JP2007069234A - 厚鋼板矯正ラインの通板監視方法及び通板監視装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 切板である厚鋼板aを,入側ピンチロールPR1,入側ガイドロールGR1,ワークロールWR,出側ガイドロールGR2及び出側ピンチロールPR2の間にそれぞれ通板させて矯正するに際し,各ロールの周速を測定して,各ロール間におけるロール同士の周速差の値をそれぞれ求め,それら各ロール間における周速差の値のうちの少なくとも2種類の値に基づいて矯正ライン1の状態を監視する。本発明によれば,矯正ライン1において矯正する厚鋼板aに加えられる伸び率を高精度に制御することが可能となる。
【選択図】 図1
Description
一方,厚鋼板を軽圧下する設備としては,特許文献3において形状矯正する技術が開示されているが,とくに0.2%程度の低圧下率では伸び率を十分に高精度に監視できていなかった。
ところで,本発明は切板である厚鋼板を対象としているが,切板とは,切る,切らないにかかわらず,圧延ままを含む厚鋼板のことであり,連続通板する薄板コイルや帯鋼と異なる1枚板を意味する。
周速差の割合(GR1−PR1)/GR1は,入側ピンチロールPR1のアンマッチを示している。一例として,矯正ライン1における厚鋼板aに加えられる伸び率を0.3%未満に制御する場合,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1についての目標値は,例えば無張力のときに0%に設定される。一般には分解能より少し大きいくらいの値が一定して検知されることが望ましい。このような値を出していれば,入側ピンチロールPR1及び入側ガイドロールGR1では高い精度で通板速度を測定していることになる。
入側ガイドロールGR1と厚鋼板aのスリップがない限り,入側ピンチロールPR1の周速≒厚鋼板aの通板速度となるはずであり,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がマイナス過大になるのは,入側ピンチロールPR1での板の圧着が十分であるならば入側ガイドロールGR1の周速<厚鋼板aの通板速度が成り立つ場合のみである。よって,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がマイナス過大となった場合は,入側ガイドロールGR1の圧着状態を再チェックすることが必要となる。入側ガイドロールGR1の圧着が不十分であると,GR庇が入る懸念もある。
また,入側ガイドロールGR1の圧着状態が良好であるにも関わらず,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がマイナス過大になるのは,入側ピンチロールPR1の周速が過多の場合である。よって,入側ガイドロールGR1の圧着状態が良好であるにも関わらず,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がマイナス過大となった場合は,入側ピンチロールPR1の周速を減少させることが必要となり,入側張力がどのように付与されているのかチェックすることが必要となる。
周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がプラス過大になるのは,入側ピンチロールPR1の周速が不足の場合である。入側ピンチロールPR1の周速が不足すると,入側ピンチロールPR1とワークロールWR間において,厚鋼板aに過大な張力が加わることが懸念される。よって,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がプラス過大となった場合は,入側ピンチロールPR1の周速を増大させることが必要となる。
なお,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がプラス過大になるのは,入側ピンチロールPR1の圧着不足の場合もある。そのため,周速差の割合(GR1−PR1)/GR1がプラス過大となった場合は,入側ピンチロールPR1の圧着状態を再チェックすることも必要となる。
周速差の割合(WR−PR1)/WRは,ワークロールWRの入側ピンチロールPR1に対するリード率を示している。入側ピンチロールPR1の周速が板速度に等しければ,この値は後進率になる。実際には入側ピンチロールPR1のブレーキ効果によって後進率より大きくなる。
通板の安定性を向上するため,通常は入側ピンチロールPR1の周速をワークロールWRの周速に対して若干遅めに設定し,後方張力を確保する。このため正常では,周速差の割合(WR−PR1)/WRは若干プラス側傾向となるはずである。周速差の割合(WR−PR1)/WRがマイナス過大の場合は,この後方張力が不足している可能性が高い。よって,周速差の割合(WR−PR1)/WRがマイナス過大となった場合は,入側ピンチロールPR1の周速を減少させることが必要となる。
周速差の割合(WR−PR1)/WRがプラス過大の場合は,後方張力が過多となる可能性が高い。よって,周速差の割合(WR−PR1)/WR周速差WR−PR1がプラス過大となった場合は,入側ピンチロールPR1の周速を増大させることが必要となる。
無駆動の出側ガイドロールGR2との周速は,ワークロールWR及び出側ピンチロールPR2の周速のみで決定されるはずである。出側ガイドロールGR2は出側板速度,入側ピンチロールPR1は入側板速度−ロールブレーキでのすべりであるので,入側ピンチロールPR1でのすべりが加算された伸び率が観測されることとなる。
周速差の割合(PR2−PR1)/PR2は,出側ピンチロールPR2のリード率を示している。出側ピンチロールPR2は出側板速度+すべり,入側ピンチロールPR1は入側板速度−すべりであるので,入側ピンチロールPR1と出側ピンチロールPR2でのすべりが加算された伸び率が観測されることとなる。
周速差の割合(WR−GR1)/WRは,入側でのワークロールWRのリード率(後進率)を示している。周速差の割合(WR−GR1)/WRについての目標値は,伸び率,荷重,張力から最適な値を計算で求めることができる。
入側ガイドロールGR1は無駆動であるため,厚鋼板aの搬送速度以上の周速にはなり得ない。これがマイナス過大となるのは,ワークロールWRの周速が小さい場合または入側ガイドロールGR1の周速が大きい場合のみであり,入側ガイドロールGR1の圧着状態が良好な場合は,入側ガイドロールGR1とワークロールWRとの間で張力不足となっていわゆる板タクレが発生する懸念がある。ただし,この周速差の割合(WR−GR1)/WRは前方張力も複雑に関与する。よって,周速差の割合(WR−GR1)/WRがマイナス過大の場合は,前方張力を確認の上でワークロールWRの周速を増大させるか,入側ピンチロールPR1のブレーキによる張力を上げることが必要となる。
周速差の割合(WR−GR1)/WRがプラス過大となった場合は,入側ガイドロールGR1のスリップが懸念されるので,圧着状況を再確認することが必要である。入側ガイドロールGR1の圧着状況が良好にも関わらず周速差の割合(WR−GR1)/WRがプラス過大となった場合は,ワ−クロ−ルWRによって厚鋼板aに加える後方張力が大き過ぎる懸念がある。よって,その場合は,ワ−クロ−ルWRの圧延荷重を減少させることが必要となる。
周速差の割合(GR2−GR1)/GR2は,厚鋼板aの伸び率を示している。周速差の割合(GR2−GR1)/GR2についての目標値は,例えば0.2%に設定される。この周速差の割合はほぼ圧下率と等しくなる。
伸び率が安定的に計測されている状態においては,目標値付近にあることが正常な状態であるべきであり,周速差の割合(GR2−GR1)/GR2がマイナス過大である場合は,伸び率を増大すべく,ワ−クロ−ルWRの圧延荷重を増やし,圧下率を増大させることが必要である。
一方,周速差の割合(GR2−GR1)/GR2がプラス過大である場合は,伸び率を減少すべく,ワ−クロ−ルWRの圧延荷重を減らし,圧下率を減少させることが必要である。
周速差の割合(GR2−WR)/GR2は,出側でのワークロールWRのリード率(先進率)を示している。周速差の割合(GR2−WR)/GR2についての目標値は(5)の後進率と同様に,伸び率,荷重,張力から最適な値を計算で求めることができる。
出側ガイドロールGR2は無駆動であるため,厚鋼板aの搬送速度以上の周速にはなり得ない。これがマイナスとなるのは,出側ガイドロールGR2の周速が小さい場合のみであり,圧延が不安定となることがあるので前方張力の付与が必要となる。目標値に対してマイナス過大となる場合で,出側ガイドロールGR2の周速が正しい場合には,ワークロールWRと出側ガイドロールGR2との間で前方張力不足となり,板タクレを発生する懸念がある。よって,周速差の割合(GR2−WR)/GR2がマイナス過大の場合は,ワークロールWRの周速を減少させることが必要となる。
なお,周速差の割合(GR2−WR)/GR2がマイナス過大になるのは,出側ガイドロールGR2の圧着不足の場合もある。そのため,出側ガイドロールGR2の圧着状態を再チェックすることも必要となる。
周速差の割合(GR2−WR)/GR2がプラス過大となった場合は,前方張力過大による先進率過大になっている可能性がある。よって,この場合は,伸び率を減少すべく,ワ−クロ−ルWRの圧延荷重を減らし,圧下率を減少させることが必要である。
周速差の割合(GR2−WR)/GR2は先進率に相当しているので,これと荷重および張力に基づいて伸び率を逆算することもできるので,逆算した伸び率に基づいてWRの圧下の調整に用いることができる。これについては(5)の後進率に相当する周速差の割合(WR−GR1)/WRについても同様なことが可能である。
周速差の割合(PR2−WR)/PR2は,出側ピンチロールPR2のワークロールWRに対するリード率を示している。
安定通板のためには,出側張力の安定確保が必要であるが,周速差の割合(PR2−WR)/PR2PR2がマイナス過大となるのは,厚鋼板aの伸び率>出側ピンチロールPR2のリード率となって,急峻な過大のびが発生した場合であり,出側ピンチロールPR2の周速が不足することにより,ワークロールWRと出側ピンチロールPR2との間で板タクレを発生する懸念がある。よって,この場合は,ワークロールWRの周速を減少させることが必要となる。
周速差の割合(PR2−WR)/PR2がプラス過大となった場合は,出側ピンチロールPR2の周速が過大であるため,ワークロールWRと出側ピンチロールPR2との間の張力過多となる懸念がある。よって,この場合は,ワ−クロ−ルWRの圧延荷重を減らし,圧下率を減少させることが必要である。
周速差の割合(PR2−GR2)/PR2は,出側ピンチロールPR1のアンマッチを示している。一例として,矯正ライン1における厚鋼板aに加えられる伸び率を0.3%未満に制御する場合,周速差の割合(PR2−GR2)/PR2についての目標値は,例えば無張力のときに0%に設定される。一般には分解能より少し大きいくらいの値が一定して検知されることが望ましい。このような値を出していれば,出側ピンチロールPR2及び出側ガイドロールGR2では高い精度で通板速度を測定していることになる。
安定通板のためには,出側張力の安定確保が必要であるが,周速差の割合(PR2−GR2)/PR2がマイナス過大となるのは,厚鋼板aの伸び率>出側ピンチロールPR2のリード率となって,急峻な過大のびが発生した場合である。よって,この場合は,ワークロールWRの周速を減少させることが必要となる。
周速差の割合(PR2−GR2)/PR2がプラス過大となった場合は,出側ガイドロールの圧着状態が十分ではない可能性が高く,出側ガイドロールGR2の圧着状態を確認することが必要である。
図1に示した圧延矯正ライン1において厚鋼板aを適正に矯正する為に,矯正の基準として,厚鋼板aの伸び率を高精度に検出し,設定した伸び率範囲内に制御することが重要である。このために,厚鋼板aの伸び率として,入側ガイドロールGR1と出側ガイドロールGR2と周速差の割合(GR2−GR1)/GR2を検出した。但し,厚鋼板aは切板であるため,鋼板の先端がガイドロ−ルGR2に到達するまでは,本伸び率デ−タは測定不能である。よって,この間は伸び率の制御も不能である。
実施例1と同様,図1に示した矯正ライン1において,厚鋼板aを圧延矯正するに際し,入側ガイドロ−ルGR1と出側ガイドロ−ル2との周速差の割合(GR2−GR1)/GR2と,ワークロールWRと出側ガイドロールGR2との周速差の割合(GR2−WR)/GR2の組合せにより,矯正圧延の状況を監視した。図3に示すように時刻t1において,圧下機構11による初期圧延荷重設定値Xを付与し,圧延を開始した。
PR1 入側ピンチロ−ル
GR1 入側ガイドロ−ル
WR ワ−クロ−ル
GR2 出側ガイドロ−ル
PR2 出側ピンチロ−ル
1 矯正ライン
10 回転駆動機構
11 圧下機構
12 周速検出機構
15 制御部
Claims (9)
- 切板である厚鋼板を,入側ピンチロール,入側ガイドロール,ワークロール,出側ガイドロール及び出側ピンチロールの間にそれぞれ通板させて矯正する矯正ラインの通板監視方法であって,
前記入側ピンチロール,入側ガイドロール,ワークロール,出側ガイドロール,出側ピンチロールの各周速を測定して,各ロール間におけるロール同士の周速差の値をそれぞれ求め,それら各ロール間における周速差の値のうちの少なくとも2種類の値に基づいて伸び率,先進率,後進率,厚鋼板と各ロールとの圧着状態等の矯正ラインの状態を監視することを特徴とする,矯正ラインの通板監視方法。 - 更に,ワークロールの圧延荷重,入側ピンチロールのトルク,出側ピンチロールのトルクの少なくともいずれか一つに基づいて伸び率,先進率,後進率,厚鋼板と各ロールとの圧着状態等の矯正ラインの状態を監視することを特徴とする,請求項1に記載の矯正ラインの通板監視方法。
- 入側ピンチロールと入側ガイドロールの周速差の値と,出側ガイドロールと出側ピンチロールの周速差の値に基づいて,入側ガイドロールと出側ガイドロールの圧着不足,入側ピンチロールと出側ピンチロールの周速の過不足および入側ピンチロールと出側ピンチロールの圧着不足を監視することを特徴とする,請求項1または2に記載の矯正ラインの通板監視方法。
- 入側ガイドロールと出側ガイドロールの周速差の値を監視することによって,厚鋼板の伸び率を監視し,厚鋼板の伸び率が足りない場合は,ワ−クロ−ルの圧延荷重を増やして圧下率を増大させ,厚鋼板の伸び率が多すぎる場合は,ワ−クロ−ルの圧延荷重を減らして圧下率を減少させることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の矯正ラインの通板監視方法。
- ワークロールと出側ガイドロールの周速差の値から先進率を求め,この先進率から伸び率を推定し,所望の伸び率となるようにワ−クロ−ルの圧延荷重または入側若しくは出側ピンチロールのトルクを制御することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の矯正ラインの通板監視方法。
- ワークロールと入側ガイドロールの周速差の値から後進率を求め,この後進率から伸び率を推定し,所望の伸び率となるようにワ−クロ−ルの圧延荷重または入側若しくは出側ピンチロールのトルクを制御することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の矯正ラインの通板監視方法。
- 入側ガイドロールの圧着不足が検出された場合は,入側ガイドロールの代わりに入側ピンチロールの周速を用い,出側ガイドロールの圧着不足が検出された場合は,出側ガイドロールの代わりに出側ピンチロールの周速を用いて,厚鋼板の伸び率を監視することを特徴とする,請求項3〜6のいずれかに記載の矯正ラインの通板監視方法。
- 切板である厚鋼板を,入側ピンチロール,入側ガイドロール,ワークロール,出側ガイドロール及び出側ピンチロールの間にそれぞれ通板させて矯正する矯正ラインの通板監視装置であって,
前記入側ピンチロール,入側ガイドロール,ワークロール,出側ガイドロール,出側ピンチロールの各周速を測定する周速検出機構と,前記入側ピンチロ−ル,ワ−クロ−ルおよび出側ピンチロ−ルを回転駆動する回転駆動機構と,前記ワ−クロ−ルに圧延荷重を付加する圧下機構と,前記周速検出機構で検出された各周速から各ロール間におけるロール同士の周速差の値をそれぞれ求め,それら各ロール間における周速差の値のうちの少なくとも2種類の値に基づいて矯正ラインの状態を監視して,前記回転駆動機構と前記圧下機構を制御する制御部を備えることを特徴とする,矯正ラインの通板監視装置。 - 更に,ワークロールの圧延荷重,入側ピンチロールのトルク,出側ピンチロールのトルクの少なくともいずれか1一つまたは2つ以上に基基づいて矯正ラインの状態を監視する装置を備えることを特徴とする,請求項8に記載の矯正ラインの通板監視装置。
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