JP2007080658A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生する炭酸ガスを適宜放出でき、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が少なく、気化燃料を燃料極に均一に供給でき電池反応効率を高めた燃料電池を提供する。
【解決手段】カソード触媒層2と、アノード触媒層3と、上記カソード触媒層2と上記アノード触媒層3の間に配置されるプロトン伝導性膜6と、液体燃料Lを貯留する液体燃料タンク9と、液体燃料Lの気化成分を前記アノード触媒層3に供給するための燃料気化層10と、上記燃料気化層10と上記アノード触媒層3との間に形成された気化燃料収容室12とを具備する燃料電池であって、上記アノード触媒層3において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外に排出する排気孔20を上記気化燃料収容室12の側壁に設けると共に、この排気孔20の気化燃料収容室12内側における開口中心が、上記気化燃料収容室12の高さの中点よりアノード触媒層3側に位置することを特徴とする燃料電池である。
【選択図】 図1
【解決手段】カソード触媒層2と、アノード触媒層3と、上記カソード触媒層2と上記アノード触媒層3の間に配置されるプロトン伝導性膜6と、液体燃料Lを貯留する液体燃料タンク9と、液体燃料Lの気化成分を前記アノード触媒層3に供給するための燃料気化層10と、上記燃料気化層10と上記アノード触媒層3との間に形成された気化燃料収容室12とを具備する燃料電池であって、上記アノード触媒層3において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外に排出する排気孔20を上記気化燃料収容室12の側壁に設けると共に、この排気孔20の気化燃料収容室12内側における開口中心が、上記気化燃料収容室12の高さの中点よりアノード触媒層3側に位置することを特徴とする燃料電池である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、液体燃料を気化させた気化燃料をアノード触媒層に供給する方式の燃料電池に係り、特に電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生する炭酸ガスを適宜放出でき、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が少なく、気化燃料を燃料極に均一に供給でき電池反応効率を高めた燃料電池に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の各種電子機器は、半導体技術の発達と共に小型化され、燃料電池をこれらの小型機器用の電源に用いることが試みられている。燃料電池は、燃料と酸化剤を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補充・交換すれば連続して発電できるという利点を有しているため、小型化が実現すれば携帯電子機器の作動に極めて有利なシステムとなる。
特に、直接メタノール型燃料電池(DMFC;direct methanol fuel cell)は、エネルギー密度が高いメタノールを燃料に用い、電極触媒上においてメタノールから直接電流を取り出せるため、小型化が可能であり、燃料の取り扱いも水素ガス燃料に比べて安全で容易なことから小型機器の駆動用電源として有望である。
DMFCにおける燃料の供給方法としては、液体燃料を気化してからブロア等で燃料電池内に送り込む気体供給型DMFCと、液体燃料をそのままポンプ等で燃料電池内に送り込む液体供給型DMFCと、更には特許文献1に示すような内部気化型DMFC等が知られている。
特許文献1に示す内部気化型DMFCは、液体燃料を保持する燃料浸透層と、燃料浸透層中に保持された液体燃料のうち気化成分を拡散させるための燃料気化層とを備えるもので、気化した液体燃料が燃料気化層から気化燃料収容室を経由して燃料極(アノード)に供給される。特許文献1では、液体燃料としてメタノールと水が1:1のモル比で混合されたメタノール水溶液が使用され、メタノールと水の双方を気化ガスの形で燃料極に供給している。
このような特許文献1に示す内部気化型DMFCによると、十分に高い出力特性を得られなかった。水はメタノールに比べて蒸気圧が低く、水の気化速度はメタノールの気化速度に比べて遅いため、メタノールも水も気化によって燃料極に供給しようとすると、メタノール供給量に対する水の相対的な供給量が不足する。その結果、メタノールを内部改質する反応の反応抵抗が高くなるため、十分な出力特性を得られなくなるのである。
特許第3413111号公報
また、上記特許文献1に示す従来の内部気化型DMFCによると、メタノールが電池外部に漏洩することを防止するために、液体燃料タンクからアノード触媒層に至る経路はほぼ気密に形成されている。そして、アノード触媒層におけるメタノール等の燃料の分解反応(内部改質反応)によって炭酸ガス(CO2)が生成し、その生成量は発電量の増加に伴って増加する。そのため、燃料気化層とアノード触媒層との間に形成された気化燃料収容室における内圧が経時的に増加して、相対的に気化燃料ガスの分圧が減少し、アノード触媒層に供給される燃料供給量が低下する結果、電池出力が低下してしまう問題点があった。
上記問題点を解決するために本発明者らは、燃料気化層とアノード触媒層との間に形成された気化燃料収容室の側壁に、アノード触媒層において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外(電池筐体外)に排出する内圧逃がし機構を設ける構成を検討した。
しかしながら、上記内圧逃がし機構を設ける位置や配置数によっては炭酸ガスの除去排出が十分に進行せず、却って気化燃料が排気されて電池効率が低下するという課題が発生する場合があった。
すなわち、上記内圧逃がし機構を気化燃料収容室の下方の側壁に設けた場合には、燃料気化層から上昇してきた気化燃料が直接に内圧逃がし機構から電池外に放出され、燃料が無駄になると共に、アノード触媒層から発生した炭酸ガスによって気化燃料の流れが阻害され、気化燃料がアノード触媒層側に均一に供給されないために気化燃料の分解反応が効率的に進行せず、電池出力が低下する場合があった。
本発明の目的は、液体燃料の気化成分をアノード触媒層に供給する方式を有する小型燃料電池の出力特性を安定化向上させることにあり、特に電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生する炭酸ガスを適宜放出でき、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が少なく、気化燃料を燃料極に均一に供給でき電池反応効率を高めた燃料電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料電池は、カソード触媒層と、アノード触媒層と、上記カソード触媒層と上記アノード触媒層の間に配置されるプロトン伝導性膜と、液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、液体燃料の気化成分を前記アノード触媒層に供給するための燃料気化層と、上記燃料気化層と上記アノード触媒層との間に形成された気化燃料収容室とを具備する燃料電池であって、前記アノード触媒層において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外(電池筐体外)に排出する排気孔を上記気化燃料収容室の側壁に設けると共に、この排気孔の気化燃料収容室内側における開口中心が、上記気化燃料収容室の高さの中点よりアノード触媒層側に位置することを特徴とする。
上記燃料電池によれば、排気孔の気化燃料収容室内側における開口中心が、上記気化燃料収容室の高さの中点よりアノード触媒層側に位置しているために、アノード触媒層の表面から発生した炭酸ガスを高い濃度の状態で排気孔から電池外に排出することができる。したがって、発生した炭酸ガスによって気化燃料が希釈されたり、気化燃料の流れが阻害されたりすることが少なく、アノード触媒層全体に気化燃料を均一に供給することができ電池活性を高めることができる。
また上記燃料電池において、前記排気孔の中心軸が水平方向に対して傾斜しており、この排気孔の中心軸がアノード触媒層方向に指向するように構成されていることが好ましい。この場合、排気孔がアノード触媒層方向に指向するように傾斜して構成されているために、アノード触媒層表面に近い高濃度の炭酸ガスを排気孔から電池外に排出することができる。また、アノード触媒層表面から排気孔を通り電池外に至る排気経路の曲がりが少なく発生した炭酸ガスを円滑に電池外に排出できる。この排気口の中心軸の水平方向に対する仰角は具体的には0°を越え60°以下が好ましく、さらに好ましくは0°を越え45°以下が好ましい。
さらに、上記燃料電池において、前記アノード触媒層が矩形状を有する複数のアノード触媒層要素から成り、各アノード触媒層要素の長手方向の対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室の側壁にそれぞれ排気孔を形成することが好ましい。
この場合、複数のアノード触媒層要素(電極要素)の長手方向における対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室の側壁にそれぞれ排気孔を形成し、複数の排気孔の平面位置を電極要素に対して対称に分布させているために、電極要素の片方に排気孔を非対称に分布させた場合と比較して、濃淡差が大きい炭酸ガス濃度分布が形成されず、アノード触媒層における炭酸ガス濃度を均一化でき、一様に低下させることができる。
また上記燃料電池において、前記排気孔の孔径が前記気化燃料収容室の高さの50%以下であることが好ましい。気化燃料収容室の高さは、電池発電容量によっても異なるが、通常は10mm以下であり、この気化燃料収容室の側壁に形成する排気孔の孔径は0.5〜5mm程度である。この排気孔の孔径が前記気化燃料収容室の高さの50%を超えるように過大になると、アノード触媒層から発生した炭酸ガスと、燃料気化層から気化燃料収容室に流入した気化燃料とが共に排気孔から排出され易くなり、高濃度の炭酸ガスを主体にした生成ガスを選択的に排気することが困難になる。したがって、上記排気孔の孔径は気化燃料収容室の高さの50%以下であることが好ましいが、40%以下であることがさらに好ましい。
また上記燃料電池において、前記気化燃料収容室から排出された生成ガスをカソード触媒層側に還流する案内管を設けることが好ましい。この場合、気化燃料収容室から排気孔を通り排出された生成ガス中には、アノード触媒層から発生した炭酸ガスの他に、燃料気化層から供給されたメタノール蒸気等の気化燃料が含有されている。この排出された生成ガスを、上記案内管を経由してカソード触媒層側に還流することにより、排出された気化燃料が回収再利用される。すなわち、メタノール蒸気等の気化燃料の燃焼反応が起こり、その発熱によって電池出力を増加させることが可能になると共に、燃料電池の低温度における始動が容易になり始動特性が改善される効果がある。また、前記案内管により排出された気化燃料、未酸化の中間生成物さらには反応による副生成物の燃料電池外部への排出量を減少させるという効果もある。
本発明に係る燃料電池によれば、排気孔の気化燃料収容室内側における開口中心が、上記気化燃料収容室の高さの中点よりアノード触媒層側に位置しているために、電池反応の進行に伴ってアノード触媒層の表面から発生した炭酸ガスを高い濃度の状態で排気孔から電池外に排出することができる。したがって、発生した炭酸ガスによって気化燃料が希釈されたり、気化燃料の流れが阻害されたりすることが少なく、アノード触媒層全体に気化燃料を均一に供給することができ電池活性を高めることができる。また、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が抑制され、安定した出力特性を備えた燃料電池を提供することが可能になる。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、液体燃料の気化成分をアノード触媒層に供給するための燃料気化層を具備した燃料電池において、気化燃料収容室の側壁に排気孔を形成し、この排気孔の気化燃料収容室内側における開口中心を、上記気化燃料収容室の高さの中点より高いアノード触媒層側に位置させたときに、アノード触媒層の表面から発生した炭酸ガスを高い濃度の状態で排気孔から電池外に排出することができ、発生した炭酸ガスによって気化燃料が希釈されたり、気化燃料の流れが阻害されたりすることが少なく、アノード触媒層全体に気化燃料を均一に供給することができ電池活性を高めることができるという知見を得た。
また、電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生した炭酸ガスを含む生成ガスを、気化燃料収容室の側壁に形成した上記排気孔を経て適宜電池外に放出させることにより、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が少なく安定した出力特性を有する燃料電池が得られるという知見を得た。
以下、上記知見に基づく本発明に係る燃料電池の一実施形態である直接メタノール型燃料電池について、添付図面を参照して説明する。
まず、第一の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る直接メタノール型燃料電池の構成例を示す模式的な断面図である。
図1に示すように、膜電極接合体(MEA)1は、カソード触媒層2及びカソードガス拡散層4から成るカソード極と、アノード触媒層3及びアノードガス拡散層5から成るアノード極と、カソード触媒層2とアノード触媒層3の間に配置されるプロトン伝導性の電解質膜6とを備えるものである。
カソード触媒層2及びアノード触媒層3に含有される触媒としては、例えば、白金族元素の単体金属(Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等)、白金族元素を含有する合金などを挙げることができる。アノード触媒には、メタノールや一酸化炭素に対する耐性の強いPt−Ru、カソード触媒には、白金を用いることが望ましいが、これに限定されるものではない。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒を使用しても、あるいは無担持触媒を使用しても良い。
プロトン伝導性電解質膜6を構成するプロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂、タングステン酸やリンタングステン酸などの無機物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
カソードガス拡散層4はカソード触媒層2の上面側に積層され、かつアノードガス拡散層5はアノード触媒層3の下面側に積層されている。カソードガス拡散層4はカソード触媒層2に酸化剤を均一に供給する役割を担うものであるが、カソード触媒層2の集電体も兼ねている。一方、アノードガス拡散層5はアノード触媒層3に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層3の集電体も兼ねている。カソード導電層7a及びアノード導電層7bは、それぞれ、カソードガス拡散層4及びアノードガス拡散層5と接している。カソード導電層7a及びアノード導電層7bには、例えば、金などの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)をそれぞれ使用することが出来る。
矩形枠状のカソードシール材8aは、カソード導電層7aとプロトン伝導性電解質膜6との間に位置すると共に、カソード触媒層2及びカソードガス拡散層4の周囲を気密に囲んでいる。一方、矩形枠状のアノードシール材8bは、アノード導電層7bとプロトン伝導性電解質膜6との間に位置すると共に、アノード触媒層3及びアノードガス拡散層5の周囲を気密に囲んでいる。カソードシール材8a及びアノードシール材8bは、膜電極接合体1からの燃料漏れ及び酸化剤漏れを防止するためのオーリングである。
膜電極接合体1の下方には、液体燃料タンク9が配置されている。液体燃料タンク9内には、液体のメタノール等の液体燃料Lあるいはメタノール水溶液が収容されている。なお、液体燃料タンク9に収容する液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではなく、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、もしくはその他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料電池に応じた液体燃料が収容される。液体燃料タンク9の開口端には、燃料気化層10として例えば、液体燃料の気化成分のみを透過させて、液体燃料を透過させない気液分離膜10が液体燃料タンク9の開口部を覆うように配置されている。ここで、液体燃料の気化成分とは、液体燃料として液体のメタノールを使用した場合、気化したメタノールを意味し、液体燃料としてメタノール水溶液を使用した場合にはメタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合ガスを意味する。
気液分離膜10とアノード導電層7bの間には、樹脂製のフレーム11が積層されている。フレーム11で囲まれた空間は、気液分離膜10を拡散してきた気化燃料を一時的に収容しておく気化燃料収容室12(いわゆる蒸気溜り)として機能する。この気化燃料収容室12及び気液分離膜10の透過メタノール量抑制効果により、一度に多量の気化燃料がアノード触媒層3に供給されるのを回避することができ、いわゆるメタノールのクロスオーバー現象の発生を抑えることが可能である。なお、フレーム11は、矩形のフレームで、例えばPETのような熱可塑性ポリエステル樹脂から形成される。
上記気化燃料収容室(蒸気溜り)12の側壁(フレーム11)には、アノード触媒層3において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外に排出する排気孔20が設けられる。この排気孔20は、フレーム11から成る側壁の上部において側壁を水平方向に貫通するように形成されている。この排気孔20は、例えば図2に示すように、排気孔20の気化燃料収容室12内側における開口中心Cが、上記気化燃料収容室12の高さHの中点Mよりアノード触媒層3側に位置するように形成される。
上記第1実施形態に係る燃料電池によれば、排気孔20の気化燃料収容室12内側における開口中心Cが、上記気化燃料収容室12の高さHの中点Mよりアノード触媒層3側に位置しているために、アノード触媒層3の表面から発生した炭酸ガスを高い濃度の状態で排気孔20から電池外に排出することができる。したがって、発生した炭酸ガスによって気化燃料が希釈されたり、気化燃料の流れが阻害されたりすることが少なく、アノード触媒層3全体に気化燃料を均一に供給することができ電池活性を高めることができる。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る直接メタノール型燃料電池の構成例を示す模式的な断面図である。この第2実施形態に係る燃料電池においては、排気孔20aの中心軸Lが水平方向Hに対して傾斜しており、この排気孔20aの中心軸Lがアノード触媒層3方向に指向するように構成されている。
この第2実施形態に係る燃料電池によれば、排気孔20aがアノード触媒層3方向に指向するように傾斜して構成されているために、アノード触媒層3表面に近い高濃度の炭酸ガスを排気孔20aから電池外に排出することができる。また、アノード触媒層3表面から排気孔20aを通り電池外に至る排気経路の曲がりが少なく発生した炭酸ガスを円滑に電池外に排出できる。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る直接メタノール型燃料電池の構成例を示す模式的な断面図である。この第3実施形態に係る燃料電池においては、図1または図2に示すような側壁11を水平方向に貫通する複数の排気孔20、20を対向するように配置している。これらの排気孔20、20の平面方向の配置状態は、図7に示すように規定される。すなわち、上記第3実施形態に係る燃料電池においては、アノード触媒層3が矩形状を有する複数のアノード触媒層要素3a、3a、3aから成り、各アノード触媒層要素3a、3a、3aの長手方向の対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室12の側壁にそれぞれ排気孔20,20を形成して構成される。
この第3実施形態によれば、複数のアノード触媒層要素(電極要素)3a、3a、3aの長手方向における対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室12の側壁11にそれぞれ排気孔20、20を形成し、複数の排気孔20、20の平面位置を電極要素3a、3a、3aに対して対称に分布させているために、電極要素3a、3a、3aの片方に排気孔20を非対称に分布させた場合と比較して、濃淡差が大きい炭酸ガス濃度分布が形成されず、アノード触媒層3における炭酸ガス濃度を均一化でき、一様に低下させることができる。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る直接メタノール型燃料電池の構成例を示す模式的な断面図である。この第4実施形態に係る燃料電池においては、図3に示すような中心軸Lが水平方向Hに対して傾斜した複数の排気孔20a、20aを対向するように側壁11に配置している。これらの排気孔20a、20aの平面方向の配置状態は、前記第3実施形態と同様に、図7に示すように規定される。
すなわち、上記第4実施形態に係る燃料電池においては、アノード触媒層3が矩形状を有する複数のアノード触媒層要素3a、3a、3aから成り、各アノード触媒層要素3a、3a、3aの長手方向の対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室12の側壁にそれぞれ排気孔20a,20aを形成して構成される。
この第4実施形態によれば、複数のアノード触媒層要素(電極要素)3a、3a、3aの長手方向における対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室12の側壁11にそれぞれ排気孔20a、20aを形成し、複数の排気孔20a、20aの平面位置を電極要素3a、3a、3aに対して対称に分布させているために、電極要素3a、3a、3aの片方に排気孔20aを非対称に分布させた場合と比較して、濃淡差が大きい炭酸ガス濃度分布が形成されず、アノード触媒層3における炭酸ガス濃度を均一化でき、一様に低下させることができる。
また、上記のような排気孔を備えた燃料電池において、前記気化燃料収容室12から排出された生成ガスをカソード触媒層2側に還流する案内管を設けることが好ましい。
上記気化燃料収容室12から排出された生成ガス中には、アノード触媒層3から発生した炭酸ガスの他に、燃料気化層10から供給されたメタノール蒸気等の気化燃料が含有されている。この排出された生成ガスを、上記案内管を経由してカソード触媒層2側に還流することにより、排出された気化燃料が回収再利用される。すなわち、メタノール蒸気等の気化燃料の燃焼反応が起こり、その発熱によって電池出力を増加させることが可能になると共に、燃料電池の低温度における始動が容易になり始動特性が改善される効果がある。また、前記案内管により排出された気化燃料、未酸化の中間生成物さらには反応による副生成物の燃料電池外部への排出量を減少させるという効果もある。
一方、膜電極接合体1の上部に積層されたカソード導電層7a上には、保湿板13が積層されている。酸化剤である空気を取り入れるための空気導入口14が複数個形成された表面層15は、保湿板13の上に積層されている。表面層15は、膜電極接合体1を含むスタックを加圧してその密着性を高める役割も果たしているため、例えば、SUS304のような金属から形成される。保湿板13は、カソード触媒層2において生成した水の蒸散を抑止する役割をなすと共に、カソードガス拡散層4に酸化剤を均一に導入することによりカソード触媒層2への酸化剤の均一拡散を促す補助拡散層としての役割も果たしている。
上述したような構成を有する各実施形態に係る直接メタノール型燃料電池によれば、液体燃料タンク9内の液体燃料(例えばメタノール水溶液)が気化し、気化したメタノールと水が気液分離膜(燃料気化層)10を拡散し、気化燃料収容室12に一旦収容され、そこから徐々にアノードガス拡散層5を拡散してアノード触媒層3に供給され、以下の反応式(1)に示すメタノールの内部改質反応を生じる。
[化1]
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− ……(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− ……(1)
また、液体燃料として純メタノールを使用した場合には、燃料気化層からの水の供給がないため、カソード触媒層2に混入したメタノールの酸化反応により生成した水やプロトン伝導性電解質膜6中の水分等がメタノールと反応して前述した(1)式の内部改質反応が生じるか、あるいは前述した(1)式によらない水不使用の反応機構で内部改質反応が生じる。
アノード触媒層3におけるメタノール等の燃料の分解反応によって生成した炭酸ガス(CO2)は、燃料気化層10とアノード触媒層3との間に形成された気化燃料収容室12に蓄積されるため、内圧が経時的に増加する。
上記の内部改質反応で生成したプロトン(H+)はプロトン伝導性電解質膜6を拡散してカソード触媒層3に到達する。一方、表面層15の空気導入口14から取り入れられた空気は、保湿板13とカソードガス拡散層4を拡散してカソード触媒層2に供給される。カソード触媒層2では、下記(2)式に示す反応によって水が生成する、つまり発電反応が生じる。
[化2]
(3/2)O2+6H++6e− → 3H2O ……(2)
(3/2)O2+6H++6e− → 3H2O ……(2)
発電反応が進行すると、前述した(2)式の反応などによってカソード触媒層2中に生成した水が、カソードガス拡散層4内を拡散して保湿板13に到達し、保湿板13によって蒸散を阻害され、カソード触媒層2中の水分貯蔵量が増加する。このため、発電反応の進行に伴ってカソード触媒層2の水分保持量がアノード触媒層3の水分保持量よりも多い状態を作り出すことができる。その結果、浸透圧現象によって、カソード触媒層2に生成した水がプロトン伝導性電解質膜6を通過してアノード触媒層3に移動する反応が促進されるため、アノード触媒層への水供給速度を燃料気化層のみに頼っていた場合に比べて向上することができ、前述した(1)式に示すメタノールの内部改質反応を促すことができる。このため、出力密度を高くすることができると共に、その高い出力密度を長期間に亘り維持することが可能となる。
一方、アノード触媒層3におけるメタノール等の燃料の分解反応によって生成した炭酸ガス(CO2)は、燃料気化層10とアノード触媒層3との間に形成された気化燃料収容室12に蓄積されるため、内圧が経時的に増加する。しかしながら、各実施形態によれば図2、3,5,6,7に示すような排気孔20、20aが設けられているために、電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生した炭酸ガスは適宜排気孔20、20aを経て電池外(電池筐体外)に放出される。したがって、気化燃料収容室12における気化燃料ガスの分圧が減少することがなく、またアノード触媒層3に供給される燃料供給量が低下することもないので、電池出力が低下することがない。
ここで、パーフルオロカーボン系のプロトン伝導性電解質膜を使用した場合における燃料電池の最大出力とプロトン伝導性電解質膜の厚さとの関係を調査した結果、高い出力特性を実現するためには、プロトン伝導性電解質膜6の厚さを100μm以下にすることが望ましい。プロトン伝導性電解質膜6の厚さを100μm以下にすることにより高出力が得られる理由は、カソード触媒層2からアノード触媒層3への水の拡散をさらに促すことが可能になるためである。但し、プロトン伝導性電解質膜6の厚さを10μm未満にすると、電解質膜4の強度が低下する恐れがあることから、プロトン伝導性電解質膜6の厚さは10〜100μmの範囲に設定することがより好ましい。より好ましくは、10〜80μmの範囲である。
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
<アノード極の作製>
アノード用触媒(Pt:Ru=1:1)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と水及びメトキシプロパノールを添加し、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層5としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより厚さが450μmのアノード触媒層3を有するアノード極を作製した。
<アノード極の作製>
アノード用触媒(Pt:Ru=1:1)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と水及びメトキシプロパノールを添加し、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層5としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより厚さが450μmのアノード触媒層3を有するアノード極を作製した。
<カソード極の作製>
カソード用触媒(Pt)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と水及びメトキシプロパノールを加え、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層4としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより厚さが400μmのカソード触媒層2を有するカソード極を作製した。
カソード用触媒(Pt)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と水及びメトキシプロパノールを加え、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層4としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより厚さが400μmのカソード触媒層2を有するカソード極を作製した。
アノード触媒層3とカソード触媒層2との間に、プロトン伝導性電解質膜6として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(nafion膜、デュポン社製)を配置し、これらにホットプレスを施すことにより、膜電極接合体(MEA)を得た。
保湿板13として厚さが500μmで、透気度が2秒/100cm3(JIS P−8117)で、透湿度が4000g/m224h(JIS L−1099 A−1法)のポリエチレン製多孔質フィルムを用意した。
気化燃料収容室12の側壁を構成するフレーム11として、PET製で積層方向の厚さが4mm、水平方向の厚さが5mmである枠状のフレーム11を用意し、このフレーム11の上部に図2に示すような内径が2mmである排気孔20を、排気孔の位置として排気孔の中心軸がカソード導電層7bの下から1mm、枠の平面方向の中心部に水平方向に形成した。この排気孔20は、図2に示すように、排気孔20の気化燃料収容室12内側における開口中心Cが、上記気化燃料収容室12の高さHの75%の位置であり中点Mよりアノード触媒層3側に位置するように形成した。また、気液分離膜10を構成する部材として、厚さが100μmであるシリコンゴム(SR)シートを用意した。
得られた膜電極接合体1、保湿板13、フレーム11、気液分離膜10を用いて前述した図1に示す構造を有する内部気化型の実施例1に係る直接メタノール型燃料電池を組み立てた。この際、燃料タンク9には、純度が99.9重量%の純メタノールを2mL収容した。
(比較例)
実施例1において、フレーム11の下端部に図4に示すような内径が2mmである排気孔20bを、排気孔の位置として排気気孔の中心軸がカソード導電層7bの下から3mm、枠の平面方向の中心部に水平方向に形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する比較例に係る燃料電池を組み立てた。この比較例に係る燃料電池においては、排気孔20bは、図4に示すように、排気孔20bの気化燃料収容室12内側における開口中心Cが、上記気化燃料収容室12高さHの12.5%の位置であり排気孔の下端部が気液分離膜10の表面に接触している。
実施例1において、フレーム11の下端部に図4に示すような内径が2mmである排気孔20bを、排気孔の位置として排気気孔の中心軸がカソード導電層7bの下から3mm、枠の平面方向の中心部に水平方向に形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する比較例に係る燃料電池を組み立てた。この比較例に係る燃料電池においては、排気孔20bは、図4に示すように、排気孔20bの気化燃料収容室12内側における開口中心Cが、上記気化燃料収容室12高さHの12.5%の位置であり排気孔の下端部が気液分離膜10の表面に接触している。
(実施例2)
図2に示すような側壁11の厚さ方向上部に水平方向に貫通するように形成した排気孔20を、図5に示すように気化燃料収容室12を挟んで対向する側壁11にも形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する実施例2に係る燃料電池を組み立てた。
図2に示すような側壁11の厚さ方向上部に水平方向に貫通するように形成した排気孔20を、図5に示すように気化燃料収容室12を挟んで対向する側壁11にも形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する実施例2に係る燃料電池を組み立てた。
(実施例3)
図3に示すように側壁11内に内径が2mmである排気孔20aを、排気孔の位置として排気孔の側壁11の外部側の開口部が気液分離膜10の直上から気化燃料収納室内部に向かって仰角45°で、枠の平面方向の中心部に傾斜して貫通するように形成した排気孔20aを、図6に示すように気化燃料収容室12を挟んで対向する側壁11にも形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する実施例3に係る燃料電池を組み立てた。
図3に示すように側壁11内に内径が2mmである排気孔20aを、排気孔の位置として排気孔の側壁11の外部側の開口部が気液分離膜10の直上から気化燃料収納室内部に向かって仰角45°で、枠の平面方向の中心部に傾斜して貫通するように形成した排気孔20aを、図6に示すように気化燃料収容室12を挟んで対向する側壁11にも形成した点以外は図1に示す実施例1と同様の構造を有する実施例3に係る燃料電池を組み立てた。
こうして調製した実施例1〜3および比較例に係る燃料電池について、室温(25℃)にて一定負荷で数時間発電を行い、その時点での気化燃料収容室における炭酸ガスおよび気化燃料(メタノール)についての平面方向におけるガス濃度分布を図8に示す。ここで炭酸ガス濃度は気化燃料収容室12の高さ方向の中心の高さの平面方向における濃度分布、気化燃料濃度はカソード導電層7bの下から1mmの位置での平面方向における濃度分布である。なお、各ガス濃度については最高値から最低値までを20段階に区分した相対濃度値で表している。また、排気口20は図では省略している。
添付図8に示す結果から明らかなように、気化燃料収容室12の側壁11の厚さ方向の上部であり、アノード触媒層3側に近接した位置に開口中心Cを有する排気孔20、20aを形成した実施例1〜3に係る燃料電池においては、比較例の排気口の開口中心Cを記念涼秋溶質12の側壁11の厚さ方向の株に設けた燃料電池に比較し、電池反応の進行に伴ってアノード触媒層から発生する炭酸ガスを排気孔20、20aから適宜放出できるため、炭酸ガス濃度は全体的に絶対値的に低下し、その濃度分布も平坦に改善されることが判明した。また、各実施例に係る燃料電池では、気化燃料収容室付近における気化燃料濃度は減少せずほぼ均一に分布していることが確認でき、効率的に電池反応を進行させることが可能であった。また、炭酸ガスによる内圧上昇による電池出力特性の低下が少なく、安定的な出力が得られることが判明した。
特に、排気孔20,20aを側壁11の片面にのみに設けた実施例1に係る燃料電池と比較して、対向する側壁11のそれぞれに排気孔20,20aを形成した実施例2、3に係る燃料電池の方が、CO2ガス濃度が全体に低い上に、気化燃料もより均一になることが確認できる。
1…膜電極接合体(MEA)、2…カソード触媒層、3…アノード触媒層、4…カソードガス拡散層、5…アノードガス拡散層、6…プロトン伝導性電解質膜、7a…カソード導電層、7b…アノード導電層、8a…カソードシール材、8b…アノードシール材、9…液体燃料タンク、10…燃料気化層(気液分離膜)、11…フレーム(側壁)、12…気化燃料収容室、13…保湿板、14…空気導入口、15…表面層、20、20a…排気孔、L…液体燃料。
Claims (5)
- カソード触媒層と、アノード触媒層と、上記カソード触媒層と上記アノード触媒層の間に配置されるプロトン伝導性膜と、液体燃料を貯留する液体燃料タンクと、液体燃料の気化成分を前記アノード触媒層に供給するための燃料気化層と、上記燃料気化層と上記アノード触媒層との間に形成された気化燃料収容室とを具備する燃料電池であって、
前記アノード触媒層において生成した炭酸ガスを含む生成ガスを電池外に排出する排気孔を上記気化燃料収容室の側壁に設けると共に、この排気孔の気化燃料収容室内側における開口中心が、上記気化燃料収容室の高さの中点よりアノード触媒層側に位置することを特徴とする燃料電池。 - 前記排気孔の中心軸が水平方向に対して傾斜しており、この排気孔の中心軸がアノード触媒層方向に指向するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記アノード触媒層が矩形状を有する複数のアノード触媒層要素から成り、各アノード触媒層要素の長手方向の対辺にそれぞれ対向する気化燃料収容室の側壁にそれぞれ排気孔を形成したことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記排気孔の孔径が前記気化燃料収容室の高さの50%以下であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記気化燃料収容室から排出された生成ガスをカソード触媒層側に還流する案内管が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
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JP2010157359A (ja) * | 2008-12-26 | 2010-07-15 | Sony Corp | 燃料電池および電子機器 |
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2005
- 2005-09-14 JP JP2005266705A patent/JP2007080658A/ja active Pending
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