JP2007083239A - 中空糸状半透膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】 機械的強度が高く、かつ透水性能が高い中空糸状半透膜の提供。
【解決手段】 中空糸状の組紐の外表面に半透膜層を有する中空糸状半透膜であり、組紐と半透膜層の間に組紐に半透膜層の一部が入り込んだ複合層を有し、半透膜層が平均孔径0.01〜5μmの範囲の空孔を有しており、前記半透膜層の厚さが前記組紐の厚さの1/3以下である中空糸状半透膜。
【選択図】 なし
【解決手段】 中空糸状の組紐の外表面に半透膜層を有する中空糸状半透膜であり、組紐と半透膜層の間に組紐に半透膜層の一部が入り込んだ複合層を有し、半透膜層が平均孔径0.01〜5μmの範囲の空孔を有しており、前記半透膜層の厚さが前記組紐の厚さの1/3以下である中空糸状半透膜。
【選択図】 なし
Description
本発明は、機械的強度が高い中空糸状半透膜に関する。
中空糸状半透膜は、一般に紡糸原液(製膜溶液)となるポリマー溶液を二重紡糸口金から押し出した後、凝固・乾燥させることにより製造されるもので、食品分野、医薬品分野、電子工業分野、水処理分野等の各種分野において汎用されている。
中空糸状半透膜を水処理分野に適用する場合は、例えば、所要数を束ねた中空糸状半透膜をケースハウジング内に収容し、膜モジュールとして利用されているが、1本の中空糸状半透膜は非常に細く、機械的強度の低いものであるため、使用を継続する間に中空糸状半透膜が破断し、水処理能力が低下するという問題がある。更に、機械的強度が低いため、激しいエアーバブリング洗浄や逆圧洗浄が行えず、処理能力を充分に回復することが困難であるという問題もある。
このような問題を解決するものとして、特開昭52−81076号公報、米国特許5,472,607号明細書には、組紐表面に半透膜層を形成することで中空糸状半透膜の機械的強度を高めた中空糸状半透膜が開示されている。
しかし、特開昭52−81076号公報に開示された中空糸状半透膜は、組紐に半透膜層が完全に埋設されているため、機械的強度は高くなるものの透水性能が低くなり、実施例によれば湿式紡糸法を適用しているため、乾燥に弱く、保管時の取り扱いが非常に煩雑となる。
また米国特許5,472,607号明細書に開示された中空糸状半透膜は、4相構造からなる半透膜層が組紐には埋設されていないため、透水性能は高いものの機械的強度が低くなり、実施例によれば湿式紡糸法を適用しているため、乾燥に弱く、保管時の取り扱いが非常に煩雑となる。
特開昭52−81076号公報
米国特許5,472,607号明細書
本発明は、機械的強度が高く、かつ透水性能が高い中空糸状半透膜及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題の解決手段として、中空糸状の組紐の外表面に半透膜層を有する中空糸状半透膜であり、組紐と半透膜層の間に組紐に半透膜層の一部が入り込んだ複合層を有し、半透膜層が平均孔径0.01〜5μmの範囲の空孔を有しており、前記半透膜層の厚さが前記組紐の厚さの1/3以下である中空糸状半透膜を提供する。
本発明の中空糸状半透膜は、半透膜層の一部が複合層として組紐と一体化されていることと、半透膜層の構造とが相互に関連して作用することで、半透膜層が組紐に埋設されていないもの(複合層がないもの)に比べて機械的強度が高く、半透膜層が組紐に完全に埋設されているもの(複合層のみで半透膜層がないもの)に比べて透水性能が高くなる。
本発明の中空糸状半透膜は、中空糸状の組紐と半透膜層とからなるもので、組紐の外表面側に半透膜層を有し、組紐と半透膜層との間には、組紐に半透膜層が入り込んだ複合層を有している。複合層は、組紐に存在する間隙に半透膜層の形成材料が浸透して形成されるもので、前記間隙は、例えばフィラメントにより組紐を作製するとき、フィラメント間に存在する間隙と、フィラメント素材自体に存在する孔とを意味する。
中空糸状の組紐は、半透膜層を支持することができ、かつ半透膜層の一部と複合層を形成できる多孔質構造を有するものであれば良い。
組紐は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、セルロース、セルロースアセテート等の天然又は合成樹脂繊維、ステンレス、黄銅、銅等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等からなるものを用いることができる。
組紐の内径及び外径は特に制限されるものではないが、取り扱い易さや製造技術上の問題から、内径が好ましくは0.2〜3.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmで、外径が好ましくは0.5〜5.0mm、より好ましくは1.0〜3.0mmのものを用いることができる。
半透膜層は、製膜能を有するポリマーから形成されたもので、平均孔径が0.01〜5μm、好ましくは0.02〜3μm、より好ましくは0.05〜2μmの範囲の空孔を有しているが、10μm以上の径の空孔を含んでないことが好ましい。
半透膜層は、外表面に緻密なスキン層を有し、内部にほぼ均一な孔径を有する空孔からなる多孔質構造(スポンジ構造)を有するもの、又は外表面に緻密なスキン層を有し、外表面から複合層に向かって孔径が連続的に小さくなった空孔からなる多孔質構造(傾斜型構造)を有するものにすることができる。ここで「ほぼ均一な孔径」とは、例えば孔径が1μmの空孔を基準にすると、0.2〜3μm程度の範囲のものを含む意味である。
半透膜層の厚さは、中空糸状半透膜の機械的強度を高めるため、組紐の厚さよりも小さいことが好ましく、組紐の厚さの1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましく、1/5以下であることが更に好ましい。
複合層は、組紐の空隙に半透膜層の一部が入り込み、組紐と一体化されたものである。複合層の厚みは特に制限されるものではないが、複合層の厚みが大きくなると機械的強度が向上し、複合層の厚みが小さくなると透水性能が向上するので、これらの性質を高いレベルで発揮させるため、半透膜層の層構造との関連において複合層の厚みを決定することが好ましい。
複合層の厚みは、複合層の厚み/半透膜層の厚みが1/30〜1/5となる範囲であることが好ましく、1/20〜1/3となる範囲がより好ましく、1/10〜1/2となる範囲が更に好ましい。
半透膜層は、製膜能を有するポリマー、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ブチル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロースエステル化合物、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテル化合物等のセルロース系材料、ポリスルホン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール等から形成することができるが、これらの中でもセルロース系材料が好ましく、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ブチル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロースエステル化合物が特に好ましい。
半透膜層は、乾式法及び湿式法のいずれの方法で形成されたものでも良いが、乾燥雰囲気中における耐久性を高めるため、乾式法(乾式相転換法)により形成されたものが好ましい。
本発明の中空糸状半透膜は、支持体となる組紐と複合層の作用により、高い機械的強度を有しており、組紐自体の強度、複合層の厚み等により、機械的強度を調整することができる。本発明では、JIS K7113による引張強さは50MPa以上のものが好ましく、100MPa以上のものがより好ましく、500MPa以上のものが更に好ましい。
次に、上記した中空糸状半透膜の製造に適した方法を説明する。下記の各工程からなる製造方法においては、通常、当業者により中空糸状半透膜の製造でなされる処理工程を追加することができる。
第1工程は、製膜溶液を中空糸状の組紐の表面に付着させる工程である。この工程の処理は、製膜溶液を入れた容器中に中空糸状の組紐を浸漬し、所要時間放置する方法、製膜溶液を入れた容器中に中空糸状の組紐を連続的に潜らせる方法、中空糸状の組紐の編組工程(組紐を編む工程)において、編まれている状態の組紐表面に製膜溶液を連続的に噴霧、噴射又は塗布する方法等を適用できる。
処理時間は、製膜溶液の種類及び濃度、組紐の密度、中空糸状半透膜の透水性能等に応じて、所望の厚さの半透膜層及び複合層が形成されるように調整する。
製膜溶液を調製するための溶媒は、半透膜層を形成するポリマーを溶解できるものであれば特に制限されず、1又は2以上の溶媒を併用することができる。
第2工程は、組紐の表面に付着した製膜溶液を凝固させる工程である。この工程の処理には、乾式法及び湿式法のいずれかを適用できるが、中空糸状半透膜の乾燥雰囲気中における耐久性を高めるため、乾式相転換法を適用することが好ましい。
乾式相転換法を適用する場合は、製膜溶液の濃度、溶媒の種類に応じて、1段処理するか、又は温度及び湿度条件を変化させて2段以上の処理をすることができる。処理温度及び湿度は、温度30〜200℃、好ましくは60〜150℃、相対湿度30〜95%、好ましくは60〜90%であり、処理時間は0.5〜60分間、好ましくは2〜30分間である。
湿式凝固法を適用する場合は、水等の凝固浴中に組紐を浸漬した後、乾燥する方法を適用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンコダック社製,分子量25,000)12質量%、アセトン35質量%、2−プロパノール35質量%、水18質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのガラス繊維素(繊維径5μm)からなる組紐を浸漬した。
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンコダック社製,分子量25,000)12質量%、アセトン35質量%、2−プロパノール35質量%、水18質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのガラス繊維素(繊維径5μm)からなる組紐を浸漬した。
この組紐を製膜溶液から取り出し、温度30℃、相対湿度80%の乾燥機内に5分間放置した後、更に温度70℃、相対湿度70%の乾燥機内で10分間乾燥し、中空糸状半透膜を得た。
得られた中空糸状半透膜は、厚さ15μmの半透膜層が組紐の外表面上に形成されており、半透膜層と組紐との間には、半透膜層が組紐の空隙に入り込んだ厚さ10μmの複合層が形成されていた。半透膜層は、外表面に平均孔径0.02μmの空孔を有し、残部は平均孔径1.5μmのほぼ均一な空孔を有する多孔質構造であった。なお、中空糸状半透膜の構造は、中空糸状半透膜を切断し、電界放射型走査電子顕微鏡(20,000倍)により確認した。以下の実施例、比較例においても同様である。
中空糸状半透膜のJIS K7113による引張強さは600MPaであった。また中空糸状半透膜を、温度70℃、相対湿度70%の乾燥雰囲気中に20時間放置したが、外観上の変化は見られなかった。
実施例2
酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製,酢化度55%、平均重合度250)5質量%、アセトン45質量%、シクロヘキサノール50質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのガラス繊維素(繊維径5μm)からなる組紐を浸漬した。
酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製,酢化度55%、平均重合度250)5質量%、アセトン45質量%、シクロヘキサノール50質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのガラス繊維素(繊維径5μm)からなる組紐を浸漬した。
この組紐を製膜溶液から取り出し、温度90℃、相対湿度60%の乾燥機内に10分間放置した。
得られた中空糸状半透膜は、厚さ10μmの半透膜層が組紐の外表面上に形成されており、半透膜層と組紐との間には、半透膜層が組紐の空隙に入り込んだ厚さ10μmの複合層が形成されていた。半透膜層は、外表面に平均孔径0.4μmの空孔を有し、残部は平均孔径3μmのほぼ均一な空孔を有する多孔質構造であった。
中空糸状半透膜のJIS K7113による引張強さは600MPaであった。また中空糸状半透膜を、温度70℃、相対湿度80%の乾燥雰囲気中に20時間放置したが、外観上の変化は見られなかった。
実施例3
ポリエーテルスルホン(住友化学社製,平均重合度3500)18質量%、ジメチルスルホキシド45質量%、ポリエチレングリコール(分子量200)37質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのポリエステル繊維素(繊維径10μm)からなる組紐を浸漬した。
ポリエーテルスルホン(住友化学社製,平均重合度3500)18質量%、ジメチルスルホキシド45質量%、ポリエチレングリコール(分子量200)37質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのポリエステル繊維素(繊維径10μm)からなる組紐を浸漬した。
この組紐を製膜溶液から取り出し、30℃の水浴に5分間浸漬した後、温度90℃、相対湿度60%の乾燥機内で10分間乾燥した。
得られた中空糸状半透膜は、厚さ16μmの半透膜層が組紐の外表面上に形成されており、半透膜層と組紐との間には、半透膜層が組紐の空隙に入り込んだ厚さ2μmの複合層が形成されていた。半透膜層は、外表面に平均孔径0.05μmの空孔を有し、残部は平均孔径2μmのほぼ均一な空孔を有する多孔質構造であった。
中空糸状半透膜のJIS K7113による引張強さは530MPaであった。また中空糸状半透膜を、温度90℃、相対湿度70%の乾燥雰囲気中に20時間放置したところ、外表面にひび割れが見られた。
比較例1
ポリエーテルスルホン(住友化学社製,平均重合度3500)18質量%、ジメチルスルホキシド65質量%、ポリエチレングリコール(分子量200)17質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのポリエステル繊維素(繊維径10μm)からなる組紐を浸漬した。
ポリエーテルスルホン(住友化学社製,平均重合度3500)18質量%、ジメチルスルホキシド65質量%、ポリエチレングリコール(分子量200)17質量%からなる製膜溶液に、内径0.8mm、外径1.0mmのポリエステル繊維素(繊維径10μm)からなる組紐を浸漬した。
この組紐を製膜溶液から取り出し、60℃の水浴に5分間浸漬した後、温度90℃、相対湿度60%の乾燥機内で10分間乾燥した
得られた中空糸状半透膜は、厚さ30μmの半透膜層が組紐の外表面上に形成されており、半透膜層と組紐との間には、半透膜層が組紐の空隙に入り込んだ複合層はなかった。半透膜層は、外表面に平均孔径0.01μmの空孔を有し、残部は孔径12μmのボイドが存在する不均一な空孔径を持つ多孔質構造であった。
得られた中空糸状半透膜は、厚さ30μmの半透膜層が組紐の外表面上に形成されており、半透膜層と組紐との間には、半透膜層が組紐の空隙に入り込んだ複合層はなかった。半透膜層は、外表面に平均孔径0.01μmの空孔を有し、残部は孔径12μmのボイドが存在する不均一な空孔径を持つ多孔質構造であった。
中空糸状半透膜のJIS K7113による引張強さは530kPaであった。また中空糸状半透膜を、温度90℃、相対湿度70%の乾燥雰囲気中に20時間放置したところ、外表面にひび割れが見られた。
Claims (7)
- 中空糸状の組紐の外表面に半透膜層を有する中空糸状半透膜であり、組紐と半透膜層の間に組紐に半透膜層の一部が入り込んだ複合層を有し、半透膜層が平均孔径0.01〜5μmの範囲の空孔を有しており、前記半透膜層の厚さが前記組紐の厚さの1/3以下である中空糸状半透膜。
- 半透膜層が、外表面に最小孔径の空孔を含むスキン層を有し、内部にほぼ均一な孔径を有する空孔からなる多孔質構造を有している請求項1記載の中空糸状半透膜。
- 半透膜層が、外表面に最小孔径の空孔を含むスキン層を有し、外表面から複合層に向かって孔径が連続的に小さくなった空孔からなる多孔質構造を有している請求項1記載の中空糸状半透膜。
- 半透膜層が10μm以上の径の空孔を含んでない請求項1〜3のいずれか1記載の中空糸状半透膜。
- 半透膜層がセルロース系材料からなるものである請求項1〜4のいずれか1記載の中空糸状半透膜。
- 半透膜層が乾式相転換法により形成されたものである請求項1〜5のいずれか1記載の中空糸状半透膜。
- JIS K7113による引張強さが50MPa以上である請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸状半透膜。
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