JP2007062221A - 錯化合物及びこれを用いた光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 400nm付近の記録再生光での使用が可能であり、しかも、優れた耐光性を有する光記録媒体を提供すること。
【解決手段】 光記録媒体10は、一対の基板2,8間に記録層4が設けられた構成を有し、基板2と記録層4との間には反射層3が形成され、基板8と記録層4との間には、誘電体層6が形成されている。この記録層4は、金属と色素化合物とからなる錯化合物を含有している。色素化合物は、金属に配位可能であり、モノメチン鎖の一端に炭素環又は複素環が結合され、他端にはイミノ基を介してベンゼン環が結合された構造を有している。
【選択図】 図1
【解決手段】 光記録媒体10は、一対の基板2,8間に記録層4が設けられた構成を有し、基板2と記録層4との間には反射層3が形成され、基板8と記録層4との間には、誘電体層6が形成されている。この記録層4は、金属と色素化合物とからなる錯化合物を含有している。色素化合物は、金属に配位可能であり、モノメチン鎖の一端に炭素環又は複素環が結合され、他端にはイミノ基を介してベンゼン環が結合された構造を有している。
【選択図】 図1
Description
本発明は、錯化合物及びこれを用いた光記録媒体に関する。
光記録媒体は、記録層にレーザー等を照射し、記録層の形状変化、磁区変化、相変化等により情報を記録するものである。このような光記録媒体としては、基板上に色素材料を含む記録層が形成された円盤状の光記録媒体が知られている。色素材料を含む記録層を備える光記録媒体は、高感度の記録を行うことが可能であり、CD−RやDVD±Rとして広く普及している。
近年では、更なる高密度記録を実現するために、記録再生光の短波長化が試みられており、具体的には、400nm付近の波長を有する青色半導体レーザー光の使用が検討されている。しかしながら、従来のCDやDVDに用いられてきた色素材料は、上記の波長域の光では情報の記録に必要な屈折率変化を生じ得ないため、そのままでは適用が困難である。そこで、上記の波長域の記録再生光に適した色素材料として、下記特許文献1〜3に示すような材料が開発されている。
特許3636907号公報
特開2001−071639号公報
特開2003−103935号公報
しかしながら、上記従来技術に開示されたような、記録再生光の短波長化に対応した色素材料は、長時間光に晒されると分解等を生じ易く、光による特性低下が大きいものであった。つまり、上記従来の色素材料は、耐光性が低かった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、400nm付近の記録再生光で用いる光記録媒体の記録層に適用でき、しかも、優れた耐光性が得られる記録材料を形成できる錯化合物、及び、これを用いた光記録媒体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意研究を行った結果、色素化合物として金属との配位が可能な特定構造を有する化合物を用い、これを特定の金属と組み合わせることで、従来に比して優れた耐光性が得られるようになることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の錯化合物は、金属と、この金属に配位可能な色素化合物とからなり、色素化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
[式中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R15は、置換基を有していてもよい炭素環又は置換基を有していてもよい複素環を構成する原子群を示す。]
また、本発明の光記録媒体は、一対の基板と、この一対の基板間に設けられた記録層とを備え、記録層は、金属と、この金属に配位可能な下記一般式(1)で表される色素化合物とからなる錯化合物を含むことを特徴とする。
[式中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R15は、置換基を有していてもよい炭素環又は置換基を有していてもよい複素環を構成する原子群を示す。]
上記本発明の錯化合物は、色素化合物が有しているイミノ基及びカルボニル基が、金属との相互作用を生じることで形成されている。つまり、色素化合物は、錯化合物において2座配位子となっており、この錯化合物は、いわゆるキレート構造を有することとなる。このような錯化合物は、長時間光を照射された場合であっても分解等を生じ難いものである。このため、この錯化合物を含む記録層を備える本発明の光記録媒体は、優れた耐光性を発揮し得るようになる。
上記の要因は必ずしも明らかではないものの、以下のように推測される。すなわち、色素化合物に対して光が照射されると、この色素化合物が励起され、分子内に励起に基づくエネルギーが発生する。通常、色素化合物は、分子内でこのエネルギーを緩和することが困難であるため、長時間の光の照射がなされると、分子内に蓄積したエネルギーによって分解することとなる。これに対し、上述した錯化合物は、色素化合物が金属に配位して、上記のキレート構造を形成している。そして、金属は、多様なエネルギー状態を取り得るものであるため、光の照射により色素化合物にエネルギーが発生しても、このエネルギーは配位している金属によって十分に緩和され得る。その結果、本発明における錯化合物は、従来の色素化合物単体に比して、優れた耐光性を発揮し得るものと考えられる。
また、上記錯化合物に用いる金属は、2価以上の金属であると好ましい。こうすれば、容易にキレート構造が形成されるようになり、錯化合物による優れた耐光性が得られ易くなる。
本発明によれば、400nm付近の記録再生光で用いる光記録媒体の記録層に適用でき、しかも、優れた耐光性が得られる記録材料を形成できる錯化合物、及び、これを用いた光記録媒体を提供することが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、好適な実施形態に係る光記録媒体の断面構造を模式的に示す図である。図1に示す光記録媒体10は、一対の基板2,8間に記録層4が設けられた構成を有している。また、基板2と記録層4との間には反射層3が、基板8と記録層4との間には誘電体層6がそれぞれ更に設けられている。さらに、基板2における記録層4と対向している面には、溝状のグルーブ12が形成されている。かかる構造の光記録媒体10は、基板8側から記録層4に記録又は再生光が照射されることによって、記録層4への情報の記録又は記録層4からの情報の読み出しが行われる。以下、まず、光記録媒体10の各構成について説明する。
基板2は、直径が64〜200mm程度、厚さが0.3〜1.6mm程度のディスク状の形状を有するものである。この基板2の記録層4側の面には、上述の如く溝状のグルーブ12が形成されており、グルーブ12が形成されていない部分がランド14となっている。グルーブ12は、基板2を平面視してスパイラル状に形成されている。
基板2としては、必ずしも透明の材料から構成される必要はなく、樹脂、ガラス、セラミックス等からなるものを適用できる。特に、基板2としては、樹脂からなるものが好ましく、樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂などが好ましい。
グルーブ12は、その深さ(ランド14面とグルーブ12面との高さの差)が、40〜150nmであると好ましく、60〜120nmであるとより好ましい。また、グルーブ12の幅(グルーブ12の深さの1/2の位置の幅)は、好ましくは110〜210nmであり、より好ましくは130〜190nmである。さらに、隣り合うグルーブ12間の間隔(グルーブピッチ;グルーブ12の幅方向の中心間の距離)は、290〜350nmであると好ましく、310〜330nmであるとより好ましい。これらにより、クロストークを低減することが可能となる。
反射層3は、高反射率の金属又は合金から形成されることが好ましい。この反射層3は、具体的には、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びこれらの少なくとも1種を含む合金から形成されることが好ましい。特に、Ag又はAgを含む合金、例えば、AIS(Ag−In−Sn)が、適切な反射率が得られるため好ましい。また、反射率を適切な数値とするために、反射層3の厚さは0〜200nmであると好ましい。なお、基板2と記録層4との組合せのみで充分な反射率が得られる場合は、必ずしも反射層3を設けなくてもよい。
記録層4は、上述した錯化合物を含む色素材料から構成される層である。記録層4に含まれる錯化合物は、金属と、この金属に配位可能な色素化合物とからなるものであり、当該錯化合物における色素化合物は上記一般式(1)で表される構造を有するものである。
錯化合物を構成する金属としては、2価以上の価数を取り得る金属が好ましく、このような金属としては、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、W、Re、Os、Ir、Pt、Ce、Nd、Sm、Eu又はYbが挙げられる。なかでも、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os又はIrが好ましい。
また、色素化合物は、上記一般式(1)で表されるように、モノメチン鎖の両側に環状の基を有しており、モノメチン鎖の2重結合側には炭素環又は複素環が、単結合側にはイミノ基を介してベンゼン環が結合した構造を有している。
上記一般式(1)で表される化合物において、R11、R12及びR13としては、上述したなかでは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基が好ましい。ただし、色素化合物の安定性の観点からは水素原子であると好ましく、特に、R11、R12及びR13の全てが水素原子であると好ましい。つまり、上記一般式(1)で表される化合物において、モノメチン鎖にイミノ基を介して結合されたベンゼン環は、置換基を有していないことが好ましい。
さらに、R14は、上述した各種の基であり、更に置換基を有していてもよい。特に、R14としては、水素原子が好ましい。
R15は、モノメチン鎖に結合した炭素原子及びこれに隣接するカルボニル炭素とともに、置換基を有していてもよい炭素環又は置換基を有していてもよい複素環を構成する原子群である。なかでも、R15は複素環を構成する原子群であると好ましい。このような炭素環又は複素環としては、下記一般式(2A)〜(2Q)で表されるものが挙げられる。
上記式中、C21は、色素化合物においてモノメチン鎖の2重結合に結合する炭素原子を示している。また、各環構造におけるR21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示す。これらは、更に置換基を有していてもよい。これらの環構造は、C21に隣接する部位(α位)のカルボニル基が、モノメチン鎖の反対側の末端に結合したイミノ基に対してシスの位置となるようにメチン鎖に結合している。なお、C21の両側にカルボニル基を有する場合は、上記環構造のモノメチン鎖への結合形態は特に制限されない。
上述した色素化合物は、例えば、金属に対して以下に示すような2座配位を生じることにより錯化合物を形成する。すなわち、まず、モノメチン鎖に結合したイミノ基から、錯化合物の合成時に用いる溶媒や塩基等によって水素原子が引き抜かれ、これによって生じたアニオン性の基が金属に対して配位する。また、これとともに、モノメチン鎖に結合した炭素環又は複素環における、モノメチン鎖に結合した炭素に隣接する部位にあるカルボニル基が、その非共有電子対によって金属と配位する。なお、この場合の配位とは、色素化合物と金属とが電子を介した相互作用によって所定の結合を形成することを意味し、配位には、色素化合物が金属に電子対を供与する配位結合や、色素化合物と金属との共有結合性の結合が含まれる。
また、錯化合物における配位の形態としては、代表的には、4配位金属への配位又は6配位金属への配位が例示できる。例えば、4配位金属への配位においては、1つの色素化合物が2座配位する形態や、2つの色素化合物がそれぞれ2座配位する形態が挙げられる。前者の場合、金属にはH2OやCH3COO−等の溶媒や、トリアルキルアミン等の合成時に加えた塩基等が更に配位することで、錯化合物が安定な配位状態となる。
また、6配位金属への配位においては、1つの色素化合物が2座配位する形態、2つの色素化合物がそれぞれ2座配位する形態、3つの色素化合物がそれぞれ2座配位する形態が挙げられる。これらの形態においても、必要に応じて、上述した溶媒や塩基等が金属に更に配位することとなる。
さらに、このような配位の形態を有する錯化合物は、全体として負の電荷を有することが多い。負の電荷を有する場合、かかる錯化合物は、Na+、Li+、K+等の金属カチオンや、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等のカウンターカチオン等と塩を形成することで、全体として電気的な中性を維持する。
上述した金属及び色素化合物からなる錯化合物は、例えば、次に示す方法によって合成することができる。すなわち、まず、配位子となる色素化合物及び塩基を溶媒に溶解させる。また、中心金属となる金属の塩を溶媒に溶解させる。それから、色素化合物を含む溶液中に金属を含む溶液を滴下する等してこれらの溶液を混合する。そして、混合された溶液を加熱する等して金属と色素化合物との配位を生じさせる。これにより錯化合物を得ることができる。得られた錯化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−質量分析(MS)等により分子量を測定することで確認することができる。
記録層4を構成する色素材料は、上述した錯化合物を含むものであるが、所望の特性に応じて他の成分をさらに含んでいてもよい。このような他の成分としては、まず、モノメチンシアニンが挙げられる。モノメチンシアニンは、上記の錯化合物と同様に光記録媒体の記録層に適した材料であり、これを適宜組み合わせて用いることで、記録層4の特性を所望に調整することが可能となる。好適なモノメチンシアニンとしては、国際公開第01/044374号パンフレットに記載のものが適用できる。
色素材料が、錯化合物とモノメチンシアニンとの両方を含む場合、これらは、色素材料において塩を形成して塩形成錯体となっていると好ましい。上記の錯化合物及びモノメチンシアニンは、通常、それぞれ負及び正の電荷を有しており、単独ではそれぞれカウンターカチオン及びカウンターアニオン(例えば、PF6 −)と組み合わせて用いられることが多い。ところが、従来、これらのカウンターカチオンやアニオンは、色素材料の記録再生特性や耐水性を低下させる傾向にあった。これに対し、上記のように錯化合物とモノメチンシアニンとが塩形成すれば、カウンターカチオンやアニオン等の含有量を低減できるようになるため、上述したような問題が生じ難くなる。したがって、このような塩が形成された記録層4は、品質のよい記録・再生が可能であり、また、耐水性にも優れるものとなる。
色素材料において錯化合物と組み合わせるモノメチンシアニンとしては、下記化学式(3a)〜(3h)で表される化合物が特に好適である。
色素材料は、上記錯化合物やモノメチンシアニンの他、ポルフィリン、フタロシアニン、クマリンや、その他、光記録媒体の記録材料として用いられる金属錯体等を、所望の特性に応じて更に含んでいてもよい。
このように、本実施形態における錯化合物とその他の成分を組み合わせた場合であっても、錯化合物が光に対して安定であるため、記録層4の耐光性は十分に向上する。また、錯化合物は、それ自体が光に対する安定性に優れるだけでなく、光の照射によって他の成分に過剰のエネルギーが生じた場合に、これを緩和し得る特性も有しており、いわゆるクエンチャーとして機能することができる。したがって、錯化合物は、色素材料に少量含まれるだけでも、記録層4の耐光性を高めることができる。ただし、錯化合物によるこのような効果を確実に得る観点からは、色素材料中、錯化合物は、10質量%以上含まれていると好ましく、20質量%以上含まれているとより好ましい。
上記構成を有する記録層4は、記録光及び再生光に対する消衰係数(複素屈折率の虚部k)が、0.00〜0.50であると好ましく、0.00〜0.10であるとより好ましい。消衰係数が0であると、色素が光を吸収できなくなり感度が不十分となる場合もあるが、実用上問題なければ0であっても構わない。一方、消衰係数が0.5を超えると、記録層4の反射層が不十分となる場合がある。また、記録層4の屈折率(複素屈折率の実部n)は、1.50以下又は2.00以上であると好ましく、1.30以下又は2.20以上であるとより好ましい。屈折率が1.50より大きく2.00未満であると、信号の変調度が小さくなる傾向にある。なお、屈折率は、有機色素の合成上の都合から、1.10又は2.30程度であると好ましい。
誘電体層6は、記録層4の上に設けられ、記録層4を物理的及び/又は化学的に保護するほか、記録層4の光学特性を調整する干渉層としての機能を有している。この誘電体層6は、記録層4に対する光入射側に位置するため、記録再生光に対して透明な材料から構成される。このような誘電体層6の構成材料としては、In、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、FeやMg等の金属の酸化物、窒化物、硫化物又はフッ化物あるいはこれらの複合物が好ましい。特に、良好な屈折率及び消衰係数を有する光記録媒体10を得る観点からは、誘電体層6の構成材料は、ZnS−SiO2、AIN、Ta2O3等が好ましい。
基板8は、光記録媒体10において記録再生光が入射される側に設けられた基板である。したがって、基板8は、記録再生光の吸収や複屈折が小さく、記録再生光に対して透明な材料から構成される。このような基板8の構成材料としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂等の活性光線の照射による硬化が可能な活性光線硬化性樹脂が好ましい。また、記録再生光に対して透明であれば、基板8としては、上述した基板2と同様の材料からなるものも適用できる。
次に、上記の構成を有する光記録媒体10の好適な製造方法について説明する。
光記録媒体10の製造においては、まず、上述した構造を有する基板2を準備する。グルーブ12を有する基板2は、上述したような基板2を構成するための樹脂を用いて射出成形等を行うことにより形成可能である。また、平板状の基板2を製造した後、その上に2P法等によりグルーブ12となる凹部を有する樹脂層を形成し、基板2とかかる樹脂層との複合基板とすることによって得ることもできる。
次に、この基板2におけるグルーブ12が設けられた面上に、反射層3を形成する。反射層3は、例えば、上述した反射層6の構成材料やそれらの合金、酸化物を用い、蒸着法、スパッタリング法等の気相成長法を行うことにより形成することができる。
それから、基板2上に形成された反射層3上に、色素材料を含む塗布液を塗布した後、必要に応じて乾燥することにより溶媒を除去して記録層4を形成する。ここで、色素材料を含む塗布液は、上述した錯化合物や必要に応じてその他の成分を、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、芳香族系、フッ素系アルコール、ハロゲン化アルキル系等の溶媒に溶解することで調製することができる。また、塗布液は、必要に応じて、バインダー、分散剤、安定剤などを更に含有していてもよい。
また、塗布液の塗布は、スピンコート法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法等により実施可能である。なかでも、平易に均一な厚さの塗布を行うことができるスピンコート法が好ましい。こうして形成された記録層4は、上述した塗布液から溶媒が除去された構成を有し、主として錯化合物及び適宜添加したその他の成分とから構成される層となる。なお、記録層4には、塗布液に用いた溶媒が特性に大きく影響しない程度に残存していてもよい。
次に、記録層4上に、イオンビームスパッタリング法、リアクティブスパッタリング法、RFスパッタリング法等により上述の誘電層6の構成材料を堆積させ、誘電層6を形成する。そして、誘電層6上に、活性光線硬化型樹脂をスピンコート法等により塗布した後、活性光線を照射して硬化させ、基板8を形成することで、光記録媒体10を得ることができる。なお、基板8として基板2と同様の材料からなるものを適用する場合は、これらの材料をシート状又は板状に成形したものを、接着剤等を使用して誘電層6に貼り付けることにより基板8を形成してもよい。
上述のように構成された光記録媒体10においては、基板8側から400nm付近の波長を有する記録光(レーザー等)を照射し、記録層4の記録光が照射された部位を化学的又は物理的に変化させてピットを形成することによって、所定の情報が記録される。そして、このようにしてピットが形成された記録層4に、記録光と同程度の波長の再生光を照射して、反射された光を検出する。この際、ピット形成部位とその他の部位とで屈折率が異なるため、この屈折率の差に基づいて記録層4に記録された情報を読み出すことができる。
このような光記録媒体10は、記録層4に、上述した実施形態の錯化合物を含むものである。かかる錯化合物は、光の照射により化合物内部に生じたエネルギーを緩和する特性に優れるものであるため、長時間の光又は強い光を照射された場合であっても、分解等を生じ難い。したがって、この錯化合物を記録層4に用いた光記録媒体10は、光の照射による記録・再生特性の劣化が従来に比して極めて小さいものとなる。
なお、本発明における光記録媒体は、上述した実施形態のものに限定されず、種々の態様をとり得るものである。すなわち、例えば、上述した実施形態では、光記録媒体は、一層の記録層のみを有していたが、これに限定されず、例えば、上記構成の光記録媒体10を、その基板2側で張り合わせた両面光記録媒体としてもよく、基板の一側に複数の記録層を形成した多層光記録媒体としてもよい。
また、光記録媒体は、必ずしも上述したような誘電層を有している必要はない。例えば、光記録媒体は、上述した実施形態における基板8上に、直接記録層4を形成し、その上に更に反射層3及び基板2を設けた構成とすることもできる。この場合、基板8側から記録再生光を照射することにより、記録層4への情報の記録、及び、記録層4からの情報の読み出しを行うことができる。
さらに、光記録媒体は、誘電体層及び反射層の両方を有しないものであってもよく、一対の基板間に記録層のみが形成された形態であってもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[錯化合物の作製]
(実施例1)
まず、下記化学式(4)で表される色素化合物2.34g(0.01モル)、トリエチルアミン2.02g(0.02モル)をメタノール50mLに加熱溶解させた。また、別の容器で酢酸コバルト1.24g(0.005モル)をメタノール10mLに溶解させた。次いで、酢酸コバルトを含む溶液を、色素化合物を含む溶液に滴下した。それから、この混合溶液を、85℃で12時間加熱撹拌させ、得られた固体をろ別した後、メタノールで洗浄し、さらに乾燥させて錯化合物(キレート化合物)2.04gを得た。
[錯化合物の作製]
(実施例1)
まず、下記化学式(4)で表される色素化合物2.34g(0.01モル)、トリエチルアミン2.02g(0.02モル)をメタノール50mLに加熱溶解させた。また、別の容器で酢酸コバルト1.24g(0.005モル)をメタノール10mLに溶解させた。次いで、酢酸コバルトを含む溶液を、色素化合物を含む溶液に滴下した。それから、この混合溶液を、85℃で12時間加熱撹拌させ、得られた固体をろ別した後、メタノールで洗浄し、さらに乾燥させて錯化合物(キレート化合物)2.04gを得た。
得られた錯化合物をHPLCで分析したところ、HPLC純度が96.3%であった。また、HPLC−MSにより分析した結果、親イオンピークM/Z=727がネガで確認された。この結果から、下記化学式(5)で表される構造を有する錯化合物が得られたことが確認された。
(実施例2〜17)
色素化合物及び金属を、下記の表1に示す組み合わせでそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして各種の錯化合物を合成した。なお、各実施例では、下記化学式(6A)〜(6P)で表される色素化合物をそれぞれ用いた。
色素化合物及び金属を、下記の表1に示す組み合わせでそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして各種の錯化合物を合成した。なお、各実施例では、下記化学式(6A)〜(6P)で表される色素化合物をそれぞれ用いた。
(比較例1)
下記化学式(7)で表される色素化合物を準備し、これをそのまま以下の試験に用いた。
下記化学式(7)で表される色素化合物を準備し、これをそのまま以下の試験に用いた。
[耐光性試験]
実施例1〜17で得られた錯化合物、及び、比較例1の色素化合物を用い、以下に示す方法で各錯化合物又は色素化合物を記録層に用いた光記録媒体を作製した。すなわち、まず、上記錯化合物又は色素化合物を、溶媒であるテトラフルオロプロパノール(TFP)に溶解して塗布液を調製した。次いで、グルーブが形成されたポリカーボネート基板のグルーブ面上に、スパッタリング法によりAISからなる反射層を形成した。それから、この反射層上に上記塗布液を塗布した後、乾燥させて、基板上に記録層を形成した。その後、記録層上にスパッタリング法によりSiO2−ZnSからなる誘電層を形成した後、この誘電層上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させて基板を形成した。これにより、図1に示す構造を有する光記録媒体を得た。
実施例1〜17で得られた錯化合物、及び、比較例1の色素化合物を用い、以下に示す方法で各錯化合物又は色素化合物を記録層に用いた光記録媒体を作製した。すなわち、まず、上記錯化合物又は色素化合物を、溶媒であるテトラフルオロプロパノール(TFP)に溶解して塗布液を調製した。次いで、グルーブが形成されたポリカーボネート基板のグルーブ面上に、スパッタリング法によりAISからなる反射層を形成した。それから、この反射層上に上記塗布液を塗布した後、乾燥させて、基板上に記録層を形成した。その後、記録層上にスパッタリング法によりSiO2−ZnSからなる誘電層を形成した後、この誘電層上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させて基板を形成した。これにより、図1に示す構造を有する光記録媒体を得た。
次いで、得られた各光記録媒体に対し、波長407nmのレーザー光を用いて線速9.83m/sで信号を記録した。そして、信号が記録された光記録媒体に対して、パルステック社製DDU−1000を用いて、最短マークである2T信号のCNR(Carrier to Noise Ratio、単位:dB)を測定した。得られた値を初期の2TCNRとした。この値が大きいほど、記録層に記録された信号を明瞭に読み出すことができることを示している。
それから、各光記録媒体に対し、5万ルクスのキセノンランプ光を80時間照射した。そして、この光照射後の各光記録媒体の2T CNRを上記と同様にして測定した(得られた値を、光照射後の2T CNRという)。これらの結果を、各実施例で用いた色素化合物及び金属の組み合わせとともに表1に示す。
表1より、モノメチン鎖に結合したイミノ基、及び、炭素環又は複素環が有するカルボニル基において色素化合物が金属に配位してなる錯化合物(キレート化合物)を用いた実施例1〜17は、金属との錯化合物を形成しなかった比較例1に比して、光照射後の2T−CNRが十分に維持されており、優れた耐光性を有していることが確認された。
2…基板、3…反射層、4…記録層、6…誘電層、8…基板、10…光記録媒体、12…グルーブ、14…ランド。
Claims (3)
- 金属と、該金属に配位可能な色素化合物と、からなり、
前記色素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である、ことを特徴とする錯化合物。
[式中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基、アシル基、スルホンアミド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオシアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアゾメチン基、カルボン酸エステル基、カルバモイル基、スルホン酸エステル基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基又はアルケニル基を示し、R15は、置換基を有していてもよい炭素環又は置換基を有していてもよい複素環を構成する原子群を示す。] - 前記金属は、2価以上の金属であることを特徴とする請求項1記載の錯化合物。
- 一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられた、請求項1又は2記載の錯化合物を含む記録層と、
を備える光記録媒体。
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JP2005252716A JP2007062221A (ja) | 2005-08-31 | 2005-08-31 | 錯化合物及びこれを用いた光記録媒体 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101145276B1 (ko) | 2010-03-23 | 2012-05-24 | 황태경 | 승화성 분산염료-금속 킬레이트 화합물을 이용한 염착 코팅형 태양광 반사 필름 및 그 제조방법 |
-
2005
- 2005-08-31 JP JP2005252716A patent/JP2007062221A/ja not_active Withdrawn
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