JP2007077422A - 浸炭方法およびそれによって作製された浸炭部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 浸炭ムラの発生を十分抑止することのできる浸炭方法およびそれによって作製された浸炭部品を提供する。
【解決手段】 浸炭方法は、1.5質量%以上のCrを含む鋼の表面に形成された加工変質層を除去する除去工程(ステップS2)と、除去工程後に鋼を浸炭する工程(ステップS3)とを備えている。また、好ましくは、上記除去工程は、鋼の表面を研磨する研磨工程を含んでいる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、浸炭方法およびそれによって作製された浸炭部品に関する。
浸炭処理は、低炭素鋼または低炭素合金鋼などの加工性のよい鋼を機械加工した後、その鋼の表面層の炭素量を増加させ、表面層のみを焼入硬化する処理方法である。浸炭処理を施した鋼の内部は炭素量が少なく柔軟な組織のままであるために靭性が高く、また表面層は炭素量が多いために耐磨耗性が高い。浸炭処理が施された鋼はこのような利点を有するので、各種の機械部品に広く応用されている。浸炭処理の具体的な方法としては、浸炭性ガスを用いて行われるガス浸炭処理が主流であるが、ガス浸炭処理では、鋼の表面の位置によって浸炭層が形成される深さにムラが発生する場合がある。この浸炭の深さのムラを浸炭ムラという。
ところで、浸炭処理方法の一つとして真空浸炭処理がある。真空浸炭処理とは、減圧された浸炭性ガスを真空中(減圧雰囲気中)に導入することで浸炭処理を行なう浸炭処理方法である。真空浸炭処理に関しては、たとえば特許第3531736号(特許文献1)、特開2004−169101号公報(特許文献2)、特開2002−180235号公報(特許文献3)、または特許第3442737号(特許文献4)などに記載されている。一般に浸炭ムラができる原因は、鋼の表面に生成する酸化膜にあると考えられている。上記真空浸炭処理によれば、酸化膜の生成が抑止されるので、浸炭ムラの発生をある程度抑制することができる。
また、鋼に含まれる成分の中でCr(クロム)は、特に酸化膜の生成が起こりやすい成分である。Crを多く含んでいる鋼ほど浸炭ムラが発生しやすい。一般に、Crを多く含むステンレス鋼では安定なCr酸化膜が生成される。このため、Crを多く含むステンレス鋼についてはガス浸炭処理が困難であることが知られており、真空浸炭処理が採用されている。
特許第3531736号 特開2004−169101号公報 特開2002−180235号公報 特許第3442737号
しかしながら、上記の真空浸炭処理を行なっても、浸炭ムラの発生を十分抑止することができないという問題があった。また、真空浸炭処理には浸炭時に煤が発生する問題があるので、真空浸炭処理は浸炭処理方法の主流にはなっていない。
また、Crを多く含む鋼では、浸炭ムラを発生させないことを目的として、浸炭処理前の鋼に大気中において900℃以上の温度で熱処理を施すことや、浸炭処理前の鋼に飽和水蒸気中において600℃以下の温度で熱処理を施すことが行なわれてきた。しかし、これらの方法によっても、浸炭ムラの発生を十分抑止することができないという問題があった。
したがって、本発明の目的は、浸炭ムラの発生を十分抑止することのできる浸炭方法およびそれによって作製された浸炭部品を提供することである。
本発明の浸炭方法は、1.5質量%以上のCrを含む鋼の表面に形成された加工変質層を除去する除去工程と、除去工程後に鋼を浸炭する工程とを備えている。
本願発明者は、浸炭ムラの発生を十分抑止する方法について鋭意検討した。その結果、浸炭ムラの発生は、鋼の加工の際に鋼の表面に形成される加工変質層に起因していることを見出した。加工変質層は鋼の表面に生成する層であり、その組織は鋼の内部の組織と比較して欠陥が多くなっている。この加工変質層にはCrが偏在し易く、浸炭の際にはCr酸化物が多量に生成する。その結果、加工変質層によって鋼の加工状態にムラが生じてCr酸化物が不均一に鋼の表面に分布する。これにより、鋼中への炭素の侵入が不均一になり、鋼の表面の位置によって浸炭層が形成される深さにムラが発生する。この現象は、1.5質量%以上のCrを含む鋼において生じうる。
そこで本発明の浸炭方法によれば、加工変質層を除去した後で鋼を浸炭するので、浸炭の際に鋼の表面にCr酸化物が多量に生成することを抑止することができる。その結果、鋼中への炭素の侵入が均一かつ容易になり、浸炭ムラの発生を十分抑止することができる。
加工変質層は、鋼の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、鋼の表面において鋼の内部の組織と比べて歪んでいる組織の部分として特定することができる。加工変質層の厚さは、加工の程度にもよるが、約4μm〜5μmである。加工変質層が除去されているか否かは、除去工程の前後において鋼の断面を電子顕微鏡で観察し、加工変質層の厚さを測定することにより調べることができる。
本発明の浸炭方法において好ましくは、上記除去工程は、鋼の表面を研磨する研磨工程を含んでいる。
加工変質層は鋼の加工速度が速い場合に発生するので、加工変質層の除去は、加工速度の遅い方法で行なわれる必要がある。研磨は、旋削加工などに比べて加工速度が非常に遅い加工方法であるので、加工変質層の除去方法として適している。
また、上記研磨工程において、鋼の表面に電解研磨のような化学研磨を施してもよいし、ヤスリなどを用いて(ペーパラッピング処理により)鋼の表面に機械研磨を施してもよい。
本発明の浸炭方法において好ましくは、上記除去工程の前に、鋼を加工する工程がさらに備えられている。
これにより、所望の部品形状に鋼を成形することができる。また、鋼の加工の際に加工変質層が鋼の表面に形成される。
本発明の浸炭部品は、上記の浸炭方法にて作製されている。これにより、浸炭ムラの発生が十分抑止された浸炭部品を得ることができる。
本発明の浸炭部品において好ましくは、浸炭部品は軸受部品である。本発明の浸炭部品は、特に軸受部品として適している。
本発明の浸炭方法および浸炭部品によれば、浸炭ムラの発生を十分抑止することができる。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における浸炭部品の製造方法を工程順に示す図である。図1を参照して、始めに、鋼に対してたとえば旋削加工などの加工を施す(ステップS1)。その結果、所望の浸炭部品の形状に鋼が成形される。一方、通常の加工速度で上記の加工を行なった場合、鋼の表面には加工変質層が形成される。
図2は、本発明の一実施の形態において鋼の表面に形成された加工変質層を模式的に示す図である。図2では鋼中に存在する転位を曲線で示している。図2を参照して、鋼の旋削加工時には、鋼の表面層に対してせん断応力が加わることで表面層が大きく変形し、それに伴って転位などの多量の欠陥が表面層に導入される。その結果、鋼の表面に加工変質層X1が形成される。加工変質層X1の組織は、鋼の内部の組織に比べて歪んでいる。
次に、図1を参照して、鋼の表面を研磨する(ステップS2)。研磨方法としては、電解研磨のような化学研磨であってもよいし、ヤスリなどを用いた機械研磨であってもよい。これにより、加工変質層が除去される。
図3は、本発明の一実施の形態において加工変質層が除去された鋼の表面を模式的に示す図である。図3を参照して、鋼の表面を研磨することにより、加工変質層を新たに形成することなく加工変質層X1が除去される。ただし、鋼の表面を研磨すれば常に加工変質層が除去されるものではない。たとえば研磨速度を非常に速くした場合には、加工変質層X1を除去する際に、図4に示すように新たな加工変質層X2が鋼の表面に形成されるので、加工変質層を除去することはできない。一方、加工速度が十分に遅い加工方法であれば研磨以外の方法であっても加工変質層を除去することができる。たとえば加工速度を非常に遅くして旋削加工を行なった場合にも、加工変質層を除去することができる。
次に、図1を参照して、鋼を浸炭処理する(ステップS3)。浸炭処理方法は、固体浸炭、液体浸炭、ガス浸炭、または真空浸炭のいずれでもよい。浸炭処理の際には、前工程において鋼の表面から加工変質層が除去されているので、鋼の内部への炭素の侵入が容易になる。その結果、鋼の表面におけるどの位置からも均一な深さで炭素を侵入させることができる。
その後、鋼に対して焼入(ステップS4)を施し、所望の硬さになるまで鋼に焼戻(ステップS5)を繰り返し施す。以上の工程により、本実施の形態の浸炭部品が得られる。
本実施の形態の浸炭方法および浸炭部品によれば、加工変質層を除去した後で鋼を浸炭するので、浸炭の際に鋼の表面にCr酸化物が多量に生成することを抑止することができる。その結果、鋼中への炭素の侵入が均一かつ容易になり、浸炭ムラの発生を十分抑止することができる。
本実施例では、浸炭ムラの発生のメカニズムについて調べた。具体的には、Crを比較的多く含む鋼(C:0.15質量%、Ni:3.5質量%、Cr:4質量%、Mo:4質量%、V:1質量%、残部Fe)に対してガス浸炭処理および焼入を施した。ガス浸炭処理は、CP(カーボンポテンシャル)が0.6の雰囲気において、960℃の温度で36時間行なわれた。焼入は、ソルトバス炉において1100℃の温度で7分間行なわれた。その後、鋼の硬度が所定の値になるまで、550℃の温度での焼戻とサブゼロ処理とを繰り返した。次に、鋼を所望の大きさに切断して試験片Aを得た。
続いて、切断面が露出するように試験片Aを樹脂に埋めた後、切断面を腐食液(10%硝酸+エタノール溶液(以後、10%ナイタルと記す))でエッチングして観察した。試験片Aの切断面の写真を図5に示す。図5を参照して、浸炭処理後の試験片Aにおいては、浸炭の浅い部分(矢印丸1)と浸炭の深い部分(矢印丸2)とが存在しており、浸炭ムラが発生している。
次に、試験片Aの切断面をエッチングしながら、その表面における金属元素の濃度の時間変化をX線電子分光法(ESCA)によって測定した。これにより、試験片Aの深さ方向における金属元素の分布を調べた。この結果を図6に示す。図6において、(a)は図5の矢印丸1の位置における金属元素の分布であり、(b)は図5の矢印丸2の位置における金属元素の分布である。図6を参照して、浸炭の浅い部分(a)では、浸炭の深い部分(b)に比べて多量のCrが表面に存在していることが分かる。
次に、表面に偏析しているCrがどのような状態で分布しているかを調べるために、試験片Aの表面のX線回折実験を行なった。図7は、試験片Aの表面のX線回折スペクトルである。丸印で示したピークはCr23に関する回折ピークであり、三角印で示したピークはCrOに関する回折ピークであり、菱形で示したピークはFeに関する回折ピークである。図7を参照して、Cr酸化物(Cr23およびCr)に関する吸収ピークが大きいことから、試験片Aの表面に偏析しているCrは、酸化物として分布していることが分かる。
次に、Cr酸化物が浸炭を浅くする要因になっているかどうかを調査するため、Cr酸化物量とその部分に侵入した炭素量との関係を調査した。Cr酸化物量と浸入炭素量は、それぞれESCAと電子プローブ微量分析(EPMA)とによって調査した。図8は、Cr酸化物量と侵入した炭素量との関係を示す図である。図8を参照して、Cr酸化物が多く存在している程、その部分に侵入できる炭素量は少なくなっていることが分かる。以上の結果から、Cr酸化物が炭素の侵入を阻害していることが分かる。
次に、Cr酸化物の成長がどの段階で起こっているのかについて調べた。具体的には、浸炭処理前後の試験片Aの表面のCrの分布状態をEPMAによるマッピング分析により調査した。図9は、浸炭処理前後における試験片Aの表面のCrの分布状態を示す図である。(a)は浸炭処理前であり、(b)は浸炭処理後である。図9を参照して、Crの存在を示す縞模様が(a)に比べて(b)では大きく増加している。このことから、浸炭の阻害要因であるCr酸化物は、浸炭処理中に成長することが分かる。また、浸炭処理における酸素分圧は1.873×10-21atm(1.898×10-16Pa)であり、Cr酸化物生成の平衡酸素分圧よりも1桁小さい。このことを考慮すると、ガス浸炭処理においてCrの酸化は不可避的に起こるといえる。
上述までの結果から、鋼中への炭素の侵入を阻害する原因はCr酸化物にあり、その成長は浸炭処理中に避けることができないことが分かった。しかし、以上の知見だけでは浸炭ムラの発生メカニズムは説明できない。浸炭ムラは、浸炭状況が場所によって異なっているという現象である。したがって、Cr酸化物の生成ムラがおこる原因を明らかにする必要がある。ここで、図9に示すEPMAによるマッピング分析結果では、Cr酸化物の生成方向が旋削加工方向に対応していた。このことから、Cr酸化物の生成ムラは加工状態のムラに起因している可能性がある。
そこで、Crの分布に及ぼす加工の影響について調査した。具体的には、旋削速度を1倍、3倍、27培、および81倍と変化させて鋼を加工し、試験片B1〜B4を得た。そして、試験片B1〜B4の各々の切断面をエッチングしながら、表面におけるCrの濃度変化をESCAによって測定した。図10は、試験片B1〜B4の各々の深さ方向におけるCrの濃度分布を示す図である。図10を参照して、切削速度の遅い1倍の試験片B1ではCrの量は少ないが、切削速度の速い3倍、27倍、および54倍の試験片B2〜B4では、旋削速度が速くなるにつれて試験片の表面のCrの量も多くなっていた。図11は、旋削速度を変化させた場合の試験片B1〜B4の各々の表面硬度を示す図である。図11を参照して、加工速度が速い試験片ほど表面硬度が低下する傾向があった。表面硬度が高い試験片ほど試験片内に侵入した炭素の量が多いことを考慮すると、旋削速度が速い試験片ほど浸炭を阻害するCr酸化物の成長が顕著になり、浸入する炭素の量が少なくなることが分かる。
以上の結果から、浸炭ムラの発生は、加工変質層の形成に伴う加工状態のムラが関係している可能性がある。なぜ加工状態のムラが発生するかという点については不明であるが、いずれにしても浸炭を阻害するCr酸化物を生成させないようにするためには、浸炭処理前の加工で生成する加工変質層を除去することが重要であるといえる。
浸炭ムラの原因となるCr酸化物の生成が起こるためには、鋼中に当然Crが含まれていなければならない。そこで、鋼に含まれているCrの量がどの程度であれば浸炭ムラが発生するかについて調べた。具体的には、Crの含有量が比較的少ない鋼(C:0.15質量%、Si:1質量%、Mn:0.5質量%、Cr:1.5質量%、Mo:1質量%、Al:0.05質量%、残部Fe)に対してガス浸炭処理および焼入を施した。ガス浸炭処理は、CP(カーボンポテンシャル)が1.0の雰囲気で、940℃の温度で12時間行なわれた。焼入は、ソルトバス炉において、860℃の温度で50分間行なわれた。その後、鋼の硬度が所定の値になるまで、315℃の温度での焼戻とサブゼロ処理とを繰り返した。次に、鋼を所望の大きさに切断して試験片Cを得た。そして、試験片Cの表面のCrの分布状態をEPMAによるマッピング分析により調べた。その結果を図12に示す。図12を参照して、Cr酸化物の生成方向がある方向に規則正しく分布しており、その方向が旋削加工目(図中横方向)に対応していることが分かる。以上の結果から、浸炭ムラは少なくとも1.5質量%以上のCrを含む材料で起こり得ることが分かる。
本実施例では、鋼の表面に形成された加工変質層を電解研磨で除去することの効果について調べた。Crを多く含む鋼(C:0.15質量%、Ni:3.5質量%、Cr:4質量%、Mo:4質量%、V:1質量%、残部Fe)を円盤形状に加工し、円盤形状の平面を比較的速い加工速度で加工した(以下、比較的を速い加工速度で旋削した面を加工面と記す)。この鋼に対してガス浸炭処理および焼入を施した。次に、この鋼を所望の大きさに切断して試験片D(比較例)を得た。続いて、切断面が露出するように試験片Dを樹脂に埋めた後、切断面を10%ナイタルでエッチングして観察した。試験片Dの切断面の写真を図13に示す。図13中下側の面が加工面である。図13から明らかであるように、試験片Dでは加工面の浸炭深さがそれ以外の面に比べ浅くなっていた。
次に、浸炭処理前に加工面の一部を電解研磨によって0.2mmの深さまで除去し、これ以外の製造方法は試験片Dと同様の製造方法を用いた試験片E(本発明例)を製造した。続いて、試験片Dと同様の方法で切断面を観察した。試験片Eの切断面の写真を図14に示す。図14中下側の面が加工面である。図14から明らかであるように、試験片Eでは試験片Dに比べて加工面の浸炭深さが深くなっていた。以上の結果により、浸炭処理前に電解研磨を行なうことで、加工変質層が除去され、浸炭ムラの発生が十分抑止されることが分かる。
本実施例では、鋼の表面に形成された加工変質層をペーパラッピング処理で除去することの効果について調べた。1.5質量%のCrが含まれている鋼(C:0.15質量%、Mn:0.5質量%、Cr:1.5質量%、Mo:1質量%、Al:0.05質量%、残部Fe)を旋削加工により比較的速い加工速度で加工し、試験片Fを得た。次に、試験片Fの加工面の断面ミクロ組織写真を撮影した。この写真を図15(a)に示す。続いて、60番の粒度の紙やすりを用いて200rpmの回転数で試験片Fを回転し、試験片Fの加工面にペーパラッピング処理した。そして、試験片Fの加工面の断面ミクロ組織写真を再度撮影した。この写真を図15(b)に示す。なお、図15(a)、(b)の倍率はともに5000倍である。図15(a)を参照して、試験片Fの表面(図中上側)付近のX3で示される部分では、組織の向きが鋼の表面に対して直角な向きからほぼ平行な向きへと右方向に曲っている。このX3で示される部分が加工変質層である。これに対して、図15(b)を参照して、ペーパラッピング後には、加工変質層が除去され、ほとんど残っていない。
続いて、試験片Fと同質の鋼を用い、加工速度を1〜54倍の間で変化させて旋削加工により加工し、試験片G1〜G5を得た。試験片G1およびG5は54倍の加工速度とし、試験片G2は1倍の加工速度とし、試験片G3は3倍の加工速度とし、試験片G4は18倍の加工速度とした。試験片G1〜G5の各々は、3個ずつ作製された。続いて、試験片G1にのみ試験片Fと同様のペーパラッピング処理をした。続いて、試験片G1〜G5をの各々に対して実施例1の試験片Aと同様のガス浸炭処理、焼入、焼戻、およびサブゼロ処理を施した。こうして得たれた試験片G1〜G5の各々の表面硬度を測定した。この結果を図16に示す。図16を参照して、ペーパラッピング処理を施した試験片G1は、ペーパラッピング処理を施さなかった試験片G2〜G4に比べて高い表面硬度を有しており、かつ表面硬度の差が小さかった。また、試験片G2〜G5の各々を比較すると、加工速度が速くなるにつれて表面硬度が低下した。この結果から、浸炭処理前にペーパラッピング処理を行なうことで、浸炭ムラが十分抑止されることが分かる。
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
本発明の浸炭方法およびそれによって作製された浸炭部品は、軸受部品の浸炭方法およびそれによって作製された軸受部品に適している。
本発明の一実施の形態における浸炭部品の製造方法を工程順に示す図である。 本発明の一実施の形態において鋼の表面に形成された加工変質層を模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態において加工変質層が除去された鋼の表面を模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態において鋼の表面に新たに形成された加工変質層を模式的に示す図である。 本発明の実施例1における試験片Aの切断面の写真を示す図である。 本発明の実施例1における試験片Aの深さ方向における金属元素の分布を示す図である。 本発明の実施例1における試験片Aの表面のX線回折スペクトルである。 本発明の実施例1におけるCr酸化物量と侵入している炭素量との関係を示す図である。 本発明の実施例1において、浸炭処理前後における試験片Aの表面のCrの分布状態を示す図である。 本発明の実施例1において、試験片B1〜B4の各々の深さ方向におけるCrの濃度分布を示す図である。 本発明の実施例1において、旋削速度を変化させた場合の試験片B1〜B4の各々の表面硬度を示す図である。 本発明の実施例1において、試験片Cの表面のCrの分布状態を示す図である。 本発明の実施例2において、電解研磨する前の試験片Dの切断面の写真を示す図である。 本発明の実施例2において、電解研磨した後の試験片Eの切断面の写真を示す図である。 本発明の実施例3において、ペーパラッピング処理前後における試験片Fの加工面の断面ミクロ組織写真を示す図である。 本発明の実施例3における試験片G1〜G5の各々の表面硬度を示す図である。
符号の説明
X1〜X3 加工変質層。

Claims (3)

  1. 1.5質量%以上のCrを含む鋼の表面に形成された加工変質層を除去する除去工程と、
    前記除去工程後に前記鋼を浸炭する工程とを備えた、浸炭方法。
  2. 前記除去工程は、前記鋼の表面を研磨する研磨工程を含む、請求項1に記載の浸炭方法。
  3. 請求項1または2に記載の浸炭方法にて作製された浸炭部品。
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