JP2007082953A - 血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】血管内の異物を確実に捕捉、除去することができる血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を提供すること。
【解決手段】血管内異物除去用ワイヤ1は、可撓性を有する長尺なワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の先端から分岐する分岐ワイヤ部4aおよび4bと、分岐ワイヤ部4aと分岐ワイヤ部4b間に架設されたフィラメント部5a、5bおよび5cとを有している。この血管内異物除去用ワイヤ1のフィラメント部5aは、屈曲したまたは急峻に湾曲した複数の屈曲点71と、2つの屈曲点71間に位置し、隣接するフィラメント部5bおよび5cとの空間を埋めるように配置された連結部72とを有する屈曲変形部7aを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、血管内の塞栓物を除去する血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具に関する。
厚生労働省の人口動態統計によれば、日本人の死因の一位は癌、二位は心臓病、三位は脳卒中であり、特に脳卒中による死亡や後遺症が増加し、治療方法の確立が急務となっている。
近年、脳卒中の治療において急性期の脳梗塞治療に血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が開発され治療効果をあげているがその限界も指摘されている。すなわち、血栓溶解剤では血栓溶解に長時間を要したり、小さくなった血栓がさらに飛んで新たな塞栓部位を形成したり、また、血栓溶解剤で溶解しない血栓があることが医師の経験から認められている。
脳梗塞の場合、梗塞発症後3時間以内に血流が再開できれば救命の確率が高くなるばかりか、後遺症を少なくすることが米国や欧州で証明され、脳血管内に挿入可能で血栓を直接取ることができる医療器具の開発が強く求められている。このような医療器具としては、例えば、特許文献1に記載された血管内異物除去用ワイヤが知られている。
この血管内異物除去用ワイヤは、ワイヤ本体と、ワイヤ本体から分岐する2つの分岐ワイヤと、分岐ワイヤ間に架設される複数のフィラメント部とを有している。分岐ワイヤ部とフィラメント部とにより、血管内の異物を捕捉する異物捕捉空間が形成される。
しかしながら、このような構成の血管内異物除去用ワイヤでは、血管内の異物を捕捉する際、例えば異物の大きさによっては、この異物を確実に捕捉できない場合があった。
例えば、異物の大きさが異物捕捉空間の大きさよりも小さいとき、異物の捕捉中に、この異物がフィラメント同士の隙間(空間)から離脱(脱落)する場合があった。そのような場合は、捕捉する異物の大きさに合った(適した)血管内異物除去用ワイヤに交換する等の操作が必要となり、手技が煩雑となるという問題が生じる。
特開2004−16668号公報
本発明の目的は、血管内の異物を確実に捕捉、除去することができる血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(18)の本発明により達成される。
(1) 可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の先端から分岐する少なくとも2つの分岐ワイヤ部と、
2つの前記分岐ワイヤ部間に架設された複数のフィラメント部とを有し、
少なくとも1つの前記フィラメント部は、屈曲したまたは急峻に湾曲した複数の屈曲点と、2つの前記屈曲点間に位置し、隣接する前記フィラメント部同士の空間を埋めるように配置された連結部とを有する屈曲変形部を備えることを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
(2) 前記屈曲変形部は、複数の前記連結部を有し、隣接する前記連結部同士が互いに異なる方向に延在している上記(1)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(3) 前記屈曲変形部は、それを前記ワイヤ本体の長手方向の先端側から見たとき、波形をなしている上記(2)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(4) 波形をなす前記屈曲変形部が設けられた複数の前記フィラメント部を有し、隣接する前記屈曲変形部において、一方の前記各屈曲点が、他方の2つの前記連結部の間に入り込んでいる上記(2)または(3)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(5) 波形をなす前記屈曲変形部は、先端側の振幅が基端側の振幅より大きいものである上記(3)または(4)に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(6) 前記屈曲変形部が設けられた3つの前記フィラメント部を有し、該3つのフィラメント部のうちの中央に配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部は、その両側にそれぞれ配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部より先端側に位置する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(7) 前記屈曲変形部が設けられた3つの前記フィラメント部を有し、該3つのフィラメント部のうちの中央に配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部は、その両側にそれぞれ配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部より基端側に位置する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(8) 前記屈曲変形部は、太さが異なる部分を有する線状体で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(9) 前記屈曲変形部が設けられた複数の前記フィラメント部を有し、それらの前記屈曲変形部の一部同士が接触または交差している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(10) 前記屈曲変形部は、前記各分岐ワイヤ部より柔軟性に富んでいる上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(11) 前記複数のフィラメント部は、互いに接近・離間可能である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(12) 前記各分岐ワイヤ部および/または前記各フィラメント部は、血管内の異物を捕捉した際、該異物が滑るのを防止する滑り止め手段を有する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(13) 少なくとも1つの前記フィラメント部は、可撓性を有する細繊毛を複数有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(14) 前記ワイヤ本体、前記各分岐ワイヤ部および前記各フィラメント部は、生体内で超弾性を示す合金で構成されている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(15) 前記ワイヤ本体は、その長手方向に沿って剛性が変化した部分を有する上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(16) 前記各分岐ワイヤ部は、湾曲している上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
(17) 上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤと、
前記血管内異物除去用ワイヤを収納可能なルーメンを備えたカテーテルとを有することを特徴とする医療器具。
(18) 前記ルーメンの先端開口部から前記各分岐ワイヤ部を突出させたとき、該分岐ワイヤ部の先端部同士が離間しており、
前記ルーメン内に前記各分岐ワイヤ部を収納したとき、該分岐ワイヤ部の先端部同士が、前記ルーメンを画成する内壁面に規制されて接近する上記(17)に記載の医療器具。
本発明によれば、少なくとも1つのフィラメント部が屈曲変形部を備えていることにより、血管内の異物を確実に捕捉、除去することができる。
以下、本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第1実施形態(自然状態)を示す斜視図、図2は、図1に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図、図3〜図6は、それぞれ、図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。
なお、以下の説明では、図1、図2中の上側を「先端」、下側を「基端」といい、図3〜図6中の右側を「基端」、左側を「先端」という。
図1に示す血管内異物除去用ワイヤ1は、血管100内の血栓、血餅等の塞栓の原因となる異物(以下、「塞栓物200」と言う)を捕捉して除去するものである。
この血管内異物除去用ワイヤ1は、長尺なワイヤ本体2と、ワイヤ本体2の先端側に設けられた捕捉部3とを有している。
以下、各部の構成について説明する。
図1に示すワイヤ本体2は、全長に渡って適度な剛性および弾性(可撓性)を有している。
ワイヤ本体2の構造としては、特に限定されず、例えば、単線からなるもの、複数本を束ねたもの、中空状のもの、多層構造のもの、芯材とその外周に巻回されたコイルとを有するもの、これらを組み合わせたものなどであってもよい。
ワイヤ本体2の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
また、ワイヤ本体2の長さは、適用する血管100の位置、太さ等の症例によってもその好ましい値は異なるが、通常、500〜4000mm程度が好ましく、1500〜2200mm程度がより好ましい。
また、ワイヤ本体2の外径(太さ)は、適用する血管100の位置、太さ等の症例によってもその好ましい値は異なるが、通常、平均外径が0.1〜2.0mmであるのが好ましく、0.25〜0.9mmであるのがより好ましい。
また、ワイヤ本体2は、基端側に位置し、比較的硬い第1の部位と、先端側に位置し、比較的柔軟な第3の部位と、前記第1の部位と前記第3の部位との間に位置し、可撓性が変化する第2の部位とを有するものであることが好ましい。換言すれば、ワイヤ本体2は、剛性(曲げ剛性、ねじり剛性等)が基端から先端に向かって、すなわち、長手方向に沿って、漸減(変化)するようなものであるのが好ましい。これにより、手元での操作がワイヤ本体2の先端部24まで確実に伝達し、血管100内での走行性や屈曲部での操作性に優れるとともに、先端部24の柔軟性を向上し、血管100の損傷を防ぐことができる。すなわち、ワイヤ本体2のトルク伝達性、押し込み性(プッシャビリティ)、耐キンク性(耐折れ曲がり性)を維持しつつ、より高い安全性を確保することができる。
ワイヤ本体2の外面(表面)には、後述するカテーテル8の内面との摩擦抵抗を軽減する被覆層が設けられていてもよい。これにより、カテーテル8に対する挿入・抜去をよりスムーズに行うことができる。この被覆層としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の被覆層(テフロンコート(「テフロン」は登録商標))や、湿潤時に潤滑性を有する親水性ポリマーコート等が挙げられる。
捕捉部3は、塞栓物200が捕捉される異物捕捉空間31を有するものである。
図1に示すように、捕捉部3は、ワイヤ本体2の先端から分岐する2つの分岐ワイヤ部4aおよび4bと、分岐ワイヤ部4aと分岐ワイヤ部4bとの間に架設された複数(本実施形態では、3つ)のフィラメント部5a、5bおよび5cとで構成されている。
分岐ワイヤ部4aは、フィラメント部5a、5bおよび5cの一方の基端側の部分が撚り合わされて一体的に集合して撚り線部を形成し、この撚り線部により構成されている。また、分岐ワイヤ部4bは、分岐ワイヤ部4aとほぼ同様に、フィラメント部5a、5bおよび5cの他方の基端側の部分が撚り合わされて一体的に集合して撚り線部を形成し、この撚り線部により構成されている。
このような拠り線部、すなわち、分岐ワイヤ部4a、4bは、それぞれ、形状が線状をなしており、基端部42がワイヤ本体2の先端部24に固定(固着)されている。この固定の方法は、特に限定されないが、例えば、分岐ワイヤ部4a、4bの基端部42をそれぞれワイヤ本体2の先端部24に編み付け(巻き付け)、ろう接、溶接、接着剤による接着等を施すことにより固定することができる。
本実施形態では、ワイヤ本体2の先端部24には、分岐ワイヤ部4a、4bのワイヤ本体2に対する固定部(ロウ付け部)を覆うコイル21が設けられている。コイル21の外表面は、平滑になっている。これにより、血管内異物除去用ワイヤ1を操作した(使用した)ときに血管100の内壁100aに損傷を与えるのが防止される等の高い安全性が得られる。なお、コイル21は、例えば、プラチナ(白金)線等を巻回して形成されたものであることが好ましい。
また、分岐ワイヤ部4a、4bは、それぞれ、弾性的に変位(変形)するよう構成されており、柔軟性を有している。
また、分岐ワイヤ部4aおよび4bは、それぞれ、自然状態で捕捉部3(異物捕捉空間31)の外方に向って湾曲しているのが好ましい。ここで、「自然状態」とは、分岐ワイヤ部4aおよび4b(捕捉部3)に外力が付与されていない状態をいう。
このように分岐ワイヤ部4aおよび4bが湾曲していることにより、自然状態での異物捕捉空間31の大きさを大きく設定することができ、よって、異物捕捉空間31内に塞栓物200を容易かつ確実に捕捉することができる。
なお、分岐ワイヤ部4a(分岐ワイヤ部4bも同様)の長さは、特に限定されないが、例えば、脳血管内にある塞栓物200(血栓)を捕捉する際には、通常、1.0〜10.0mm程度が好ましく、2.5〜9.0mm程度がより好ましい。
また、分岐ワイヤ部4a、4bの外径は、特に限定されないが、例えば、脳血管内にある塞栓物200(血栓)を捕捉する際には、通常、0.04〜0.5mm程度が好ましく、0.06〜0.2mm程度がより好ましい。
また、捕捉部3の長さは、直径が7mmの塞栓物200を捕捉する場合、7mm以上であるのが好ましく、7〜10mmであるのがより好ましい。
図1に示すように、分岐ワイヤ部4aの先端部41aと分岐ワイヤ部4bの先端部41bとの間には、線状をなす3本のフィラメント部5a、5b、5cが架け渡されるように設けられている。
フィラメント部5a、5bおよび5cは、自然状態で、それぞれの先端側の部分(中央部)が、互いに離間している。すなわち、図2に示すように、側面視で、フィラメント部5aは、ワイヤ本体2の中心軸23上に形成され、フィラメント部5aに隣接するフィラメント部5bおよび5cは、それぞれ、外側(図2中の左・右)に向かって屈曲(または湾曲)している。
図1に示すように、フィラメント部5bおよび5cは、それぞれ、分岐ワイヤ部4aの先端から先端方向に延び、一方向に湾曲しつつ(アーチ状をなしつつ)基端方向に折り返して分岐ワイヤ部4bの先端に戻るように形成されて(設けられて)いる。
血管内異物除去用ワイヤ1は、屈曲変形部7aを備えたフィラメント部5aを有している。
この屈曲変形部7aは、フィラメント部5aの一部(中央部)が不規則に、すなわち、多方向に屈曲または湾曲して形成されたものである。換言すれば、屈曲変形部7aは、多数の(複数の)屈曲点71と、2つの屈曲点71間に位置する多数の連結部72とで構成されている。
各屈曲点71は、フィラメント部5aの一部が屈曲したまたは急峻に湾曲した部位である。また、図2に示すように、各屈曲点71は、フィラメント部5aとフィラメント部5bとの間隙(空間)32、またはフィラメント部5aとフィラメント部5cとの間隙(空間)33に点在して(位置して)いる。
また、図1および図2に示すように、多数の連結部72は、間隙32および間隙33を埋めるように配置されている。換言すれば、多数の連結部72は、隣接する連結部72同士が互いに異なる方向に延在している、すなわち、多方向に延在している。
このような構成の屈曲変形部7aを設けたことにより、例えばフィラメント部5aをフィラメント部5bや5cとほぼ同様の構成、すなわち、フィラメント部5aをアーチ状とした場合よりも、間隙32および間隙33が埋められる体積が大きくなる、すなわち、間隙32および間隙33の空隙率が小さくなる。これにより、捕捉部3に入り込んだ(収納された)塞栓物200が、例えば末梢側(先端側)への血液の流れや、血管内異物除去用ワイヤ1の基端方向への操作等により間隙32や間隙33から脱落(離脱)するのを、確実に防止することができ、よって、塞栓物200を確実に捕捉、除去することができる(図6参照)。ここで、「空隙率」とは、間隙32(間隙33も同様)に対する屈曲変形部7aが占める部分以外、すなわち、空隙部分の割合をいう。
また、フィラメント部5aは、特に、屈曲変形部7aが太さが異なる部分を有する線状体で構成されているのが好ましい。これにより、例えば、比較的細い部分を屈曲点71、比較的太い部分を連結部72とすることで、屈曲変形部7aを容易に形成することができる。また、比較的太い部分を連結部72とすることで、前記空隙率をより小さくすることができる。これにより、捕捉部3内の塞栓物200が間隙32や間隙33から脱落するのをより確実に防止することができ、よって、塞栓物200をより確実に捕捉、除去することができる。
また、屈曲変形部7aは、分岐ワイヤ部4aおよび4bより柔軟性に富んでいるのが好ましい。これにより、例えば、捕捉部3で塞栓物200が捕捉された際、屈曲変形部7aが捕捉部3内の塞栓物200の形状に適合するよう変形することができ、よって、塞栓物200をより確実に捕捉、除去することができる。また、捕捉部3のトルク伝達性、押し込み性を確保することができる。
また、屈曲変形部7aは、多数の連結部72が満遍なく間隙32および33を埋めるよう均一に配置されている、すなわち、間隙32および33の空隙率に疎密が生じないよう形成されているのが好ましい。これにより、捕捉部3において、当該捕捉部3内に収納された塞栓物200が間隙32および33から離脱し難い部分と、離脱し易い部分とが生じるのを防止することができる。
また、捕捉部3およびワイヤ本体2の構成材料としては、放射線不透過材料であるのが好ましい。この放射線不透過材料としては、特に限定されないが、例えば、金、プラチナ(白金)、プラチナ−イリジウム合金、タングステン、タンタル、パラジウム、鉛、銀、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金、化合物等が挙げられる。
このような放射線不透過材料を用いることにより、X線などの透視下において、特に、捕捉部3における塞栓物200の捕捉状況を容易に確認することができる。
また、捕捉部3およびワイヤ本体2の構成材料としては、生体内(少なくとも生体温度(37℃付近))で擬弾性を示す合金(超弾性を示す合金(以下、「超弾性合金」と言う)を含む)であるのが好ましい。
擬弾性を示す合金(以下、「擬弾性合金」と言う)には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
擬弾性合金には、超弾性合金が含まれる。この超弾性合金の好ましい組成としては、49〜59原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
このような擬弾性合金を用いることにより、捕捉部3およびワイヤ本体2は、それぞれ、十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、また、捕捉部3およびワイヤ本体2が変形を繰り返しても、優れた復元性により曲がり癖が付くのを防止することができる。
また、捕捉部3の表面、すなわち、分岐ワイヤ部4aおよび4bの表面とフィラメント部5a、5bおよび5cの表面とには、ぞれぞれ、捕捉した塞栓物200が捕捉部3から滑る(離脱する)のを防止する滑り止め手段が設けられているのが好ましい。これにより、捕捉部3と塞栓物200との摩擦を増加させることができ、よって、捕捉した塞栓物200をより確実に保持(捕捉)することができる。
この滑り止め手段としては、特に限定されないが、例えば、比較的摩擦係数の高いゴム等の弾性材料を被覆したり、微小の凹凸(粗面も含む)を例えばサンドブラスト等により形成したりすることができる。
なお、滑り止め手段は、分岐ワイヤ部4aおよび4bの表面と、フィラメント部5a、5bおよび5cの表面とに設けられているのに限定されず、例えば、分岐ワイヤ部4aおよび4bの表面にのみ設けられていてもよいし、フィラメント部5a、5bおよび5cの表面にのみ設けられていてもよい。
また、捕捉部3の外面(表面)には、ワイヤ本体2についての説明で挙げたような被覆層が設けられていてもよい。これにより、カテーテル8に対する挿入・抜去をよりスムーズに行うことができる。
図1に示すように、フィラメント部5b、5cには、異物捕捉空間31に突出する突起11が複数設けられている。
各突起11の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、可撓性を有する線状体(ワイヤ)の一端側をフィラメント部5b、5cに巻き付け、他端部を微小に突出させる等の方法が挙げられる。
なお、各突起11の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
また、各突起の長さ(平均)は、特に限定されないが、例えば、0.1〜5mmであるのが好ましく、0.5〜2mmであるのがより好ましい。
図1に示すように、フィラメント部5b、5cには、異物捕捉空間31に突出し、可撓性を有する細繊毛12が複数設けられている。各細繊毛12は、突起11より軟質であるのが好ましい。
各細繊毛12の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、細繊毛12を有する繊毛体をフィラメント部5b、5cに巻き付けたり、電子植毛をしたりする等の方法が挙げられる。
なお、各細繊毛12の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ダクロン(Dacron)(ポリエステル)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、綿や絹のような放射線透過性の繊維、またはポリマー(放射線透過性を有する繊維で被覆された金属糸や放射線不透過性を有する繊維で被覆された金属糸)等を用いることができる。
また、各細繊毛12の長さ(平均)は、特に限定されないが、例えば、0.1〜5mmであるのが好ましく、0.5〜3mmであるのがより好ましい。
このような構成の突起11および細繊毛12が形成されて(設けられて)いることにより、例えば、塞栓物200が比較的硬質の場合には、この塞栓物200が突起11によって穿刺(係止)され、異物捕捉空間31から離脱するのを確実に防止することができ、よって、塞栓物200をより確実に捕捉することができる。また、塞栓物200が比較的軟質の場合には、この塞栓物200が細繊毛12によって絡みつかれ(係止され)、異物捕捉空間31から離脱するのを確実に防止することができ、よって、塞栓物200をより確実に捕捉することができる。
なお、突起11は、フィラメント部5b、5cにのみ設けられているのに限定されず、例えば、フィラメント部5a(屈曲変形部7a)にも設けられていてもよいし、フィラメント部5aにのみ設けられていてもよい。
また、細繊毛12は、フィラメント部5b、5cにのみ設けられているのに限定されず、例えば、フィラメント部5a(屈曲変形部7a)にも設けられていてもよいし、フィラメント部5aにのみ設けられていてもよい。
なお、本発明の医療器具9は、このような血管内異物除去用ワイヤ1と、ルーメン82が形成されたカテーテル8とを有するものである。
次に、本発明の血管内異物除去用ワイヤ1の使用方法(操作方法)の一例について詳細に説明する。
[1] 図3は、血管100内に血栓等の塞栓物200が詰まり、血流を阻害している状態を示している。塞栓物200は、血圧により血管100の内壁100aに押し付けられ、容易に移動しない状態になっている。
カテーテル(マイクロカテーテル)8と、そのルーメン82内に挿通されたガイドワイヤ10とを、血管100内に挿入し、カテーテル8の先端開口部81から突出させたガイドワイヤ10の先端部101を塞栓物200より奥(末梢側)まで挿入する。すなわち、ガイドワイヤ10の先端部101が塞栓物200と血管100の内壁100aとの隙間を通り抜けて、塞栓物200を越えた状態とする。この操作は、ガイドワイヤ10として、例えば潤滑性に優れるマイクロガイドワイヤを使用することにより、より容易に行うことができる。
[2] ガイドワイヤ10の先端部101が塞栓物200を越えたら、ガイドワイヤ10に対しカテーテル8を前進させ、図4に示すように、カテーテル8の先端部を塞栓物200と血管100の内壁100aとの隙間に入り込ませる。このとき、カテーテル8の先端部は、ガイドワイヤ10に沿って円滑に隙間に入り込むので、この操作は容易に行うことができる。
なお、従来の治療としては、この状態でカテーテル8を介して逆行性に血栓溶解剤を流し、血栓溶解を速めることが行なわれてきたが、血栓溶解剤で溶けない血栓があることや溶解に長時間かかることがしばしば医師により経験されている。本発明は、そのような場合にも有用である。
[3] 図4に示す状態から、ガイドワイヤ10を抜去し、カテーテル8のルーメン82に本発明の血管内異物除去用ワイヤ1を挿入する。このとき、図5に示すように、捕捉部3は、ルーメン82内に収納されており、分岐ワイヤ部4aの先端部41aおよび分岐ワイヤ部4bの先端部41bが、ルーメン82を画成する内壁面821に規制されて、接近した状態となっている。すなわち、間隔pが自然状態(図1参照)より小さくなっている(以下、この状態を「収縮状態」という)。また、このとき、フィラメント部5bおよび5cの頂部(先端部)も、分岐ワイヤ部4aの先端部41aおよび分岐ワイヤ部4bの先端部41bと同様に、ルーメン82を画成する内壁面821に規制されている。これにより、フィラメント部5a、5bおよび5cの頂部同士が互いに接近(近接)するとともに、各屈曲点71がさらに屈曲または湾曲する。
[4] 分岐ワイヤ部4aおよび4bの基端部42付近まで捕捉部3をカテーテル8の先端開口部81から突出させる(図6参照)と、収縮状態でカテーテル8内にあった捕捉部3は、自身の弾性により先端部41aと先端部41bとが互いに離間する、すなわち、間隔pが大きくなる。また、これとともに、捕捉部3では、自身の弾性により、フィラメント部5a〜5cの頂部同士が離間する。結果、捕捉部3は、自然状態となる。このような状態の異物捕捉空間31により、塞栓物200を確実に(容易に)捕捉することができる。
[5] 前述したような、捕捉部3をカテーテル8の先端開口部81から突出させた状態から、カテーテル8を僅かに基端方向に移動させ、カテーテル8の先端部を塞栓物200の手前に引き戻すと、図6に示すように、捕捉部3の異物捕捉空間31に塞栓物200がすくい取られるようにして、捕捉(収納)される。すなわち、塞栓物200は、図6中の上側から異物捕捉空間31に入り込む。この異物捕捉空間31に入り込んだ塞栓物200の先端部は、フィラメント部5a〜5c、特に、屈曲変形部7aによって、確実に覆われることとなる。これにより、塞栓物200が間隙32や間隙33を介して捕捉部3(異物捕捉空間31)から血管100の末梢側へ離脱するのが確実に防止される。
[6] 捕捉部3に塞栓物200が収納されたら、カテーテル8に対しワイヤ本体2を基端方向に牽引する。これにより、分岐ワイヤ部4a、4bの基端部42、42が先端開口部81の縁部に当接して互いの間隔を狭めつつカテーテル8内に引き込まれ、捕捉部3の大きさが小さくなる。よって、塞栓物200は、分岐ワイヤ部4a、4bによって締め付けられる。
[7] 前記締め付け状態を維持しつつ、血管内異物除去用ワイヤ1をカテーテル8とともに抜去する。これにより、ガイディングカテーテルまたはシースイントロデューサー(図示せず)内に塞栓物200が回収(除去)される。
なお、[6]の締め付けの操作を行わず、捕捉部3内に塞栓物200が収納されたら、そのまま血管内異物除去用ワイヤ1をカテーテル8とともに抜去して、塞栓物200を除去してもよい。
また、収縮状態の間隔pは、カテーテル8の内径にもよるが、例えば、0.021インチ以下となるのが好ましく、0.018インチ以下となるのがより好ましい。
<第2実施形態>
図7は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第2実施形態(自然状態)を示す斜視図、図8は、図7に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。なお、以下の説明では、図7、図8中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、3つのフィラメント部のうちの外側にそれぞれ配置されたフィラメント部の形状(構成)が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図7および図8に示す血管内異物除去用ワイヤ1Aでは、フィラメント部5aに屈曲変形部7aが設けられているのにのみならず、この屈曲変形部7aとほぼ同様の屈曲変形部7bおよび7cが、それぞれ、フィラメント部5bおよび5cにも設けられている。
前述したように、屈曲変形部7bおよび7cの構成は、それぞれ、屈曲変形部7aの構成とほぼ同様であるため、それらについての説明を省略する。
さて、本実施形態では、フィラメント部5a、5bおよび5cに、それぞれ、屈曲変形部7a、7bおよび7cが設けられている。これにより、間隙32および33が埋められる体積がより大きくなる、すなわち、空隙率をより小さくすることができる。したがって、捕捉部3に収納された塞栓物200が間隙32や間隙33から血管100の末梢側(先端側)へ離脱するのをより確実に防止することができ、よって、塞栓物200を確実に捕捉、除去することができる。
また、図8(図7も同様)に示すように、屈曲変形部7aは、自然状態において、屈曲変形部7bおよび7cより先端側に位置している。これにより、捕捉部3の収縮状態において、屈曲変形部7aが、屈曲変形部7bおよび7cより先端側に位置し、屈曲変形部7a、7bおよび7cが複雑な(入り組んだ)形状をなしていることによる互いの絡み合いを、防止することができる。
また、捕捉部3の収縮状態において、屈曲変形部7aが屈曲変形部7bおよび7cより先端側に位置していればよく、自然状態では、屈曲変形部7aが屈曲変形部7bおよび7cと、血管内異物除去用ワイヤ1Aの長手方向において、ほぼ同位置であっても、収縮状態で先端側に位置するよう構成されていればよい。
<第3実施形態>
図9は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第3実施形態(自然状態)を示す斜視図、図10は、図9に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。なお、以下の説明では、図9、図10中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、3つのフィラメント部にそれぞれ設けられた屈曲変形部同士の位置関係が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図9および図10に示す血管内異物除去用ワイヤ1Bでは、屈曲変形部7aは、自然状態で、屈曲変形部7bおよび7cより基端側に位置している。そして、捕捉部3の収縮状態においても、屈曲変形部7aが、屈曲変形部7bおよび7cより基端側となるよう構成されている。これによっても、屈曲変形部7a、7bおよび7cが複雑な(入り組んだ)形状をなしていることによる互いの絡み合いを、防止することができる。
但し、屈曲変形部7aが屈曲変形部7b、7cよりも先端側に位置することにより、基端側に位置させる場合と比較して、中央のフィラメント部5aの大きさを同じに設定したときに、フィラメント部5a、5bの長手方向の長さや幅を抑えることができ、両側のフィラメント部5b、5cを小さく設定することができるため、異物捕捉空間31の大きさを確保しつつ、捕捉部3のコンパクト化を図ることができる。
なお、捕捉部3の収縮状態において、屈曲変形部7aが屈曲変形部7bおよび7cより基端側に位置していればよく、自然状態では、屈曲変形部7aが屈曲変形部7bおよび7cと、血管内異物除去用ワイヤ1Bの長手方向において、ほぼ同位置であっても、収縮状態で基端側に位置するよう構成されていればよい。
<第4実施形態>
図11は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第4実施形態(自然状態)を示す斜視図、図12は、図11に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図、図13は、図11に示す血管内異物除去用ワイヤを先端側から見た図(正面図)、図14は、図11に示す血管内異物除去用ワイヤの捕捉部が塞栓物を捕捉するときの状態を示す図(正面図)である。なお、以下の説明では、図11、図12中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、屈曲変形部の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図11〜図13に示す血管内異物除去用ワイヤ1Cの捕捉部3では、フィラメント部5aがアーチ状をなすものであり、フィラメント部5bおよび5cがそれぞれ屈曲変形部7dおよび7eを有するものである。
なお、フィラメント部5aについての構成は、前記第1実施形態のフィラメント部5bおよび5cとほぼ同様の構成であるため、それについての説明を省略する。また、屈曲変形部7dと屈曲変形部7eとの形状は、ほぼ同一であるため、以下、屈曲変形部7dについて代表的に説明する。
屈曲変形部7dは、前記第1実施形態の屈曲変形部7aのように不規則な形状をなすものとは異なり、規則的な形状をなすものである。その規則的な形状の典型的な例として、本実施形態の屈曲変形部7dをワイヤ本体2の長手方向の先端側から見たとき、その屈曲変形部7dの形状を波形とすることができる(図13参照)。
図13に示すように、屈曲変形部7dは、各屈曲点71が波形(波)の山部または谷部に相当するよう形成されている。
このような構成の(波形をなす)屈曲変形部7dは、例えば当該屈曲変形部7dが前記第1実施形態の屈曲変形部7aと同様に柔軟性に富んでいる場合、隣接する屈曲点71同士が接近・離間する方向(図13中の矢印方向)に容易に伸縮することができる。また、屈曲変形部7dは、図13中の矢印方向とほぼ直行する方向にも若干伸縮する。
これにより、例えば、捕捉部3で塞栓物200が捕捉された際、屈曲変形部7dが捕捉部3内の塞栓物200の形状に適合するよう変形することができ、よって、塞栓物200をより確実に捕捉、除去することができる。
また、屈曲変形部7dでは、その振幅wが基端側(分岐ワイヤ部4aおよび4b)から先端側(頂部)に向って、漸増して(徐々に大きくなって)いる。屈曲変形部7dの振幅wが大の部分では、伸縮が容易となる、すなわち、柔軟性が高くなる。また、屈曲変形部7dの振幅wが小の部分では、伸縮が抑制される、すなわち、柔軟性が低くなる。
したがって、屈曲変形部7dは、柔軟性が基端側から先端側に向って、すなわち、伸縮方向に沿って、徐々に高くなる(変化する)ものとなっている。
このような屈曲変形部7d(屈曲変形部7eも同様)を有する捕捉部3が塞栓物200を捕捉、除去する過程について、図14を参照しつつ説明する。
前記第1実施形態の血管内異物除去用ワイヤ1の操作方法の[1]〜[5]とほぼ同様の操作により、捕捉部3の異物捕捉空間31に塞栓物200が収納される。
塞栓物200が捕捉部3に収納された状態(図14(a)に示す状態)で、ワイヤ本体2を基端方向に僅かに牽引すると、図14(b)に示すように、塞栓物200が移動せず、屈曲変形部7dおよび7eがそれぞれ、ワイヤ本体2に接続された分岐ワイヤ部4aおよび4bによって引張られて、図中矢印方向に伸長する。この伸長した屈曲変形部7dおよび7eにより、塞栓物200がその形状に沿って覆われる。
その後、図14(c)に示すように、屈曲変形部7dおよび7eは、それぞれ、自身の弾性により瞬時に図中矢印方向に収縮する。これにより、塞栓物200が締め付けられる(挟持される)、すなわち、塞栓物200が圧縮されて捕捉される。
以降、前記第1実施形態の血管内異物除去用ワイヤ1の操作方法の[7]とほぼ同様の操作により、塞栓物200を除去することができる。
このような構成により、塞栓物200は、比較的弱い力ではあるが締め付けられて保持されることと、圧縮されて保持されることとによって、ワイヤ本体2(血管内異物除去用ワイヤ1C)を基端方向に引張ったときに当該塞栓物200が粉砕されずに(崩れずに)、確実に除去される。
<第5実施形態>
図15は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第5実施形態(自然状態)を示す斜視図、図16は、図15に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図、図17は、図15に示す血管内異物除去用ワイヤを先端側から見た図(正面図)である。なお、以下の説明では、図15、図16中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、3つのフィラメント部のうちの中央に配置されたフィラメント部の形状(構成)が異なること以外は前記第4実施形態と同様である。
図15、図16および図17に示す血管内異物除去用ワイヤ1Dの捕捉部3では、フィラメント部5bおよび5cにそれぞれ、波形をなす屈曲変形部7dおよび7eが設けられているのにのみならず、この屈曲変形部7dおよび7eとほぼ同様の屈曲変形部7fがフィラメント部5aにも設けられている。
なお、屈曲変形部7fの構成(形状)は、屈曲変形部7dおよび7eとほぼ同様の構成であるため、それについての説明を省略する。
図16および図17に示すように、屈曲変形部7fと屈曲変形部7dとは、屈曲変形部7fの前記各山部(各屈曲点71)が、屈曲変形部7dの隣接する2つの連結部72の間、すなわち、前記各谷部(各屈曲点71)に入り込まない程度に離間している。また、屈曲変形部7fと屈曲変形部7eとは、屈曲変形部7fの前記各山部が、屈曲変形部7eの前記各谷部に入り込まない程度に離間している。
このような構成の捕捉部3では、空隙率がより小さく設定されることとなり、よって、捕捉部3に収納された塞栓物200が間隙32や間隙33から離脱するのをより確実に防止することができる。これにより、塞栓物200をより確実に捕捉、除去することができる。
<第6実施形態>
図18は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第6実施形態(自然状態)を示す側面図、図19は、図18に示す血管内異物除去用ワイヤの先端側から見た図(正面図)である。なお、以下の説明では、図18中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、屈曲変形部同士の位置関係が異なること以外は前記第5実施形態と同様である。
図18および図19に示す血管内異物除去用ワイヤ1D’の捕捉部3では、屈曲変形部7fの前記各山部(各屈曲点71)が、屈曲変形部7dの前記各谷部(各屈曲点71)に入り込んでいる。また、屈曲変形部7fの前記各山部が、屈曲変形部7eの前記各谷部に入り込んでいる。
このような構成の捕捉部3では、空隙率がさらに小さく設定されることとなり、よって、捕捉部3に収納された塞栓物200が間隙32や間隙33から離脱するのをより確実に防止することができる。これにより、塞栓物200をより確実に捕捉、除去することができる。
なお、捕捉部3は、隣接するフィラメント部同士の一方の山部が他方の谷部に入り込んでいるものの、図示ではこれらフィラメント部同士が離間するよう構成されているが、これに限定されず、隣接する屈曲変形部の一部同士が接触または交差していてもよい。この場合、捕捉部3における空隙率がさらに小さく設定されることとなり、よって、捕捉部3に収納された塞栓物200が間隙32や間隙33から離脱するのをより確実に防止することができる。
<第7実施形態>
図20は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第7実施形態(自然状態)を示す斜視図、図21は、図20に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。なお、以下の説明では、図20および図21中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、屈曲変形部同士の位置関係が異なること以外は前記第5実施形態と同様である。
図20および図21に示す血管内異物除去用ワイヤ1Eの捕捉部3では、屈曲変形部7fは、自然状態において、屈曲変形部7dおよび7eより先端側に位置している。これにより、捕捉部3の収縮状態において、屈曲変形部7fが、屈曲変形部7dおよび7eより先端側に位置し、屈曲変形部7d、7eおよび7fが互いに絡み合うのを防止することができる。
<第8実施形態>
図22は、本発明の血管内異物除去用ワイヤの第8実施形態(自然状態)を示す斜視図、図23は、図22に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。なお、以下の説明では、図22および図23中の上側を「先端」、下側を「基端」という。
以下、これらの図を参照して本発明の血管内異物除去用ワイヤの第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、屈曲変形部同士の位置関係が異なること以外は前記第5実施形態と同様である。
なお、図22および図23に示す血管内異物除去用ワイヤ1Fの捕捉部3では、屈曲変形部7fは、自然状態で、屈曲変形部7dおよび7eより基端側に位置している。そして、捕捉部3の収縮状態においても、屈曲変形部7fが、屈曲変形部7dおよび7eより基端側となるよう構成されている。これによっても、屈曲変形部7d、7eおよび7fが互いに絡み合うのを防止することができる。
但し、屈曲変形部7fが屈曲変形部7d、7eよりも先端側に位置することにより、基端側に位置させる場合と比較して、中央のフィラメント部5aの大きさを同じに設定したときに、フィラメント部5a、5bの長手方向の長さや幅を抑えることができ、両側のフィラメント部5b、5cを小さく設定することができるため、異物捕捉空間31の大きさを確保しつつ、捕捉部3のコンパクト化を図ることができる。
以上、本発明の血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、血管内異物除去用ワイヤおよび医療器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
例えば、分岐ワイヤ部は、2つであるのに限定されず、3つ以上であってもよい。
また、フィラメント部の形成数(設置数)は、3つに限定されず、2つまたは4つ以上であってもよい。
本発明の血管内異物除去用ワイヤの第1実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図1に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。 図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。 図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。 図1に示す血管内異物除去用ワイヤの使用方法を順を追って説明するための図である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第2実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図7に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第3実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図9に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第4実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図11に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 図11に示す血管内異物除去用ワイヤを先端側から見た図(正面図)である。 図11に示す血管内異物除去用ワイヤの捕捉部が塞栓物を捕捉するときの状態を示す図(正面図)である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第5実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図15に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 図15に示す血管内異物除去用ワイヤを先端側から見た図(正面図)である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第6実施形態(自然状態)を示す側面図である。 図18に示す血管内異物除去用ワイヤの先端側から見た図(正面図)である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第7実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図20に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。 本発明の血管内異物除去用ワイヤの第8実施形態(自然状態)を示す斜視図である。 図22に示す血管内異物除去用ワイヤの側面図である。
符号の説明
1、1A、1B、1C、1D、1D'、1E、1F 血管内異物除去用ワイヤ
11 突起
12 細繊毛
2 ワイヤ本体
21 コイル
23 中心軸
24 先端部
3 捕捉部
31 異物捕捉空間
32、33 間隙(空間)
4a、4b 分岐ワイヤ部
41a、41b 先端部
42 基端部
5a、5b、5c フィラメント部
7a、7b、7c、7d、7e、7f 屈曲変形部
71 屈曲点
72 連結部
8 カテーテル
81 先端開口部
82 ルーメン
821 内壁面
9 医療器具
10 ガイドワイヤ
101 先端部
100 血管
100a 内壁
200 塞栓物

Claims (18)

  1. 可撓性を有する長尺なワイヤ本体と、
    前記ワイヤ本体の先端から分岐する少なくとも2つの分岐ワイヤ部と、
    2つの前記分岐ワイヤ部間に架設された複数のフィラメント部とを有し、
    少なくとも1つの前記フィラメント部は、屈曲したまたは急峻に湾曲した複数の屈曲点と、2つの前記屈曲点間に位置し、隣接する前記フィラメント部同士の空間を埋めるように配置された連結部とを有する屈曲変形部を備えることを特徴とする血管内異物除去用ワイヤ。
  2. 前記屈曲変形部は、複数の前記連結部を有し、隣接する前記連結部同士が互いに異なる方向に延在している請求項1に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  3. 前記屈曲変形部は、それを前記ワイヤ本体の長手方向の先端側から見たとき、波形をなしている請求項2に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  4. 波形をなす前記屈曲変形部が設けられた複数の前記フィラメント部を有し、隣接する前記屈曲変形部において、一方の前記各屈曲点が、他方の2つの前記連結部の間に入り込んでいる請求項2または3に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  5. 波形をなす前記屈曲変形部は、先端側の振幅が基端側の振幅より大きいものである請求項3または4に記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  6. 前記屈曲変形部が設けられた3つの前記フィラメント部を有し、該3つのフィラメント部のうちの中央に配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部は、その両側にそれぞれ配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部より先端側に位置する請求項1ないし5のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  7. 前記屈曲変形部が設けられた3つの前記フィラメント部を有し、該3つのフィラメント部のうちの中央に配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部は、その両側にそれぞれ配置されたフィラメント部の前記屈曲変形部より基端側に位置する請求項1ないし5のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  8. 前記屈曲変形部は、太さが異なる部分を有する線状体で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  9. 前記屈曲変形部が設けられた複数の前記フィラメント部を有し、それらの前記屈曲変形部の一部同士が接触または交差している請求項1ないし8のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  10. 前記屈曲変形部は、前記各分岐ワイヤ部より柔軟性に富んでいる請求項1ないし9のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  11. 前記複数のフィラメント部は、互いに接近・離間可能である請求項1ないし10のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  12. 前記各分岐ワイヤ部および/または前記各フィラメント部は、血管内の異物を捕捉した際、該異物が滑るのを防止する滑り止め手段を有する請求項1ないし11のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  13. 少なくとも1つの前記フィラメント部は、可撓性を有する細繊毛を複数有する請求項1ないし12のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  14. 前記ワイヤ本体、前記各分岐ワイヤ部および前記各フィラメント部は、生体内で超弾性を示す合金で構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  15. 前記ワイヤ本体は、その長手方向に沿って剛性が変化した部分を有する請求項1ないし14のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  16. 前記各分岐ワイヤ部は、湾曲している請求項1ないし15のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤ。
  17. 請求項1ないし16のいずれかに記載の血管内異物除去用ワイヤと、
    前記血管内異物除去用ワイヤを収納可能なルーメンを備えたカテーテルとを有することを特徴とする医療器具。
  18. 前記ルーメンの先端開口部から前記各分岐ワイヤ部を突出させたとき、該分岐ワイヤ部の先端部同士が離間しており、
    前記ルーメン内に前記各分岐ワイヤ部を収納したとき、該分岐ワイヤ部の先端部同士が、前記ルーメンを画成する内壁面に規制されて接近する請求項17に記載の医療器具。
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