JP2007077429A - 金属膜を有する基板およびその製造方法、ならびに前記基板を用いた電子部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特に、従来に比べて、基板と金属膜間の密着性を向上させることが可能な金属膜を有する基板およびその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 基板1と金属膜5との間に単分子膜2が形成され、このとき、単分子膜2が基板1にシロキサン結合を介して強固に結合するとともに、金属との親和力の強いピロリル基と前記金属膜5とが結合することで、基板1と金属膜5間の密着性が従来に比べて優れたものとなる。本実施の形態では、従来のように、基板1の表面に凹凸加工がなされていないため、例えば配線パターンに加工された前記金属膜5は、所望の形状に、高精度に、微細加工されたものになっている。
【選択図】 図1
【解決手段】 基板1と金属膜5との間に単分子膜2が形成され、このとき、単分子膜2が基板1にシロキサン結合を介して強固に結合するとともに、金属との親和力の強いピロリル基と前記金属膜5とが結合することで、基板1と金属膜5間の密着性が従来に比べて優れたものとなる。本実施の形態では、従来のように、基板1の表面に凹凸加工がなされていないため、例えば配線パターンに加工された前記金属膜5は、所望の形状に、高精度に、微細加工されたものになっている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、基板と金属膜間の密着性を向上させることが可能な金属膜を有する基板およびその製造方法等に関する。
従来、樹脂基板表面への金属膜形成は、装飾メッキ、反射板、フレキシブルプリント基板等、幅広く利用されている。
ここで問題となるのは、前記樹脂基板と前記金属膜との間の密着性であった。
例えば前記密着性を向上させるため、従来では、前記樹脂基板の表面を酸・アルカリ薬液で処理等して、前記表面に凹凸を形成し、アンカー効果によって前記密着性を向上させる方法がとられていた。
例えば前記密着性を向上させるため、従来では、前記樹脂基板の表面を酸・アルカリ薬液で処理等して、前記表面に凹凸を形成し、アンカー効果によって前記密着性を向上させる方法がとられていた。
しかし、かかる方法では、前記樹脂基板の表面が粗される結果、微細な配線パターンを形成することが難しく、また、信号の周波数を高くすると、前記基板表面に形成された凹凸による表皮効果が生じるため電気特性が劣化し、さらには、装飾メッキや反射板として用いる場合に光沢が無くなるといった問題があった。
下記特許文献1には、上記とは異なった方法で前記密着性を向上させる方法が開示されている。
特開平9−59763号公報
特許文献1では、基板表面に対し、シランカップリング剤によるカップリング処理を行った後、前記基板表面に金属膜を形成している。
これにより、特許文献1では、基板表面に凹凸を設けることなく、基板と金属膜との密着性を向上させることが出来るとしている。
しかしながら特許文献1のようにシランカップリング剤を用いると、前記基板表面に余分なシランカップリング剤が残り、残った前記シランカップリング剤は前記密着性の向上にはかえって邪魔となり、適切に前記密着性を向上させることが出来ないといった問題があった。
また特許文献1では前記基板表面に付着する前記シランカップリング剤の厚みの調整を特に行っておらず、これも前記密着性の向上を適切に図ることが出来ない原因の一つではないかと考えられた。
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、従来に比べて、基板と金属膜間の密着性を向上させることが可能な金属膜を有する基板およびその製造方法、ならびに前記基板を用いた電子部品およびその製造方法を提供することを目的としている。
本発明における金属膜を有する基板は、
基板の表面に単分子膜を介して金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
基板の表面に単分子膜を介して金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
これにより、従来のように、基板表面に凹凸面等を形成しなくても、前記基板と金属膜間の密着性は、従来に比べて優れたものとなる。また本発明では前記基板表面に凹凸加工がなされないため、例えば配線パターンに加工された前記金属膜は、所望の形状に、高精度に、微細加工されたものになっている。また、電気特性および光沢性にも優れる。
また本発明では、前記単分子膜は、下記の化学式3の化合物を繰り返し単位とし、各化合物は、−SiO−結合を介して基板表面に共有結合していることが好ましい。
(ただしAは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。またB、CはOあるいは金属元素であり、l,mは0か1である。)
これにより前記基板と前記単分子膜とが強固に結合し、単分子膜自体の強度も非常に強くできる。そして前記複素環を有する官能基Aと前記金属膜とが強固に結合するので、前記基板と金属膜間の密着性は、従来に比べて大幅に優れたものになる。
本発明では、前記官能基Aは、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択されることが好ましい。これにより前記官能基Aと前記金属膜とが強固に結合される。
また本発明では、前記単分子膜と前記金属膜との間には、複素環を有する化合物を含有する中間膜が形成されていることが好ましい。これにより、より効果的に前記基板と金属膜間での密着性が優れたものになる。前記単分子膜に含まれる官能基Aと、中間膜に含まれる複素環は、同じ原子団からなる複素環であっても、異なるものであってもかまわない。
また本発明では、前記単分子膜に含まれる官能基Aと、中間膜に含まれる複素環を有する化合物とが重合していることが、さらに前記基板と金属膜間の密着性が優れたものになり好ましい。
また本発明では、前記金属膜に複素環を有する化合物が含有されていてもよい。これにより前記基板と金属膜間の密着性は優れたものになる。金属膜に含有される複素環を有する化合物は、単分子膜に含まれる官能基A及び中間膜に含まれる複素環を有する化合物における複素環と同じ原子団からなるものであっても、異なるものであってもかまわない。
また本発明では、前記金属膜は、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成されることが好ましい。
また本発明では、前記基板は、プラスチック、セラミックスあるいはガラスより形成されることが好ましい。
上記したように本発明の作用効果の一つは、基板と金属膜間の密着性の向上であるが、それに加えて、前記密着性を低下させることなく、金属膜および基板の材料の選択性が広がるといった作用効果も奏することが出来る。
また本発明における電子部品は、上記のいずれかに記載された基板が用いられることを特徴とするものである。これにより、例えばプリント配線基板であれば、微細な導電パターンが高精度に密着性よく形成されたものとなり、また反射板等であれば光沢性及び密着性に優れた電子部品となる。すなわち微細加工性や光沢性、電気特性等を満足した前記電子部品となる。
本発明における金属膜を有する基板の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a) 基板の表面に単分子膜を形成する工程、
(b) 前記単分子膜上に、金属膜を形成する工程、
(a) 基板の表面に単分子膜を形成する工程、
(b) 前記単分子膜上に、金属膜を形成する工程、
これにより、従来のように、基板表面に凹凸面等を形成することなく、前記金属膜を前記基板表面に密着性良く形成できる。
本発明では、単分子膜形成のための出発物質に、下記の化学式4に示す化合物を含み、複数の前記化合物を脱離反応によってSiO結合を介して前記基板に共有結合させることが好ましい。
(ただしAは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。また、X1〜X3の夫々は、ハロゲン、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基である)
化学式4を持つ出発物質は、直鎖状構造の両側に異なる性質の官能基を持ち、このような性質の違いから、前記基板表面に自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer SAM)を形成する。前記(a)工程で、前記出発物質はシロキサン結合(−Si−O−)を介して前記基板の表面のOH基と強く結合し、前記自己組織化単分子膜を形成する。なお適切に単分子膜を形成できるように前記基板表面を親水性処理することが好ましい。
本発明では、前記官能基Aを、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択することが好ましい。これにより、前記官能基Aと前記金属膜とが強固に結合し、前記金属膜を前記基板の表面に密着性良く形成することが可能になる。
また本発明では、前記(a)工程と前記(b)工程の間に、
(c) 複素環を有する化合物を含む中間膜を前記単分子膜上に形成する工程、
を含み、前記(b)工程で、前記中間膜上に前記金属膜を形成することが好ましい。
(c) 複素環を有する化合物を含む中間膜を前記単分子膜上に形成する工程、
を含み、前記(b)工程で、前記中間膜上に前記金属膜を形成することが好ましい。
これにより、基板と金属膜間の密着性をより向上させることが出来る。前記基板表面は前記単分子膜で完全には覆われていないと考えられる。このため前記中間膜を設けない場合、前記金属膜の一部は適切に前記単分子膜を介して形成されず、例えば基板表面に直接、あるいは単分子膜のシロキサン基の部分等に密着性の低い状態で結合すると考えられる。前記単分子膜を介して前記基板と結合されなかった前記金属膜は容易に剥がれてしまうため、本発明では、前記金属膜と強固に結合する複素環を有する化合物を前記単分子膜の上面に中間膜として形成することで、前記金属膜が前記基板表面等に直接結合する割合を十分に減らすことができ、したがって前記基板と前記金属膜間の密着性をより効果的に向上させることが可能になる。
また本発明では、前記(c)工程では、前記複素環を有する化合物を含有する溶液に前記基板を浸漬させて前記中間膜を形成することが好ましい。これにより簡単且つ適切に前記中間膜を形成することが出来る。
また本発明では、
前記(c)工程と前記(b)工程の間に、
(d) 前記基板を、酸化剤と接触させる工程、
を含むことが好ましい。これにより、前記中間膜における複素環を有する化合物が重合し、前記単分子膜の表面を前記中間膜にて緻密に覆うことができ、また、前記単分子膜自体の強度も向上すると考えられ、したがって前記金属膜を前記基板表面により密着性よく形成することが出来る。
前記(c)工程と前記(b)工程の間に、
(d) 前記基板を、酸化剤と接触させる工程、
を含むことが好ましい。これにより、前記中間膜における複素環を有する化合物が重合し、前記単分子膜の表面を前記中間膜にて緻密に覆うことができ、また、前記単分子膜自体の強度も向上すると考えられ、したがって前記金属膜を前記基板表面により密着性よく形成することが出来る。
本発明では、前記酸化剤として、鉄、銅、アルミニウムのうち少なくともいずれか一種を含む塩、あるいはハロゲンガスを用いることが好ましい。これにより、前記中間膜における複素環を有する化合物をより効果的に重合させることができる。
また本発明では、前記(b)工程のとき、複素環を有する化合物を含む前記金属膜を形成しても、前記金属膜を前記基板表面に、より密着性よく形成することが出来る。例えば、前記金属膜の少なくとも一部を無電解メッキ法にてメッキ形成する際に、触媒液とメッキ液のいずれか一方または両方に前記複素環を有する化合物を含めて形成することができる。
また本発明では、前記金属膜を、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んでメッキもしくは、蒸着・スパッタ・CVD(化学的気相成長法)などで形成することが好ましい。
また本発明では、前記基板を、プラスチック、セラミックスあるいはガラスにより形成することが好ましい。
本発明では、上記した製造方法を用いることで前記金属膜および基板に使用される材質の選択性を広げることが出来、よって様々な用途に本発明を使用することが出来る。
また本発明における電子部品の製造方法は、上記のいずれかに記載された基板を用いることを特徴とするものである。これにより、例えばプリント配線基板であれば、微細な導電パターンを高精度に密着性よく形成でき、また反射板等であれば光沢性及び密着性に優れた電子部品を形成できる。
本発明では、従来のように、基板表面に凹凸面等を形成することなく、基板と金属膜間の密着性を従来に比べて適切に向上させることができる。また本発明では前記基板表面に凹凸面を形成する必要がないため、従来に比べて、前記金属膜を微細加工できる。さらに本発明では、前記密着性を低下させることなく、基板や金属膜の材質の選択性を広げることができ、前記密着性を良好に保つことができ、本発明の膜構造を様々な用途に使用できる。
図1は本実施形態の金属膜を有する基板を膜厚方向から切断した断面概念図である。
図1に示す基板1上には単分子膜2が形成されている。前記単分子膜2は、下記の化学式5の化合物を繰り返し単位としたものである。
図1に示す基板1上には単分子膜2が形成されている。前記単分子膜2は、下記の化学式5の化合物を繰り返し単位としたものである。
ここで化学式5におけるAは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。またB、CはOあるいは金属元素であり、l,mは0か1である。
前記単分子膜2は、化学式5に示す化合物が、前記基板1の表面に多数並んだものである。特に、前記単分子膜2の出発物質(後で示す化学式6)に示すように直鎖状の両側には性質の異なる官能基を持つことから、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer SAM)を形成する。
図1や化学式5に示すように、単分子膜2は、シロキサン結合(−Si−O−)を介して前記基板1の表面に強固に共有結合している。前記基板1の表面には予め親水性処理が成され、前記基板1の表面のOH基と非常に強く結合する。これにより前記単分子膜2自体の強度を向上させることも出来る。なお図1に示す実施形態では官能基Aがピロリル基であり、以下、図1では官能基Aをピロリル基として説明する。
また化学式5に示すように、元素B,Cの個数は0か1であり、化学式5の化合物を構成するSi間が、図1に示すようにO(あるいは金属元素)を介して結合されていても、あるいは元素B,Cが基板1表面に結合されていてもよく、特に結合状態を限定しない。
図1に示すように前記単分子膜2上にはピロリル基を有する化合物からなる中間膜3が形成されている。前記ピロリル基どうし(ここで言うピロリル基には単分子膜2を構成するピロリル基(化学式5の官能基A)も含む)は重合していることが、前記単分子膜2上をより緻密に前記中間膜3によって被覆でき、好ましい。
図1や化学式5に示すように、前記単分子膜2の前記基板1から離れた側にはピロリル基が設けられており、前記ピロリル基は金属膜5との親和力が強いことから、強固に前記金属膜5を前記単分子膜2上に結合させることができる。よって前記中間層3を設けなくても、前記単分子膜2を設ければ、従来に比べて、前記基板1と金属膜5間の密着性を向上させることができるが、前記単分子膜2の表面は、やや緻密性に欠け(すなわちやや凹凸面となっている)、前記中間膜3を設けない場合、例えば金属膜5を構成する原子や、あるいはメッキ還元反応の触媒原子の一部が、前記基板1の表面に直接、吸着したり、あるいは前記単分子膜2のシロキサン基部分に吸着したりする割合が増える。このように前記ピロリル基と結合しなかった金属膜等は密着して基板1と結合しておらず、容易に剥がれたりするため、前記単分子膜2の表面全体を前記ピロリル基で覆ったほうが、前記金属膜5と基板1間の密着性を向上させる上では有利である。したがって図1に示す実施形態では前記単分子膜2の表面に前記ピロリル基を有する中間膜3を形成し、前記単分子膜2の表面を前記中間層3にて緻密に覆っている。なお上記したように前記ピロリル基どうし(ここで言うピロリル基には単分子膜2を構成するピロリル基も含む)は重合しているほうが、より膜の緻密性を向上させることが出来て好ましい。これにより、前記基板1の表面等に吸着する金属膜5等の割合を減少させることができ、従来に比べて効果的に基板1と金属膜5間の密着性を向上させることが可能になる。
図1に示すように、前記中間層3上にはメッキ還元反応の触媒からなる触媒膜4が設けられ、前記触媒膜4の上に金属膜5がメッキ形成されている。
なお例えば前記触媒膜4中や金属膜5中にピロリル基を有する化合物が含まれていてもよい。例えば図1と異なる実施形態としては、基板1上に単分子膜2、触媒膜4および金属膜5が形成されたものを例示でき、かかる場合、前記触媒膜4や金属膜5に、前記官能基Aが含まれていることが、前記基板1と前記金属膜5間の密着性を向上させる上で好ましい。
本実施の形態では、基板1と金属膜5との間に単分子膜2が形成され、このとき、前記単分子膜2が前記基板1にシロキサン結合を介して強固に結合するとともに、金属との親和力の強い官能基Aと前記金属膜5とが結合することで、前記基板1と前記金属膜5間の密着性が従来に比べて優れたものとなる。本実施の形態では、従来のように、基板1の表面に凹凸加工がなされていないため、例えば配線パターンに加工された前記金属膜5は、所望の形状に、高精度に、微細加工されたものになっている。また本実施形態の金属膜を有する基板は、電気特性および光沢性にも優れる。
また本実施の形態では、特に、前記金属膜5上に複素環を有する化合物を含む中間膜3が形成されることが、前記金属膜5と基板1間の密着性がより優れたものになり好ましい。
材質について説明する。前記基板1は、プラスチック、セラミックスあるいはガラスより形成されることが好ましい。プラスチックにはガラス繊維強化プラスチック(FRP)等も含まれる。
また、前記金属膜5は、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成されることが好ましい。
また、前記官能基Aとしては、ピロリル基のほかに、チエニル基、あるいはフリル基を使用することも出来る。
本実施形態のように、前記基板1と金属膜5との間が、単分子膜2を介して結合されると、特に、基板1と金属膜5間の密着性を低下させることなく、基板1と金属膜5の材質の選択性が広がる。すなわち単分子膜2を設けない場合、基板1と金属膜5とが密着性よく結合する材質の選択は限られていたが、本実施形態のように前記単分子膜2を設けることで、基板1と金属膜5の材質の選択性を従来に比べて広げても、密着性を良好に保つことが出来る。そして、このように材質の選択性が広がることで、様々な用途に本実施形態の金属膜を有する基板を使用できる。例えば本実施形態の金属膜を有する基板を、表面に金属配線や電極等を有するプリント配線基板等の基板、電磁シールド板、反射板(たとえば、光ネットワーク等に使用される反射板)等に使用できる。
例えば本実施の形態を図2に示すカメラモジュールに適用できる。図2に示す符号10は筐体であり、前記筐体10内に、フィルター11、レンズ12、固定リング13を挿入する。前記筐体10は、例えばLCP(液晶ポリマー)で形成されている。図2に示すように前記筐体10のほぼ中心には穴部10aが形成され、前記レンズ12からの光が前記穴部10aを介して透過できるようになっている。前記筐体10の前記穴部10aの周囲に広がる凹部10bの表面に金属配線がメッキ形成される。前記金属配線は本実施形態を用いて形成される。すなわち前記凹部10bの表面に単分子膜2が形成され、その上に前記金属配線がメッキ形成される。前記金属配線がメッキ形成された後、フォトリソグラフィ技術を用いて所定の配線パターン形状に形成される。後述する実験によれば、各配線の幅寸法および各配線間の間隔が10μmまで小さく形成されても、前記配線の形は崩れることなく所定形状を保って前記基板上に密着している。
図1に示す金属膜5を有する基板1の製造方法について説明する。
まず、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等で形成された基板1の表面を脱脂洗浄する。
まず、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等で形成された基板1の表面を脱脂洗浄する。
次に、乾燥空気下で、以下の化学式6に示す単分子膜形成のための出発物質を、例えば、クロロホルムとジメチルシリコーンの混合溶媒に溶解し、吸着材料液20を形成する。
(ただしAは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。また、X1〜X3の夫々は、ハロゲン、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。)
ここで、前記官能基Aを、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択することが好ましい。
その後、前記基板1の表面を親水性処理し、図3に示すように、前記基板1を前記吸着材料液20中に浸漬させる。親水性処理された基板1の表面にはOH基が存在しており、前記化学式6に示す出発物質のX1,X2,X3の少なくともいずれか一つと前記OH基とが脱離反応によりシロキサン結合(−Si−O−)を介して共有結合し、多数の前記出発物質が前記基板1表面に並んで結合することで、図4に示すように基板1の表面に単分子膜2が形成される。その概念図を表したのが図5である。なお図5では前記官能基Aとしてピロリル基を選択している。
次に前記基板1を洗浄して未反応の前記出発物質を除去し、さらに水洗し、乾燥させる。
次に、前記基板1を、複素環を有する化合物を含有する溶液に浸漬させる。この溶液中に含まれる化合物が有している複素環と、前記官能基Aが有している複素環とは、同じ原子団からなるものであっても、異なるものであってもかまわない。たとえば図5に示したピロリル基を用いた例においては、ピロリル基を持つ化合物又はピロリル基と同じ原子団からなるピロール、若しくはチエニル基やフリル基を含む化合物又はチオフェンなどのピロリル基と異なる原子団からなる複素環を有する化合物などを含んだ溶液を用いることができる。これにより、前記単分子膜2の表面に複素環を有する化合物を含む中間膜3を形成することが出来る(図1を参照)。
続いて前記基板1を、酸化剤に接触させる。これにより前記中間膜3に含まれる複素環を有する化合物どうしが重合し、前記中間膜3をより適切に緻密な膜に形成できる。前記酸化剤として、鉄、銅、アルミニウムのうち少なくともいずれか一種を含む塩、あるいはハロゲンガスを用いることが好ましい。
次に前記中間膜3上に無電解メッキ時の触媒として使用される例えばPdからなる触媒膜4を前記中間膜3上に形成し、前記触媒膜4上に無電解メッキ法にて金属膜5をある程度の膜厚まで形成した後、さらに電解メッキ法にて前記金属膜5を所定の厚みまでメッキ成長させる。
以上のように本実施形態では、上記化学式6に示す単分子膜2形成のための出発物質は、直鎖状構造の両側にある官能基の性質の違いにより、自己組織化単分子膜を形成する。化学式6の物質は、親水性の前記基板1の表面にシロキサン結合を介して共有結合でき、強固に前記基板1に吸着する。一方、官能基Aは、金属との親和力に優れており、前記金属膜5を前記単分子膜2上に強固に吸着させる。したがって従来に比べて前記金属膜5を前記基板1上に密着性良く形成することが可能である。
本実施の製造方法で特に好ましいのは、図5に示す単分子膜2を前記基板1上に形成した後、複素環を有する化合物を含む溶液に前記基板1を浸漬させて、複素環を有する化合物を含む中間膜3を前記単分子膜2上に形成することである。これにより、金属膜5のメッキ時等に、前記金属膜5を構成する原子が、例えば基板1の表面等に直接吸着する割合を極力減らすことができ、前記基板1と前記金属膜5間の密着性をより効果的に向上させることが出来る。また特に単分子膜2を構成する前記官能基Aと中間膜3に含まれる複素環を有する化合物とを重合させたほうが、前記中間膜3を緻密な膜に形成できて好ましい。
また上記したように、金属膜5をまず無電解メッキ法にてメッキ形成するとき、前記中間膜3上に触媒を付与するが、その触媒液中に複素環を有する化合物を含めてもよいし、あるいは前記金属膜5をメッキ形成する際のメッキ液中に複素環を有する化合物を含めてもよい。ただしかかる場合は、特に中間膜3を設けることなく(すなわち中間膜3を設ける工程を除去でき)、単分子膜2の形成の次に、複素環を有する化合物を含む触媒液に前記基板1を浸漬させること、あるいは複素環を有する化合物を含むメッキ液中に前記基板1を浸漬させることで、前記単分子膜2上に前記金属膜5を強固に吸着させることができ、前記金属膜5を前記基板1上に密着性良く形成することが可能である。
本実施の形態では、前記金属膜5を、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成することができ、また前記基板1を、プラスチック、セラミックスあるいはガラスにより形成することが出来る。本実施形態では、前記金属膜5の基板1に対する密着性を低下させることなく、金属膜5および基板1の材質の選択性を広げることができる。
(実施例1)
まず、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等で形成された基板の表面を脱脂洗浄した。
まず、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等で形成された基板の表面を脱脂洗浄した。
次に、以下の化学式7に示す構造を持つ化合物(出発物質)を、クロロホルムとジメチルシリコーンの混合溶媒に0.05mol/lの濃度で溶解し、吸着材料液を形成した。
前記PPS基板を前記吸着材料液中に、常温で1時間、浸漬した(単分子膜の形成工程)。その後、前記PPS基板を前記吸着材料液から取り出し、前記PPS基板をクロロホルム浴中に入れてPPS基板表面への単分子膜形成を停止させ、前記PPS基板をアセトン・クロロホルムで洗浄することで未反応の出発物質を除去し、その後、前記PPS基板を水洗・乾燥した。
続いて、前記PPS基板をアセトニトリル溶媒にピロールを0.2mol/lの濃度で溶解したピロール液に常温で5分間、浸漬し、その後、前記PPS基板を水洗・乾燥した(中間膜の形成工程)。
続いて、前記PPS基板を、塩化第二鉄を0.02mol/l含む水溶液に常温で5分間、浸漬し、その後、前記PPS基板を、水洗・乾燥した(ピロリル基どうしの重合工程)。
次に、前記PPS基板を、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に、50℃で5分間、浸漬して、コロイドを基板表面に吸着させ、ホウフッ化水素酸水溶液に常温で7分浸漬することで、吸着したコロイドからSnを除去し、Pdを前記PPS基板表面に露出させた(触媒膜の形成工程)。
続いて前記PPS基板を、硫酸銅、酒石酸ナトリウムカリウム、水酸化ナトリウム、ホルマリンを主成分とする無電解メッキ液に15分浸漬し、これにより前記PPS基板の表面に0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
さらに、前記PPS基板を、硫酸銅を主体とする電気メッキ液中で200A/m2の電流密度で1時間メッキし、銅膜をトータルで約30μmに成長させた(金属膜の形成工程)。
(実施例2)
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程だけを除いた。
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程だけを除いた。
(実施例3)
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板をピロール液に浸漬する工程、PPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程を除いた。その代わり、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬する工程において、前記水溶液にピロールを0.2mol/lの濃度で添加した。
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板をピロール液に浸漬する工程、PPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程を除いた。その代わり、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬する工程において、前記水溶液にピロールを0.2mol/lの濃度で添加した。
(実施例4)
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板をピロール液に浸漬する工程だけを除いた。
上記実施例1の各工程のうち、PPS基板をピロール液に浸漬する工程だけを除いた。
(比較例1)
実施例1の各工程のうち、PPS基板を吸着材料液中に浸漬する工程からPPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程までを除き、前記PPS基板を、直接、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬し、さらに実施例1と同様に、銅膜をメッキ形成した。
実施例1の各工程のうち、PPS基板を吸着材料液中に浸漬する工程からPPS基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程までを除き、前記PPS基板を、直接、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬し、さらに実施例1と同様に、銅膜をメッキ形成した。
上記した実施例1〜4および比較例1の各試料に対し、JIS−H8630に定める90度引き剥がし法にて、PPS基板と銅膜(金属膜)間の密着力の評価を行った。
その結果、実施例1では、0.6N/mm、実施例2では、0.5N/mm、実施例3では、0.5N/mm、実施例4では、0.3N/mmの密着強度が得られた。
一方、比較例1では、PPS基板上に銅膜をメッキ形成できたものの、密着強度を測定できないほど、弱い密着力しか得られなかった。
また実施例1〜実施例3のように、基板をピロール溶液に浸漬する、あるいはメッキ液等にピロールを添加することにより、前記密着強度を向上させることが出来ることがわかった。特に実施例1では、酸化剤を用いてピロリル基を重合しており、これにより、より適切に密着強度を向上させることが出来ることがわかった。
(実施例5)
次に、LCP(液晶ポリマー)で形成された基板を用い、LCP基板の表面に、実施例1と同じ各工程を行った(実施例5)。なお実施例5では、フォトレジストにより、前記銅膜(金属膜)に配線パターンを形成した。各配線の幅を10μmに形成し、また各配線間の間隔を10μmで形成した。
次に、LCP(液晶ポリマー)で形成された基板を用い、LCP基板の表面に、実施例1と同じ各工程を行った(実施例5)。なお実施例5では、フォトレジストにより、前記銅膜(金属膜)に配線パターンを形成した。各配線の幅を10μmに形成し、また各配線間の間隔を10μmで形成した。
(比較例2)
前記LCP基板を洗浄した後、75℃で熱した600g/lの水酸化カリウム水溶液に、30分間浸漬し、前記LCP基板の表面に凹凸を形成した。水洗・乾燥後、中和のために、前記LCP基板を塩酸1mol/l水溶液に浸漬した。続いて、前記LCP基板を、2−アミノエタノールを主成分とする表面調和剤に浸漬し、水洗・乾燥を行った。
前記LCP基板を洗浄した後、75℃で熱した600g/lの水酸化カリウム水溶液に、30分間浸漬し、前記LCP基板の表面に凹凸を形成した。水洗・乾燥後、中和のために、前記LCP基板を塩酸1mol/l水溶液に浸漬した。続いて、前記LCP基板を、2−アミノエタノールを主成分とする表面調和剤に浸漬し、水洗・乾燥を行った。
その後、実施例1の各工程のうち、LCP基板を吸着材料液中に浸漬する工程からLCP基板を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程までを除き、前記LCP基板を、直接、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬し、さらに実施例1と同様に、銅膜をメッキ形成した。また、実施例5と同様に、フォトレジストにより、各配線の幅が10μm、各配線間の間隔が10μmの配線パターンを前記銅膜に形成した。
そして、実施例5および比較例2の膜厚方向と平行な方向からの断面状態を、顕微鏡にて観察した。その実験結果を、図6および図7に示す。図6は実施例5の実験結果、図7は比較例2の実験結果である。
図6に示すように、実施例5では、10μm幅で形成した配線パターンの形が崩れておらず、前記配線の表面は平坦化面で形成されていたが、比較例2では、図7に示すように、前記配線パターンの形が崩れ、前記配線の表面が凹凸面となっていた。
なお比較例2のように、基板表面に凹凸を形成した場合、その上に形成される金属膜の幅を50μm以下で形成すると、前記配線の形が崩れやすいことがわかった。
1 基板
2 単分子膜
3 中間膜
4 触媒膜
5 金属膜
20 吸着材料液
2 単分子膜
3 中間膜
4 触媒膜
5 金属膜
20 吸着材料液
Claims (21)
- 基板の表面に単分子膜を介して金属膜が形成されていることを特徴とする金属膜を有する基板。
- 前記官能基Aは、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択される請求項2記載の金属膜を有する基板。
- 前記単分子膜と前記金属膜との間には、複素環を有する化合物を含有する中間膜が形成されている請求項2または3に記載の金属膜を有する基板。
- 前記単分子膜に含まれる官能基A及び前記中間膜に含まれる複素環を有する化合物が重合している請求項4記載の金属膜を有する基板。
- 前記金属膜に複素環を有する化合物が含有されている請求項2ないし5のいずれかに記載の金属膜を有する基板。
- 前記金属膜は、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成される請求項1ないし6のいずれかに記載の金属膜を有する基板。
- 前記基板は、プラスチック、セラミックスあるいはガラスより形成される請求項1ないし7のいずれかに記載の金属膜を有する基板。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載された前記基板が用いられることを特徴とする電子部品。
- 以下の工程を有することを特徴とする金属膜を有する基板の製造方法。
(a) 基板の表面に単分子膜を形成する工程、
(b) 前記単分子膜上に、金属膜を形成する工程、 - 前記官能基Aを、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択する請求項11記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記(a)工程と前記(b)工程の間に、
(c) 複素環を有する化合物を含む中間膜を前記単分子膜上に形成する工程、
を含み、前記(b)工程で、前記中間膜上に前記金属膜を形成する請求項10ないし12のいずれかに記載の金属膜を有する基板の製造方法。 - 前記(c)工程では、複素環を有する化合物を含有する溶液に前記基板を浸漬させて前記中間膜を形成する請求項13記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記(c)工程と前記(b)工程の間に、
(d) 前記基板を、酸化剤と接触させる工程、
を含む請求項13または14に記載の金属膜を有する基板の製造方法。 - 前記酸化剤として、鉄、銅、アルミニウムのうち少なくともいずれか一種を含む塩、あるいはハロゲンガスを用いる請求項15記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記(b)工程のとき、複素環を有する化合物を含む前記金属膜を形成する請求項11ないし16のいずれかに記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記金属膜の少なくとも一部を無電解メッキ法にてメッキ形成する工程において、触媒液及び/またはめっき液中に複素環を有する化合物を含有させる請求項17記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記金属膜を、金、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、タンタル、タングステン、アルミニウム、クロムあるいはチタンのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成する請求項10ないし18のいずれかに記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 前記基板を、プラスチック、セラミックスあるいはガラスにより形成する請求項10ないし19のいずれかに記載の金属膜を有する基板の製造方法。
- 請求項10ないし20のいずれかに記載された基板を用いることを特徴とする電子部品の製造方法。
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JP2013538111A (ja) * | 2010-07-21 | 2013-10-10 | ロディア チャイナ カンパニー、リミテッド | 無機基材を安定な重合層で被覆する方法 |
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-
2005
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