JP2007089530A - 反応チップおよび物質の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ウェル状反応容器10に対して、気泡を混入させることなく液状体を供給することが可能な、反応チップを提供する。
【解決手段】 ウェル状反応容器10の内面から開口部に向かって、複数の棒状突起20が立設されている。複数の棒状突起20の間隔wは、ウェル状反応容器10に供給される液滴の直径より小さく形成されている。棒状突起20の高さhは、ウェル状反応容器10に供給される液滴の半径より大きく形成されている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、抗原抗体反応による抗原検出法やハイブリタイゼーションによるDNA検出法などに用いられる反応チップおよびこれを用いた物質の検出方法に関するものである。
近年、化学反応やDNA反応、たんぱく質反応などをチップ上にて行うμ−Total Analysis System技術や、Lab−on−Chip技術などが研究され実現されつつある。これにより、今まで大型の実験装置や大量の試薬が必要であった反応実験が、数ミリ角以下の反応チップを用いて少量の試薬で行えるようになってきている。
この反応チップ上には、ウェルと呼ばれる微小な穴やくぼみが形成され、反応容器として用いられている。このウェル状反応容器は、半導体やガラス等の基板をエッチングする方法や、穴のあいた基板を積層する方法等によって形成されている。例えば特許文献1には、チップ基板と、チップ基板に積層される薄膜部材とを備え、薄膜部材のチップ基板への積層状態においてチップ基板と協働して試料を収容するための開孔部を薄膜部材に設けるマイクロリアクタチップが開示されている。
特開2002−27984号公報
しかしながら、ウェルの直径が小さくなると、試薬の液状体を供給する際に気泡が混入するという問題がある。例えば、直径2mm〜3mmの垂直穴に試薬の供給を試みると、気泡と試薬との入れ替わりが起きず、気泡を含んだ状態になる。この状態において、反応のための熱をかけると、気泡の膨張により試薬があふれるなどの不具合が生じる。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ウェル状反応容器に対して、気泡を混入させることなく液状体を供給することが可能な反応チップ及びこれを用いた物質の検出方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る反応チップでは、基板に、ウェル状反応容器が形成されてなる反応チップであって、前記ウェル状反応容器の内面から開口部に向かって、複数の棒状突起が立設されていることを特徴とする。
また請求項2の発明に係る反応チップでは、前記複数の棒状突起の間隔は、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の直径より小さく形成されていることを特徴とする。
また請求項3の発明に係る反応チップでは、前記棒状突起の高さは、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の半径より大きく形成されていることを特徴とする。
また請求項4の発明に係る反応チップでは、前記棒状突起は、前記ウェル状反応容器の反応検出領域以外の領域に立設されていることを特徴とする。
また請求項5の発明に係る反応チップでは、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の種類に対応して、複数の突起群が形成され、前記複数の突起群には、それぞれ前記複数の棒状突起が立設されていることを特徴とする。
また請求項6の発明に係る反応チップでは、前記棒状突起の高さは、前記複数の突起群ごとに異なっていることを特徴とする。
また請求項7の発明に係る反応チップでは、前記ウェル状反応容器の内面は、平坦な底面と、前記底面から開口部に向かってテーパ状に形成された側面とで構成されていることを特徴とする。
また請求項8の発明に係る反応チップでは、前記ウェル状反応容器の開口部の直径が、0.01mm以上5mm以下であることを特徴とする。
一方、請求項9の発明に係る物質の検出方法では、基板にウェル状反応容器が形成され、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の種類に対応して複数の突起群が形成され、前記複数の突起群は、前記ウェル状反応容器の内面から開口部に向かって複数の棒状突起が立設されてなる反応チップを使用した物質の検出方法であって、第1の前記突起群に含まれる前記複数の棒状突起を伝わせて、前記ウェル状反応容器の内部に認識物質を含む液滴を供給する工程と、第2の前記突起群に含まれる前記複数の棒状突起を伝わせて、前記ウェル状反応容器の内部に検体物質を含む液滴を供給する工程と、を有することを特徴とする。
また請求項10の発明に係る物質の検出方法では、前記第2の突起群に含まれる前記棒状突起の高さは、前記第1の突起群に含まれる前記棒状突起の高さより高くなっていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、ウェル状反応容器に供給される液滴が、複数の棒状突起を伝わって、ウェル状反応容器の内面に移動する。その際、マイクロピペット等から液滴を噴出させる必要がなく、またウェル状反応容器の内面に沿って液滴を流す必要がない。したがって、気泡を混入させることなく液状体を供給することができる。
請求項2の発明によれば、ウェル状反応容器に供給される液滴を、複数の棒状突起に対して同時に接触させることが可能になる。これにより、液滴を円滑に移動させることができる。
請求項3の発明によれば、ウェル状反応容器に供給される液滴を、棒状突起のみに接触させて移動させることが可能になる。これにより、液滴を介したコンタミネーションの発生を防止することができる。
請求項4の発明によれば、棒状突起の存在により反応検出作業が阻害されるのを防止することができる。
請求項5の発明によれば、異なる突起群を使用して異なる種類の液滴をウェル状反応容器に供給することが可能になり、コンタミネーションの発生を防止することができる。
請求項6の発明によれば、高い棒状突起を使用して液滴を供給する際に、低い棒状突起を使用して供給した液滴とのコンタミネーションの発生を防止することができる。
請求項7の発明によれば、ウェル状反応容器の内面に液滴を接触させることなく、棒状突起の先端のみに液滴を接触させることが可能になる。これにより、気泡を混入させることなく液状体を供給することができる。またコンタミネーションの発生を防止することができる。
請求項8の発明によれば、ウェル状反応容器に対する液滴の供給が容易になり、気泡の混入を防止することができる。
請求項9の発明によれば、異なる突起群を使用して、認識物質を含む液滴および検体物質を含む液滴をウェル状反応容器に供給することが可能になり、コンタミネーションの発生を防止することができる。
請求項10の発明によれば、高い棒状突起を使用して検体物質を含む液滴を供給する際に、低い棒状突起を使用して供給した認識物質とのコンタミネーションの発生を防止することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、反応チップの斜視図である。この反応チップ1は、長方形状の基板2に、試薬収容部3、反応部4および検出部5が形成されたものである。
基板2は、全体的に略長方形状を呈しており、使用中に容易に折れ曲がることのない厚みをもたせて形成される。この基板2は、PP(ポリプロピレン)やPC(ポリカーボネート)、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PV(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)等の樹脂材料で構成されている。このような合成樹脂を用いて基板2を作製すれば、耐熱性、耐薬品性、成形加工性などに優れているため好ましい。さらに、2種類以上の樹脂を接合して用いてもよい。この場合、それぞれの樹脂の特徴を活かして基板2を作製することにより、試薬及び試料等の特性に応じた多様な基板2とすることが可能となり、用途ごとに使い分けることができる。例えば、基板2の上半分と下半分とで材料を分けたりすることも可能となる。なお、基板2の素材として石英ガラスを用いてもよい。
基板2には、反応試薬を収容する試薬収容部3と、反応試薬を用いて所定反応を実行する反応部4と、反応物質を検出する検出部5とが設けられている。この検出部5では、反応物質を検出するための検出反応を実行する。そこで、検出部5には複数のウェル状反応容器10が形成されている。ウェル状反応容器10は、後述する樹脂成型または樹脂切削によって基板2に形成されている。また隣接するウェル状反応容器10の間隔は5mm程度とされている。
図2は第1実施形態におけるウェル状反応容器の説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は斜視図である。
図2(b)に示すように、ウェル状反応容器10は逆円錐台状(鉢状)に形成されている。すなわち、ウェル状反応容器10の開口部8の直径は、底面6の直径より大きくなっている。これにより、ウェル状反応容器の内面は、平坦な底面6と、底面6から開口部8に向かってテーパ状に形成された側面7とで構成されている。側面7の傾斜角は、例えば約40度〜約80度とされている。また開口部8の直径は、0.01mm以上5mm以下であることが望ましい。これにより、ウェル状反応容器10に対する液滴の供給が容易になり、気泡の混入を防止することができる。一例を挙げれば、ウェル状反応容器10の開口部の直径D2は3mm程度、底面の直径D1は1mm程度、深さHは1.7mm程度に形成されて、ウェル状反応容器10の容量が8μL程度とされている。
ウェル状反応容器10は、樹脂材料からなる基板を切削する方法や、金型内で樹脂材料を射出成型する方法等によって形成されている。基板2をPC(ポリカーボネート)などの硬質の樹脂材料で構成する場合には、切削法を用いてウェル状反応容器10を形成することができる。また、基板をPP(ポリプロピレン)などの軟質な樹脂材料で構成する場合には、成型法を用いてウェル状反応容器10を形成することが好ましい。またPCで成型法を用いてウェル状反応容器10を形成することもできる。
なお、ウェル状反応容器10への液状体の供給を行いやすくするため、ウェル状反応容器10の内面に親水化処理を施すことが望ましい。ここでは、大気圧プラズマ処理により親水化処理を行う。なお親水化処理は、大気圧プラズマ処理に限られず、コロナ処理や、コーティング処理で行っても良い。親水化処理により、ウェル状反応容器10の内面の純水との接触角が60度未満、好ましくは30度未満となるように設定する。なお接触角は、公知の接触角計を用いて測定する。この範囲内であれば、ウェル状反応容器10に供給された液状体が玉状にならず底面6に均一に広がるため、検出を行いやすくなる。さらに、気泡がうまく逃げていき、液状体に気泡が混入することがなくなる。
棒状突起20は、ウェル状反応容器内での反応時の温度以下で軟化しない材料で形成することが好ましい。また、基板と同じ材料で形成されることが好ましい。
(棒状突起)
図2(b)に示すように、ウェル状反応容器に供給される液滴を内面に移動させるため、ウェル状反応容器10に棒状突起20が立設されている。一例を挙げれば、この棒状突起20は、基板と同様の樹脂材料等により形成されている。まず熱可塑性樹脂を加熱しつつ延伸し、所定の長さに切断して棒状突起を形成する。次に、その棒状突起20をウェル状反応容器10の内面に配置し、加熱することによって溶着する。なお接着剤を介して棒状突起20をウェル状反応容器10に固着してもよい。
棒状突起20は、円柱状や多角柱状等に形成されている。棒状突起20の直径は、0.1mm〜0.3mm程度とすることが望ましい。0.1mm以上とすることにより、供給される液滴を棒状突起20に沿って円滑に移動させることができるからである。なお、棒状突起20を円錐状や多角錐状に形成することも可能であるが、その底部の直径は反応物質の検出作業を阻害しない大きさに形成する必要がある。
棒状突起20の高さhは、ウェル状反応容器10に供給される液滴の半径より大きくすることが望ましい。液滴の半径と同程度の深さまで棒状突起20を液滴内に進入させることにより、供給される液滴を棒状突起20に沿って円滑に移動させることができるからである。また棒状突起20の高さhは、ウェル状反応容器の深さHより小さくすることが望ましい。具体的な棒状突起20の高さhは、0.5mm〜1.5mm程度に形成されている。
ウェル状反応容器10には、複数の棒状突起20が立設されている。棒状突起20の本数は、図2(b)に示すように2本であってもよく、3本以上であってもよい。複数の棒状突起20の間隔wは、ウェル状反応容器10に供給される液滴の直径より小さく形成されている。例えば、液滴の直径が0.7mmの場合に、棒状突起20の間隔が0.5mm程度に形成されている。これにより、供給される液滴を複数の棒状突起20に対して同時に接触させることが可能になり、液滴を複数の棒状突起20に沿って円滑に移動させることができるようになっている。
棒状突起20は、ウェル状反応容器10の内面から開口部8に向かって立設されている。具体的には、ウェル状反応容器10の底面6と側面7との境界部に立設されている。なお棒状突起20は、ウェル状反応容器10の内面から垂直に立設されていてもよく、傾斜した状態で立設されていてもよい。
図3は、棒状突起の立設位置の変形例である。棒状突起20は、図3(a)に示すようにウェル状反応容器10の側面7から立設されていてもよく、図3(b)に示すように底面6から立設されていてもよい。ただし、ウェル状反応容器10は反応物質の検出に利用するので、検出作業を阻害しない位置に棒状突起20を形成する必要がある。そこで、ウェル状反応容器10の反応検出領域以外の領域に棒状突起20を立設する。一般にウェル状反応容器10では、底面6の中央部が反応物質の検出領域6aとなる。そこで、ウェル状反応容器10の検出領域6aの外側に、棒状突起20を立設することが望ましい。
(使用方法)
次に、本実施形態に係る反応チップの使用方法につき、図4を用いて説明する。
図4は、第1実施形態におけるウェル状反応容器の使用方法の工程図である。ここでは、ウェル状反応容器に液状体を供給する方法について説明する。
図4(a)に示すように、まずウェル状反応容器10に供給すべき液状体をマイクロピペット90に充填する。次に、そのマイクロピペット90から微量(1μL〜10μL程度)の液状体を押し出して、マイクロピペット90の先端に球状の液滴92を形成する。次に、マイクロピペット90をウェル状反応容器10に接近させ、液滴92を一対の棒状突起20の先端に接触させる。上述したように、液滴92の直径は0.7mm程度であり、一対の棒状突起20の間隔は0.5mm程度であるため、液滴92を一対の棒状突起20の両方に対して同時に接触させることができる。さらに、マイクロピペット90を下降させて、液滴92の内部に棒状突起20を進入させる。具体的には、液滴92の半径と同程度の深さまで棒状突起20を進入させることが望ましい。すると、液滴92はマイクロピペット90を離れ、一対の棒状突起20を伝って下降し、ウェル状反応容器10の底面6に到達する。その底面6には親水化処理が施されているので、液滴92は底面6に沿って濡れ広がる。これにより、図4(b)に示すように、ウェル状反応容器10に液状体93が供給される。
以上に詳述したように、本実施形態に係る反応チップは、ウェル状反応容器の内面から開口部に向かって、複数の棒状突起が立設されている構成とした。この構成によれば、ウェル状反応容器に供給される液滴が、複数の棒状突起を伝わって、ウェル状反応容器の内面に移動する。その際、マイクロピペット等から液滴を噴出させる必要がないので、バブリングが起こらず空気などの混入を防止することができる。またウェル状反応容器の内面に沿って液滴を流す必要がないので、気泡を混入させることなく液状体を供給することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る反応チップにつき、図5および図6を用いて説明する。図5は第2実施形態におけるウェル状反応容器の説明図であり、図5(a)は平面図であり、図5(b)は斜視図である。
図5(a)に示すように、第2実施形態のウェル状反応容器10には、供給される液状体の種類に対応して、複数の突起群21,22,23が形成されている。本実施形態では、第1突起群21、第2突起群22および第3突起群23の3個の突起群が形成されている。各突起群(例えば、第1突起群21)には、それぞれ複数の棒状突起21a,21bが立設されている。各突起群21に含まれる棒状突起21a,21bの間隔は、その突起群を使用してウェル状反応容器10に供給される液滴の直径より小さく形成されている。また、例えば第1突起群21の棒状突起21bに接触させた液滴が第2突起群22の棒状突起22aと接触しないように、各突起群は離間配置されている。
図5(b)に示すように、一つの突起群(例えば、第1突起群21)に含まれる棒状突起21a,21bは同等の高さに形成されているが、各突起群21,22,23の棒状突起の高さはそれぞれ異なっている。例えば、第1突起群21の棒状突起21a,21bの高さは0.5mm程度とされ、第2突起群22の棒状突起22a,22bの高さは1.0mm程度とされ、第3突起群23の棒状突起23a,23bの高さは1.5mm程度とされている。
(物質の検出方法)
ここで、第2実施形態に係る反応チップを用いた物質の検出方法について説明する。この物質の検出方法は、認識物質と検体物質との反応を利用するものである。特に、同一種類の認識物質と複数種類の検体物質とを反応させることにより、複数種類の検体物質のうちどの検体物質に目的物質が含まれているかを検出する場合や、複数種類の認識物質と同一種類の検体物質とを反応させることにより、当該検体物質にどのような目的物質が含まれているかを検出する場合に、この検出方法を適用することが可能である。
まず、ウェル状反応容器10に認識物質を固定する。認識物質の固定は、認識物質を含む液滴をウェル状反応容器10に供給することによって行う。その際、棒状突起の高さが最も低い第1突起群21を使用して、認識物質を含む液滴を供給する。その具体的な方法は、第1実施形態と同様である。
次に、ウェル状反応容器10に検体物質を供給する。検体物質の供給は、検体物質を含む液滴をウェル状反応容器10に供給することによって行う。その際、棒状突起の高さが2番目に低い第2突起群22を使用して、検体物質を含む液滴を供給する。
図6は、検体物質の供給工程の工程図である。図6(a)に示すように、まず第1実施形態と同様に、検体物質を含む液状体をマイクロピペット95に充填し、その先端に球状の液滴97を形成する。次に、その液滴97を第2突起群22の棒状突起に接触させる。なお第2突起群22の棒状突起の先端が、先に供給した認識物質を含む液状体93の表面より上に位置するように、第2突起群22の棒状突起の高さを設定しておく必要がある。ここで、先に供給した認識物質を含む液滴は、第1突起群21を使用して供給されているので、第2突起群22の棒状突起の先端には、認識物質を含む液滴が付着していない。そのため、第2突起群22の棒状突起の先端に液滴97を接触させても、認識物質が液滴97を介してマイクロピペット95に侵入し検体物質とのコンタミネーションを発生させることがない。
さらにマイクロピペット95を下降させて、液滴97の内部に棒状突起を進入させる。具体的には、液滴97の半径と同程度の深さまで棒状突起を進入させることが望ましい。ここで、先にウェル状反応容器10に供給された認識物質を含む液状体93の表面から、第2突起群22の棒状突起の先端までの長さが、検体物質を含む液滴97の半径より大きくなるように、第2突起群22の棒状突起の高さを設定しておくことが望ましい。これにより、液滴97の半径と同程度の深さまで第2突起群22の棒状突起を進入させた場合でも、液滴97の先端が認識物質を含む液状体93の表面に接触することがなくなる。そのため、認識物質が液滴97を介してマイクロピペット95に侵入し検体物質とのコンタミネーションを発生させることがない。
加えて、第3の液滴を供給する場合には、図6(b)に示すように、棒状突起の高さが最も高い第3突起群23を使用する。この場合も上記と同様に、先にウェル状反応容器10に供給された認識物質および検体物質を含む液状体98の表面から、第3突起群23の棒状突起の先端までの長さが、第3の液滴の半径より大きくなるように、第3突起群23の棒状突起の高さを設定しておくことが望ましい。
以上に詳述したように、本実施形態に係る反応チップは、ウェル状反応容器に供給される液滴の種類に対応して複数の突起群が形成され、各突起群にはそれぞれ複数の棒状突起が立設されている構成とした。この構成によれば、異なる突起群を使用して異なる種類の液滴をウェル状反応容器に供給することができるので、コンタミネーションの発生を防止することができる。これにより、生物的および化学的汚染を防止することができる。
なお手分注により液滴を供給する場合には、突起群ごとに異なる着色加工がなされていることが望ましい。これにより、コンタミネーションの発生を確実に防止することができる。
上述した物質の検出方法は、抗原抗体反応による抗体検出法や、ハイブリタイゼーションによるDNA検出法などに利用することが可能である。
抗原抗体反応とは、抗原と、その抗原に対して生体内で作られた抗体との間でおこる反応である。この場合、まずウェル状反応容器に認識物質として抗原を含む試料を入れておき、後から検出物質として抗体を含む試薬を添加する。その際、認識物質または検出物質のいずれかに標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。
ハイブリタイゼーションによるDNA検出法とは、DNAが一本鎖から二本鎖に復帰する性質を利用して、様々な配列のDNAから目的とする特定配列のDNAを検出するものである。この場合、まずウェル状反応容器10に認識物質として核酸プローブを固定する。次に、血液等から抽出したDNAを検体物質として供給し、ハイブリダイゼーションさせる。その際、検出物質または認識物質のいずれかに標識物質を付けておけば、その標識物質の有無を検出することにより検出が可能となる。また、認識物質である核酸プローブとして配列の異なる核酸を複数用意することで、検体物質としてのDNAがどのような配列であるかを検出することができる。
また、本実施形態に係る反応チップは、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析にも用いることができる。なお、認識物質は複数あってもよく、検出物質が蛍光標識されていない場合には、認識物質のひとつが標識されていればよい。このように、複数の認識物質からなる場合には認識物質を複数種用意し、多段階反応を行ってSNPを検出する場合にも、反応チップを用いることが可能である。
なお本実施形態のウェル状反応容器を用いれば、気泡を混入させることなく認識物質および検体物質を底面に固定化することができるので、効率的な検出を行うことが可能になる。その際、棒状突起の底部直径は0.1mm〜0.3mm程度であるから、検出作業を阻害することはほとんどない。検出作業の阻害が懸念される場合には、図3(a)に示すように、ウェル状反応容器の側面から棒状突起20を立設させればよい。
次に、本発明に係る反応チップを使用した物質の検出方法の実施例として、ヒトのSNP(シングルヌクレオチドポリモルフィズム)を検査する場合について説明する。
まず、PP(ポリプロピレン)からなる基板を用いて、図1に示すような反応チップ1を作製した。その基板2に、図5に示すようなウェル状反応容器10を複数形成した。ウェル状反応容器10は、開口部の直径を3mm、底面の直径を1mm、高さを1.5mmに形成した。これにより、ウェル状反応容器10の許容容積を8μLとした。またウェル状反応容器10の内面にプラズマ処理を施して親液化した。
そのウェル状反応容器10に複数の突起群21,22,23を形成し、各突起群に複数の棒状突起を立設した。ここで、第1突起群21の棒状突起21a,21bの高さを0.5mm、第2突起群22の棒状突起22a,22bの高さを1.0mm、第3突起群23の棒状突起23a,23bの高さを1.5mmに形成した。
そして、各ウェル状反応容器10の底部にアレルプロ−ブを固定化した。具体的には、アレルプローブを含む液滴1.5μLを、第1突起群21から供給して乾燥させた。次に、ヒトの血液から遺伝子を抽出し、SNP部位遺伝子を含むPCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)産物を、各ウェル状反応容器10に分注した。ここでは、PCR産物の液滴2μLを、第2突起群22から供給した。次に、インベーダー反応時における蒸発防止用のミネラルオイル4μLを、第3突起群23から供給した。
このように、棒状突起を介して試薬を供給することにより、気泡の混入を防止することができた。また供給する試薬ごとに異なる突起群を使用し、さらに高さの低い突起群から順番に使用することにより、生物的および化学的汚染を防止することができた。
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
反応チップの斜視図である。 第1実施形態におけるウェル状反応容器の説明図である。 棒状突起の立設位置の変形例である。 第1実施形態におけるウェル状反応容器の使用方法の工程図である。 第2実施形態におけるウェル状反応容器の説明図である。 検体物質の供給工程の工程図である。
符号の説明
h…高さ w…間隔 1…反応チップ 2…基板 10…ウェル状反応容器 20…棒状突起

Claims (10)

  1. 基板に、ウェル状反応容器が形成されてなる反応チップであって、
    前記ウェル状反応容器の内面から開口部に向かって、複数の棒状突起が立設されていることを特徴とする反応チップ。
  2. 前記複数の棒状突起の間隔は、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の直径より小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応チップ。
  3. 前記棒状突起の高さは、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の半径より大きく形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反応チップ。
  4. 前記棒状突起は、前記ウェル状反応容器の反応検出領域以外の領域に立設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反応チップ。
  5. 前記ウェル状反応容器に供給される液滴の種類に対応して、複数の突起群が形成され、
    前記複数の突起群には、それぞれ前記複数の棒状突起が立設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の反応チップ。
  6. 前記棒状突起の高さは、前記複数の突起群ごとに異なっていることを特徴とする請求項5に記載の反応チップ。
  7. 前記ウェル状反応容器の内面は、平坦な底面と、前記底面から開口部に向かってテーパ状に形成された側面とで構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の反応チップ。
  8. 前記ウェル状反応容器の開口部の直径が、0.01mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の反応チップ。
  9. 基板にウェル状反応容器が形成され、前記ウェル状反応容器に供給される液滴の種類に対応して複数の突起群が形成され、前記複数の突起群は、前記ウェル状反応容器の内面から開口部に向かって複数の棒状突起が立設されてなる反応チップを使用した物質の検出方法であって、
    第1の前記突起群に含まれる前記複数の棒状突起を伝わせて、前記ウェル状反応容器の内部に認識物質を含む液滴を供給する工程と、
    第2の前記突起群に含まれる前記複数の棒状突起を伝わせて、前記ウェル状反応容器の内部に検体物質を含む液滴を供給する工程と、
    を有することを特徴とする物質の検出方法。
  10. 前記第2の突起群に含まれる前記棒状突起の高さは、前記第1の突起群に含まれる前記棒状突起の高さより高くなっていることを特徴とする請求項9に記載の物質の検出方法。
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