JP2007076564A - 車輪用ホイールおよび車輪制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タイヤのビード間の距離を車両の走行中に調節して接地面形状を変更する。
【解決手段】 車軸に固定されたアクスル30は、先端部を根元部に対して偏心可能に構成されている。根元部にはアウターハブ20が固定され、先端部にはインナーハブ22が固定される。インナーハブ22には内側リム体16が固定され、アウターハブ20には外側リム体18が固定される。内側リム体16のリムフランジ16aには、タイヤ10の車両内側のビード部10bが装着される。外側リム体18のリムフランジ18aには、タイヤ10の車両外側のビード部10cが装着される。制御装置100からの指令に応じてアクスル30の先端部を偏心させることで、内側リム体16を外側リム体18に対して車両前方や鉛直上方にずらすことができ、これに伴ってタイヤ接地面の形状が変化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は車輪用ホイールおよび車輪制御装置に関し、より詳細には、タイヤの路面接地状態を調整可能な車輪用ホイールおよびそれを制御する車輪制御装置に関する。
産業車両等では二つ割りに成形されたホイール体を組み合わせてタイヤに装着する方式のタイヤホイールが知られている。特許文献1には、一対のホイール体の一方に形成された円筒部を他方の円筒部に挿入し、その重なり合い部を締結して使用するタイヤホイールが開示されている。また、特許文献2には、リムフランジとディスクホイールとが一体成形された左右一対のホイール体の間に、リム底を形成するためのスペーサを配置し、このスペーサと一対のホイール体とをボルトにて結合したタイヤホイールが開示されている。
特開2003−240682号公報 実開平6−81802号公報
上記特許文献1においては、円筒部の重なり合い量を変更してタイヤのビード間の距離を調節する。また、上記特許文献2においては、幅の異なるスペーサをホイール体に結合することで、タイヤのビード間の距離を調節する。しかしながら、いずれの場合も、車輪を車両から外した状態でなければ調節をすることができない。
一般に、タイヤの路面接地部分(以下、単に「接地面」という)の幅や長さは、車両の走行性能に大きな影響を及ぼす。そこで、本願発明者は、タイヤのビード間の距離を車両の走行中に調節して接地面形状を変更できれば、走行性能の改善が可能であることを認識した。
本発明はこうした知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ接地面の形状を変化させて車両の走行性能を調整可能とする技術を提供することにある。
本発明のある態様の車輪用ホイールは、タイヤの車両内側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する内側リム体と、タイヤの車両外側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する外側リム体と、外部からの指令に応じて作動し、前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置を変化させるアクチュエータと、を備える。
この態様によると、ホイールを車両から取り外すことなく、車両の走行中であってもアクチュエータの作動によりタイヤ幅や接地面の形状を変化させることができる。
本発明の別の態様は、車輪制御装置である。この装置は、タイヤの車両内側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する内側リム体と、タイヤの車両外側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する外側リム体と、外部からの指令に応じて作動し、前記内側リム体と前記外側リム体の相対位置を変化させるアクチュエータと、車両の走行状態に合わせて前記アクチュエータを制御する制御手段と、を備える。
この態様によると、ホイールを車両から取り外すことなく、車両の走行中であってもアクチュエータの作動によりタイヤ幅や接地面の形状を変化させて、車両の走行性能を調整することができる。
前記アクチュエータは、車両の車軸に固定される第1軸と、第1軸に回転可能に連結され回転により先端を第1軸に対して変位可能な偏角部と、前記偏角部に回転可能に連結された第2軸と、から構成され、前記外側リム体または前記内側リム体のいずれか一方が前記第1軸に固定され、他方が前記第2軸に固定され、前記偏角部を回転させることで、前記内側リム体の中心軸と前記外側リム体の中心軸との軸間を離間せしめるようにしてもよい。これによって、内側リム体と外側リム体の軸を偏心させることができる。
車両の旋回を検出する旋回検出手段をさらに備え、前記制御手段は、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、前記内側リム体が前記外側リム体に対して鉛直方向上方に位置するように前記アクチュエータを制御してもよい。これによって、車両旋回時にタイヤに発生するキャンバスラストが増大するので、旋回性能が向上する。
車両の旋回を検出する旋回検出手段をさらに備え、前記制御手段は、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、前記外側リム体が前記内側リム体に対して車両前方に位置するように前記アクチュエータを制御してもよい。これによって、車両旋回時にタイヤに発生するコーナリングフォースが増大するので、旋回性能が向上する。
車両の制動状態を検出する制動検出手段をさらに備え、前記制御手段は、少なくとも左右一組の車輪について、前記外側リム体が前記内側リム体に対して車両前方に位置するように前記アクチュエータを制御してもよい。これによって、左右車輪にトーインが付けられたのと同様のタイヤ接地状態となるため、車両制動時の安定性が高まるとともに、制動距離を短縮することができる。
ステアリングホイールの保舵トルクを検出する保舵トルク検出手段をさらに備え、前記制御手段は、少なくともひとつの車輪について、車両外輪側に位置する内側リム体または外側リム体が他方のホイールに対して鉛直方向下方に位置するように前記アクチュエータを制御してもよい。これによって、タイヤにキャンバスラスト力が発生して車両が直進を維持しやすい状態になり、ドライバーの保舵トルクが軽減される。
前記外側リム体と前記内側リム体の間に同軸に配置された円筒部を有する連結部材をさらに備え、前記アクチュエータは前記連結部材の円筒部の円周上に複数配置され、各アクチュエータが車輪幅方向に伸縮する直動軸を有し、一部のアクチュエータの直動軸を前記内側リム体に連結し、残りのアクチュエータの直動軸を前記外側リム体に連結してもよい。この場合、前記制御手段は、前記アクチュエータの直動軸を伸縮させて、前記連結部材に対する前記内側リム体または前記外側リム体の相対位置を変化させてもよい。この構成によれば、外側リム体と内側リム体を車輪全周にわたって等距離だけ離間させる制御と、車両前方のタイヤ接地幅と後方のタイヤ接地幅とが異なるように、外側リム体と内側リム体を車軸垂直面に対して傾斜させた状態に離間させる制御の両方を実施することができる。
車両の減速度を検出する減速度検出手段と、急制動を判定するための所定のしきい値と検出された減速度とを比較する判定手段と、をさらに備えてもよい。急制動と判定されたとき、前記制御手段は、前記内側リム体と前記外側リム体とのタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように前記アクチュエータを制御してもよい。これによってタイヤ接地面の面積が増加し摩擦力が増大するので、制動性能が向上する。
車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、急旋回を判定するための所定のしきい値と検出された操舵角とを比較する判定手段と、をさらに備えてもよい。急旋回と判定されたとき、前記制御手段は、前記内側リム体と前記外側リム体とのタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように前記アクチュエータを制御してもよい。これによってタイヤ接地面の面積が増加し車両の応答性が向上するので、旋回性能が向上する。
車輪の回転角を検出する回転角検出手段をさらに備え、前記制御手段は、検出された回転角を参照して、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より狭い状態を維持するように前記アクチュエータを制御してもよい。これによって、タイヤの発生力を増大させることができる。
また、前記制御手段は、検出された回転角を参照して、旋回時の車両内輪側の少なくともひとつの車輪について、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より広い状態を維持するように前記アクチュエータを制御し、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より狭い状態を維持するように前記アクチュエータを制御してもよい。つまり、内輪の接地面は前開きにしてニューマチックトレールを小さくし、外輪の接地面は後開きにしてニューマチックトレールを大きくする。これによって、旋回時に内輪で外向きに働くコーナリングフォースを小さくできるため、ステアリングホイールが戻りやすくなる。
前記連結部材と前記内側リム体および前記外側リム体との間に挟持される伸縮自在の封止部材をさらに備えてもよい。これによって、ホイールの変位を許容しつつ、タイヤ空気室内を気密に保つことができる。
車両の車高を検出する車高検出手段と、前記内側リム体および前記外側リム体を含む車輪と車体とを連結し、伸縮可能に構成された車高調整手段と、前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置変化に基づく車高変化量を推定する推定手段と、前記車高調整手段を制御して、前記車高変化量を打ち消す方向に車高を補正する車高補正手段と、をさらに備えてもよい。これによって、外側リム体および内側リム体の変位前後のタイヤ空気室の容積変化に起因する車高変化を緩和することができる。なお、車高調整手段には、電磁アブソーバやエアサスペンションなどが含まれる。
タイヤ空気圧を検出する空気圧検出手段と、タイヤ空気室に連通し空気を供給または排出する空気供給手段と、タイヤ空気室内への空気の流出入を制御する制御弁と、前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置変化に基づく空気圧変化量を推定する推定手段と、前記制御弁を制御して、前記空気圧変化量を打ち消す方向にタイヤ空気圧を補正する空気圧補正手段と、をさらに備えてもよい。これによって、外側リム体および内側リム体の変位前後のタイヤ空気室の容積変化に起因する空気圧変化を緩和することができる。
本発明によれば、タイヤ接地面の形状を変化させて車両の走行性能を調整することができる。
本発明は、タイヤの車輪内側のビード部が装着される内側リム体と、タイヤの車輪外側のビード部が装着される外側リム体の二つを含む車輪用ホイールに関する。このホイールに内側リム体と外側リム体の相対位置を変化させるアクチュエータを組み合わせることによって、ホイールを車両から取り外すことなく、車両の走行中であってもタイヤ幅や接地面の形状を変化させて、車両の走行性能を調整することができる。
以下、いくつかの実施の形態をもとに本発明を詳細に説明する。
実施の形態1.
実施の形態1では、タイヤのビード部の両側にそれぞれ装着された内側リム体と外側リム体の軸を車輪半径方向に変位させる。図1は、実施の形態1に係る車輪用ホイールを示す。
図1には、車輪の断面図と懸架装置の一部が示されており、車輪は主にタイヤ10とホイール28を含む。車輪は、アーム50によって、車両の懸架装置を構成するショックアブソーバ52およびサスペンション54に接続される。
ホイール28は、タイヤ10の車両内側のビード部10bが装着される円環状のリムフランジ16aを備える内側リム体16と、タイヤ10の車両外側のビード部10cが装着される円環状のリムフランジ18aを備える外側リム体18とから構成される。内側リム体16と外側リム体18は、アーム50のハブに取り付けられる円盤の外周から、円筒状のリムフランジ16a、18aがそれぞれ車両の内側、外側に延設されている。リムフランジ16a、18aの先端には、ビード部と嵌合するリムが設けられる。外側リム体18のリムフランジ18aには空気バルブ14が取り付けられる。
タイヤ10のトレッド部10aは、タイヤが路面に接する部分である。トレッド部10aには、排水、制動力の発揮、操作性の向上などを目的としてトレッドパターンが刻まれている。
リムフランジ16a、18aと接するビード部10b、10cは、タイヤ10を内側リム体16および外側リム体18に固定する部分であり、タイヤ10の全周にわたるリング状の構造をしている。タイヤ10内に空気が注入されると、ビード部10b、10cはそれぞれリムフランジ16a、18aと接してタイヤ10内を気密にする。このビード部10b、10cには、タイヤ内の空気の圧力やホイールの回転などにより大きな力がかかるので、その力に耐え得るよう中心に鋼線の束であるビードワイヤーが収められている。
内側リム体16および外側リム体18のディスクの中央には、貫通孔があけられたハブ取付け部が設けられる。ハブ取付け部とリムフランジは、ハブ取付け部から車輪半径方向に延び出す複数のスポークにより連結される。内側リム体16と外側リム体18のスポークは交互にハブ取付け部から延び出すことで、相互に干渉しないようにされている。内側リム体16と外側リム体18の相対する面にはシール材が貼付され、タイヤ空気室の気密を保つ。
アウターハブ20とインナーハブ22は、アーム50に固定されたアクスル30に対して回転自在に取り付けられる。アウターハブ20の中筒部20aが、円錐ころ軸受42、44を介してアクスル30に取り付けられる。インナーハブ22の中筒部22aが円錐ころ軸受46を介してアクスル30に取り付けられる。内側リム体16はインナーハブ22に固定され、外側リム体18はアウターハブ20に固定される。
アクスル30は、根元部、偏角部、先端部から構成される。偏角部は、根元部および先端部に対して回転可能に接続される。図示しない車体に設置された制御装置100からの指令により偏角部を回転させると、根元部に対して先端部が車輪半径方向に変位する。この動作によって、先端部に固定されたインナーハブ22をアウターハブ20に対して偏心させることができる。図1は、インナーハブ22をアウターハブ20に対して鉛直上方に変位させたとき、すなわち内側リム体16を外側リム体18に対して鉛直上方に変位させたときの様子を示している。
なお、アクスル30の詳細な構成については、図3ないし図6を参照して後述する。
アクスル30とホイール28は、車両の左右駆動輪に設けられることが好ましいが、一部の車輪にのみ設けても、全車輪に設けてもよい。
図2は、アウターハブ20とインナーハブ22の組み合わせ図である。図2は、内側リム体16と外側リム体18とを取り外した状態で、図1中の矢印Aの方向からアウターハブ20とインナーハブ22を見た様子を示す。
図示するように、アウターハブ20の中央に十字状の切り込みが設けられており、その内部に十字形状のインナーハブ22が配置される。インナーハブ22の外形と、アウターハブ20の十字状の切り込みとの間は若干の間隔を持つように設計されており、インナーハブ22が車輪半径方向に変位した場合にもアウターハブ20と干渉しないようになっている。インナーハブ22には、内側リム体16を固定するための4つのボルト穴26が等間隔に設けられる。アウターハブ20にも、外側リム体18を固定するための4つのボルト穴24が等間隔に設けられる。
図3ないし図6は、アクスル30のうち図1に「B」で示した部分の詳細な内部構造を示す。アクスル30は円筒形の外筒を持つが、図3〜6はその外筒の半周分を取り除いたときの様子を示す。
図3、図4は、アクスル30の根元部と先端部が同軸にある場合を表しており、図3は平面図、図4は斜視図である。
根元部32は、アームに固定されている。根元部32と偏角部34は、軸に対して所定の角度で切断された切片で回転可能に連結される。偏角部34と先端部36も同様に、所定の角度で切断された切片で回転可能に連結される。根元部32の内壁には、円盤60が傾いた状態で接合され、円盤60の中心からは軸74が延びる。軸74の他端にはギヤ64が取り付けられる。軸74の途中には、偏角部34の内壁に固定板70で固定されたモータ62が配設される。モータ62は、図示しない電池からの電力供給を受けて回転駆動される。先端部36の内壁には、円盤68が傾いた状態で接合され、円盤68の中心からは軸72が延びる。軸72の他端にはギヤ66が取り付けられ、このギヤ66はギヤ64と係合する。
図5、図6は、アクスル30の先端部が根元部に対して偏心している場合を表しており、図5は平面図、図6は斜視図である。
モータ62を駆動すると、円盤60は根元部32に固定されていることからモータ62自身が回転を始め、その結果、固定板70を介して偏角部34が根元部32に対して回転する。偏角部34が回転すると、その内壁がギヤ66を押圧して、ギヤ64に対してギヤ66が移動する。ギヤ66の移動は、軸72および円盤68を介して先端部36に伝わり、図5および図6に示すように、先端部36の中心軸が根元部32の中心軸から離間した状態になる。
この動作にしたがって、先端部36に固定されたインナーハブ22が、根元部32に固定されたアウターハブ20に対して偏心する。これに伴って、内側リム体16が外側リム体18に対して変位する。すなわち、アクスル30は、内側リム体16と外側リム体18の相対位置を変化させるアクチュエータとして動作する。
モータ62の回転角を制御することで偏角部34の回転角度を調節でき、これに伴ってインナーハブ22をアウターハブ20と同軸の位置、図2の右方、上方、および左方に変位させることができる。これは、内側リム体16と外側リム体18を同軸にすること、内側リム体16を外側リム体18に対して車両前方に変位させること、鉛直上方に変位させること、および車両後方に変位させることにそれぞれ対応する。
なお、内側リム体16をアウターハブ20に固定し、外側リム体18をインナーハブ22に固定してもよい。この場合でも、内側リム体16の中心軸と外側リム体18の中心軸との軸間を離間させることは同じである。
図7は、ホイール28の制御装置100の機能ブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車速センサ102は、車輪付近に取り付けられ、車輪の回転数に基づいて車速を検出する。操舵角センサ104は、図示しない車両のステアリングホイールに設置され、ドライバーによるステアリング操舵角を検出する。ペダルストロークセンサ106は、図示しない車両のブレーキペダルに設置され、ドライバーによるブレーキペダルの踏み込み量を検出する。ヨーレートセンサ108は、図示しない車体に設置され、走行中の車両のヨーレートを検出する。これらセンサの出力は、変位制御部120に入力される。
変位制御部120は、検出部122と、判定部124と、変位量決定部126と、アクスル制御部130を含む。検出部122は、各種センサからの出力を受け取り、判定部124に渡す。判定部124は、センサ出力にしたがって、ホイール変位制御を実施するか否かを判定する。ホイール変位制御を実施すべきと判定されると、変位量決定部126は、内側リム体16を外側リム体18に対していずれの方向に変位すべきか、すなわち、車両前方、車両後方、および鉛直上方のいずれに変位させるかを決定し、アクスル制御部130に送る。アクスル制御部130は、決定された方位にホイールを変位させるために必要なモータ62の回転角を算出し、右前輪のアクスル30Rまたは左前輪のアクスル30Lのモータを駆動する。これによって、右前輪または左前輪のホイールを変位させることができる。
次に、内側リム体16を外側リム体18に対して変位させることにより得られる効果について説明する。ホイールを上下に相対変位させると、タイヤの接地面の内外で、タイヤの有効半径が異なることになる。すると、タイヤの接地面が円錐側面の形状に擬せられるため、タイヤにキャンバスラストを発生させることができる。また、ホイールを車両の前後方向に相対変位させると、トレッド部がタイヤの中心線に対して角度の付いた状態になるので、タイヤにコーナリングフォースを発生させることができる。
続いて、具体的な制御を以下の実施例1ないし3を参照して説明する。
(実施例1)
実施例1では、車両の旋回時に、車両外輪側の車輪について、内側リム体16が外側リム体18に対して鉛直上方に位置するように、アクスル30を駆動する。
図8は、実施例1のフローチャートである。図8のフローは、車両の走行中常に繰り返し実行される。まず、検出部122は車速と操舵角を検出し(S10)、車両が旋回中であることを判定するためのしきい値と操舵角とを比較して、ホイールの変位制御を実施するか否かを判定する(S12)。実施しないと判定すると(S12のN)、このルーチンを終了し、実施すると判定すると(S12のY)、変位量決定部126は、操舵角の大きさおよび車速を参照してホイールの偏心量を決定し(S14)、アクスル制御部130は、車両外輪側に位置する車輪のアクスル30を駆動する(S16)。具体的には、内側リム体16を外側リム体18よりも鉛直上方にずらすようにする。これによって、車両旋回時にタイヤに発生するキャンバスラストが増大するので、旋回性能が向上する。
ホイールを鉛直上下方向に変位させる代わりに、車両の前後方向に変位させてもよい。この場合、S12でホイール変位制御を実施すると判定されると、変位量決定部126は、操舵角の大きさおよび車速を参照してホイールの前後偏心量を決定し、アクスル制御部130は、車両外輪側に位置する車輪について、外側リム体が内側リム体に対して車両前方に位置するようにアクスルを駆動する。これによって、車両旋回時にタイヤに発生するコーナリングフォースが増大するので、旋回性能が向上する。
(実施例2)
実施例2では、車両の制動時に、車両外側に位置する外側リム体18が内側リム体16に対して車両前方に位置するように、アクスル30を駆動する。
図9は、実施例2のフローチャートである。実施例1と同様、車両の走行中は常にこのフローが繰り返されている。まず、検出部122は車速とペダルストローク量を検出し(S20)、車両が制動中であることを判定するためのしきい値とペダルストローク量とを比較して、ホイールの変位制御を実施するか否かを判定する(S22)。実施しないと判定すると(S22のN)、このルーチンを終了し、実施すると判定すると(S22のY)、変位量決定部126は、車速を参照してホイールの前後偏心量を決定し(S24)、アクスル制御部130は、少なくとも左右一組の車輪について、外側リム体18が内側リム体16に対して車両前方に変位するようにアクスル30を駆動する(S26)。これによって、左右車輪にトーインが付けられたのと同様のタイヤ接地状態となるため、車両制動時の安定性が高まるとともに、制動距離を短縮することができる。なお、実施例2のホイール変位制御の対象となる車輪は、駆動輪であることが好ましい。
(実施例3)
実施例3では、車両が直進しているにもかかわらずドライバーがステアリングを操作している状態が検出されたとき、ステアリングの操作方向とは逆方向にキャンバスラスト力が発生するようにアクスル30を駆動する。
図10は、実施例3のフローチャートである。実施例1、2と同様、車両の走行中は常にこのフローが繰り返されている。まず、検出部122は、操舵角および車両のヨーレートを検出する(S30)。判定部124は、操舵入力があるにもかかわらず車両が直進走行している状態を、操舵角とヨーレートの値にしたがって判定する(S32)。操舵角に相当するヨーレートが発生している場合は(S32のY)、車両は通常の旋回走行をしていると考えられるので、このルーチンを終了する。操舵角相当のヨーレートが発生していないと判定すると(S32のN)、ドライバーによる操舵入力がないと車両を直進走行させられない状態にあると考えられるので、変位量決定部126は、操舵角を参照してホイールの上下偏心量を決定し(S34)、アクスル制御部130は、操舵方向とは反対側の車輪について、外側リム体18が内側リム体16に対して鉛直上方に位置するようにアクスル30を駆動する(S36)。これによって、タイヤにキャンバスラスト力が発生して車両が直進を維持しやすい状態になり、ドライバーの保舵トルクが軽減され、運転者の操作快適性が向上する。
以上説明したように、実施の形態1によれば、車両の走行状態に応じてホイールを相対変位させ、タイヤ単体でキャンバスラストやコーナリングフォースを発生させることによって、旋回時の安定性向上や制動停止距離の短縮といった車両の走行性能を向上させることができる。また、右前輪のみや左前輪のみといった制御が可能なので、車両の走行状態により適した調整を実現することができる。さらに、懸架装置を動作させることなく車輪単体でタイヤの発生力を調整できるので、車両の軽量化に貢献する。
実施の形態2.
実施の形態1では、内側リム体と外側リム体の中心軸を車輪半径方向に変位させることを述べたが、実施の形態2では、内側リム体と外側リム体を車輪幅方向に変位させる例について説明する。
図11は、実施の形態2に係る車輪用ホイールを示す。図11には、車輪の断面図と懸架装置の一部が示されており、車輪はタイヤ152とホイール150を含む。また、図12はホイール150の組み立て図である。
以下、図11と図12をともに参照してホイールの構造について説明する。
車輪は、アーム190によって、車輪の懸架装置を構成するスプリング192と電磁アブソーバ194に接続される。電磁アブソーバ194には、電動モータとそれにより駆動されるピストンが内蔵されており、電動モータによってアブソーバのストローク量を調整することで、一定範囲内で車高を調整可能である。なお、車高の調整手段として、電磁アブソーバの代わりにエアサスペンションを使用してもよい。
ホイール150は、内側リム体160、外側リム体168、スペーサ164、および封止部材162、166を含む。内側リム体160は、タイヤ152の車両内側のビード部が装着される円環状のリムから構成される。外側リム体168は、タイヤ152の車両外側のビード部が装着される円環状のリムから構成される。
スペーサ164は、内側リム体160と外側リム体168の間に挟まれて同軸上に配置される。スペーサ164は、図12に示すように、円環状のつば部164aと、つば部から車両外側に突出し、車軸のハブ180にボルト178によってスペーサ164を締結するためのボルト穴164cを底部に備えた器部164bとからなり、全体として帽子形状をなしている。つば部164aの円周には等間隔に貫通穴が形成されており、それぞれの貫通穴に直動アクチュエータ172が装着されている。直動アクチュエータ172は内部にソレノイドを備えており、図示しない車体に設置された制御装置200からの指令に応答して直動軸170を車輪幅方向に伸縮自在に構成されている。
直動アクチュエータ172は、スペーサ164のつば部164aの円周に、車両外側と車両内側とを交互に向くように装着される。すなわち、図12に示すように、8個の直動アクチュエータ172のうち4つは内側リム体160方向に直動軸が延び出すように配置され、残りの4つは外側リム体168方向に直動軸が延び出すように配置される。直動軸170の先端には支承体170aが取り付けられ、この支承体が内側リム体160または外側リム体168の外縁に形成された貫通穴を通してボルトにより締結される。したがって、4つの直動アクチュエータ172は内側リム体160とスペーサ164とを連結し、別の4つの直動アクチュエータ172は外側リム体168とスペーサ164とを連結する。つまり、スペーサ164から延び出す直動軸170によって内側リム体160と外側リム体168が支持された状態になる。なお、直動アクチュエータ172には、図示しない電池から電力を供給してもよいし、または図示しない車両に備えられた車載バッテリから電力を供給してもよい。
この構成によって、内側リム体160および外側リム体168をスペーサ164からタイヤ幅方向に拡縮することができる。また、直動軸170の伸張長を4つの直動アクチュエータで変えることによって、車軸に直交する面(車軸回転面)に対して、内側リム体160および外側リム体168を傾斜した状態に変位させることができる。
内側リム体160とスペーサ164の間、およびスペーサ164と外側リム体168の間には、弾性体で形成され、伸縮自在の蛇腹の胴体を有する封止部材162および166が挟持される。これら封止部材162、166によって、タイヤ空気室内が気密に保たれるとともに、ホイール150全体の形状が維持される。また、封止部材162、166の蛇腹の導体によって、ホイールの変位によるタイヤ幅の変更も可能になる。
タイヤ空気室には、空気導管244が連通している。空気導管244は、ハブ内部を通過してタイヤ空気室に連通する。空気導管244の他端には、空気を供給または排出するための空気供給装置242が配置される。この空気供給装置242は、車体に搭載される。空気導管244の途中には、外部からの指令によっていずれかの方向への空気の流出を可能にすることで、タイヤ空気室への空気の供給またはタイヤ空気室からの空気の排出をさせるための制御弁246が配置される。
図13は、ホイール150の制御装置200の機能ブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。
車輪回転センサ202は、車輪とともに回転するディスクに等間隔に刻まれた溝をカウントすることで、車輪の回転角を検出する。ペダルストロークセンサ204は、図示しない車両のブレーキペダルに設置され、ドライバーによるブレーキペダルの踏み込み量を検出する。摩擦センサ206は、路面のウェット/ドライ状態を検出し、タイヤ接地面の摩擦係数を推定する。加速度センサ208は、車両の加速度を検出する。操舵角センサ210は、図示しない車両のステアリングホイールに設置され、ドライバーによるステアリング操舵角を検出する。これらセンサの出力は、変位制御部220に入力される。
変位制御部220は、検出部222と、実施判定部224と、制御量決定部226と、アクチュエータ制御部230を含む。検出部222は、各種センサからの出力を受け取り、実施判定部224に渡す。実施判定部224は、センサ出力にしたがって、ホイール変位制御を実施するか否かを判定する。ホイール変位制御を実施すべきと判定されると、制御量決定部226は、ホイール150に設置された直動アクチュエータ172それぞれについて、直動軸の伸縮量を計算する。アクチュエータ制御部230は、計算された伸縮量にしたがって、直動アクチュエータ172を制御する。
次に、実施の形態2にしたがってホイールを変位させることにより得られる効果について説明する。制御装置200によるタイヤ変位制御には、大きく分けて2種類がある。
第1は、内側リム体160と外側リム体168を車輪全周にわたって等距離だけ離間させる制御である。すなわち、直動アクチュエータの直動軸を同一方向に等距離だけ伸張させる。この結果、タイヤ幅は直動軸の伸張分だけ増加する。内側リム体160と外側リム体168を車両幅方向に離間させることによって、タイヤ接地面の面積が増大し、車両の旋回性能や制動性能が向上する。
第2は、内側リム体160と外側リム体168を、車両前方のタイヤ接地幅と後方のタイヤ接地幅とが異なるように、車軸垂直面に対して傾斜させた状態に離間させる制御である。言い換えると、鉛直上方から観察したときにタイヤ接地面の形状が台形状になるようにする。
従来のタイヤでは、タイヤ接地面の面圧分布と変形形状とが大きくずれているために、摩擦力を十分に使い切ることができなかった。これに対し、実施の形態2では、タイヤ接地面の形状を調整して面圧分布に近づけることによって、摩擦力を十分に発揮することが可能になる。
なお、この第2の制御時には、車輪が回転してもタイヤ接地面の形状が台形を維持するように、上述した車輪回転センサにより検出される車輪回転角を参照して、車輪の回転に合わせて直動アクチュエータの伸縮量を随時調整する必要がある。
ここで、図14を参照して、タイヤ接地面の形状を台形に変形させたときのタイヤ発生力について説明する。図中、(a)はホイール変位を実施しない通常時、(b)はタイヤ接地面前端の接地幅を後端の接地幅より狭くした「後開き」時、(c)はタイヤ接地面前端の接地幅を後端の接地幅より広くした「前開き」時についての図である。(a)〜(c)には、それぞれ、内側リム体160と外側リム体168のスペーサ164に対する位置関係、タイヤ発生力および接地面形状が描かれている。
(a)の通常時には、外側リム体と内側リム体は、スペーサに対して平行に配置される。したがって、接地面形状は略長方形である。タイヤ発生力のグラフにおいて、半円Psはタイヤ接地面の最大静止摩擦力であり、半楕円Pdは動摩擦力を表している。fはタイヤ接地面における微小面積でのタイヤ発生力である。Fはタイヤに生じる横力であり、F=∫f・dxの関係を有する。
(a)において、接地面前端からすべり角βの傾きでタイヤ発生力fは増加していき、fが最大静止摩擦力Psに到達すると、接地面が滑って移行は動摩擦力Pdと同一になる。このとき、タイヤ接地面の前後方向の中心線から横力(タイヤ接地面で旋回時に発生する力)の始点までの距離が「ニューマチックトレールξ」に相当する。
(b)の後開き時には、外側リム体と内側リム体を、タイヤ前側でスペーサに近接しタイヤ後側で離間するように配置される。したがって、(b)の中段に示すように、最大静止摩擦力Psが、接地面前端で摩擦力が減少し、接地面後端で摩擦力が増大する形状に変化する。この場合、タイヤ発生力fの最大値は、図示するように(a)の通常時よりも増加し、これに伴ってニューマチックトレールξは大きくなる。
逆に、(c)の前開き時には、外側リム体と内側リム体を、タイヤ前側でスペーサから離間させタイヤ後ろ側で近接するように配置される。したがって、(c)の中段に示すように、最大静止摩擦力Psが、接地面前端で摩擦力が増大し、接地面後端で摩擦力が減少する形状に変化する。この場合、タイヤ発生力fの最大値は、図示するように(a)の通常時よりも減少し、これに伴ってニューマチックトレールξは小さくなる。
続いて、具体的な制御を以下の実施例4ないし7を参照して説明する。
(実施例4)
実施判定部224は、急制動を判定するための所定のしきい値と加速度センサ208により検出された減速度とを比較する。減速度が所定のしきい値を越るとホイール変位制御を実施すべきと判定し、アクチュエータ制御部230は、外側リム体と内側リム体とのタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように直動アクチュエータ172を駆動する。これによってタイヤ接地面の面積が増加し摩擦力が増大するので、制動性能が向上する。
(実施例5)
実施判定部224は、急旋回を判定するための所定のしきい値と操舵角センサ210により検出された操舵角とを比較する。操舵角が所定のしきい値を越えるとホイール変位制御を実施すべきと判定し、アクチュエータ制御部230は、外側リム体と内側リム体のタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように直動アクチュエータ172を駆動する。これによってタイヤ接地面の面積が増加し車両の応答性が向上するので、旋回性能が向上する。
(実施例6)
実施判定部224が摩擦センサ206の出力からタイヤの発生力が小さいと判定したとき、アクチュエータ制御部230は、左右の車輪について、接地面前端のタイヤ幅が後端のタイヤ幅よりも狭い状態を維持するように直動アクチュエータ172を制御する。つまり、左右両輪とも接地面を後開きの状態にする。これによって、タイヤの発生力が向上する。
(実施例7)
実施判定部224は、操舵角センサ210の出力から車両が旋回中か否かを判定する。旋回中と判定されたとき、アクチュエータ制御部230は、車輪回転センサ202で検出された回転角を参照し、旋回時の車両内輪側の車輪について、旋回中、接地面前端のタイヤ幅が後端のタイヤ幅よりも広い状態を維持するように直動アクチュエータ172を制御する。さらに、車両外輪側の車輪について、旋回中、接地面前端のタイヤ幅が後端のタイヤ幅よりも狭い状態を維持するように直動アクチュエータ172を制御する。つまり、内輪の接地面は前開きにしてニューマチックトレールを小さくし、外輪の接地面は後開きにしてニューマチックトレールを大きくする。これによって、旋回時に内輪で外向きに働くコーナリングフォースを小さくできるため、ステアリングホイールが戻りやすくなる。
図15は、実施の形態2に係るホイール変位制御のフローチャートである。このフローは、車両の走行中常に繰り返し実行される。まず、実施判定部224は各種センサの検出値を受け取り(S60)、実施例4〜7のいずれのホイール変位制御を実施するかを決定する(S62)。実施しない場合(S62のN)、このルーチンを終了する。実施する場合(S62のY)、制御量決定部226は、実施例4〜7のうち選択された制御方法に応じて直動アクチュエータ172の変位量を算出する(S64)。そして、アクチュエータ制御部230は、算出された変位量になるように各直動アクチュエータ172を制御する(S66)。
以上説明したように、実施の形態2のホイールを使用すると、以下のような効果が得られる。タイヤ幅を車輪全周にわたって増加させる第1の制御では、タイヤ最大摩擦力が向上し、車両限界性能が向上する。また、接地面を台形状にする第2の制御では、車輪のニューマチックトレールを可変できるため、車両の操舵力を調整して操舵性能を改善することができる。
実施の形態1、2では、分割した二枚のホイールの相対位置を変化させ、タイヤの接地面形状やタイヤ幅を変更することで、車両の走行性能を改善することを述べた。しかしながら、走行中にタイヤの接地面形状やタイヤ幅を変更すると、他の車両性能に影響が及びうる。
例えば、実施の形態2においてホイールの間隔を広げてタイヤ幅を増大させると、タイヤ空気室の容積が増加するためタイヤ空気圧が低下する。すると、タイヤ変形に伴うエネルギーロスが増大する。またタイヤ空気圧が低下すればその分だけ車高が低下するので、車両底部が路面と接触したり、タイヤが車体のタイヤハウスに干渉したりする可能性がある。
逆に、ホイールの間隔を狭めてタイヤ幅を減少させると、タイヤ空気室の容積が減少するためタイヤ空気圧が増大する。すると、タイヤの接地性能も低下しうるし、タイヤ直径の増加により車高が高くなり空気抵抗が増加する。
したがって、ホイール変位制御を実施したときには、これに付随するタイヤ空気圧変化および車高変化を補正することが好ましい。以下では、ホイール変位制御の実行時に選択的に実行すべき補正制御について説明する。
図16は、図13に示した制御装置とともに使用される補正制御装置の機能ブロック図である。以下の説明では、実施の形態2で述べたホイール150を対象にした補正制御について説明するが、実施の形態1で述べたホイール28についても同様の構成で補正制御を実施可能である。
車高センサ212は、電磁アブソーバ194に設置され、ピストンのストローク量を検出して車高を推定する。代わりに、車体底部に設置した赤外線センサによって車体底部と路面との距離を直接測定してもよい。空気圧センサ214は、タイヤ空気室内に設置され、タイヤ空気圧を検出する。
補正制御部250は、ホイール変位制御部内の制御量決定部226から制御量情報を受け取って、補正を実施するか否かを判定する。
具体的には、各直動アクチュエータ172の伸縮量の情報は、車高変化量推定部232に入力される。また、車高センサ212からの現在の車高も車高変化量推定部232に入力される。車高変化量推定部232は、ホイール変位制御実施前後の車高変化量を算出し、補正実施判定部236に渡す。補正実施判定部236は、車高の変化量が許容範囲内か否かを判定する。許容範囲を越えていると、車高制御部238は、車高変化を打ち消す方向に電磁アブソーバ194を制御して車高を調整する。
各直動アクチュエータ172の伸縮量の情報は、空気圧変化量推定部234にも入力される。また、空気圧センサ214からの現在のタイヤ空気圧も空気圧変化量推定部234に入力される。空気圧変化量推定部234は、ホイール変位制御実施前後の空気圧変化量を算出し、補正実施判定部236に渡す。許容範囲を越えていると、空気圧制御部240は、空気圧変化量を打ち消す方向に制御弁246を制御して、タイヤ空気圧を調整する。
図17は、車高変化補正制御のフローチャートである。まず、車高センサ212により車両の車高を検出する(S70)。続いて、車高変化量推定部232は、直動アクチュエータ172の伸縮量を参照してタイヤ空気室の容積変化を計算し、さらにホイール変位制御実施後の推定車高を計算する。続いて、現在の車高と推定車高との差分である車高変化量を算出する(S72)。補正実施判定部236は、車高変化量と予め定められたしきい値とを比較して、車高変化量が許容範囲内か否かを判定する(S74)。許容範囲内であれば(S74のY)、このフローチャートを終了し、許容範囲を超えていれば(S74のN)、車高補正を実施すると判定する。車高制御部238は、車高変化を打ち消す方向に、つまり、ホイール変位制御後の車高が制御前の車高と同程度になるような電磁アブソーバ194のピストンの変位量を算出し、その値に応じて電磁アブソーバを制御する(S76)。なお、車高制御部238は、車高変化量を完全に打ち消すように車高を調整してもよいが、許容範囲を下回る範囲まで車高調整を実施してもよい。
図18は、空気圧変化補正制御のフローチャートである。まず、空気圧センサによりタイヤ空気圧を検出する(S80)。続いて、空気圧変化量推定部234は、直動アクチュエータ172の伸縮量を参照してタイヤ空気室の容積変化を計算し、さらにホイール変位制御実施後の推定空気圧を計算する。続いて、現在のタイヤ空気圧と推定空気圧との差分である空気圧変化量を算出する(S82)。補正実施判定部236は、空気圧変化量と予め定められたしきい値とを比較して、空気圧変化量が許容範囲内か否かを判定する(S84)。許容範囲内であれば(S84のY)、このフローチャートを終了し、許容範囲を超えていれば(S84のN)、空気圧補正を実施すると判定する空気圧制御部240は、空気圧変化を打ち消す方向に、つまり、ホイール変位制御との空気圧が制御前の空気圧と同程度になるような空気供給量又は排出量を算出し、その値に応じて制御弁246を制御する(S86)。なお、空気圧制御部240は、空気圧変化量を完全に打ち消すように空気圧を調整してもよいが、車両の走行性能が低下しない範囲内に収まるまで空気圧調整を実施してもよい。
空気圧補正制御を実施すれば、タイヤ空気圧の変化に伴う車高変化は解消できるので、この場合は車高調整を実施する必要はない。したがって、電磁アブソーバでなく通常のアブソーバを備えていてもよい。逆に、車高補正制御を実施してもタイヤ空気圧変化を解消することはできない。したがって、空気圧補正制御に必要な装置、すなわち制御弁、空気配管、および空気供給装置を備えていない場合は、ホイール変位制御によるタイヤ幅の変化量に上下限を設定しておくことが好ましい。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
実施の形態では、駆動輪に分割ホイールを装着することを述べたが、駆動輪以外の車輪にも分割ホイールを装着してもよい。
実施の形態1に係るホイールを含む車輪を示す図である。 アウターハブとインナーハブの組み合わせ図である。 アクスルの内部構成を示す平面図である。 アクスルの内部構成を示す斜視図である。 アクスルの内部構成を示す平面図である。 アクスルの内部構成を示す斜視図である。 図1で示した制御装置の機能ブロック図である。 実施例1のフローチャートである。 実施例2のフローチャートである。 実施例3のフローチャートである。 実施の形態2に係るホイールを含む車輪を示す図である。 実施の形態2に係るホイールの組み立て図である。 図11で示した制御装置の機能ブロック図である。 タイヤ接地面形状の効果を説明する表である。 実施の形態2に係るホイール変位制御のフローチャートである。 補正制御装置の機能ブロック図である。 車高変化補正制御のフローチャートである。 空気圧変化補正制御のフローチャートである。
符号の説明
10 タイヤ、 10a トレッド部、 10b ビード部、 16 内側リム体、 16a リムフランジ、 18 外側リム体、 18a リムフランジ、 20 アウターハブ、 22 インナーハブ、 28 ホイール、 30 アクスル、 32 根元部、 34 偏角部、 36 先端部、 62 モータ、 100 制御装置、 102 車速センサ、 104 操舵角センサ、 106 ペダルストロークセンサ、 108 ヨーレートセンサ、 120 変位制御部、 122 検出部、 124 判定部、 126 変位量決定部、 130 アクスル制御部、 150 ホイール、 152 タイヤ、 160 内側リム体、 162 封止部材、 164 スペーサ、 166 封止部材、 168 外側リム体、 170 直動軸、 172 直動アクチュエータ、 194 電磁アブソーバ、 200 制御装置、 202 車輪回転センサ、 204 ペダルストロークセンサ、 208 加速度センサ、 210 操舵角センサ、 220 変位制御部、 222 検出部、 224 実施判定部、 226 制御量決定部、 230 アクチュエータ制御部、 232 車高変化量推定部、 234 空気圧変化量推定部、 236 補正実施判定部、 238 車高制御部、 240 空気圧制御部、 242 空気供給装置、 246 制御弁。

Claims (18)

  1. タイヤの車両内側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する内側リム体と、
    タイヤの車両外側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する外側リム体と、
    外部からの指令に応じて作動し、前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置を変化させるアクチュエータと、
    を備えることを特徴とする車輪用ホイール。
  2. 前記内側リム体の中心軸と前記外側リム体の中心軸との軸間を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車輪用ホイール。
  3. 前記内側リム体と前記外側リム体の車輪幅方向の間隔を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車輪用ホイール。
  4. 前記外側リム体と前記内側リム体の間に同軸に配置された円筒部を有する連結部材をさらに備え、
    前記アクチュエータは前記連結部材の円筒部の円周上に複数配置され、各アクチュエータが車輪幅方向に伸縮する直動軸を有し、一部のアクチュエータの直動軸は前記内側リム体に連結され、残りのアクチュエータの直動軸は前記外側リム体に連結されることを特徴とする請求項3に記載の車輪用ホイール。
  5. タイヤの車両内側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する内側リム体と、
    タイヤの車両外側のビード部が装着される円環状のリムフランジを有する外側リム体と、
    外部からの指令に応じて作動し、前記内側リム体と前記外側リム体の相対位置を変化させるアクチュエータと、
    車両の走行状態に合わせて前記アクチュエータを制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする車輪制御装置。
  6. 前記アクチュエータは、車両の車軸に固定される第1軸と、第1軸に回転可能に連結され回転により先端を第1軸に対して変位可能な偏角部と、前記偏角部に回転可能に連結された第2軸と、から構成され、
    前記外側リム体または前記内側リム体のいずれか一方が前記第1軸に固定され、他方が前記第2軸に固定され、前記偏角部を回転させることで、前記内側リム体の中心軸と前記外側リム体の中心軸との軸間を離間せしめることを特徴とする請求項5に記載の車輪制御装置。
  7. 車両の旋回を検出する旋回検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、前記内側リム体が前記外側リム体に対して鉛直方向上方に位置するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または6に記載の車輪制御装置。
  8. 車両の旋回を検出する旋回検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、前記外側リム体が前記内側リム体に対して車両前方に位置するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または6に記載の車輪制御装置。
  9. 車両の制動状態を検出する制動検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、少なくとも左右一組の車輪について、前記外側リム体が前記内側リム体に対して車両前方に位置するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または6に記載の車輪制御装置。
  10. ステアリングホイールの保舵トルクを検出する保舵トルク検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、少なくともひとつの車輪について、車両外輪側に位置する内側リム体または外側リム体が他方のホイールに対して鉛直方向下方に位置するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または6に記載の車輪制御装置。
  11. 前記外側リム体と前記内側リム体の間に同軸に配置された円筒部を有する連結部材をさらに備え、
    前記アクチュエータは前記連結部材の円筒部の円周上に複数配置され、各アクチュエータが車輪幅方向に伸縮する直動軸を有し、一部のアクチュエータの直動軸は前記内側リム体に連結され、残りのアクチュエータの直動軸は前記外側リム体に連結され、
    前記制御手段は、前記アクチュエータの直動軸を伸縮させて、前記連結部材に対する前記内側リム体または前記外側リム体の相対位置を変化させることを特徴とする請求項5に記載の車輪制御装置。
  12. 車両の減速度を検出する減速度検出手段と、
    急制動を判定するための所定のしきい値と検出された減速度とを比較する判定手段と、をさらに備え、
    急制動と判定されたとき、前記制御手段は、前記内側リム体と前記外側リム体とのタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
  13. 車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
    急旋回を判定するための所定のしきい値と検出された操舵角とを比較する判定手段と、
    をさらに備え、
    急旋回と判定されたとき、前記制御手段は、前記内側リム体と前記外側リム体とのタイヤ幅方向の間隔を全周にわたって広げるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
  14. 車輪の回転角を検出する回転角検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、検出された回転角を参照して、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より狭い状態を維持するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
  15. 車両の回転角を検出する回転角検出手段をさらに備え、
    前記制御手段は、検出された回転角を参照して、旋回時の車両内輪側の少なくともひとつの車輪について、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より広い状態を維持するように前記アクチュエータを制御し、旋回時の車両外輪側の少なくともひとつの車輪について、車両前方のタイヤ接地幅が後方のタイヤ接地幅より狭い状態を維持するように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
  16. 前記連結部材と前記内側リム体および前記外側リム体との間に挟持される伸縮自在の封止部材をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の車輪制御装置。
  17. 車両の車高を検出する車高検出手段と、
    前記内側リム体および前記外側リム体を含む車輪と車体とを連結し、伸縮可能に構成された車高調整手段と、
    前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置変化に基づく車高変化量を推定する推定手段と、
    前記車高調整手段を制御して、前記車高変化量を打ち消す方向に車高を補正する車高補正手段と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
  18. タイヤ空気圧を検出する空気圧検出手段と、
    タイヤ空気室に連通し空気を供給または排出する空気供給手段と、
    タイヤ空気室内への空気の流出入を制御する制御弁と、
    前記内側リム体と前記外側リム体との相対位置変化に基づく空気圧変化量を推定する推定手段と、
    前記制御弁を制御して、前記空気圧変化量を打ち消す方向にタイヤ空気圧を補正する空気圧補正手段と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項5または11に記載の車輪制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101401926B1 (ko) * 2012-10-25 2014-05-30 한국타이어 주식회사 접지 특성 제어 장치가 구비된 타이어

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