JP2007063498A - 樹脂組成物および印刷インキ - Google Patents

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Abstract

【課題】平版印刷適性に優れ、さらに環境衛生保全上、好ましくないホルムアルデヒド類を原料として使用しない樹脂から構成され、さらに、VOCフリータイプにも適応可能な平版印刷インキの提供。
【解決手段】樹脂酸を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性樹脂酸(a)20〜80重量%、およびナフテン系炭化水素溶剤およびまたはパラフィン系炭化水素溶剤(b)20〜80重量%からなる樹脂組成物(A)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させることを特徴とする印刷インキバインダー用樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規にして有用なる平版印刷インキ用バインダー樹脂組成物の製造法に関する。さらに詳しくは、顔料分散性、印刷適性に優れた新聞印刷、枚葉印刷、ウェブ印刷等のオフセット平版印刷に好適に用いられる印刷インキを提供し得る印刷インキバインダー用樹脂組成物を用いた印刷インキならびに印刷物に関する。また、着肉性、地汚れ耐性等の水無し印刷適性に優れた水無し枚葉印刷、水無しウェブ印刷等の水無し平版印刷インキを提供し得る印刷インキバインダー用樹脂組成物を用いた印刷インキならびに印刷物に関する。
従来から平版インキ用樹脂には、ロジン変性フェノール樹脂が広く一般に使用されることが、例えば非特許文献1等に記載されている。一般的にこのロジン変性フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類を塩基性触媒下にて反応させて得たレゾール型フェノール樹脂と、ロジン類および各種多価アルコール類とを反応させて得られる。したがって、その製造工程上、未反応の、あるいは反応中にガスとして排出されるホルムアルデヒド類を処理する必要があり、また作業時の環境も必ずしも好ましいものではなく、昨今の環境衛生保全等の観点からホルムアルデヒド類を使用しない平版インキが望まれている。
一般に平版インキは、インキ用樹脂の他、石油系溶剤、植物油を主成分として形成されている。石油系溶剤においても地球環境保全、労働環境保全の観点から、脱芳香族化が行われている。さらに昨今では、より一層環境保全を配慮した、揮発性の石油系溶剤を一切含有しないVOC(揮発性有機化合物)フリータイプのインキへのニーズが高まっている。VOCとは、常温で揮発しやすい化合物のことであり、揮発性の石油系溶剤の他、上記ホルムアルデヒド類も含有される。米国環境保護庁はVOC測定方法として、110℃1時間の加熱による加熱残分測定を提示しており、実使用に即した測定方法として用いられている。
ホルムアルデヒド類を使用しない平版インキ用樹脂としては、ロジン変性アルキッド樹脂が公知であるが、非芳香族系溶剤に対しての溶解性に劣るため、それを用いて製造した平版インキは流動性や転移性において劣る等の問題点があった。ロジン変性アルキッド樹脂の溶解性を上げるべく、さらに植物油およびまたはその脂肪酸で変性したアルキッド樹脂では融点が著しく低下し、それを用いて得られた平版インキは乾燥性、ブロッキング性、ミスチング性等において劣るという問題点を有していた。また、ロジン変性アルキッド樹脂は、一般的に乳化性状においても劣り、湿し水との乳化でインキがフローダウンする等の問題点も有していた。
特許文献1においては、α,β−不飽和カルボン酸を反応させた酸変性ロジンを長鎖脂肪族アルコールでエステル化させて得られる樹脂が開示されており、樹脂融点を低下させることなく、非芳香族系溶剤への溶解性、インキ流動性等を向上させられるものの、乳化性状においては未だ不十分であるという問題点を有していた。
特許文献2、特開2001−262032号公報には非芳香族系溶剤への溶解性を向上させるべく、ロジン変性アルキッド樹脂に炭化水素樹脂を併用した印刷インキ用ワニスが開示されているが、汎用の炭化水素樹脂の量平均分子量は数百〜数千と小さいため、高速印刷時におけるミスチング性に劣るという問題点を有していた。
さらに、特許文献3においては、シクロペンタジエン系炭化水素樹脂にα,β−不飽和カルボン酸を付加し、長鎖脂肪族アルコールでエステル化させて得られる樹脂が開示されており、非芳香族系溶剤に対する溶解性および乳化特性は優れているものの、インキ中に使用される植物油への溶解性が不十分であるという問題点を有していた。
平版印刷は非画線部に湿し水を供給し、湿し水とインキ反発性を利用し画像部と非画像部を形成してなる。近年この湿し水に関わる作業、環境上の問題を解決する方法として、水なし平版印刷法が提案され、特に湿し水に代わってインキ反発性を示すことを目的として非画線部にシリコーンゴムを設けて印刷する水無し印刷方法が実用化されている。しかしながら、この水無し印刷に適用される、ホルムアルデヒド類を使用しない平版インキの提示はほとんどないというのが現状である。
特開2000−159868号公報 特開2001−262032号公報 特表00−29455号公報 色材協会誌,第63巻,271頁 1990年
本発明の目的は、上記問題を解決し、環境衛生保全上、好ましくないホルムアルデヒド類を原料として使用することなく、非芳香族系溶剤や植物油に良好な溶解性を有し、新聞印刷、枚葉印刷、ウェブ印刷、さらには水無し印刷等のオフセット平版印刷に好適に用いられ、さらに、VOCフリータイプのインキにも好適に用いられる印刷インキバインダー用樹脂組成物に関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、環境衛生上好ましくないホルムアルデヒド類、すなわちそれを用いて製造するレゾール型フェノール樹脂を原料として使用することなく、平版印刷適性、例えば顔料分散性、乳化適性、ミスチング性、乾燥性等において良好で、従来のロジン変性フェノール樹脂に匹敵する印刷適性を有するインキ用樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、樹脂酸を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性樹脂酸(a)20〜80重量%、およびナフテン系炭化水素溶剤およびまたはパラフィン系炭化水素溶剤(b)20〜80重量%からなる樹脂組成物(A)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させることを特徴とする印刷インキバインダー用樹脂組成物に関する。
更に本発明は、樹脂酸を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性樹脂酸(a)20〜80重量%、および植物油およびまたは植物油脂肪酸エステル(d)20〜80重量%からなる樹脂組成物(B)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させることを特徴とする印刷インキバインダー用樹脂組成物に関する。
更に本発明は、樹脂組成物(A)または(B)が、さらに炭化水素樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性炭化水素樹脂(e)を含有することを特徴とする上記樹脂組成物に関する。
更に本発明は、炭化水素樹脂が、下記一般式(1)
一般式(1)
Figure 2007063498

(式中、Hは水素原子、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、mおよびnは0〜6の整数で、m+n=6である。)
で示される5員環化合物を構成成分として含む炭化水素樹脂である上記樹脂組成物に関する。
更に本発明は、脂肪族アルコールが、炭素数6〜20の脂肪族アルコールである上記樹脂組成物に関する。
更に本発明は、炭素数6〜20の脂肪族アルコールが、分岐アルキル基の総炭素数が4以上である上記樹脂組成物に関する。
更に本発明は、エステル変性樹脂酸(a)およびまたはエステル変性炭化水素樹脂(e)が、さらに炭素数6以上のカルボン酸基含有化合物を反応させてなる上記樹脂組成物に関する。
更に本発明は、上記樹脂組成物を含有することを特徴とする印刷インキに関する。
更に本発明は、水無し印刷に用いられることを特徴とする上記印刷インキに関する。
更に本発明は、基材上に上記印刷インキを印刷してなる印刷物に関する。
本発明に係る、上記樹脂組成物(A)または樹脂組成物(B)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させてなることを特徴とする印刷インキ用バインダー樹脂組成物を用いて調整された印刷インキは、非芳香族系溶剤および植物油を用いて調製された印刷インキ、さらには揮発性溶剤を含有せず植物油成分からなる印刷インキとして優れた印刷適性を提供することができる。また、樹脂構成成分として、フェノール樹脂を使用しないため、該樹脂を製造するに当たって必要とされるホルムアルデヒド類を使用することがないため、労働衛生環境の保全、ホルムアルデヒド含有液の処理コストの低減等を図ることが可能となる。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明における樹脂酸とは、天然樹脂中に含有される遊離またはエステルとして存在する有機酸であれば特に限定されるものではない。例として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸、アガテンジカルボン酸、ダンマロール酸、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸等が挙げられる。これらの樹脂酸を含有する天然樹脂の形態で使用することが取り扱い上好ましく、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、コーパル、ダンマル等が挙げられる。
本発明で用いられる炭化水素樹脂とは、炭化水素を主単位成分として構成される樹脂であれば特に限定されるものではなく、特に好ましくは、下記一般式(1)
一般式(1)
Figure 2007063498

(式中、Hは水素原子、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、mおよびnは0〜6の整数で、m+n=6である。)
で示される5員環化合物を構成成分として含む炭化水素樹脂である。該炭化水素樹脂は、常法に従ってシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、これらの二〜五量体、共多量体等のごときシクロペンタジエン系単量体単独、またはシクロペンタジエン系単量体と共重合可能な共単量体との混合物を、触媒の存在下あるいは無触媒で熱重合して得られるものである。触媒としてはフリーデルクラフト型のルーイス酸触媒、例えば三フッ化ホウ素およびそのフェノール、エーテル、酢酸等との錯体が通常使用される。本発明の炭化水素樹脂におけるシクロペンタジエン系単量体と、それと共重合可能な共単量体との共重合比は、少なくともシクロペンタジエン系単量体が5モル%以上であることが必要である。
使用される共単量体の例としては、エチレン、プロピレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソブチレンを酸触媒で二量化して得られるジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1と2,4,4−トリメチルペンテン−2との混合物)、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−オクテン、2−オクテン、4−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜10のオレフィン類、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン類、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のビニル芳香族類、インデン、メチルインデン、クマロン(ベンゾフラン)、メチルクマロン(2−メチルベンゾフラン)等の芳香族不飽和化合物類等があげられる。
この様な炭化水素樹脂としては、日本石油化学(株)社製のネオレジンEP−110、ネオレジンEP−140、ネオレジン540、ネオレジン560、丸善石油化学(株)社製のマルカレッツM100A、マルカレッツM600A、マルカレッツM890A、マルカレッツM825A、マルカレッツM845A、マルカレッツM905A、マルカレッツM925A、マルカレッツM510A、マルカレッツM525A、マルカレッツM545A、日本ゼオン(株)社製のクイントン1325、クイントン1345、東邦化学工業(株)社製のトーホーハイレジンPA−140、COPOREX2100等の市販の炭化水素樹脂を例示することができる。
本発明のエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)を得るために用いられる不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、2,4−ヘキサジエノン酸(ソルビック酸)等が例示できる。これら不飽和カルボン酸またはその酸無水物の変性量としては、樹脂酸または炭化水素樹脂100g当たり好ましくは0.01〜0.5モル、特に好ましくは0.02〜0.2モルである。変性温度は、150℃〜250℃の範囲が好適に用いられる。これら不飽和カルボン酸およびまたはその酸無水物の残存がないように変性量および変性温度を調整することが望ましい。これら不飽和カルボン酸およびまたはその酸無水物は、単独または任意の量比で複数を組み合わせて用いることが可能である。
本発明で用いられる脂肪族アルコールは特に限定されるものではなく、直鎖状、分岐状、環状、飽和、不飽和の1価、2価または3価以上の多価アルキルアルコールが挙げられる。
飽和アルキル基を有する1価アルコールとしては、直鎖状アルキル1価アルコールである1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール等を例示することができる。また分岐状アルキル1価アルコールである2−プロピル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、イソノニルアルコール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、2,4−ジメチル−1−ヘプタノール、2−ヘプチルウンデカノール等を例示することができる。また環状アルキル1価アルコールであるシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロペンタンメチロール、ジシクロヘキシルメタノール、トリシクロデカンモノメチロール、ノルボネオール、水添加ロジンアルコール(商品名:アビトール、ハーキュレス(株)社製)等を例示することができる。
また、不飽和アルキル基を有する1価アルコールとしては、不飽和二重結合を分子内に1つ有するアルケン基、不飽和二重結合を分子内に2つ有するアルカジエン基、不飽和二重結合を分子内に3つ有するアルカトリエン基、さらに不飽和二重結合を分子内に4つ以上有するアルカポリエン基を有する1価アルコールがあり、オレイルアルコール、11−ヘキサデセン−1−オール、7−テトラデセン−1−オール、9−テトラデセン−1−オール、11−テトラデセン−1−オール、7−ドデセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、9−デセン−1−オール、シトロネロール、3−ノネン−1−オール、1−オクテン−3−オール、1−ヘキセン−3−オール、2−ヘキセン−1−オール、3−ヘキセン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、ドデカジエン−1−オール、2,4−ジメチル−2,6−ヘプタジエン−1−オール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オール、1,6−ヘプタジエン−4−オール、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール、1,5−ヘキサジエン−3−オール、フィトール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、4−メチル−3−ペンテン−1−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、6−メチル−5−ペンテン−2−オール、ゲラニオール、ロジノール、リナノール、α−テレピネオール等の直鎖状、分岐状または環状の不飽和アルキル1価アルコールを例示することができる。
2価アルコールとしては、直鎖状アルキレン2価アルコールである1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール等が、分岐状アルキレン2価アルコールである2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ジメチルペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等が、環状アルキレン2価アルコールである1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール等を例示することができる。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロ−ルプロパン、ジペンタエリスリト−ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状および環状多価アルコールが例示される。
脂肪族アルコールは、炭素数6〜20のアルコールが好ましい。炭素数が6未満では生成する樹脂の非芳香族系溶剤や植物油への溶解性が劣り易く、20を超えると生成する樹脂の融点が低くなり易く好ましくない。また、アルキル基は分岐状が好ましく、特に分岐アルキル基の総炭素数が4以上であることが好ましい。ここで分岐アルキル基とは、1級炭素を末端とするアルキル基を示し、1価アルコールではすべてのアルキル基であり、2価以上のアルコールでは水酸基を両末端とする主鎖以外のアルキル基である。アルコール中に2個以上の分岐アルキル基が存在するときにはすべての分岐アルキル基の炭素数の合計を分岐アルキル基の総炭素数とする。該長鎖脂肪族アルコールは、単独あるいは任意の量比で複数を組み合わせて用いることが可能であるが、所望するエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)の分子量に応じて用いるアルコールの価数を選択することが望ましい。
本発明のエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)は、必要に応じてカルボン酸基含有化合物を反応させて得ることも可能である。カルボン酸基含有化合物としては、特に限定されるものではなく、例として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、クロトン酸、イソクロトン酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ウンデシレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレン酸、ゴンドウ酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ニシン酸等のモノカルボン酸化合物、およびシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、3、3−ジメチルグルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、アルケニル(炭素数4〜28)置換コハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物およびこれらの無水物等が挙げられる。さらに、天然油脂の脂肪酸、例えば、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、(脱水)ヒマシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、米ヌカ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、菜種油脂肪酸等、および該脂肪酸のダイマー酸、例えば、桐油ダイマー脂肪酸、アマニ油ダイマー脂肪酸等を用いることもできる。上記カルボン酸化合物は単独あるいは任意の量比で複数を組み合わせて用いることが可能であるが、生成するエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)の非芳香族系溶剤、植物油への溶解性を考慮すると炭素数6以上のカルボン酸化合物が好ましい。
本発明のエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)は、樹脂酸または炭化水素樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物で変性し、次いで脂肪族アルコールによりエステル変性することにより得られる。上記のように必要に応じてカルボン酸化合物をエステル反応に供しても差し支えない。このとき、水酸基の総モル数1に対して、カルボン酸基の総モル数が0.5〜3の範囲が反応制御上好ましい。
また、エステル変性反応は、常法に従って行うことができる。通常150℃から300℃の範囲で行われるが、使用する化合物の沸点および反応性を考慮して決定することができる。また、これらの反応においては、必要に応じて触媒を用いることが可能である。触媒としてはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、硫酸、塩酸等の鉱酸、トリフルオロメチル硫酸、トリフルオロメチル酢酸等が例示できる。さらに、テトラブチルジルコネート、テトライソブチルチタネート等の金属錯体、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の金属塩触媒等も使用可能である。これら触媒は、全樹脂中0.01〜5重量%の範囲で通常使用される。触媒使用による樹脂の着色を抑制するために、次亜リン酸、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィン等を併用することもある。
上記反応により得られるエステル変性樹脂酸(a)およびエステル変性炭化水素樹脂(e)は、重量平均分子量10000〜300000、酸価40以下、融点100℃以上が好ましい。上記範囲以外では、インキにした際の乾燥性、乳化適性、地汚れ耐性等が不十分になりやすく好ましくない。
ナフテン系炭化水素溶剤およびまたはパラフィン系炭化水素溶剤(b)としては、いわゆるアロマレス(フリー)溶剤といわれる溶剤であり、商業的には、日本石油(株)製AFソルベント4〜7、O号ソルベントH等、出光興産(株)のスーパーゾルLA35、LA38等、エクソン化学(株)のエクソールD80、D110、D120、D130、D160、D100K、D120K、D130K等、梨樹化学社製D−SOL280、D−SOL300、マギーブラザーズ社製のMagieSol−40、44、47、52、60等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。実際の使用に当たっては、これらを任意の重量比で混合して用いることが可能である。さらに該炭化水素溶剤について詳しく述べると、該炭化水素溶剤を印刷インキとして用いるに当たって特に好ましいものは、そのアニリン点が60℃〜110℃の範囲にあるものである。もし、アニリン点が110℃より高い場合は、本発明の炭化水素樹脂との溶解性に乏しく、結果として印刷インキの流動性が不十分となり、印刷機上でのインキ転移が劣り転移不良を生じたり、印刷後の被印刷体上でのレベリングが不十分となり光沢不良の原因となる。一方、アニリン点が60℃より低い場合、印刷後のインキ被膜からの溶剤離脱性が悪くなり乾燥不良を生じ、ブロッキング、裏写り等の原因となる。
植物油としては、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリライドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリライドである。例として、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が挙げられる。本発明において、さらに好適な植物油を挙げるとすれば、そのヨウ素価が少なくとも100以上である植物油が好ましく、さらにヨウ素価が120以上の植物油がより好ましい。ヨウ素価を120以上とすることで、インキ皮膜の酸化重合による乾燥性を高めることができ、特に熱風乾燥機を用いない枚葉印刷方式には有効である。
さらに、本発明においては、天ぷら油等の食用に供された、回収、再生された再生植物油も用いることができる。再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を100以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましい。含水率を0.3重量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を100以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸価重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
脂肪酸エステルとしては、植物油脂肪酸と1価アルキルアルコールとのエステル化合物を用いることができる。例として、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、水添大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸等の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールとのエステル化合物が挙げられる。
本発明に用いられるエステル変性樹脂酸(a)は樹脂組成物(A)または樹脂組成物(B)の総量に対して20〜80重量%であることが望ましい。20重量%未満では、樹脂組成物として粘度が低下しすぎて必要な粘弾性が得られず、反対に80重量%を超えると粘度が高くなりすぎ流動性を失い印刷インキとして相応しくない。
また、本発明に用いられるナフテン系炭化水素溶剤およびまたはパラフィン系炭化水素溶剤(b)は樹脂組成物(A)の総量に対して20〜80重量%であることが好ましい。同様に、植物油およびまたは植物油脂肪酸エステル(d)は樹脂組成物(B)の総量に対して20〜80重量%であることが好ましい。20重量%未満では、樹脂組成物として粘度が高くなりすぎ流動性を失い、反対に80重量%を超えると粘度が低下しすぎて必要な粘弾性が得られず印刷インキとして相応しくない。
本発明の樹脂組成物は、上記樹脂組成物(A)、または樹脂組成物(B)に分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(c)を反応させてなるものである。
上記樹脂組成物(A)、または樹脂組成物(B)に分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(c)を反応させることにより、容易に高分子量化が可能となる。また、ウレタン結合により樹脂の凝集力が向上し、本樹脂組成物を含有するインキは適度な粘弾性を発現するものである。また、さらにエステル変性炭化水素樹脂(B)を併用することにより、より適度な粘弾性が得られるものである。
本発明で用いられる分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(c)は、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、芳香族、脂肪族、芳香脂肪族、脂環族の2価または3価以上の多価イソシアネートが挙げられる。
芳香族多価イソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族多価イソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族多価イソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族多価イソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また一部上記多価イソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体及びこれらの変性物等も使用することができる。またポリフェニルメタンポリイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等も使用できる。またポリオールとジイソシアネートの反応物も多価イソシアネートとして使用することができ、上記イソシアネートは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)は、樹脂組成物(A)および樹脂組成物(B)の総量に対して0.1〜30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では凝集力付与の効果が不充分であり、30重量%を超えるとゲル化しやすくなり好ましくない。
樹脂組成物(A)および樹脂組成物(B)と、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)との反応は、樹脂組成物とイソシアネートが架橋反応することができる条件であれば特に限定されるものではないが、通常80〜180℃で加熱混合することにより容易に行われ、必要に応じて公知の触媒が使用できる。例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としてはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記触媒は単独で使用してもよく、また併用しても構わない。ジブチル錫ジラウレート、2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。通常、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)に対して0.01〜2重量%使用される。
樹脂組成物(A)または(B)は、さらに炭化水素樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性炭化水素樹脂(e)を含有することができる。エステル変性炭化水素樹脂(e)はエステル変性樹脂酸(a)100重量部に対して、0〜200重量部であることが好ましい。エステル変性炭化水素樹脂(a)が上記範囲内にある場合は、下記印刷インキとして適度な粘弾性を発現しそれぞれの樹脂の特性を利点とすることができるが、200重量部を越えると下記印刷インキとして使用する際には流動性が低下しやすく好ましくない。
次に、本発明における印刷インキとしての使用形態について説明する。本発明における印刷インキは、通常平版印刷インキ、例えば枚葉インキ、ヒートセット輪転インキ等の形態において使用される。一般的には、
顔料 5〜30重量%
樹脂 10〜40重量%
炭化水素溶剤 0〜60重量%
植物油 0〜70重量%
乾燥促進剤 0〜 5重量%
その他添加剤 0〜10重量%
からなる組成にて使用される。VOCフリータイプのインキとして使用する際には、上記組成において、炭化水素溶剤を0重量%とする。この際、必要に応じて脂肪酸モノエステル化合物を0〜60重量%含有しても差し支えない。
本発明の樹脂組成物(A)または樹脂組成物(B)は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させた後に、更にゲル弾性を付与するため、必要に応じてゲル化剤を添加したゲルワニスとして使用することが可能である。ゲル化剤としては、一般的には金属錯体が用いられるが、代表的な化合物としてアルミニウム錯体化合物を挙げることができる。その様なアルミニウム錯体化合物としては、環状アルミニウム化合物類、例えば環状アルミニウムオキサイドオクテート(川研ファインケミカル:アルゴマー800A)、環状アルミニウムオキサイドステアレート(川研ファインケミカル:アルゴマー1000S)等、アルミニウムアルコラート類、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート(川研ファインケミカル:AIPD)、アルミニウム−sec−ブチレート(川研ファインケミカル:ASPD)、アルミニウムイソプロピレート−モノ−sec−ブチレート(川研ファインケミカル:AMD)等、アルミニウムアルキルアセテート類、例えばアルミニウム−ジ−n−ブトキサイド−エチルアセトアセテート(ホープ製薬:Chelope−A1−EB2)、アルミニウム−ジ−n−ブトキサイド−メチルアセトアセテート(ホープ製薬:Chelope−A1−MB2)、アルミニウム−ジ−iso−ブトキサイド−メチルアセトアセテート(ホープ製薬:Chelope−A1−MB12)、アルミニウム−ジ−iso−ブトキサイド−エチルアセトアセテート(ホープ製薬:Chelope−A1−EB102)、アルミニウム−ジ−iso−プロポキサイド−エチルアセトアセテート(ホープ製薬:Chelope−A1−EP12、川研ファインケミカル:ALCH)、アルミニウム−トリス(エチルアセトアセテート)(川研ファインケミカル:ALCH−TR)、アルミニウム−トリス(アセチルアセトナート)(川研ファインケミカル:アルミキレート−A)、アルミニウム−ビス(エチルアセトアセテート)−モノアセチルアセトナート(川研ファインケミカル:アルミキレートD)等、アルミニウム石鹸、例えばアルミニウムステアレート(日本油脂(株)製)、アルミニウムオレエート、アルミニウムナフテネート、アルミニウムラウレート等、およびアルミニウムアセチルアセトネート等を例示することができる。これらのゲル化剤は、ワニス100重量部に対し、0.1重量%から10重量%の範囲で通常使用される。
また、その他のゲル化剤として、油脂類をゲル化せしめる性質を有する環状ジペプチド類、例えば特開平7−247473、特開平7−247474および特開平7−247475に記載の環状ジペプチド類、有機液体をゲル化せしめる性質を有するビスアミド類、例えば特開平5−320617に記載のエチレンビス(12−ヒドロキシオクタデカン酸)アマイド等のビスアミド類、特開平1−164432記載の層構造を有する粉末状のアルミニウム−マグネシウム化合物、例えばAl−Mg−ヒドロキシカプリレート、Al−Mg−ヒドロキシミリステート、Al−Mg−ヒドロキシパルミテート、Al−Mg−ヒドロキシステアレート、Al−Mg−ヒドロキシベヘネート等を適宜使用することが可能である。
次に、顔料としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が、有機顔料としては、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料および複素環式顔料等の公知公用の各種顔料が使用可能である。
乾燥促進剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、セカノイック酸、トール油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ジメチルヘキサノイック酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイック酸、ジメチルオクタノイック酸等の有機カルボン酸の金属塩、たとえばカルシウム、コバルト、鉛、鉄、マンガン、亜鉛、ジルコニウム塩等の公知公用の化合物が使用可能であり、印刷インキ表面および内部硬化を促進するために、これらの複数を適宜併用して使用することもできる。
また、特開平4−334393号に記載の1,10−フェナントロリン、多価金属およびカルボン酸とで形成される金属錯体、例えば酢酸マンガンと1,10−フェナントロリンとの反応で得られるマンガン/酢酸/1,10−フェナントロリン複合錯体、オクチル酸マンガンと1,10−フェナントロリンとの反応で得られるマンガン/オクチル酸/1,10−フェナントロリン複合錯体、ナフテン酸マンガンと1,10−フェナントロリンとの反応で得られるマンガン/ナフテン酸/1,10−フェナントロリン複合錯体、トール油マンガンと1,10−フェナントロリンとの反応で得られるマンガン/トール油酸/1,10−フェナントロリン複合錯体、ナフテン酸鉄と1,10−フェナントロリンとの反応で得られる鉄/ナフテン酸/1,10−フェナントロリン複合錯体、ネオデカン酸コバルトと1,10−フェナントロリンとの反応で得られるコバルト/ネオデカン酸/1,10−フェナントロリン複合錯体等の、当該文献における実施例1ないし実施例6記載の化合物等が使用可能である。さらに、これらドライヤーを本発明で使用の溶剤に非溶解性の物質でカプセル化し用いることも可能である。
さらに、該印刷インキには、必要に応じてその他の添加剤を使用することが可能である。例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、木ロウ、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックスを例示することができる。また皮張り防止剤としては、クレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール等フェノール類および、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等オキシム類等を挙げることができる。
平版印刷インキは、常温から100℃の間で、顔料、ワニスおよびまたはそのゲルワニス等の印刷インキ成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー等の練肉、混合、調整機を用いて製造される。
[実施例]
次に具体例をもって、本発明を詳細に説明する。尚、例中「部」とは重量部を示す。
樹脂の白濁温度は、樹脂2gと炭化水素溶剤18gとを試験管に入れ、ノボコントロール(Novocontrol)社製全自動濁点測定装置ケモトロニック(Chemotoronic)にて測定した。また、インキのタックは東洋精機(株)製インコメーターにてロール温度30℃、400rpm、1分後の値を測定した。
(エステル変性樹脂酸製造例1)
セパラブル4口フラスコに温度制御用レギュレーター、冷却管、撹拌装置を取り付けて、重合ロジン(ハリマ化成(株)製、2量体60%含有)500部、無水マレイン酸30部を仕込み、窒素気流下180℃で3時間反応させた。次いで、1,1,1−トリメチロールオクタン140部を添加し、水を分離除去しながら240℃で10時間反応させ、酸価が25、白濁温度が59℃(日本石油(株)アロマフリーソルベント7号:AF7)、融点が145℃、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)におけるポリスチレン換算重量平均分子量(以下Mw)が4.5万のエステル変性樹脂酸(A1)を得た。
(エステル変性樹脂酸製造例2)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、重合ロジン500部、無水マレイン酸30部を仕込み、窒素気流下180℃で3時間反応させた。次いで、1,9−ノナンジオール82.5部、1,1,1−トリメチロールプロパン46.1部を添加し、水を分離除去しながら240℃で10時間反応させ、酸価が20、白濁温度が72℃(AF7)、融点が161℃、Mwが5.5万のエステル変性樹脂酸(A2)を得た。
(エステル変性樹脂酸製造例3)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、重合ロジン500部、無水マレイン酸30部を仕込み、窒素気流下180℃で3時間反応させた。次いで、1,3−ブタンジオール92.8部を添加し、水を分離除去しながら240℃で10時間反応させ、酸価が22、白濁温度が102℃(AF7)、融点が162℃、Mwが5.1万のエステル変性樹脂酸(A3)を得た。
(エステル変性樹脂酸製造例4)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、重合ロジン500部、無水マレイン酸30部を仕込み、窒素気流下180℃で3時間反応させた。次いで、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール127部、ペンタエリスリトール6部、ドデセニル無水コハク酸11.2部を添加し、水を分離除去しながら240℃で10時間反応させ、酸価が20、白濁温度が62℃(AF7)、融点が165℃、Mwが6万のエステル変性樹脂酸(A4)を得た。
(エステル変性炭化水素樹脂製造例1)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、クイントン1325(日本ゼオン(株)製ジシクロペンタジエン系樹脂)500部、無水マレイン酸30部を仕込み、窒素気流下180℃で3時間反応させた。次いで、2,2−ブチルエチルプロパンジオール37.8部、1,1,1−トリメチロールプロパン9部を添加し、水を分離除去しながら240℃で10時間反応させ、酸価が19、白濁温度が60℃(AF7)、融点が167℃、Mwが6.5万のエステル変性樹脂酸(A5)を得た。
(ワニス製造例1)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、エステル変性樹脂酸製造例1で得られたエステル変性樹脂酸(A1)45部、アマニ油52.8部を仕込み、窒素気流下で190℃で1時間加熱反応させた後、120℃まで冷却し、タケネート700(三井武田ケミカル(株)製ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI))2部およびフォーメートK(三井武田ケミカル(株)製錫系触媒)0.2部を添加し、窒素気流下で0.5時間反応させワニス(B1)を得た。
(ワニス製造例2)
エステル変性樹脂酸製造例1と同様の装置に、エステル変性樹脂酸製造例1で得られたエステル変性樹脂酸(A1)45部、アマニ油52.8部を仕込み、窒素気流下で190℃で1時間加熱反応させた後、120℃まで冷却し、D−165N(三井武田ケミカル(株)製ビュレット変性ヘキサメチレンジイソシアネート(ビュレット変性HDI))2部およびフォーメートK(三井武田ケミカル(株)製錫系触媒)0.2部を添加し、窒素気流下で0.5時間反応させワニス(B2)を得た。
(ワニス製造例3〜24)
表1および表2に示した比率にてエステル変性炭化水素樹脂製造例1〜4で得られたエステル変性樹脂酸(A1〜A4)およびエステル変性炭化水素樹脂製造例1で得られたエステル変性炭化水素樹脂(A5)をワニス製造例1および2と同様に反応させ、ワニス(B3〜24)を得た。
Figure 2007063498
Figure 2007063498
実施例1
東洋インキ製造(株)製藍リオノールブルーFG7330を20部、ワニス製造例1で得られたワニス(B1)72部、アマニユ脂肪酸ブチル7部、ナフテン酸マンガン1部を常法に従い3本ロールミルを用いて練肉し、粘度65〜75Pa・sに調整した枚葉印刷インキを作成した。
実施例2〜7、比較例1〜5
表3に示した配合比率にて、実施例1と同様に練肉を行い、粘度65〜75Pa・sに調整した枚葉印刷インキを作成した。実施例1、2、7および比較例2、4、5のインキは110℃1時間での加熱揮発分は1%以下であった。
Figure 2007063498
実施例8
東洋インキ製造(株)製藍リオノールブルーFG7330を20部、ワニス製造例13で得られたワニス(B13)70部、アマニユ脂肪酸ブチル9部、ナフテン酸マンガン1部を常法に従い3本ロールミルを用いて練肉し、粘度85〜95Pa・sに調整した水無し枚葉印刷インキを作成した。
実施例9〜14、比較例6〜10
表4に示した配合比率にて、実施例8と同様に練肉を行い、粘度85〜95Pa・sに調整した水無し枚葉印刷インキを作成した。実施例13、14、19および比較例7、9、10のインキは110℃1時間での加熱揮発分は1%以下であった。
Figure 2007063498
枚葉印刷試験評価
実施例1〜7および比較例1〜5のインキを、三菱ダイヤI−4枚葉印刷機(三菱重工(株)製)にて10,000枚/時で用紙をSKコート 4/6 90kg(山陽国策(株)製)、湿し水をアクワマジックSR2%(東洋インキ製造(製)として各インキ5千枚の印刷試験を行い、印刷物のベタ着肉状態、ブロッキング、光沢およびセット時間を比較した。結果を表5に示した。
ブロッキングの評価方法は、印刷試験にて5000枚を棒積みして室温で24時間放置した後、3000枚目の印刷面を目視で判定した。判定基準としては印刷物同士の接着がない場合が良好である。
セットの評価方法は、自動インキセット試験機(豊栄精機(株)製)を用いて、ロール圧1MPaで、印刷面に白紙(上質紙)を重ね、白紙にインキが付着しなくなる迄に要した時間(分)を測定した。
光沢の評価方法は、光沢計グロスメーターモデルGM−26((株)村上色彩技術研究所製)にて60°光沢を測定した。
Figure 2007063498
水無し枚葉印刷試験評価
実施例8〜14および比較例6〜10のインキを、三菱ダイヤI−4枚葉印刷機(三菱重工(株)製)にて10,000枚/時で用紙をSKコート 4/6 90kg(山陽国策(株)製)として各インキ5千枚の印刷試験を行い、印刷物のベタ着肉状態、地汚れ、光沢およびセット時間を比較した。結果を表6に示した。
Figure 2007063498


本発明に係わる、印刷インキは着肉性、ブロッキング、セット性等の平版印刷適性に優れており、該インキを使用して光沢・網点再現性に優れた印刷物を得ることが出来る。また、含有される樹脂の構成成分として、フェノール樹脂を使用しないため、該樹脂を製造するに当たって必要とされルムアルデヒド類を使用することがないため、労働衛生環境の保全、ホルムアルデヒド含有液の処理コストの低減等を図ることが可能となる。

Claims (10)

  1. 樹脂酸を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性樹脂酸(a)20〜80重量%、およびナフテン系炭化水素溶剤およびまたはパラフィン系炭化水素溶剤(b)20〜80重量%からなる樹脂組成物(A)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させることを特徴とする印刷インキバインダー用樹脂組成物。
  2. 樹脂酸を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性樹脂酸(a)20〜80重量%、および植物油およびまたは植物油脂肪酸エステル(d)20〜80重量%からなる樹脂組成物(B)に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物(c)を反応させることを特徴とする印刷インキバインダー用樹脂組成物。
  3. 樹脂組成物(A)または(B)が、さらに炭化水素樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物および脂肪族アルコールにより変性したエステル変性炭化水素樹脂(e)を含有することを特徴とする請求項1または2いずれか記載の樹脂組成物。
  4. 炭化水素樹脂が、下記一般式(1)
    一般式(1)
    Figure 2007063498

    (式中、Hは水素原子、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、mおよびnは0〜6の整数で、m+n=6である。)
    で示される5員環化合物を構成成分として含む炭化水素樹脂である請求項3記載の樹脂組成物。
  5. 脂肪族アルコールが、炭素数6〜20の脂肪族アルコールである請求項1ないし4いずれか記載の樹脂組成物。
  6. 炭素数6〜20の脂肪族アルコールが、分岐アルキル基の総炭素数が4以上である請求項5記載の樹脂組成物。
  7. エステル変性樹脂酸(a)およびまたはエステル変性炭化水素樹脂(e)が、さらに炭素数6以上のカルボン酸基含有化合物を反応させてなる請求項1ないし6いずれか記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7いずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする印刷インキ。
  9. 水無し印刷に用いられることを特徴とする請求項8記載の印刷インキ。
  10. 基材上に請求項8または9いずれか記載の印刷インキを印刷してなる印刷物。

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JP2008255129A (ja) * 2007-03-30 2008-10-23 Toyo Ink Mfg Co Ltd 平版インキ印刷方法、インキセットならびに印刷物

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