JP2007089331A - 同期制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 マスタ、スレーブ各ユニットで夫々制御されるモータ同士の同期制御の精度の維持。
【解決手段】 マスタユニットのネット回線デバイスから同期用パケットがスレーブユニット#1、#2に転送される。これをスレーブユニット#1のネット回線デバイスで受信し、メモリデバイスに書き込む。サイクル監視&位相差保持手段は、そのライトサイクルを検出し、タイミング信号との位相差を検出し、保持し、プロセッサで読み出し、位相差分に応じてスレーブユニット#1で制御されるモータの指示量を補正する。スレーブユニット#2では、同様の監視に基づき検出される位相差をディジタルフィルタを通してタイミング信号発生周期調整手段に伝達し、タイミング信号の発生タイミングを調整する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マスタユニットとなる1台の制御装置と、スレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システムに関する。
夫々1台以上のモータを制御する複数の制御装置も含むシステム(例えば同種または異種の工作機械を制御する複数のCNCシステム)においては、各制御装置によるモータ制御を同期させて行うニーズがしばしば生じ、そのような同期制御を行うシステムは、「同期制御システム」と呼ばれている。
同期制御システムを組む場合、システムに含まれるいずれか1台の制御装置を「マスタユニット」とし、残る1台以上の制御装置を「スレーブユニット」とし、マスタユニットと各スレーブユニットの間をバスやネットワークで接続するのが通例となっている。
そして、各スレーブユニット(各スレーブユニット側制御装置)によるモータ制御を、マスタユニット(各マスタユニット側制御装置)によるモータ制御に同期させるために、マスタユニットよりスレーブユニットに、バスサイクルまたはパケットという形でタイミング信号を送り、これを利用してスレーブユニット内で、マスタユニットにおける制御との同期をとることになる。
その際の同期のとり方であるが、従来の同期方式では、バスサイクルまたはパケットを受けるスレーブユニット内のデバイスを、スレーブユニットのプロセッサが定期的にチェックする、もしくは、パケットやバスサイクルを受けたスレーブユニット内のデバイスがスレーブユニットのプロセッサに割込みをかけてプロセッサに知らせるという方法で、スレーブユニットはマスタユニットのタイミング信号の発生タイミングを知っていた。
そのため、プロセッサが別処理のため忙しい場合には、これらの一連の処理が遅れることがあり、この遅れが同期制御の精度のばらつきをもたらすことがあった。そして、この問題を簡便に解決できる技術を開示した公知文献は見当らない。
本発明の目的は、周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システムにおいて、上記問題を解決し、同期制御の精度が実質的に維持されるようにする技術を提供することにある。
本発明の第1の形態に従えば、上記のタイプの同期制御システム(周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システム)に、前記マスタユニット側タイミング信号に基づいて、前記スレーブユニットのための同期用パケットを発生させ、前記スレーブユニットに渡す手段と、前記同期用パケットの前記スレーブユニットによる受信に応じてスレーブユニット内のバスサイクルを発生させるバスサイクル発生手段と、前記バスサイクル発生手段による前記バスサイクルの発生タイミングと、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングとの位相差を算出し、記憶するサイクル監視手段と、該サイクル監視手段から検出される位相差に基づいて、前記スレーブユニットで制御されるモータの制御に関する定量的な指示量を補正し出力する手段を設けることで、上記課題が解決される(請求項1)。
また、本発明の第2の形態に従えば、上記のタイプの同期制御システム(周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システム)に、前記マスタユニット側タイミング信号に基づいて、前記スレーブユニットのための同期用パケットを発生させ、前記スレーブユニットに渡す手段と、前記同期用パケットの前記スレーブユニットによる受信に応じてスレーブユニット内のバスサイクルを発生させるバスサイクル発生手段と、前記バスサイクル発生手段による前記バスサイクルの発生タイミングと、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングとの位相差を算出し、記憶するサイクル監視手段と、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生周期を調整する調整手段と、前記サイクル監視手段から得られる位相差情報に基づいて、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングの調整量を、前記調整手段に出力するディジタルフィルタ手段が設けられる(請求項2)。
つまり、本発明では、周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システムにおいて、マスタユニットより同期用パケットの形で送られるタイミング信号をスレーブユニットが受信することで発生する「スレーブユニット内のバスサイクル」を監視し、同バスサイクルの発生タイミングと、スレーブユニット自身が内部で周期的に発生しているタイミング信号の発生タイミングとの位相差情報を知る手段がスレーブユニット内に設けられる。
そして、この位相差情報を利用してスレーブユニットから出力されるモータ制御のための定量的な指示量を補正する方式(第1の形態)、あるいは、この位相差情報を、スレーブユニット内に設けられたディジタルフィルタを通して、スレーブユニットのタイミング信号の発生タイミングそのものをマスタユニットのタイミング信号の発生タイミングに安定的に合わせ込む方式(第2の形態)が採用される。
ここで、「モータ制御のための定量的な指示量」の具体例としては、例えば「モータで駆動される軸の移動量、速度、加速度」や、「モータの回転数」、「モータに供給する電流、電圧あるいは電力」などの各量を指示する指示量がある。なお、指示量はあくまで制御量を指示するデータ(通常はディジタルデータ)のことであり、モータへの供給電圧や供給電流を制御する場合であっても、それら電圧や電流自体を指している訳ではない。
本発明によれば、スレーブユニットのプロセッサが別処理のため忙しい場合でも、同期制御の精度のばらつきを抑えることが可能になる。
図1は、本発明に従った実施形態に係る同期制御システムの全体構成を概略描示したものである。図示されているように、同期制御システムは、3つのCNC(数値制御装置)を含み、その内の1台がマスタユニットとされ、残る2台がスレーブユニット#1、#2とされる。マスタユニットと、各スレーブユニット#1、#2の間は、例えばイーサネット(登録商標)のようなネット回線で結ばれている。マスタユニット及びスレーブユニット#1、#2の概略構成及び機能は、下記の通りである。
[マスタユニット]
基本となる構成は通常のCNCと同様であり、それに、スレーブユニット#1、#2との同期制御のための信号をネット回線を介して送受するための構成が追加装備されている。即ち、マスタユニットは、プロセッサ(CPU)を有し、そのバスラインには先ず通常のCNCと同様の機能を果たすメモリ(図示省略)、サーボ制御部等が接続されている。また、それら要素に加えて、ネット回線を介してのデータ授受のために、例えばイーサネット(登録商標)デバイスのようなネット回線デバイスがバスラインに接続されている。
そして更に、マスタユニット内には、マスタユニット側のタイミング信号を生成するタイミング信号発生部(“タイミング信号”のブロックで表示)が設けられている。このタイミング信号発生部は、その結線関係は省略したが、プロセッサに内蔵されたクロックの出力(クロック信号)を利用(一定周期でサンプリング)して、システムの同期をとるための基準となるタイミング信号(マスタユニット側タイミング信号)を周期的に生成し、マスタユニットのプロセッサ、ネット回線デバイス等に出力している。タイミング信号の発生周期は設計的に定められるもので、一例を挙げれば0.001secである。
このタイミング信号は、マスタユニットのプロセッサがサーボ制御部へモータの制御に関する定量的な指示量[例えば1処理周期(ITP)分の移動量を表わす指示量]をモータに接続されたサーボ制御部に出力するタイミングの決定に先ず利用される。なお、モータ及びサーボ制御部の数が、1個の場合、複数の場合いずれもあり得ることは言うまでもなく、この点は、後記するスレーブユニット#1、#2についても同様である。
一方、ネット回線デバイスに与えられたマスタユニット側タイミング信号は、ネット回線デバイスを介してスレーブユニット#1、#2に転送される。転送は、同期用パケットの形で行われ、その送信タイミングは、マスタユニット側タイミング信号を受けているマスタユニットのプロセッサが、マスタユニット側タイミング信号に基づいて決定し、送信(転送)をネット回線デバイスに指令する。
[スレーブユニット#1]
基本となる構成が通常のCNCと同様であることは、マスタユニットと同じであり、それに、マスタユニットとの間で同期制御を実行するための装備が設けられている。プロセッサ(CPU)には、バスラインを介してメモリ、サーボ制御部等が接続されている。なお、サーボ制御部及びそれに接続されたモータの図示は省略した。
また、これら要素に加えて、ネット回線を介してマスタユニットとの間でデータ授受を行うために、例えばイーサネット(登録商標)デバイスのようなネット回線デバイスがバスラインに接続されている。そして、スレーブユニット#1内には、当該スレーブユニット側のタイミング信号を生成するタイミング信号発生部(“タイミング信号”のブロックで表示)が設けられている。
このタイミング信号発生部は、マスタユニットに設けられたタイミング信号発生部と同様のもので、スレーブユニット#1内のプロセッサに内蔵されたクロックの出力(クロック信号)を利用(一定周期でサンプリング)して、当該スレーブユニット側のタイミング信号を周期的に生成し、スレーブユニット#1内のプロセッサ、ネット回線デバイス、サイクル監視&位相差保持手段(後述)等に出力している。タイミング信号の発生周期は、例えばマスタユニットに設けられたタイミング信号発生部のそれと同一とされている(同一でない周期、例えば整数倍、整数分の1などとすることも可能であるが、処理が複雑になる)。なお、タイミング信号発生部の結線関係は図示を省略した。
このタイミング信号は、スレーブユニット#1のプロセッサがサーボ制御部へモータの制御に関する定量的な指示量[例えば1処理周期(ITP)分の移動量を表わす指示量]をモータに接続されたサーボ制御部に出力するタイミングの決定に利用される。但し、ここではマスタユニットとの間で同期をとるために、スレーブユニット#1内で次々と出力されるタイミング信号のいずれをトリガとしてプロセッサから指示量をサーボ制御部に出力するかは、マスタユニットから送られて来る同期タイミング信号に基づいて決められる。また、以下の説明の中で述べるように、スレーブユニット#1では指示量にも必要に応じて補正が施される。
マスタユニットから送信される同期タイミング信号は、ネットワーク回線を介してパケットの形でスレーブユニット#1、#2に同時に転送される。スレーブユニット#1は、同ユニット内に設けられたネット回線デバイスでこれを受信し、そのデータを直ちにメモリデバイスに書き込む。一方、スレーブユニット#1内にはサイクル監視&位相差保持手段が設けられ、この書き込みイベントを、タイミング信号の周期よりも十分短い周期で監視し、書き込みサイクル(ライトサイクル)を検出(計測)している。
ここで、このライトサイクルは、マスタユニット内で生成されるタイミング信号に由来するものであり、諸要因により、スレーブユニット#1内で生成されるタイミング信号との間に未知のずれ(位相差)を持っている(もちろん、位相差は実質的に0ということもあり得る)。なぜならば、例えばシステム起動時に、マスタユニットとスレーブユニット#1のタイミング信号スタートの同期をとる処理を行ったとしても、その処理自体に遅れや誤差があり、また、その後、微小な誤差(位相差)が長時間にわたりパイルアップするなどして、位相差が大きくなることもあり得る。
スレーブユニット#1内のサイクル監視&位相差保持手段は、スレーブユニット#1内のタイミング信号を受け取っており、同信号と上記のように検出したライトサイクルとの位相差を検出し、保持(記憶)する。位相差の検出・保持(検出値の更新)の周期は、設計的に定めれば良く、例えばユニット#1内のタイミング信号の受け取りを10回行った毎に、位相差を算出し、検出値の更新を行えば良い。
その一方、スレーブユニット#1内のプロセッサは、サイクル監視&位相差保持手段に保持された位相差情報を処理周期(ITP)毎に読み出し、位相差分を補償するようにスレーブユニット#1で制御されるモータの制御に関する指示量を補正(変更)し、マスタユニットのモータとの同期のずれを補償するようなモータ制御を行なう。位相差に応じた指示量の補正の例については、後述する。このように、スレーブユニット#1は、前述した「発明の第1の形態」に対応する方式を採用したものである。
[スレーブユニット#2]
スレーブユニット#2は、前述した「発明の第2の形態」に対応する方式を採用したものである。基本となる構成が通常のCNCと同様であることは、マスタユニットやスレーブユニット#1と同じであり、それに、発明の第2の形態に従ってマスタユニットとの間で同期制御を実行するための装備が設けられている。プロセッサ(CPU)には、バスラインを介してメモリ、サーボ制御部等が接続されている。なお、サーボ制御部及びそれに接続されたモータの図示は省略した。
また、これら要素に加えて、ネット回線を介してマスタユニットとの間でデータ授受を行うために、例えばイーサネット(登録商標)デバイスのようなネット回線デバイスがバスラインに接続されている。そして、スレーブユニット#2内には、当該スレーブユニット側のタイミング信号を生成するタイミング信号発生部(“タイミング信号”のブロックで表示)が設けられている。
このタイミング信号発生部は、マスタユニットに設けられたタイミング信号発生部と同様のもので、スレーブユニット#2内のプロセッサに内蔵されたクロックの出力(クロック信号)を利用(一定周期でサンプリング)して、当該スレーブユニット側のタイミング信号を周期的に生成し、スレーブユニット#2内のプロセッサ、ネット回線デバイス等に出力している。タイミング信号の発生周期は、例えばマスタユニットに設けられたタイミング信号発生部のそれと同一とされている(同一でない周期、例えば整数倍、整数分の1などとすることも可能であるが、処理が複雑になる)。なお、タイミング信号発生部の結線関係は図示を省略した。
このタイミング信号は、スレーブユニット#2のプロセッサがサーボ制御部へモータの制御に関する定量的な指示量[例えば1処理周期(ITP)分の移動量を表わす指示量]をモータに接続されたサーボ制御部に出力するタイミングの決定に利用される。マスタユニットとの間で同期をとるために、スレーブユニット#2内で次々と出力されるタイミング信号のいずれをトリガとしてプロセッサから指示量をサーボ制御部に出力するかは、マスタユニットから送られて来るパケットに含まれるデータに基づいて決められる。
既述の通り、マスタユニットから送信される同期タイミング信号は、ネットワーク回線を介してパケットの形でスレーブユニット#1、#2に同時に転送される。スレーブユニット#2は、同ユニット内に設けられたネット回線デバイスでこれを受信し、そのデータを直ちにメモリデバイスに書き込む。一方、スレーブユニット#2内にもサイクル監視&位相差保持手段が設けられ、スレーブユニット#1の場合と同様の態様で、この書き込みイベントを、タイミング信号の周期よりも十分短い周期で監視し、書き込みサイクル(ライトサイクル)を検出(計測)するとともに、例えばユニット#2内のタイミング信号の受け取りを10回行った毎に、位相差を算出し、検出値の更新を行なっている。
このように、スレーブユニット#2のサイクル監視&位相差保持手段は、ネット回線デバイスの書き込みサイクルとタイミング信号の位相差を保持する。そして、スレーブユニット#2には、入力側をサイクル監視&位相差保持手段に接続され、出力側をタイミング信号発生周期調整手段(“調整”のブロックで表示)に接続されたディジタルフィルタが設けられ、このタイミング信号発生周期調整手段により、タイミング信号発生部で生成されるタイミング信号の発生タイミングが調整(シフト)されるようになっている。
即ち、サイクル監視&位相差保持手段で検出・保持された位相差は、ディジタルフィルタを通り、タイミング信号発生周期調整手段に伝達され、タイミング信号発生部で生成されるタイミング信号の発生タイミングが調整(シフト)される。
このディジタルフィルタの一例としては、ある決められた回数分の過去の出力データと入力データの差分を合計し、現在の出力データに加味する事で、平均化された出力データ(平均化された位相差データ)を算出するフィルタなどが考えられる。
タイミング信号発生周期調整手段は、ディジタルフィルタから送られた位相差のデータを元に、発生周期を調整し、マスタユニットのタイミング信号に同期させる。なお、スレーブユニット#2内で次々と出力されるタイミング信号のいずれをトリガとしてプロセッサから指示量をサーボ制御部に出力するかは、前述の通り、マスタユニットから送られて来る同期タイミング信号のパケット中に含まれるデータ(例えば、X番目のタイミング信号をトリガにして、サーボ制御部へモータ制御のための指示量を出力する旨のデータ)に基づいて決められる。そのために、スレーブユニット#2内のプロセッサは、スレーブユニット#2内のメモリに処理周期毎にアクセスし、メモリに書き込まれたパケットデータの読み取りを行っている。
次に、スレーブユニット#1で行われる「モータの制御に関する指示量の補正(変更)」(以下、「指示量補正」などとも略称する)について図2を参照して説明する。
先ず、同期制御のために指示量補正を行うタイミングを具体的に何時にするかということであるが、原理的には制約はない。即ち、任意のタイミングで、未補償の位相差を補償するための指示量補正を行えば良い。しかし、実際問題としては、スレーブユニット#1のサイクル監視&位相差保持手段で検出される上述の位相差は、短期間で大きく変動するものではないことを考慮すれば、プログラム(システムの動作プログラム;以下、同じ)開始時と終了時に指示量補正を実行することが好ましい。
図2は、指示量補正の具体例について説明するタイムチャートで、プログラム開始時と終了時に指示量補正を実行するケースを示している。指示量は、一例として「移動指示量」(モータで駆動される軸の移動量を表わす指示量)を考えるが、他の指示量(例えば、「モータで駆動される軸の速度、加速度」や、「モータの回転数」、「モータに供給する電流、電圧あるいは電力を指示する量」)に置き換えた場合も、説明内容は同様となる。
図2において、上半の3段分のチャートは上から順に、プログラム開始直前から直後の「マスタユニットのタイミング信号と指示量」、「マスタユニットと同期信号(タイミング信号)の発生タイミングが完全に一致していると仮定した場合のスレーブユニット(以下、“仮想スレーブユニット”とも言う)のタイミング信号と指示量」、「実際の同期信号(タイミング信号)のタイミングが一致していないスレーブユニット(図1においてはスレーブユニット#1に相当;以下、同じ)のタイミング信号と指示量」を示している。
同様に、下半の3段分のチャートは上から順に、プログラム終了直前から終了時にかけての「マスタユニットのタイミング信号と指示量」、「仮想スレーブユニットのタイミング信号と指示量」、「実際の同期信号(タイミング信号)のタイミングが一致していないスレーブユニットのタイミング信号と指示量」を示している。なお、上向きの矢印群↑↑↑・・・は、マスタユニットあるいはスレーブユニット内で生成されるタイミング信号の出力タイミングを表わしている。
各段のチャートにおいて、マスタユニットの指示量は、同マスタユニットで制御されるモータの制御のための定量的指示量であり、スレーブユニットの指示量は、同スレーブユニットで制御されるモータの制御のための定量的指示量である。そして、ここでは一例として、「プログラムで指定されるマスタユニットの指示量は、1回のタイミング信号あたり移動量指示値10である一方、同じプログラムで指定されるスレーブユニットの指示量(補正前)は、1回のタイミング信号あたり移動量指示値20であり、これら各指示量で表わされる移動が、マスタユニットとスレーブユニットで同期して開始される」ように制御するケースを想定する。
先ず、プログラム開始前後及び終了前後のマスタユニットと仮想スレーブユニットのタイムチャートを見ると、両ユニット間で同期信号のタイミングが一致しているので、移動開始の指示量が出力されるタイミングも、両ユニットで一致している。仮想スレーブユニットにおける指示量も、プログラムで指定された通りであり、「指示量の補正」は行われない。
これに対して、プログラム開始前後及び終了前後のマスタユニットと実際のずれが想定されるスレーブユニットのタイムチャートを見ると、両ユニット間で同期信号のタイミングがずれており、このずれが前述のサイクル監視&位相差保持手段により“位相差δph”として検出・記憶される。従って、この位相差δphを補償できるように、指示量の補正が行われる。即ち、プログラム開始後のマスタユニットで最初に移動量10が指示された直後のスレーブユニット内のタイミング信号に合わせたタイミングで、補正された指示量を出力する。図示されている30と言う指示量は、位相差δph=0.5である場合の値であり、例えば位相差δph=0.1であれば、22(=20+20δph)が、スレーブユニットのサーボ制御部へ出力される。
このように、出力時に、検出された位相差δphを指示量のずれのデータに換算(補間計算)し、そのデータを本来の指示量に加算して指示する。そして、プログラムの終了時には、マスタユニットで最後に移動量10が指示された直後のスレーブユニット内のタイミング信号に合わせたタイミングで、タイミングのずれ相当のデータを減算して指示し、全体の移動量に誤差がでないようにする。なお、本例では移動指示量の例として10や20という値を使用しているが、これらはあくまで一例であり、どのような値でも、ずれに見合った補正量計算を行う上で何等問題はない。
なお、スレーブユニット#2で行われる「タイミング信号」の発生タイミングの調整方式では、このような補正は行われず、その代わりに、“位相差δph”を監視し、これを前述のデジタルフィルタを通してタイミング信号発生周期調整手段に与え、タイミング信号発生部で生成されるタイミング信号の発生タイミングを、そのずれを解消するように調整(シフト)することで同時制御が行われるようにする。換言すれば、スレーブユニット#2では、スレーブユニット#2を上記の「仮想スレーブユニット」に近付けるようなタイミング信号発生部の調整が行われ、それによって同期制御が達成される。
図3は、スレーブユニット#1の例で説明した如く、指示量補正を行ってマスタユニットとの間で同期制御を行う場合の処理の概要を説明するフローチャートである。電源が投入されると、マスタユニット側、スレーブユニット側で夫々処理が時間進行(1点鎖線矢印参照)とともに進行する。なお、ここでは、「指示量」は、モータへ供給する電流の指示量であるとする。各ステップの要点を記せば、次のようになる。
(マスタユニット側)
●ステップS1;プロセッサは、ネット回線デバイスに同期タイミングを伝達する。
●ステップS2;ネット回線デバイスは、プロセッサから受け取った同期タイミングに基づき、それに対応するタイミング信号(タイミング信号生成部で生成)を指定した同期用パケットを作成し、スレーブユニットに送信する。
●ステップS3;ネット回線で処理周期(ITP)N回後(Nは予め定めた正整数)に、プログラムをスタートする旨の内容をスレーブユニットに送信する。
●ステップS4;N回の処理周期後まで待って、ステップS5へ進む。
●ステップS5;プロセッサはプログラムの処理を開始する。
●ステップS6;プロセッサはプログラムの諸処理が実行されたら、プログラムを終了する。
(スレーブユニット側)
●ステップT1;マスタユニットから送信された同期タイミング信号(同期パケット)を、ネット回線デバイスで受信する。
●ステップT2;ネット回線デバイスは、受信した同期タイミング信号をメモリに書き込む。
●ステップT3;サイクル監視&位相差保持デバイスは、ネット回線デバイスによる上記書き込みのサイクルとシステム内(スレーブユニット内)のタイミング信号の位相差を保持する。
●ステップT4;プロセッサは、サイクル監視&位相差保持デバイスから位相差を読み出す。なお、この時点から、スレーブユニットは位相差情報を得たことになり、以後、指示量(ここではモータへの電流指示量)の補正が可能となる。
●ステップT5;ネット回線デバイスは、マスタユニット側のステップS3から送信された内容を受信し、メモリに書き込む。
●ステップT6;メモリから、処理周期N回後に、プログラムをスタートする旨の内容を読み出す。
●ステップT7;N回の処理周期後まで待って、ステップT8へ進む。
●ステップT8;プロセッサは、プログラムの処理を開始する。但し、1回目の処理周期でのみ、ステップT4で読み出された位相差に応じて指示量(ここではモータへの電流指示量)を前述した態様にならって補正する。
●ステップT9;プロセッサはプログラムの諸処理が実行されたら、プログラムを終了する。
最後に図4のフローチャートを参照して、スレーブユニット#2の例で説明した如く、スレーブ内のタイミング信号の発生タイミングを調整(修正)し、マスタユニットとの間で同期制御を行う場合の処理の概要を説明する。電源が投入されると、マスタユニット側、スレーブユニット側で夫々処理が時間進行(1点鎖線矢印参照)とともに進行する。なお、ここでは、「指示量」は、モータへ供給する電流の指示量であるとする。各ステップの要点を記せば、次のようになる。
(マスタユニット側)
●ステップA1;プロセッサは、ネット回線デバイスに同期タイミングを伝達する。
●ステップA2;ネット回線デバイスは、プロセッサから受け取った同期タイミングに基づき、それに対応するタイミング信号(タイミング信号生成部で生成)を指定した同期用パケットを作成し、スレーブユニットに送信する。
●ステップA3;ネット回線で処理周期(ITP)N回後(Nは予め定めた正整数)に、プログラムをスタートする旨の内容をスレーブユニットに送信する。
●ステップA4;N回の処理周期後まで待って、ステップA5へ進む。
●ステップA5;プロセッサはプログラムの処理を開始する。
●ステップA6;プロセッサはプログラムの諸処理が実行されたら、プログラムを終了する。
(スレーブユニット側)
●ステップB1;マスタユニットから送信された同期タイミング信号(同期パケット)を、ネット回線デバイスで受信する。
●ステップB2;ネット回線デバイスは、受信した同期タイミング信号をメモリに書き込む。
●ステップB3;サイクル監視&位相差保持デバイスは、ネット回線デバイスによる上記書き込みのサイクルとシステム内(スレーブユニット内)のタイミング信号の位相差を保持する。
●ステップB4;サイクル監視&位相差保持デバイスは、ディジタルフィルタに位相差情報を伝達する。
●ステップB5;タイミング周期調整手段は、ディジタルフィルタから位相差情報をもらい、マスタユニット側のタイミング信号に合わせたタイミング信号を生成する。
●ステップB6;ネット回線デバイスは、マスタユニット側のステップA3から送信された内容を受信し、メモリに書き込む。
●ステップB7;メモリから、処理周期N回後に、プログラムをスタートする旨の内容を読み出す。
●ステップB8;N回の処理周期後まで待って、ステップB9へ進む。
●ステップB9;プロセッサは、プログラムの処理を開始する。
●ステップB10;プロセッサはプログラムの諸処理が実行されたら、プログラムを終了する。
本発明に従った実施形態に係る同期制御システムの全体構成を概略描示した図である。 本発明の第1の形態で行われる指示量補正の具体例について説明するタイムチャートである。 スレーブユニットで指示量補正を行ってマスタユニットとの間で同期制御を行う場合の処理の概要を説明するフローチャートである。 スレーブユニットでタイミング信号発生のタイミング調整を行ってマスタユニットとの間で同期制御を行う場合の処理の概要を説明するフローチャートである。

Claims (2)

  1. 周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システムにおいて、
    前記マスタユニット側タイミング信号に基づいて、前記スレーブユニットのための同期用パケットを発生させ、前記スレーブユニットに渡す手段と、
    前記同期用パケットの前記スレーブユニットによる受信に応じてスレーブユニット内のバスサイクルを発生させるバスサイクル発生手段と、
    前記バスサイクル発生手段による前記バスサイクルの発生タイミングと、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングとの位相差を算出し、記憶するサイクル監視手段と、
    該サイクル監視手段から検出される位相差に基づいて、前記スレーブユニットで制御されるモータの制御に関する定量的な指示量を補正し出力する手段とを備えたことを特徴とする、同期制御システム。
  2. 周期的にマスタユニット側タイミング信号を生成する手段を有するマスタユニットとなる1台の制御装置と、周期的にスレーブユニット側タイミング信号を生成する手段を夫々有するスレーブユニットとなる1台以上の制御装置とを通信路で接続し、これら異なる制御装置で制御されるモータ同士の同期制御を行う同期制御システムにおいて、
    前記マスタユニット側タイミング信号に基づいて、前記スレーブユニットのための同期用パケットを発生させ、前記スレーブユニットに渡す手段と、
    前記同期用パケットの前記スレーブユニットによる受信に応じてスレーブユニット内のバスサイクルを発生させるバスサイクル発生手段と、
    前記バスサイクル発生手段による前記バスサイクルの発生タイミングと、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングとの位相差を算出し、記憶するサイクル監視手段と、
    前記スレーブユニット側タイミング信号の発生周期を調整する調整手段と、
    前記サイクル監視手段から得られる位相差情報に基づいて、前記スレーブユニット側タイミング信号の発生タイミングの調整量を、前記調整手段に出力するディジタルフィルタ手段を備えたことを特徴とする、同期制御システム。
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