JP2007083711A - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク流路パターンを高密度化した場合であっても、精度良くインクジェット記録ヘッドを製造可能な方法を提供する。
【解決手段】インク吐出圧力発生素子2が形成された基板1上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターン3を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上に、前記溶解可能な樹脂の溶解可能性が失われない温度で、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層4を形成する工程と、前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口5を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂層を溶出する工程と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】インク吐出圧力発生素子2が形成された基板1上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターン3を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上に、前記溶解可能な樹脂の溶解可能性が失われない温度で、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層4を形成する工程と、前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口5を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂層を溶出する工程と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
インクジェット記録方式(液体噴射記録方式)に適用されるインクジェット記録ヘッドは、一般に微細な記録液吐出口、液流路、および液流路の一部に設けられる液体吐出圧力発生部を複数備えている。そして、このようなインクジェット記録ヘッドで高品位の画像を得るためには、前記吐出口から吐出される記録液(インク)小滴がそれぞれの吐出口より常に同じ体積、吐出速度で吐出されることが望ましい。
これを達成する方法として、特許文献1〜4には、インク吐出圧力発生素子(電気熱変換素子)に熱エネルギーを発生させ、インク内に気泡を形成させ、この気泡を外気と連通させてインク液滴を吐出させる方法が開示されている。このような方法を実現するためのインクジェット記録ヘッドとしては、電気熱変換素子と吐出口との距離(以下、「OH距離」と称す。)が短い方が好ましい。また、これらの方法においては、OH距離がその吐出体積をほぼ決定するため、OH距離を正確に、また再現よく設定できることが必要である。
従来、インクジェット記録ヘッドの製造方法としては、特許文献5及び6に示す方法が知られている。この方法は、インク吐出圧力発生素子が形成された基板上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する。その後、常温にて固体状のエポキシ樹脂を含む被覆樹脂を溶媒に溶解して、これを前記溶解可能な樹脂層上にソルベントコートすることによって、前記溶解可能な樹脂層上にインク流路壁となる被覆樹脂層を形成する。次いで前記インク吐出圧力発生素子上方の前記被覆樹脂層に吐出口を形成してから、前記溶解可能な樹脂層を溶出するものである。この方法により、インク吐出圧力発生素子と吐出口間の距離を極めて高い精度で短くかつ再現よく設定可能で、高品位記録が可能なインクジェット記録ヘッドを製造することができる。また、この方法では、製造工程を短縮化することができ、安価で信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを得ることができる。
米国特許第5218376号明細書
特開平4−10940号公報
特開平4−10941号公報
特開平4−10942号公報
米国特許第5478606号明細書
特開平6−286149号公報
さて、インクジェット記録装置に対しては、デジタル写真市場の成長に伴い、さらなる高スループット化の要求が高まってきている。この要求に応えるための方法の一つとして、吐出口を副走査方向に、より高密度かつ多数配列することが考えられる。この場合、吐出口のレイアウトによっては、インク流路パターン端の肩の部分と、吐出口が形成される位置との水平距離(以下、「OC距離」と称す。図3参照)を短くする必要が生じる。
しかしながら、この距離が短くなっても、吐出口の開口径は変わらないため、図3に示す距離hが短くなる。ここで、特許文献5及び6に記載の方法では、流路パターン端近傍の被覆樹脂層の表面には多少の凹凸が生じるため、距離hがあまりに短いと吐出口がこの凹凸が生じる領域に形成されてしまう。その結果、各吐出口のOH距離の再現性が失われてしまうと同時に、一つの吐出口においても吐出口外周の縁におけるOH距離が位置によってばらつくことになってしまう。このため、吐出体積や吐出方向が吐出口ごとに、また記録ヘッドごとにばらついてしまう恐れがあった。
そこで、本発明では、インク流路パターンを高密度化した場合であっても、精度良くインクジェット記録ヘッドを製造可能な方法を提供することを目的とする。
本発明は、被覆樹脂層の凹凸発生の一因が被覆樹脂層形成の際に使用する溶媒であることを突き止め、その溶媒を使用しないことで課題を解決することを提案するものである。
即ち、
(1)インク吐出圧力発生素子が形成された基板上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する工程と、
(2)前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上に、該溶解可能な樹脂の溶解可能性が失われない温度で、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層を形成する工程と、
(3)前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口を形成する工程と、
(4)前記溶解可能な樹脂を溶出する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法を提案するものである。
(1)インク吐出圧力発生素子が形成された基板上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する工程と、
(2)前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上に、該溶解可能な樹脂の溶解可能性が失われない温度で、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層を形成する工程と、
(3)前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口を形成する工程と、
(4)前記溶解可能な樹脂を溶出する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法を提案するものである。
本発明によれば、インク流路パターンを高密度化した場合であっても、精度良くインクジェット記録ヘッドを製造できる。
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
図1(a)から(d)は、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法に係る基本的な実施形態を示すための模式図であり、それぞれには、本発明の方法に係るインクジェット記録ヘッドの構成とその製造手順の一例が示されている。
まず、本発明では、図1(a)に示すように、基板1としての単結晶のシリコンからなる基板が好適に用いられる。このような基板は、液流路構成部材の一部として機能し、また、後述のインク流路およびインク吐出口を形成する材料層(被覆樹脂層4)の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用できる。
上記基板上には、インク吐出圧力発生素子2が所望の個数配置される(図1(a))。このようなインク吐出圧力発生素子2によって記録液滴を吐出させるための吐出圧力が記録液に与えられ、記録液が記録媒体に飛翔、定着することで記録が行われる。ちなみに、例えば、上記インク吐出圧力発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、記録液に状態変化を生起させ吐出圧力を発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出圧力が発生される。
なお、これらのインク吐出圧力発生素子2には、これら素子を動作させるための駆動回路(図示しない)が接続されており、この回路を構成する導電層11、絶縁層12、パッシベイション層13が前記基板上に適宜形成されている。さらにこの駆動回路には、回路に制御信号および駆動電力を入力するための外部電極接続用パッド14が接続されている(図1(a))。また、インク吐出圧力発生素子2の耐用性の向上を目的として、保護層等の各種機能層を設けることもできる。
特に、基板1には、後に形成する被覆樹脂層との密着性を高めるための密着層が設けられていることが好ましい。基板1上に密着層を形成する工程は、被覆樹脂層を形成する工程(後述する工程(2))より前に行えば良い。密着層は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂等で形成することができる。
ここで、インク供給のためのインク供給口を基板に形成しても良い。例えば、基板1の後方よりインクを供給可能な穴を基板に形成する。このインク供給口の形成においては、基板に穴を形成できる手段であれば、いずれの方法も使用できる。例えば、ドリル等機械的手段にて形成しても構わないし、レーザー等の光エネルギーを使用しても構わない。また、基板1の裏面にレジストパターン等を形成して化学的、物理的にエッチングしても構わない。
ただし、インク供給口の形成は、後述するようにインク吐出口形成後でも構わない。また、インク供給口を基板1に形成せず、溶解可能な樹脂によりインク供給口となる部分を含むインク流路パターンを形成する方法や、被覆樹脂層にインク供給口を形成する方法により、基板に対してインク吐出口と同じ面に設けても良い。
また、以下の手順でインク供給口を形成しても良い。すなわち、はじめに、基板のインク供給口が形成される位置のインク吐出圧力発生素子側の面に存在する、絶縁層やパッシベイション層、あるいは電導層をエッチングストップ層として配置しておく。次に、後述の溶解可能な樹脂によるインク流路パターンの形成、被覆樹脂層の形成、被覆樹脂層へのインク吐出口の形成を行う。その後、基板の反対側の面からエッチングストップ層までエッチングを行う。
次いで、図1(b)に示すように、インク吐出圧力発生素子2が形成された基板1上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターン3を形成する(工程(1))。例えば光照射により所望の物性変化を起こす感光性材料にて形成する手段が挙げられる。上述の樹脂としては、例えばポリメチルイソプロピルケトン、ポリビニルケトン等のビニルケトン系光崩壊性高分子化合物、またはポリメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルから構成される高分子化合物などを用いることができる。比較的熱に強いことから、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルから構成される高分子化合物を用いることが好ましい。
インク流路パターン3は、例えば、基板1上に溶解可能な樹脂をスピンコート法により成膜して溶解可能な樹脂層を形成し、UV光等により所望のパターン露光を行った後現像及びリンス処理を行うこと形成することができる。なお、この溶解可能な樹脂で形成されたインク流路パターン3は、インク供給口6とインク吐出圧力発生素子2との間をインクが流れるインク流路を確保するためのものである。
本発明では、高密度のインク流路パターン3を形成することができる。例えば、OC距離が3〜30μmの高密度のパターンを形成することができる。もちろん、これより密度の低いパターンを形成することもできる。また、インク流路パターンの厚さは、通常5〜40μm程度とする。
基板に既にインク供給口が設けられている場合には、溶解可能な樹脂を適当な溶剤に溶解し、PETなどのフィルム上に塗布、乾燥してドライフィルムを作製し、インク供給口を塞ぐようにラミネートによって形成することが好ましい。
次に、溶解可能な樹脂によりインク流路パターン3が形成された基板1上に、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層4を形成する(工程(2))。具体的には、被覆樹脂層4を形成するための原料である一種類もしくは複数種類のソースガスを真空の槽内に導入し、溶解可能な樹脂にてインク流路パターン3が形成された基板1上でソースガスを反応させることで、被覆樹脂層4を形成することができる。
ここで、被覆樹脂層4を形成する際には、溶解可能な樹脂で形成したインク流路パターンの溶解可能性が失われない温度を維持することが必要となる。すなわち、使用した溶解可能な樹脂にもよるが、被覆樹脂層4は250℃以下の低温にて気相成長が可能な物質を選択することが好ましい。また、溶解可能な樹脂で形成したインク流路パターンを変形させない温度で気相成長可能な物質を選択することがより好ましい。
被覆樹脂層4を形成する樹脂としては、例えば、ポリパラキシリレン、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン、およびポリモノフロロパラキシリレンのいずれかを選択することができる。これらの樹脂による被覆樹脂層4を形成する場合、例えば、粉体であるダイマーを真空中で気化させ、さらに700℃程度の高温でラジカルモノマー化したものを、同じく真空に維持されたチャンバー内に導入し、中のワークに堆積させて成膜することができる。このときのワークは室温状態であり、溶解可能な樹脂への影響はほとんどない。
また、被覆樹脂層4を形成する樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、およびポリアゾメチン樹脂のいずれかを選択することもできる。例えば、ポリイミド樹脂による被覆樹脂層4を形成する場合、次のようになる。すなわち、原料である無水ピロメリト酸とオキシジアニリンを気化させ、200℃に維持された真空槽に導入し、中のワークに蒸着重合で生成するポリアミド酸を堆積させた後、250℃に加熱処理することでポリイミド樹脂の層とすることができる。この場合は250℃まで加熱することになるので、前記の溶解可能な樹脂として比較的熱に強いポリメチルメタクリレート等を選択することになる。
また、被覆樹脂層4を形成する樹脂として、ポリ尿素樹脂を選択することもできる。ポリ尿素樹脂による被覆樹脂層を形成する場合、例えば、まずポリ尿素樹脂の原料である芳香族又は脂肪族のジアミンと芳香族又は脂肪族のジイソシアネートとをそれぞれ気化させる。そして、気化された原料を真空槽に導入し、100℃以下の温度に制御されたワークに堆積させることで成膜を行うことができる。このときもワークは100℃以下であり、溶解可能な樹脂への影響はほとんどない。
被覆樹脂層を形成する有機材料は、1種類でも良く、2種類以上併用することもできる。被覆樹脂層を形成する有機材料として2種類以上併用する際は、上記の好ましい有機材料のいずれかを主成分として用いることが好ましい。なお、主成分とは、被覆樹脂層を形成する有機材料のうち最も含有量の多い成分を意味する。
このように有機物を気相成長させるにあたって、成膜対象のワークの温度が例えば250℃以下の低温でも十分に成膜可能である。
被覆樹脂層の厚さは、インク流路パターン3が形成されている位置において、通常2〜100μm程度とする。
次いで、図1(c)に示すように、前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口を形成する(工程(3))。
この工程(3)としては、被覆樹脂層上にレジストを塗布し、フォトリソ技術により、インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分にインク吐出口を形成可能なようにレジストのパターニングをする。その後、エッチングにより被覆樹脂層を加工してレジストを除去することで、インク吐出口を形成することができる。エッチングは、例えば、酸素ガス、または塩素ガスが混合されたエッチングガスを用いてRIE等により行うことができる。
また、工程(3)として、機械的または物理的な加工方法によりインク吐出口を形成することもできる。具体的には、マイクロドリル、レーザー、FIB等の加工方法が挙げられる。
さらに、被覆樹脂層を形成する有機材料としてポリ尿素樹脂を選択した場合は、気相堆積直後のポリ尿素樹脂がオリゴマーの状態であり、これによりネガの感光性を有することを利用することができる。気相堆積直後のポリ尿素樹脂はそのままでは200℃以上に急加熱されると解重合反応が進み、それが真空状態であるとモノマーが気化して膜が消失する。しかしUV光を照射すると200℃以上に加熱しても膜が消失しないことがアルバック(株)の高橋氏により報告されている。
(Photoresist Characteristics of Polyurea Films Prepared by Vapor Deposition Polymerization (Jpn. J. Phys.Vol.33(1994) pp. L1721−L1724))
このレポートの中で、UV光を照射されると未反応のイソシアネート基とユリア結合部が反応、結合し、別の構造に変わると同時に、分子量が大きくなるため、ネガの感光性を示すとしている。
(Photoresist Characteristics of Polyurea Films Prepared by Vapor Deposition Polymerization (Jpn. J. Phys.Vol.33(1994) pp. L1721−L1724))
このレポートの中で、UV光を照射されると未反応のイソシアネート基とユリア結合部が反応、結合し、別の構造に変わると同時に、分子量が大きくなるため、ネガの感光性を示すとしている。
作製するインクジェット記録ヘッドの形状、つまり被服樹脂層の厚さ、インク吐出口の大きさによってはこの特性を利用でき、例えば、以下のような方法によりインク吐出口を形成することができる。まず、少なくともインク吐出口形成部分を含む領域をフォトマスクでマスキングした状態でUV光により露光する。このとき露光は例えば出力50WのXe−Hgランプを搭載したキヤノン製PLA501(商品名)などを使用すると良い。その後、選択した溶解可能な樹脂に耐熱性がない場合には先にこれを溶出除去し、真空中で少なくとも200℃以上まで加熱することによりインク吐出口を形成することができる。このとき、圧力は5×10-4Pa以下であり、加熱は250℃で30分間以上維持することが好ましい。
あるいは、約10質量%のNaOH水溶液などのアルカリ溶液に20分ほど浸漬してユリア結合部を加水分解させて低分子化させてもよい。また、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤によってUV照射されていない低分子状態の部分を溶出除去したりすることにより現像し、インク吐出口を形成することができる。この場合は、レジストを用いることなく、多数のインク吐出口を一括に形成できるので、コスト的に有利である。
次に、これまでにインク供給口を形成していない場合は、基板裏面から加工を行ってインク供給口を形成することもできる。加工方法は先述のとおり複数の手法を取りうるが、基板表面に溶解可能な樹脂層を形成した後では基板表面に形成されたエッチングストップ層までエッチングを行い、その後エッチングストップ層と溶解可能な樹脂層とを選択的に除去する方法が好適である。
そして、基板を溶剤等に浸漬し、インク吐出口5またはインク供給口6より溶解可能な樹脂を除去する(工程(4)、図1(d))。溶解可能な樹脂としてビニルケトン系光崩壊性高分子化合物、またはメタクリル酸エステルから構成される高分子化合物のような感光性材料を使用した場合には、前記被覆樹脂層4越しにUV光にて露光し、乳酸メチル等に浸漬して溶出させることができる。場合によっては超音波等を付与してもよい。
その後、基板からダイシングによりチップ状態に切り出し、カートリッジ状態に組み立てることで、本発明のインクジェット記録ヘッドを得ることができる。
また、多くのインクジェット記録装置では、画質の信頼性維持のため、ブレードにより被覆樹脂層の表面を拭く回復動作を行う。この動作に対する耐性を上げるためには被覆樹脂層の表面をインク吐出口近傍だけではなく広範囲で平坦にすることが望まれる。そこで、溶解可能な樹脂をインク流路形成位置ではないところにダミーパターンとして配置することが好ましい。これにより、被覆樹脂層の表面を平坦化することができる(図2)。このとき、インク流路形成のための溶解可能な樹脂のパターンとダミーパターンの距離は、被覆樹脂層の成膜厚さの2倍以下にすることが好ましい。
以下、本発明の実施例を示す。
(実施例1)
まず、単結晶のシリコン基板上に、インク吐出圧力発生素子としての電気熱変換素子(材質TaNなる発熱抵抗体)とその駆動回路、および酸化シリコン膜からなるエッチングストップ層を汎用の半導体工程により形成した。
まず、単結晶のシリコン基板上に、インク吐出圧力発生素子としての電気熱変換素子(材質TaNなる発熱抵抗体)とその駆動回路、および酸化シリコン膜からなるエッチングストップ層を汎用の半導体工程により形成した。
次に、密着層としてポリアミド樹脂を塗布、ベークした後に、ノボラック系フォトレジストを塗布した。フォトリソ技術でノボラック系フォトレジストをパターニングした後に、CF4とO2によるケミカルドライエッチングにより、少なくとも電気熱変換素子上と、外部電極接続用パッド上と、インク供給口形成位置のポリアミド樹脂を除去した。その後、ノボラック系フォトレジストをモノアミン系剥離液により除去した。
次いで、前記基板上に、溶解可能な樹脂としてポリメチルイソプロペニルケトンをスピンコート法により成膜して溶解可能な樹脂層を形成した。120℃にて20分間プリベークした後、波長約248nmのUV光により20J/cm2程度のパターン露光を行った。次いで、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/1を用いて現像し、キシレンにてリンスを行った。なお、この溶解可能な樹脂で形成されたインク流路パターンは、インク供給口と電気熱変換素子との間をインクが流れるインク流路を確保するためのものである。
次いで、ポリパラキシリレンをCVD法により成膜した。これはチャンバーを0.1Paオーダーまで真空引きした状態で、原料となる粉状ダイマーを140℃程度に加熱して昇華させ、それを約650℃の分解炉でラジカルモノマー化し、ワークに供給することにより行った。その上にノボラック系フォトレジストを塗布した。次いで、然るべきパターンのフォトマスクを用い、インク吐出口形成のためのパターン露光を行った。その後、約3質量%のTMAH水溶液に浸漬することで現像を行った。次いで、平行平板型RIEに酸素ガスを導入して、エッチングしてインク吐出口を形成した後、ノボラック系フォトレジストをモノアミン系の剥離液により除去した。
次に、基板裏面にノボラック系レジストを塗布し、フォトリソ工程によりインク供給口形成位置が除去されるようにパターニングした。その後、基板裏面からICP−RIEエッチャーにより、表面の酸化シリコン膜までエッチングを行い、インク供給口を形成した。
基板表面の樹脂層を環化ゴムにより保護した状態でBHF溶液に浸漬し、インク供給口底部の酸化シリコン膜を除去した。つづけて、ケミカルドライエッチングにより窒化シリコンより成るパッシベイション層を除去した。この後、キシレンにより環化ゴムを除去した。
基板表面より波長約248nmのUV光を20J/cm2程度照射し、ポリパラキシリレンからなる被覆樹脂層を通してポリメチルイソプロペニルケトンを感光させた後、乳酸メチルにより溶解除去した。
シリコン基板から、ヘッドに組み込まれるチップ部分をダイサーにより切り出し、カートリッジに組み立てることにより本発明のインクジェット記録ヘッドを得た。
(実施例2)
本実施例においては、溶解可能な樹脂としてポリメチルメタクリレートを選択し、これをパターニングしてインク流路パターンを形成するまでは実施例1と同工程で行った。
本実施例においては、溶解可能な樹脂としてポリメチルメタクリレートを選択し、これをパターニングしてインク流路パターンを形成するまでは実施例1と同工程で行った。
次に、基板を10-3Pa程度まで排気された真空チャンバーに入れ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と4,4’−メチレンジアニリン(MDA)をそれぞれ71℃、100℃に加熱、昇華させることで導入した。このようにして、オリゴマー状態のポリ尿素樹脂を蒸着重合法により成膜した。これにノボラック系レジストを塗布し、露光、現像工程の後にドライエッチングによりインク吐出口を形成した。
次に、基板裏面にノボラック系レジストを塗布し、フォトリソ工程によりインク供給口形成位置が除去されるようにパターニングした。その後、基板裏面からICP−RIEエッチャーにより、表面の酸化シリコン膜までエッチングを行い、インク供給口を形成した。
基板表面の樹脂層を環化ゴムにより保護した状態でBHFに浸漬し、インク供給口底部の酸化シリコン膜を除去した。つづけて、ケミカルドライエッチングにより窒化シリコンより成るパッシベイション層を除去した。
基板表面より波長約248nmのUV光を20J/cm2程度照射し、ポリ尿素樹脂からなる被覆樹脂層を通してポリメチルメタクリレートを感光させた後、乳酸メチルにより除去した。
シリコン基板から、ヘッドに組み込まれるチップ部分をダイサーにより切り出し、カートリッジに組み立てることにより本発明のインクジェット記録ヘッドを得た。
本発明のインクジェット記録ヘッドはインク吐出口が副走査方向に高密度に配置されており、高スループットを実現しながら、インク滴の吐出方向が安定しており、高品質の画質が得られるものであった。
1 基板
2 インク吐出圧力発生素子
3 インク流路パターン
4 被覆樹脂層
5 インク吐出口
6 インク供給口
11 導電層
12 絶縁層
13 パッシベイション層
14 外部電極接続用パッド
21 ダミーパターン
2 インク吐出圧力発生素子
3 インク流路パターン
4 被覆樹脂層
5 インク吐出口
6 インク供給口
11 導電層
12 絶縁層
13 パッシベイション層
14 外部電極接続用パッド
21 ダミーパターン
Claims (8)
- インク吐出圧力発生素子が形成された基板上に、溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する工程と、
前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上に、該溶解可能な樹脂の溶解可能性が失われない温度で、気相成長法により有機材料を堆積させて被覆樹脂層を形成する工程と、
前記被覆樹脂層の、前記インク吐出圧力発生素子の上方に位置する部分に、インク吐出口を形成する工程と、
前記溶解可能な樹脂を溶出する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。 - 前記基板上に、前記被覆樹脂層との密着性を高めるための密着層を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記被覆樹脂層を形成する工程として、被覆樹脂層を形成するための原料である一種類もしくは複数種類のソースガスを真空の槽内に導入し、前記溶解可能な樹脂にてインク流路パターンが形成された基板上で前記ソースガスを反応させることで、前記被覆樹脂層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記被覆樹脂層を形成する有機材料として、ポリ尿素樹脂を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記被覆樹脂層を形成する有機材料として、ポリパラキシリレン、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン、およびポリモノフロロパラキシリレンのいずれかを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記被覆樹脂層を形成する有機材料として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、およびポリアゾメチン樹脂のいずれかを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記インク吐出口を形成する工程として、前記被覆樹脂層上にレジストを塗布し、フォトリソ技術により該レジストをパターニングした後に、エッチングにより前記被覆樹脂層を加工して前記レジストを除去することで、インク吐出口を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記インク吐出口を形成する工程として、機械的または物理的な加工方法によりインク吐出口を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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2006
- 2006-08-11 JP JP2006219781A patent/JP2007083711A/ja active Pending
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