上澄みを除去する。残った不溶物に再度、100mlのジメチルホルムアミドを添加して、撹拌をおこなった後、同条件で遠心分離操作をおこない、上澄みを除去する。再び、100mlのジメチルホルムアミドを添加して撹拌し、同様の遠心分離操作をおこなった後、上澄みを除去する。残った固形物を蒸発乾固して、その量から不溶物の含有率を求めた。
湿潤中空糸膜モジュールの場合は、ポリビニルピロリドン溶出量の測定と同様に処理することにより得た乾燥膜を用いて測定した。
2本の枠型ブレードが自転、公転するいわゆるプラネタリー運動により混練効果を発現する形式の混練溶解機に、ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)1質量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK90)0.144質量部およびジメチルアセトアミド(DMAc)1質量部を仕込み、2時間撹拌し混練をおこなった。引き続き3.02質量部のDMAcとRO水0.16質量部の混合液を1時間を要して添加した。撹拌機の回転数を上げてさらに1時間撹拌を続行し均一に溶解した。このとき、混練および溶解は窒素雰囲気下で行なった。混練および溶解時の温度は40℃を超さないように冷却した。最終溶解時の撹拌のフルード数および撹拌レイノルズ数はそれぞれ1.0および100であった。ついで真空ポンプを用いて系内を−500mmHgまで減圧した後、溶媒等が蒸発して製膜溶液の組成が変化しないように、直ぐに系内を密閉し15分間放置した。この操作を3回繰り返して製膜溶液の脱泡を行った。脱泡が完了した後、系内は再度窒素置換を行い弱加圧状態で維持した。なお、上記ポリビニルピロリドンは、過酸化水素含有量130ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を30μm、15μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、75℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め−700mmHgで30分間脱気処理した50℃の53質量%DMAc水溶液とともに吐出、紡糸管により外気と遮断された400mmの乾式部を通過後、60℃の20質量%DMAc水溶液中で凝固させ、湿潤状態のまま綛にまき上げた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.1であった。紡糸工程中、中空糸膜束が接触するローラーは全て表面が鏡面加工されたもの、ガイドは全て表面が梨地加工されたものを使用した。該中空糸膜約10,000本の束の周りに中空糸束側表面がエンボス加工されたポリエチレン製のフィルムを巻きつけた後、27cmの長さに切断し、80℃の熱水中で30分間×4回洗浄した。
実施例1において、過酸化水素含有量が500ppmのポリビニルピロリドンを原料とし、混練および溶解温度を85℃とし、原料供給系や溶解槽の窒素ガス置換を取り止め、かつ中空糸膜束の乾燥を常圧下でマイクロ波を照射して乾燥するように変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜束を得た。マイクロ波の照射は中空糸膜束中の含水率が65質量%になるまでは2kW、それ以降は0.8kWとし含水率が0.5質量%になるまで乾燥した。また、乾燥開始時から乾燥終了時までの間、各中空糸膜束の下部から8m/秒の風速にて除湿空気(湿度10%以下)を糸束の下部から上部へと通風した。該乾燥時の中空糸膜束の最高到達温度は65℃であった。得られた中空糸膜束および血液浄化器の特性を表1および2に示す。本比較例で得られた中空糸膜束の過酸化水素溶出量はレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きく低品質であった。また、本比較例の中空糸膜束は過酸化水素溶出量が高いため、保存安定性が劣っていた。本比較例で得られた中空糸膜束の1年保存後のUV(220−350nm)吸光度は0.15であり、約8ヶ月の保存で既にUV(220−350nm)吸光度は基準値の0.10以下を維持することができなくなった。これらの結果を表1、2、3に示す。
比較例1において、ポリビニルピロリドンの溶解時のフルード数および撹拌レイノルズ数はそれぞれ1.7および260とし、かつ中空糸膜束の洗浄を取り止めるように変更した以外は、比較例1と同様にして中空糸膜束および血液浄化器を得た。本比較例では、ポリビニルピロリドンの溶解時のフルード数および撹拌レイノルズ数が高すぎたため、溶解原料がタンク内で飛散し壁に付着したり、溶解時に溶液への気泡のかみこみが起こる等の好ましくない現象が発生した。得られた中空糸膜束および血液浄化器の特性を表1および2に示す。本比較例で得られた中空糸膜束の過酸化水素およびポリビニルピロリドンの溶出量が比較例1のものと同様に、共にレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きかった。また、本比較例の中空糸膜束は過酸化水素溶出量が高いため、保存安定性が劣っていた。本比較例で得られた中空糸膜束は約6ヶ月の保存で既にUV(220−350nm)吸光度は基準値の0.10以下を維持することができなくなった。これらの結果を表1、2、3に示す。
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)1質量部ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK−90)0.21質量部、DMAc1.5質量部を2軸のスクリュータイプの混練機で混練した。得られた混練物をDMAc2.57質量部および水0.28質量部を仕込んだ撹拌式の溶解タンク内に投入し、3時間攪拌し溶解した。混練および溶解は内温が30℃以上に上がらないように冷却した。ついで真空ポンプを用いて系内を−700mmHgまで減圧した後、溶媒等が揮発して製膜溶液組成が変化しないように直ぐに溶解タンクを密閉し10分間放置した。この操作を3回繰り返して製膜溶液の脱泡を行った。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有量100ppmのものを用い、原料供給系での供給タンクや前記の溶解タンクを窒素ガス置換した。また、溶解時のフルード数および撹拌レイノルズ数はそれぞれ1.1および120であった。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2段のフィルターに通した後、70℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め−700mmHgで2時間脱気処理した50℃の50質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された350mmのエアギャップ部を通過後、60℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均45μmであり、最大45.5μm、最小44.5μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.02、ドラフト比は1.2であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。該中空糸膜約10,000本の束の周りに実施例1と同様のポリエチレン製のフィルムを巻きつけた後、30℃の40vol%イソプロパノール水溶液で30分×2回浸漬洗浄した。
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル5200P)16質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK−90)5.4質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)75.6質量%、水3質量%を撹拌機を有した溶解タンクに直接仕込み、75℃で溶解した。このとき、溶解のフルード数および撹拌レイノルズ数はそれぞれ1.0および120で行った。ついで真空ポンプを用いて系内を−500mmHgまで減圧した後、溶媒等が揮発して製膜溶液組成が変化しないように直ぐに系内を密閉し15分間放置した。この操作を3回繰り返して製膜溶液の脱泡を行った。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有量450ppmのものを用い、原料供給系での供給タンクや前記の溶解タンクを窒素ガス置換しなかった。この製膜溶液を30μmのフィルターに通した後、60℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め−700mmHgで2時間脱気処理した50℃の30質量%DMAc水溶液を用いて同時に吐出、紡糸管により外気と遮断された600mmの乾式部を通過後、濃度10質量%、60℃のDMAc水溶液中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均100μmであり、最大110μm、最小90μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.22、ドラフト比は2.4であった。得られた中空糸膜束は40℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後、湿潤状態のまま巻き上げ比較例1と同様にして乾燥した。得られた中空糸膜束の内径は197μm、膜厚は29μmであった。本比較例で得られた中空糸膜束の過酸化水素およびポリビニルピロリドン溶出量はレベルが高く、かつ過酸化水素溶出量のサンプリング個所による変動が大きい。
実施例2と同様の方法で、ポリスルホン(アモコ社製P−3500)18質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製K−60)9質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)68質量%、水5質量%よりなる製膜溶液を調製した。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有量100ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2種のフィルターに通した後、40℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め減圧脱気した60℃の55質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された600mmのエアギャップ部を通過後、50℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.1であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。該中空糸膜約10,000本の束を純水に浸漬し、121℃×1時間オートクレーブにて洗浄処理を行った。洗浄後の中空糸膜束の周りに実施例1と同様のポリエチレン製のフィルムを巻きつけた後、容器にいれて窒素置換をした状態で25kGyの吸収線量でγ線を照射し架橋処理を行った。架橋処理前の中空糸膜束中の過酸化水素溶出量は最大値で2ppmであった。引き続き実施例1と同様にして乾燥した。紡糸工程中の糸道変更のためのローラーは表面が鏡面加工されたものを使用し、固定ガイドは表面が梨地処理されたものを使用した。得られた中空糸膜束の内径は201μm、膜厚は43μmであった。表1、2より明らかなごとく、過酸化水素溶出量は全部位において低レベルで安定していた。
実施例2と同様の方法で、ポリスルホン(アモコ社製P−1700)17質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製K−60)5質量%、ジメチルアセトアミド(DMAc)73質量%、水5質量%よりなる製膜溶液を調製した。なお、上記ポリビニルピロリドンとしては、過酸化水素含有量120ppmのものを用いた。得られた製膜溶液を15μm、15μmの2種のフィルターに通した後、40℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として減圧脱気された60℃の35質量%DMAc水溶液と同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された600mmのエアギャップ部を通過後、50℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03、ドラフト比は1.1であった。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜束は85℃の水洗槽を45秒間通過させ溶媒と過剰のポリビニルピロリドンを除去した後巻き上げた。該中空糸膜約10,000本の束を純水に浸漬し、121℃×1時間オートクレーブにて洗浄処理を行った。
さらに、架橋により不溶化されたポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系選択透過性中空糸膜束が充填されてなる血液浄化器において、ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束を長手方向に10個に分割して、各部位について透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施したとき、各部位の抽出液の過酸化水素の溶出量が、全ての部位で5ppm以下であることを特徴とする血液浄化器である。
Claims (16)
- ポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系選択透過性中空糸膜束において、該中空糸膜束よりのポリビニルピロリドンの溶出が10ppm以下で、かつ過酸化水素の溶出が5ppm以下であることを特徴とするポリスルホン系選択透過性中空糸膜束。
- 中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々を透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施したとき、すべての抽出液における過酸化水素濃度が5ppm以下であることを特徴とするポリスルホン系選択透過性中空糸膜束。
- ポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系選択透過性中空糸膜束において、ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々について測定した時の過酸化水素の溶出が全ての部位で5ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束。
- ポリビニルピロリドンが架橋され不溶化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束。
- 湿潤状態の中空糸膜束を室温で1年間保存した後に、透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施した時の中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度が0.10以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束。
- 主としてポリスルホン系高分子およびポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を調製する際、過酸化水素含有量が300ppm以下のポリビニルピロリドンを用いることを特徴とするポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 主としてポリスルホン系高分子およびポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を調製する際、該構成成分を予備混練し溶解槽に供給し攪拌溶解することを特徴とする請求項6に記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 主としてポリスルホン系高分子およびポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を調製する際、混練機能を有する溶解槽で溶解することを特徴とする請求項6に記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 主としてポリスルホン系高分子およびポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を調製する際、少なくともポリビニルピロリドンが存在する系は窒素雰囲気下、70℃以下の低温で混練および溶解することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 主としてポリスルホン系高分子およびポリビニルピロリドン、溶媒からなる紡糸溶液を調製する際、フルード数が0.7〜1.3、撹拌レイノルズ数が50〜250の条件で溶解することを特徴とする請求項6〜9いずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 中空糸膜束の乾燥を、減圧下でマイクロ波を照射して乾燥することを特徴とする請求項6〜10いずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 中空糸膜束の乾燥を、0.1〜20kPaの減圧下、20kW以下の低出力マイクロ波を照射して乾燥することを特徴とする請求項6〜11いずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 中空糸膜束の乾燥を、0.1〜20kPaの減圧下、20kW以下の低出力マイクロ波を照射して乾燥する際、中空糸膜束の含水率の低下に伴い順次マイクロ波の出力を低下させることを特徴とする請求項6〜12いずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 長手方向に10個に分割し、各々について測定した時の過酸化水素の溶出が全ての部位で3ppm以下である選択透過性中空糸膜束を架橋処理することを特徴とする請求項6〜13いずれかに記載のポリスルホン系選択透過性中空糸膜束の製造方法。
- 架橋により不溶化されたポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系選択透過性中空糸膜束が充填されてなる血液浄化器において、ポリスルホン系選択透過性中空糸膜束を長手方向に10個に分割し、各々について測定した時の過酸化水素の溶出が全ての部位で5ppm以下であることを特徴とする血液浄化器。
- 血液浄化器を室温で1年間保存した後に透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施した時の中空糸膜の抽出液におけるUV(220〜350nm)吸光度が0.10以下であることを特徴とする請求項15に記載の血液浄化器。
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