つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の蒸煮冷却機は、食材(食品を含む)などの被処理物が収容された処理槽内へ蒸気供給して、前記被処理物を加熱すると共に、加熱後には前記被処理物の冷却を図る装置である。
前記処理槽は、被処理物を収容する中空容器であり、処理槽本体とその扉とから構成される。処理槽本体は、典型的には、略直方体状の缶体から構成され、その前後左右のいずれかの側面へ開口して中空部を有している。そして、処理槽本体の開口部は、扉にて開閉可能とされる。処理槽本体の開口部を開閉する扉は、開き戸、引き戸、シャッター式のいずれの形式でもよい。また、処理槽内に収容される被処理物は、調理鍋などの各種容器や、袋などに入れられていてもよい。
前記処理槽内つまり前記中空部内を密閉するために、処理槽本体と扉との隙間はパッキンにて封止される。このパッキンは、処理槽本体の開口部を取り囲むように設けられる。具体的には、処理槽本体には、閉鎖状態の扉と対面する位置に、前記開口部に沿って連続的にパッキン溝が形成されている。そして、このパッキン溝には、その深さ方向に沿ってパッキンが進退可能に設けられる。すなわち、パッキンは、パッキン溝から突出する前進位置と、パッキン溝に収容される後退位置との間を進退可能とされる。前記パッキンおよび前記パッキン溝は、処理槽本体側でなく、前記扉側に設けることも可能である。
後退位置から前進位置へのパッキンの移動は、コンプレッサからの圧縮空気をパッキン溝内へ送り込むことで行われる。逆に、前進位置から後退位置へのパッキンの移動は、真空ポンプやアスピレータなどの吸引力を利用して、パッキン溝内の空気を吸引することで行われる。前進位置において、パッキンは閉鎖状態の扉へ押し付けられ、処理槽内が密閉される。一方、後退位置において、パッキンは扉への押付けを解除して、扉から離隔することで、処理槽内の密閉が解除される。
このような構成の処理槽には、処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、処理槽内の空気や蒸気を外部へ吸引排出して処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧下の処理槽内へ外気を導入して処理槽内を復圧する復圧手段と、処理槽内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段と、これら各手段を制御する制御手段とが設けられる。
給蒸手段は、処理槽内へボイラからの蒸気を供給する手段である。この蒸気は、一次ボイラからの蒸気を熱源とする二次ボイラ(リボイラ)にて純水または軟水を加熱して得られる清浄蒸気とするのがよい。これにより、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が、処理槽への蒸気に混入されるおそれがなく衛生的である。給蒸手段からの蒸気は、蒸気導入管路としての給蒸ラインを介して、処理槽内へ供給される。給蒸ラインの中途に設けた給蒸操作弁を開閉することで、処理槽内への蒸気供給の有無が切り替えられる。
減圧手段は、処理槽内の空気や蒸気を真空引きすることで、処理槽内を減圧する手段である。減圧手段は、真空ポンプ、またはそれに代えてもしくはそれに加えて、蒸気エゼクタまたは水エゼクタなどを備える。処理槽は、空気導出管路としての減圧ラインを介して、減圧手段に接続される。減圧ラインの中途に設けた減圧操作弁を開閉することで、処理槽内からの真空引きの可否が切り替えられる。
減圧手段は、さらに熱交換器を備えるのが望ましい。この熱交換器は、処理槽内から吸引した空気中の蒸気を、冷却し凝縮させるものである。この冷却および凝縮作用をなすために、熱交換器には水が供給され、減圧ラインの冷却が図られる。減圧ライン中の蒸気を予め熱交換器で凝縮させておくことで、その後の真空ポンプの負荷を軽減して、減圧能力を高めることができる。
復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内を復圧する手段である。具体的には、減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。フィルターを介した清浄空気は、外気導入管路としての復圧ラインを介して、処理槽内へ供給される。復圧ラインの中途に設けた復圧操作弁を開閉することで、処理槽内への外気導入の有無が切り替えられる。
排出手段は、処理槽内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する手段である。この排出手段は、処理槽内から蒸気を排出する蒸気導出管路としての排蒸ラインと、スチームトラップを介して処理槽内の底部から凝縮水を排出する排水管路としてのトラップラインとから構成される。ここで、前記排蒸ラインは、処理槽の底部に接続することで、蒸気に加えてその凝縮水も排出可能となる。
処理槽からの排蒸ラインの中途には、排蒸操作弁が設けられる。また、処理槽からのトラップラインの中途には、トラップ弁が設けられる。この排蒸操作弁および/またはトラップ弁を開閉することで、処理槽内からの蒸気および/または凝縮水の排出の有無が切り替えられる。
制御手段は、給蒸手段、減圧手段、復圧手段、および排出手段などを制御する手段である。逆にいうと、これら各手段は、制御手段により制御され、予め設定されたプログラムに従い、所定の運転工程が順次に実行される。その際、処理槽内の圧力を検出する圧力センサからの出力、および/または、処理槽内の被処理物の温度を検出する温度センサからの出力、さらには前記各手段を作動させる時間を調整して制御できる。また、制御手段は、前記パッキンの位置を制御する。具体的には、前記前進位置と前記後退位置のいずれかにパッキンを配置させる。
次に、本実施形態の蒸煮冷却方法について説明する。前記蒸煮冷却機による蒸煮冷却方法は、前記処理槽本体の中空部内に、食材を収容して扉を閉めた後、パッキンを前進位置へ突出させて、処理槽本体と扉との間の隙間を封止して、前記中空部内を密閉して行われる。
典型的には、減圧手段による減圧後に給蒸手段により蒸気供給して処理槽を温める予熱工程、処理槽内の空気を外部へ排出するために減圧手段により減圧してから給蒸手段により蒸気供給する空気排除工程、処理槽内が所望圧力になるまで給蒸手段により蒸気供給する給蒸工程、処理槽内を設定圧力に保持するよう給蒸手段による蒸気供給の有無または量を調整して処理槽内の食材を加熱調理する蒸煮工程、前記パッキンを後退位置まで一時的に移動させて、閉鎖状態の前記扉と前記処理槽本体との間に隙間を形成し、この隙間から前記蒸気の凝縮水を外部へ排出するドレン排出工程と、加熱調理後の食材の冷却を図る冷却工程が順次に行われる。
ここで、前記蒸煮工程は、二以上の段階に分けて行ってもよい。たとえば、第一設定圧力に維持するように、圧力センサの出力に基づき給蒸操作弁を開閉操作する第一蒸煮工程後に、第二設定圧力に維持するように、圧力センサの出力に基づき給蒸操作弁を開閉操作する第二蒸煮工程が行われる。この蒸煮工程において、前記第一蒸煮工程および前記第二蒸煮工程前の加圧工程(設定圧力に至る工程)は、好ましくは、加圧開始圧力,前記第一設定圧力および前記第二設定圧力とそれぞれの加圧に要する時間を設定可能とし、それぞれの加圧工程の時間に対する圧力(温度)勾配を演算して、この勾配に沿って処理槽内の圧力を制御するように構成する。こうすることで、処理槽内の温度を徐々に上昇させることができ、高温調理による食材へのダメージを少なくできる。この加圧制御は、一段階の蒸煮工程にも適用することができる。
ところで、処理槽内へ蒸気供給して食材を加熱調理する蒸煮には、大気圧下で行う無圧蒸煮(吹き抜け蒸煮)の他に、大気圧を超える圧力で蒸煮を行う加圧蒸煮や、所望時に減圧手段を作動させて大気圧未満の圧力で蒸煮を行う減圧蒸煮がある。いずれの場合も、蒸気供給による処理槽内の加圧要因と、供給された蒸気の凝縮による処理槽内の減圧要因とがバランスを保つように、給蒸操作弁を開閉制御して、処理槽内の圧力を設定範囲に維持して蒸煮がなされる。
蒸煮工程の終了時には、処理槽内は、大気圧までの復圧が図られる。具体的には、加圧蒸煮の場合には、前記排出手段を用いて、処理槽内からの排水および排蒸が図られる。一方、減圧蒸煮の場合には、減圧下の処理槽内への逆流を防止するために前記排出手段は使用できず、その代わりに復圧手段を用いて、処理槽内への外気導入が図られる。但し、このようにして復圧ラインを開いた後であっても、配管圧損により処理槽内は僅かではあるが依然として真空状態を維持するため、前記排出手段は使用できない。
従って、減圧蒸煮の場合には、処理槽内には凝縮水が溜まったままとなる。このまま冷却工程を実行しても、前記凝縮水が冷却負荷となることで効率が悪いので、蒸煮工程後で冷却工程前にドレン排出工程を設けている。このドレン排出工程は、蒸煮工程終了時に上述した理由により、処理槽内から凝縮水を抜くことができない減圧蒸煮の場合に特に有効である。一方、加圧蒸煮の場合には、上述したように排出手段により一応、処理槽内からの凝縮水の排出が図られるので、ドレン排出工程は必須ではない。但し、排出手段では抜けきれなかった凝縮水を排出するために、ドレン排出工程を加圧蒸煮後にも行うようにしてもよい。
ドレン排出工程では、処理槽本体に対する扉の開閉を行うことなく、前記パッキンを後退位置へ移動させることで、処理槽内の密閉を解除し、処理槽内の底面に溜まった凝縮水を外部へ排出する。具体的には、処理槽本体は、上述したように側面への開口部を有しており、この開口部を取り囲むように設けられたパッキンにて、処理槽内の密閉が確保されている。従って、運転中、通常はパッキンを前進位置にすることで処理槽内を密閉しているが、ドレン排出工程においてはパッキンを一時的に後退位置へ戻すのである。これにより、処理槽内の底部に溜まっていた凝縮水は、扉と処理槽本体との間の下部隙間から外部へ自然に排出させる。ここで、処理槽本体内の底面を、処理槽本体の開口部の側へ行くに従って下方へ傾斜させておけば、凝縮水の外部への自然排出が一層容易で確実となる。この底面の傾斜は、処理槽本体内の底面自体を傾斜形成するか、処理槽本体を傾斜して設置することにより実現される。
また、前記冷却工程は、典型的には食材の粗熱を取る工程である。この粗熱冷却工程には、復圧操作弁を開いた状態で減圧手段を作動させて処理槽内の食材を送風冷却する吹き抜け粗熱冷却工程と、復圧操作弁を閉じた状態で減圧手段を作動させて処理槽内の食材の真空冷却を図る真空粗熱冷却工程とがある。そして、通常、そのいずれか一方の冷却工程が実行される。
本実施形態の蒸煮冷却方法および蒸煮冷却機によれば、蒸煮工程後、冷却工程前に、ドレン排出工程を設け、処理槽本体と扉との隙間を封止するパッキンを一時的に引き込んで、処理槽本体と扉との間に隙間を形成することで、処理槽内の底部に溜まった凝縮水を外部へ排出することができる。これにより、冷却工程における冷却負荷を軽減し、迅速で低コストな冷却処理がなされる。
ところで、前記蒸煮冷却機は、処理槽本体の対向する側面にそれぞれ扉を開閉可能に設けた両扉式とできる。たとえば、処理槽本体の中空部を前面だけでなく後面にも開口させ、前面の開口部は第一扉で開閉可能とする一方、後面の開口部は第二扉で開閉可能とする。そして、処理槽本体の前面および後面には、それぞれの扉との間の隙間を封止するパッキンが進退可能に設けられている。
このような両扉式蒸煮冷却機は、第一室と第二室とを区切る隔壁に設けて使用できる。その際、第一扉を第一室へ向け、第二扉を第二室へ向けて配置し、少なくとも一方の扉が閉じられて処理槽本体との隙間がパッキンで封止されている限りは、第一室と第二室とが連通不能とされている。しかも、両方の扉が同時に開かないように制御するのが好ましい。
第一室と第二室は、一方が蒸煮冷却に先立つ食材の下ごしらえ室とされ、他方が蒸煮冷却後の食材の盛り付け室とできる。食材は、下ごしらえ室から蒸煮冷却機内へ投入され、加熱調理とその後の冷却が図られた後、盛り付け室へ排出される。この場合、蒸煮工程後で冷却工程前に行われるドレン排出工程では、処理槽内の凝縮水は下ごしらえ室側へ排出するのが好ましい。そのために、下ごしらえ室側のパッキンを後退位置へ移動させればよい。また、処理槽内の底面は、下ごしらえ室側へ行くに従って下方へ傾斜して形成するのが好ましい。
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸煮冷却機の実施例1を示す概略構成図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮冷却機は、食材1が収容されて密閉可能な処理槽2と、この処理槽2内へ蒸気供給する給蒸手段3と、前記処理槽2内の空気や蒸気を外部へ吸引排出して処理槽2内を減圧する減圧手段4と、減圧下の処理槽2内へ外気を導入して処理槽2内を復圧する復圧手段5と、処理槽2内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段6と、これら各手段3〜6を制御する制御手段7とを備える。
処理槽2には、メッシュ状の棚板8,8…が上下に複数段保持され、調理鍋などに入れられた食材1が各棚板8に載せられる。但し、処理槽2内にワゴン(不図示)を出し入れ可能とし、そのワゴンの棚板に食材1を載せるようにしてもよい。各処理槽2には、前記食材1の温度を検出するための温度センサ9と、処理槽2内の圧力を検出するための圧力センサ(不図示)とが備えられている。
給蒸手段3は、処理槽2内へ蒸気を供給する手段である。本実施例の給蒸手段3は、一次ボイラ(不図示)と二次ボイラ(リボイラ)10とを備え、一次ボイラからの蒸気を熱源として、二次ボイラ10にて軟水を加熱して蒸気化し、そのようにして生成された清浄蒸気を処理槽2内へ供給する。一次ボイラは、通常の一般的なボイラから構成されるが、そのような一次ボイラによる蒸気には、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が混入するおそれが残る。ところが、処理槽2内へ供給される蒸気は、直接に食材1に接触し得るものである。そこで、二次ボイラ10にて軟水を加熱して清浄蒸気を生成し、この清浄蒸気を処理槽2内へ供給する。
二次ボイラ10は、ステンレス製の熱交換器であり、軟水を加熱して蒸気へ変換する。軟水を加熱するために、二次ボイラ10には、一次ボイラからの蒸気が二次ボイラ給蒸弁11を介して供給される。このようにして一次ボイラから供給された蒸気は、二次ボイラ10にてステンレス配管内へ供給される軟水を加熱し、清浄蒸気を生成する。一次ボイラからの蒸気は、二次ボイラ10にて使用後、第一スチームトラップ12および第一逆止弁13を介して排出される。
二次ボイラ10へ軟水を供給するために、給蒸手段3は軟水機14を備える。本実施例の軟水機14は、イオン交換樹脂を使用して、供給された水を軟水へ変換する。この軟水機14にて作られた軟水は給水タンク15に貯留され、この給水タンク15の軟水が給水ポンプ16により、二次ボイラ給水弁17および第二逆止弁18を介して二次ボイラ10へ供給される。
二次ボイラ10に供給された軟水は、上述したように、一次ボイラからの蒸気にて加熱されて清浄蒸気へ変換され、給蒸ライン19を介して、ノズル20から処理槽2内へ供給される。給蒸ライン19の中途には、給蒸操作弁21が設けられている。本実施例の給蒸操作弁21は、電磁弁から構成され、処理槽2内への蒸気供給の有無を切り替える。
減圧手段4は、処理槽2内の空気や蒸気を外部へ真空引きして、処理槽2内を減圧する手段である。この減圧手段4は、処理槽2に接続された減圧ライン22が、熱交換器23と第三逆止弁24とを介して、水封式真空ポンプ25に接続されて構成される。減圧ライン22には、減圧操作弁26が設けられている。本実施例の減圧操作弁26は、モータバルブから構成され、処理槽2内からの減圧の可否を切り替える。
熱交換器23には、電磁弁からなる熱交給水弁27および第四逆止弁28を介して冷却用の水が供給され、排水口へ排出される。これにより、処理槽2内から吸引した空気中の蒸気は、熱交換器23にて冷却され凝縮される。このようにして、減圧ライン22中の蒸気を熱交換器23で予め凝縮させることで、後続の真空ポンプ25の負荷を軽減して減圧能力を高めることができる。
水封式真空ポンプ25は、電磁弁からなる封水給水弁29を介して水が供給されつつ、駆動される。そのため、真空ポンプ25へ給水用の封水給水弁29は、真空ポンプ25に連動して開かれる。真空ポンプ25からの排水は、セパレータ30を介して気水分離された後、排出される。ところで、熱交換器23や真空ポンプ25への各給水ラインには、それぞれ定流量弁(不図示)が設けられており、給水圧力が変動しても、それぞれに所望の一定流量が供給可能とされている。
復圧手段5は、減圧手段4などにより減圧された処理槽2内を復圧する手段である。本実施例の復圧手段5は、処理槽2に接続された復圧ライン31が、除菌フィルター32を介して外気と連通可能に設けられている。復圧ライン31には、処理槽2側から順に、第五逆止弁33と復圧操作弁34とが設けられている。本実施例の復圧操作弁34は、電磁弁から構成され、これを開くことで処理槽2内は大気圧に開放される。
排出手段6は、処理槽2内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する手段である。本実施例の排出手段6は、上部排蒸手段35と、下部排蒸手段36と、排水手段37とに分けられる。上部排蒸手段35は、処理槽2の中央部または上部に接続された上部排蒸ライン38から構成される。この上部排蒸ライン38には、処理槽2側から順に、上部排蒸弁39と第六逆止弁40とが設けられており、処理槽2内の蒸気を外部へ排出する。本実施例の上部排蒸弁39は、電磁弁から構成され、処理槽2内からの蒸気排出の有無を切り替える。
また、下部排蒸手段36は、処理槽2の下部に接続された下部排蒸ライン41から構成される。この下部排蒸ライン41には、処理槽2側から順に、下部排蒸弁42と第七逆止弁43とが設けられており、処理槽2内の蒸気や残存空気、処理槽2内の底部に溜まる凝縮水を外部へ排出する。本実施例の下部排蒸弁42は、モータバルブから構成され、処理槽2内からの蒸気およびその凝縮水などの排出の有無を切り替える。
さらに、排水手段37は、処理槽2の下部に接続されたトラップライン44から構成される。このトラップライン44には、処理槽2側から順に、トラップ弁45、第二スチームトラップ46、および第八逆止弁47が設けられており、凝縮水を外部へ排出する。本実施例のトラップ弁45は、モータバルブから構成され、処理槽2内からの凝縮水の排出の有無を切り替える。
図2は、本実施例の処理槽2を示す概略正面図であり、一部を断面にして示している。また、図3は、本実施例の処理槽2の戸先側を拡大して示す概略斜視断面図であり、扉のスイング閉状態を示している。これらの図に示すように、処理槽2は、処理槽本体48と扉49とを備える。本実施例の処理槽本体48は、略矩形の金属製ボックス状に構成されており、正面へ開口部50を向けて略矩形状の中空部が形成されている。図示例の処理槽本体48は、その中空部内の底面が、図1に示すように傾斜面51に形成されている。この傾斜面51は、処理槽本体48の開口部50の側へ行くに従って、下方へ傾斜して形成されている。
前記開口部50を開閉可能に、処理槽本体48には扉49が設けられる。本実施例の扉49は、金属製で、略矩形板状に形成されている。この扉49は、処理槽本体48の一側端部に、ヒンジ52を介して回動可能に設けられる。図示例では、処理槽本体48の右側端部に枢軸53が上下方向へ沿って配置され、この枢軸53まわりに回動可能に支持部材54を設け、この支持部材54に扉49が保持される。この際、扉49は、支持部材54ひいては処理槽本体48に対し上下方向へスライド可能に設けられる。
本実施例では、前記支持部材54に上下方向へ沿ってガイド棒55が設けられる一方、このガイド棒55に沿って摺動するスライド材56が扉49に固定される。そして、ガイド棒55に沿ってスライド材56および扉49を上下動させるために、扉49と支持部材54との間には、シリンダ機構57が設けられる。このシリンダ機構57は、シリンダ本体58からロッド59が進退可能に構成され、ロッド59が上下方向に進退するように、シリンダ本体58を下側にして設けられる。その際、シリンダ本体58は、支持部材54にピン結合60により連結される。また、扉49にロッド受け材61を固定し、このロッド受け材61の下部にロッド59の先端部が当接される。
従って、シリンダ本体58からロッド59を突出させて、シリンダ機構57を伸長させると、ロッド59の先端部はロッド受け材61ひいては扉49を押し上げることになる。一方、シリンダ本体58へロッド59を退入させて、シリンダ機構57を短縮させると、ロッド59の退入に応じて扉49はその自重により支持部材54に対して下方へ移動することになる。
このようにして、扉49は、ヒンジ52まわりの回動と、シリンダ機構57を介した上下方向のスライドが可能とされる。ヒンジ52まわりの回動について述べると、扉49は、処理槽本体48の開口部50を覆うスイング閉位置と、処理槽本体48の開口部50から離隔したスイング開位置との間で、ヒンジ52にて回動可能とされる。また、上下方向のスライドについて述べると、扉49は、前記スイング閉位置において、シリンダ機構57により上下動可能とされる。
ところで、前記シリンダ機構57は、たとえば送りネジ機構を用いて構成される。すなわち、モータなどの駆動源(不図示)により雌ネジ部材(不図示)を回転させることにより、この雌ネジ部材に進退可能に螺合された雄ネジ部材(不図示)をその軸線方向へ往復動させ、この雄ネジ部材に連結してあるロッド59を進退させる。但し、シリンダ機構57としては、油圧シリンダ機構や空気圧シリンダ機構などを用いることもできる。
扉49には、スイング閉位置において処理槽本体48の開口部50の左右方向外側位置に、上下方向に複数の第一爪62,62…が設けられる。この第一爪62は、扉49の左右両側部に、左右対称形状に設けられる。各第一爪62は、同じ形状および大きさの略台形状とされる。つまり、扉49の左右両側面から左右方向外側へ突出するよう設けられる略矩形状の板材は、その上下両端面が、左右方向外側へ行くに従って互いに近接するよう傾斜して形成される。このような第一爪62が上下に所定間隔で複数設けられることで、扉49の左右両側面には、略矩形状の第一凸部(第一爪)62と略矩形状の第一凹溝63とが交互に複数設けられる。
一方、処理槽本体48の開口部50の外側には、その開口部50よりも左右および上下に拡幅して、扉49を受け入れ可能な扉収容部64が、正面側へ開口して形成されている。この扉収容部64の奥側の端面は、扉49をスイング閉位置まで閉めた際の戸当り面65として機能する。また、扉収容部64の左右両側部には、それぞれ上下方向に複数の第二爪66,66…が設けられる。この第二爪66は、処理槽本体48の左右両側部に、左右対称形状に設けられる。各第二爪66は、同じ形状および大きさの略台形状とされる。つまり、扉収容部64の左右両側面から左右方向内側へ突出するよう設けられる略矩形状の板材は、その上下両端面が、左右方向内側へ行くに従って互いに近接するよう傾斜して形成される。このような第二爪66が上下に所定間隔で複数設けられることで、処理槽本体48の左右両側面には、略矩形状の第二凸部(第二爪)66と略矩形状の第二凹溝67とが交互に複数設けられる。
扉49をスイング開位置からスイング閉位置まで回動させる際、処理槽本体48の第二爪66,66間の第二凹溝67に、扉49の第一爪62が通される。またこの際、扉49の第一爪62,62間の第一凹溝63には、処理槽本体48の第二爪66が通される。扉49は、その内面が扉収容部64の前記戸当り面65に当接することで、スイング閉位置における位置決めが容易になされる。扉49がスイング閉位置にある場合には、処理槽本体48の戸当り面65と第二爪66との間に、扉49の第一爪62が配置される。さらに、このようなスイング閉位置における処理槽本体48への扉49の保持を確実になすために、処理槽本体48と扉49との間には、ラッチ機構68が設けられる。
ラッチ機構68は、スイング閉位置において、処理槽本体48に扉49を係止するものである。このラッチ機構68は、処理槽本体48に設けられる受け具69と、扉49の戸先側に設けられ前記受け具69に係脱可能なラッチ本体70とを備え、受け具69からのラッチ本体70の係止解除は、扉49に設けられた操作部71の操作によりなされる。本実施例の操作部71は、ハンドル状とされている。
処理槽本体48の戸当り面65には、処理槽本体48の開口部50を取り巻くように、略矩形枠状に連続してパッキン溝72が形成されている。このパッキン溝72は、戸当り面65へ開口する断面略矩形状とされ、戸当り面65から後方へ凹んで形成されている。このようにして形成された略矩形枠状のパッキン溝72には、略矩形枠状に連続するパッキン73が装着される。本実施例のパッキン73は、断面略矩形状とされ、図3に示すように、後端部の中央には後方へ開口して凹部74が形成されている。
図1に示すように、パッキン溝72の後端部には、パッキン溝72への圧縮空気供給用管路としてのパッキン押出しライン75と、パッキン溝72からの空気吸引用管路としてのパッキン引込みライン76とが接続されている。本実施例では、パッキン押出しライン75とパッキン引込みライン76とは、共通管路を介してパッキン溝72の所望箇所に接続されている。たとえば、略矩形枠状のパッキン溝72には、その左右両端部の上下方向中央部にそれぞれ前記共通管路が分岐して接続される。
パッキン押出しライン75にはコンプレッサ77が接続され、コンプレッサ77からの圧縮空気がパッキン溝72内へ供給可能とされる。パッキン押出しライン75の中途には、パッキン押出しエア弁78が設けられている。本実施例のパッキン押出しエア弁78は、電磁弁から構成され、パッキン溝72内への圧縮空気の供給の有無を切り替える。
パッキン引込みライン76には真空ポンプ25またはアスピレータが接続され、パッキン溝72内の空気を外部へ吸引排出可能とされる。本実施例では、前記減圧手段4の水封式真空ポンプ25に接続されている。すなわち、本実施例では、真空ポンプ25は、処理槽2内の空気の真空引きと、パッキン溝72内の空気の真空引きとの双方に、共通的に用いられる。パッキン引込みライン76の中途には、パッキン引込みエア弁79が設けられている。本実施例のパッキン引込みエア弁79は、電磁弁から構成され、パッキン溝72内からの真空引きの有無を切り替える。
次に、本実施例の扉49の開閉動作について説明する。初期状態において、扉49は、ヒンジ52の枢軸53まわりに回動して開口部50から離れており、スイング開位置にあるものとする。また、シリンダ機構57は、ロッド59を突出させており、このロッド59の先端はロッド受け材61に当接して、扉49を所定高さに保持しているとする。この初期状態では、扉49のラッチ本体70は、処理槽本体48の受け具69と同一高さ位置に配置されている。そして、この状態では、処理槽本体48の第二凹溝67の上下方向中央部に、扉49の第一爪62が配置されている。
この初期状態から、扉49を枢軸53まわりに、スイング閉位置まで回動させる。この際、処理槽本体48の第二爪66,66間の第二凹溝67に、扉49の第一爪62が通されると共に、扉49の第一爪62,62間の第一凹溝63に、処理槽本体48の第二爪66が通される。また、ラッチ本体70は、受け具69に係止される。その状態では、処理槽本体48の戸当り面65と第二爪66との間に、扉49の第一爪62が配置される。
その後、シリンダ機構57を作動させ、シリンダ本体58へロッド59を退入させる。このロッド59の退入につれて扉49が設定高さまで下降し、第一爪62が第二爪66と対面する高さ位置に配置される。この状態で、パッキン押出しエア弁78を開いて、圧縮空気をパッキン溝72へ供給することで、パッキン73はパッキン溝72から突出される。パッキン73の押出しにより、パッキン73の先端部は、扉49の内面に密着しつつ、扉49を外方へ移動させる。これにより、第二爪66に第一爪62を押し付けつつ、処理槽本体48の開口部50を扉49で気密状態に閉じることができる。
このようにして処理槽本体48の開口部50を扉49で密閉した状態で、後述の蒸煮冷却処理がなされた後、パッキン引込みエア弁79を開いた状態で真空ポンプ25を作動させる。これにより、パッキン73は、パッキン溝72内へ収容され、処理槽2内の密閉が解除される。その後、さらに扉49を開けるには、シリンダ機構57の作動によりロッド59を上昇させ、扉49を設定高さまで上昇させる。そして、このようにして第二爪66,66間の第二凹溝67と対応する高さに第一爪62を配置した状態で、ハンドル状の操作部71を操作して受け具69からのラッチ本体70の係止を解除し、枢軸53まわりに扉49を開ければよい。
前述したように、本実施例のパッキン73は、パッキン溝72から突出した前進位置と、パッキン溝72に収容された後退位置との間を可動する。前進位置および後退位置のいずれの位置においても、パッキン73はパッキン溝72の左右両側面への密着状態が確保されている。従って、パッキン溝72の開口部側からの空気漏れが防止される。
ところで、前記制御手段7は、前記給蒸手段3、減圧手段4、復圧手段5、および排出手段6を制御する制御器80から構成される。また、制御手段7は、それが把握する時間や前記温度センサや圧力センサ(不図示)からの検出信号などに基づいて前記各手段3〜6を制御する。具体的には、給蒸操作弁21、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、水封式真空ポンプ25、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45、温度センサ9、圧力センサ(不図示)などは、制御器80に接続されている。そして、この制御器80は、所定のプログラムに基づき、後述するように、処理槽2内の食材1の蒸煮とその後の冷却とを行う。
また、制御器80は、二次ボイラ給蒸弁11と二次ボイラ給水弁17とに接続されており、二次ボイラ10の圧力制御と水位制御とを行う。二次ボイラ10の圧力制御は、前記ステンレス配管内に設けた二次ボイラ用圧力センサ(不図示)を用いて行う。すなわち、この二次ボイラ用圧力センサ(不図示)に基づき、二次ボイラ10にて生成される清浄蒸気の圧力を検出し、一次ボイラ(不図示)から二次ボイラ10へ蒸気供給するための二次ボイラ給蒸弁11の開閉を操作する。また、二次ボイラ10の水位制御は、二次ボイラ10の前記ステンレス配管内の軟水の水位を、水位センサ(不図示)に基づき前記二次ボイラ給水弁17を開閉制御して行う。
さらに、制御器80は、前記シリンダ機構57を制御して、扉49を上下にスライドさせる。また、制御器80は、パッキン押出しエア弁78やパッキン引込みエア弁79に接続されており、これら弁78,79の開閉を行うと共に、コンプレッサ77または真空ポンプ25の作動を制御することで、パッキン73の押出しまたは引込みを制御する。
次に、本実施例の蒸煮冷却機を用いた蒸煮冷却方法について説明する。図4は、本実施例の蒸煮冷却機の処理槽2にて実行される蒸煮冷却処理の一例を示すフローチャートである。この図に示すように、処理槽2では、予熱工程(ST1)、空気排除工程(ST2)、給蒸工程(ST3)、第一蒸煮工程(ST4)、第二蒸煮工程(ST5)、ドレン排出工程(ST6)、粗熱冷却工程(ST7)が順次に行われる。
予熱工程(ST1)は、減圧手段4による減圧後に、給蒸手段3により蒸気供給して処理槽2を温める工程である。具体的には、まず、給蒸操作弁21、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45を閉じた状態で、減圧手段4を作動させる。但し、ここでは熱交換器23は機能させずに、真空ポンプ25のみを作動させて処理槽2内を減圧する。すなわち、熱交給水弁27を閉じた状態で、減圧操作弁26および封水給水弁29を開いて真空ポンプ25を作動させる。
このようにして、処理槽2内を所望時間または所望圧力まで減圧した後、減圧手段4の作動を停止して、給蒸手段3により処理槽2内へ蒸気を供給する。すなわち、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42を閉じると共に、真空ポンプ25の作動を停止した状態で、給蒸操作弁21を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。この際、処理槽2内が大気圧を超える場合、トラップ弁45を開いておくことで、処理槽2内の底部から凝縮水を外部へ排出する。
空気排除工程(ST2)は、減圧手段4により処理槽2内の空気を外部へ排出する工程である。具体的には、まず、給蒸操作弁21、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45を閉じた状態で、減圧手段4を作動させる。但し、ここでは熱交換器23は機能させずに、真空ポンプ25のみを作動させて処理槽2内を減圧する。すなわち、熱交給水弁27を閉じた状態で、減圧操作弁26および封水給水弁29を開いて真空ポンプ25を作動させる。このようにして、処理槽2内の空気を減圧手段4により外部へ真空引きして、処理槽2内の空気を排除することで、後の蒸煮工程(ST4,ST5)における食材1の加熱調理を効果的に行うことができる。
このようにして処理槽2内から空気を排除した後、給蒸手段3により処理槽2内へ蒸気を供給する。すなわち、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42を閉じると共に、真空ポンプ25の作動を停止した状態で、給蒸操作弁21を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。この際、処理槽2内が大気圧を超える場合、トラップ弁45を開いておくことで、処理槽2内の底部から凝縮水を外部へ排出する。
給蒸工程(ST3)は、処理槽2内が所望の目標圧力になるまで、給蒸手段3により処理槽2内へ蒸気を供給する工程である。具体的には、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42を閉じると共に、真空ポンプ25の作動を停止した状態で、給蒸操作弁21を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。この際、処理槽2内が大気圧を超える場合、トラップ弁45を開いておくことで、処理槽2内の底部から凝縮水を外部へ排出する。
第一蒸煮工程(ST4)および第二蒸煮工程(ST5)は、いずれも処理槽2内を設定圧力に保持するように、給蒸手段3による処理槽2内への蒸気供給の有無を調整して、処理槽2内の食材1を加熱調理する工程である。第一蒸煮工程(ST4)と第二蒸煮工程(ST5)は、前記設定圧力が異なるだけであるから、両工程を合わせて蒸煮工程と呼ぶことができる。逆にいうと、本実施例では、蒸煮工程は、第一蒸煮工程(ST4)と第二蒸煮工程(ST5)とに分けられている。第一蒸煮工程(ST4)は、第一設定圧力に維持するように、圧力センサの出力に基づき給蒸操作弁21を開閉操作する工程である。また、第二蒸煮工程(ST5)は、第二設定圧力に維持するように、圧力センサの出力に基づき給蒸操作弁21を開閉操作する工程である。
ところで、処理槽2内へ蒸気供給して食材1を加熱調理する蒸煮には、大気圧下で行う無圧蒸煮(吹き抜け蒸煮)と、大気圧を超える圧力で蒸煮を行う加圧蒸煮と、所望時に減圧手段を作動させて大気圧未満の圧力で蒸煮を行う減圧蒸煮とに分けられる。
無圧蒸煮の場合、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34を閉じると共に、真空ポンプ25の作動を停止した状態で、給蒸操作弁21、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。
加圧蒸煮の場合、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42を閉じると共に、真空ポンプ25の作動を停止した状態で、給蒸操作弁21、トラップ弁45を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。従って、加圧蒸煮の場合には、トラップライン44から自動的に凝縮水が外部へ排出される。
減圧蒸煮の場合は、復圧操作弁34、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45を閉じた状態で、給蒸操作弁21を開いて、処理槽2内へ蒸気を供給する。この際、処理槽2内が設定上限圧力を超えると、減圧手段4を作動させて、設定下限圧力まで処理槽2内を減圧する。すなわち、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29を開いた状態で、真空ポンプ25を作動させて、設定下限圧力まで処理槽2内を減圧し、設定下限圧力になると、これら各弁26〜29を閉じると共に真空ポンプ25の作動を停止する。
いずれの蒸煮の場合も、基本的には、蒸気供給による処理槽2内の加圧要因と、供給された蒸気の凝縮による処理槽2内の減圧要因とがバランスを保つように、給蒸操作弁21を開閉制御して、処理槽2内の圧力を設定範囲に維持して蒸煮がなされる。但し、減圧蒸煮の場合には、設定上限圧力を超えると、上述のとおり減圧手段4を作動させる場合がある。
そして、加圧蒸煮工程の終了時には、給蒸操作弁21を閉じると共に、下部排蒸弁42を開いて、処理槽2内が大気圧になるまで、排水および排蒸がなされる。一方、減圧蒸煮工程の終了時には、減圧手段4および排出手段6を作動させず、かつ、給蒸操作弁21を閉じると共に復圧操作弁34を開いて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。
但し、第一蒸煮工程(ST4)および第二蒸煮工程(ST5)が共に加圧蒸煮であり、かつ第一設定圧力よりも第二設定圧力の方が高い場合には、第一蒸煮工程(ST4)終了時の前記排水および排蒸処理は省略される。また、第一蒸煮工程(ST4)および第二蒸煮工程(ST5)が共に減圧蒸煮であり、かつ第一設定圧力よりも第二設定圧力の方が更に真空度が高い場合には、第一蒸煮工程(ST4)終了時の前記復圧処理は省略される。
いずれにしても、蒸煮工程(ST4,ST5)では、処理槽2内へ蒸気が供給されることで、処理槽2内に収容された食材1を加熱調理することができる。この際、上述したように、処理槽2内へ供給される蒸気は、二次ボイラ10にて軟水から生成された清浄蒸気である。従って、安全で安心の加熱調理を実現することができる。また、食材1の全周囲に清浄蒸気を行き渡らせることで、短時間で均一の加熱料理がなされる。ところで、蒸煮工程では、給蒸により処理槽2内の圧力を調整することで、処理槽2内の温度を調整することができる。本実施例では、60℃から120℃の範囲にて、自由な温度に設定して加熱調理を可能としている。この際、上述したように、本実施例では、第一蒸煮工程(ST4)と第二蒸煮工程(ST5)とで、段階的に圧力(温度)を変更する操作がなされる。
ドレン排出工程(ST6)は、処理槽2内の底面に溜まった凝縮水を外部へ排出する工程である。上述したように、予熱工程(ST1)から始まる図4の一連の処理に先立って、処理槽本体48の中空部内には食材1が収容され、扉49がスイング閉位置まで閉められた状態で下方へスライド後、パッキン73が前進位置まで押し出されて、処理槽本体48の中空部が密閉されている。その状態のまま予熱工程(ST1)から蒸煮工程(ST4,ST5)までが行われるが、ドレン排出工程(ST6)では、扉49はスライドおよび回動させることなく、パッキン73のみを後退位置まで移動させる。これにより、処理槽本体48と扉49との間に隙間92が形成され、その下部隙間92から凝縮水を処理槽2外へ排出することができる。この際、処理槽本体48内の底面が傾斜面51とされていることで、処理槽2内の凝縮水は自然に且つ確実に全て処理槽2外へ排出される。
このようなドレン排出工程(ST6)は、次工程の粗熱冷却工程(ST7)の際に負荷となる凝縮水を予め処理槽2外へ排出するものである。特に、前記第二蒸煮工程(ST5)が減圧蒸煮の場合に有効である。減圧蒸煮の場合、その終了時に復圧ライン31を開いて処理槽2内を復圧した後も、配管圧損により処理槽2内は僅かに真空状態を維持するため、逆流防止の観点から下部排蒸弁42やトラップ弁45を開けることができず、処理槽2内に凝縮水が溜まったままとなるからである。ドレン排出工程(ST6)の終了時には、パッキン73は再び前進位置へ押し出され、処理槽2内が密閉される。
粗熱冷却工程(ST7)は、蒸煮工程(ST4,ST5)により加熱調理された食材1の粗熱を取る工程である。この粗熱冷却工程(ST7)には、吹き抜け粗熱冷却工程と真空粗熱冷却工程とがあり、通常、そのいずれか一方の冷却工程が実行される。
吹き抜け粗熱冷却工程は、復圧操作弁34を開いた状態で減圧手段4を作動させて処理槽2内の食材1を送風冷却する工程である。具体的には、給蒸操作弁21、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45を閉じた状態で、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29、復圧操作弁34を開くと共に、真空ポンプ25を作動させる。
真空粗熱冷却工程は、復圧操作弁34を閉じた状態で減圧手段4を作動させて処理槽2内の食材1の真空冷却を図る工程である。具体的には、給蒸操作弁21、上部排蒸弁39、下部排蒸弁42、トラップ弁45、復圧操作弁34を閉じた状態で、減圧操作弁26、熱交給水弁27、封水給水弁29を開くと共に、真空ポンプ25を作動させる。
ところで、本実施例では、蒸煮後の冷却は、たとえば50℃程度まで粗熱を取る粗熱冷却工程(ST7)とし、その後に、真空冷却機(不図示)やブラストチラー(不図示)などで最終的な目標温度まで冷却する構成としている。しかしながら、所望により、本実施例の蒸煮冷却機自体で、最終的な目標温度まで冷却可能に構成してもよい。
本実施例の蒸煮冷却方法および蒸煮冷却機によれば、処理槽2内へ蒸気供給して、処理槽2内の食材1を加熱調理後、一旦、前記蒸気の凝縮水を処理槽2外へ、簡易に、迅速かつ確実に排水することができる。そして、その上で、前記食材1の冷却を図ることで、冷却時間の短縮を図ることができる。